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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130173
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20240920BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240920BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240920BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A01B63/10 F
E02F9/22 L
F15B11/02 F
F15B11/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039738
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勝浦 知也
(72)【発明者】
【氏名】的場 有一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 茂
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和哉
【テーマコード(参考)】
2B304
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2B304KA02
2B304LA04
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA03
2B304MB02
2B304PD17
2B304PD20
2B304PD27
2B304PD28
2B304QA11
2D003AB01
2D003AB03
2D003AB05
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
3H089AA27
3H089AA71
3H089BB01
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC02
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA06
3H089DA13
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB43
3H089DC04
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ17
(57)【要約】
【課題】コンパクトに構成することのできる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプと、固定容量形の第2油圧ポンプと、作業機系の油圧アクチュエータを制御する作業機系コントロールバルブと、走行動力伝達系の油圧アクチュエータを制御するパワーシフトバルブと、操舵系の油圧アクチュエータを制御するパワステコントローラと、を備え、作業機系コントロールバルブは、第1油圧ポンプによって作動油が供給される第1油圧系統に配備され、パワーシフトバルブ及びパワステコントローラの少なくとも一方は、第2油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統に配備される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプと、
固定容量形の第2油圧ポンプと、
作業機系の油圧アクチュエータを制御する作業機系コントロールバルブと、
走行動力伝達系の油圧アクチュエータを制御するパワーシフトバルブと、
操舵系の油圧アクチュエータを制御するパワステコントローラと、
を備え、
前記作業機系コントロールバルブは、前記第1油圧ポンプによって作動油が供給される第1油圧系統に配備され、
前記パワーシフトバルブ及び前記パワステコントローラの少なくとも一方は、前記第2油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統に配備される作業車両。
【請求項2】
前部に前装作業機を装着可能な車体を備え、
前記作業機系コントロールバルブは、前記前装作業機に装備される前記作業機系の油圧アクチュエータを制御する前装作業機用コントロールバルブを含む請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作業機を装着可能な車体を備え、
前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備される前記作業機系の油圧アクチュエータを制御することができる補助コントロールバルブを含む請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業機系の油圧アクチュエータと、前記作業機系コントロールバルブである外部コントロールバルブとが装備された作業機を装着可能な車体と、
前記車体に装備されていて、前記第1油圧ポンプからの作動油を前記作業機に対して取り出すことができる油圧取出し部と、を備え、
前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備された前記外部コントロールバルブを含む請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
作業機を装着可能な車体と、
前記車体に前記作業機を装着するための作業機装着機構と、
前記作業機装着機構を昇降させるための前記作業機系の油圧アクチュエータである作業機昇降用アクチュエータと、を備え、
前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機昇降用アクチュエータを制御する作業機昇降用コントロールバルブを含む請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第1油圧系統は、
前記第1油圧ポンプの上流側に設けられて前記第1油圧ポンプに作動油を供給する第3油圧ポンプと、
前記第3油圧ポンプと前記第1油圧ポンプとの間の油圧管路から分岐してオイルクーラに接続され、前記第3油圧ポンプから前記第1油圧ポンプへ流れる作動油の余剰流を、前記オイルクーラを介して作動油の貯留部に戻すためのリターン管路と、を有している請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
作業機を装着可能な車体を備え、
前記第1油圧系統は、
前記作業機系の油圧アクチュエータからの戻りの作動油が流通し且つ前記リターン管路に接続された戻り管路と、
前記戻り管路と前記リターン管路との接続部よりも上流側において前記リターン管路に
設けられ、前記接続部から前記第3油圧ポンプ側への作動油の逆流を防止する逆流防止弁と、を有し、
前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備された前記作業機系の油圧アクチュエータを制御する補助コントロールバルブを含み、
前記戻り管路は、前記補助コントロールバルブからの戻りの作動油を、前記リターン管路を流通する作動油に合流させる管路である請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記第1油圧系統は、
前記リターン管路とは別の管路であって、前記第3油圧ポンプから前記第1油圧ポンプへ流れる作動油の余剰流を、リリーフ弁を介して前記貯留部にドレンさせるドレン管路を有し、
前記逆流防止弁の設定圧は、前記リリーフ弁の設定圧よりも低く設定されている請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプと、
固定容量形の第2油圧ポンプと、
動力源からの動力が伝達される伝動軸が収容された車体と、
前記車体の側方に車体幅方向に並べて配置されていて前記伝動軸からの動力が伝達される第1軸及び第2軸と、
を備え、
前記第1軸は、前記第2軸よりも前記車体から遠い側にあり、
前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとは、前記第1油圧ポンプが前記第1軸によって駆動され且つ前記第2油圧ポンプが第2軸によって駆動されるように前後に対面する位置に配置されている作業車両。
【請求項10】
前記伝動軸からの動力を伝達するギヤ伝動機構であって、前記車体側から該車体の側方に向けて並べて配設された複数のギヤを含むギヤ伝動機構、を備え、
前記ギヤ伝動機構は、前記車体から最も遠い前記ギヤである第1ポンプギヤと、前記第1ポンプギヤよりも前記車体に近い前記ギヤである第2ポンプギヤとを含み、
前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとは、前記ギヤ伝動機構を挟んで前後に配置され、
前記第1軸は、前記第1ポンプギヤと同軸心回りに一体回転自在に設けられ、
前記第2軸は、前記第2ポンプギヤと同軸心回りに一体回転自在に設けられている請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記ギヤ伝動機構は、前記伝動軸に一体回転自在に設けられた伝動ギヤと、前記伝動ギヤに歯合する第1アイドルギヤと、前記第1アイドルギヤ及び前記第2ポンプギヤに歯合する第2アイドルギヤとを含み、
前記第1ポンプギヤは、前記第2ポンプギヤに歯合している請求項10に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業車両が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された作業車両は、油圧ポンプ及び該油圧ポンプで駆動される油圧アクチュエータを制御する制御装置を搭載したトラクタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-284136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トラクタの油圧システムとして、オープンセンタシステムと、ロードセンシングシステムとがある。オープンセンタシステムでは、固定容量形のギヤポンプで作動油を油圧アクチュエータ及び該油圧アクチュエータを制御する制御装置に供給する。ロードセンシングシステムでは、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形のポンプで必要量の作動油を油圧アクチュエータ及び該油圧アクチュエータを制御する制御装置に供給する。
【0006】
ロードセンシングシステムは、オープンセンタシステムに対して、(1)油圧ロスが小さく、省エネ・低発熱、(2)油圧の最大供給可能流量が多い、(3)エンジン低回転域で流量が確保でき、省エネ・低発熱・低騒音、(4)負荷によらずバルブへの供給流量が一定で複合操作がよい、等の利点がある。
【0007】
しかしながら、ロードセンシングシステムは、オープンセンタシステムに対して回路が複雑になり、システム構成が大型になるという傾向がある。
【0008】
例えば、ロードセンシングシステムでは、油圧アクチュエータの同時操作によりポンプの最大流量を使い切った場合、低負荷の油圧アクチュエータに作動油が優先的に供給される特性がある。それゆえ、作業機系の油圧アクチュエータを制御する制御装置、変速を含む走行動力伝達系の油圧アクチュエータを制御する制御装置、操舵系の油圧アクチュエータを制御する制御装置を単純に並列配置すると、低負荷大流量を走行動力伝達系・操舵系以外の油圧アクチュエータで使用しているときに走行動力伝達系・操舵系へ作動油の供給が十分にできなくなる虞がある。それを回避するためには、優先弁を複数搭載し、ポンプの吐出流量が飽和した際にも、優先順位の高い順に作動油を供給する構成としなければならないが、そうすると、優先弁の数が多くなり、ロードセンシングシステムの回路構成が複雑になって、システム構成が大型になる。システム構成が大型になると、コンパクトなトラクタには搭載できないという問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑み、コンパクトに構成することのできる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る作業車両は、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプと、固定容量形の第2油圧ポンプと、作業機系の油圧アクチュエータを制御する作業機系コントロールバルブと、走行動力伝達系の油圧アクチュエータを制御するパワーシフトバルブと、操舵系の油圧アクチュエータを制御するパワステコントローラと、を備え、前記作業機系コントロールバルブは、前記第1油圧ポンプによって作動油が供給される第1油圧系統に配備され、前記パワーシフトバルブ及び前記パワステコントローラの少なくとも一方は、前記第2油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統に配備される。
【0011】
また、作業車両は、前部に前装作業機を装着可能な車体を備え、前記作業機系コントロールバルブは、前記前装作業機に装備される前記作業機系の油圧アクチュエータを制御する前装作業機用コントロールバルブを含んでいてもよい。
【0012】
また、作業車両は、作業機を装着可能な車体を備え、前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備される前記作業機系の油圧アクチュエータを制御することができる補助コントロールバルブを含んでいてもよい。
【0013】
また、作業車両は、前記作業機系の油圧アクチュエータと、前記作業機系コントロールバルブである外部コントロールバルブとが装備された作業機を装着可能な車体と、前記車体に装備されていて、前記第1油圧ポンプからの作動油を前記作業機に対して取り出すことができる油圧取出し部と、を備え、前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備された前記外部コントロールバルブを含んでいてもよい。
【0014】
また、作業車両は、作業機を装着可能な車体と、前記車体に前記作業機を装着するための作業機装着機構と、前記作業機装着機構を昇降させるための前記作業機系の油圧アクチュエータである作業機昇降用アクチュエータと、を備え、前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機昇降用アクチュエータを制御する作業機昇降用コントロールバルブを含んでいてもよい。
【0015】
また、前記第1油圧系統は、前記第1油圧ポンプの上流側に設けられて前記第1油圧ポンプに作動油を供給する第3油圧ポンプと、前記第3油圧ポンプと前記第1油圧ポンプとの間の油圧管路から分岐してオイルクーラに接続され、前記第3油圧ポンプから前記第1油圧ポンプへ流れる作動油の余剰流を、前記オイルクーラを介して作動油の貯留部に戻すためのリターン管路と、を有していてもよい。
【0016】
また、作業車両は、作業機を装着可能な車体を備え、前記第1油圧系統は、前記作業機系の油圧アクチュエータからの戻りの作動油が流通し且つ前記リターン管路に接続された戻り管路と、前記戻り管路と前記リターン管路との接続部よりも上流側において前記リターン管路に設けられ、前記接続部から前記第3油圧ポンプ側への作動油の逆流を防止する逆流防止弁と、を有し、前記作業機系コントロールバルブは、前記作業機に装備された前記作業機系の油圧アクチュエータを制御する補助コントロールバルブを含み、前記戻り管路は、前記補助コントロールバルブからの戻りの作動油を、前記リターン管路を流通する作動油に合流させる管路であってもよい。
【0017】
また、前記第1油圧系統は、前記リターン管路とは別の管路であって、前記第3油圧ポンプから前記第1油圧ポンプへ流れる作動油の余剰流を、リリーフ弁を介して前記貯留部にドレンさせるドレン管路を有し、前記逆流防止弁の設定圧は、前記リリーフ弁の設定圧よりも低く設定されていてもよい。
【0018】
また、本発明の他の態様に係る作業車両は、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプと、固定容量形の第2油圧ポンプと、動力源からの動力が伝達される伝動軸が収容された車体と、前記車体の側方に車体幅方向に並べて配置されていて前記伝動軸からの動力が伝達される第1軸及び第2軸と、を備え、前記第1軸は、前記第2軸よりも前記車体から遠い側にあり、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとは、前記第1油圧ポンプが前記第1軸によって駆動され且つ前記第2油圧ポンプが第2軸によって駆動されるように前後に対面する位置に配置されている。
【0019】
また、作業車両は、前記伝動軸からの動力を伝達するギヤ伝動機構であって、前記車体側から該車体の側方に向けて並べて配設された複数のギヤを含むギヤ伝動機構、を備え、前記ギヤ伝動機構は、前記車体から最も遠い前記ギヤである第1ポンプギヤと、前記第1ポンプギヤよりも前記車体に近い前記ギヤである第2ポンプギヤとを含み、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとは、前記ギヤ伝動機構を挟んで前後に配置され、前記第1軸は、前記第1ポンプギヤと同軸心回りに一体回転自在に設けられ、前記第2軸は、前記第2ポンプギヤと同軸心回りに一体回転自在に設けられていてもよい。
【0020】
また、前記ギヤ伝動機構は、前記伝動軸に一体回転自在に設けられた伝動ギヤと、前記伝動ギヤに歯合する第1アイドルギヤと、前記第1アイドルギヤ及び前記第2ポンプギヤに歯合する第2アイドルギヤとを含み、前記第1ポンプギヤは、前記第2ポンプギヤに歯合していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記の作業車両によれば、コンパクトに構成することのできる作業車両を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】油圧システムの概略構成図である。
図2】第1油圧系統を示す概略構成図である。
図3】第2油圧系統を示す概略構成図である。
図4】車体の側面図である。
図5】第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプの配置部の平面図である。
図6】ギヤ伝動機構の正面断面図である。
図7】第1油圧ポンプ、第2油圧ポンプ、ギヤ伝動機構の斜視図である。
図8】車体及び燃料タンクの平面図である。
図9】作業車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態に係る作業車両1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業車両1としてトラクタが例示されている。以下、作業車両1がトラクタであるとして説明するが、作業車両1はトラクタには限定されない。
【0024】
図9に示すように、トラクタ1は、車体2と、車体2の前部の左及び右に配備された前輪(操向輪)3と、車体2の後部の左及び右に配備された後輪4と、車体2の上方に配備されていてステアリングホイール5やオペレータが着座する運転席6などを備えた運転部7と、運転部7を包囲するキャビン8とを有している。
【0025】
以下の説明において、トラクタ1の運転席6に着座した運転者の前側(図9の矢印A1方向)を前方といい、運転者の後側(図9の矢印A2方向)を後方といい、運転者の左側(図9の奥側)を左方、運転者の右側(図9手前側)を右方として説明する。また、図9の矢印K1で示す方向を前後方向として説明する。また、前後方向に直交する水平方向を車体幅方向という。また、車体幅方向であって、トラクタ1の中央部から右部又は左部へ向かう方向を車体外方という。また、車体幅方向であって、トラクタ1の右部又は左部からトラクタ1の中央部へ向かう方向を車体内方という。
【0026】
図9に示すように、車体2は、動力源であるエンジン(原動機)9と、エンジン9に連結され且つエンジン9から前方に突出する前部フレーム10と、エンジン9の後部に連結され且つエンジン9から後方に延伸する伝動ケース11とを有して構成されている。
【0027】
エンジン9は、本実施形態では、ディーゼルエンジンである。エンジン9は、ガソリンエンジンであってもよい。また、動力源としてはエンジン9以外の原動機であってもよい。例えば、電動モータであってもよい。
【0028】
前部フレーム10は、左及び右の前輪3によって支持され、伝動ケース11は、左及び右の後輪4によって後部が支持される。つまり、左及び右の前輪3と左及び右の後輪4とによって車体2が走行可能に支持されている。
【0029】
図9に示すように、車体2の前部には、該車体2の前部に取り付けられる作業機(インプルメント)である前装作業機12が装着可能である。本実施形態では、前装作業機12としてフロントローダが例示されている。前装作業機12は、フロントローダには限定されない。
【0030】
フロントローダ12は、支持フレーム13と、ブーム14と、ブームシリンダ(作業機系の油圧アクチュエータ)15と、作業具16と、作業具シリンダ(作業機系の油圧アクチュエータ)17とを有している。また、フロントローダ12は、車体2の前部に設けられた取付フレーム18に連結されている。取付フレーム18、支持フレーム13、ブーム14、ブームシリンダ15及び作業具シリンダ17は、車体2の左及び右に配置される。ブームシリンダ15及び作業具シリンダ17は、複動型の油圧シリンダによって構成されている。
【0031】
支持フレーム13は、取付フレーム18に着脱自在に連結される。ブーム14は、支持フレーム13の上部に車体幅方向に延伸する軸心回りに上下方向に揺動自在に支持されている。ブームシリンダ15は、支持フレーム13とブーム14とにわたって設けられ、伸
縮動作することでブーム14を揺動させる。作業具16は、本実施形態では、バケットが例示されている。作業具16は、左のブーム14の先端側と右のブーム14の先端側とにわたって設けられ、持ち上げ(スクイ)動作及び下降(ダンプ)動作ができるように左右のブーム14に揺動可能に連結されている。作業具シリンダ17は、一端がブーム14の中途部に枢支され、他端がリンク機構19を介して作業具16及びブーム14の先端側に連結されており、伸縮動作することで作業具16を揺動させる。
【0032】
なお、作業具16としては、マニアフォーク、パレットフォーク、ヘイフォーク、ベールフォーク、ロールグラブ、コンテナバケット等が例示できる。
【0033】
図9に示すように、車体2の後部には、該車体2の後部に取り付けられる作業機(インプルメント)である後装作業機20が装着可能である。また、車体2の後部には、当該車体2に後装作業機20を昇降自在に装着するための作業機装着機構21と、作業機装着機構21を昇降させる作業機昇降用アクチュエータ(作業機系の油圧アクチュエータ)22とが設けられている。
【0034】
後装作業機20としては、耕耘機、肥料散布機、農薬散布機、播種散布機、収穫機等が例示できる。
【0035】
また、車体2の後部には、作業機昇降用コントロールバルブ(作業機系コントロールバルブ)23及び動力取出軸(PTO軸という)24が設けられている。作業機昇降用コントロールバルブ23は、作業機昇降用アクチュエータ22を制御する制御装置である。PTO軸24は、トラクタ1から後装作業機20等に動力を伝達すべく、トラクタ1の動力を取り出すための軸である。
【0036】
本実施形態では、作業機装着機構21として三点リンク機構が例示されている。作業機装着機構21は、三点リンク機構に限定されることはない。作業機装着機構21は、例えば、2点リンク機構であってもよい。
【0037】
図4にも示すように、三点リンク機構21は、1本のトップリンク25と、トップリンク25の下方に配置された左及び右の2本のロワーリンク26とを有している。トップリンク25の前端側は、車体2の後部に設けられたトップリンクブラケット27に枢支連結されている。左及び右のロワーリンク26の前端側は、車体2の後部の下部に枢支連結されている。トップリンク25及び左右のロワーリンク26の後端側に後装作業機20が連結される。
【0038】
作業機昇降用アクチュエータ22は、単動型の油圧シリンダによって構成されている。作業機昇降用アクチュエータ22は、車体2の後部の左側及び右側に設けられている。なお、作業機昇降用アクチュエータ22は、本実施形態では、2本備えられているが、1本の作業機昇降用アクチュエータ22によって作業機装着機構21を昇降させる構造のものであってもよい。
【0039】
図4に示すように、各作業機昇降用アクチュエータ22の下部は、車体2側に取り付けられたブラケット部材28に枢支連結されている。各作業機昇降用アクチュエータ22の上部(ピストンロッドの先端側)は、リフトアーム29に連結されている。
【0040】
リフトアーム29は、一対の作業機昇降用アクチュエータ22に対応して一対設けられ、作業機昇降用コントロールバルブ23の左及び右に配置されている。
【0041】
各リフトアーム29は、前部が作業機昇降用コントロールバルブ23のバルブケース23Aに車体幅方向に延伸する軸心回りに回動自在に枢支されている。各リフトアーム29は、後部が、車体幅方向で同じ側にあるロワーリンク26の中途部にリフトロッド30を介して連結されている。したがって、作業機昇降用アクチュエータ22を作動油によって伸長動作させることでリフトアーム29及びロワーリンク26が上方に揺動して、後装作業機20が上昇する。また、後装作業機20を下降させる際には、作業機昇降用アクチュエータ22のボトム側から作動油が抜けることで後装作業機20が自重で下降する。
【0042】
図4に示すように、伝動ケース11は、エンジン9の後部に連結されたハウジングケース31と、該ハウジングケース31の後部に連結されたミッションケース32とを有している。ハウジングケース31には、エンジン9のクランクシャフトの回転を安定させるフライホイールが収容されている。
【0043】
ミッションケース32は、フロントケース32Aと、ミッドケース32Bと、リヤケース32Cとを有している。ミッションケース32には、走行系の動力伝達装置等が収容されている。ミッションケース32内には、走行系の動力伝達装置等を潤滑する潤滑油であるミッションオイルが貯留されている。トラクタ1では、このミッションオイルを、当該トラクタ1に装備される油圧アクチュエータを作動する作動油として兼用している。つまり、トラクタ1には、油圧で駆動される油圧アクチュエータが装備され、この油圧アクチュエータを作動する作動油としてミッションオイルが使用される。つまり、ミッションケース32は、オイルが貯留されるオイルタンク(作動油の貯留部)である。
【0044】
図1は、トラクタ1の油圧システム(油圧回路)33の簡略構成図を示している。油圧システム33は、第1油圧系統34と、第2油圧系統35とを具備している。
【0045】
先ず、第1油圧系統34について説明する。
第1油圧系統34は、第1油圧ポンプ36と、第3油圧ポンプ37と、分岐ブロック38と、トレーラブレーキバルブ39と、フロントサスペンションバルブ40と、前装作業機用コントロールバルブ(作業機系コントロールバルブ)41と、作動油取出しユニット42と、作業機昇降用コントロールバルブ23とを有している。また、第1油圧系統34は、ロードセンシングシステムを具備している。言い換えると、第1油圧系統34は、ロードセンシングシステムで構築される。
【0046】
第1油圧ポンプ36は、可変容量形の油圧ポンプ(ピストンポンプ)によって構成されている。また、第1油圧ポンプ36は、ロードセンシング制御(ロードセンシングシステムによる制御)によって吐出流量が制御される。ロードセンシングシステムは、可変容量形油圧ポンプの吐出圧から、該油圧ポンプの吐出作動油によって駆動される複数の油圧アクチュエータのうちの最高負荷圧を引いた差圧が一定圧になるように油圧ポンプの吐出流量を制御する。
【0047】
本実施形態にあっては、図1に示すように、ロードセンシングシステムは、第1油圧ポンプ36の斜板を制御する流量補償用ピストン43と、流量補償用ピストン43を制御するLSレギュレータバルブ(流量制御部)44と、第1油圧系統34の各油圧アクチュエータ(図2に示す、ブレーキアクチュエータ53、サスペンションシリンダ54、ブームシリンダ15、作業具シリンダ17、油圧アクチュエータ61、油圧アクチュエータ62及び作業機昇降用アクチュエータ22)の負荷圧のうちの最高の負荷圧(アクチュエータ最高負荷圧)をLSレギュレータバルブ44に伝達するPLS信号油路45と、第1油圧ポンプ36の吐出圧(ポンプ吐出圧)をLSレギュレータバルブ44に伝達するPPS信号油路46とを備えており、ポンプ吐出圧からアクチュエータ最高負荷圧を引いた差圧が一定圧になるように、流量補償用ピストン43に作用する圧力をLSレギュレータバルブ44によって制御し、これにより第1油圧ポンプ36の斜板制御を行うことで第1油圧ポンプ36の吐出流量を制御し、負荷に必要とされる油圧動力を第1油圧ポンプ36から吐出させる。
【0048】
本実施形態にあっては、第1油圧ポンプ36は、当該第1油圧ポンプ36の自己圧によって斜板がポンプ流量を増加する方向に押圧されるよう構成されている。流量補償用ピストン43は、この自己圧に対抗する力を斜板に作用させるように構成されている。そして、流量補償用ピストン43に作用する圧力を制御することにより、第1油圧ポンプ36の吐出流量が制御される。したがって、流量補償用ピストン43に作用する圧力が抜けると、第1油圧ポンプ36は、斜板角がMAXとなって最大流量を吐出する。
【0049】
また、ロードセンシングシステムは、第1油圧系統34に配備された油圧アクチュエータの複数を同時操作したとき、負荷の大きさによらず、操作量に応じた流量を流す(比例配分する)ことができる。
【0050】
図4に示すように、LSレギュレータバルブ44は、第1油圧ポンプ36の上部に取り付けられている。
【0051】
第3油圧ポンプ37は、トロコイドポンプによって構成されている。図1に示すように、第3油圧ポンプ37は、第1油圧ポンプ36の上流側に配備され、貯留部32の作動油を、オイルフィルタ47を介して吸い込み、第1油圧ポンプ36へ流す。つまり、第3油
圧ポンプ37は、第1油圧ポンプ36に作動油を供給するチャージ用の油圧ポンプである。言い換えると、第3油圧ポンプ37は、第1油圧ポンプ36の吸い込み側に圧力を加えて吸い込みを補助する油圧ポンプである。第3油圧ポンプ37は、図4に示すように、第1油圧ポンプ36の後部に取り付けられている。
【0052】
第3油圧ポンプ37と第1油圧ポンプ36との間の油圧管路48にはオイルフィルタ49が設けられている。したがって、油圧管路48は、第3油圧ポンプ37とオイルフィルタ49との間の第1油路48aと、オイルフィルタ49と第1油圧ポンプ36との間の第2油路48bとを含む。
【0053】
図1に示すように、分岐ブロック38は、第1油圧ポンプ36の下流側(吐出側)に配備され、第1油圧ポンプ36から作動油が供給される。
【0054】
図2に示すように、分岐ブロック38には、優先弁50が設けられている。優先弁50は、作動油の入口の入力ポート50a、作動油の出口の第1出力ポート50b及び第2出力ポート50cに圧力変動があっても、第2出力ポート50cには一定の流量を優先的に流し、第1出力ポート50bにはその余剰流量を流すバルブである。つまり、優先弁50からトレーラブレーキバルブ39に一定の流量が優先的に流される。分岐ブロック38は、図4に示すように、第1油圧ポンプ36の上部に取り付けられている。
【0055】
なお、分岐ブロック38には、第1油圧ポンプ36のリリーフ圧を設定するリリーフ弁51が設けられている。該リリーフ弁51は、優先弁50より上流側に接続される。リリーフ弁51の設定圧は、例えば、31.0MPaである。
【0056】
図2に示すように、トレーラブレーキバルブ39は、トラクタ1によって牽引される牽引車の油圧式ブレーキ装置52の制動力を制御する。油圧式ブレーキ装置52は、例えば、牽引車の車輪と一体回転する回転部材と、回転部材に押し付けられる押し付け部材と、押し付け部材を回転部材に押し付けるブレーキピストン及びブレーキピストンを収容するピストン収容部等からなるブレーキアクチュエータ53とを有し、トレーラブレーキバルブ39からブレーキアクチュエータ53に供給される作動油の油圧力によって油圧式ブレーキ装置52の制動力が制御される。
【0057】
図2に示すように、フロントサスペンションバルブ40は、左及び右の前輪3にそれぞれ対応する左及び右(一対)のサスペンションシリンダ54を制御するものである。
【0058】
詳しくは、フロントサスペンションバルブ40は、中立位置、上昇位置、下降位置に切換自在な制御弁55を有し、制御弁55が中立位置に操作されている場合、地面の凹凸に応じてサスペンションシリンダ54が伸縮して、サスペンションシリンダ54の油室とアキュムレータ56との間で作動油が往復し、サスペンションシリンダ54がバネ定数を備えたサスペンション機構として作動する。
【0059】
また、制御弁55が上昇位置に操作されると、制御弁55から作動油がサスペンションシリンダ54に供給され、サスペンションシリンダ54が伸長作動して車体2(作業車両1)の前部が上昇する。この後、制御弁55が中立位置に操作されると、サスペンションシリンダ54が伸長した状態で、サスペンションシリンダ54がサスペンション機構として作動する。
【0060】
さらに、制御弁55が下降位置に操作されると、制御弁55から作動油がサスペンションシリンダ54に供給され、サスペンションシリンダ54が収縮作動して車体2(作業車両1)の前部が下降する。この後、制御弁55が中立位置に操作されると、サスペンションシリンダ54が収縮した状態で、サスペンションシリンダ54がサスペンション機構として作動する。
【0061】
なお、制御弁55は作動油によって切り換え操作され、図1に示すように、フロントサスペンションバルブ40には、制御弁55を切り換えるための制御圧の作動油が第2油圧系統35のOCレギュレータ81から供給される。
【0062】
フロントサスペンションは、必要流量が2.5L/minと少ないが、高圧であるためロードセンシングシステム下におくことで省エネ効果が大きい。また、オープンセンタシステム下におくと、分流弁及び容量アップ版のギヤポンプが必要であるが、本実施形態では、それらが不要である。
【0063】
前装作業機用コントロールバルブ41は、フロントローダ(前装作業機)12のブームシリンダ(作業機系の油圧アクチュエータ)15及び作業具シリンダ(作業機系の油圧アクチュエータ)17を制御するものである。詳しくは、図2に示すように、前装作業機用コントロールバルブ41は、ブーム用制御バルブ57と、作業具用制御バルブ58とを有している。ブーム用制御バルブ57は、ブームシリンダ15を伸縮させるように該ブームシリンダ15を制御する。作業具用制御バルブ58は、作業具シリンダ17を伸縮させるように該作業具シリンダ17を制御する。
【0064】
図2に示すように、作動油取出しユニット42は、補助コントロールバルブ(作業機系コントロールバルブ)59と、油圧取出し部(パワービヨンド:power beyond)60とを有している。
【0065】
図4に示すように、作動油取出しユニット42は、作業機昇降用コントロールバルブ23の上方に配置されている。油圧取出し部60は、ブロック状に形成され、作業機昇降用コントロールバルブ23上に取り付けられている。補助コントロールバルブ59は、本実施形態では、2つ設けられており、油圧取出し部60上に上下方向に積み重ねて取り付けられている。補助コントロールバルブ59は、3つ以上重ねて取り付けることもできる。また、補助コントロールバルブ59は、1つだけ搭載することもできる。
【0066】
補助コントロールバルブ59は、例えば、作業機装着機構21に装着された後装作業機(作業機)20に油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ(作業機系の油圧アクチュエータ)61が搭載されている場合に、該油圧アクチュエータ61を制御することができる。なお、補助コントロールバルブ59は、後装作業機20に搭載された油圧アクチュエータ61を制御する場合に限ることはなく、油圧アクチュエータが装備され且つ該油圧アクチュエータを制御する制御弁が装備されていない作業機をトラクタ1に装着した場合に使用することができる。また、補助コントロールバルブ59は、油圧シリンダを装備した油圧式のトップリンク25を伸縮動作させるのにも使用することができる。
【0067】
図2に示すように、油圧取出し部60は、例えば、作業機装着機構21に装着された後装作業機(作業機)20に油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ(作業機系の油圧アクチュエータ)62と、該油圧アクチュエータ62を制御する外部コントロールバルブ(作業機系コントロールバルブ)63とが装備されている場合に、該後装作業機20の外部コントロールバルブ63に作動油を供給するために作動油を取り出すことができる。なお、油圧取出し部60は、後装作業機20に搭載された外部コントロールバルブ63に対して作動油を取り出す場合に限ることはなく、油圧アクチュエータ62及び該油圧アクチュエータ62を制御する外部コントロールバルブ63が装備されている作業機をトラクタ1に装着した場合に使用することができる。
【0068】
作業機昇降用コントロールバルブ(作業機系コントロールバルブ)23は、図2に示すように、作業機昇降用アクチュエータ(作業機系の油圧アクチュエータ)22のボトム側に作動油を供給することによって作業機昇降用アクチュエータ22を伸長動作させ、これにより、後装作業機20を上昇させる。後装作業機20を下降させる際には、作業機昇降用アクチュエータ22のボトム側から作動油を抜くことで後装作業機20を自重で下降させる。また、作業機昇降用アクチュエータ22から作動油を排油させないことで後装作業機20を所定の高さ位置に保持することができる。
【0069】
図1に示すように、第1油圧系統34は、油圧管路48から分岐してオイルクーラ64に接続されたリターン管路65を有している。該リターン管路65は、第3油圧ポンプ37から第1油圧ポンプ36へ流れる作動油の余剰流を、オイルクーラ64を介して貯留部32に戻すための管路である。本実施形態にあっては、リターン管路65は、オイルフィルタ49の下流側、つまり、油圧管路48における第2油路48bから分岐している。
【0070】
図9に示すように、オイルクーラ64は、エンジン9の前方に配置されている。オイルクーラ64内の作動油は、エンジン9の動力により駆動する冷却ファン66の冷却風によって冷却され、冷却後に貯留部32(ミッションケース32)に戻る。
【0071】
また、図1に示すように、第1油圧系統34は、作業機系の油圧アクチュエータからの戻りの作動油が流通し且つリターン管路65に接続された戻り管路67を有している。具
体的には、戻り管路67は、補助コントロールバルブ59及び油圧取出し部60からの戻りの作動油を、リターン管路65を流通する作動油に合流させる。
【0072】
戻り管路67は、合流ブロック(合流部)68内でリターン管路65に接続されている。合流ブロック68は、図4に示すように、フロントケース32Aの側面に取り付けられている。
【0073】
図1に示すように、合流ブロック68には、逆流防止弁69が設けられている。逆流防止弁69は、戻り管路67とリターン管路65との接続部70よりも上流側においてリターン管路65に設けられている。逆流防止弁69は、接続部70から第3油圧ポンプ37側への作動油の逆流を防止する。
【0074】
図1に示すように、第1油圧系統34は、リターン管路65とは別の管路であるドレン管路71を有している。ドレン管路71は、一端がリターン管路65に接続され、他端が貯留部32と第3油圧ポンプ37との間の吸込み管路72に接続されている。詳しくは、ドレン管路71の一端は、逆流防止弁69の上流においてリターン管路65に接続され、ドレン管路71の他端は、吸込み管路72におけるオイルフィルタ47と第3油圧ポンプ37との間の区間油路72aに接続されている。ドレン管路71には、第3油圧ポンプ37用のリリーフ弁73が設けられている。リリーフ弁73は、第3油圧ポンプ37のリリーフ圧を設定する。つまり、リリーフ弁73は、一端から他端への作動油の流通を許容する。第3油圧ポンプ37から第1油圧ポンプ36へ流れる作動油の余剰流はリリーフ弁73を介して貯留部32にドレンできる。リリーフ弁73の設定圧は、例えば、0.4MPaである。
【0075】
一方、逆流防止弁69の設定圧は、0.02MPaである。つまり、逆流防止弁69の設定圧は、リリーフ弁73の設定圧よりも低く設定されている。したがって、第3油圧ポンプ37の余剰流は、リターン管路65に優先的に流れる。
【0076】
図1に示すように、戻り管路67には、潤滑油路74が接続されている。潤滑油路74は、戻り管路67を流れる戻りの作動油を絞り75を介して後輪用のブレーキ装置における潤滑部(ブレーキディスク等)76に供給する。また、戻り管路67には、リリーフ油路77が接続されている。リリーフ油路77には、オイルクーラ64の保護用の保護リリーフ弁78が設けられている。保護リリーフ弁78の設定圧は、0.5MPaである。
【0077】
ところで、ロードセンシングシステムでは、油圧アクチュエータの不使用時に可変容量ポンプが作動油を吐出しない。そこで、本実施形態のようなリターン管路65がない場合、作動油の冷却用のトロコイドポンプを別途設ける必要がある。そうすると、ポンプの吸込み総量が多くなりすぎることやコスト、搭載スペースの点で問題がある。
【0078】
本実施形態では、第3油圧ポンプ37(チャージ用油圧ポンプ)の余剰流に着目し、第3油圧ポンプ37の余剰流をオイルクーラ64に流すリターン管路65を設けることで、冷却用のポンプを別途設けることなく、作動油の冷却を図ることができる。これにより、油圧システム33をコンパクトに構成することができる。
【0079】
また、第3油圧ポンプ37の余剰流は大流量であるため、ロードセンシングシステム下において使用頻度の増えるエンジン低回転域においても流量を確保しやすい。ただし、第1油圧ポンプ36の使用時には、第3油圧ポンプ37から吐出する作動油の余剰流が減少するため、補助コントロールバルブ59及び油圧取出し部60からの戻りの作動油を、戻り管路67を介してオイルクーラ64に導くことにより、補助コントロールバルブ59及び油圧取出し部60に関しては、連続使用時にも冷却性能を確保することができる。
【0080】
次に、第2油圧系統35について説明する。
図1に示すように、第2油圧系統35は、第2油圧ポンプ79と、アジャスタブルトレッドバルブ80と、OCレギュレータ81と、パワステコントローラ82と、パワーシフトバルブ83と、PTOクラッチバルブ84とを有している。
【0081】
第2油圧ポンプ79は、固定容量形のギヤポンプで構成される。第2油圧系統35は、オープンセンタシステムで構築される。第2油圧ポンプ79の吸込み側の管路85は、区間油路72aにおける戻り管路67との接続部86の上流側に接続されている。第2油圧ポンプ79の吸込み側には、オイルフィルタ87が設けられている。
【0082】
第2油圧ポンプ79の吐出作動油は、アジャスタブルトレッドバルブ80に入力され、アジャスタブルトレッドバルブ80から出力された作動油がOCレギュレータ81に入力される。
【0083】
図3に示すように、アジャスタブルトレッドバルブ80は、後輪4のトレッド幅を調節する左及び右のトレッドシリンダ88を制御する(伸縮させる)。各トレッドシリンダ88は、車体幅方向に伸縮自在な油圧シリンダによって構成されている。左のトレッドシリンダ88Lは左の後輪4L用であり、右のトレッドシリンダ88Rは右の後輪4R用である。アジャスタブルトレッドバルブ80は、左のトレッドシリンダ88Lを制御する制御弁90L、及び右のトレッドシリンダ88Rを制御する制御弁90Rを有している。
【0084】
左及び右のトレッドシリンダ88L、88Rを伸長させるとトレッド幅が広がる方向に左及び右の後輪4L、4Rが移動し、左及び右のトレッドシリンダ88L、88Rを収縮させるとトレッド幅が狭くなる方向に左及び右の後輪4L、4Rが移動する。
【0085】
OCレギュレータ81は、アジャスタブルトレッドバルブ80から高圧の作動油が入力される。また、OCレギュレータ81は、パワステコントローラ82に高圧の作動油を供給し、パワーシフトバルブ83、PTOクラッチバルブ84及びフロントサスペンションバルブ40に制御圧の作動油を供給するように、入力された作動油を分配する。
【0086】
図9に示すように、パワステコントローラ82は、ステアリングホイール5の前方且つ下方に配置されている。
【0087】
図3に示すように、パワステコントローラ82は、左及び右の前輪3を操向操作するステアリングシリンダ(操舵系の油圧アクチュエータ)89を制御する。詳しくは、パワステコントローラ82は、ステアリングホイール5によって操作されて作動油の流れの方向を切り替えるステアリングバルブ91と、ステアリングホイール5の回転の度合いに応じた油量を計量してステアリングシリンダ89に供給するメータリングポンプ92とを有している。
【0088】
図2に示すように、パワーシフトバルブ83は、走行動力伝達系(変速系を含む)の油圧アクチュエータを制御する。走行動力伝達系の油圧アクチュエータは、前進用油圧アクチュエータ93と、後進用油圧アクチュエータ94と、1速用油圧アクチュエータ95と、2速用油圧アクチュエータ96と、3速用油圧アクチュエータ97と、4速用油圧アクチュエータ98と、高速用油圧アクチュエータ99と、低速用油圧アクチュエータ100と、第1前輪駆動用油圧アクチュエータ101と、第2前輪駆動用油圧アクチュエータ102と、後輪デフロック用油圧アクチュエータ103と、前輪デフロック用油圧アクチュエータ104と、を含む。
【0089】
前進用油圧アクチュエータ93は、エンジン9からの動力を前進走行用の動力と後進走行用の動力とに切り換える前後進切換装置105を、前進走行用の動力が伝達される状態に切り換える。後進用油圧アクチュエータ94は、前後進切換装置105を後進走行用の動力が伝達される状態に切り換える。
【0090】
1速用油圧アクチュエータ95は、前後進切換装置からの走行用の動力を1速~4速の4段に変速する主変速装置106を1速状態に切り換える。2速用油圧アクチュエータ96は、主変速装置106を2速状態に切り換える。3速用油圧アクチュエータ97は、主変速装置106を3速状態に切り換える。4速用油圧アクチュエータ98は、主変速装置106を4速状態に切り換える。
【0091】
高速用油圧アクチュエータ99は、主変速装置106からの走行用の動力を高低2段に変速する副変速装置107を高速状態に切り換える。低速用油圧アクチュエータ100は、副変速装置107を低速状態に切り換える。
【0092】
第1前輪駆動用油圧アクチュエータ101は、第1前輪駆動装置108を、前輪3が駆動される状態と、前輪3が駆動されない状態とに切り換える。第1前輪駆動装置108は、副変速装置107から後輪4に伝達される動力から分岐された動力を前輪3に伝達するものであって左右の前輪3が左右の後輪4と同じ周速で駆動されるように前輪駆動用の動力を減速して前輪3に伝える。
【0093】
第2前輪駆動用油圧アクチュエータ102は、第2前輪駆動装置109を、前輪3が駆
動される状態と、前輪3が駆動されない状態とに切り換える。第2前輪駆動装置109は、副変速装置107から後輪4に伝達される動力から分岐された動力を前輪3に伝達するものであって左右の前輪3が左右の後輪4の約2倍の周速で駆動されるように前輪駆動用の動力を増速して前輪3に伝える。
【0094】
後輪デフロック用油圧アクチュエータ103は、左右の後輪4の差動を許容しながら走行用の動力を左右の後輪4に振り分ける後輪用差動装置をデフロックする後輪デフロック機構110を作動させる。
【0095】
前輪デフロック用油圧アクチュエータ104は、左右の前輪3の差動を許容しながら走行用の動力を左右の前輪3に振り分ける前輪用差動装置をデフロックする前輪デフロック機構111を作動させる。
【0096】
パワーシフトバルブ83は、前進用油圧アクチュエータ93を制御する前進用制御弁93Aと、後進用油圧アクチュエータ94を制御する後進用制御弁94Aと、1速用油圧アクチュエータ95を制御する1速用制御弁95Aと、2速用油圧アクチュエータ96を制御する2速用制御弁96Aと、3速用油圧アクチュエータ97を制御する3速用制御弁97Aと、4速用油圧アクチュエータ98を制御する4速用制御弁98Aと、高速用油圧アクチュエータ99を制御する高速用制御弁99Aと、低速用油圧アクチュエータ100を制御する低速用制御弁100Aと、第1前輪駆動用油圧アクチュエータ101を制御する第1前輪駆動用制御弁101Aと、第2前輪駆動用油圧アクチュエータ102を制御する第2前輪駆動用制御弁102Aと、後輪デフロック用油圧アクチュエータ103を制御する後輪デフロック用制御弁103Aと、前輪デフロック用油圧アクチュエータ104を制御する前輪デフロック用制御弁104Aと、を含む。なお、パワーシフトバルブ83は、その他の走行動力伝達系の油圧アクチュエータを制御する制御弁を含んでいてもよい。
【0097】
図3に示すように、PTOクラッチバルブ84は、PTOクラッチ112を作動させるPTO油圧アクチュエータ113を制御し、PTOクラッチ112の断続を制御する。PTOクラッチ112は、エンジン9からの動力をPTO軸24に伝達するPTO系の動力を断続する。
【0098】
図1に示すように、第2油圧系統35は、作動油をOCレギュレータ81から走行動力伝達系の潤滑部(ディスク等)115に供給する潤滑油路114が設けられている。潤滑油路114には、パワステコントローラ82からの戻りの作動油を流す戻し油路116が接続されている。
【0099】
上記構成の油圧システム33にあっては、ロードセンシングシステムで構築される第1油圧系統34とオープンセンタシステムで構築される第2油圧系統35とを併用して構成することにより、油圧システム全体をロードセンシングシステムで構築する場合に比べてコンパクトに構成することができる。また、油圧システムをコンパクト化することで、コンパクトに構成することのできる作業車両1を提供することができる。
【0100】
また。ロードセンシングシステムでは、油圧アクチュエータの同時操作によりポンプの最大流量を使い切った場合、低負荷の油圧アクチュエータに作動油が優先的に供給される特性がある。そのため、第1油圧系統34の油圧アクチュエータ及び第2油圧系統35の油圧アクチュエータをロードセンシングシステム下におくと仮定すると、例えば、低負荷大流量を作業機昇降用アクチュエータ22で使用しているときに走行動力伝達系・操舵系へ作動油の供給が十分にできなくなる虞がある。それを回避するためには、優先弁を複数搭載し、ポンプの吐出流量が飽和した際にも、優先順位の高い順に作動油を供給する構成としなければならないが、そうすると、優先弁の数が多くなるという問題がある。
【0101】
本実施形態では、走行動力伝達系・操舵系は、オープンセンタシステムで構築される第2油圧系統35に配備しているので、前述したような、走行動力伝達系・操舵系へ作動油の供給が十分にできなくなるという不具合は生じなく、優先弁の数が多くなるという問題も生じない。本実施形態にあっては、優先弁の数が少ない(本実施形態では、1個である)ことから、優先弁50が組み込まれる部材である分岐ブロック38もコンパクトに構成できる。また、作動油が通過する優先弁の個数が少ないことから圧損や応答性の面で有利となる。
【0102】
図4図8に示すように、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79は、ミッションケース32の前後方向中途部の側方(右側方)に配置されている。詳しくは、図5に示すように、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79は、ミッドケース32Bの側面(右側面)に取り付けられたギヤケース(伝動機構ケース)117に取り付けられている。第1油圧ポンプ36は、ギヤケース117の後方に配置され、第2油圧ポンプ79は、ギヤケース117の前方に配置されている。言い換えると、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とは、ギヤケース(ギヤ伝動機構118)117を挟んで前後に配置されている。
【0103】
図5に示すように、ギヤケース117は、車体2に収容された伝動軸119からの動力を第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79に伝達するギヤ伝動機構118(伝動機構)を収容し且つ支持する。伝動軸119は、車体2(ミッドケース32B)内に前後方向に延伸して配置されている。伝動軸119は、本実施形態では、エンジン9からの動力をPTO軸24に伝達するPTO推進軸である。
【0104】
図5図6図7に示すように、ギヤ伝動機構118は、伝動ギヤ127と、第1アイドルギヤ120と、第2アイドルギヤ121と、第1ポンプギヤ122と、第2ポンプギヤ123とを有している。伝動ギヤ127、第1アイドルギヤ120、第2アイドルギヤ121、第2ポンプギヤ123及び第1ポンプギヤ122は、この順に、車体2側(ミッドケース32B側)から側方(右方)に向けて車体幅方向に並べて配置されている。言い換えると、伝動軸119からの動力を伝達するギヤ伝動機構118は、車体2側から該車体2の側方に向けて並べて配設された複数のギヤを含む。
【0105】
第1ポンプギヤ122は、車体2から最も遠いギヤであり、第2ポンプギヤ123は、第1ポンプギヤ122よりも車体2に近いギヤである。言い換えると、ギヤ伝動機構118は、車体2から最も遠いギヤである第1ポンプギヤ122と、第1ポンプギヤ122よりも車体2に近いギヤである第2ポンプギヤ123とを含む。
【0106】
図5図6に示すように、伝動ギヤ127、第1アイドルギヤ120は、ミッドケース32B内に配置されている。第2アイドルギヤ121は、ギヤケース117におけるミッドケース32Bへの取り付け部分に対応する位置に配置されている。第1ポンプギヤ122、第2ポンプギヤ123は、ミッドケース32Bの側方且つギヤケース117内に配置されている。
【0107】
伝動ギヤ127は、動力取り出し用のギヤであって伝動軸119に一体回転自在に取り付けられている。第1アイドルギヤ120、第2アイドルギヤ121、第1ポンプギヤ122及び第2ポンプギヤ123は、ギヤケース117に前後方向に延伸する軸心回りに回転自在に支持されている。
【0108】
第1アイドルギヤ120は、伝動ギヤ127に噛合している。第2アイドルギヤ121は、第1アイドルギヤ120と第2ポンプギヤ123との間に設けられ、これら第1アイドルギヤ120及び第2ポンプギヤ123に歯合している。第1ポンプギヤ122は、第2ポンプギヤ123に歯合している。第2ポンプギヤ123は、第2アイドルギヤ121及び第1ポンプギヤ122よりも低い位置に配置されている。
【0109】
図6に示すように、車体2(ミッドケース32B)の側方(右側方)には、車体幅方向に並べて配置された第1軸124及び第2軸125が設けられている。第1軸124は、第1ポンプギヤ122と同心状に設けられ、且つ第1ポンプギヤ122と同軸心回りに一体回転自在である。第2軸125は、第2ポンプギヤ123と同心状に設けられ、且つ第2ポンプギヤ123と同軸心回りに一体回転自在である。したがって、第1軸124及び第2軸125とは、車体2(ミッドケース32B)の側方に車体幅方向に並べて配置されていて伝動軸119からの動力が伝達される。また、第1軸124は、第2軸125よりも車体2から遠い側にある。
【0110】
第1油圧ポンプ36は、第1ポンプギヤ122に対応する位置に配置され、第1軸124によって駆動される。第2油圧ポンプ79は、第2ポンプギヤ123に対応する位置に配置され、第2軸125によって駆動される。言い換えると、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とは、第1油圧ポンプ36が第1軸124によって駆動され且つ第2油圧
ポンプ79が第2軸125によって駆動されるように前後に対面する位置に配置されている。また、第1軸124は、第1油圧ポンプ36の入力軸であり、第2軸125は、第2油圧ポンプ79の入力軸である。
【0111】
なお、伝動軸119から第1軸124及び第2軸125へ動力を伝達する動力伝達は、ギヤ伝動に限定されることはない。
【0112】
上記構成によれば、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とを、第2軸125よりも車体2から遠い側の第1軸124によって第1油圧ポンプ36が駆動され且つ第2油圧ポンプ79が第2軸125によって駆動されるように前後に対面する位置に配置することにより、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79を車体2(ミッドケース32B)に最大限近づけることができ、ポンプとケース(車体2)との隙間という無駄なスペースを最小限にすることができ、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79をコンパクトに配置することができる。
【0113】
即ち、可変容量形ポンプである第1油圧ポンプ36は、固定容量形ギヤポンプである第2油圧ポンプ79と比較して構造が複雑であることに加え、ロードセンシングシステムの構成に必要なLSレギュレータバルブ44や第3油圧ポンプ37と一体化されているためサイズが大きい。それ故、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の配置等を考慮しないと作業車両1の大型化につながるが、本実施形態の第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の配置及び取り付け構造によれば、作業車両1のコンパクト化を図ることができる。
【0114】
図8に示すように、本実施形態の作業車両1では、燃料タンク126の容量確保のため、車体2の左側(第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の非配置側)に大容量の燃料タンク126Lを配置すると共に、車体2の右側(第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の配置側)にも燃料タンク126Rを配置している。右側の燃料タンク126Rは、後部が第2油圧ポンプ79及びギヤケース117の側方まで延びており、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の配置及び取り付け構造をコンパクトにすることにより、燃料タンク126の容量の確保を図ることができる。
【0115】
また、第1ポンプギヤ122の回転方向は、ポンプ入力軸(第1軸124)の先端側から見た軸端視で右回転の第1油圧ポンプ36と回転方向の整合を図っている。また、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とを、別軸かつ対面する位置に搭載しているので、第2油圧ポンプ79も軸端視で右回転の一般的なものを使用することができる。また、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とを、別軸に配置したことで両ポンプのギヤ比を別個に設定できる。
【0116】
また、上記構成では、第2ポンプギヤ123を、第2アイドルギヤ121及び第1ポンプギヤ122よりも低い位置に配置することで、ギヤ伝動機構118の車体幅方向の寸法を小さくすることができ、コンパクトに構成することができる。また、例えば、第2ポンプギヤ123を、第2アイドルギヤ121及び第1ポンプギヤ122よりも高い位置に配置すると、ミッドケース32Bに対するギヤケース117の取り付けを阻害する虞があるが、第2ポンプギヤ123を、第2アイドルギヤ121及び第1ポンプギヤ122よりも低い位置に配置することで、ギヤケース117の取り付けを阻害することがなく、また、ミッションオイルを掻き上げることができる。
【0117】
図4に示すように、第1油圧ポンプ36の吸込み側のオイルフィルタ49は上下方向に延伸するように設けられ、第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87は、上下方向に対して傾斜するように設けられている。本実施形態では、第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87は、後下がり傾斜状に設けられている。第2油圧ポンプ79の入力軸である第2軸125は、第1油圧ポンプ36の入力軸である第1軸124よりも下に位置しているので、例えば、第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87を上下方向に延伸するようにして設けると、第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87の下端が第1油圧ポンプ36の吸込み側のオイルフィルタ49の下端よりも下に位置することとなる。第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87を斜めにすることで、該オイルフィルタ87の下端の高さを第1油圧ポンプ36の吸込み側のオイルフィ
ルタ49の下端の高さ位置に合わせることができ、これにより、第2油圧ポンプ79の吸込み側のオイルフィルタ87の地上高を確保することができる。また、オイルフィルタ87をコンパクトに配置することができる。
【0118】
また、作業機系コントロールバルブを配備した油圧系統と、走行動力伝達系のパワーシフトバルブ及び操舵系のパワステコントローラを配備した油圧系統とをそれぞれ固定容量形のギヤポンプで作動油を供給するオープンセンタシステムで構築した油圧システムを搭載したOC仕様の作業車両と、本実施形態の油圧システム33を搭載したLS仕様の作業車両とを併存させる場合に、油圧システムの構成を一部共通化することができる。そして、上記型式のOC仕様の作業車両と本実施形態の型式のLS仕様の作業車両との油圧システムの構成を共通化することにより、同じ車体等をベースとし、異なる油圧システムを搭載する2種の作業車両(OC仕様の作業車両、LS仕様の作業車両)を安価に容易に製造することができる。
【0119】
なお、本実施形態では、作業機系コントロールバルブとして、前装作業機用コントロールバルブ41、補助コントロールバルブ59、外部コントロールバルブ63及び作業機昇降用コントロールバルブ23を例示したが、これに限定されることはなく、作業機系コントロールバルブは、前装作業機用コントロールバルブ41、補助コントロールバルブ59、外部コントロールバルブ63及び作業機昇降用コントロールバルブ23以外のコントロールバルブを含むものであってもよい。また、作業機系コントロールバルブは、前装作業機用コントロールバルブ41、補助コントロールバルブ59、外部コントロールバルブ63及び作業機昇降用コントロールバルブ23のうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0120】
また、本実施形態では、パワーシフトバルブ83及びパワステコントローラ82の両方が第2油圧ポンプ79によって作動油が供給される第2油圧系統35に配備される構成としたが、これに限定されることはなく、パワーシフトバルブ83及びパワステコントローラ82の少なくとも一方が、第2油圧系統35に配備される構成とされていてもよい。
【0121】
本実施形態の作業車両1は、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプ36と、固定容量形の第2油圧ポンプ79と、作業機系の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ15、作業具シリンダ17、油圧アクチュエータ61、油圧アクチュエータ62及び作業機昇降用アクチュエータ22)を制御する作業機系コントロールバルブ(前装作業機用コントロールバルブ41、補助コントロールバルブ59、外部コントロールバルブ63及び作業機昇降用コントロールバルブ23)と、走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(前進用油圧アクチュエータ93、後進用油圧アクチュエータ94、1速用油圧アクチュエータ95、2速用油圧アクチュエータ96、3速用油圧アクチュエータ97、4速用油圧アクチュエータ98、高速用油圧アクチュエータ99、低速用油圧アクチュエータ100、第1前輪駆動用油圧アクチュエータ101、第2前輪駆動用油圧アクチュエータ102、後輪デフロック用油圧アクチュエータ103、前輪デフロック用油圧アクチュエータ104)を制御するパワーシフトバルブ83と、操舵系の油圧アクチュエータ(ステアリングシリンダ89)を制御するパワステコントローラ82と、を備え、作業機系コントロールバルブは、第1油圧ポンプ36によって作動油が供給される第1油圧系統34に配備され、パワーシフトバルブ83及びパワステコントローラ82の少なくとも一方は、第2油圧ポンプ79によって作動油が供給される第2油圧系統35に配備される。
【0122】
この構成によれば、作業機系コントロールバルブを、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される第1油圧ポンプ36によって作動油が供給される第1油圧系統34に配備し、走行動力伝達系であるパワーシフトバルブ83及び操舵系であるパワステコントローラ82の少なくとも一方を、固定容量形の第2油圧ポンプ79によって作動油が供給される第2油圧系統35に配備しているので、ロードセンシングシステムを取り入れた油圧システムであっても構成を簡素化でき、油圧システムの構成をコンパクトに構成することができる。つまり、油圧システムをロードセンシングシステムとオープンセンタシステムとを併用することで、油圧システム全体をロードセンシングシステムで構築する場合に
比べてコンパクトに構成することができる。また、油圧システムをコンパクト化することで、コンパクトに構成することのできる作業車両1を提供することができる。
【0123】
また、作業車両1は、前部に前装作業機12を装着可能な車体2を備え、作業機系コントロールバルブは、前装作業機12に装備される作業機系の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ15、作業具シリンダ17)を制御する前装作業機用コントロールバルブ41を含む構成である。
【0124】
走行動力伝達系のパワーシフトバルブ83及び操舵系のパワステコントローラ82の少なくとも一方は、固定容量形の油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統35に配備されているので、優先弁の数を抑制しつつ前装作業機用コントロールバルブ41に作動油を供給することができる。
【0125】
また、作業車両1は、作業機(後装作業機20)を装着可能な車体2を備え、作業機系コントロールバルブは、作業機20に装備される作業機系の油圧アクチュエータ61を制御することができる補助コントロールバルブ59を含む構成である。
【0126】
走行動力伝達系のパワーシフトバルブ83及び操舵系のパワステコントローラ82の少なくとも一方は、固定容量形の油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統35に配備されているので、優先弁の数を抑制しつつ補助コントロールバルブ59に作動油を供給することができる。
【0127】
また、作業車両1は、作業機系の油圧アクチュエータと、作業機系コントロールバルブである外部コントロールバルブ63とが装備された作業機(後装作業機20)を装着可能な車体2と、車体2に装備されていて、第1油圧ポンプ36からの作動油を作業機20に対して取り出すことができる油圧取出し部60と、を備え、作業機系コントロールバルブは、作業機20に装備された外部コントロールバルブ63を含む構成である。
【0128】
走行動力伝達系のパワーシフトバルブ83及び操舵系のパワステコントローラ82の少なくとも一方は、固定容量形の油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統35に配備されているので、優先弁の数を抑制しつつ外部コントロールバルブ63に作動油を供給することができる。
【0129】
また、作業車両1は、作業機(後装作業機20)を装着可能な車体2と、車体2に作業機20を装着するための作業機装着機構21と、作業機装着機構21を昇降させるための作業機系の油圧アクチュエータである作業機昇降用アクチュエータ22と、を備え、作業機系コントロールバルブは、作業機昇降用アクチュエータ22を制御する作業機昇降用コントロールバルブ23を含む構成である。
【0130】
走行動力伝達系のパワーシフトバルブ83及び操舵系のパワステコントローラ82の少なくとも一方は、固定容量形の油圧ポンプによって作動油が供給される第2油圧系統35に配備されているので、優先弁の数を抑制しつつ作業機昇降用コントロールバルブ23に作動油を供給することができる。
【0131】
また、第1油圧系統34は、第1油圧ポンプ36の上流側に設けられて第1油圧ポンプ36に作動油を供給する第3油圧ポンプ37と、第3油圧ポンプ37と第1油圧ポンプ36との間の油圧管路48から分岐してオイルクーラ64に接続され、第3油圧ポンプ37から第1油圧ポンプ36へ流れる作動油の余剰流を、オイルクーラ64を介して作動油の貯留部32に戻すためのリターン管路65と、を有する。
この構成によれば、第3油圧ポンプ37の余剰流をオイルクーラ64に流すことで、冷却用のポンプを別途設けることなく、作動油の冷却を図ることができる。
【0132】
また、作業車両1は、作業機(後装作業機20)を装着可能な車体2を備え、第1油圧系統34は、作業機系の油圧アクチュエータからの戻りの作動油が流通し且つリターン管路65に接続された戻り管路67と、戻り管路67とリターン管路65との接続部70よりも上流側においてリターン管路65に設けられ、接続部70から第3油圧ポンプ37側への作動油の逆流を防止する逆流防止弁69と、を有し、作業機系コントロールバルブは、作業機20に装備された作業機系の油圧アクチュエータ61を制御する補助コントロールバルブ59を含み、戻り管路67は、補助コントロールバルブ59からの戻りの作動油を、リターン管路65を流通する作動油に合流させる管路である。
この構成によれば、第1油圧ポンプ36の使用により第3油圧ポンプ37の余剰流が減少した場合でも、補助コントロールバルブ59の使用時の冷却性能を確保することができる。
【0133】
また、第1油圧系統34は、リターン管路65とは別の管路であって、第3油圧ポンプ37から第1油圧ポンプ36へ流れる作動油の余剰流を、リリーフ弁73を介して貯留部32にドレンさせるドレン管路71を有し、逆流防止弁69の設定圧は、リリーフ弁73の設定圧よりも低く設定されている。
この構成によれば、第3油圧ポンプ37の余剰流をオイルクーラ64に流すことができる。
【0134】
また、作業車両1は、ロードセンシング制御によって吐出流量が制御される可変容量形の第1油圧ポンプ36と、固定容量形の第2油圧ポンプ79と、動力源からの動力が伝達される伝動軸119が収容された車体2と、車体2の側方に車体幅方向に並べて配置されていて伝動軸119からの動力が伝達される第1軸124及び第2軸125と、を備え、第1軸124は、第2軸125よりも車体2から遠い側にあり、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とは、第1油圧ポンプ36が第1軸124によって駆動され且つ第2油圧ポンプ79が第2軸125によって駆動されるように前後に対面する位置に配置されている。
【0135】
この構成によれば、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79をコンパクトに配置でき、それにより、コンパクトに構成することのできる作業車両1を提供することができる。
【0136】
また、作業車両1は、伝動軸119からの動力を伝達するギヤ伝動機構118であって、車体2側から該車体2の側方に向けて並べて配設された複数のギヤを含むギヤ伝動機構118、を備え、ギヤ伝動機構118は、車体2から最も遠いギヤである第1ポンプギヤ122と、第1ポンプギヤ122よりも車体2に近いギヤである第2ポンプギヤ123とを含み、第1油圧ポンプ36と第2油圧ポンプ79とは、ギヤ伝動機構118を挟んで前後に配置され、第1軸124は、第1ポンプギヤ122と同軸心回りに一体回転自在に設けられ、第2軸125は、第2ポンプギヤ123と同軸心回りに一体回転自在に設けられている。
【0137】
ギヤ伝動によって第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79に動力を伝達することにより、第1油圧ポンプ36及び第2油圧ポンプ79の取付構造を簡易且つコンパクトに構成することができる。
【0138】
また、ギヤ伝動機構118は、伝動軸119に一体回転自在に設けられた伝動ギヤ127と、伝動ギヤ127に歯合する第1アイドルギヤ120と、第1アイドルギヤ120及び第2ポンプギヤ123に歯合する第2アイドルギヤ121とを含み、第1ポンプギヤ122は、第2ポンプギヤ123に歯合していてもよい。
【0139】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
1 作業車両
2 車体
12 前装作業機
15 作業機系の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ)
17 作業機系の油圧アクチュエータ(作業具シリンダ)
20 作業機(後装作業機)
21 作業機装着機構
22 作業機系の油圧アクチュエータ(作業機昇降用アクチュエータ)
23 作業機系コントロールバルブ(作業機昇降用コントロールバルブ)
32 貯留部
34 第1油圧系統
35 第2油圧系統
36 第1油圧ポンプ
37 第3油圧ポンプ
41 作業機系コントロールバルブ(前装作業機用コントロールバルブ)
48 油圧管路
59 作業機系コントロールバルブ(補助コントロールバルブ)
60 油圧取出し部
61 作業機系の油圧アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
62 作業機系の油圧アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
63 作業機系コントロールバルブ(外部コントロールバルブ)
64 オイルクーラ
65 リターン管路
67 戻り管路
69 逆流防止弁
70 接続部
71 ドレン管路
73 リリーフ弁
79 第2油圧ポンプ
82 パワステコントローラ
83 パワーシフトバルブ
89 操舵系の油圧アクチュエータ(ステアリングシリンダ)
93 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(前進用油圧アクチュエータ)
94 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(後進用油圧アクチュエータ)
95
走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(1速用油圧アクチュエータ)
96 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(2速用油圧アクチュエータ)
97 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(3速用油圧アクチュエータ)
98 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(4速用油圧アクチュエータ)
99 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(高速用油圧アクチュエータ)
100 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(低速用油圧アクチュエータ)
101 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(第1前輪駆動用油圧アクチュエータ)
102 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(第2前輪駆動用油圧アクチュエータ)103 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(後輪デフロック用油圧アクチュエータ)
104 走行動力伝達系の油圧アクチュエータ(前輪デフロック用油圧アクチュエータ)
118 ギヤ伝動機構
119 伝動軸
120 第1アイドルギヤ
121 第2アイドルギヤ
122 第1ポンプギヤ
123 第2ポンプギヤ
124 第1軸
125 第2軸
127 伝動ギヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9