(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130186
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】酸性ガス吸収剤、酸性ガスの除去方法及び酸性ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240920BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240920BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039766
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭子
(72)【発明者】
【氏名】中野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 玲子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亜里
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】高田 典子
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA03
4D002AA09
4D002AB01
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB08
4D002HA08
4D020AA03
4D020AA04
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB25
4D020CC09
4D020CC10
4D020DA03
4D020DB02
4D020DB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸性ガスの吸収量が多く、酸化耐性が強いアミン化合物の提供とそれを含む吸収剤、及び酸性ガスの除去方法及び酸性ガス除去装置を提供する。
【解決手段】式(a1)、または式(a1)の片方の側鎖のみを有するアミン化合物を含む酸性ガス吸収剤、これらの吸収剤を用いる酸性ガスの除去方法及び装置。
[式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素、またはアルキル基であり、ひとつの-CR
2
3に含まれるR
2のうち、少なくとも2つは水素ではなく、pはそれぞれ独立に0または1であり、mは、1~3の数であり、nはそれぞれ独立に、1~4の数である]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(a1)または式(a2):
【化1】
[式中、
R
1はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、
R
2はそれぞれ独立に、水素または炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、ひとつの-CR
2
3に含まれるR
2のうち、少なくとも2つは水素ではない)で表される置換基であり、
R
3は、炭素数4以下の、非置換または置換アルキル基であり、
pはそれぞれ独立に0または1であり、
mは、1~3の数であり、
nはそれぞれ独立に、1~4の数である]
で表される第一のアミン化合物、
(B)式(b):で
【化2】
[式中、R
4はそれぞれ独立に、水素または非置換または置換アルキル基であり、3つのR
4のうち少なくとも一つが水素ではなく、また2つのR
4が相互に連結した環状構造をとってもよい。]
表される第二のアミン化合物、および、
(C)溶媒
を含み、(A)成分の含有率に対する(B)成分の含有率の比B/Aが2.5~15である、酸性ガス吸収剤。
【請求項2】
前記比B/Aが3~12である、請求項1に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項3】
前記nが、2または3である、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項4】
前記mが2である、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項5】
前記pがすべて1である、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項6】
前記酸性ガス吸収剤の全量を基準として、(A)成分の含有率が3~20質量%である、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項7】
(D)酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、及び防食剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項8】
酸性ガスを含有するガスと、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤とを接触させて、前記の酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去することからなる、酸性ガスの除去方法。
【請求項9】
酸性ガスを含有するガスと請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器と
を有し、
前記再生器で再生した前記酸性ガス吸収剤を前記吸収器にて再利用する、酸性ガス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸性ガス吸収剤、酸性ガスの除去方法および酸性ガス除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の一因として二酸化炭素(CO2)濃度の上昇による温室効果 が指摘され、地球規模で環境を守る国際的な対策が急務となっている。CO2の発生は産業活動によるところが大きく、その環境への排出抑制の機運が高まっている。
【0003】
CO2をはじめとする酸性ガスの濃度の上昇を抑制するための技術として、省エネルギー製品の開発、酸性ガスの資源としての利用や隔離貯留させる技術、酸性ガスを排出しな い自然エネルギーや原子力エネルギーなどの代替エネルギーへの転換などがあり、その一 つとして、排出される酸性ガスの分離回収技術が知られている。
【0004】
現在までに研究されてきた酸性ガス分離技術としては、吸収法、吸着法、膜分離法、または深冷法などがある。中でも吸収法は、ガスを大量にかつ効率的に処理するのに適していて経済的であり、除去装置の大型化が容易なので工場や発電所への適用が検討されている。
【0005】
主に、化石燃料を使用する火力発電所などを対象にした方法として、化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)を燃焼する際に発生する排ガスを、化学吸収剤と接触させて、燃焼排 ガス中のCO2を除去して回収する方法、さらに回収されたCO2を貯蔵する方法が知ら れている。また、化学吸収剤を用いてCO2以外に硫化水素(H2S)等の酸性ガスを除去することが提案されている。
【0006】
一般に、吸収法において使用される化学吸収剤としてモノエタノールアミン(MEA) に代表されるアルカノールアミン類が知られている。このようなアルカノールアミン類は1930年代ころから開発されており、現在も使用されている。吸収法に使用される一般的なアルカノールアミンとしては、2-アミノ-2-メチルプロパノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、またはジメチルアミノ-1-メチルエタノールなどがある。
【0007】
これらの従来用いられていたアルカノールアミンを単独で用いた場合、CO2吸収速度が十分でない場合がある。アミン化合物のCO2吸収量が多い場合であっても、CO2吸収速度が遅いと、酸性ガス吸収剤と排ガスとの接触時間を長くする必要があり、処理の効率が悪くなる。このような観点から、CO2吸収速度を改善する検討がなされており、例えば反応促進効果のある化合物の併用などが検討されている。このような観点から、CO2などの酸性ガスの吸収速度がさらに高い、新しい吸収剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alexander K. Voice et al., Energy Procedia 37(2013)2118-2132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本実施形態は、酸性ガスの吸収速度が改善された酸性ガス吸収剤、およびこれを用いた酸性ガスの除去方法ならびに酸性ガス除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により提供される実施形態は以下のとおりである。
[1]
(A)式(a1)または式(a2):
【化1】
[式中、
R
1はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、
R
2はそれぞれ独立に、水素または炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、ひとつの-CR
2
3に含まれるR
2のうち、少なくとも2つは水素ではない)で表される置換基であり、
R
3は、炭素数4以下の、非置換または置換アルキル基であり、
pはそれぞれ独立に0または1であり、
mは、1~3の数であり、
nはそれぞれ独立に、1~4の数である]
で表される第一のアミン化合物、
(B)式(b):で
【化2】
[式中、R
4はそれぞれ独立に、水素または非置換または置換アルキル基であり、3つのR
4のうち少なくとも一つが水素ではなく、また2つのR
4が相互に連結した環状構造をとってもよい。]
表される第二のアミン化合物、および、
(C)溶媒
を含み、(A)成分の含有率に対する(B)成分の含有率の比B/Aが2.5~15
である、酸性ガス吸収剤。
[2]
前記比B/Aが3~12である、[1]に記載の酸性ガス吸収剤。
[3]
前記nが、2または3である、[1]または[2]に記載の酸性ガス吸収剤。
[4]
前記mが2である、[1]~[3]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤。
[5]
前記pがすべて1である、[1]~[4]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤。
[6]
前記酸性ガス吸収剤の全量を基準として、(A)成分の含有率が3~20質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤。
[7]
酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、及び防食剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤。
[8]
酸性ガスを含有するガスと、[1]~[7]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤とを接触させて、前記の酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去することからなる、酸性ガスの除去方法。
[9]
酸性ガスを含有するガスと[1]~[7]のいずれかに記載の酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器と
を有し、
前記再生器で再生した前記酸性ガス吸収剤を前記吸収器にて再利用する、酸性ガス除去装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の実施態様では、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明するが、本発明の実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、硫化水素等、その他の酸性ガスに関しても同様の効果を得ることができる。実施態様による酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素、硫化水素等の酸化性ガスの吸収に特に適している。
【0014】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、特定のアミン化合物の組み合わせと溶媒とを含むものである。ここでアミン化合物の組み合わせは、以下に説明する(A)第一のアミン化合物と(B)第二のアミン化合物との組み合わせである。
【0015】
<(A)第一のアミン化合物>
実施形態による酸性ガス吸収剤は、特定の構造を有する第一のアミン化合物(以下、(A)成分ということがある)を含む。(A)成分は、特定の構造を有するジアミン化合物である。実施形態に用いることができる環状ジアミン化合物のひとつは、式(a1)で表されるものである。
【化3】
[式中、
R
1はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、
R
2はそれぞれ独立に、水素または炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、ひとつの-CR
2
3に含まれるR
2のうち、少なくとも2つは水素ではない)で表される置換基であり、
pはそれぞれ独立に0または1であり、
mは、1~3の数であり、
nはそれぞれ独立に、1~4の数である]
【0016】
より具体的には、R1は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であり、R2は、水素、メチル基、エチル基である。また、nは1~4であり、2~3が好ましく、mは1~3であり、2が好ましい。
このような式(a1)で表されるアミン化合物の具体的な例として、以下のものが挙げられる。
【0017】
【0018】
【0019】
実施形態による酸性ガス吸収剤に用いることができる、(A)成分のもうひとつは、式(a2)で表されるものである。
【0020】
【化5】
[式中、
R
1はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、
R
2はそれぞれ独立に、水素または炭素数3以下の、非置換または置換アルキル基であり、ひとつの-CR
2
3に含まれるR
2のうち、少なくとも2つは水素ではない)で表される置換基であり、
R
3は、炭素数4以下の、非置換または置換アルキル基であり、
pはそれぞれ独立に0または1であり、
mは、1~3の数であり、
nはそれぞれ独立に、1~4の数である]
【0021】
より具体的には、R1は、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基であり、R2は、水素、メチル基、エチル基であり、R1は、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基である。また、nは1~4であり、2~3が好ましく、mは1~3であり、2が好ましい。
【0022】
このような式(a2)で表されるアミン化合物の具体的な例として、以下のものが挙げられる。
【0023】
【0024】
【0025】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、(A)成分として、式(a1)または(a2)のいずれかを含むものである。こここで、式(a1)で表される化合物を2種類以上組み合わせてもよく、式(a2)で表される化合物を2種類以上組み合わせてもよく、さらには、式(a1)と式(a2)の化合物を組み合わせてもよい。なお、式(a1)または(a2)の化合物の製造方法は後述するが、それらの製造過程においては式中のpが1のものと、pが0のものとが混在した混合物となることがある。そのような場合、それを分離せずに混合物のまま、実施形態による酸性ガス吸収剤に用いることもできる。
【0026】
<(B)第二のアミン化合物>
実施形態による酸性ガス吸収剤は、(A)成分のほかに、下記の式(b)で表される第二のアミン化合物(以下、(B)成分ということがある)を含む。
【0027】
【化7】
[式中、R
4はそれぞれ独立に、水素または非置換または置換アルキル基であり、3つのR
4のうち少なくとも一つが水素ではなく、また2つのR
4が相互に連結した環状構造をとってもよい。]
【0028】
R4の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、またはヒドロキシオクチル基、アミノプロピル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基、アミノヘプチル基、またはアミノシオクチル基などが挙げられる。また、ふたつのR4が相互に連結して、ピペラジン環、ピロリジン環、モルホリン環、ピペリジン環などを形成することもできる。
【0029】
式(b)で表されるアミン化合物の具体例としては、
1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEPZ)、
1-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPZ)、
1-(2-イソプロピルアミノエチル)ピペラジン(IPAEPZ)、
1,4-ビス[3-アミノプロピル]ピペラジン、
N-イソプロピルジエタノールアミン、
N-イソプロピルジプロパノールアミン、
N-イソプロピルジブタノールアミン、
N-イソプロピルジペンタノールアミン、
N-イソプロピルジヘキサノールアミン、
3-[(2-ヒドロキシエチル)(プロパン-2-イル)アミノ]プロパン-1-オール、
4-[(2-ヒドロキシエチル)(プロパン-2-イル)アミノ]ブタン-1-オール、5-[(2-ヒドロキシエチル)(プロパン-2-イル)アミノ]ペンタン-1-オール、
6-[(2-ヒドロキシエチル)(プロパン-2-イル)アミノ]ヘキサン-1-オール、
N-sec-ブチルジエタノールアミン、
N-sec-ブチルジプロパノールアミン、
N-sec-ブチルジブタノールアミン、
N-sec-ブチルジペンタノールアミン、
N-sec-ブチルジヘキサノールアミン、
3-[(2-ヒドロキシエチル)(ブタン-2-イル)アミノ]プロパン-1-オール、4-[(2-ヒドロキシエチル)(ブタン-2-イル)アミノ]ブタン-1-オール、
5-[(2-ヒドロキシエチル)(ブタン-2-イル)アミノ]ペンタン-1-オール、6-[(2-ヒドロキシエチル)(ブタン-2-イル)アミノ]ヘキサン-1-オール、N-シクロペンチルジエタノールアミン、
N-シクロペンチルジプロパノールアミン、
N-シクロペンチルジブタノールアミン、
N-シクロペンチルジペンタノールアミン、
N-シクロペンチルジヘキサノールアミン、
3-[(2-ヒドロキシエチル)(シクロペンチル)アミノ]プロパン-1-オール、
4-[(2-ヒドロキシエチル)(シクロペンチル)アミノ]ブタン-1-オール、
5-[(2-ヒドロキシエチル)(シクロペンチル)アミノ]ペンタン-1-オール、
6-[(2-ヒドロキシエチル)(シクロペンチル)アミノ]ヘキサン-1-オール、
2-アゼチジンメタノール、
2-(2-アミノエチル)アゼチジン、
2-ピロリジンメタノール、
2-(2-アミノエチル)ピロリジン、
2-ピペリジンメタノール、
3-ピペリジンエタノール、
2-(2-アミノエチル)ピロリジン、
2-(ヒドロキシメチル)ピペラジン、
3-ヒドロキシピロリジン、
3-ピロリジンメタノール、
2-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、
4-ピペリジンエタノール、
3-ヒドロキシピペリジン、
4-ヒドロキシピペリジン、
4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、および
3-アミノピペリジン
など挙げられる。なお、追加アミン化合物はこれらに限定されるわけではない。
【0030】
これらのうち、
1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、
1-(2-アミノエチル)ピペラジン、
1,4-ビス[3-アミノプロピル]ピペラジン、
N-イソプロピルジエタノールアミン、
N-イソプロピルジプロパノールアミン、
3-[(2-ヒドロキシエチル)(プロパン-2-イル)アミノ]プロパン-1-オール、
N-sec-ブチルジエタノールアミン、
N-sec-ブチルジプロパノールアミン、
N-sec-ブチルジブタノールアミン、
3-[(2-ヒドロキシエチル)(ブタン-2-イル)アミノ]プロパン-1-オール、N-シクロペンチルジエタノールアミン、
N-シクロペンチルジプロパノールアミン、および
3-[(2-ヒドロキシエチル)(シクロペンチル)アミノ]プロパン-1-オール、
が好ましい。
【0031】
<アミン化合物の配合比>
実施形態による酸性ガス吸収剤は、上記した(A)成分と(B)成分とを含むものであるが、その配合比にもひとつの特徴がある。具体的には、実施形態による酸性ガス吸収剤において(A)成分の含有率に対する(B)成分の含有率の比B/Aが2.5~15であり、それによって優れた二酸化炭素など酸性ガスの吸収速度を実現している。比B/Aが3~12であると酸性ガスの吸収速度がさらに改善されるので好ましい。比B/Aは5~12であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。
【0032】
実施形態による酸性ガス吸収剤に含まれる(A)成分の含有率は、酸性ガス吸収剤の総質量を基準として3~20質量%であることが好ましく、3~12質量%であることがより好ましい。また、(B)成分の含有率は、(A)成分の含有率と、比B/Aとから決まるが、実施形態による酸性ガス吸収剤に含まれる(B)成分の含有率は、一般的には20~60質量%であり、25~50質量%であることがより好ましい。
【0033】
また、酸性ガス吸収剤に含まれる(A)成分と(B)成分の合計含有率は、10~60質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。
【0034】
一般に、アミン化合物の合計含有率が高い方が単位容量当たりの二酸化炭素の吸収量、脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、脱離速度が速いため、エネルギー消費量や処理効率の面においては好ましい。その一方で、酸性ガス吸収剤の粘度の上昇を防ぎ、酸化耐久性を改善するためには、アミン化合物の合計含有率が一定以下であることが好ましい。
【0035】
<(C)溶媒>
実施形態による酸性ガス吸収剤は、(A)成分および(B)成分に加えて、溶媒を含み、前記したアミン化合物が溶解または分散されている。溶媒としては、水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒、例えば水性溶媒を用いることができる。安全性やコストの観点から、溶媒として水または水性溶媒を用いることが好ましい。しかしながら、アミン化合物などの溶解性を改善するために、有機溶媒や、比較的有機溶媒の含有量が多い混合溶媒を用いることもできる。水性溶媒は、主として水を含んでなり、少量の有機溶媒を含むものである。ただし、有機溶媒の沸点が低いと、酸性ガス吸収装置内において揮発して、装置の損傷の原因となるおそれもある。このため、有機溶媒は、水の沸点、すなわち100℃以上である。溶媒として水を用いる時、その含有率は、酸性ガス吸収剤の総質量を基準として、好ましくは40~90質量%、特に好ましくは50~80質量%、である。水の含有率がこの範囲内である場合、吸収剤の粘度の上昇を抑制し、また二酸化炭素を吸収する際における泡立ちを抑制する点で好ましい。また、水性溶媒は少量の有機溶媒を含むが、その含有率は酸性ガス吸収剤を基準として1質量%以下であることが好ましい。
【0036】
<(D)添加剤>
実施形態による酸性ガス吸収剤は、任意成分として、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、防食剤等の添加剤をさらに含むことができる。
【0037】
酸化防止剤の好ましい具体例としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、二酸化硫黄、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。酸化防止剤を用いる場合、酸性ガス吸収剤の総質量を基準とした含有率は、好ましくは0.01~1質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%、である。
【0038】
酸化防止剤は、酸性ガス吸収剤の劣化を防止し、その寿命を向上させることができる。消泡剤の好ましい具体例としては、例えばシリコーン系消泡剤、有機系消泡剤を挙げることができる。消泡剤を用いる場合、酸性ガス吸収剤の総質量を基準とした含有率は、好ましくは0.00001~0.001質量%、特に好ましくは0.0005~0.001質量%、である。消泡剤は、酸性ガス吸収剤の泡立ちを防止し、酸性ガスの吸収効率や離脱効率の低下を抑制し、酸性ガス吸収剤の流動性ないし循環効率の低下等を防止することができる。
【0039】
防食剤の好ましい具体例としては、例えばリン酸エステル類、トリルトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類を挙げることができる。防食剤を用いる場合、酸性ガス吸収剤の総質量を基準とした含有率は、好ましくは0.00003~0.0008質量%、特に好ましくは0.00005~0.005質量%、である。このような防食剤は、プラント設備の腐蝕を防止し、その寿命を向上させることができる。
【0040】
なお、実施形態による酸性ガス吸収剤は、低沸点の材料、具体的には沸点が100℃未満の化合物を含まないことが好ましい。酸性ガス吸収剤は、酸性ガスの除去、または酸性ガスの回収の過程において加熱されるため、低沸点の材料は蒸発して大気中に放出されたり、その濃度が低下して酸性ガスの除去効率が変化してしまうためである。具体的には、沸点が100℃未満の材料の含有率は、酸性ガス吸収剤の総質量を基準として1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
以上のとおり、本実施形態の酸性ガス吸収剤によれば、二酸化炭素等の酸性ガスの吸収速度を改善することができる。またアミン化合物(a1)または(a2)は、比較的放散性が小さいため、それを含まない酸性ガス吸収剤に比較するとの放散性を小さくすることができる傾向がある。
【0042】
<酸性ガスの除去方法>
本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、前記の第 一または第二の酸性ガス吸収剤とを接触させ、前記の酸性ガスを含むガスから酸性ガスを 除去するもの、である。
【0043】
本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法は、上述の本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤へ対して酸性ガスを吸収させる工程(吸収工程)、およびこの酸性ガスを吸収した上述の本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させる工程を、基本的な構成とする。即ち、本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法の基本的な構成は、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを含有するガス(例えば、排ガス等)を接触させて、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを吸収させる工程(酸性ガス吸収工程)と、上記の酸性ガス吸収工程で得られた、酸性ガスが吸収された酸性ガス吸収剤を加熱して、酸性ガスを脱離して、除去する工程(酸性ガス分離工程)とを含む。
【0044】
酸性ガスを含むガスを、上記の酸性ガス吸収剤を含む水溶液に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、酸性ガス吸収剤中に酸性ガスを含むガスをバブリングさせて、吸収剤に酸性ガスを吸収させる方法、酸性ガスを含むガス気流中に酸性ガス吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧ないしスプレー方式)、あるいは磁製や金属網製の充填材の入った吸収器内で酸性ガスを含むガスと酸性ガス吸収剤とを向流接触させる方法などによって行うことができる。
【0045】
酸性ガスを含むガスを水溶液に吸収させる時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常、室温から60℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以下、特に好ましくは20~45℃、である。低温度で行うほど、酸性ガスの吸収量は増加するが、処理温度の下限値は、プロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。
【0046】
酸性ガス吸収時の圧力は、通常、ほぼ大気圧である。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
【0047】
酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、純粋なあるいは高濃度の二酸化炭素を回収する方法としては、蒸留と同じく酸性ガス吸収剤を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製や金属網製の充填材の入った再生塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。これにより、カルバミン酸アニオンや重炭酸イオンから酸性ガスが遊離して放出される。
【0048】
酸性ガス分離時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常70℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは90~120℃、である。温度が高いほど、酸性ガスの脱離量は増加するが、温度を上げると吸収剤の加熱に要するエネルギーが増すため、その温度はプロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。
【0049】
酸性ガス分離時の圧力は、通常、1~3気圧程度とすることができる。分離性能を高めるためより低い圧力まで減圧することもできるが、減圧のために要するエネルギー消費を抑えるためこの範囲で行うのが好ましい。酸性ガスを分離した後の酸性ガス吸収剤は、再び酸性ガス吸収工程に送られて循環使用(リサイクル)することが45できる。また、酸性ガス吸収の際に生じた熱は、一般的には水溶液のリサイクル過程において再生器に注入される水溶液の予熱のために熱交換器で熱交換されて冷却される。
【0050】
このようにして回収された酸性ガスの純度は、通常、95~99体積%程度と極めて純度が高いものである。この純粋な酸性ガスあるいは高濃度の酸性ガスは、化学品、あるい は高分子物質の合成原料、食品冷凍用の冷剤等として用いることができる。その他、回収した酸性ガスを、現在技術開発されつつある地下等へ隔離貯蔵することも可能である。
【0051】
上述した工程のうち、酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離して酸性ガス吸収剤を再生する工程が最も多量のエネルギーを消費する部分であり、この工程で、全体工程の約50~80%程度のエネルギーが消費されることがある。従って、酸性ガス吸収剤の再生工程における消費エネルギーを低減することにより、酸性ガスの吸収分離工程のコストを低減でき、排気ガスからの酸性ガス除去を、経済的に有利に効率良く行うことができる。本実施形態によれば、上記の実施形態の酸性ガス吸収剤を用いることで、酸性ガス分離(再生工程)のために必要なエネルギーを低減することができる。このため、二酸化炭素の吸収分離工程を、経済的に有利な条件で効率良く行うことができる。
【0052】
また、実施形態に係るアミン化合物の組み合わせは、従来より酸性ガス吸収剤として用いられてきた2-アミノエタノール等のアルカノールアミン類を単独で使用した場合と比較して、炭素鋼などの金属材料に対し、腐食防止性が改善されている。したがって、このような酸性ガス吸収剤を用いた酸性ガス除去方法とすることで、例えばプラント建設において、高コストの高級耐食鋼を用いる必要がなくなり、コスト面で有利である。
【0053】
<酸性ガス除去装置>
本発明の実施形態による酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと、上記した酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより前記の酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、前記の再生器で再生した前記の酸性ガス吸収剤を前記の吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置である。
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。
【0054】
この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含むガス(例えば、排気ガス)と酸性ガス吸収 剤とを接触させ、この酸性ガスを含むガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収器2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸収剤を再生する 再生器3と、を備えている。以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
【0055】
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。
この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含有するガス(例えば、排気ガス)と酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収器2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸収剤を再生する再生器3と、を備えている。以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
【0056】
図1に示すように、火力発電所等から排出される燃焼排ガス等の、二酸化炭素を含む排気ガスが、ガス供給口4を通って吸収器2下部へ導かれる。この排気ガスは、吸収器2に押し込められ、吸収器2上部の酸性ガス吸収剤供給口5から供給された酸性ガス吸収剤と接触する。酸性ガス吸収剤としては、上述した実施形態に係る酸性ガス吸収剤を使用する。
【0057】
また、この酸性ガス吸収剤には、上記のアミン系化合物、および水などの溶媒の他に、二酸化炭素の吸収性能を向上させる含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等、その他化合物を任意の割合で含有していてもよい。
【0058】
このように、排気ガスが酸性ガス吸収剤と接触することで、この排気ガス中の二酸化炭素が酸性ガス吸収剤に吸収され除去される。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、ガス排出口6から吸収器2外部に排出される。
【0059】
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤は、リッチ液ポンプ8により熱交換器7に送液され、さらに再生器3に送液される。再生器3内部に送液された酸性ガス吸収剤は、再生器3の上部から下部に移動し、この間に、酸性ガス吸収剤中の酸性ガスが脱離し、酸性ガス吸収剤が再生される。
【0060】
再生器3で再生した酸性ガス吸収剤は、リーン液ポンプ9によって熱交換器7、吸収剤冷却器10に送液され、酸性ガス吸収剤供給口5から吸収器2に戻される。
【0061】
一方、酸性ガス吸収剤から分離された酸性ガスは、再生器3上部において、還流ドラム11から供給された還流水と接触し、再生器3外部に排出される。
【0062】
二酸化炭素が溶解した還流水は、還流冷却器12で冷却された後、還流ドラム11において、二酸化炭素を伴う水蒸気が凝縮した液体成分と分離される。この液体成分は、回収酸性ガスライン13により酸性ガス回収工程に導かれる。一方、酸性ガスが分離された還流水は再生器3に送液される。
【0063】
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、酸性ガスの吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い酸性ガスの吸収除去を行うことが可能となる。
【0064】
また、酸性ガスが分離された還流水は、還流水ポンプ14で再生器3に送液される。本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、酸性ガスの吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い酸性ガスの吸収除去を行うことが可能となる。
【0065】
以下、本発明の実施形態について例を用いて更に詳細に説明する。
【0066】
[合成例]1,4-ビス(2-イソプロピルアミノエチル)ピペラジン(a1-1)の合成
(i)1-クロロ-2-(N-イソプロピル)アミノ)エタン(M1)の合成
ビーカーに水位酸化ナトリウム36.4g(0.91mol)を測りとり、水で溶解させ、溶液を300mlとし、その中に上記の方法で合成した1-クロロ-2-(N-イソプロピル)アミノ)エタン・塩酸塩(2・HCl)0.6molを加えてよく攪拌し溶解させたのち、エーテルで3回抽出し、エーテル相を無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、エーテルが少し残った状態まで濃縮して、1-クロロ-2-(N-イソプロピル)アミノ)エタン(M1)を得た。(ただし、エーテルをすべて除くと化合物2が徐々に自己分解反応を起こす。)
【0067】
合成した化合物については、400MHz NMR装置は、JEOL社製の機種JMTC0-400/54/SS、JELO型式NM-SCM40SS/AL)を用いて測定を行い、化合物を同定した。
【0068】
M1のNMRスペクトル
1H-NMR,(CDCl3、ppm) δ:1.08(d、6H、J=6.4Hz)、2.84(m、1H)、2.95(t、2H、J=5.7Hz)、3.66(t,2H,J=5.7Hz)、
13C-NMR(CDCl3、ppm) δ:22.95、45.12、48.02、48.45
【0069】
(ii)1,4-ビス(2-イソプロピルアミノエチル)ピペラジン(a1-1)の合成 次に、還流冷却管、機械的攪拌器、温度計、滴下ロートを取りつけた4口フラスコにピペラジン51.71g(0.60mol)、トリエチルアミン72.88g(0.72mol)とアセトニトリル200mlを加え、加熱して70℃にした。そこに、滴下ロートから上記の方法で合成した1-クロロ-2-(N-イソプロピル)アミノ)エタン(M1)0.6molのエーテル溶液にアセトニトリル100mlを加えエーテル除いてと溶媒交換を行ったものを加えた。滴下後、70℃で13時間反応させたのち、室温に冷却した。反応混合物から沈殿物を濾過し取り除き、ろ液を濃縮したのち、濃縮物をエーテルに再溶解させ、沈殿物をさらに濾過した。ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濃縮して反応混合物(橙色液体)を37.49g得た。この反応生成物をカラムクロマログラフ(活性アルミナ、展開溶媒体積比でクロロホルム:ヘキサン=85:15)で精製して、目的化合物(a1-1)を黄色透明液体15.62g(原料2を基準で19.8%)と、1-(2-イソプロピルアミノエチル)ピペラジン(M2)を黄色透明液体9.75g(9.5%)を得た。
【0070】
a1-1のNMRスペクトル
1H-NMR,(CDCl3、ppm)δ:1.06(d、12H、J=5.9Hz)、2.49(t、4H、J=6.4Hz)、2.4~2.7(m、8H)、2.69(t,4H,J=6.4Hz)、2.76(m、2H)
13C-NMR(CDCl3、ppm)δ:23.03、44.13、48.90、53.30、58.04
【0071】
M2のNMRスペクトル
1H-NMR,(CDCl3、ppm) δ:1.07(d、6H、J=6.4Hz)、2.48(t、2H、J=6.4Hz)、2.3~2.6(m、4H)、2.70(t,2H、J=6.4Hz)、2.78(m,1H)、2.89(t、J=6.4Hz、4H)、
13C-NMR(CDCl3、ppm) δ:23.07、44.97、46.20、48.92、54.69、58.72
【0072】
・1,4-ビス[3-(N-イソプロピルアミノ)プロピル]ピペラジン(a1-2)の合成
アルゴン導入管をつけた還流冷却管、機械的攪拌器、温度計、滴下ロートを取りつけた4口フラスコにアルゴン雰囲気下で1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン100.33g(0.500mol)、炭酸カリウム165.9g(1.20mol)、無水アセトニトリル200mlを加えた。約70℃に加熱した。そこに、滴下ロートから2-ブロモプロパン147.7g(1.18mol)を無水アセトニトリル50mlに溶かした溶液を滴下する。滴下後、70℃で8h反応させたのち、2-ブロモプロパン36.94g(0.30mol)を無水アセトニトリル50mlに溶解させた溶液をさらに追加滴下した。さらに、70℃で12時間反応させ、室温に冷却した。反応混合物から沈殿物を濾過し取り除き、ろ液を濃縮したのち、濃縮物をエーテルに再溶解させ、沈殿物をさらに濾過した。ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濃縮して1,4-ビス[3-(N-イソプロピルアミノ)プロピル]ピペラジン(a1-2)の淡黄色透明液体を120.7g(収率84.7%)得た。
【0073】
a1-2のNMRスペクトル
1H-NMR,(CDCl3、ppm) δ:1.05(d、6H、J=6.4Hz)、1.67(m、4H)、2.39(t、2H、J=7.3Hz)、2.3~2.6(m、8H)、2.63(t,2H、J=7.1Hz)、2.78(m,H)
13C-NMR(CDCl3、ppm) δ:22.88、27.27、46.31、48.63、55.22、57.08
【0074】
1,4-ビス[3-(N-sec-ブチルアミノ)プロピル]ピペラジン(a1-3)の合成
アルゴン導入管をつけた還流冷却管、機械的攪拌器、温度計、滴下ロートを取りつけた4口フラスコにアルゴン雰囲気下で1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン100.33g(0.500mol)、炭酸カリウム165.8g(1.20mol)、無水アセトニトリル200mlを加えた。約70℃に加熱した。そこに、滴下ロートから2-ブロモブタン164.54g(1.18mol)を無水アセトニトリル50mlに溶かした溶液を滴下する。滴下後、70℃で24h反応させたのち、室温に冷却した。反応混合物から沈殿物を濾過し取り除き、沈殿物をクロロホルムで洗浄した後ろ液を濃縮した。その濃縮物をヘキサンに再溶解さ沈殿物を濾過し取り除き、ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、ろ液を濃縮した。この反応生成物をカラムクロマログラフ(シリカ、展開溶媒体積比ヘキサン)で分離し、濃縮して1,4-ビス[3-(N-sec-ブチルアミノ)プロピル]ピペラジン(a1-3)の淡黄色透明液体を95.2g(収率%)得た。化合物は、NMRによって同定した。
【0075】
a1-3のNMRスペクトル
1H-NMR,(CDCl3、ppm) δ:0.88(t、6H、J=7.3Hz)、1.02(d、6H、6.9Hz)、1.30(m、2H)、1.47(m、2H)、1.67(m、4H)、2.2~2.9(m、14H)、2.39(t,4H、J=7.3Hz)、
13C-NMR(CDCl3、ppm) δ:10.34、19.83、27.36、29.53、46.21、53.33、54.74、57.21
【0076】
1-イソプロピル-4-[2-(N-イソプロピルアミノ)エチル]ピペラジン(a2-1)の合成
アルゴン導入管をつけた還流冷却管、温度計、敵下ロート及び機械的攪拌器を取り付けた4口フラスコに1-(2-アミノエチル)ピペラジン38.76g(0.300mol)を加え、無水アセトニトリル150mlを加えて溶解させる。その中に炭酸カリウム(K2CO3)99.59 g(0.720mol)を加える。アルゴン雰囲気下、室温で無水アセトニトリル40mlに溶解させた2-ブロモプロパン49.29g(0.401mol)を敵下ロートで徐々に加えた。滴下終了後、オイルバスで加熱し65℃で4時間反応させが、反応溶液をほとんど進行していないことが室温に冷却した後、沈殿物をろ過し、沈殿物はクロロホルムで洗浄して、洗浄液は先ほどのろ液と合わせ、そのろ液をエバポレータで溶媒を濃縮した。その残留物にジエチルエールを加えて溶解させ、ろ過した。ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレータで溶媒を濃縮し、生成物として薄い黄色透明の液体51.17gを得た。さらに、減圧蒸留により精製し、蒸留成分(蒸留温度85-89℃(220Pa))で生成物(15.6g)を得た。
【0077】
1H-NMR(CDCl3、ppm) δ:1.06(d、J=6.7Hz、6H)、1.09(d,J=6.2Hz、6H)、2.4~2.8(m、14H)
13C-NMR(CDCl3、ppm) δ 18.62、22.84、44.07、48.67、48.82、53.34、54.34、58.03
【0078】
[実施例1~26、比較例1~18]
合成例で示したとおりに合成したアミン(a1-1~a1-3)、2-(N-メチルアミノ)エタノール(MEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEPZ)、1-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPZ)、および1-(2-イソプロピルアミノエチル)ピペラジン(IPAEPZ)を用いて、表1に示すとおりの濃度で水に溶解させ、酸性ガス吸収剤とした。
【0079】
[酸性ガス吸収速度の評価]
酸性ガス吸収剤を試験管に充填して40℃に加熱し、その酸性ガス吸収剤に二酸化炭素(CO2)10体積%、窒素(N2)ガス90体積%含む混合ガスを流速500mL/minで通気した。試験管出口でのガス中の二酸化炭素(CO2)濃度を赤外線式ガス濃度測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「CGT-700」)を用いて測定し、吸収性能を評価した。得られた吸収曲線の測定開始から10分後の時点での吸収曲線の傾きを吸収速度とした。得られた結果は、表1―1および1-2に示したとおりである。
【0080】
【0081】
【0082】
[結果]
以上の結果から明らかなように、従来の酸性ガス吸収剤に比べて、実施形態による酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素の吸収速度が著しく改善されていることが明らかである。
【0083】
以上の通り、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…酸性ガス除去装置、2…吸収器、3…再生器、4…ガス供給口、5…酸性ガス吸収剤供給口、6…ガス排出口、7…熱交換器、8…リッチ液ポンプ、9…リーン液ポンプ、10…吸収剤冷却器、11…還流ドラム、12…還流冷却器、13…回収酸性ガス炭素ライン