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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130195
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】スタッド係止具
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/00 20060101AFI20240920BHJP
   F16B 21/06 20060101ALI20240920BHJP
   F16B 37/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16B37/00 Z
F16B21/06 A
F16B37/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039790
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山尾 宜道
(72)【発明者】
【氏名】鵜生 晃寿
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB03
3J037DA04
3J037DB01
3J037DC01
(57)【要約】
【課題】スタッドボルトを低い挿入力で取り付けることができるとともに、スタッドボルトを高い保持力で保持することができるスタッド係止具を提供する。
【解決手段】スタッド係止具1が、土台部11と、係止部12と、を備え、係止部12が、一対の係止片121と、当該一対の係止片121を繋ぐとともに、スタッドボルト2の挿入時にネジ部分22の先端部221に押されると一対の係止片121を挿入方向D11に牽引する連結帯部122と、を備え、土台部11が、連結帯部122によって牽引される一対の係止片121それぞれを斜めのガイド方向D14にガイドして挟持位置に位置付ける一対のガイド部115と、挟持位置に達した一対の係止片121それぞれの係止側ロック部121dが係合する一対の土台側ロック部116と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト挿入孔が設けられた天板部分、当該天板部分と対面する底板部分、及び、前記天板部分と前記底板部分を繋ぐ側板部分を有する土台部と、
前記土台部の内側に取り付けられ、前記ボルト挿入孔を貫通するスタッドボルトのネジ部分にネジ係止可能な係止部と、を備え、
前記係止部が、
前記ネジ部分にネジ係止可能なネジ山が各々に形成され、前記ネジ部分をネジ径方向に挟持可能で、且つ挟持位置において前記土台部に係合可能な係止側ロック部が各々に形成された複数の係止片と、
前記複数の係止片における前記スタッドボルトの挿入方向の前方側の端部どうしを繋ぐとともに、前記スタッドボルトの挿入時に前記ネジ部分の先端部に押される可撓性の帯状部位であり、前記先端部に押されると前記複数の係止片を前記挿入方向に牽引する連結帯部と、を備え、
前記土台部が、
前記連結帯部によって前記挿入方向に牽引される前記複数の係止片それぞれを、前記ネジ部分から離れた離隔位置から、前記挿入方向に進むにつれて前記ネジ部分へと近づく斜めのガイド方向にガイドして前記挟持位置に位置付ける複数のガイド部と、
前記挟持位置に達した前記複数の係止片それぞれの前記係止側ロック部が係合する複数の土台側ロック部と、を備えたことを特徴とするスタッド係止具。
【請求項2】
前記複数の係止片それぞれが、前記連結帯部の幅方向を厚み方向とし、前記ネジ部分との対面側に前記ネジ山が形成されたブロック片であって、前記厚み方向の表裏面それぞれに前記ガイド方向に延在するガイド溝が形成されたものであり、
前記複数のガイド部それぞれが、前記ガイド方向に延在して端縁が前記ガイド溝に嵌入して前記複数の係止片それぞれを前記ガイド方向にガイドするガイドリブを、前記端縁どうしの間に前記複数の係止片それぞれを挟むように一対有していることを特徴とする請求項1に記載のスタッド係止具。
【請求項3】
前記複数の係止片それぞれが、前記連結帯部の幅方向を厚み方向とし、前記ネジ部分との対面側に前記ネジ山が形成されたブロック片であって、前記係止側ロック部が、前記厚み方向の表裏面それぞれから突出する一対の係止爪を有しており、
前記複数の土台側ロック部それぞれが、前記複数の係止片それぞれにおける前記係止側ロック部の形成部分を相互間に挟むように対面配置された一対の対面壁における各対向面に前記ガイド方向と交差して延在するように形成され、前記ガイド方向に進んできた前記一対の係止爪が係合可能な一対の段差部を有していることを特徴とする請求項1に記載のスタッド係止具。
【請求項4】
前記複数の係止片それぞれが、前記厚み方向の表裏面それぞれを含んで前記挿入方向に張り出した一対の可撓アームを有し、
前記一対の係止爪が、前記一対の可撓アームの各自由端側に一対一に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスタッド係止具。
【請求項5】
前記底板部分には、前記複数の係止片それぞれの前記係止側ロック部が前記複数の土台側ロック部に係合するまで前記スタッドボルトが挿入されたときに、前記ネジ部分の前記先端部に押された前記連結帯部が前記先端部とともに貫通して突出する底側貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタッド係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドボルトを係止保持するスタッド係止具に関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッド係止具として、スタッドボルトのネジ部分に先端部でネジ係止可能で、軸方向に撓み変形可能な複数の係止部によってネジ部分を挟持することでスタッドボルトを係止保持するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のスタッド係止具では、ネジ部分のねじ込み挿入時には、軸方向に撓みながら係止部が先端部でネジ部分にネジ係止することからねじ込みの挿入力が低減されており、ねじ込みについての操作性向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-121234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のスタッド係止具では、各係止片におけるネジ山が、スタッドボルトのねじ込み時に、係止片のネジ山よりも硬いスタットボルトのネジ部分によって削られる可能性がある。そして、複数の係止部の何れかにおいて仮にネジ山の過度な削れが生ずるようなことがあると、スタッドボルトに対する保持力が低下してしまう恐れがある。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、スタッドボルトを低い挿入力で取り付けることができるとともに、スタッドボルトを高い保持力で保持することができるスタッド係止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、スタッド係止具は、ボルト挿入孔が設けられた天板部分、当該天板部分と対面する底板部分、及び、前記天板部分と前記底板部分を繋ぐ側板部分を有する土台部と、前記土台部の内側に取り付けられ、前記ボルト挿入孔を貫通するスタッドボルトのネジ部分にネジ係止可能な係止部と、を備え、前記係止部が、前記ネジ部分にネジ係止可能なネジ山が各々に形成され、前記ネジ部分をネジ径方向に挟持可能で、且つ挟持位置において前記土台部に係合可能な係止側ロック部が各々に形成された複数の係止片と、前記複数の係止片における前記スタッドボルトの挿入方向の前方側の端部どうしを繋ぐとともに、前記スタッドボルトの挿入時に前記ネジ部分の先端部に押される可撓性の帯状部位であり、前記先端部に押されると前記複数の係止片を前記挿入方向に牽引する連結帯部と、を備え、前記土台部が、前記連結帯部によって前記挿入方向に牽引される前記複数の係止片それぞれを、前記ネジ部分から離れた離隔位置から、前記挿入方向に進むにつれて前記ネジ部分へと近づく斜めのガイド方向にガイドして前記挟持位置に位置付ける複数のガイド部と、前記挟持位置に達した前記複数の係止片それぞれの前記係止側ロック部が係合する複数の土台側ロック部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述のスタッド係止具によれば、スタッドボルトを低い挿入力で取り付けることができるとともに、スタッドボルトを高い保持力で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るスタッド係止具を、土台部の内側の係止部が見える方向から見た側面図である。
図2図1に示されている土台部を図1と同等の側面図で示す図である。
図3図1に示されている係止部を図1と同等の側面図で示す図である。
図4図1及び図2に示されている土台部を係止部の取付け構造が見えるようにカットしたカット斜視図を、図1及び図2に示されている係止部の斜視図とともに示す図である。
図5図1に示されているスタッド係止具にスタッドボルトが挿入された状態を、挿入の初期段階について図1と同等の側面図で示した図である。
図6】スタッドボルトの挿入によって係止部が挟持状態に至るときの各部の動きを示す図である。
図7】挿入されたスタッドボルトに対して挟持状態となったスタッド係止具を、図5と同等の側面図で示す図である。
図8図7に示されている挟持状態のスタッド係止具及びスタッドボルトを、図7おけるV11-V11線に沿った断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、スタッド係止具の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るスタッド係止具を、土台部の内側の係止部が見える方向から見た側面図である。図2は、図1に示されている土台部を図1と同等の側面図で示す図であり、図3は、図1に示されている係止部を図1と同等の側面図で示す図である。また、図4は、図1及び図2に示されている土台部を係止部の取付け構造が見えるようにカットしたカット斜視図を、図1及び図2に示されている係止部の斜視図とともに示す図である。そして、図5は、図1に示されているスタッド係止具にスタッドボルトが挿入された状態を、挿入の初期段階について図1と同等の側面図で示した図である。
【0011】
本実施形態におけるスタッド係止具1は、一例として、車両等の搭載部品として利用される部材であり、土台部11及び係止部12の2部品を備えており、これらの部位が、各々硬質の樹脂材によって成形されている。
【0012】
土台部11は、概ね矩形ブロック状の外観を有する部位であり、天板部分111、底板部分112、側板部分113、及びリブ部分114を備えている。天板部分111及び底板部分112は、互いに対面するように配置された互いに略同形状となる四角形の外周形状を有する板部位である。
【0013】
天板部分111には、スタッドボルト2がボルト頭部21を残してネジ部分22で貫通するボルト挿入孔111aが略中央に設けられている。また、天板部分111における底板部分112との対面側には、ボルト挿入孔111aの内周縁が挿入方向D11に延長されて内周面となった筒状部111bが設けられている。ボルト挿入孔111aに挿入されたスタッドボルト2では、ボルト頭部21の直近の首下部分がこの筒状部111bを貫通する。また、天板部分111の外面側には、ボルト頭部21を収める擂鉢状凹部111cが設けられている。他方、底板部分112の略中央には、底側貫通孔112aが、天板部分111のボルト挿入孔111aと略同軸となるように設けられている。底側貫通孔112aは、ボルト挿入孔111aに挿入されたスタッドボルト2におけるネジ部分22の先端部分221が、後述の連結帯部122とともに貫通する貫通孔である。
【0014】
側板部分113は、天板部分111の側縁からスタッドボルト2の挿入方向D11に延出し天板部分111の側縁と底板部分112の対応する側縁とを繋ぐ壁である。この側板部分113は、スタッドボルト2のネジ部分22を相互間に挟むように一対設けられている。
【0015】
リブ部分114は、天板部分111から底板部分112に掛けて、一対の側板部分113に繋がる側縁とは別の一対の側縁どうしを繋いで挿入方向D11にリブ状に延出する部位となっている。このリブ部分114は、図4に示されているように、ネジ部分22側の側縁114aで当該ネジ部分22を相互間に挟むように一対設けられている。
【0016】
係止部12は、土台部11の内側に取り付けられ、ボルト挿入孔111aを貫通するスタッドボルト2のネジ部分22にネジ係止可能な部位であり、複数(本実施形態では一対)の係止片121と、連結帯部122と、を備えている。
【0017】
一対の係止片121は、ネジ部分22にネジ係止可能なネジ山121aが各々に形成され、ネジ部分22をネジ径方向D12に挟持可能な部位である。また、各係止片121には、ネジ部分22を挟持する後述の挟持位置P12において土台部11に係合可能な係止側ロック部121bが形成されている。
【0018】
連結帯部122は、一対の係止片121におけるスタッドボルト2の挿入方向D11の前方側の端部どうしを繋ぐとともに、スタッドボルト2の挿入時にネジ部分22の先端部221に押される可撓性の帯状部位である。そして、連結帯部122は、スタッドボルト2の挿入時に先端部221に押されると一対の係止片121を挿入方向D11に牽引する。この連結帯部122は、その表裏面それぞれに幅方向D13に延びる溝が複数箇所に形成されており、他の箇所よりも薄くなった各溝の部分で撓めることで折り曲げ変形が可能となっている。
【0019】
このような係止片121を内側に収める土台部11は、一対の係止片121を一対一にガイドする一対のガイド部115と、一対の係止片121の係止側ロック部121bが一対一に係合する一対の土台側ロック部116と、を備えている。
【0020】
一対のガイド部115は、連結帯部122によって挿入方向D11に牽引される一対の係止片121それぞれを、次のようにガイドする。即ち、各ガイド部115は、各係止片121を、ネジ部分22から離れた離隔位置P11から、挿入方向D11に進むにつれてネジ部分22へと近づく斜めのガイド方向D14にガイドする。このようなガイドにより、一対のガイド部115は、一対の係止片121それぞれを、ネジ部分22を挟持する挟持位置P12へと導いて位置付ける。
【0021】
ここで、本実施形態では、各係止片121が、連結帯部122の幅方向D13を厚み方向D15とし、ネジ部分22との対面側にネジ山121aが形成されたブロック片となっている。そして、係止片121における厚み方向D15の表裏面それぞれに上記のガイド方向D14に延在するガイド溝121cが形成されている。
【0022】
係止片121におけるガイド溝121cに対応する部位として、土台部11側のガイド部115には、ガイド方向D14に延在するガイドリブ115aが設けられている。ガイドリブ115aは、その端縁115a-1がガイド溝121cに嵌入して各係止片121をガイド方向D14にガイドする。このガイドリブ115aは、端縁115a-1どうしの間に係止片121を挟むように、1つの係止片121について一対ずつ、つまり、1つのガイド部115について幅方向D13に並べられて一対ずつ設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、一対の係止片121それぞれに設けられる係止側ロック部121bが、1つの係止片121について一対ずつ設けられる係止爪121b-1となっている。これら一対の係止爪121b-1は、各係止片121における厚み方向D15の表裏面それぞれから突出するように形成されている。また、各係止片121には、厚み方向D15の表裏面それぞれを含んで挿入方向D11に張り出した一対の可撓アーム121dが設けられており、一対の係止爪121b-1は、一対の可撓アーム121dの各自由端側に一対一に設けられている。
【0024】
係止片121の係止側ロック部121bにおける一対の係止爪121b-1に対応する部位として、土台側ロック部116は、1つの係止片121について一対ずつ設けられる一対の段差部116aとなっている。これら一対の段差部116aは、1つの係止片121における係止側ロック部121bの形成部分を相互間に挟むように対面配置された一対の対面壁117に形成されている。各対面壁117は、土台部11における底板部分112と側板部分113との角部に立設されている。一対の段差部116aは、一対の対面壁117における各対向面117aにガイド方向D14と交差して延在するように形成され、このガイド方向D14に進んできた一対の係止爪121b-1が一対一に係合可能な部位となっている。
【0025】
このように構成されているスタッド係止具1において、図5に示されている初期段階からスタッドボルト2が更に挿入され、係止部12における一対の係止片121によってネジ部分22が挟持された挟持状態について説明する。
【0026】
図6は、スタッドボルトの挿入によって係止部が挟持状態に至るときの各部の動きを示す図である。図7は、挿入されたスタッドボルトに対して挟持状態となったスタッド係止具を、図5と同等の側面図で示す図である。そして、図8は、図7に示されている挟持状態のスタッド係止具及びスタッドボルトを、図7おけるV11-V11線に沿った断面で示す図である。
【0027】
スタッド係止具1の土台部11に対するスタッドボルト2の挿入の初期段階では、図5図6に示されているように、係止部12における一対の係止片121がスタッドボルト2のネジ部分22から離れた離隔位置P11にある。この状態からスタッドボルト2が挿入方向D11に更に挿入されると、係止部12における連結帯部122が、ネジ部分22の先端部221に押されて一対の係止片121を牽引する。牽引された係止片121は、ガイド溝121cに嵌入したガイドリブ115aに沿ってガイド方向D14に移動する。このガイド方向D14への移動により、一対の係止片121がネジ部分22に近づけられ、やがて、各係止片121のネジ山121aがネジ部分22にネジ係止してネジ部分22を挟持する、図7及び図8に示されている挟持位置P12に至る。
【0028】
一対の係止片121が挟持位置P12に至った挟持状態では、各係止片121の係止側ロック部121bにおける一対の係止爪121b-1が、土台側ロック部116における一対の段差部116aに一対一に係合する。このときの係合は、係止爪121b-1が自由端側に設けられた可撓アーム121dが撓みながら係止爪121b-1が段差部116aを乗り越えることで行われる。係止爪121b-1が段差部116aを乗り越えると、可撓アーム121dの撓みが解消されて係止爪121b-1が段差部116aに係合する。この係合によって、一対の係止片121によるネジ部分22の挟持状態が維持され、スタッド係止具1の内部に、一対の係止片121のネジ山121aによって、スタッドボルト2のネジ部分22が螺合するネジ穴が構築されることとなる。また、このときには、ネジ部分22の先端部221に押された連結帯部122が先端部221とともに、底板部分112の底側貫通孔112aを貫通して突出する。
【0029】
以上に説明した実施形態のスタッド係止具1によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、スタッドボルト2の挿入時には、係止部12における一対の係止片121は、ネジ部分22に対する離隔位置P11からネジ部分22へと近付けられる。このときの係止片121の動きは、ネジ部分22の先端部221に押される連結帯部122による牽引と、一対のガイド部115によるガイドによって行われる。そして、一対の係止側ロック部121bが一対の土台側ロック部116に係合するに至って、一対の係止片121がネジ部分22にネジ係止して挟持する。スタッドボルト2の挿入の当初は一対の係止片121がネジ部分22から離れていることから、スタッドボルト2を低い挿入力で取り付けることができる。また、一対の係止片121が挟持位置P12に至るまでは各係止部12のネジ山121aがネジ部分22に触れることが無くネジ山121aの削れが抑えられる。そして、係止片121が挟持位置P12に達すると、係止側ロック部121bが土台側ロック部116に係合することで、一対の係止片121がネジ部分22にネジ係止して当該ネジ部分22を挟持した状態が強固に維持されることとなる。ネジ山121aの削れ抑制と、係止側ロック部121b及び土台側ロック部116の係合による挟持状態の強固な維持によって、スタッドボルト2に対する高い保持力を得ることができる。このように、上記のスタッド係止具1によれば、スタッドボルト2を低い挿入力で取り付けることができるとともに、スタッドボルト2を高い保持力で保持することができる。
【0030】
ここで、本実施形態では、一対の係止片121それぞれの表裏面にガイド溝121cが形成され、一対のガイド部115それぞれが、係止片121をガイド方向D14にガイドするガイドリブ115aを一対有している。この構成によれば、一対のガイド溝121cに一対のガイドリブ115aを嵌入させることで、連結帯部122によって牽引される各係止片121を安定的にガイド方向D14にガイドしてネジ部分22に近づけることができる。
【0031】
また、本実施形態では、一対の係止片121それぞれの係止側ロック部121bが、各表裏面から突出する一対の係止爪121b-1を有している。他方、一対の土台側ロック部116は、各係止片121の係止側ロック部121bの形成部分を相互間に挟むように対面配置された一対の対面壁117に形成された一対の段差部116aを有している。この構成によれば、一対の係止爪121b-1を一対の段差部116aに係合させることで、一対の係止片121によるネジ部分22の挟持状態を一層強固に維持することができる。
【0032】
また、本実施形態では、一対の係止爪121b-1が一対の可撓アーム121dの各自由端側に一対一に設けられている。この構成によれば、可撓アーム121dを撓ませることで係止爪121b-1に段差部116aを効果的に乗り越えさせて係合させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、土台部11の底板部分112に底側貫通孔112aが設けられている。係止側ロック部121bが土台側ロック部116に係合するまでスタッドボルト2が挿入されると、連結帯部122がネジ部分22の先端部221とともに底側貫通孔112aを貫通して突出する。この構成によれば、連結帯部122とともに先端部221が底側貫通孔112aを貫通して突出するまでスタッドボルト2を深く挿入することができる。そして、このような深いボルト挿入により、係止片121によるネジ部分22の挟持強度の向上と、係止側ロック部121bの土台側ロック部116への十分な係合を効果的に行うことができる。
【0034】
尚、以上に説明した実施形態はスタッド係止具の代表的な形態を示したに過ぎない。スタッド係止具は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、スタッド係止具の一例として、車両等の搭載部品として利用されるスタッド係止具1が例示されている。しかしながら、スタッド係止具は、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0036】
また、上述した実施形態では、土台部の一例として、天板部分111、底板部分112、及び一対の側板部分113、で区画される矩形ブロック状の外観を有した土台部11が例示されている。しかしながら、土台部は、これに限るものではなく、天板部分、底板部分、及び側板部分を有するものであれば、その具体的な外観形状や側板部分の数等は用途等に応じて適宜に設定し得るものである。
【0037】
また、上述した実施形態では、係止部が備える複数の係止片の一例として一対の係止片121が例示されている。そして、土台部において各係止片をガイドする複数のガイド部と、各係止片の係止側ロック部が係合する複数の土台側ロック部の各一例として、一対のガイド部115及び一対の土台側ロック部116が例示されている。しかしながら、複数の係止片、複数のガイド部、及び複数の土台側ロック部、は何れもこれに限るものではない。係止片の数は、複数であれば任意の数に設定可能であり、ガイド部及び土台側ロック部は、係止片の設置数に応じて適宜に設定可能である。
【0038】
また、上述した実施形態では、土台部において係止片をガイドするガイド部の一例として、係止片121の表裏面に形成されたガイド溝121cに一対一に嵌入してガイドする一対のガイドリブ115aを有するガイド部115が例示されている。しかし、土台部におけるガイド部はこれに限るものではなく、その具体的なガイド態様を問うものではない。ただし、表裏面のガイド溝121cに一対一に嵌入して係止片121をガイドする一対のガイドリブ115aによるガイド態様によれば、各係止片121を安定的にガイド方向D14にガイドしてネジ部分22に近づけることができる点は上述した通りである。
【0039】
また、上述した実施形態では、係止側ロック部の一例として、係止片121の表裏面から突出する一対の係止爪121b-1を有する係止側ロック部121bが例示されている。また、土台側ロック部の一例として、一対の対面壁117に形成された一対の段差部116aを有する土台側ロック部116が例示されている。しかしながら、係止側ロック部及び土台側ロック部はこれに限るものではなく、互いに係合可能であれば、その具体的な係合態様を問うものではない。ただし、係止側ロック部121bにおける一対の係止爪121b-1を土台側ロック部116における一対の段差部116aに係合させる係合態様によれば、ネジ部分22の挟持状態を一層強固に維持することができる点は上述した通りである。
【0040】
また、上述した実施形態では、係止側ロック部における係止爪の一例として、係止片121に設けられた可撓アーム121dの自由端側に設けられた係止爪121b-1が例示されている。しかしながら、係止爪は、これに限るものではなく、どのような設置形態で係止片に設けるかは任意に設定し得るものである。ただし、可撓アーム121dの自由端側に係止爪121b-1を設ける設置形態によれば、係止爪121b-1に段差部116aを効果的に乗り越えさせて係合させることができる点は上述した通りである。
【0041】
また、上述した実施形態では、土台部の一例として、底板部分112に、スタッドボルト2の挿入時に連結帯部122がネジ部分22の先端部221とともに貫通可能な底側貫通孔112aが設けられた土台部11が例示されている。しかしながら、土台部は、これに限るものではなく、底板部分にこのような貫通孔は設けないこととしてもよい。ただし、底板部分112に底側貫通孔112aを設けることで、深いボルト挿入が可能となって、係止片121による挟持強度の向上と、十分なロック部の係合を効果的に行うことができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0042】
1 スタッド係止具
2 スタッドボルト
11 土台部
12 係止部
21 ボルト頭部
22 ネジ部分
111 天板部分
111a ボルト挿入孔
111b 筒状部
111c 擂鉢状凹部
112 底板部分
112a 底側貫通孔
113 側板部分
114 リブ部分
115 ガイド部
115a ガイドリブ
115a-1 端縁
116 土台側ロック部
116a 段差部
117 対面壁
117a 対向面
121 係止片
121a ネジ山
121b 係止側ロック部
121b-1 係止爪
121c ガイド溝
121d 可撓アーム
122 連結帯部
D11 挿入方向
D12 ネジ径方向
D13 幅方向
D14 ガイド方向
D15 厚み方向
P11 離隔位置
P12 挟持位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8