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  • 特開-医療用メス部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130203
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療用メス部材
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61M5/34 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039799
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰也
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066JJ09
(57)【要約】
【課題】医療用メス部材がオスルアーのキャップとして使用された場合に、オスルアーから意図せずに外れることを防止する。
【解決手段】実施形態の一例である医療用メス部材は、オスルアーが挿入されてキャップとして機能する。メス部材は、オスルアーの外周面と接触する領域Aを含む内周面を有する。領域Aは、微小凹凸が形成された領域であると共に、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上であり、好ましくは0.30μm以上0.60μm以下である。領域Aの最大表面粗さ(Sz)は、例えば、3.0μm以上8.0μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オスルアーが挿入されるメス部材であって、
前記メス部材は、前記オスルアーの外周面と接触する領域Aを含む内周面を有し、
前記領域Aは、微小凹凸が形成された領域であると共に、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上である、医療用メス部材。
【請求項2】
前記領域Aの平均表面粗さ(Sa)は、0.60μm以下である、請求項1に記載の医療用メス部材。
【請求項3】
前記領域Aの最大表面粗さ(Sz)は、3.0μm以上8.0μm以下である、請求項1又は2に記載の医療用メス部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オスルアーが挿入される医療用メス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液等の薬剤の投与や、透析などを行うための流体経路において、経路の途中に設けられた活栓から薬液等を注入する側管注射(側注)が広く行われている。活栓には、例えば、スリットが形成された弁体と、弁体を保持する筒状のハウジングとを含むコネクタ(例えば、特許文献1参照)が取り付けられる。側注は、コネクタの弁体にシリンジのオスルアーを挿入して行うことができる。側注を複数回行う際には、同じシリンジを繰り返し使用する場合がある。この場合、オスルアーが汚染されないようにオスルアーにキャップが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、コネクタの弁体には、オスルアーの挿入をスムーズにするため、シリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。このため、弁体にオスルアーを挿入すると、オスルアーの外周面に潤滑剤が付着する。これにより、オスルアーとメスルアーを繰り返し挿抜すると、メスルアーがオスルアーから意図せずに外れる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る医療用メス部材は、オスルアーが挿入されるメス部材であって、メス部材は、オスルアーの外周面と接触する領域Aを含む内周面を有し、領域Aは微小凹凸が形成された領域であると共に、平均表面粗さ(Sa)が、0.30μm以上であることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る医療用メス部材によれば、オスルアーに対して複数回挿抜されても、オスルアーから意図せずに外れることを防止できる。即ち、微小な凹凸面が形成されている領域Aの平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上であれば、オスルアーからメス部材に転写される潤滑剤量を効果的に低減できる。その結果、メス部材がオスルアーから意図せずに容易に外れることが防止される。
【0007】
本発明に係る医療用メス部材において、内周面の領域Aの平均表面粗さ(Sa)は、0.60μm以下であることが好ましい。この場合、オス部材とメス部材間から液漏れが生じる事態を防止できる。
【0008】
本発明に係る医療用メス部材において、内周面の領域Aの最大表面粗さ(Sz)は、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。この場合、メス部材がオスルアーから意図せずに外れることをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る医療用メス部材によれば、外周面に潤滑剤が付着したオスルアーの挿抜に適した医療用メス部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である医療用メス部材を示す図である。
図2】医療用メス部材の使用方法を説明するための図である。
図3】医療用メス部材の内周面のレーザー顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る医療用メス部材の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれる。
【0012】
図1は、実施形態の一例であるディスポ注射針10を示す。図2は、キャップとしてのディスポ注射針10の使用方法を説明するための図である。本実施形態では、医療用メス部材としてディスポ注射針10を例示するが、メス部材はこれに限定されない。ディスポ注射針10は、本来、注射に使用されるが、側注用のシリンジのキャップとして兼用される場合がある。メス部材は、オスルアーを挿入することができ、キャップとして使用できるものであればよく、測注用シリンジの専用のキャップであってもよい。
【0013】
図1及び図2に示すように、ディスポ注射針10は、ハブ11と、針12とを有する。ハブ11は、オスルアーの外周面と接触する領域13Aを含む内周面13を有し、オスルアーのキャップとして機能する。詳しくは後述するが、領域13Aの平均表面粗さ(Sa)は0.30μm以上である。ディスポ注射針10は使い捨ての注射針であるが、本実施形態では、外周面に潤滑剤が付着したオスルアーが挿入されてキャップとして兼用される。ディスポ注射針10には、側注に使用されるシリンジ40のオスルアー43が挿入される。また、1つのシリンジ40が側注に複数回使用され、その間、1つのディスポ注射針10がキャップとして使用されることを想定している。
【0014】
シリンジ40を用いた側注は、例えば、医療用コネクタ30にシリンジ40のオスルアー43を挿入して行われる。医療用コネクタ30は、弁体31と、弁体31を保持する筒状のハウジング32とを有する。弁体31には、オスルアー43の挿入を可能とするスリット33が形成されている。医療用コネクタ30にオスルアー43が接続されていない状態でスリット33は閉じており、弁体31はハウジング32の上端開口を塞いでいる。弁体31は、例えば、合成ゴムにより構成される弾性体である。
【0015】
弁体31は、オスルアー43がスリット33に挿入されたときに、ハウジング32の内側に押されて弾性変形し、スリット33が開くように構成されている。他方、オスルアー43を弁体31から引き抜くと、弁体31が元の形状に戻り、スリット33が閉じるようになっている。弁体31を構成する合成ゴムとしては、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、スチレン系ゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0016】
弁体31には、オスルアー43が接触する部分、具体的にはスリット33の内部に潤滑剤が塗布されている。潤滑剤の種類は特に限定されないが、好適な一例としては、シリコーンオイルが挙げられる。弁体31にシリコーンオイル等の潤滑剤を塗布することで、弁体31とオスルアー43との間に作用する摩擦力が低減され、オスルアー43のスムーズな挿入が可能になる。一方、弁体31のスリット33にオスルアー43が挿入されると、オスルアー43の外周面に潤滑剤の一部が転写されて付着する。
【0017】
詳しくは後述するが、オスルアー43の外周面への潤滑剤の付着により、オスルアー43とキャップであるディスポ注射針10のハブ11との摩擦力が低下するため、オスルアー43の外周面と接触するハブ11の領域13Aは、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上となるように表面処理されている。これにより、オスルアー43の外周面に潤滑剤が付着した場合でも、ハブ11がオスルアー43から外れることが効果的に抑制される。なお、オスルアー43の外周面からハブ11の領域13Aに転写される潤滑剤量は減少する。また、弁体31から失われる潤滑剤量も減少するため、ディスポ注射針10を用いることで、オスルアー43の弁体31へのスムーズな挿入も複数回にわたって確保される。
【0018】
シリンジ40は、外筒41と、押し子42とを有する。シリンジ40は、針を有さないニードルレスコネクタであって、外筒41の先端部分にオスルアー43が形成された形状を有する。オスルアー43は、外筒41の内部に連通する中空部が形成された筒状部分であって、先端に向かって次第に外径が小さくなったテーパー形状を有する。なお、オスルアー43の形状はISO規格により定められている。
【0019】
ディスポ注射針10は、上記のように、注射に使用される使い捨ての注射針であるが、側注に使用されるシリンジ40のキャップとして兼用される。このため、ディスポ注射針10には、注射針としての機能と、キャップとしての機能が求められる。図1及び図2に示す例では針12が露出しているが、ディスポ注射針10には、針12を覆うキャップが装着されていてもよい。ディスポ注射針10は、シリンジ40を挿入可能なものであればよく、針12の長さ等は特に限定されない。
【0020】
ディスポ注射針10のハブ11は、針12が固定された部分であって、筒状に形成されている。ハブ11には針12の根元が固定され、ハブ11の筒内と針12の筒内は連通している。ディスポ注射針10が本来の注射針として使用される際には、ハブ11に挿入されたシリンジ40等のオスコネクタから供給される薬液がハブ11及び針12の筒内を通り、針先が穿刺された患者の体内に注入される。このため、ハブ11の内周面13は、薬液が漏出しないようにオスコネクタと密接する必要がある。以下、当該オスコネクタもシリンジ40として説明する。
【0021】
ハブ11の筒内には、シリンジ40のオスルアー43が挿入される。ハブ11の内周面13は、オスルアー43の外周面と接触する領域13Aを含む。ハブ11の内径は、領域13Aにおいて、針12が固定されたハブ11の先端側に向かって次第に小さくなっている。即ち、ハブ11の内部空間は、基端側から先端側に向かってやや小さくなっている。なお、ハブ11の領域13Aは、オスルアー43と同様に、ISO規格により定められた形状を有し、オスルアー43の外周面と隙間なく接触するように形成されている。
【0022】
ハブ11は、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂、ポリカーボネートなどで構成される。中でも、ポリプロピレン製のハブが一般的である。ハブ11は、例えば、射出成形により作製される。詳しくは後述するが、射出成形に使用する金型の表面を加工することによりハブ11の内周面13の表面処理(粗化)を行ってもよく、成形後のハブ11の内周面13をブラスト加工等により加工して、或いは薬剤等で処理して粗化してもよい。
【0023】
内周面13の領域13Aの平均表面粗さ(Sa)は、上記の通り、0.30μm以上であり、内周面13の領域13A以外の領域よりも平均表面粗さが大きくなっている。内周面13の全域において平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上であってもよいが、生産性等の観点から、オスルアー43と接触する領域13Aのみ、或いは領域13A及びその近傍のみにおいて、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上であることが好ましい。例えば、ハブ11の基端から軸方向中央部にわたる範囲が領域13Aとなり、領域13Aの面積は内周面13の総面積の50%以上90%以下である。
【0024】
領域13Aは、表面を荒らす処理(粗化)が行われることにより、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上になる。即ち、領域13Aは、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上となるように表面処理された領域といえる。ハブ11は、例えば、射出成形により作製されるが、表面処理されていない領域の平均表面粗さ(Sa)は0.25μm以下である。図1に示す例では、ハブ11の内周面13においてドットハッチングを付した部分が、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上の領域13Aである。
【0025】
領域13Aの平均表面粗さ(Sa)は、0.60μm以下であることが好ましく、0.55μm以下がより好ましい。オスルアー43のキャップとしての機能だけを考慮すると、領域13Aの平均表面粗さ(Sa)は0.30μm以上であればよいが、注射針としての機能を考慮すると、0.60μm以下であることが好ましい。また、領域13Aの平均表面粗さ(Sa)が大きくなり過ぎると、ハブ11へのオスルアー43のスムーズな挿入が妨げられることも考えられる。
【0026】
領域13Aの平均表面粗さ(Sa)の好適な範囲の一例は、0.30μm以上0.60μm以下、又は0.40μm以上0.55μm以下である。この場合、ハブ11の液漏れを防止しつつ、領域13Aに転写される潤滑剤量を減らすことができる。なお、領域13Aの平均表面粗さ(Sa)が当該範囲であれば、領域13Aの一部に粗化されていない領域が存在してもよい。但し、好ましくは領域13Aの全域が粗化され、領域13Aのいずれにおいても平均表面粗さ(Sa)が上記範囲内であることが好ましい。
【0027】
領域13Aは、表面粗さが大きな部分と小さな部分を含んでいてもよいが、領域13Aの全域で表面粗さの差が小さく、まんべんなく均質に粗化されていることが好ましい。即ち、領域13Aの一部に表面粗さが極端に大きくなるような領域が存在しないことが好ましい。具体的には、領域13Aの最大表面粗さ(Sz)は、8.0μm以下が好ましく、7.5μm以下がより好ましい。
【0028】
領域13Aの最大表面粗さ(Sz)の下限値は、特に限定されないが、平均表面粗さ(Sa)以下の値となることはない。最大表面粗さ(Sz)の下限値の一例としては、3.0μm、又は3.2μmである。領域13Aの最大表面粗さ(Sz)の好適な範囲の一例は、3.0μm以上8.0μm以下であり、3.2μm以上7.5μm以下がより好ましい。この場合、ハブ11がオスルアー43から意図せずに外れることをより確実に防止できる。また、ハブ11の液漏れをより確実に防止できる。
【0029】
領域13Aの平均表面粗さ(Sa)及び最大表面粗さ(Sz)は、3次元レーザー顕微鏡(OLYMPUS製のLEXT OLS4100)を用いて測定される。
【0030】
領域13Aの表面を粗化する方法は、平均表面粗さ(Sa)を上記範囲に調整できる方法であれば特に限定されないが、生産性等の観点から、射出成形に使用する金型の表面を粗化することが好ましい。この場合、粗化された金型表面の形状が領域13Aの表面形状に反映される。金型表面の加工方法の一例としては、放電加工、フォーミング加工などが挙げられる。金型表面をフォーミング加工等により大きく粗化した後、イエプコ処理等により平滑化して平均表面粗さ(Sa)を上記範囲に調整してもよい。
【0031】
本実施形態では、金型となるオス部材の外面を部分的にカバー部材で覆い、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上0.60μm以下の範囲で、最大表面粗さ(Sz)が3.0μm以上8.0μm以下の範囲で、粗化加工を施すことで、粗化した面と粗化していない面を有する金型を形成した。その後、金型を用いて成型を行うことで、平均表面粗さ(Sa)が0.30μm以上0.60μm以下の範囲で、最大表面粗さ(Sz)が3.0μm以上8.0μm以下の範囲の微小凹凸面を部分的に有するメスルアーを製造した。結果、ルアーの接続面のみに粗い面が形成されており、薬液や血液の流動に影響が及ばないようになっている。なお、金型に施す粗化加工は部分的ではなく全体に施すこともできる。
【0032】
以下、実験例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0033】
<実験例1>
図1及び図2に示す形状のハブを射出成形により作製した。金型表面を放電加工により粗化し、当該金型を用いて射出成形を行った。金型の放電加工する部分は、オスルアーの外周面が接触するハブの内周面の領域Aに対応する部分である。作製されたハブの領域Aはその全域が粗化され、平均表面粗さ(Sa)は0.32μmであった。また、最大表面粗さ(Sz)は3.42μmであった。この測定結果を後述する評価結果と共に、表1に示す。
【0034】
<実験例2~5>
上記領域Aの平均表面粗さ(Sa)及び最大表面粗さ(Sz)が表1に示す値となるように、金型表面の粗化条件を変更したこと以外は、実験例1と同様にしてハブを作製した。実験例2~5における粗化条件は、下記の通りである。
実験例2:ホーニングン加工後、イエプコ処理
実験例3:放電加工(Rz:1.0狙い)
実験例4:ホーニングン加工
実験例5:放電加工(Rz:2.0狙い)
【0035】
<実験例6>
金型表面の粗化を行わなかったこと以外は、実験例1と同様にしてハブを作製した。
【0036】
実験例1~6のハブについて、下記の方法により、シリンジのオスルアーをハブに挿入した状態における引き抜き強度の測定、及びオスルアーとハブの隙間からの液漏れの有無を確認する耐圧性評価を行った。
【0037】
[引き抜き強度の測定]
実験例1~6のハブについて、下記手順により、シリンジのオスルアーをハブに挿入した状態における引き抜き強度の測定を行った。
(1)外周面にシリコーンオイルが付着したシリンジのオスルアーをハブの奥まで挿入し、シリンジを一回転させ、その後、ハブからシリンジを取り外す。
(2)100g/cmのトルクをかけながら500gの荷重で、シリンジのオスルアーをハブに挿入する。
(3)オートグラフを用いて、ハブからシリンジを引き抜く際の引っ張り強度(引き抜き強度)を測定する。
(4)上記(1)~(3)を5回繰り返す。5回目の測定結果を表1に示す。
【0038】
[耐圧性評価]
実験例1~6のハブについて、エアリーク試験(50kPa×15秒)及び水圧試験(150kPa×15分)を行い、オスルアーとハブの隙間からのリークの有無を確認した。リークが確認されなかった場合を〇、リークが確認された場合を×とした。評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果から明らかであるように、ハブの領域Aの表面を粗化して平均表面粗さ(Sa)を大きくした実験例2~5のハブを用いた場合、ハブからのシリンジの引き抜き強度が大きくなる。実験例1~5のハブによれば、オスルアーから意図せずに外れることが効果的に防止される。一方、実験例6のハブでは、領域Aにシリコーンオイルが多く転写されて摩擦力が大きく低下し、ハブがオスルアーから簡単に外れてしまう。
【0041】
なお、実験例4,5のハブでは、耐圧性評価でリークが確認された。このため、実験例4,5のハブを注射針の針ハブとして使用することは難しい。実験例1~3のハブは、注射針の針ハブとしての機能と、キャップとしての機能を十分に兼ね備えている。
【0042】
図3は、実験例1~6のハブの領域Aのレーザー顕微鏡画像である。画像の下の1~6の数字は、実験例の番号を示す。実験例6のハブの領域Aは、表面が滑らかであるのに対し、実験例1~5のハブの領域Aは、表面に微細な凹凸が存在し、表面が粗化されている。特に、実験例5の領域Aの表面には、大きな凹凸が形成されている。
【符号の説明】
【0043】
10 ディスポ注射針、11 ハブ、12 針、13 内周面、13A 領域、30 医療用コネクタ、31 弁体、32 ハウジング、33 スリット、40 シリンジ、41 外筒、42 押し子、43 オスルアー
図1
図2
図3