(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130219
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】中継装置における非線形歪みの効率的な補償を可能とする基地局装置、端末装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/00 20090101AFI20240920BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H04W52/00
H04B1/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039834
(22)【出願日】2023-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 2 テラヘルツ帯を適用した端末拡張のための信号処理技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大詩
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
【テーマコード(参考)】
5K060
5K067
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060CC04
5K060CC13
5K060KK06
5K060LL24
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】中継装置における非線形歪みの効率的な補償を可能とすること。
【解決手段】基地局装置は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報を、中継装置から取得し、端末装置において中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、端末装置へ通知する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
前記基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報を、前記中継装置から取得する取得手段と、
前記端末装置において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記端末装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記第2の情報は、前記第1の情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記第2の情報は、さらに、前記基地局装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第3の情報を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記第2の情報は、前記第1の情報に基づいて特定された、前記中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを補償するために送信対象信号を事前に歪ませるプリディストーションの特性を示す情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記取得手段は、さらに、前記端末装置から、前記端末装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第4の情報を取得し、
前記第2の情報は、前記第1の情報に加えて前記第4の情報に基づいて特定された、前記端末装置が有する電力増幅器による非線形歪みと前記中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを補償するために送信対象信号を事前に歪ませるプリディストーションの特性を示す情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記第2の情報は、前記第1の情報に基づいて特定された、前記基地局装置から送信されて前記中継装置を介して受信された受信信号から前記中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みをキャンセルするポストディストーションの特性を示す情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記第2の情報は、前記第1の情報および前記基地局装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第3の情報に基づいて特定された、前記基地局装置から送信されて前記中継装置を介して受信された受信信号から、前記基地局装置が有する電力増幅器による非線形歪みと前記中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みをキャンセルするポストディストーションの特性を示す情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項8】
端末装置であって、
基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報に基づく、前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記基地局装置から受信する受信手段と、
前記第2の情報に基づいて、前記基地局装置との間の前記中継装置を介した通信において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償処理を行う処理手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項9】
前記第2の情報は、前記第1の情報であり、
前記端末装置は、前記第1の情報に基づいて、前記基地局装置へ送信する信号に対するプリディストーションの特性または前記基地局装置から受信した信号に対するポストディストーションの特性を特定する特定手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項8に記載の端末装置。
【請求項10】
前記第2の情報は、前記第1の情報に基づいて、前記基地局装置へ送信する信号に対するプリディストーションの特性または前記基地局装置から受信した信号に対するポストディストーションの特性を示す情報である、ことを特徴とする請求項8に記載の端末装置。
【請求項11】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報を、前記中継装置から取得することと、
前記端末装置において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記端末装置へ通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
端末装置によって実行される制御方法であって、
基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報に基づく、前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記基地局装置から受信することと、
前記第2の情報に基づいて、前記基地局装置との間の前記中継装置を介した通信において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償処理を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から7のいずれか1項に記載の基地局装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、請求項8から10のいずれか1項に記載の端末装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置における非線形歪みの補償技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、信号の送信側の装置が、電力増幅器を用いて送出対象の信号の電力を増幅して出力している。この電力増幅器は、通常、信号波形に非線形歪みが生じないような動作領域で使用される。しかしながら、このような非線形歪みが生じないような動作領域は、必ずしも電力効率が良くない。これに対して、波形を変形して非線形歪みを補償する技術が用いられることにより、電力増幅器を非線形歪みが生じる飽和領域付近で動作させ、電力効率を改善することができる。このような技術は、例えば、送信側の装置におけるデジタルプリディストーション(DPD)や、受信側におけるデジタルポストディストーション(DPoD)である。非特許文献1には、基地局装置にDPDを使用させるための情報をUEが提供することや、端末装置にDPoDを使用させるために参照信号などを送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP(登録商標)寄書、R1-2213007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信における通信可能距離の拡大のために、無線レピータなどの中継装置が利用可能である。このような中継装置が使用されるシステムにおける電力効率の改善のためには、中継装置において使用される電力増幅器についても、非線形歪みの発生しうる飽和領域付近で動作させることが想定される。この場合、DPDやDPoDによる非線形歪みの補償処理が、中継装置における非線形歪みを考慮して行われうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、中継装置における非線形歪みの効率的な補償を可能とする技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による基地局装置は、前記基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報を、前記中継装置から取得する取得手段と、前記端末装置において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記端末装置へ通知する通知手段と、を有する。
【0007】
本発明の一態様による端末装置は、基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する中継装置が有する電力増幅器による非線形歪みを特定可能な第1の情報に基づく、前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償を行う際に使用される第2の情報を、前記基地局装置から受信する受信手段と、前記第2の情報に基づいて、前記基地局装置との間の前記中継装置を介した通信において前記中継装置の電力増幅器による非線形歪みの補償処理を行う処理手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中継装置における非線形歪みを効率的に補償することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】基地局装置におけるプリディストーションの適用を説明する図である。
【
図3】基地局装置におけるポストディストーションの適用を説明する図である。
【
図4】端末装置におけるプリディストーションの適用を説明する図である。
【
図5】端末装置におけるポストディストーションの適用を説明する図である。
【
図6】基地局装置、中継装置、及び端末装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図10】無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図11】無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図12】無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図13】無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、例えば、中継装置を含んだセルラ通信システムであり、基地局装置101、中継装置102、及び端末装置103を含んで構成される。なお、
図1では、説明を簡単にするために、基地局装置101、中継装置102、及び端末装置103がそれぞれ1つずつの状態を示しているが、当然に、これらの装置は複数存在しうる。また、セルラ通信システム以外の無線通信システムにおいても、以下で説明する手法を適用することができる。
【0012】
本実施形態では、例えば、基地局装置101から送出された無線信号が、中継装置102によって増幅されて転送され、端末装置103において受信される。また、端末装置103が送出した無線信号が、中継装置102によって増幅されて転送され、基地局装置101において受信される。なお、中継装置102は、例えば、無線レピータでありうる。ただし、これは一例であり、中継装置102は、再生中継を行う中継装置であってもよい。中継装置102は、受信した無線信号を非線形歪みの生じうる飽和領域付近で増幅して転送する。このため、例えば、その無線信号の受信側の装置におけるデジタルポストディストーション(DPoD)や、その無線信号の送信元の装置におけるデジタルプリディストーション(DPD)によって、その非線形歪みが補償されるようにする。例えば、下りリンクにおいて、端末装置103は、基地局装置101が送信して中継装置102によって増幅されて転送された無線信号を受信し、その無線信号に対してDPoDを適用する。これにより、端末装置103は、基地局装置101や中継装置102における非線形歪みの影響を軽減して、その無線信号の復調及び復号を行うことができる。同様に、上りリンクにおいて、基地局装置101は、端末装置103が送信して中継装置102によって増幅されて転送された無線信号を受信し、その無線信号に対してDPoDを適用することができる。また、下りリンクにおいて、基地局装置101は、基地局装置101及び中継装置102における非線形歪みを考慮して、送信対象の信号を、増幅後の信号が歪みのない状態となるようにDPDによって事前に歪ませてから送信する。同様に、上りリンクにおいて、端末装置103は、中継装置102における非線形歪みを考慮して、送信対象の信号を、増幅後の信号が歪みのない状態となるようにDPDによって事前に歪ませてから送信する。なお、端末装置103においても、非線形歪みが発生しうる飽和領域付近で信号を増幅する場合は、上りリンクにおいて、中継装置102のみならず、端末装置103において生じる非線形歪みも考慮して、DPoDやDPDが行われうる。
【0013】
このようなDPD又はDPoDの効率的な適用のために、発生する非線形歪みに関連する情報がその線形歪みの補償処理を実行する装置へ提供されることが有用である。すなわち、DPDが行われる場合には、無線信号の送信側の装置へその情報が提供され、DPoDが行われる場合には、無線信号の受信側の装置へその情報が提供されうる。本実施形態では、このような情報提供手法を与える。
【0014】
本実施形態では、中継装置102が、DPDとDPoDのいずれが使用される場合であっても、また、基地局装置101と端末装置103のいずれが非線形歪みの補償処理を実行する場合であっても、自装置における電力増幅器における非線形歪みの情報を基地局装置101へ通知するようにする。そして、基地局装置101は、端末装置103に対して、その中継装置102の電力増幅器における非線形歪みの情報を通知する。なお、基地局装置101は、端末装置103が非線形歪みの補償処理を実行する場合にのみ、中継装置102の電力増幅器における非線形歪みの情報を通知してもよい。すなわち、端末装置103が上りリンクにおいてDPDを実行する場合又は下りリンクにおいてDPoDを実行する場合に、基地局装置101が、中継装置102から受信した中継装置102の電力増幅器における非線形歪みの情報を端末装置103へ通知しうる。
【0015】
なお、中継装置102は、中継を行う無線信号を介して、基地局装置101と通信を行うように構成されうる。例えば、中継装置102は、端末装置103から受信した信号に対して、自装置が基地局装置101へ通知すべき情報を多重化して、基地局装置101へ転送しうる。また、中継装置102は、端末装置103から信号を受信する際に使用される無線リソース(周波数および時間リソース)とは別の無線リソースを用いて、端末装置103からの信号とは別個の信号を生成して基地局装置101へ情報を通知しうる。また、中継装置102は、例えば、基地局装置101と端末装置103との間で送受信される無線信号の一部の信号成分(例えば制御信号)を復調及び復号する機能を有し、その一部の信号成分によって基地局装置101又は端末装置103からの情報を取得しうる。なお、中継装置102は、中継対象の無線信号が準拠する無線通信規格とは異なる無線通信規格を用いて、基地局装置101と通信してもよい。例えば、中継装置102は、基地局装置101と端末装置103との間の第5世代(5G)の無線信号を中継し、基地局装置101との間でロングタームエボリューション(LTE)を用いて通信を行うように構成されうる。中継装置102は、セルラ通信回線を用いる場合には、例えば、制御チャネル(例えば物理上りリンク制御チャネル(PUCCH))、無線リソース制御(RRC)シグナリングなどを用いて、基地局装置101へ情報を通知しうる。また、中継装置102は、アプリケーションレイヤなどの上位レイヤにおいて、基地局装置101へ情報を通知してもよい。また、基地局装置101と中継装置102との間の通信には、セルラ通信回線とは異なる通信回線が用いられてもよい。例えば、基地局装置101と中継装置102との間の通信に、固定無線アクセス(FWA)や無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)が用いられてもよい。また、基地局装置101と中継装置102との間に有線通信回線が設定され、その有線通信回線を用いて基地局装置101と中継装置102との間の通信が行われてもよい。
【0016】
中継装置102は、電力増幅器における非線形歪みの情報として、増幅対象の信号を引数xとして増幅後の出力yを与える多項式y=f(x)の情報を、基地局装置101へ通知しうる。なお、多項式の情報は、多項式の係数を示す情報など、基地局装置101がその多項式を再現可能な任意の形式の情報である。また、中継装置102は、例えば、増幅対象の信号を入力xとして、その時に観測される出力yを教師データとした機械学習などによって得られる電力増幅器の特性を再現する学習済みモデルを、基地局装置101へ通知してもよい。なお、中継装置102の電力増幅器の特性を再現する多項式や学習済みモデルの情報は、例えば製造時や設置時に、中継装置102が保持する読み出し専用メモリ(ROM)などに書き込まれうる。すなわち、中継装置102は、自装置の電力増幅器の情報を事前に保持しうる。なお、これは一例であり、例えば、中継装置102は、その装置内部に、電力増幅器の特性を特定するための機能を有してもよい。例えば、中継装置102は、装置内部において、増幅対象の信号と電力増幅器から出力された信号との関係を用いて機械学習を行う機能を有してもよい。この場合、中継装置102は、装置内部において、電力増幅器の特性を再現する学習済みモデルを得るための機械学習を行うことができる。このような構成を有する場合、中継装置102が置かれた環境の変化や経年変化によって電力増幅器の特性が変化した場合であっても、その特性の情報を高精度に特定して基地局装置101へ通知することができる。
【0017】
基地局装置101は、中継装置102の電力増幅器の情報を受信すると、その情報を用いて、端末装置103との間の通信における非線形歪みの補償処理を実行することができる。
【0018】
例えば、基地局装置101は、下りリンクの通信においてDPDを実行することができる。この場合、基地局装置101は、自装置の電力増幅器による非線形歪みと、中継装置102の電力増幅器による非線形歪みとの両方を考慮して、事前に信号波形を歪ませて送信する。
図2は、DPDが実行される場合の信号の流れの例を模式的に示している。まず、送信対象信号201に対して、DPD202が適用され、信号を人工的に歪ませる。この歪みは、基地局装置101が有する第1の電力増幅器203と中継装置102が有する第2の電力増幅器204における非線形歪みをキャンセルするような特性を有する。そして、人工的に歪められた信号は、基地局装置101が有する第1の電力増幅器203に入力されて送出され、その後、中継装置102が有する第2の電力増幅器204を介して、端末装置103へ転送される中継信号205となる。
【0019】
このとき、DPD202は、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204を経た後の中継信号205の波形が送信対象信号201の波形と(その電力を除いて)一致するように構成される。このために、基地局装置101は、例えば、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、第1の電力増幅器203への入力x0と第2の電力増幅器204の出力y0との関係を特定する。そして、基地局装置101は、入力データをy0としたときの出力に関する教師データをx0とするような機械学習により、DPD202の学習済みモデルを形成しうる。すなわち、基地局装置101は、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、様々なx0及びy0の値の組み合わせを特定し、その組み合わせにおけるy0の値がDPD202に入力された場合に、そのy0に対応するx0が出力の正解データであるように機械学習を行う。この機械学習の結果、基地局装置101は、DPD202の学習済みモデルを取得する。学習済みモデルが取得された後、基地局装置101は、送信対象信号が発生した場合、その信号を、DPD202の学習済みモデルに入力して、歪ませた信号を取得する。基地局装置101が、DPD202を用いて信号を事前に歪ませることで、端末装置103において、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204における非線形歪みのない(そのような歪みの影響を無視できる)無線信号を受信することが可能となる。
【0020】
また、基地局装置101は、例えば、機械学習を用いずに、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204の非線形歪みの逆変換を示す多項式を特定してもよい。この場合、DPD202は、送信対象信号201に対して、その多項式を適用することによって行われうる。
【0021】
また、基地局装置101は、上りリンクの通信において、DPoDを実行することができる。この場合、端末装置103の送信信号301が、端末装置103が有する第3の電力増幅器302と、中継装置102が有する第4の電力増幅器303を介して、基地局装置101において受信される。なお、中継装置102が有する第4の電力増幅器303は、上述の第2の電力増幅器204と、同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、上りリンクと下りリンクとにおいて、共通の電力増幅器が(例えば時分割で)用いられてもよいし、下りリンク用の電力増幅器と上りリンク用の電力増幅器が別個に用意されてもよい。また、端末装置103は、送信信号の線形性を担保可能な領域で第3の電力増幅器302を動作させてもよい。この場合、非線形歪みは、端末装置103においては発生せず、中継装置102が有する第4の電力増幅器303においてのみ発生する。このため、この場合の非線形歪みの補償の際には、第4の電力増幅器303の特性のみが使用されうる。なお、端末装置103が有する第3の電力増幅器302においても非線形歪みが発生する場合には、端末装置103は、その第3の電力増幅器302の非線形歪みに関する情報を基地局装置101へ通知しうる。これにより、基地局装置101が、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303における非線形歪みを特定し、それに基づいてDPoD304を適切に実行することができるようになる。
【0022】
DPoD304は、受信信号に対して非線形歪みの補償処理を実行し、処理後の受信信号305を出力する。ここで、処理後の受信信号305の波形が端末装置103の送信信号301の波形と(その電力を除いて)一致するようにDPoD304が適用される。例えば、DPoD304は、端末装置103から受信した第3の電力増幅器302の特性を示す情報と、中継装置102から受信した第4の電力増幅器303の特性を示す情報とから、第3の電力増幅器302への入力信号x1と第4の電力増幅器303の出力信号y1との関係を特定する。そして、基地局装置101は、入力データをy1としたときの出力に関する教師データをx1とするような機械学習により、DPoD304の学習済みモデルを形成しうる。すなわち、基地局装置101は、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、様々なx1及びy1の値の組み合わせを特定し、その組み合わせにおけるy1の値がDPoD304に入力された場合に、そのy1に対応するx1が出力の正解データであるように機械学習を行う。また、基地局装置101は、例えば、機械学習を用いずに、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303の非線形歪みをキャンセルする、逆変換を示す多項式を特定してもよい。この場合、DPoD304は、中継装置102から受信された(第4の電力増幅器303から出力された)受信信号に対して、その多項式を適用することによって行われうる。
【0023】
上述の非線形歪みの補償処理は、端末装置103において実行されてもよい。この場合、基地局装置101が、端末装置103に対して、中継装置102から受信した中継装置102の電力増幅器の非線形歪みに関連する情報を通知する。端末装置103は、その情報に基づいて、上述の基地局装置101によって実行される処理と同様にして、DPDやDPoDを実行することができる。
【0024】
端末装置103は、例えば、上りリンクの通信において、
図4に示すように、送信対象信号401に対してDPD402を適用して信号を歪ませうる。この歪みは、端末装置103の第3の電力増幅器302と中継装置102の第4の電力増幅器303における非線形歪みをキャンセルするような特性を有する。なお、端末装置103の第3の電力増幅器302が、非線形歪みの生じない領域で使用される場合には、第3の電力増幅器302の影響を考慮せず、第4の電力増幅器303における非線形歪みのみがキャンセルされるようにDPD402が構成されうる。そして、人工的に歪められた信号は、端末装置103の第3の電力増幅器302に入力されて送出され、その後、中継装置102が有する第4の電力増幅器303を介して、基地局装置101へ転送される中継信号403となる。
【0025】
このとき、DPD402は、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303を経た後の中継信号403の波形が送信対象信号401の波形と(その電力を除いて)一致するように構成される。このために、端末装置103は、例えば、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、第3の電力増幅器302への入力x2と第4の電力増幅器303の出力y2との関係を特定する。そして、端末装置103は、入力データをy2としたときの出力に関する教師データをx2とするような機械学習により、DPD402の学習済みモデルを形成しうる。すなわち、端末装置103は、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、様々なx2及びy2の値の組み合わせを特定し、その組み合わせにおけるy2の値がDPD402に入力された場合に、そのy2に対応するx2が出力の正解データであるように機械学習を行う。この機械学習の結果、端末装置103は、DPD402の学習済みモデルを取得する。学習済みモデルが取得された後、端末装置103は、送信対象信号が発生した場合、その信号を、DPD402の学習済みモデルに入力して、歪ませた信号を取得する。端末装置103が、DPD402を用いて信号を事前に歪ませることで、基地局装置101において、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303における非線形歪みのない(そのような歪みの影響を無視できる)無線信号を受信することが可能となる。
【0026】
また、この場合も、機械学習を用いずに、第3の電力増幅器302及び第4の電力増幅器303の非線形歪みの逆変換を示す多項式が特定されてもよい。この場合、DPD402は、送信対象信号401に対して、その逆変換を適用することによって行われうる。
【0027】
なお、DPD402の学習済みモデルや逆変換の多項式は、端末装置103ではなく、基地局装置101やネットワークに接続されたサーバ(不図示)などの他の装置において特定されてもよい。すなわち、基地局装置101は、中継装置102が有する第4の電力増幅器303の非線形歪みの特性を受信しているため、その特性に基づいて、DPD402を特定してもよい。なお、端末装置103の第3の電力増幅器302において非線形歪みが生じない場合には、基地局装置101は、第4の電力増幅器303の非線形歪みの特性の情報のみにより、DPD402の学習済みモデルや逆変換の多項式を特定することができる。なお、端末装置103が有する第3の電力増幅器302においても非線形歪みが生じる場合には、端末装置103は、その第3の電力増幅器302の非線形歪みの特性の情報を基地局装置101へ通知しうる。なお、サーバがDPD402を特定する場合、基地局装置101は、端末装置103が有する第3の電力増幅器302の非線形歪みの特性や中継装置102が有する第4の電力増幅器303の非線形歪みの特性を、そのサーバへ提供する。そして、サーバは特定したDPD402を基地局装置101へ通知する。DPD402の学習済みモデルや逆変換の多項式の特定は、上述の端末装置103がこれらを特定する場合と同様にして行われる。そして、基地局装置101は、特定したDPD402の学習済みモデルや逆変換の多項式を、端末装置103へ通知しうる。これにより、端末装置103は、その通知された学習済みモデルや逆変換の多項式をそのまま利用して、送信対象信号にDPD402を適用することができるようになる。
【0028】
また、端末装置103は、
図5に示すように、下りリンクの通信において、DPoDを実行することができる。この場合、基地局装置101の送信信号501が、基地局装置101が有する第1の電力増幅器203と、中継装置102が有する第2の電力増幅器204を介して、端末装置103において受信される。なお、基地局装置101は、送信信号の線形性を担保可能な領域で第1の電力増幅器203を動作させてもよい。この場合、非線形歪みは、基地局装置101においては発生せず、中継装置102が有する第2の電力増幅器204においてのみ発生する。このため、非線形歪みの補償の際には、その第2の電力増幅器204の特性のみが使用されうる。なお、基地局装置101が有する第1の電力増幅器203においても非線形歪みが発生する場合には、基地局装置101は、第2の電力増幅器204の非線形歪みの情報のみならず、その第1の電力増幅器203の非線形歪みの情報を端末装置103へ通知しうる。これにより、端末装置103が、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204における非線形歪みを特定し、それに基づいてDPoD502を適切に実行することができるようになる。
【0029】
DPoD502は、受信信号に対して非線形歪みの補償処理を実行し、処理後の受信信号503を出力する。ここで、処理後の受信信号503の波形が、基地局装置101の送信信号501の波形と(その電力を除いて)一致するようにDPoD502が適用される。例えば、DPoD502は、基地局装置101から受信した基地局装置101が有する第1の電力増幅器203の特性を示す情報と、中継装置102が有する第2の電力増幅器204の特性を示す情報とから、第1の電力増幅器203への入力信号x3と第2の電力増幅器204の出力信号y3との関係を特定する。そして、端末装置103は、入力データをy3としたときの出力に関する教師データをx3とするような機械学習により、DPoD502の学習済みモデルを形成しうる。すなわち、端末装置103は、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204の特性をそれぞれ示す情報に基づいて、様々なx3及びy3の値の組み合わせを特定し、その組み合わせにおけるy3の値がDPoD502に入力された場合に、そのy3に対応するx3が出力の正解データであるように機械学習を行う。また、端末装置103は、例えば、機械学習を用いずに、第1の電力増幅器203及び第2の電力増幅器204の非線形歪みをキャンセルする、逆変換を示す多項式を特定してもよい。この場合、DPoD502は、中継装置102から受信された(第2の電力増幅器204から出力された)受信信号に対して、その多項式を適用することによって行われうる。
【0030】
なお、DPoD502の学習済みモデルや逆変換の多項式は、端末装置103ではなく、基地局装置101やネットワークに接続されたサーバ(不図示)などの他の装置において特定されてもよい。すなわち、基地局装置101は、中継装置102が有する第2の電力増幅器204の非線形歪みの特性を受信しているため、その特性に基づいて、DPoD502を特定してもよい。なお、基地局装置101の第1の電力増幅器203において非線形歪みが生じない場合には、基地局装置101は、第2の電力増幅器204の非線形歪みの特性の情報のみにより、DPoD502の学習済みモデルや逆変換の多項式を特定することができる。一方で、基地局装置101の第1の電力増幅器203において非線形歪みが生じる場合であっても、基地局装置101は、自装置の第1の電力増幅器203の特性を知っているため、端末装置103から情報を取得することなく、その特性と、第2の電力増幅器204の特性とに基づいて、DPoD502の学習済みモデルや逆変換の多項式を特定することができる。なお、サーバがDPoD502を特定する場合、基地局装置101は、自装置が有する第1の電力増幅器203の非線形歪みの特性や中継装置102が有する第2の電力増幅器204の非線形歪みの特性を、そのサーバへ提供する。そして、サーバは特定したDPoD502を基地局装置101へ通知する。DPoD502の学習済みモデルや逆変換の多項式の特定は、上述の端末装置103がこれらを特定する場合と同様にして行われる。そして、基地局装置101は、特定したDPoD502の学習済みモデルや逆変換の多項式を、端末装置103へ通知しうる。これにより、端末装置103は、その通知された学習済みモデルや逆変換の多項式をそのまま利用して、受信信号にDPoD502を適用することができるようになる。
【0031】
(装置構成)
続いて、装置構成について説明する。
図6は、本実施形態の基地局装置101、中継装置102、及び、端末装置103のハードウェア構成例を示している。基地局装置101、中継装置102、及び、端末装置103は、一例において、プロセッサ601、ROM602、RAM603、記憶装置604、及び通信回路605を含んで構成される。プロセッサ601は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM602や記憶装置604に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM602は、基地局装置101、中継装置102、及び、端末装置103のそれぞれが実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM603は、プロセッサ601がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置604は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路605は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路によって構成される。なお、
図6では、1つの通信回路605が図示されているが、基地局装置101、中継装置102、及び、端末装置103は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置101および端末装置103は、LTE用、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。中継装置102は、無線レピータとしての機能が実装された通信回路を有する。中継装置102は、例えば、所定の周波数帯域で送信された無線信号を受信し、その無線信号を増幅して、増幅後の信号を(必要に応じて周波数変換後に)出力するように構成される。基地局装置101は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、基地局装置101および中継装置102は、例えば、LTEや有線通信回線を用いて互いに通信するための通信回路を含んでもよい。また、端末装置103は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。
【0032】
図7は、本実施形態の基地局装置101の機能構成例を示す図である。基地局装置101は、その機能構成として、例えば、特性情報取得部701、情報通知部702、送信制御部703、及び、受信制御部704を含む。なお、
図7では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置101が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置101は、5Gやその後継規格などに準拠した基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図7の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図7の各機能は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路305の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0033】
特性情報取得部701は、中継装置102から、その中継装置102において使用される電力増幅器の特性の情報を取得する。この電力増幅器の特性の情報は、例えば、飽和領域における非線形歪みを特定可能な情報である。なお、この情報は、例えば、電力増幅器に対する入力を与えた場合に対応する出力を得られるような、多項式や学習済みモデルなどの形式を有する。この多項式や学習済みモデルは、中継装置102において事前に(製造又は出荷時に)特定されて記憶されているものとする。なお、学習済みモデルは、例えば、中継装置102に使用される電力増幅器に関して、室内実験系などにより複数のパターンで入力信号を与えたときの出力信号を測定し、その入力信号を学習モデルへの入力とすると共に対応する出力信号を教師データとした機械学習によって取得されうる。また、特性情報取得部701は、例えば、上りリンクの通信において、DPoDを適用する場合に、端末装置103から、その端末装置103において使用される電力増幅器の特性の情報を取得する。なお、特性情報取得部701は、非線形歪みの生じない領域で電力増幅器を端末装置103が用いている場合には、DPoDを適用する場合であっても、その電力増幅器の情報を取得しなくてもよい。なお、基地局装置101は、端末装置103が中継装置102を介して基地局装置101と接続しているか否かを特定可能であるものとする。例えば、中継装置102が、無線信号の中継の際に中継伝送用の所定の周波数帯域で無線信号を転送することや、その無線信号に所定のヘッダ等の付加情報を付加することにより、その信号を受信した基地局装置101や端末装置103が、中継装置102を介した通信を行っていることを認識することが可能となる。
【0034】
情報通知部702は、端末装置103がDPDやDPoDを適用する場合に、特性情報取得部701によって中継装置102から取得した、その中継装置102において使用される電力増幅器の特性の情報を端末装置103へ通知する。基地局装置101は、さらに、自装置において送信信号に対して適用する電力増幅器によって非線形歪みが発生する場合に、自装置の電力増幅器の特性の情報を端末装置103へ通知しうる。なお、基地局装置101が、電力増幅器を非線形歪みが発生しない領域で使用する場合には、基地局装置101の電力増幅器の特性が端末装置103へ通知されないでもよい。
【0035】
また、情報通知部702は、例えば、基地局装置101内又は他のネットワークに接続されたサーバなどによって、端末装置103が適用すべきDPDやDPoDの学習済みモデルや多項式が特定されている場合に、その学習済みモデルや多項式(すなわちDPDやDPoDの特性を示す情報)を端末装置103へ通知してもよい。なお、端末装置103においてDPDを適用する場合、そのDPDの学習済みモデルや多項式を特定するために、中継装置102の電力増幅器の情報と端末装置103の電力増幅器の情報とが使用される。なお、端末装置103が、非線形歪みの生じない領域で電力増幅器を用いる場合には、中継装置102の電力増幅器の情報のみが使用されうる。また、端末装置103においてDPoDを適用する場合、そのDPoDの学習済みモデルや多項式を特定するために、基地局装置101の電力増幅器の情報と中継装置102の電力増幅器の情報とが使用される。なお、基地局装置101が、非線形歪みの生じない領域で電力増幅器を用いる場合には、中継装置102の電力増幅器の情報のみが使用されうる。なお、情報通知部702は、基地局装置101と異なるサーバが、DPDやDPoDの学習済みモデルや多項式を特定する場合、そのサーバへ、それらの情報を通知する。その後に、情報通知部702は、サーバからDPDやDPoDの学習済みモデルや多項式を受信して、端末装置103へ、その学習済みモデルや多項式の情報を通知する。
【0036】
送信制御部703は、端末装置103へ信号を送信する際の制御を行う。送信制御部703は、例えば、基地局装置101においてDPDを使用する場合、中継装置102の電力増幅器の情報に少なくとも基づいて、送信対象信号に適用すべきDPDの学習済みモデルや多項式を特定する。なお、基地局装置101の電力増幅器が飽和領域付近で動作する場合、送信制御部703は、その基地局装置101の電力増幅器の情報をも考慮して、送信対象信号に適用すべきDPDの学習済みモデルや多項式を特定しうる。送信制御部703は、特定された学習済みモデルに送信対象信号を入力し、又は、送信対象信号に特定された多項式を適用することにより、送信対象信号を人工的に歪ませる。そして、送信制御部703は、その人工的に歪められた信号を、電力増幅器で増幅してから、アンテナを介して送出する。その信号は、人工的に歪められた波形が中継装置102の電力増幅器の非線形歪みによって相殺されて、電力増幅器の非線形歪みの影響を受けない信号として端末装置103によって受信されることとなる。なお、送信制御部703は、例えば、端末装置103においてDPoDを適用する場合には、DPDを適用せずに無線信号を送信しうる。
【0037】
受信制御部704は、端末装置103から(中継装置102を介して)信号を受信する際の制御を行う。受信制御部704は、例えば、基地局装置101においてDPoDを使用する場合、中継装置102の電力増幅器の情報に少なくとも基づいて、受信信号に適用すべきDPoDの学習済みモデルや多項式を特定する。なお、端末装置103の電力増幅器が飽和領域付近で動作する場合、受信制御部704は、その端末装置103の電力増幅器の情報をも考慮して、受信信号に適用すべきDPoDの学習済みモデルや多項式を特定しうる。受信制御部704は、受信信号をその学習済みモデルに入力し、又は、受信信号にその多項式を適用し、処理後の受信信号を取得する。その処理後の受信信号は、端末装置103の電力増幅器および中継装置102の電力増幅器の非線形歪みがDPoDによってキャンセルされて、電力増幅器の非線形歪みの影響を受けない信号となる。そして、受信制御部704は、その処理後の受信信号に対して、例えばチャネル推定や復調及び復号を行う。なお、受信制御部704は、例えば、端末装置103においてDPDを適用する場合には、受信信号に対してDPoDを適用しない。
【0038】
図8は、本実施形態の中継装置102の機能構成例を示す図である。中継装置102は、その機能構成として、例えば、特性情報通知部801、及び、転送制御部802を含む。なお、
図8では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、中継装置102が有しうる他の各種機能については図示を省略している。また、
図8の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図8の各機能は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路305の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0039】
特性情報通知部801は、基地局装置101へ、中継装置102において使用される電力増幅器の特性の情報を通知する。すなわち、基地局装置101の特性情報取得部701において取得される情報が、特性情報通知部801によって通知される。通知される情報は、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。転送制御部802は、無線信号の転送を行う。転送制御部802は、例えば、基地局装置101から送出された無線信号を受信すると、第2の電力増幅器204によって増幅して、増幅後の信号を端末装置103に向けて送出する。また、転送制御部802は、例えば、端末装置103から送出された無線信号を受信すると、第4の電力増幅器303によって増幅して、増幅後の信号を基地局装置101に向けて送出する。
【0040】
図9は、本実施形態の端末装置103の機能構成例を示す図である。端末装置103は、その機能構成として、例えば、情報取得部901、送信制御部902、及び、受信制御部902を含む。なお、
図9では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置103が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置103は、5Gやその後継規格などに準拠した端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図9の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図9の各機能は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路305の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0041】
情報取得部901は、端末装置103がDPDやDPoDを使用する場合に、そのDPDやDPoDのための情報を、基地局装置101から取得する。情報取得部901は、例えば、中継装置102の電力増幅器の情報を取得する。また、情報取得部901は、さらに、基地局装置101の電力増幅器の情報を取得しうる。なお、基地局装置101又はネットワークに接続されたサーバがDPDやDPoDのための学習済みモデルや多項式を特定した場合、情報取得部901は、その学習済みモデル又は多項式の情報(すなわちDPDやDPoDの特性を示す情報)を、基地局装置101から取得しうる。
【0042】
送信制御部902は、基地局装置101へ信号を送信する際の制御を行う。送信制御部902は、例えば、端末装置103においてDPDを使用する場合、中継装置102の電力増幅器の情報に少なくとも基づいて、送信対象信号に適用すべきDPDの学習済みモデルや多項式を特定する。なお、端末装置103の電力増幅器が飽和領域付近で動作する場合、送信制御部902は、その端末装置103の電力増幅器の情報をも考慮して、送信対象信号に適用すべきDPDの学習済みモデルや多項式を特定しうる。なお、送信制御部902は、基地局装置101から、DPDの学習済みモデルや多項式の情報を受信した場合、その学習済みモデル又は多項式を、そのまま使用することができる。送信制御部902は、学習済みモデルに送信対象信号を入力し、又は、送信対象信号に多項式を適用することにより、送信対象信号を人工的に歪ませる。そして、送信制御部902は、その人工的に歪められた信号を、電力増幅器で増幅してから、アンテナを介して送出する。その信号は、人工的に歪められた波形が端末装置103の電力増幅器と中継装置102の電力増幅器の非線形歪みによって相殺されて、電力増幅器の非線形歪みの影響を受けない信号として基地局装置101によって受信されることとなる。なお、送信制御部902は、例えば、基地局装置101においてDPoDを適用する場合には、DPDを適用せずに無線信号を送信しうる。
【0043】
受信制御部903は、基地局装置101から(中継装置102を介して)信号を受信する際の制御を行う。受信制御部903は、例えば、端末装置103においてDPoDを使用する場合、中継装置102の電力増幅器の情報に少なくとも基づいて、受信信号に適用すべきDPoDの学習済みモデルや多項式を特定する。なお、基地局装置101の電力増幅器が飽和領域付近で動作する場合、受信制御部903は、その基地局装置101の電力増幅器の情報をも考慮して、受信信号に適用すべきDPoDの学習済みモデルや多項式を特定しうる。受信制御部903は、受信信号をその学習済みモデルに入力し、又は、受信信号にその多項式を適用し、処理後の受信信号を取得する。その処理後の受信信号は、基地局装置101の電力増幅器および中継装置102の電力増幅器の非線形歪みがDPoDによってキャンセルされて、電力増幅器の非線形歪みの影響を受けない信号となる。そして、受信制御部903は、その処理後の受信信号に対して、例えばチャネル推定や復調及び復号を行う。なお、受信制御部903は、例えば、基地局装置101においてDPDを適用する場合には、受信信号に対してDPoDを適用しない。
【0044】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について説明する。
図10は、基地局装置101において送信信号にDPDを適用する場合の処理の流れの例を示している。本処理例では、中継装置102が、基地局装置101に対して、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性を通知する(S1001)。基地局装置101は、通知された中継装置102の電力増幅器の情報に基づいて機械学習を実行し(S1002)、DPDの学習済みモデルを取得する。ここで、基地局装置101は、自装置の電力増幅器を飽和領域付近で動作させることにより非線形歪みが発生することが想定される場合、自装置の電力増幅器の特性をも考慮して機械学習を実行する。なお、ここでは機械学習が行われる場合の例について説明するが、非線形歪みの伝達関数の逆変換を示す多項式が特定されてもよい。その後、基地局装置101は、送信対象データが発生すると(S1003)、その送信対象データに基づいて変調等を行い、送信対象信号を生成する。基地局装置101は、その送信対象信号をS1002において取得された学習済みモデルに入力して、送信対象信号にDPDを適用する(S1004)。そして、基地局装置101は、DPDを適用後の信号を増幅し(S1005)、無線信号として出力する(S1006)。中継装置102は、その無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して(S1007)、転送する。端末装置103は、その転送された無線信号を受信する(S1008)。
【0045】
これによれば、端末装置103において、S1005及びS1007で生じうる非線形歪みの影響を受けない無線信号を受信することができるようになる。
【0046】
次に、
図11を用いて、基地局装置101において受信信号にDPoDを適用する場合の処理の流れの例について説明する。本処理例では、中継装置102が、基地局装置101に対して、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性を通知する(S1101)。また、端末装置103は、自装置の電力増幅器を飽和領域付近で動作させることにより非線形歪みが発生することが想定される場合、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性を通知しうる(S1102)。そして、基地局装置101は、通知された中継装置102の電力増幅器の情報(及び、存在する場合は端末装置103の電力増幅器の情報)に基づいて機械学習を実行し(S1103)、DPoDの学習済みモデルを取得する。なお、ここでは機械学習が行われる場合の例について説明するが、非線形歪みの伝達関数の逆変換を示す多項式が特定されてもよい。その後、端末装置103は、送信対象データが発生すると(S1104)、その送信対象データに基づいて変調等を行い、送信対象信号を生成し、生成した信号を増幅して(S1105)、無線信号として出力する(S1106)。中継装置102は、その無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して(S1107)、転送する。基地局装置101は、その無線信号を受信すると(S1108)、S1003において取得された学習済みモデルに入力して、その受信した無線信号にDPoDを適用する(S1109)。
【0047】
これによれば、基地局装置101において、受信信号から、S1105及びS1107で生じうる非線形歪みの影響をキャンセルした信号を取得することができるようになる。
【0048】
次に、
図12を用いて、端末装置101において送信信号にDPDを適用する場合の処理の流れの例について説明する。本処理例では、中継装置102が、基地局装置101に対して、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性を通知する(S1201)。基地局装置101は、中継装置102の電力増幅器の非線形歪みの特性を、端末装置103へ通知する(S1202)。端末装置103は、通知された中継装置102の電力増幅器の情報に基づいて機械学習を実行し(S1002)、DPDの学習済みモデルを取得する。なお、端末装置103は、例えば自装置の電力増幅器を飽和領域付近で動作させることにより非線形歪みが発生することが想定される場合、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性も考慮して、機械学習を実行しうる。なお、ここでは機械学習が行われる場合の例について説明するが、非線形歪みの伝達関数の逆変換を示す多項式が特定されてもよい。その後、端末装置103は、送信対象データが発生すると(S1204)、その送信対象データに基づいて変調等を行い、送信対象信号を生成する。端末装置103は、その送信対象信号をS1203において取得された学習済みモデルに入力して、送信対象信号にDPDを適用する(S1205)。そして、端末装置103は、DPDを適用後の信号を増幅し(S1206)、無線信号として出力する(S1207)。中継装置102は、その無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して(S1208)、転送する。基地局装置101は、その転送された無線信号を受信する(S1209)。
【0049】
これによれば、基地局装置101において、S1206及びS1208で生じうる非線形歪みの影響を受けない無線信号を受信することができるようになる。
【0050】
次に、
図13を用いて、端末装置101において受信信号にDPoDを適用する場合の処理の流れの例について説明する。本処理例では、中継装置102が、基地局装置101に対して、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性を通知する(S1301)。基地局装置101は、中継装置102の電力増幅器の非線形歪みの特性を、端末装置103へ通知する(S1302)。なお、基地局装置101は、例えば自装置の電力増幅器を飽和領域付近で動作させることにより非線形歪みが発生することが想定される場合、自装置の電力増幅器の非線形歪みの特性も、端末装置103へ通知しうる。そして、端末装置103は、通知された中継装置102の電力増幅器の情報(及び、存在する場合は基地局装置101の電力増幅器の情報)に基づいて機械学習を実行し(S1303)、DPoDの学習済みモデルを取得する。なお、ここでは機械学習が行われる場合の例について説明するが、非線形歪みの伝達関数の逆変換を示す多項式が特定されてもよい。その後、基地局装置101は、送信対象データが発生すると(S1304)、その送信対象データに基づいて変調等を行い、送信対象信号を生成し、生成した信号を増幅して(S1305)、無線信号として出力する(S1306)。中継装置102は、その無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して(S1307)、転送する。端末装置103は、その無線信号を受信すると(S1308)、S1303において取得された学習済みモデルに入力して、その受信した無線信号にDPoDを適用する(S1309)。
【0051】
これによれば、端末装置103において、受信信号から、S1305及びS1307で生じうる非線形歪みの影響をキャンセルした信号を取得することができるようになる。
【0052】
以上のようにして、中継装置における電力増幅器における非線形歪みを補償可能とすることにより、その非線形歪みの発生を許容し、システム全体の電力効率を改善することが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0053】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。