(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130220
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ケモカイン産生促進剤及びケモカイン産生促進用飲食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20240920BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240920BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/744
A61P37/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039835
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】305018395
【氏名又は名称】協同乳業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521555579
【氏名又は名称】酪王協同乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村篤央
(72)【発明者】
【氏名】角沙樹
(72)【発明者】
【氏名】久米愛子
(72)【発明者】
【氏名】松本光晴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺善久
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC61
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB09
(57)【要約】
【課題】ケモカインの産生を促進する新規な剤や組成物、特に飲食品の形態とすることにより、摂取することが容易なケモカイン産生促進剤やケモカイン産生促進用飲食品組成物を提供する。また、それらを用いたケモカイン産生促進用飲食品を提供する。
【解決手段】ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌、特に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌をケモカイン産生促進剤やケモカイン産生促進用飲食品組成物の有効成分として使用することにより上記課題を解決した。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進剤。
【請求項2】
CXCケモカインの産生を促進する請求項1に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項3】
CXCL1、CXCL9及びCXCL10より選ばれる1種以上のCXCケモカインの産生を促進する請求項2に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項4】
CCケモカインの産生を促進する請求項1に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項5】
CCL3、CCL4及びCCL5より選ばれる1種以上のCCケモカインの産生を促進する請求項4に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項6】
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項7】
前記乳酸菌が、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のケモカイン産生促進剤。
【請求項8】
ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項9】
CXCケモカインの産生を促進する請求項8に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項10】
CXCL1、CXCL9及びCXCL10より選ばれる1種以上のCXCケモカインの産生を促進する請求項9に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項11】
CCケモカインの産生を促進する請求項8に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項12】
CCL3、CCL4及びCCL5より選ばれる1種以上のCCケモカインの産生を促進する請求項11に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項13】
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌である請求項8ないし請求項12の何れかの請求項に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項14】
前記乳酸菌が、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌である請求項8ないし請求項12の何れかの請求項に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物。
【請求項15】
請求項8ないし請求項12の何れかの請求項に記載のケモカイン産生促進用飲食品組成物を含有することを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品。
【請求項16】
乳製品である請求項15に記載のケモカイン産生促進用飲食品。
【請求項17】
発酵乳又は乳酸菌飲料である請求項16に記載のケモカイン産生促進用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の種の乳酸菌を含有するケモカイン産生促進剤、ケモカイン産生促進用飲食品組成物、かかるケモカイン産生促進用飲食品組成物を含有するケモカイン産生促進用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、ケモタクティック(走化性)・サイトカインとして命名された低分子のサイトカインの一種であり、7回膜貫通ヘリックスを分子内に持つGタンパク質共役レセプターを介してシグナル伝達を行う。ケモカインは、分子内のシステイン残基の存在形式でCXC(CXCL)、CC(CCL)、CX3C(CX3CL)、C(XCL)の4つのサブファミリーに分類され、約50種のケモカインと約20種のケモカイン受容体が同定され、更に多くの同定が試みられている。感染部位や炎症局所への白血球やリンパ球の遊走(走化)及び活性化の誘導がケモカインの最もよく知られた機能であるが、ケモカインは、遊走(走化)以外にも様々な免疫調整機能を有していることが報告され、免疫調整のターゲットとして注目されている。
【0003】
特許文献1には、インターロイキン27を有効成分として含む、血管新生阻害剤が記載されており、血管新生の阻害は、インターロイキン27が血管内皮細胞に作用して当該血管内皮細胞からのケモカインの産生を誘導することにより生じるものであるとされている。該血管新生阻害剤によって産生が誘導されるケモカインの具体例として、特許文献1には、IP-10(CXCL10)、MIG(CXCL9)、I-TAC(CXCL11)が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有するケモカイン産生促進剤が記載されている。該ケモカイン産生促進剤によって産生が誘導されるケモカインの具体例として、特許文献2には、MIP-1α(CCL3)、MIP-1β(CCL4)、RANTES(CCL5)が記載されており、該ケモカイン産生促進剤はエイズ治療に有効であるとされている。
【0005】
特許文献3には、2-デオキシ-D-グルコース等の糖誘導体を含むケモカイン産生促進剤が記載されている。該ケモカイン産生促進剤によって産生が誘導されるケモカインの具体例として、特許文献3には、CXCL9、CXCL10、CXCL11が記載されており、該ケモカイン産生促進剤は癌の微小環境における抗腫瘍免疫を増強することができるとされている。
【0006】
ケモカインの持つ免疫調整機能は、疾患の予防・治療等にも関わる可能性があり、ケモカインの産生を誘導することのできる新規な剤や組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-315988号公報
【特許文献2】特開2000-336034号公報
【特許文献3】特開2022-078362号公報
【特許文献4】特許第6505018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、ケモカインの産生を促進する新規な剤や組成物、特に飲食品の形態とすることにより、摂取することが容易なケモカイン産生促進剤やケモカイン産生促進用飲食品組成物を提供することにあり、また、それらを用いたケモカイン産生促進用飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌には、ケモカインの産生を促進する作用があり、かかる乳酸菌は食経験が豊富であることから、ケモカイン産生促進用飲食品組成物に適していることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記のケモカイン産生促進用飲食品組成物を含有することを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケモカインの産生を促進する新規な剤や組成物、特に飲食品の形態とすることにより、摂取することが容易なケモカイン産生促進剤やケモカイン産生促進用飲食品組成物や、それらを用いたケモカイン産生促進用飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】評価例1におけるCXCL1の相対濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図2】評価例1におけるCXCL9の相対濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図3】評価例1におけるCXCL10の相対濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図4】評価例1におけるCCL3とCCL4の相対濃度の合計値の測定結果を示すグラフである。
【
図5】評価例1におけるCCL5の相対濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図6】評価例2におけるCCL3の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図7】評価例2におけるCCL4の濃度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0016】
<ケモカイン産生促進剤>
本発明は、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進剤に関する。
【0017】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)は、ストレプトコッカス科に属すグラム陽性菌であるラクトコッカス(Lactococcus)属の乳酸菌の1種である。ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌は、従来、バター、チーズ、乳酸菌飲料等の飲食品に使用されており、食経験が豊富である。
【0018】
ラクトコッカス・ラクティスの亜種として、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp. hordniae)の2種が知られているが、何れも、本発明のケモカイン産生促進剤の有効成分となり得る。
本発明のケモカイン産生促進剤の有効成分である乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌であることが特に好ましい。
【0019】
本発明のケモカイン産生促進剤の有効成分である、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0020】
<(A)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌>
(A1)独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌
(A2)JCM5805株
(A3)JCM1158株
(A4)JCM7638株
(A5)JCM12650株
(A6)JCM20101株
(A7)JCM20128株
(A8)JCM20312株
(A9)JCM20399株
(A10)ATCC19435株
(A11)ATCC15577株
(A12)ATCC11454株
(A13)ATCC7962株
(A14)ATCC15346株
(A15)ATCC29146株
(A16)ATCC11007株
(A17)ATCCbaa-1055株
(A18)ATCC13675株
(A19)ATCC11955株
(A20)ATCC7963株
(A21)ATCC12929株
(A22)ATCC27861株
(A23)DSM20481株
(A24)DSM20175株
(A25)DSM4366株
(A26)DSM20250株
(A27)DSM20384株
(A28)DSM20481株
(A29)DSM20661株
(A30)DSM20729株
(A31)DSM27303株
(A32)DSM30863株
(A33)DSM110082株
(A34)DSM111832株
(A35)DSM111868株
(A36)DSM111869株
(A37)DSM111870株
(A38)NBRC100933株
(A39)NBRC12007株
(A40)NBRC114714株
(A41)NBRC114784株
(A42)NRIC1149株
(A43)NRIC1074株
(A44)NRIC1150株
(A45)NRIC0497株
(A46)NRIC1147株
(A47)NRIC1148株
【0021】
<(B)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエに属する乳酸菌>
(B1)JCM1180株
(B2)JCM11040株
(B3)ATCC29071株
(B4)DSM20450株
(B5)NBRC100931株
【0022】
上記(A2)~(A9)、(B1)、(B2)の乳酸菌は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室より入手可能である。
上記(A10)~(A22)、(B3)の乳酸菌は、ATCC(American Type Culture Collection)(米国)より入手可能である。
上記(A23)~(A37)、(B4)の乳酸菌は、DMSZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)(ドイツ)より入手可能である。
上記(A38)~(A41)、(B5)の乳酸菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構・バイオテクノロジーセンターより入手可能である。
上記(A42)~(A47)の乳酸菌は、東京農業大学・微生物リソースセンターより入手可能である。
【0023】
なお、同一の菌株が、複数の機関から入手可能であり、それぞれの機関において別々の番号が付されている場合がある。
上記のラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌の具体例の中には、同一の菌株が別々の番号を付されて重複して記載されているものがある。
【0024】
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに属する乳酸菌であり、その詳細は、特許文献4に記載されている。
以下、「独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌」を、「11/19-B1株」又は「11/19-B1」と記述する場合がある。
【0025】
11/19-B1株は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation、以下、「NITE」と略記する)の特許微生物寄託センター(NPMD)に国内寄託され、受託番号:NITE P-01694(寄託日:2013年8月20日)として受託された微生物である。
11/19-B1株は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2013年8月20日)から、ブダペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2014年10月15日)、生存が証明され、ブダペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-01694」を付与された。
【0026】
本発明のケモカイン産生促進剤が産生を促進するケモカインの種類について、特に限定はなく、本発明のケモカイン産生促進剤は、CXCケモカイン、CCケモカイン、CX3Cケモカイン、Cケモカインの産生を促進することができる。
【0027】
更に具体的には、本発明のケモカイン産生促進剤が産生を促進するCXCケモカインとしては、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11が例示できる。
【0028】
CXCL1は、主にマクロファージ、好中球及び上皮細胞から産生され、主に好中球の活性化を誘導する。CXCL1は、炎症反応、創傷治癒に関与している。
【0029】
CXCL9、CXCL10、CXCL11は主に単球、内皮細胞、線維芽細胞から産生され、単球、T細胞、NK細胞、樹状細胞の遊走や活性化、分化に関与している。CXCL9、CXCL10、CXCL11は抗腫瘍免疫にとって重要な免疫応答であり、癌免疫療法への利用が検討されている。更に、CXCL10については、抗腫瘍免疫だけでなく抗ウイルス感染へも関与している。
【0030】
また、本発明のケモカイン産生促進剤が産生を促進するCCケモカインとしては、CCL3、CCL4、CCL5が例示できる。
【0031】
CCL3、CCL4は、単球、マクロファージ、樹状細胞及び上皮細胞により産生され、単球、好中球、好酸球、T細胞、NK細胞、メモリーT細胞の遊走や活性化に関与している。また、CCL5は主にT細胞や単球によって産生され、主に好酸球と好塩基球の遊走やT細胞の活性化に関与している。CCL3、CCL4、CCL5は、抗腫瘍作用や抗感染作用を有することが報告されている。
【0032】
本発明のケモカイン産生促進剤は、有効成分である「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」を種々の状態で含むことができる。
【0033】
本発明のケモカイン産生促進剤は、「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」を、生菌の状態で含有してもよいし、死菌の状態で含有してもよい。
例えば、本発明のケモカイン産生促進剤の有効成分として、生菌体、湿潤菌、乾燥菌等が適宜使用可能である。また、本発明のケモカイン産生促進剤の有効成分として、加熱殺菌処理、放射線殺菌処理、破砕処理等を施した死菌も適宜使用可能である。
【0034】
本発明のケモカイン産生促進剤は、「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」の生菌又は死菌に、種々の処理を施した処理物を含有していてもよい。
かかる処理物としては、例えば、培養物;濃縮物;ペースト化物;噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物;液状化物;希釈物;破砕物;殺菌加工物;該培養物からの抽出物;等が挙げられる。
【0035】
本発明のケモカイン産生促進剤における、「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」の含有量(生菌、死菌、処理物を合計した含有量)は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥重量にして0.00001質量%以上であることが好ましく、0.00005質量%以上であることがより好ましく、0.0001質量%以上であることが特に好ましく、0.001質量%以上であることが更に好ましい。また、100質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが特に好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明のケモカイン産生促進剤は、有効成分である「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」に加えて、「その他の成分」を含有することができる。
「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、凍結乾燥等の加工を行う際の添加剤、薬学的に許容され得る担体が「その他の成分」の例として挙げられる。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択することができる。
【0037】
本発明のケモカイン産生促進剤が含有する「その他の成分」には、意図的に添加する成分のみならず、「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」が産生することによって生じる成分も含まれる。かかる成分として、例えば、デキストランが挙げられる。
【0038】
本発明のケモカイン産生促進剤が含有する「その他の成分」の含有量に、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本発明のケモカイン産生促進剤の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
【0040】
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0041】
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0042】
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。
前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
【0043】
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。
前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0044】
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。
前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維等からなる織布又は不織布;軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム又は発泡体シート等が挙げられる。
【0045】
本発明のケモカイン産生促進剤の投与対象としては、特に制限はないが、例えば、ヒト;マウス;ラット;サル;ウマ;ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜;ネコ、イヌ、ウサギ、ハムスター等のペット;等が挙げられる。
【0046】
本発明のケモカイン産生促進剤の投与方法としては、特に制限はなく、剤型等に応じ、適宜選択することができる。具体的には、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入等が挙げられる。
【0047】
本発明のケモカイン産生促進剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分の乾燥重量として、0.0001mg以上であることが好ましく、0.001mg以上であることがより好ましく、0.01mg以上であることが特に好ましい。また、10g以下であることが好ましく、2g以下であることがより好ましく、0.5g以下であることが特に好ましい。
【0048】
本発明のケモカイン産生促進剤の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
【0049】
<ケモカイン産生促進用飲食品組成物>
本発明は、ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品組成物にも関する。
すなわち、前記した本発明のケモカイン産生促進剤は、飲食品に添加する用途に使用することができる。
本発明のケモカイン産生促進用飲食品組成物の詳細については、前記したケモカイン産生促進剤と同様である。
【0050】
<ケモカイン産生促進用飲食品>
本発明は、前記のケモカイン産生促進用飲食品組成物を含有することを特徴とするケモカイン産生促進用飲食品にも関する。
【0051】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品は、前記したケモカイン産生促進用飲食品組成物に加えて、更に、「その他の成分」を含有することができる。
【0052】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品における、前記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料等が挙げられる。また、「その他の成分」の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品は、チルド製品(0℃以上10℃以下の温度で保存される製品)であってもよいし、チルド製品以外(冷凍保存される製品、常温保存される製品等)であってもよい。
【0054】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット、氷菓等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;発酵乳(ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルト、フローズンヨーグルト等)、乳酸菌飲料、プリン、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;各種調味料;特定保健用食品;栄養機能食品等が挙げられる。
中でも、発酵乳、乳酸菌飲料等の乳製品が好ましい。
【0055】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。前記経口固形剤、前記経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した薬剤の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0056】
本発明のケモカイン産生促進用飲食品における「ラクトコッカス・ラクティスに属する乳酸菌」の含有量(生菌、死菌、処理物を合計した含有量)は、ケモカイン産生促進用飲食品100gあたり0.1μg以上であることが好ましく、1μg以上であることがより好ましく、5μg以上であることが特に好ましく、10μg以上であることが更に好ましい。また、100g以下であることが好ましく、10g以下であることがより好ましく、5g以下であることが特に好ましく、1g以下であることが更に好ましい。
【実施例0057】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
[菌体の調製]
表1に示す公知の乳酸菌株を使用し、各菌株の性質に合わせて培養した。Bifidobacterium animalis subsp. lactis(LKM10114)は、嫌気条件下で培養するためにアネロパック(三菱ガス化学社製)を使用した。
【0059】
【0060】
表1における「11/19-B1」は、「独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-01694の乳酸菌」である。
【0061】
500mL三角フラスコに200mLの液体培地を作製し、寒天培地で培養しておいた各菌株のコロニーを液体培地に懸濁し200μL添加した後、48時間静置培養した。菌株毎に200mLを2本ずつ培養し、培養後2本をまとめて処理した。培養48時間後に培養液を回収し、4℃、3000×gで20分間遠心を行い、培地を除去し、菌体ペレットを30mLの氷冷生理食塩水に懸濁にした。4℃、2900×gで20分間遠心分離を行い、遠心後に上清を捨てて30mLのmilliQ水(「milliQ」は登録商標。)に懸濁し、再度同条件で遠心分離を行うことで菌体の洗浄を行った。上清を捨てて10mL氷冷milliQ水に懸濁後、沸騰水中に10分間浸漬することで加熱殺菌を行い、氷冷した後ディープフリーザーで凍結させ、その後凍結乾燥処理をすることで加熱死菌体粉末を得た。加熱死菌体粉末を秤量し、2mg(菌体乾燥重量換算)/mLとなるようにDulbecco's phosphate buffered saline(D-PBS)に懸濁し、死菌体調製液とし使用するまで-80℃で保存した。
【0062】
評価例1(ヒト末梢血単核球(PBMC)を使用した試験)
[ヒトPBMCの前培養]
正常ヒトPBMC(Precision for Medicine社:精製済、HLAタイプなし)凍結ストックを37℃のウォーターバスで融解し、10%FBS及び抗生物質-抗真菌剤混合溶液を含むRPMI1640培地(ナカライテスク社製)に懸濁した。細胞懸濁液を遠心分離後に上清を除き、10%FBS、抗生物質-抗真菌剤混合溶液、及び0.1mg/mLのDNaseIを含むRPMI1640培地に懸濁し、室温で15分間静置した。10%FBS及び抗生物質-抗真菌剤混合溶液を含むRPMI1640培地を追加し、遠心分離後に上清を除き、10%FBS及び抗生物質-抗真菌剤混合溶液(ナカライテスク社製)を含むRPMI1640培地5mLに懸濁した。細胞懸濁液は60mm径の細胞培養ディッシュに全量播種し、37℃のインキュベーター(CO2濃度5%)で24時間前培養した。前培養後に遠心分離し、10%FBS及び抗生物質-抗真菌剤混合溶液を含むRPMI1640培地に再懸濁し、試験に供した。
【0063】
[菌体によるヒトPBMCの刺激]
24ウェルプレートに生細胞数が1×106cells/mLになるようにヒトPBMCを播種し(500μL/well)、そこに各死菌体調製液が10μg/mL(終濃度)となるように添加し37℃のインキュベーター(CO2濃度5%)で48時間培養した。また、対照実験(Control)では、各死菌体調製液に代えて、D-PBSのみを添加し、同様に48時間培養した。
【0064】
[培養上清中のケモカイン濃度の測定]
3人分の培養上清をプールしproteome profiler human xl cytokine array kit(R&D社製)を使用して、上清中のケモカイン(CXCL1、CXCL9、CKCL10、CCL3、CCL4、CCL5)の相対濃度を測定した。解析にはHLImage++ Quick spot Toolソフト(western vision software社製)を用いた。
結果を
図1~5に示す。
【0065】
評価例2(マウス生体内での試験)
[マウス生体への菌体の投与]
雌性のBALB/cマウス(ジャクソンラボラトリージャパン株式会社)を用い、8週齢時よりD-PBSに懸濁した死菌体調製液200μL(2×109)を2週間毎日ゾンデにて経口投与した。対照群(Control)はD-PBSを同量投与した。投与2週間後に小腸を採取した。NP40(終濃度0.05%)を添加したD-PBSを組織重量の9倍量添加し、バイオマッシャーII(ニッピ社製)で破砕後、4℃、20400×gで10分間遠心分離し、上清を組織抽出液とした。
【0066】
[組織抽出液のCCL3濃度の測定]
MIP-1a (CCL3) Mouse ELISA Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて組織抽出液のCCL3濃度を測定した。
結果を
図6に示す。
【0067】
[組織抽出液のCCL4濃度の測定]
Mouse CCL4/MIP-1 beta DuoSet ELISA(R&D社製)を用いて組織抽出液のCCL4濃度を測定した。
結果を
図7に示す。
本発明のケモカイン産生促進剤(ケモカイン産生促進用飲食品組成物)は、飲食品に添加して使用することができ、発酵乳、プリン、乳酸菌飲料、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓等の飲食品の生産等に広く利用されるものである。