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特開2024-130221シアントナーおよびそれを含む二成分現像剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130221
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シアントナーおよびそれを含む二成分現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20240920BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240920BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/097 368
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039838
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】椿 頼尚
(72)【発明者】
【氏名】和田 統
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA03
2H500AA06
2H500AA08
2H500CA03
2H500CA05
2H500CA29
2H500CA30
2H500CA43
2H500CB12
2H500EA13C
2H500EA14A
2H500EA24A
2H500EA42C
2H500EA52C
2H500EA61C
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】染料の分散状態が良好で、トナー中に結晶径の大きな染料凝集体の存在が少なく、染料結晶体がトナーから脱離するのを防ぎ、転写紙から布帛への昇華転写時に染料の結晶が被染色物へ移行することを抑制し得るシアントナーおよびそれとキャリアとを含む二成分現像剤を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤を含むトナー粒子を有するシアントナーであり、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂を含み、昇華性染料がトナー粒子に5~15質量%の割合のC.I.ディスパースブルー56を含み、離型剤が70℃以上でかつシアントナーの軟化点Tm以下である融点を有し、かつ紫外可視分光光度計を用いて測定される波長430nmでの透過率が30%以上であることを特徴とするシアントナーにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤を含むトナー粒子を有するシアントナーであり、
前記結着樹脂が、スチレンアクリル系樹脂を含み、
前記昇華性染料が、前記トナー粒子に5~15質量%の割合のC.I.ディスパースブルー56を含み、
前記離型剤が、70℃以上でかつ前記シアントナーの軟化点Tm以下である融点を有し、かつ
紫外可視分光光度計を用いて測定される波長430nmでの透過率が30%以上である
ことを特徴とするシアントナー。
【請求項2】
前記離型剤が、200~1500nmの分散径を有する請求項1に記載のシアントナー。
【請求項3】
前記離型剤が、前記トナー粒子に3~10質量%の割合で含まれる請求項1または2に記載のシアントナー。
【請求項4】
前記離型剤が、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスから選択される炭化水素系ワックスである請求項1または2に記載のシアントナー。
【請求項5】
前記トナー粒子が、高分子系分散剤をさらに含む請求項1または2に記載のシアントナー。
【請求項6】
前記トナー粒子が、シリカ粒子をさらに含む請求項1または2に記載のシアントナー。
【請求項7】
前記シリカ粒子が、前記トナー粒子に0.1~1.0質量%の割合で含まれる請求項6に記載のシアントナー。
【請求項8】
前記シリカ粒子が、7~60nmの平均一次粒子径を有する請求項6に記載のシアントナー。
【請求項9】
請求項1または2に記載のシアントナーとキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シアントナーおよびそれを含む二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル布に代表される疎水性繊維を染色する電子写真方式の染色方法は、(1)被染色物に直接トナーを付与した後、熱処理によってトナー中の染料を被染色物に染着させ、染料以外の樹脂、離型剤などをアルカリ洗浄により溶解したのち除去するダイレクト法、および(2)紙などの中間記録媒体にトナーを付与した後、中間記録媒体のトナー付与面と被染色物とを重ね合わせて加熱、加圧処理を行い、トナー中の染料を被染色物に昇華転写させる昇華転写法の2つに大別される。
【0003】
これらの染色方法のうち昇華転写法では、トナーを構成する複数の成分のうち染料のみを中間記録媒体から被染色物の繊維に染着させることができ、被染色物(染色布、布帛)には染料以外のトナー構成成分が付着しない。このことから、昇華転写法は、例えばスポーツアパレルなどの衣料品、シートやソファーなどのインテリアなどの風合いを重要視する用途向けの染色に適し、染料以外の構成成分による、敏感な肌質の人に対するかぶれ・湿疹などの発生リスクを低減できるなどのメリットが得られるとされている。
【0004】
また、昇華転写法に用いるトナー中の染料としては、疎水性繊維の染色に適している分散染料および油溶性染料が用いられ、これらの中でも、特に熱処理による疎水性繊維への昇華転写適性に優れた易昇華型の染料(昇華性染料)が用いられる。
また、昇華転写法は、洗浄・乾燥などの工程が不要であり、染色工程を大幅に削減できるだけでなく、高コストかつ大規模なスペースと稼働エネルギーを必要とする、洗浄・乾燥ラインおよび洗浄水の処理設備などが不要になり、有利である。
したがって、昇華転写法は、小規模なスペースでも染色できる優れた染色方法とされている。
【0005】
一方、昇華転写法による繊維の染色方法としては、一般的にインクジェット方式が主流とされている。しかしながら、インクジェット方式の昇華転写法は、インクを構成する成分の一つである有機溶剤が、染料を転写するときの熱によって揮発し、作業環境を汚染するなどの問題がある。
これに対して電子写真方式の昇華転写法は、トナー中に揮発成分が存在せず、作業環境を汚染しないことから、近年では注目が集まっている。
【0006】
このような電子写真方式によってトナーを中間記録媒体に付着させ、中間記録媒体(中間転写媒体)に付着させたトナーが含有する染料を、染色される物質に昇華転写させることにより染色を行う昇華転写染色方法に用いるトナーとして、例えば、ポリエステル系樹脂、昇華性染料、少なくとも1種類の油溶性染料およびカルナバワックスを含有するトナーが提案されている(特開2015-158560号公報:特許文献1)。
【0007】
現状で上市されている昇華性ブルー染料を用いたインクジェットプリンターのシアン染料には、C.I.ディスパースブルー359(D.B.359)およびC.I.ディスパースブルー360(D.B.360)が使用されている。
これらのシアン染料は、一般的にトナー中の分散が容易であるが、トナーに含有させると、高温放置下において染料が表面にブリードしてしまい耐熱保存性が悪化するという問題がある。
そこで、代替の染料として、C.I.ディスパースブルー56(D.B.56)の使用が検討されている。
C.I.ディスパースブルー56は、耐熱保存性が良好である反面、トナー中に分散させることが困難であり、かつ昇華性が低いために、中間記録媒体から被染色物に昇華転写する際に、十分な画像濃度を得ることが困難であるという問題がある。
すなわち、トナー中における昇華性染料の分散状態が悪いと、結晶径の大きな染料凝集体(染料結晶体)が多く存在し、染料結晶体がトナーから脱離して、昇華転写時に転写紙から被染色物に移行して、画像不良や摩擦堅牢度の低下を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-158560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本開示は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、染料の分散状態が良好で、トナー中に結晶径の大きな染料凝集体の存在が少なく、染料結晶体がトナーから脱離するのを防ぎ、転写紙から布帛への昇華転写時に染料の結晶が被染色物へ移行することを抑制し得るシアントナーおよびそれとキャリアとを含む二成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、シアントナー中に特定割合のC.I.ディスパースブルー56を含む昇華性染料を微分散させること、すなわち紫外可視分光光度計を用いて測定した波長430nmでの透過率を30%以上にすることにより、シアントナー中における結晶径の大きな染料凝集体の存在を低減し、染料凝集体がシアントナーから脱離し、転写紙から布帛への転写時に染料の結晶が布帛に移行することを抑制して、布帛上での画像不良や摩擦堅牢度の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記の特許文献1には、紫外可視分光光度計を用いて測定した波長430nmでの透過率を30%以上にすること、およびそれにより得られる効果ついては開示されていない。
【0011】
かくして、本開示によれば、少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤を含むトナー粒子を有するシアントナーであり、
前記結着樹脂が、スチレンアクリル系樹脂を含み、
前記昇華性染料が、前記トナー粒子に5~15質量%の割合のC.I.ディスパースブルー56を含み、
前記離型剤が、70℃以上でかつ前記シアントナーの軟化点Tm以下である融点を有し、かつ
紫外可視分光光度計を用いて測定される波長430nmでの透過率が30%以上である
ことを特徴とするシアントナーが提供される。
【0012】
また、本開示によれば、上記のシアントナーとキャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、染料の分散状態が良好で、トナー中に結晶径の大きな染料凝集体の存在が少なく、染料結晶体がトナーから脱離するのを防ぎ、転写紙から布帛への昇華転写時に染料の結晶が被染色物へ移行することを抑制し得るシアントナーおよびそれとキャリアとを含む二成分現像剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)シアントナー
本開示のシアントナーは、少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤を含むトナー粒子を有し、
結着樹脂が、スチレンアクリル系樹脂を含み、
昇華性染料が、トナー粒子に5~15質量%の割合のC.I.ディスパースブルー56を含み、
離型剤が、70℃以上でかつ前記シアントナーの軟化点Tm以下である融点を有し、かつ
紫外可視分光光度計を用いて測定される波長430nmでの透過率が30%以上である
ことを特徴とする。
【0015】
本開示のシアントナーが上記のような優れた効果を発揮する明確な理由は定かではないが、本発明者らは、分子間力が非常に弱い昇華性染料を、相溶状態でトナー粒子中に微分散させることにより、染料分子間の相互作用の変化により、昇華性が変化するためと考えている。
「紫外可視分光光度計を用いて測定される波長430nmでの透過率」は、トナー粒子中における昇華性染料の分散状態を表す指針であり、透過率が30%未満では、上記のような本開示のシアントナーの優れた効果が得られない。好ましい透過率は35%以上であり、より好ましくは40%以上である。また、その上限は50%程度である。
透過率の測定方法については、実施例において説明する。
以下に、(1)本開示のシアントナーの構成成分、(2)その製造方法および(3)本開示のシアントナーを含む二成分現像剤について説明する。
【0016】
(1-1)結着樹脂
本開示のシアントナーのトナー粒子に含まれる結着樹脂は、スチレンアクリル系樹脂(スチレンアクリル共重合樹脂)を含む。
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとを公知の方法により共重合させることにより製造することができる。
ここで「(メタ)アクリル系モノマー」とは、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマーを意味する。
重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などが挙げられ、得ようとする樹脂の分子量や物性によって、重合方法を選択し、重合条件を適宜設定すればよい。
【0017】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フエニルなどのアクリル酸誘導体が挙げられる。
メタクリル系モノマーとしては、例えば、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n-オクチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸フエニル、メタアクリル酸ジメチルアミノエステルなどのメタクリル酸誘導体が挙げられる。
【0018】
本開示においては、上記のスチレン系モノマーおよび(メタ)アクリル系モノマーのうち、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレンアクリル系樹脂としては、例えば、実施例の製造例1および2に記載のスチレンとアクリル酸n-ブチルとの組み合わせが挙げられる。
また、スチレンアクリル系樹脂は、本開示のシアントナーの効果を阻害しない範囲で、他のモノマー成分を含んでいてもよい。
他のモノマー成分としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノフエニルエステル、マレイン酸モノアリルエステル、ジビニルベンゼンなどのビニルモノマーが挙げられる。
【0019】
スチレンアクリル系樹脂の質量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。
質量平均分子量が5,000未満では、トナーの耐熱特性が悪化することがある。一方、質量平均分子量が500,000を超えると、転写紙への定着性が悪化することがある。
より好ましいスチレンアクリル系樹脂の質量平均分子量は、10,000~200,000である。
【0020】
結着樹脂のガラス転移点Tgは、50~70℃であることが好ましい。
ガラス転移点Tgが50℃未満では、シアントナーの耐熱保存安定性が不十分になることがある。一方、ガラス転移点Tgが70℃を超えると、転写紙への低温定着性が損なわれ、高温で転写紙に定着しようとするとその時点で染料の昇華が部分的に起こってしまい、転写紙から布帛へ転写する際に画像濃度が不足することがある。
より好ましい結着樹脂のガラス転移点Tgは、52~67℃であり、さらに好ましくは55~65℃である。
【0021】
結着樹脂の軟化点(軟化温度)Tmは、100~150℃であることが好ましい。
軟化点Tmが100℃未満では、シアントナーの耐熱保存安定性が不十分になることがある。一方、軟化点Tmが150℃を超えると、転写紙への低温定着性が損なわれ、高温で転写紙に定着しようとするとその時点で染料の昇華が部分的に起こってしまい、転写紙から布帛へ転写する際に画像濃度が不足することがある。
より好ましい結着樹脂の軟化点Tmは、110~145℃であり、さらに好ましくは120~140℃である。
【0022】
トナー粒子中の結着樹脂の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、その目安としては、トナー粒子に対して通常60~95質量%である。
結着樹脂がトナー粒子中に60質量%未満では、転写紙への定着させる際に必要なトナーとしての粘弾特性が得られないことがある。一方、結着樹脂がトナー粒子中に95質量%を超えると、必要な染料濃度、離型剤量だけでなく、帯電特性を安定化させるための添加剤などが十分ではなく、本発明の性能が十分に得られないことがある。
好ましい結着樹脂の含有量は、70~93質量%であり、より好ましくは80~90質量%である。
【0023】
(1-2)昇華性染料
本開示のシアントナーのトナー粒子に含まれる昇華性染料は、トナー粒子に5~15質量%の割合のC.I.ディスパースブルー56を含む。
昇華性染料としてのC.I.ディスパースブルー56単体では昇華性が悪く、布帛への昇華転写の際に十分な画像濃度を確保することができないが、本開示の構成のシアントナーとすることにより、トナー粒子内でのC.I.ディスパースブルー56の分散性が高まり、十分な画像濃度を確保することができる。すなわち、本開示のシアントナーは、良好な耐熱性および昇華性を有し、十分な画像濃度を確保すると共に、摩擦堅牢度の高い画像を布帛に形成することができる。
【0024】
C.I.ディスパースブルー56の含有割合がトナー粒子の5~15質量%であれば、分散性が高まり、十分な画像濃度を確保することができる。
好ましいC.I.ディスパースブルー56の含有割合は、6~13質量%であり、より好ましくは8~12質量%である。
【0025】
また、C.I.ディスパースブルー56は、布帛への昇華転写の際に他色の昇華性染料との昇華性のバランスが取り難く、他色とのバランスが取り難いが、本開示の構成のシアントナーとすることにより、他色とのバランスが取り易くなる。
他色の昇華性染料とのバランスが取り易いことから、色調の調整のため、複数の昇華転写適性のある染料を組み合わせて用いることができる。
「昇華転写適性のある染料」とは、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法JIS L0879:2005(2010年確認、平成17年1月20日改定、財団法人日本規格協会発行)」における感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、通常3~4級以下、好ましくは3級以下の染料を意味する。そのような染料のうち、公知の染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。
【0026】
イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163などが挙げられる。
オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、7などが挙げられる。
ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2などが挙げられる。
レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41などが挙げられる。
バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57などが挙げられる。
ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111などが挙げられる。
他色の昇華性染料の含有割合は、トナー粒子の0~3質量%程度である。
【0027】
(1-3)離型剤
本開示のシアントナーのトナー粒子に含まれる離型剤は、70℃以上でかつシアントナーの軟化点Tm以下である融点を有する。
離型剤の融点が70℃未満では、トナーの耐熱特性を悪化させることがある。一方。離型剤の融点がトナーの軟化点Tmを超えると、転写紙への定着工程時に、離型性が不十分となりホットオフセットを引き起こし、また布帛への昇華転写時にトナー層と加熱面との境界に離型剤の層を形成する前にトナーが軟化し、布帛へ染料以外の成分が移行して、摩擦堅牢度が悪化することがある。
本開示のシアントナーの軟化点Tmは、トナー粒子の基材となる結着樹脂の軟化点をベースに、トナー粒子に配合される構成成分およびそれらの配合量により決定され、通常100~140℃程度である。
離型剤の好ましい融点は、85~115℃である。離型剤の融点が85℃未満では、ブリードが起こり易くなることがある。一方、離型剤の融点が115℃を超えると、定着性が低下することがある。
離型剤の融点およびシアントナーの軟化点Tmの測定方法については、実施例において説明する。
【0028】
離型剤としては、上記の熱的物性を有するものであれば特に限定されず、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができ、例えば、合成エステルワックス、カルナウバワックス、炭化水素系ワックスなどが挙げられ、これらの中でも、結着樹脂であるスチレンアクリル樹脂との適度な相溶性を得られるという点で炭化水素ワックスが好ましい。
本開示のシアントナーでは、これらの離型剤うち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
炭化水素系ワックスとしては、非極性炭化水素系ワックスおよび極性炭化水素系ワックスが挙げられる。
非極性炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリオレフィンワックス(低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンおよびポリオレフィン共重合体など)、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。
極性炭化水素系ワックスとしては、例えば、酸化ポリエチレンワックスなどの非極性炭化水素系ワックスの酸化物、その酸化物を加水分解したアルコールが挙げられる。
さらに、極性炭化水素系ワックスとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸およびさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類などの飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールおよびさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールなどの飽和アルコール;ソルビトールなどの多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N'-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックスが挙げられる。
これらの離型剤の中でも、結着樹脂であるスチレンアクリル樹脂との適度な相溶性や定着時の離型剤ブリード特性が高く、離型効果が高いという点で、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスから選択される炭化水素系ワックスが特に好ましい。
【0030】
離型剤は、250~1500nmの分散径を有することが好ましい。
離型剤の分散径が250nm未満では、転写紙に定着する際に表面に離型剤がブリードして定着ローラとの剥離性を高めるという離型剤本来の効果が薄れて、転写紙への定着性が不十分になることがある。一方、離型剤の分散径が1500nmを超えると、トナー表面の離型剤露出面積が増加し、トナーとしての耐熱特性が悪化することがある。
好ましい離型剤の分散径は、300~1200nmであり、より好ましくは500~1000nmである。
離型剤の分散径の測定方法については、実施例において説明する。
【0031】
トナー粒子中の離型剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、3~10質量%であることが好ましい。
離型剤の含有量が3質量%未満では、転写紙に形成した画像を布帛へ熱転写する際に十分な離型剤の層が形成されず、染料以外の成分が布帛へ移行して、昇華転写後の布帛の摩擦堅牢度が悪化することがある。一方、離型剤の含有量が10質量%を超えると、離型剤の分散が困難となり、離型剤の表面露出面積が増加して、トナーの耐熱特性が悪化することがある。
より好ましい離型剤の含有量は、3~8質量%であり、さらに好ましくは4~6質量%である。
トナー粒子中の離型剤が、上記の熱的物性を有しかつその含有量が上記の範囲にあることにより、トナー粒子(コア粒子)に優れた保存性を与え、布帛への昇華転写時にトナー層と布帛の間にしっかりとワックス層を形成してトナー成分の布帛への移行を抑制して、布帛の摩擦堅牢度を十分に向上させることができる。
【0032】
(1-4)その他(添加剤)
本開示のシアントナーのトナー粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
(1-4-1)高分子系分散剤
本開示のシアントナーのトナー粒子は、染料の分散性を高める目的で、染料分散剤として高分子系分散剤をさらに含むことが好ましい。
高分子系分散剤を用いることで、分散剤の吸着部が染料に吸着し、立体障害効果により結着樹脂中に染料が高分散かつ安定な状態となるため、染料の昇華性を高めると共に、トナーが高温保管された際に染料が表面にしみ出してしまう染料ブリード現象を抑制することもできる。
【0034】
トナー粒子中の高分子系分散剤剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、通常0.1~2.0質量%であることが好ましい。
高分子系分散剤の含有量が0.1質量%未満では、染料分散効果が十分に得られないことがある。一方、高分子系分散剤の含有量が2.0質量%を超えると、過剰な分散剤の影響でトナーとしての耐熱特性や帯電性能に悪影響を及ぼすことがある。
より好ましい高分子系分散剤剤の含有量は、0.3~1.7質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0035】
(1-4-2)シリカ粒子
本開示のシアントナーのトナー粒子は、内部にシリカ粒子をさらに含むことが好ましい。
トナー粒子内部にシリカ粒子を含有することで、溶融混練時に混練強度が高まり、染料分散、ワックス分散を向上させることができ、昇華効率を高め、耐熱特性を向上させることができる。
シリカ粒子としては当該技術分野で通常外添剤として用いられるシリカ粒子を使用することができる。特に、シリカ同士の凝集を抑制できることから、シランカップリング剤により表面処理が施され疎水性が付与されたシリカ粒子が好ましい。
シリカ粒子は、7~60nmの平均一次粒子径を有することが好ましい。
シリカ粒子の平均一次粒子径が7nm未満では、シリカ同士の2次凝集体の抑制が困難となり、現実的に7nm未満の粒子を1次粒子径のまま分散させることは困難になる。一方、シリカ粒子の平均一次粒子径が60nmを超えると、上記の効果が十分に得られないことがある。
より好ましいシリカ粒子の平均一次粒子径は、7~30nmであり、さらに好ましくは7~15nmである。
【0036】
トナー粒子中のシリカ粒子の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、通常0.1~1.0質量%であることが好ましい。
シリカ粒子の含有量が0.1質量%未満では、上記の効果が十分に得られないことがある。一方、シリカ粒子の含有量が1.0質量%を超えると、転写紙に定着させる際の定着性能を悪化させることがある。
より好ましいシリカ粒子の含有量は、0.2~0.9質量%であり、さらに好ましくは0.3~0.8質量%である。
【0037】
(1-4-3)帯電制御剤
本開示のシアントナーのトナー粒子は、トナー粒子中に帯電制御剤を含むことが好ましい。
帯電制御剤(荷電制御剤)としては、特に限定されないが、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の帯電制御剤を用いることができる。
正電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
本開示のシアントナーでは、上記の帯電制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
トナー粒子中の帯電制御剤の含有量は、特に限定されず、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法などにより異なり、一概に規定することは困難であるが目的に応じて適宜選択すればよく、好ましくは0.5~3.0質量%であり、より好ましくは0.7~2.5質量%である。
帯電制御剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0039】
(1-5)外添剤
本開示のトナー粒子には、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面摩耗特性制御などの機能を担う外添剤を外添してもよい。
外添剤としては、特に限定されないが、当該技術分野で常用される各種外添剤を用いることができ、2種以上の外添剤を併用してもよい。外添剤としては、例えば、平均粒子径が5~200nmのシリカ、酸化チタンおよびアルミナなどの無機微粒子が挙げられ、特にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理が施され疎水性が付与された無機微粒子が好ましい。表面処理された無機微粒子は、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下を抑えることができる。無機微粒子の中でも、特に体積平均粒子径が15nm以下のシリカ粒子は、トナー粒子の流動性、耐熱保存性を適度に向上させることができる点で好ましい。
【0040】
トナー粒子に対する外添剤の外添量は、特に限定されず、通常0.5~3.0質量%である。
外添剤の外添量が0.5質量%未満では、流動性向上効果を付与し難くなることがある。一方、外添剤の外添量が3.0質量%を超えると、定着性が低下することある。
好ましい外添剤の外添量は、1.0~2.5質量%であり、より好ましくは1.2~2.3質量%である。
【0041】
(2)シアントナーの製造方法
本開示のシアントナーは、公知の方法により製造することができ、例えば、トナー粒子の原料となる、少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤、任意に配合される添加剤(内添剤)、例えば、帯電制御剤を混合し、溶融混錬する混合・混錬工程と、得られた溶融混練物を粗粉砕する粗粉砕工程と、得られた粗粉砕物を微粉砕する微粉砕工程と、得られた微粉砕物を分級する分級工程とにより製造することができる。
本開示のシアントナーの製造方法は、上記の方法に限定されないが、湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からないなどの点で乾式法が好ましく、中でも溶融混錬法(粉砕法)が特に好ましい。
上記の各工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0042】
(2-1)混合・混錬工程
混合・混錬工程では、少なくとも結着樹脂、昇華性染料および離型剤ならびに必要に応じて配合される帯電制御剤などの公知の添加剤を含むトナー材料を混合・溶融混練して溶融混錬物を得る。
混合は乾式が好ましく、混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(製品名、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサ(製品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(製品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(製品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(製品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(製品名、川崎重工業株式会社製)などの混合装置が挙げられる。
【0043】
混練は、結着樹脂の軟化点Tm以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われる。これにより、結着樹脂が溶融または軟化され、結着樹脂中に昇華性染料、離型剤および帯電制御剤などを分散させることができる。混練時の加熱温度は、例えば80~200℃が好ましく、より好ましくは120~160℃である。
また、混練機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミルおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機が挙げられる。具体的には、例えば、TEM-100B(型式、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(以上いずれも型式、株式会社池貝製)などの一軸または二軸のエクストルーダ、ニーデックス(製品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられ、これらの中でも、オープンロール方式の混練機は、混練時のシェアが強く分散染料を高分散できる点で好ましい。また、複数の混練機を併用してもよい。
【0044】
(2-2)粗粉砕・微粉砕工程
粗粉砕工程では、ドラムフレーカーなどで冷却固化した溶融混錬物を粗粉砕して粗粉砕物を得る。
粗粉砕のための粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、スピードミル、ハンマーミルおよびカッターミル(カッティングミル、オリエント株式会社製、型式:VM-16)が挙げられる。
【0045】
微粉砕工程では、混合工程で得られた混合物を微粉砕する。
粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0046】
(2-3)分級工程
分級工程では、微粉砕工程で得られた微粉砕物を分級して、例えば、4~10μmの体積平均粒子径を有する微粒子群を得る。。
分級には、当該技術分野で常用される公知の装置、特に旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力および風力により過粉砕トナー粒子を除去できる分級機を使用でき、例えば、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)が挙げられる。
また、分級工程を行わず、粉砕工程で得られた微粉砕粒子群をトナー粒子として回収してもよい。
【0047】
(2-4)外添工程
外添工程では、分級工程で得られた微粒子群(トナー粒子)と、外添剤とを混合機を用いて混合し、各微粒子表面に外添剤を付着させてトナー(外添トナー)として回収する。
混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、(2-1)混合・混錬工程に例示の混合機が挙げられる。
以上のようにして、必要に応じて外添剤が外添されるトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また一成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
【0048】
(3)二成分現像剤
本開示の二成分現像剤は、本開示のシアントナーとキャリアとを含むことを特徴とする。
本開示の二成分現像剤は、本開示のシアントナーとキャリアとを混合することにより製造することができる。
混合装置としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、V型混合機(型式:V-5、株式会社徳寿工作所製)などの粉体混合器が挙げられる。
シアントナーとキャリアとの配合比は、特に限定されず、質量比で例えば、3:97~12:88が挙げられる。すなわち二成分現像剤中のトナー濃度は、3~12質量%であることが好ましい。
【0049】
キャリアは、現像槽内でトナーと撹拌および混合され、トナーに所望の電荷を与える。また、キャリアは、現像装置と感光体との間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる役割を果たす。キャリアは、磁気力により現像装置の現像ローラ上に保持され、現像に作用した後、再び現像槽に戻り、新たなトナーと再び撹拌および混合されて寿命まで繰り返し使用される。
【0050】
キャリアとしては、特に限定されず、二成分現像剤に通常使用されるキャリアを使用でき、例えば、実施例に記載のようなコートキャリアを使用できる。
キャリアは、キャリア芯材と、キャリア芯材を被覆する樹脂被覆層とを有する。
キャリア芯材としては、当該技術分野で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、鉄、銅、ニッケルおよびコバルトなどの磁性金属、フェライトおよびマグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。
樹脂被覆層は、シリコーン樹脂またはアクリル樹脂を含むことが好ましい。シリコーン樹脂は、キャリアコート層の汚染の進行を遅らせることができ、ロングライフでの使用に適している。
キャリア芯材の体積平均粒子径は、特に限定されず、例えば、30~100μmである。
【実施例0051】
以下に、製造例、実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
製造例、実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0052】
[昇華性染料C.I.ディスパースブルー56の同定]
以下の(1)および(2)の分析から、トナー中の「C.I.ディスパースブルー56」を同定することができる。
(1)GC/MS分析
評価対象のシアントナーを、熱分解GC/MS装置(Agilent Technologies社製、型式:7890A/5975C)に設置し、以下の条件により分析する。
カラム :HP-5MS(無極性カラム)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
ガス流量 :15mL/分
カラム流量 :1mL/分
昇温条件 :初期温度40℃、1分間→(昇温20℃/分)→到達温度320℃、5分間保持
サンプル量 :20mg
リテンションタイム17.2[分]にピークを検出することにより、「C.I.ディスパースブルー56」を同定する。
【0053】
(2)紫外可視分光光度計による透過率測定
評価対象のシアントナーをプレパラート2枚の間に挟んで熱圧着させてサンプルを作製する。得られたサンプルを紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、型式:UV-2450)を設置し、波長780~380nmまで透過率を測定する。
波長570~640nmに最大吸収波長が存在し、波長430nmに透過率が最大となる波長が存在することにより、「C.I.ディスパースブルー56」を同定する。
【0054】
[シアントナーの透明性(波長430nmでの透過率)]
評価対象のシアントナーをプレパラート2枚の間に挟んで熱圧着させたサンプルを作製する。得られたサンプルを紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、型式:UV-2450)を設置し、最大吸収波長を基準に透過率3%の箇所を波長780~380nmについて測定し、波長430nmの透過率を求める。透過率が高い程、昇華性染料の凝集体がなく、染料分散性が良好であると評価できる。
【0055】
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、(現 セイコーインスツル株式会社)製、型番:DSC220)を用いて、試料1gを温度20℃から昇温速度10℃/分で200℃まで加熱し、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定する。2回目の操作で測定したDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を離型剤の融点とする。
【0056】
[トナーの軟化点Tm]
流動特性評価装置(株式会社島津製作所製、フローテスター、型番:CFT-100C)を用いて、試料1gを開始温度の40℃から昇温速度6℃/分で加熱しながら、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与え、ダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料を流出させる。試料の半分量が流出したときの温度を軟化点Tmとする。
【0057】
[離型剤の分散径]
作製したシアントナーをエポキシ樹脂に包埋し、ウルトラミクロトーム(Reichert社製、製品名:ウルトラカットN)で面出しを行い、試料を作成する。得られた試料を、走査透過電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)でワックス分散径を観察する。得られた電子顕微鏡写真データから無作為に200~300個のワックス部を抽出し、画像解析ソフト(製品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析し、円相当径を求める。
【0058】
(製造例1:スチレンアクリル系樹脂SA1の合成)
スチレン74質量部、アクリル酸n-ブチル26質量部、メタクリル酸1.0質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後、バルク重合を10時間行った。次いで、キシレン80質量部を加え、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.5質量部を均一に溶解したキシレン溶液20質量部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加し、温度90℃、圧力10mmHgのベッセル中にフラッシュさせて、溶剤などを留去した後、粗粉砕機を用いて粗粉砕を行い、スチレンアクリル系樹脂「SA1」を得た。樹脂「SA1」の軟化点Tmは140℃であった。
【0059】
(製造例2:スチレンアクリル系樹脂SA2の合成)
スチレン74質量部、アクリル酸n-ブチル26質量部および溶媒としてのキシレン80質量部からなる溶液に、ジ-t-ブチルパーオキサイド1.5質量部を均一に溶解したキシレン溶液20質量部を、内温180℃、内圧6kg/cm2に保持した容量5Lの反応容器に750mL/時間で連続的に供給して重合させ、スチレンアクリル系樹脂の溶液を得た。その後、温度90℃、圧力10mmHgのベッセル中にフラッシュさせて、溶剤などを留去した後、粗粉砕機を用いて粗粉砕を行い、スチレンアクリル系樹脂「SA2」を得た。樹脂「SA2」の軟化点Tmは120℃であった。
【0060】
(製造例3:ポリエステル樹脂PE1の合成)
容量5Lの反応槽中に、テレフタル酸440質量部、イソフタル酸235質量部、アジピン酸7質量部、エチレングリコール554質量部および重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5質量部を入れ、温度210℃、窒素気流下で生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた。その後、5~20mmHgの減圧下で1時間反応させた。
次いで、無水トリメリット酸103質量部を加え、常圧下で1時間反応させた後、20~40mmHgの減圧下で反応させ、所定の軟化点Tm130℃で樹脂を取出した。得られた樹脂を室温まで冷却した後、粉砕により粒子化し、ポリエステル系樹脂「PE1」を得た。
【0061】
(製造例4:樹脂被覆キャリアの調製)
コート樹脂1(シリコーン系、信越化学工業株式会社製、製品名:KR240)0.375質量部およびコート樹脂2(信越化学工業株式会社製、製品名:室温乾燥型メチル系レジンKR251)0.375質量部をトルエン12質量部に溶解させ、そこに導電性粒子(キャボット株式会社製、製品名:VULCAN XC-72)0.0375質量部およびカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名:AY43-059)0.0225質量部を内添または分散させることでコート樹脂液を調製した。
浸漬法によって、コート樹脂液12.8質量部を用いて体積平均粒子径40μmのフェライトキャリア芯材100質量部の表面を被覆した。その後、キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで樹脂被覆キャリアを得た。
【0062】
(実施例1:トナー粒子、外添トナーおよび二成分現像剤の製造)
[混合・混練工程]
結着樹脂(製造例1のSA1、Tm140℃) 84.0質量%
昇華性染料(C.I.ディスパースブルー56) 10.0質量%
帯電制御剤(サリチル酸系化合物、オリヱント化学工業株式会社、製品名:ボントロンE-84) 1.0質量%
離型剤(フィッシャートロプシュワックス、融点(凝結点)90℃、日本精蝋株式会社製、製品名:FTワックス FNP-0090) 5.0質量%
【0063】
ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、オープンロール型連続混練機(三井鉱山株式会社製、型式:MOS320-1800)を用いて、下記の条件で溶融混練して溶融混錬物を得た。
加熱ロールの供給側温度/排出側温度:130℃/100℃、
冷却ロールの供給側温度/排出側温度:40℃/25℃
加熱ロールおよび冷却ロール:直径320mm、有効長1550mm
供給側および排出側におけるロール間ギャップ0.3mm
加熱ロール回転数/冷却ロール回転数:75rpm/65rpm
トナー原料の供給速度:5.0kg/時間
【0064】
[粗粉砕・微粉砕工程]
得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するパワーミル(株式会社ダルトン製、型式:P―3)を用いて粗粉砕して粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS-2)を用いて微粉砕して微粉砕物を得た。
【0065】
[分級工程]
次いで、得られた微粉砕品を、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級して、平均一次粒子径6.7μmのトナー粒子を得た。
得られたトナーの軟化点Tmは120℃、紫外可視分光光度計による波長430nmでの透過率は40%、離型剤の分散径は500nmであった。
【0066】
[外添工程]
未外添のトナー粒子(トナー母粒子)100質量部および疎水性シリカ微粒子(平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理、日本アエロジル社製、製品名:R976S)1.5質量部(トナー粒子に対する外添剤の外添量1.5質量%)を、ヘンシェルミキサに投入し、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定し、1分間撹拌混合し、外添トナー2000gを得た。
【0067】
[二成分現像剤の製造工程]
得られた外添トナーと、製造例3で得られた樹脂被覆キャリアとを、二成分現像剤全量に対する外添トナーの濃度が7質量%になるように調整して、V型混合機(製品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)にて20分間混合して、トナー濃度7質量%の二成分現像剤2000gを得た。
【0068】
(実施例2~12)
表1に示すトナー粒子の構成成分(材料およびそれらの配合量)、下記の溶融混錬条件(実施例4のみ)に変更すること以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、外添トナーおよび二成分現像剤を得た。
昇華性染料および離型剤、高分子系分散剤およびシリカ粒子の配合割合に応じて、結着樹脂の配合割合を変化させてトナー粒子の全体量を調整した。
実施例2では、離型剤(パラフィンワックス、融点74℃、日本精蝋株式会社製、製品名:HNPシリーズ HNP-10)に変更した。
実施例3では、結着樹脂としてのスチレンアクリル系樹脂を製造例2のSA2(軟化点120℃)に変更し、離型剤(ポリエチレンワックス、融点104℃、トーヨーケム株式会社製、製品名:PW725)に変更した。
実施例4では、トナー粒子の製造の混合・混錬工程において、ヘンシェルミキサで材料前混合した後、二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM-30)を用いて、シリンダ設定温度140℃、バレル回転数200rpm、原料供給速度15kg/時間で溶融混練して溶融混練物を得た。すなわち、実施例4では、溶融混錬条件を実施例1よりも弱くした。
【0069】
実施例5では、離型剤(ポリエチレンワックス、融点104℃、トーヨーケム株式会社製、製品名:PW725)およびその配合量7質量%に変更した。
実施例6では、離型剤(ポリオレフィンワックス、融点125℃、三洋化成工業株式会社製、製品名:サンワックスLEL-250)に変更した。
実施例7~8では、昇華性染料のC.I.ディスパースブルー56の配合量をそれぞれ5質量%および15質量%に変更した。
実施例9~12では、離型剤の配合量をそれぞれ3質量%、10質量%、2質量%および12質量%に変更した。
【0070】
(実施例13~14)
実施例13~14では、トナー粒子の構成成分にそれぞれ高分子系分散剤(融点105℃、ルーブリゾール社製、製品名:Solplus DP370)1質量%および高分子系分散剤(融点50℃、ルーブリゾール社製、製品名:Solplus L400)1質量%をさらに配合した。
【0071】
(実施例15~19)
実施例15~17では、トナー粒子の構成成分にそれぞれ疎水性シリカ微粒子(平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理、日本アエロジル社製、製品名:R976S)の0.5質量%、1.0質量%および1.5質量%をさらに配合した。
実施例18~19では、トナー粒子の構成成分にそれぞれ粒子径の異なるシリカ微粒子(平均一次粒子径50nm、HMDS表面処理、信越化学工業株式会社製、製品名:X-
24-9404)0.5質量%およびシリカ微粒子(平均一次粒子径110nm、HMDS表面処理、信越化学工業株式会社製、製品名:X-24-9163A)をさらに配合し
た。
【0072】
(比較例1~6)
表1に示すトナー粒子の構成成分(材料およびそれらの配合量)、下記の溶融混錬条件(比較例4のみ)に変更すること以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、外添トナーおよび二成分現像剤を得た。
比較例1では、結着樹脂を製造例3のポリエステル系樹脂PE1(Tm130℃)に変更した。
比較例2~3では、それぞれ離型剤(ポリオレフィンワックス、融点150℃、三洋化成工業株式会社製、製品名:ビスコール550-P)および離型剤(高純度エステルワックス、融点60℃、日油株式会社製、製品名:ニッサンエレクトールWEP-2)に変更した。
比較例4では、離型剤の配合量を8質量%に変更し、トナー粒子の製造の混合・混錬工程において、ヘンシェルミキサで材料前混合した後、二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM-30)を用いて、シリンダ設定温度140℃、バレル回転数200rpm、原料供給速度15kg/時間で溶融混練して溶融混練物を得た。すなわち、比較例4では、溶融混錬条件を実施例1よりも弱くした。
比較例5~6では、昇華性染料のC.I.ディスパースブルー56の配合量をそれぞれ3質量%および18質量%に変更した。
【0073】
[評価1:昇華転写効率]
作製した二成分現像剤およびトナーを、カラー複合機(シャープ株式会社製、型式:BP-20C25)の現像装置およびトナーカートリッジのそれぞれに充填し、縦20mm、横50mmの長方形のベタ画像を有するA4テスト原稿をコピーして、中間記録媒体(シャープ株式会社製、製品名:PPC用紙SF-4AM3S)上に画像を形成した。
二成分現像で得られた中間記録媒体について、温度200℃、1分間の条件での熱処理による昇華転写前後の中間記録媒体の画像濃度を、分光光度計(グレタグマクベス社製、製品名:スペクトロアイRD-19)を用いて測定した。
【0074】
中間記録媒体に付着した転写前の画像濃度IDbおよび転写後の画像濃度IDaから次式により昇華転写効率を算出し、下記の基準で昇華転写効率を評価した。
昇華転写効率(%)=(IDb-IDa)/(IDb)×100
◎:50%以上(実使用可)
〇:45%以上50%未満(実使用可)
△:40%以上45%未満(実使用可)
×:40%未満(実使用不可)
【0075】
[評価2:布帛上濃度]
評価1と同様にして、中間記録媒体(シャープ株式会社製、製品名:PPC用紙SF-4AM3S)上に画像を形成した。
得られた中間記録媒体とポリエステル布帛としてサテン生地に、温度200℃、1分間の条件で加熱処理をし、布帛から中間記録媒体を剥離することにより、昇華転写染色された布帛の染色物を得た。
【0076】
得られた染色物の画像の塗りつぶされている特定の場所(上記画像(縦20mm、横50mmの長方形のベタ画像)の中心部)の濃度を、濃度測定計(エックスライト社製、分光測色計/濃度計 X-Rite eXact)を用いて測定した。
濃度の測定値から、下記の基準で布帛上濃度を評価した。
◎: 1.4以上(実使用可)
〇: 1.3以上1.4未満(実使用可)
△: 1.2以上1.3未満(実使用可)
×: 1.2未満(実使用不可)
【0077】
[評価3:布帛上カブリ]
評価2と同様にして、中間記録媒体(シャープ株式会社製、製品名:PPC用紙SF-4AM3S)上に画像を形成し、次いで昇華転写染色された布帛の染色物を得た。
画像を布帛に昇華転写する前後での、画像の塗りつぶされていない特定の場所(上記画像(縦20mm、横50mmの長方形のベタ画像)と用紙端部との中心部)の白色度を、測色色差計(日本電色工業株式会社製、型式:ZE6000)を用いて測定した。
【0078】
昇華転写後と昇華転写前の白色度の差をカブリ値(B.G.)とし、下記の基準で布帛上カブリを評価した。
◎: 0.5以下(実使用可)
〇: 0.5超1.0以下(実使用可)
△: 1.0超1.5以下(実使用可)
×: 1.5超(実使用不可)
【0079】
[評価4:乾燥摩擦堅牢度]
作製した二成分現像剤およびトナーを、カラー複合機(シャープ株式会社製、型式:BP-20C25)の現像装置およびトナーカートリッジのそれぞれに充填し、カバレッジ100%の単色画像を、中間記録媒体(シャープ株式会社製、製品名:PPC用紙SF-4AM3S)上に形成した。
得られた中間記録媒体とポリエステル布帛としてサテン生地に、温度200℃、1分間の条件で加熱処理をし、布帛から中間記録媒体を剥離することにより、昇華転写染色された布帛の染色物(試験布)を得た。
【0080】
摩擦に対する染色堅ろう度試験方法JIS L0849:2013に準じて、II型(学振型)摩擦試験機(テスター産業株式会社製、型式:学振形摩擦試験機)を用いて、得られた試験布の乾燥試験(乾摩擦)を実施し、白布への汚染を汚染グレースケールと比較して判定し、下記の基準で摩擦堅牢度を評価した。
摩擦試験機はテーブルを有し、試験対象となる布帛をテーブルに取り付け、綿布を摩擦試験機上部のアーム先端(摩擦子)に取り付けた。約200gの荷重で綿布を有するアームを100mmの長さで試験対象布帛の上を100回往復摩擦し、摩擦が終わったら綿布をアームから取り外して、汚染用のグレースケールを使用して「汚染」の判定をすることにより摩擦堅牢度の数値を決めた。数値は級で表され、級が大きいほど摩擦堅牢度が高いことを意味する。
◎: 4.5級以上(非常に良好、実使用可)
〇: 4級以上(良好、実使用可)
△: 3級以上(実使用可)
×: 2級以下(実使用不可)
【0081】
[評価5:トナーの耐熱保存安定性]
高温保存後の凝集物の有無によってトナーの耐熱保存安定性を評価した。
容量250mLの広口円筒形状のポリ容器に、作製した外添トナー20gを入れて密閉し、温度50℃の条件で72時間放置した後、外添トナーを取り出して230メッシュのふるいに掛けた。ふるい上に残存するトナーの質量を測定し、この質量のトナー全質量に対する割合である残存量を求め、下記の評価基準で評価した。残存量の数値が低いほど、トナーがブロッキングを起こしていないことを示す。
◎:優秀(凝集なし、残存量が0.5%未満)
○:良好(凝集微量、残存量が0.5%以上7%未満)
△:可 (凝集多量、残存量が7%以上12%未満)
×:不可(凝集多量、残存量が12%以上)
【0082】
[総合評価]
上記の評価1~5の結果から、5項目中に「×」がなければ「実使用可」、5項目中、少なくとも1項目に「×」があれば「実使用不可」と評価した。
実施例および比較例のトナーの調製に使用した材料およびその含有量ならびに得られたトナーの波長430nmでの透過率を表1に、得られたトナーの評価結果を表2に示す。
表1および2では、材料をその製品名の英数字またはその一部で表す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1および2から次のことがわかる。
(1)本開示のシアントナーを含む二成分現像剤は、染料の分散状態が良好で、トナー中に結晶径の大きな染料凝集体の存在が少なく、染料結晶体がトナーから脱離するのを防ぎ、転写紙から布帛への昇華転写時に染料の結晶が布帛へ移行することを抑制し得ること(実施例1~19)
(2)離型剤(ワックス)の添加量を増加させることで、布帛への熱転写の際に染料以外のトナー成分が布帛へ移行することが抑制され、布帛の堅牢度が向上すること、および規定量の範囲を超えると離型剤の分散性が悪化し、耐熱性が悪化すること(実施例9~12)
(3)離型剤として、炭化水素系ワックス以外のエステルワックスを用いると、樹脂との相溶性が高く、可塑化効果により、耐熱性が悪化すること(比較例3)
(4)高分子系分散剤を添加することで、染料分散性が更に向上し、昇華効率が高くなり、布帛上濃度が向上すること(実施例1、13および14)
(5)溶融混練時にトナー内部にシリカ添加することで、混練強度が高まり、染料分散、離型剤分散が向上し、昇華効率、耐熱特性が向上すること、および規定の範囲内の粒子径のシリカを用いることで更にその効果が高まること(実施例1、15~19)