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特開2024-130230揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法及び揚げ物の製造方法
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  • 特開-揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法及び揚げ物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130230
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法及び揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240920BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039852
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】502154566
【氏名又は名称】株式会社オヤマ
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】小山 達也
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LD01
4B025LG43
4B025LP10
4B025LP20
4B035LC03
4B035LE05
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG42
4B035LG49
4B035LK01
4B035LP07
4B035LP26
4B035LP27
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】 安定したより良い食感を得ることのできる揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法及び揚げ物の製造方法を提供する。
【解決手段】 澱粉に水を混合して形成されるとともにダマを含有して形成され具材に付着させられて具材とともに油で揚げられる揚げ物用衣材において、澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合し、目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含む構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉に水を混合して形成されるとともにダマを含有して形成され具材に付着させられて具材とともに油で揚げられる揚げ物用衣材において、
上記澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、上記澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合し、
目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含むことを特徴とする揚げ物用衣材。
【請求項2】
目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むとともに、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むことを特徴とする請求項1記載の揚げ物用衣材。
【請求項3】
上記澱粉として、馬鈴薯澱粉を単独で用いたことを特徴とする請求項1または2記載の揚げ物用衣材。
【請求項4】
澱粉に水を混合して形成されるとともにダマを含有して形成され具材に付着させられて具材とともに油で揚げられる揚げ物用衣材を製造する揚げ物用衣材の製造方法において、
上記澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、
上記澱粉100重量部に対して水20±2重量部を加え、撹拌押圧してダマを形成するダマ形成工程と、
該ダマ形成工程後に、上記澱粉を篩にかけて、目開き5mmの篩上のダマと、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマと、目開き1.5mmの篩下の澱粉とに分級する分級工程と、
該分級工程後に、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉に混合する混合工程とを備えたことを特徴とする揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項5】
上記分級工程においては、目開き5mmの篩上のダマと、目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマと、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマと、目開き1.5mmの篩下の澱粉とに分級し、
上記混合工程においては、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むとともに、分級により得られた目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉に混合することを特徴とする請求項4記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項6】
上記澱粉として、馬鈴薯澱粉を単独で用いたことを特徴とする請求項4または5記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項7】
所要の大きさの具材に調味液を被覆する調味液被覆工程と、
該調味液被覆工程後に、上記調味液が被覆された具材に揚げ物用衣材を付着させる衣材付着工程と、
該衣材付着工程後に、上記揚げ物用衣材が付着された具材を油で揚げる揚げ工程とを備えた揚げ物の製造方法において、
上記衣材付着工程で用いる揚げ物用衣材として、上記請求項3記載の揚げ物用衣材を用いたことを特徴とする揚げ物の製造方法。
【請求項8】
上記具材は、鶏肉であることを特徴とする請求項7記載の揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏肉等の具材を油で揚げる際に用いるダマを有した揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法に関するとともに、この揚げ物用衣材を用いた揚げ物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、揚げ物として、例えば具材としての鶏肉に揚げ物用衣材を付着させて油で揚げて製造される唐揚や竜田揚が知られている。近年、この揚げ物用衣材として、澱粉(広義の意味での片栗粉)に水を混合して形成されるとともにダマを含有してなるものを用い、油で揚げられた鶏肉にダマを付着させてボリューム感を表出させるとともに、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を付与できるようにしている(例えば、特許第3359890号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3359890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のダマを有した揚げ物用衣材を用いた揚げ物にあっては、サクサクとしたクリスピーな食感を付与できるが、加える水の量によってその食感が変化し、安定したより良い食感を得にくいという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、安定したより良い食感を得ることのできる揚げ物用衣材,揚げ物用衣材の製造方法及び揚げ物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明の揚げ物用衣材は、澱粉に水を混合して形成されるとともにダマを含有して形成され具材に付着させられて具材とともに油で揚げられる揚げ物用衣材において、
上記澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、上記澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合し、
目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含む構成としている。
【0006】
ここで、揚げ物とは、唐揚,竜田揚,天ぷら,フリッター,フライなどを指す。澱粉は、広義の意味での片栗粉を言い、例えば、米澱粉,小麦粉澱粉,馬鈴薯澱粉,薩摩芋澱粉,トウモロコシ澱粉,タピオカ澱粉,片栗粉(ユリ科のカタクリの根茎から製造される狭義の意味),これらの加工澱粉またはこれらの組合せから選択される。ダマとは、澱粉の粉の粒子が水を介して相互に結着した塊(凝集物)を言う。
【0007】
具材としては、特に限定されず、肉類,魚介類,野菜またはそれらを含む加工食品から選択される。肉類としては、鶏肉、豚肉、牛肉又は羊肉等を挙げることができる。魚介類としては、エビ,イカ,タコ,カレイ,キス,イワシ,マグロ,アジ等を挙げることができる。野菜としては、ピーマン,ネギ,ニンジン,ゴボウ,カボチャ,サツマイモ,ジャガイモ,タマネギ,ナス,シイタケ等の茸類等を挙げることができる。加工食品としては、ちくわ,ハム,ソーセージや豆腐等の他、コロッケの中種のようなある程度調理されたものを挙げることができる。
【0008】
これにより、このダマを含有した揚げ物用衣材を具材に付着させて油で揚げた揚げ物においては、加熱されたダマが具材の表面に付着するのでボリューム感があり、また、ダマ内には細かい空気が散在するようになるので、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を得ることができる。揚げ物用衣材を澱粉単独で用いた場合には、澱粉のみのシンプルな風味と食感を得ることができる。特に、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合したので、この水の量が程よいものになり、安定したより良い食感を得ることができる。
【0009】
本発明においては、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合しているが、18重量部に満たないと、ダマの形成が不十分になり、サク味が感じられず、22重量部以上になると、水分量が多くなるためダマのサイズが大きくなりすぎ、口当たりが悪く油っぽい食味となるため適さず、所望の食感を得にくくなる。さらには22重量部以上になると大きいサイズのダマを小さくするために更なる撹拌や手もみが必要となるため、時間がかかり、作業性が著しく低下する。望ましくは、澱粉100重量部に対して水20±1重量部混合する。尚、衣材は、澱粉単独に水を加えたものが好ましいが、調味料等の多少の添加剤を加えることは差支えない。
【0010】
また、本発明においては、澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含む構成としているので、澱粉と水との混合具合がより良い状態になるとともに、ダマに極端に大きなものがなくなってバランスが良くなり、サクサク感を呈するダマの分量も適正なものになり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。
【0011】
そして、必要に応じ、目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むとともに、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含む構成としている。目開き5mmの篩上のダマは油調後の食感、口当たりが低下してしまう。ダマの大きさの分布が良好になり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。
【0012】
望ましくは、目開き5mmの篩下且つ目開き4mmの篩上のダマを5重量%~7重量%含み、目開き4mmの篩下且つ目開き3mmの篩上のダマを5重量%~7重量%含み、目開き3mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを5重量%~6重量%含むとともに、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含む構成としている。目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマが均等化し、ダマの大きさの分布が良好になり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。目開き1.5mmの篩下においては、目開き1.0mmの篩上のダマを、15重量%~20重量%含むことが好ましい。
【0013】
更に、必要に応じ、上記澱粉として、馬鈴薯澱粉を単独で用いた構成としている。馬鈴薯澱粉のみのシンプルな風味と食感を得ることができる。特に、鶏の唐揚や竜田揚に有効になる。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、澱粉に水を混合して形成されるとともにダマを含有して形成され具材に付着させられて具材とともに油で揚げられる揚げ物用衣材を製造する揚げ物用衣材の製造方法において、
上記澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、
上記澱粉100重量部に対して水20±2重量部を加え、撹拌押圧してダマを形成するダマ形成工程と、
該ダマ形成工程後に、上記澱粉を篩にかけて、目開き5mmの篩上のダマと、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマと、目開き1.5mmの篩下の澱粉とに分級する分級工程と、
該分級工程後に、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉に混合する混合工程とを備えた構成としている。
【0015】
ここで、ダマ形成工程は、手揉みにより、あるいは、食品用の各種撹拌混合機(ミキサー)を用いることができる。ダマが形成されるように撹拌押圧する。
手揉みによる場合は、機械に比較して柔らかに澱粉と水とを混合させることができるとともに、ダマ形成を手で行うので人の感覚により程よい大きさに調整し易くなる。
また、目開き5mmの篩上のダマについては、手揉みあるいは機械により、細分化して、再び分級工程で分級するようにしてよい。無駄が防止される。
【0016】
このように製造された揚げ物用衣材によれば、上記と同様に、澱粉として、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下のものを用い、目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含むので、澱粉と水との混合具合がより良い状態になるとともに、ダマに極端に大きなものがなくなり、サクサク感を呈するダマの分量も適正なものになり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。目開き5mmの篩上のダマについては、油調後の食感、口当たりが低下してしまう。
【0017】
また、必要に応じ、上記分級工程においては、目開き5mmの篩上のダマと、目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマと、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマと、目開き1.5mmの篩下の澱粉とに分級し、
上記混合工程においては、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むとともに、分級により得られた目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉に調合する構成としている。このように製造された揚げ物用衣材によれば、上記と同様に、ダマの大きさの分布が良好になり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。
【0018】
望ましくは、上記分級工程においては、目開き5mmの篩上のダマと、目開き5mmの篩下且つ目開き4mmの篩上のダマと、目開き4mmの篩下且つ目開き3mmの篩上のダマと、目開き3mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマと、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマとに分級し、
上記混合工程においては、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き4mmの篩上のダマを5重量%~7重量%含み、分級により得られた目開き4mmの篩下且つ目開き3mmの篩上のダマを5重量%~7重量%含み、分級により得られた目開き3mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを5重量%~6重量%含むとともに、分級により得られた目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉に調合する構成としている。目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマが均等化し、ダマの大きさの分布が良好になり、より一層安定したより良い食感を得ることができる。また、目開き1.5mmの篩下且つ目開き1.0mmの篩上のダマも分級し、この分級により得られた目開き1.5mmの篩下且つ目開き1.0mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むように、分級によりえられた目開き1.0mmの篩下の澱粉に調合することが好ましい。
【0019】
更に、必要に応じ、上記澱粉として、馬鈴薯澱粉を単独で用いた構成としている。馬鈴薯澱粉のみのシンプルな風味と食感を得ることができる。特に、鶏の唐揚や竜田揚に有効になる。
【0020】
また、上記目的を達成するための揚げ物の製造方法は、所要の大きさの具材に調味液を被覆する調味液被覆工程と、該調味液被覆工程後に、上記調味液が被覆された具材に揚げ物用衣材を付着させる衣材付着工程と、該衣材付着工程後に、上記揚げ物用衣材が付着された具材を油で揚げる揚げ工程とを備えた揚げ物の製造方法において、上記衣材付着工程で用いる揚げ物用衣材として、上記の揚げ物用衣材を用いた構成としている。この場合、上記具材は、鶏肉であることが有効である。
【0021】
これにより、加熱されたダマが鶏肉の表面に付着するのでボリューム感があり、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を有し、特に、安定したより良い食感を得ることができる鶏肉の唐揚や竜田揚にすることができる。揚げ物用衣材を澱粉単独で用いた場合には、澱粉のみのシンプルな風味と食感を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ダマを含有した揚げ物用衣材を具材に付着させて油で揚げた揚げ物においては、加熱されたダマが具材の表面に付着するのでボリューム感があり、また、ダマ内には細かい空気が散在するようになるので、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を得ることができる。揚げ物用衣材を澱粉単独で用いた場合には、澱粉のみのシンプルな風味と食感を得ることができる。特に、揚げ物用衣材を、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合し、更には、目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含む構成にしたので、この水の量が程よいものになるとともに、ダマに極端に大きなものがなくなって、サクサク感を呈するダマの分量も適正なものになり、ダマの安定したより良い食感を得ることができる。具材が鶏肉の場合には、ボリューム感があり、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を有し、特に、安定したより良い食感を得ることができる鶏肉の唐揚や竜田揚にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る揚げ物用衣材の製造方法を示す工程図である。
図2】本発明の実施の形態に係る揚げ物の製造方法を示す工程図である。
図3】実施例に係る揚げ物用衣材の製造において、ダマ形成工程後の材料のダマの分布の一例を示す表図である。
図4】実施例に係る揚げ物用衣材において、各ダマの混合重量比を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る揚げ物用衣材及び揚げ物用衣材の製造方法について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る揚げ物用衣材Cは、澱粉Sに水Wを混合して形成されるとともにダマKを含有して形成され具材Mに付着させられて具材Mとともに油で揚げられて揚げ物Fを構成するものである。
【0025】
澱粉Sは、広義の意味での片栗粉を言い、例えば、米澱粉,小麦粉澱粉,馬鈴薯澱粉,薩摩芋澱粉,トウモロコシ澱粉,タピオカ澱粉,片栗粉(ユリ科のカタクリの根茎から製造される狭義の意味),これらの加工澱粉またはこれらの組合せから選択される。実施の形態では、澱粉Sとして、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下の馬鈴薯澱粉を単独で用いている。また、ダマKとは、澱粉Sの粉の粒子が水Wを介して相互に結着した塊(凝集物)を言う。
【0026】
具材Mとしては、特に限定されず、肉類,魚介類,野菜またはそれらを含む加工食品から選択される。肉類としては、鶏肉、豚肉、牛肉又は羊肉等を挙げることができる。魚介類としては、エビ,イカ,タコ,カレイ,キス,イワシ,マグロ,アジ等を挙げることができる。野菜としては、ピーマン,ネギ,ニンジン,ゴボウ,カボチャ,サツマイモ,ジャガイモ,タマネギ,ナス,シイタケ等の茸類等を挙げることができる。加工食品としては、ちくわ,ハム,ソーセージや豆腐等の他、コロッケの中種のようなある程度調理されたものを挙げることができる。実施の形態では、具材Mは鶏肉であり、所要の大きさ、例えば、一口大の大きさに切断形成されている。
【0027】
揚げ物Fとは、唐揚,竜田揚,天ぷら,フリッター,フライなどを指す。実施の形態では、鶏肉の竜田揚とした。
【0028】
実施の形態に係る揚げ物用衣材Cにおいて、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合している。望ましくは、澱粉100重量部に対して水20±1重量部混合する。そして、目開き5mmの篩下にするとともに、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを、30重量%~40重量%含む構成としている。より具体的には、目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含むとともに、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマを15重量%~20重量%含む構成としている。
【0029】
次に、図1を用い、この揚げ物用衣材の製造方法について説明する。これは、澱粉Sに水Wを混合して形成されるとともにダマKを含有して形成され具M材に付着させられて具材Mとともに油で揚げられる揚げ物用衣材Cを製造する方法である。澱粉Sとして、水分が20重量%以下、粒径が100μm以下の上記のものを用いる。この揚げ物用衣材の製造方法の基本的構成は、ダマ形成工程(A)と、分級工程(B)と、混合工程(C)とを備えてなる。以下、各工程について説明する。
【0030】
(A)ダマ形成工程
ボウルに澱粉Sを100重量部入れ、この澱粉Sに水Wを20±2重量部、望ましくは、20±1重量部、より望ましくは20重量部丁度を加え、手揉みにより、あるいは、食品用の各種撹拌混合機(ミキサー)を用いて、ダマが形成されるように撹拌押圧する。実施の形態では、手で混合するとともに、手揉みによりダマKを形成する。手揉みによる場合は、機械に比較して柔らかに澱粉と水とを混合させることができるとともに、ダマ形成を手で行うので人の感覚により程よい大きさに調整し易くなる。
【0031】
(B)分級工程
ダマ形成工程後に、澱粉Sを篩にかける。周知の電動の振動ふるい機を用い、あるいは、手動の篩を用いる。そして、目開き5mmの篩上のダマKと、目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマKと、目開き1.5mmの篩下の澱粉Sとに分級する。実施の形態では、目開き5mmの篩上のダマK(a)と、目開き5mmの篩下且つ目開き2mm篩上のダマK(b)と、目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマK(c)と、目開き1.5mmの篩下の澱粉S(1.5mm以下のダマK(d)を含む)とに分級した。この場合、目開き5mmの篩上のダマKについては、手揉みあるいは機械により、細分化して、再び分級工程で分級するようにしてよい。無駄が防止される。
【0032】
(C)混合工程
分級工程後に、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマKを、30重量%~40重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉Sに混合する。混合は、分級した澱粉を計量し、箸やハンドミキサーを用いて手作業で行い、あるいは、食品用の各種撹拌混合機(ミキサー)を用いて行う。この場合、ダマKができるだけ破壊されないように、柔らかに行う。実施の形態では、この混合工程においては、分級により得られた目開き5mmの篩下且つ目開き2mmの篩上のダマKを15重量%~20重量%含むとともに、分級により得られた目開き2mmの篩下且つ目開き1.5mmの篩上のダマKを15重量%~20重量%含むように、分級によりえられた目開き1.5mmの篩下の澱粉Sに混合する。これにより、実施の形態に係る揚げ物用衣材Cが製造される。
【0033】
次にまた、このように形成された揚げ物用衣材Cを用いた揚げ物の製造方法について、図2に示す工程図を用いて説明する。この揚げ物の製造方法は、揚げ物Fとしての鶏肉の竜田揚を製造する方法である。
【0034】
(1)調味液被覆工程
予め一口大の所要の大きさに切断した具材Mとしての鶏肉を用意しておく。調味液Tをボウルに入れ、これに具材Mとしての鶏肉を浸漬する。調味液Tとしては、例えば、醤油,酒,みりん,砂糖,すりおろしたニンニクや生姜等を適宜混合したものを用いる。
【0035】
(2)衣材付着工程
調味液Tが被覆された具材Mとしての鶏肉に揚げ物用衣材Cを付着させる。ボウルなどの容器に揚げ物用衣材Cを入れ、容器内で鶏肉に衣材Cをまぶす。余分の衣材Cは落とす。
【0036】
(3)揚げ工程
揚げ物用衣材Cが付着された具材Mとしての鶏肉を油で揚げる。周知のフライヤーを用いることができる。油の温度は、例えば、170~180℃にし、3~5分程度加熱して中心部までしっかり火を通す。この場合、ダマKを含有した揚げ物用衣材Cが具材Mとしての鶏肉に付着して鶏肉とともに油で揚げられて加熱される。揚げが終わったならば、バットに上げて油切をし、揚げ物Fとしての竜田揚を完成させる。
【0037】
このようにして製造された揚げ物Fにおいては、図2に示すように、加熱されたダマKが具材Mの表面に付着するのでボリューム感があり、また、ダマK内には細かい空気が散在するようになるので、食したときにサクサクとしたクリスピーな食感を得ることができる。この場合、揚げ物用衣材Cにおいて、馬鈴薯澱粉を単独で用いたので、澱粉Sのみのシンプルな風味と食感を得ることができる。特に、澱粉100重量部に対して水20±2重量部混合したので、この水Wの量が程よいものになり、安定したより良い食感を得ることができる。
【実施例0038】
次に、実施例に係る揚げ物用衣材Cについて説明する。実施例に係る揚げ物用衣材Cは、澱粉Sとして、北海道産の馬鈴薯澱粉(水分16.9%、粒径82μm以下)を用い、この澱粉100重量部に対し、水20重量部を加えて混合し、上記と同様の製造方法により製造した。図3には、ダマ形成工程後の材料(120g)を分級し、そのダマの分布について測定した一例を示す。ここで、「1回目」は、手揉みにより調整した材料についての数値であり、「2回目」は、「1回目」で分級した目開き5mmの篩上のダマについて、手揉みにより細分化し、これを、元の材料に戻して調整した材料についての数値である。
【0039】
そして、実施例に係る揚げ物用衣材Cは、「2回目」の材料であって、分級して得られた各大きさのダマを、図4に示す重量比で混合して作成した。この揚げ物用衣材Cを用いて、上記と同様の製造方法により、実施例に係る揚げ物Fとして、鶏肉の竜田揚を製造した。
【0040】
そして、比較例に係る揚げ物を作成し、食味試験を行った。比較例に係る揚げ物用衣材として、実施例と同じ澱粉100重量部に30重量部の水を混合したものを作成した。比較例においてもダマの分布が実施例と略同じになるように形成した。それから、実施例と同条件で比較例に係る揚げ物としての竜田揚を製造した。この場合、比較例は実施例に比較してダマがべたつくことから、具材への付着が厚くなりやすいことが分かった。そして、実施例に係る竜田揚と、比較例に係る竜田揚について、パネラー20人による食味試験を行った。その結果、味は略同等であるが、サクサクとしたクリスピーな食感が比較例に比較して実施例の方が優れていることが分かった。また、外観,香り,色味においても実施例の評価が高かった。
【0041】
尚、上記実施の形態においては、澱粉Sとして馬鈴薯澱粉を単独に用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上述した他の澱粉を混合して用いても良く、また、他の澱粉を単独若しくは複数を混合して用いても良く、適宜変更して差支えない。更に、上記実施の形態では、具材Mとして鶏肉を用いその竜田揚としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、鶏肉を用いた竜田揚以外の揚げ物であっても良く、また、他の具材を用いた竜田揚やその他の揚げ物であっても良く、適宜変更して差支えない。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
C 揚げ物用衣材
F 揚げ物
M 具材
K ダマ
S 澱粉
W 水
T 調味液
(1)調味液被覆工程
(2)衣材付着工程
(3)揚げ工程
図1
図2
図3
図4