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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130236
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039861
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英伸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB58
2C056EC72
2C056EC79
2C056EC80
2C056FB07
(57)【要約】
【課題】媒体へ定着した液体層の屈曲に対する耐性を向上させてひび割れや剥離を抑制する技術の改善が望まれている。
【解決手段】屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置であって、媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と、前記屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報を取得し、前記屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、前記第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、前記媒体の前記屈曲領域を含む印刷領域に対して、前記屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する場合に、前記画像を前記第1印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率を、前記画像を前記第2印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率よりも低くする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する媒体へ液体を吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドによる液体吐出を制御する制御部と、を備え、
屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置であって、
前記制御部は、
前記媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と、前記屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報を取得し、
前記屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、前記第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、
前記媒体の前記屈曲領域を含む印刷領域に対して、前記屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する場合に、
前記画像を前記第1印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率を、前記画像を前記第2印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率よりも低くする、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記屈曲情報は、前記屈曲領域を屈曲させる屈曲率の情報を含み、
前記制御部は、
前記屈曲率が第1屈曲率であるときの、前記第1印刷モードにおける前記被覆率を第1被覆率とし、
前記屈曲率が前記第1屈曲率よりも大きい第2屈曲率であるときの、前記第1印刷モードにおける前記被覆率を第2被覆率とすると、
前記第1被覆率を前記第2被覆率よりも高くなるように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1印刷モードにおいて、前記ドットが印刷されないドットオフ領域が前記屈曲の方向に交差する交差方向に連続するスリットを前記屈曲領域に形成する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記屈曲情報は、前記屈曲領域を屈曲させる屈曲率の情報を含み、
前記制御部は、前記屈曲率に応じて前記スリットの幅を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記屈曲情報は、前記屈曲領域を屈曲させる屈曲率の情報を含み、
前記制御部は、前記屈曲率に応じて前記スリットの数を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スリットの形状の選択を受け付け、前記選択にかかる形状の前記スリットを前記屈曲領域に形成する、ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像の印刷のために前記印刷ヘッドへ提供する印刷データのうち前記屈曲領域に対応する前記印刷データを生成するに際し、前記第1印刷モードにおいて、前記印刷データを生成するための画像処理に用いるマスクおよびテーブルの少なくとも一部を、前記第2印刷モードにおいて用いる前記マスクおよび前記テーブルと異ならせる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
可撓性を有する媒体へ印刷ヘッドにより液体を吐出して、屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置が実行する印刷方法であって、
前記媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と前記屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、前記第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、
前記屈曲情報を取得する取得工程と、
前記媒体の前記屈曲領域を含む印刷領域に対して、前記屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する印刷工程と、を有し、
前記印刷工程では、前記画像を前記第1印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率を、前記画像を前記第2印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率よりも低くする、ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲させることが可能な印刷物を生成する印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置は、印刷後に屈曲させることを前提とした媒体へ液体を吐出して印刷物を生成することが可能である。
【0003】
また、印刷物を曲げることができなくなったり、硬化された層がひび割れを起こしたり、層が基材から剥がれたりするといった問題に対処するために、基材上に吐出された液滴が硬化された後に、当該硬化した液滴を所定の液体に浸漬させて、印刷物の剛性を低下させる印刷物の折り曲げ方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021‐84278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記文献1によれば、印刷物を所定の液体へ浸漬させる工程がユーザーにとって負担となる。また、印刷物の曲げに対する耐性を向上させるには、画像形成に使用したインクと浸漬液との相性を適正化する必要があり、設計難易度が高い。
【0006】
可撓性のある媒体へ液体を吐出して生成される印刷物に関して、媒体へ定着した液体層の屈曲に対する耐性を向上させてひび割れや剥離を抑制する技術の改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
可撓性を有する媒体へ液体を吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによる液体吐出を制御する制御部と、を備え、屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置であって、前記制御部は、前記媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と、前記屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報を取得し、前記屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、前記第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、前記媒体の前記屈曲領域を含む印刷領域に対して、前記屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する場合に、前記画像を前記第1印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率を、前記画像を前記第2印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率よりも低くする。
【0008】
可撓性を有する媒体へ印刷ヘッドにより液体を吐出して、屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置が実行する印刷方法であって、前記媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と前記屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、前記第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、前記屈曲情報を取得する取得工程と、前記媒体の前記屈曲領域を含む印刷領域に対して、前記屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する印刷工程と、を有し、前記印刷工程では、前記画像を前記第1印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率を、前記画像を前記第2印刷モードにより印刷するときに前記印刷ヘッドが前記屈曲領域へ吐出する前記液体のドットによる被覆率よりも低くする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置構成を簡易的に示す図。
図2】本実施形態の印刷方法を示すフローチャート。
図3】媒体と媒体の屈曲情報を説明するための図。
図4】画像データとステップS130で生成される印刷データの例を示す図。
図5】第1印刷モードにより得られた印刷物の一部を簡易的に示す断面図。
図6図6A図6Bはそれぞれ画像データであって図4とは異なる例を示す図。
図7】ステップS130で生成される印刷データであって図4とは異なる例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置構成の概略説明:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。印刷装置10は、インクジェット方式のプリンターであり、印刷方法の実行主体である。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、搬送部16、印刷ヘッド17等を備える。IFはインターフェイスの略である。
【0012】
制御部11は、プロセッサーとしてのCPUや、メモリー等を含んで構成される。制御部11では、プロセッサーがメモリーに保存されたプログラム12に従った演算処処理を実行することにより、印刷装置10を制御する。プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
【0013】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路と、を含む構成であってもよい。
操作受付部14は、ユーザーによる入力を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13および操作受付部14を含めて、印刷装置10の操作パネルと呼んでもよい。
【0014】
通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で不図示の外部装置と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。外部装置とは、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末等の通信装置である。通信IF15は、例えば、外部装置から印刷指示を受け付ける。
【0015】
搬送部16は、制御部11による制御下で媒体を所定の搬送方向に沿って搬送するための手段である。搬送部16は、例えば、回転して媒体を搬送するローラーや、回転の動力源としてのモーター等を備える。媒体は、液体による印刷を施すことが可能な媒体であればよく、紙の他、フィルムやプラスチックや金属等、様々な素材の媒体が使用され得る。印刷装置10は、可撓性を有する媒体、可撓性を有さない媒体のいずれに対しても印刷を実行可能であるが、本実施形態では、可撓性を有する媒体へ印刷する場面を想定する。可撓性とは、柔軟性があり屈曲させることが可能な性質を意味する。搬送部16は、ベルトやパレットにより媒体を搬送する手段であってもよい。
【0016】
印刷ヘッド17は、キャリッジ18に搭載されている。知られているように、キャリッジ18は、搬送部16による搬送方向に交差する主走査方向に沿って往復移動可能な装置である。従って、印刷ヘッド17はキャリッジ18と共に移動する。印刷ヘッド17は、図示しないインクカートリッジ等の液体供給手段から液体供給を受け、制御部11による制御下でインクジェット方式により液体のドットを媒体へ吐出して印刷を行う手段である。液体とは主にインクであるが、印刷ヘッド17はインク以外の、例えばコーティング用の液体等、各種液体を吐出することも可能である。インクは、紫外線の照射を受けて硬化する、いわゆるUV硬化インクであってもよい。むろん、インクは、乾燥を経て媒体へ定着する一般的なインクでもよい。インクは、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった複数色のインクである。
【0017】
知られているように、印刷ヘッド17は、液体を吐出するための複数のノズルを有する。制御部11は、印刷データを生成し、印刷データに基づいて、ノズルを駆動するための電気信号の各ノズルの駆動素子への印加を制御することにより、各ノズルからドットを吐出させたり吐出させなかったりする。キャリッジ18の主走査方向に沿う移動に伴って印刷ヘッド17が液体を吐出する動作を、主走査と言ったりパスと言ったりする。制御部11は、このような主走査と、搬送部16による媒体の所定距離の搬送である副走査とを交互に繰り返すことで、媒体への印刷を実現する。
【0018】
ただし、印刷装置10はキャリッジ18を有さないタイプの製品であってもよい。つまり、印刷ヘッド17は、媒体の搬送経路上に固定されており、搬送される媒体に対して液体を吐出して印刷する構成であってもよい。
あるいは、印刷ヘッド17は、キャリッジ18に搭載されており、キャリッジ18が主走査方向だけでなく副走査の方向へも移動可能であってもよい。つまり、印刷ヘッド17が静止する媒体に対して2次元的な動きをして印刷を実現する構成であってもよい。
【0019】
2.印刷方法:
図2は、制御部11がプログラム12に従って実行する印刷方法をフローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部11は、印刷モードの指示を取得する。印刷装置10は、複数の印刷モードの中から指示された印刷モードによる印刷を実行可能である。本実施形態では、「屈曲情報」に基づいて印刷を行う「第1印刷モード」と、第1印刷モードとは異なる印刷を行う「第2印刷モード」とを想定する。第2印刷モードは、第1印刷モード以外の印刷モードの総称と解してもよい。
【0020】
ユーザーは、操作受付部14を操作することにより、制御部11に対して印刷モードを指示することができる。あるいは、制御部11は、ユーザーが操作する外部装置から通信IF15を介して印刷指示を受信し、この印刷指示に印刷モードの指示が含まれていることがある。いずれにしても制御部11は、外部から印刷モードの指示を取得する。
【0021】
ステップS110では、制御部11は、屈曲情報を取得する。屈曲情報は、媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と、屈曲の方向(以下、屈曲方向)の情報とを少なくとも含んでいる。ステップS110は屈曲情報を取得する「取得工程」に該当する。
【0022】
図3は、媒体30についての屈曲情報を説明するための例を示している。媒体30は、ステップS150による印刷が終わった後に屈曲させることを前提とした基材であり、一例として、スマートフォンに装着するためのカバーである。言うまでもなく、媒体30は、より複雑な形状であってもいし立体物であってもよいが、図3では媒体30を簡略化して示している。また図3内では、参考までに、屈曲させた状態の媒体30の一部も下方に示している。
【0023】
図3によれば、媒体30は、屈曲する前の長手方向における中央部の所定幅の領域が屈曲領域30aとされている。屈曲領域30aは、スマートフォンの厚みよりもやや大きい幅を有しており、スマートフォンの表面を覆うためのカバー部30bと、スマートフォンの裏面を覆うためのカバー部30cとを繋いでいる。屈曲情報は、このような媒体30のサイズ内における屈曲領域30aの位置やサイズを定義している。また、屈曲情報は、印刷後に媒体30が屈曲される方向、つまり屈曲方向も定義している。図3の例では、矢印により屈曲方向Aを表している。
【0024】
屈曲情報も、印刷モードの指示と同様に、ユーザーが操作受付部14を操作して入力することもあれば、ユーザーが操作する外部装置からの印刷指示に含まれていることもある。屈曲情報が不要な印刷を実行する場合は、屈曲情報は外部から入力されないため、制御部11は、必ず屈曲情報を取得できる訳ではないが、以下では、制御部11が屈曲情報を取得できたものとして説明を続ける。ステップS100,S110の順序は、図2に示す順序である必要は無く、逆であってもよいし、ステップS100,S110は実質的に同時であってもよい。
【0025】
ユーザーは、媒体30のような、印刷後に屈曲させることを前提とした基材を媒体として使用し、少なくとも屈曲領域30aを含む領域へ画像を印刷する場合に、第1印刷モードを指定し、屈曲情報を入力すればよい。一方で、ユーザーは、印刷後に屈曲させることを前提としない一般的な用紙等の媒体へ画像を印刷する場合や、媒体30のような印刷後に屈曲させることを前提とした基材であっても、屈曲領域30aを避けた領域のみへ画像を印刷する場合には、第2印刷モードを指定すればよい。
【0026】
ステップS120では、制御部11は、ステップS100で取得した指示にかかる印刷モードが第1印刷モードであるか第2印刷モードであるかによって、処理を分岐する。制御部11は、第1印刷モードが指示された場合は“Yes”の判定からステップS130へ進み、第1印刷モードではない印刷モード、すなわち第2印刷モードが指示された場合は“Nо”の判定からステップS140へ進む。
【0027】
ステップS140では、制御部11は、通常の印刷データ生成を実行する。ステップS140は一般的な処理であるため簡単に説明する。制御部11は、媒体への印刷対象の画像を表現する画像データから、印刷ヘッド17へ提供するための印刷データを生成する。画像データは、操作受付部14の操作を通じてユーザーにより選択された画像データである。あるいは、画像データは外部装置からの印刷指示に含まれている。制御部11は、画像データに対して、解像度変換処理、色変換処理、階調変換処理といった各種画像処理を施して印刷データを生成する。階調変換処理を、ハーフトーン処理とも言う。印刷データは、画素毎かつ液体種毎にドットオンまたはドットオフを規定した2値データである。液体種をインク色と言い換えてもよい。ドットオンはドット吐出、ドットオフはドット非吐出を意味する。むろん、印刷データは画素毎かつ液体種毎に、単なるドットオン、ドットオフの2値ではなく、例えば大ドット、中ドット、小ドットといったノズルが吐出可能な複数のサイズのドットのいずれかのドットオンかドットオフを規定する、4値データ等であってもよい。
【0028】
ステップS130では、制御部11は、屈曲領域のための加工を伴う印刷データ生成を実行する。印刷データを生成する工程は、基本的にステップS140で説明した通りである。“屈曲領域のための加工”とは、画像を第1印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が媒体の屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率を、同じ画像を第2印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率よりも低くするための、加工である。このような加工を、ステップS130では実行し、ステップS140では実行しない。なお、ステップS130においても、印刷データのうち、媒体の屈曲領域以外の領域への印刷のための印刷データについては、通常の印刷データ生成を行うと解してよい。また、“同じ画像を第2印刷モードにより印刷するとき”とは、実際に第1印刷モードと第2印刷モードとの夫々で同じ画像を印刷するという意味ではなく、あくまで第1印刷モードの特徴であるステップS130を説明するための比較として用いた表現である。
【0029】
ステップS130における、屈曲領域のための加工について具体例を説明する。
制御部11は、ドットが印刷されないドットオフ領域が屈曲方向に交差する交差方向に連続する「スリット」を屈曲領域に形成するための加工を行う。交差方向は、基本的には屈曲方向に直交する方向と解してよい。ただし、厳密な直交でなくてもよく、交差方向は屈曲方向に対して斜めに交差していてもよい。
【0030】
図4は、印刷対象の画像を表現する画像データ40からスリット入りの印刷データ41が生成される様子を例示している。図4においては、画像を単なるグレー色のベタ画像とし、詳細は示していないが、画像データ40は何らかの画像を表現している。画像データ40のうち破線で区切った領域40aが、媒体30における屈曲領域30aに対応する画像領域である。領域40aを、屈曲画像領域40aと呼ぶ。画像データ40における屈曲画像領域40aの位置やサイズ、屈曲方向Aは、上述の屈曲情報から特定できる。屈曲画像領域40aは、画像データ40、印刷データ41にとって共通の領域である。制御部11は、このような屈曲画像領域40aにスリット40bを含んだ印刷データ41を生成する。
【0031】
図4の例では、屈曲方向Aは横方向を向いているため、複数本のスリット40bはそれぞれ縦方向を向いている。スリット40bは、データ上はドットオフが連続するラインである。印刷データ生成の工程において、スリット40bを形成するタイミングは様々であるが、制御部11は、例えば、通常の印刷データ生成の工程により一旦生成した印刷データ41に対して、屈曲画像領域40a内にドットを無くしたスリット40bを形成して印刷データ41を完成させる。
【0032】
ステップS150では、制御部11は、ステップS130またはステップS140で生成した印刷データを印刷ヘッド17へ提供し、印刷ヘッド17、搬送部16、必要に応じてキャリッジ18をそれぞれ制御して、印刷データに基づく媒体への印刷を実行する。言うまでもなく、ステップS130を経て実行するステップS150が第1印刷モードの印刷であり、ステップS140を経て実行するステップS150が第2印刷モードの印刷である。
【0033】
上述のように屈曲画像領域40a内にスリット40bが形成された印刷データ41に基づく印刷によれば、スリット40bが形成されない通常の印刷データ生成による印刷データに基づく印刷と比較して、スリット40bが有る分、媒体の屈曲領域に対するドットの被覆率が低くなる。別の言い方をすると、第1印刷モードでは、スリット40bを形成することで、媒体の屈曲領域に対する液体の吐出量を、仮に第2印刷モードで媒体の屈曲領域に液体を吐出する場合と比べて、少なくする。
【0034】
図5は、第1印刷モードの結果として得られた印刷物50のうち媒体30の屈曲領域30aを含む一部を、断面図により簡単に示している。媒体30には、印刷データ41に基づく画像の印刷結果である液体層、つまりインク層42が形成されている。また、インク層42のうち屈曲領域30aに対応する範囲には、スリット40bが形成されている。図4,5では、データとしてのスリットと、実際に屈曲領域30aに形成されたスリットとをどちらも同じ符号40bで示している。図5内の下方に示すように、印刷物50が屈曲領域30aにおいて屈曲されたとき、スリット40bが存在することによりインク層42に及ぶ力が分散されて、インク層42の膜が不規則にひび割れたり剥がれたりすることが回避され、印刷物50の品質が保たれる。本実施形態では、屈曲したときの印刷物の品質の損ないにくさを、屈曲に対する耐性と呼ぶ。第1印刷モードによれば、屈曲領域30aにおけるインク層42の屈曲に対する耐性が向上する。インクがUV硬化インクであれば、印刷物50は紫外線の照射によるインク層42の硬化が行われた後に、折り曲げられる。スリット40bの太さ、つまりスリット40bの幅は、ユーザーが目視で認識できるほどの太さである必要は無い。
【0035】
図6A,6Bはそれぞれ、印刷対象の画像を表現する画像データ40であって、図4の画像データ40とは異なる例を示している。画像データ40の見方は、図4図6A,6Bいずれも共通である。ユーザーは、印刷装置10に、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷させる場合に、第1印刷モードを指定する。屈曲領域を含む印刷領域とは、媒体における少なくとも屈曲領域を含む領域と言う意味であり、屈曲領域のみであってもよい。
【0036】
図6Aに示す画像データ40が表現する画像は、屈曲画像領域40aを含む領域に星型の空白を有しているが、屈曲画像領域40aのうち当該空白以外の場所では画像が屈曲方向Aにおいて繋がっている。そのため、図4図6Aに示す画像データ40は、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷させる画像データである。ユーザーは、図4図6Aの例にかかる画像データ40に基づく印刷を印刷装置10に実行させる際に、第1印刷モードを指示すればよい。
【0037】
一方、図6Bに示す画像データ40によれば、屈曲画像領域40aでは、屈曲方向Aにおいて、画像が空白により完全に途切れている。そのため、図6Bに示す画像データ40は、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷させる画像データに該当せず、ユーザーは、図6Bの例にかかる画像データ40に基づく印刷をさせる際には、第2印刷モードを指定すればよい。言い換えると、図6Bに示すように、屈曲画像領域40a内で屈曲方向Aにおいて画像が途切れているような場合は、元から画像にスリットが入っていることと同じであるため、第1印刷モードを選ぶ必要性が低い。
【0038】
図6Bに示すような画像データ40に基づく印刷を印刷装置10に実行させる場合にもユーザーが第1印刷モードを指定してしまう可能性はあるが、その場合は、第1印刷モードを実行したことの意味は小さい。従って、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する場合に、第1印刷モードによる効果が特に発揮され、これが本実施形態の特徴の一つと言える。
【0039】
スリット40bは、媒体の屈曲領域においてドットオフ領域が屈曲方向の交差方向に連続するように形成されたものであればよく、図4に示したような直線状でなくてもよい。スリット40bは、例えば、曲線であったり、ジグザグ状の線であったりしてもよい。また、スリット40bは、複数の線が交差したり接続したりして模様やテクスチャーを表現したものであってもよい。
【0040】
図7は、制御部11がステップS130において生成する印刷データ41であって、図4の印刷データ41とは異なる例を示している。図7の例では、印刷データ41の屈曲画像領域40aには、ドットオフが連続する複数のラインが規則的に交差した網目調のテクスチャーが、スリット40bとして形成されている。
【0041】
制御部11は、スリット40bの形状の選択を受け付け、選択にかかる形状のスリット40bを屈曲領域に形成するとしてもよい。具体的には、ユーザーは、表示部13又は外部装置のディスプレイに表示されたUI画面を通じて、複数のスリット40bの形状の選択肢の中から任意にスリット40bの形状を選択する。UIは、ユーザーインターフェースの略である。スリット40bの形状の選択肢とは、図4図7に示した直線やテクスチャーの他、上述したような曲線やジグザク状やその他の模様といった様々な形状の選択肢である。
【0042】
制御部11は、このようなスリット40bの形状の選択を、操作受付部14や表示部13または通信IF15を通じて、ステップS120の判定よりも早いタイミングで受け付ける。スリット40bの形状の選択は、通信IF15を通じて外部装置から受信する印刷指示に含まれていてもよい。そして、制御部11は、ステップS130において、屈曲領域のための加工を伴う印刷データ生成をする際、上述のように受け付けた選択に係る形状のスリット40bを、屈曲画像領域40aに形成すればよい。
【0043】
3.屈曲率に応じた加工処理:
ステップS110で制御部11が取得する屈曲情報には、媒体の屈曲領域を屈曲させる屈曲率の情報が含まれているとしてもよい。屈曲率は、屈曲させる角度の深さである。図3,5の例では、媒体30は、カバー部30bとカバー部30cとが対向するように印刷後に屈曲領域30aが180度折り曲げられることを前提とする基体であるため、その屈曲率は180度である。媒体の特性や印刷後の用途によって、屈曲率は30度、45度、60度、90度…等様々である。そのため、外部から入力される屈曲情報には、屈曲領域、屈曲方向の情報に加えて、屈曲率も含まれている。
【0044】
そして、制御部11は、屈曲率が第1屈曲率であるときの、第1印刷モードにおける前記被覆率を第1被覆率とし、屈曲率が第1屈曲率よりも大きい第2屈曲率であるときの、第1印刷モードにおける前記被覆率を第2被覆率とすると、第1被覆率を第2被覆率よりも高くなるように制御するとしてもよい。つまり、屈曲領域が印刷後により深く曲げられる媒体であるほど、制御部11は、ステップS130,150において、屈曲領域に対する液体の吐出量を少なくする。
【0045】
具体的には、制御部11は、屈曲率に応じてスリット40bの幅を変更する。具体例として、第1屈曲率=90度、第2屈曲率=180度と仮定する。制御部11は、屈曲情報に含まれている屈曲率が90度を示す場合にステップS130で実行する加工において、屈曲画像領域40a内の各スリット40bの幅を、m画素に設定して印刷データ41を生成する一方で、屈曲率が180度を示す場合にステップS130で実行する加工においては、スリット40bの幅を、例えばm×2画素に設定して印刷データ41を生成する。このように、屈曲率が大きいほどスリット40bの幅を大きくして、屈曲領域におけるドットの被覆率を下げる。
【0046】
あるいは、制御部11は、屈曲率に応じてスリット40bの数を変更するとしてもよい。ここでも上述の具体例を採用する。制御部11は、屈曲情報に含まれている屈曲率が90度を示す場合にステップS130で実行する加工において、屈曲画像領域40a内のスリット40bの数をn本に設定して印刷データ41を生成する一方で、屈曲率が180度を示す場合にステップS130で実行する加工においては、スリット40bの幅を、例えばn×2本に設定して印刷データ41を生成する。このように、屈曲率が大きいほどスリット40bの数を多くして、屈曲領域におけるドットの被覆率を下げる。mやnは所定の自然数である。さらに、制御部11は、屈曲率に応じてスリット40bの幅および数を変更するとしてもよい。
【0047】
4.ステップS130に関する変形例:
ステップS130において制御部11が実行する印刷データの加工は、媒体の屈曲領域にスリット40bを形成するための処理に限らない。制御部11は、印刷データのうち屈曲領域に対応する印刷データを生成するに際し、第1印刷モードにおいて、印刷データを生成するための画像処理に用いるマスクおよびテーブルの少なくとも一部を、第2印刷モードにおいて用いるマスクおよびテーブルと異ならせる、としてもよい。このように画像処理に用いるマスクやテーブルを変えることも、屈曲領域のための加工の一種と捉える。印刷データのうち屈曲領域に対応する印刷データとは、これまでの説明によれば印刷データ41のうちの屈曲画像領域40aのデータを指す。
【0048】
画像処理に用いるマスクやテーブルとは、上述の色変換処理やハーフトーン処理に用いるテーブルやマスクであり、印刷装置10が予め複数記憶していたり、印刷装置10が参照可能な外部の記憶装置に複数記憶されていたりする。例えば、画像データの画素毎の色の階調値を印刷データの色空間におけるCMYK階調値へ色変換するために用いる色変換LUTが上述のテーブルに該当する。LUTは、ルックアップテーブルの略である。階調値は、例えば0~255の256階調で表現される。CMYK階調値は、CMYKインク毎のインク量を表す。また、画像データのCMYK階調値に対するハーフトーン処理に用いるディザマスクは上述のマスクに該当する。また、CMYK階調値を、サイズが異なる大ドット、中ドット、小ドットそれぞれの発生率としての値へ変換するためのドット振り分けテーブルも、上述のテーブルの例に該当する。
【0049】
ステップS130では、制御部11は、屈曲画像領域40aの印刷データを生成するに際し、例えば、ステップS140の通常の印刷データ生成の過程で用いる色変換LUTに比べて小さいCMYK階調値を出力する色変換LUTを用いる。この結果、第1印刷モードによれば、媒体の屈曲領域に対して吐出するインク量を第2印刷モードよりも少なくして被覆率の低下を実現し、インク層42を薄膜化することができる。屈曲領域のインク層42を薄膜化することで、屈曲したときのひび割れや剥離の可能性を下げ、屈曲に対する耐性を向上させる。
【0050】
また、屈曲領域におけるドットの被覆率を低下させようとする場合に、第2印刷モードにより同じ画像を印刷するために屈曲領域へ吐出するインク量と比べてインク量は変えずに被覆率を下げることも可能である。
ステップS130では、制御部11は、屈曲画像領域40aの印刷データを生成するに際し、例えば、ステップS140の通常の印刷データ生成の過程で用いるドット振り分けテーブルに比べて、大ドットの発生率を上げ、小ドットや中ドットの発生率を下げたドット振り分けテーブルを用いるとしてもよい。この結果、第1印刷モードによれば、媒体の屈曲領域に対して吐出される複数のドットにおける大ドットの比率を、第2印刷モードよりも高くすることができる。同じ総量のインクを屈曲領域に吐出するとしても、相対的に大きいドットの比率を高めるとドット数は減る。ドット数を減らすことで屈曲領域に空白が生じ易くなり被覆率が下がり、インク層42の部分的な薄膜化と、それによる屈曲に対する耐性向上とが実現される。
【0051】
ステップS130では、制御部11は、屈曲画像領域40aの印刷データを生成するに際し、例えば、ステップS140の通常の印刷データ生成の過程で用いるディザマスに比べて、ドットの分散性が低いディザマスクを用いるとしてもよい。知られているように、ディザマスクはインクの階調値や発生率と比較するための異なる複数のしきい値を配列させたマトリクスであり、ハーフトーン処理において画像データに適用して画素毎かつインク色毎にドットオンまたはドットオフを決定する。発生させるドットの配置が均等に近いほど分散性が高く、逆に、発生させるドットの配置が不規則であると分散性が低いディザマスクと言える。
【0052】
ディザマスクによるドットの分散性が相対的に低いと、ある位置ではドットが集中していたり他の位置ではドットが疎らであったりして、領域内でドットの疎密、偏りが生じ、結果的に被覆率が下がる。このように、第1印刷モードでは、屈曲画像領域40aの印刷データを生成するために、相対的にドットの分散性が低いディザマスクを用いることで、屈曲領域におけるドットの被覆率を下げ、インク層42の部分的な薄膜化と、それによる屈曲に対する耐性向上とが実現される。
【0053】
ステップS130に関するこのような各変形例は、当然、組み合わせて実施してもよい。また、第1印刷モードにおいて、上述の屈曲率に応じて屈曲領域のドットの被覆率を変化させることに関しても、スリット40bの幅や数の変化で対応するのではなく、上述したように印刷データを生成するための画像処理に用いるマスクおよびテーブルの少なくとも一部を変えることで実現してもよい。
【0054】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、可撓性を有する媒体へ液体を吐出する印刷ヘッド17と、印刷ヘッド17による液体吐出を制御する制御部11と、を備え、屈曲させることが可能な印刷物を生成可能である。制御部11は、媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と、屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報を取得し、屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能であり、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する場合に、前記画像を第1印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率を、前記画像を第2印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率よりも低くする。
【0055】
前記構成によれば、制御部11は、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲方向において少なくとも一部で連続する画像を、第1印刷モードにより印刷するときは、第2印刷モードで印刷するときと比べて、屈曲領域の前記被覆率を低下させ、屈曲領域において液体層を薄膜化したり空白を増やしたりする。これにより、屈曲領域における印刷結果の屈曲に対する耐性が向上する。
【0056】
また、本実施形態によれば、屈曲情報は、屈曲領域を屈曲させる屈曲率の情報を含むとしてもよい。
制御部11は、屈曲率が第1屈曲率であるときの、第1印刷モードにおける前記被覆率を第1被覆率とし、屈曲率が第1屈曲率よりも大きい第2屈曲率であるときの、第1印刷モードにおける前記被覆率を第2被覆率とすると、第1被覆率を第2被覆率よりも高くなるように制御するとしてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、第1印刷モードにおいて、屈曲率の高まりに応じて屈曲領域の前記被覆率を低下させることで、印刷後の媒体がどのような屈曲率で曲げられる物であっても、印刷物としての品質を保つことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第1印刷モードにおいて、ドットが印刷されないドットオフ領域が屈曲の方向に交差する交差方向に連続するスリットを屈曲領域に形成するとしてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、屈曲領域に空白であるスリットを交差方向に沿って形成することで、屈曲領域における液体層のひび割れや剥離を防止して、印刷物の品質を保つことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によれば、制御部11は、屈曲率に応じてスリットの幅を変更するとしてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、屈曲率に応じてスリットの幅を変更することで、屈曲率にかかわらず印刷物の品質を保つことが可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、制御部11は、屈曲率に応じてスリットの数を変更するとしてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、屈曲率に応じてスリットの数を変更することで、屈曲率にかかわらず印刷物の品質を保つことが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、制御部11は、スリットの形状の選択を受け付け、選択にかかる形状のスリットを屈曲領域に形成するとしてもよい。
前記構成によれば、ユーザーにスリットの形状を選択させることで、屈曲領域における印刷結果の屈曲に対する耐性向上と、意匠性の向上とを同時に図ることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、制御部11は、前記画像の印刷のために印刷ヘッド17へ提供する印刷データのうち屈曲領域に対応する印刷データを生成するに際し、第1印刷モードにおいて、印刷データを生成するための画像処理に用いるマスクおよびテーブルの少なくとも一部を、第2印刷モードにおいて用いる前記マスクおよび前記テーブルと異ならせる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、第1印刷モードでは、屈曲領域に対応する印刷データを生成するに際し、第2印刷モードとは異なる前記マスクや前記テーブルを用いることにより屈曲領域の前記被覆率を低下させ、屈曲領域における液体層のひび割れや剥離を防止して印刷物の品質を保つことが可能となる。
【0062】
なお、特許請求の範囲においては、請求項同士の組み合わせの一部のみを記載しているが、本実施形態は、独立請求項と従属請求項との一対一の組み合わせだけでなく、当然に、複数の従属請求項の各種組み合わせを開示範囲に含める。
本実施形態は、印刷装置10以外にも、印刷方法や、当該方法をプロセッサーと協働して実現するためのプログラム12を開示する。
つまり、可撓性を有する媒体へ印刷ヘッド17により液体を吐出して、屈曲させることが可能な印刷物を生成可能な印刷装置10が実行する印刷方法は、媒体において屈曲させる領域である屈曲領域の情報と屈曲の方向の情報とを含んだ屈曲情報に基づいて印刷を行う第1印刷モードと、第1印刷モードとは異なる印刷を行う第2印刷モードと、を実行可能である。そして、印刷方法は、屈曲情報を取得する取得工程と、媒体の屈曲領域を含む印刷領域に対して、屈曲の方向において少なくとも一部で連続する画像を印刷する印刷工程と、を有し、印刷工程では、前記画像を第1印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率を、前記画像を第2印刷モードにより印刷するときに印刷ヘッド17が屈曲領域へ吐出する液体のドットによる被覆率よりも低くする。これまでの説明から解るように、ステップS130とその後のステップS150が、当該方法の「印刷工程」に該当する。
【符号の説明】
【0063】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…搬送部、17…印刷ヘッド、18…キャリッジ、30…媒体、30a…屈曲領域、40…画像データ、40a…屈曲画像領域、40b…スリット、41…印刷データ、42…インク層、50…印刷物
図1
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