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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130237
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240920BHJP
   B41J 2/165 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039862
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】プジアトノ
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA20
2C056EB08
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC24
2C056EC26
2C056FA10
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】クリーニングの種類を選択するユーザーを支援する。
【解決手段】印刷装置は、複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによるインクの吐出を制御する制御部と、表示部と、外部からの操作を受け付け可能な操作受付部と、前記印刷ヘッドのクリーニングを実行可能なクリーニング部と、を備え、前記制御部は、前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることにより、テストパターンを印刷させ、前記テストパターンの印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数の前記テストパターン画像を複数の選択肢として前記表示部に表示させ、前記操作受付部を通じて前記テストパターン画像の選択を受け付け、複数の前記テストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類の前記クリーニングのうち、選択された前記テストパターン画像に対応するクリーニングを前記クリーニング部に実行させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドによるインクの吐出を制御する制御部と、
表示部と、
外部からの操作を受け付け可能な操作受付部と、
前記印刷ヘッドのクリーニングを実行可能なクリーニング部と、を備え、
前記制御部は、
前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることにより、テストパターンを印刷させ、
前記テストパターンの印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数の前記テストパターン画像を複数の選択肢として前記表示部に表示させ、
前記操作受付部を通じて前記テストパターン画像の選択を受け付け、
複数の前記テストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類の前記クリーニングのうち、選択された前記テストパターン画像に対応するクリーニングを前記クリーニング部に実行させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記クリーニング部によるクリーニングの実行後に、前記印刷ヘッドに前記テストパターンの再印刷を実行させ、
前記操作受付部を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、前記テストパターン画像を前記表示部に表示させる場合に、前記実行指示を受ける前に実行したクリーニングの強度以下のクリーニングに対応する前記テストパターン画像は表示させない、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドは、複数の前記ノズルが並ぶノズル列であって、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズル列を有し、
前記制御部は、
複数の前記ノズル列のそれぞれが形成する複数のパターンを含む前記テストパターンを印刷させ、
前記テストパターン画像の選択であってインクの色に紐づいた選択を受け付け、
前記クリーニング部に、前記選択にかかる前記テストパターン画像に対応するクリーニングを、前記選択に紐づいた色のインクを吐出する前記ノズル列に対して実行させる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記テストパターン画像の選択であって前記印刷ヘッドの領域に紐づいた選択を受け付け、
前記クリーニング部に、前記選択にかかる前記テストパターン画像に対応するクリーニングを、前記選択に紐づいた前記領域に対して実行させる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記クリーニング部によるクリーニングの実行後に、前記印刷ヘッドに前記テストパターンの再印刷を実行させ、
前記操作受付部を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、前記テストパターン画像を前記表示部に表示させる場合に、選択肢の1つとして自動判定の表示も前記表示部に実行させ、
前記操作受付部を通じて前記自動判定の選択を受け付けた場合、再印刷した前記テストパターンのスキャナーによる読取データを取得し、
前記読取データに基づいて印刷の不良の程度を判定し、当該不良の程度に応じて実行すべき前記クリーニングの種類を決定し、
決定した種類のクリーニングを前記クリーニング部に実行させる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記テストパターンの印刷よりも先に、前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることによりプレテストパターンを印刷させ、
印刷した前記プレテストパターンのスキャナーによる読取データを取得し、
前記読取データに基づいて印刷の不良の程度を判定し、当該不良の程度に応じて実行すべき前記クリーニングの種類を決定し、
決定した種類のクリーニングを前記クリーニング部に実行させた上で、前記印刷ヘッドに前記テストパターンを印刷させ、
前記操作受付部を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、複数の前記テストパターン画像を前記表示部に表示させる、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
インクを吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷装置の制御方法であって、
前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることによりテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程と、
前記テストパターンの印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数の前記テストパターン画像を複数の選択肢として表示部に表示するテストパターン画像表示工程と、
前記テストパターン画像の選択を外部から受け付ける選択受付工程と、
前記印刷ヘッドのクリーニングであって、複数の前記テストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類の前記クリーニングのうち、選択された前記テストパターン画像に対応するクリーニングを前記印刷ヘッドに対して実行するクリーニング工程と、を備えることを特徴とする印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドのクリーニングを実行する印刷装置および印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドを用いて印刷を行うプリンターでは、ノズルがインクの増粘やゴミの付着等で詰まり、ドット抜けが生じることがある。ドット抜けとは、印刷結果において本来在るべきドットが欠落した状態を言う。そのため、プリンターは、ノズルの詰まりを解消して印刷の不良を改善するためのクリーニングを実行する。
【0003】
ヘッドクリーニングの強度として「弱」、「普通」、「強力」という選択肢を文字による説明とともに表示パネルに表示して、ヘッドクリーニングの強度をユーザーに選択させるプリンターが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020‐163596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷ヘッドの状態に応じてクリーニングの種類を適切に選択したいユーザーにとって、現状、最適な提示が行われているとは言えない。そのため、適切なクリーニングを選択できず、クリーニングのために過剰にインクを消費してしまうことが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
印刷装置は、インクを吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによるインクの吐出を制御する制御部と、表示部と、外部からの操作を受け付け可能な操作受付部と、前記印刷ヘッドのクリーニングを実行可能なクリーニング部と、を備え、前記制御部は、前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることにより、テストパターンを印刷させ、前記テストパターンの印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数の前記テストパターン画像を複数の選択肢として前記表示部に表示させ、前記操作受付部を通じて前記テストパターン画像の選択を受け付け、複数の前記テストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類の前記クリーニングのうち、選択された前記テストパターン画像に対応するクリーニングを前記クリーニング部に実行させる。
【0007】
インクを吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷装置の制御方法は、前記印刷ヘッドに複数の前記ノズルから媒体へインクを吐出させることによりテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程と、前記テストパターンの印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数の前記テストパターン画像を複数の選択肢として表示部に表示するテストパターン画像表示工程と、前記テストパターン画像の選択を外部から受け付ける選択受付工程と、前記印刷ヘッドのクリーニングであって、複数の前記テストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類の前記クリーニングのうち、選択された前記テストパターン画像に対応するクリーニングを前記印刷ヘッドに対して実行するクリーニング工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】装置構成を簡易的に示す図。
図2】媒体と印刷ヘッドとの関係性を上方からの視点により示す図。
図3】第1実施形態のクリーニング制御を示すフローチャート。
図4】印刷されたテストパターンの例を示す図。
図5】クリーニング選択画面の例を示す図。
図6】第2実施形態のクリーニング制御を示すフローチャート。
図7図7Aは色選択画面の例を示す図、図7Bは領域選択画面の例を示す図。
図8図2と異なる例の印刷ヘッドを上方からの視点により示す図。
図9】第3実施形態のクリーニング制御を示すフローチャート。
図10】自動判定を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0010】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、記憶部16、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19、駆動回路21等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0011】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0012】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0013】
通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部装置と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。外部装置とは、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末といった各種通信装置である。
【0014】
記憶部16は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブといった記憶装置により構成される。記憶部16は、制御部11が有するメモリーの一部であってもよい。また、記憶部16を制御部11の一部と解してもよい。記憶部16には、印刷装置10の制御に必要な各種情報が記憶される。
【0015】
搬送部17は、所定の搬送方向へ媒体を搬送するための手段であり、回転するローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。搬送の上流、下流を、以下では単に、上流、下流と言う。媒体は、代表的には用紙であるが、用紙の他、生地やフィルム等、インクによる印刷の対象となり得る様々な素材を媒体として採用可能である。また、搬送方向を副走査方向とも呼ぶ。搬送部17は、媒体をベルトやパレットに載せて搬送する機構であってもよい。
【0016】
キャリッジ18は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて所定の主走査方向に沿って往復移動可能な機構である。主走査方向と副走査方向とは交差している。主走査方向と副走査方向との交差は、直交あるいはほぼ直交と解してよい。キャリッジ18は印刷ヘッド19を搭載している。従って、印刷ヘッド19はキャリッジ18とともに、主走査方向に沿って往復移動する。印刷ヘッド19の移動とキャリッジ18の移動とは同義である。
【0017】
印刷ヘッド19は、インクを吐出可能な複数のノズル20を有する。印刷ヘッド19に対しては、制御部11による制御下で各ノズル20を駆動する駆動回路21が接続している。ノズル20は、液滴であるドットを吐出する。印刷ヘッド19は、画像を印刷するための印刷データに基づいてインク吐出を行う。知られているように、制御部11は、各ノズル20が備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を、印刷データに従って駆動回路21を通じて制御することで、各ノズル20からドットを吐出させたり吐出させなかったりして媒体へ画像を印刷する。印刷ヘッド19は、例えば、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インク等の各色インクを吐出可能である。むろん、印刷ヘッド19が吐出するインクの色はCMYKに限定されない。また、印刷ヘッド19は、インクやインクに該当しない液体を含めて各種液体を吐出可能である。
【0018】
図2は、媒体30と印刷ヘッド19との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。キャリッジ18に搭載された印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに主走査方向D1の一端から他端への移動である往路移動や、他端から一端への移動である復路移動をする。図2では、ノズル面23におけるノズル20の配列の一例を示している。ノズル面23は、印刷ヘッド19の下面であり、媒体30と相対する面である。ノズル面23内の個々の小さな丸が個々のノズル20を表している。
【0019】
印刷ヘッド19は、インクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示の液体保持手段から各色のインクの供給を受けてノズル20から吐出する構成において、インク色別のノズル列26を備える。図2は、CMYKインクを吐出する印刷ヘッド19の例を示している。Cインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Cである。同様に、Mインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26M、Yインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Y、Kインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Kである。
【0020】
図2の例では、ノズル列26C,26M,26Y,26Kは、主走査方向D1に沿って配列されている。また、これら色別の複数のノズル列26は搬送方向D2において同じ位置に配設されている。1つのノズル列26は、搬送方向D2におけるノズル20同士の間隔であるノズル間隔が一定或いはほぼ一定とされた複数のノズル20により構成される。
【0021】
ノズル列26を構成する複数のノズル20が並ぶ方向をノズル並び方向とも呼ぶ。図2の例では、ノズル並び方向は搬送方向D2と平行である。従って、ノズル列26を構成する複数のノズル20は、搬送方向D2に並んでいると言える。このような構成では、ノズル並び方向は主走査方向D1と直交する。ただし、ノズル並び方向は搬送方向D2に対して平行でなく斜めであってもよい。ノズル並び方向が搬送方向D2と平行であってもなくても、ノズル並び方向は主走査方向D1と交差していると言えるし、ノズル列26を構成する複数のノズル20は搬送方向D2において所定のノズル間隔で並んでいると言える。従って、ノズル並び方向が搬送方向D2に対して斜めであっても、ノズル列26を構成する複数のノズル20は搬送方向D2にも並んでいると解釈する。
【0022】
主走査方向D1に沿ったキャリッジ18の移動と共に印刷ヘッド19がインクを吐出する動作を、主走査あるいはパスと呼ぶ。また、パスとパスとの間に搬送部17が媒体30を決められた距離だけ下流へ搬送する動作を、紙送りと呼ぶ。一般に制御部11は、印刷ヘッド19、キャリッジ18、搬送部17を制御することでパスと紙送りとを実行して、媒体30に2次元の画像を印刷することが可能である。あるいは、キャリッジ18は、主走査方向D1だけでなく搬送方向D2にも往復移動可能であり、媒体30に対して相対的に上流へ移動することで、紙送りと同じ効果を奏する構成であってもよい。本実施形態では、制御部11は、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させてテストパターンを印刷する。
【0023】
印刷装置10は、廃インクを受け入れ貯留するメンテナンスボックス22を有する。メンテナンスボックス22を、以下ではMTB22と略す。MTB22は、キャリッジ18による印刷ヘッド19の移動範囲であって、媒体30が通過する範囲外の所定位置に配設されている。制御部11は、キャリッジ18を制御して印刷ヘッド19のノズル面23がMTB22と対向する位置まで印刷ヘッド19を移動させた上で、印刷ヘッド19のクリーニングを実行する。クリーニングでは、駆動回路21がクリーニングのための特定の駆動信号を用いて印刷ヘッド19の各ノズル20からインクを強制的に吐出させることにより各ノズル20の詰まりを改善する。クリーニングに際して吐出されるインクはMTB22が受容する。印刷ヘッド19のクリーニング実行に関わる構成を「クリーニング部」とも称する。クリーニング部は、駆動回路21や、プログラム12と協働して駆動回路21を制御する制御部11の一部を含み、さらにはMTB22を含むと解してもよい。
【0024】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11として機能する印刷制御装置と、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19、駆動回路21等を有するプリンターと、を含む。表示部13や操作受付部14は、印刷制御装置、プリンターのどちらの側に在ってもよい。このような印刷装置10または印刷システム10により、印刷装置の制御方法が実現される。
【0025】
2.クリーニング制御:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行するクリーニング制御をフローチャートにより示している。制御部11は、ユーザーからノズルチェック用のテストパターンの印刷指示を受けた場合に、当該フローチャートを実行する。ノズルチェック用のテストパターンとは、印刷の不良、つまりノズル20毎の良、不良を評価するためのテストパターンである。ユーザーは、操作受付部14を操作したり、通信IF15を介して印刷装置10と通信可能な外部装置を操作したりすることで、印刷装置10に対してテストパターンの印刷指示をすることができる。
【0026】
ステップS100では、制御部11は、印刷データに基づき、印刷ヘッド19に各ノズル20から媒体30へインクを吐出させることにより、テストパターンを印刷させる。ステップS100は「テストパターン印刷工程」に該当する。テストパターンを印刷するための印刷データは、例えば、予め記憶部16に記憶されている。
【0027】
図4は、ステップS100により媒体30へ印刷されたテストパターン40を例示している。テストパターン40は、ノズル列26毎に形成した複数のパターンである複数の罫線群を含んでいる。図2の印刷ヘッド19によれば、テストパターン40は、ノズル列26CによりCインクで印刷された第1罫線群41、ノズル列26MによりMインクで印刷された第2罫線群42、ノズル列26YによりYインクで印刷された第3罫線群43、ノズル列26KによりKインクで印刷された第4罫線群44を含んでいる。これら複数の罫線群は、主走査方向D1に沿って並んでいる。第1罫線群41、第2罫線群42、第3罫線群43、第4罫線群44は、それぞれが異なるインクに対応したノズル列26毎のパターンである。ただし、テストパターン40のデザインは、各ノズル列26の各ノズル20によるインク吐出を評価可能なものであればよく、図4に示したようなデザインでなくてもよい。テストパターン40は、例えば、インクの色毎の帯状のパターンが並ぶデザインであったり、文字を含んだデザインであったりしてもよい。
【0028】
1つのノズル列26により印刷された1つの罫線群は、当該ノズル列26を構成する各ノズル20が吐出したドットにより形成されたノズル20毎の罫線45の集合である。各罫線45は、それぞれに主走査方向D1に長さ成分を有する。罫線45は、実線であってもよいし、破線であってもよい。罫線群の具体的なデザインは特に問わないが、見易さを考慮して、例えば、共通のノズル列26内で搬送方向D2において隣り合うノズル20が形成する罫線45同士が主走査方向D1にずれて形成されている。ある1つのノズル20が詰まっている場合、当該ノズル20により本来形成されるべき罫線45が、媒体30上のテストパターン40内では欠落する。図4の例では、第1罫線群41や第4罫線群44において、幾つかの罫線45が欠けている。
【0029】
ステップS110では、制御部11は、テストパターン40の印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数のテストパターン画像を、複数の選択肢として表示部13に表示させる。テストパターン40の印刷結果を模したとは、テストパターン40の少なくとも一部を模したという意味であり、ここでは1つのテストパターン画像は、1つの罫線群を模したイメージであるとする。複数のテストパターン画像は、予め記憶部16に記憶されている。ステップS110は「テストパターン画像表示工程」に該当する。
【0030】
図5は、ステップS110において表示部13に表示されるクリーニング選択画面50を例示している。クリーニング選択画面50は、ユーザーの入力を受け付け可能なUI画面の一種である。UIはユーザーインターフェイスの略である。クリーニング選択画面50には、複数のテストパターン画像51,52,53が含まれている。図5の例ではテストパターン画像は3種類表示されているが、むろん、テストパターン画像の種類や後述のクリーニングの種類は3つより多くてもよい。
【0031】
複数のテストパターン画像は、それぞれに罫線の欠落の程度により、印刷の不良の程度を表現している。図5の例では、テストパターン画像51が最も罫線の欠落が少なく、テストパターン画像53が最も罫線の欠落が多い。複数のテストパターン画像のそれぞれには、クリーニングの種類が予め対応付けられている。つまり、制御部11は、テストパターン画像とクリーニングの種類との一対一の関係を予め認識している。例えば、テストパターン画像51は、強度=“弱”のクリーニングに対応付けられており、テストパターン画像52は、強度=“中”のクリーニングに対応付けられており、テストパターン画像53は、強度=“強”のクリーニングに対応付けられている。クリーニングの強度とは、例えば、クリーニングを実行する時間、クリーニングのために各ノズル20が吐出するインク量、クリーニングのために駆動回路21が各ノズル20へ与える駆動信号の強さ、といった要素の違いに表れる。強度が高いクリーニングほど、これら要素の設定が長かったり、多かったり、強かったりする。クリーニングの強度の違いが、クリーニングの種類の違いである。また、後にも説明するが、クリーニング選択画面50に表示される複数のテストパターン画像に、クリーニング不要に対応するテストパターン画像を含むようにしても
よい。
【0032】
ステップS120では、制御部11は、操作受付部14を通じてテストパターン画像の外部からの選択を受け付ける。ステップS120は「選択受付工程」に該当する。ユーザーは、操作受付部14を操作することでテストパターン画像を選択する。つまり、ユーザーは、ステップS100で印刷したテストパターン40と、ステップS110で表示部13に表示された複数のテストパターン画像とを見比べ、罫線の欠落の程度がテストパターン40における罫線45の欠落の程度と最も合うテストパターン画像を選択する。図5の例では、テストパターン画像51が選択されている。クリーニング選択画面50では、現在選択されているテストパターン画像に対応するクリーニングの種類が何であるかを、文字等で分かり易く示してもよい。ユーザーが、テストパターン画像の選択を確定する所定の操作をしたとき、制御部11は、テストパターン画像の選択を受け付ける。
【0033】
ステップS130では、制御部11は、複数のテストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類のクリーニングのうち、ステップS120で選択されたテストパターン画像に対応するクリーニングを、クリーニング部に実行させる。ステップS130は「クリーニング工程」に該当する。
【0034】
ステップS140では、制御部11は、テストパターンの再印刷を実行する。ステップS140は、ステップS100と同じ処理と解してよい。つまり、ステップS130のクリーニングの効果を確認するために、ステップS130の後にテストパターン40の再印刷を行う。ユーザーは、媒体30へ再印刷されたテストパターン40を目視で評価し、印刷結果が良好であるか否かを判定し、判定結果を印刷装置10へ入力する。
【0035】
制御部11は、表示部13において、テストパターン40の再印刷の結果が良好であるか否かをユーザーに問い合わせ、操作受付部14を通じて、印刷結果が良好である旨の入力をユーザーから受けた場合に、ステップS150で“Yes”と判定して図3のフローチャートを終了する。一方、制御部11は、前記問い合わせに対して、操作受付部14を通じて、印刷結果が良好でない旨の入力をユーザーから受けた場合に、ステップS150の“Nо”の判定からステップS160へ進む。
【0036】
ステップS160では、制御部11は、表示部13において、クリーニングを再度実行するか否かをユーザーに問い合わせ、操作受付部14を通じて、再度のクリーニングの実行指示をユーザーから受けた場合に、ステップS160で“Yes”と判定してステップS170へ進む。一方、制御部11は、操作受付部14を通じて、クリーニングを再度実行しない旨の指示をユーザーから受けた場合には、ステップS160の“Nо”の判定からステップS180へ進む。
【0037】
ステップS180では、制御部11は、通信IF15を通じたネットワーク通信により、所定のサービスセンターへ印刷ヘッド19に不良が発生した旨を通知し、図3のフローチャートを終了する。サービスセンターは、例えば、印刷装置10のベンダーが印刷装置10のユーザー向けに設置した部門であり、ユーザーからの通知に応じてサービスマンの派遣等のサービスを提供する。
【0038】
ただし、ステップS150以降については処理を簡略化してもよい。制御部11は、ステップS150において、印刷結果が良好でない旨の入力をユーザーから受けて“Nо”と判定した場合、この印刷結果が良好でない旨の入力を、再度のクリーニングの実行指示と見なし、直接にステップS170へ進むようにしてもよい。
【0039】
制御部11は、ステップS170においてテストパターン画像の絞り込みをした上で、ステップS110を実行する。具体的には、制御部11は、再度のクリーニングの実行指示を受ける前に実行したクリーニングの強度以下のクリーニングに対応するテストパターン画像は、表示対象から除外し、次のステップS110で表示させないようにする。例えば、直近のステップS130で強度=“弱”のクリーニングを実行したのであれば、制御部11は、強度=“弱”のクリーニングに対応するテストパターン画像51を除くテストパターン画像52,53に絞り込み(ステップS170)、このように絞り込んだテストパターン画像52,53を表示部13に表示させる(ステップS110)。ステップS110以降の処理は、説明した通りである。
【0040】
ただし、ステップS130においてクリーニング部が実行可能な最も強度が高いクリーニングを実行した後に、ステップS170を行うと、その後のステップS110で表示できるテストパターン画像が無くなってしまう。そのため、制御部11は、ステップS130において前記最も強度が高いクリーニングを実行した後に、再度のクリーニングの実行指示を受けた場合は、ステップS170の絞り込みを実行せず、ステップS110では、前記最も強度が高いクリーニングに対応するテストパターン画像を表示部13に表示させる。
【0041】
図3において、ステップS170が無いフローチャートも想定できる。つまり、制御部11は、再度のクリーニングの実行指示を受けたら、単純にステップS110へ戻るとしてもよい。後述の図6,9においても同様に、ステップS172,S174が無いフローチャートを想定することができる。
【0042】
フローチャート内における2回目以降のクリーニングを、便宜上「リトライ」とも呼ぶ。制御部11は、1回のフローチャート内でのリトライ回数に上限を設けてもよい。例えば、リトライ回数の上限を3回とする。制御部11は、リトライを3回実行した後にステップS150において“Nо”と判定した場合は、強制的にステップS180へ進むとしてもよい。
【0043】
ここまでの本実施形態の説明を、第1実施形態とも呼ぶ。
以下の各実施形態においては、原則的に第1実施形態を準用するものとし、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0044】
3.第2実施形態:
図6は、制御部11がプログラム12に従って実行する、第2実施形態にかかるクリーニング制御をフローチャートにより示している。
ステップS100の後、ステップS102では、制御部11は、インクの色の選択を受け付ける。つまり、ユーザーは、ステップS100で印刷されたテストパターン40を見た上で、ドット抜けによる印刷品質の低下を改善したいインクの色を、操作受付部14を操作することにより選択する。
【0045】
図7Aは、表示部13が表示するUI画面であって、インクの色の選択を受け付けるための色選択画面54を例示している。色選択画面54には、印刷ヘッド19が吐出可能なインクの色であるCMYKを選択するためのUI、例えば、CMYK毎のチェックボックス55c,55m,55y,55kが含まれている。ユーザーは、チェックボックス55c,55m,55y,55kのいずれかにチェックを入れることで色を選択する。図7Aの例ではCが選択されている。制御部11は、このような色の選択を受け付ける。
【0046】
ステップS102,S110を経たステップS120では、制御部11は、上述したように、クリーニング選択画面50が表示するいずれかのテストパターン画像の選択を受け付けるが、この選択を、ステップS102で受け付けたインクの色に紐づいた選択として受け付ける。例えば、図7Aおよび図5の状況を前提とすると、制御部11は、Cについてテストパターン画像51が選択されたことを認識する。
【0047】
ステップS122では、制御部11は、印刷ヘッド19が吐出可能なインクの全色について、テストパターン画像の選択を終えたか否かを判定し、全色について選択を終えている場合は“Yes”からステップS132へ進み、全色についての選択を終えていない場合は“Nо”からステップS102へ戻る。
【0048】
テストパターン40の印刷結果によっては、クリーニングが不要なインクの色もある。図4の例では、第2罫線群42および第3罫線群43には罫線45の欠落が無いため、MおよびYについてはクリーニング不要と言える。そのため、クリーニング選択画面50には、“クリーニング不要”の旨の選択肢が有ってもよい。制御部11は、あるインクの色についてクリーニング不要が選択された場合、当該色については、テストパターン画像が選択された場合と同様に、ステップS122では選択済みとして扱う。例えば、制御部11は、クリーニング選択画面50に、罫線の欠落が無いテストパターン画像を他のテストパターン画像51,52,53と同様に表示し、罫線の欠落が無いテストパターン画像が選択されたときに、クリーニング不要が選択されたと認識してもよい。
【0049】
ステップS132では、制御部11は、ステップS130と同様に、ステップS120で選択されたテストパターン画像に対応するクリーニングを、クリーニング部に実行させる。ただしステップS132では、テストパターン画像の選択に紐づいた色のインクを吐出するノズル列26に対して、当該テストパターン画像に対応するクリーニングを実行する。つまり、インクの色毎に、テストパターン画像に対応するクリーニングを実行する。例えば、Cについてテストパターン画像51が選択され、Kについてテストパターン画像52が選択されたのであれば、クリーニング部は、ノズル列26Cに対して強度=“弱”のクリーニングを実行し、ノズル列26Kに対して強度=“中”のクリーニングを実行する。また、仮にMおよびYについてはクリーニング不要が選択されたのであれば、当然、ノズル列26Mおよびノズル列26Yにはクリーニングを実行しない。
【0050】
ステップS172では、制御部11は、ステップS170と同様にテストパターン画像の絞り込みをする。ただしステップS172では、インクの色毎にテストパターン画像の絞り込みを行う。例えば、直近のステップS132において、ノズル列26Cに対して強度=“弱”のクリーニングを実行し、ノズル列26Kに対して強度=“中”のクリーニングを実行したとする。この場合、制御部11は、Cが選択された場合にクリーニング選択画面50に表示するテストパターン画像からテストパターン画像51を除外し、Kが選択された場合にクリーニング選択画面50に表示するテストパターン画像からテストパターン画像51,52を除外する。
【0051】
4.第3実施形態:
第2実施形態が、色別のノズル列26毎にクリーニングの種類を異ならせることができたのに対し、第3実施形態では、印刷ヘッド19の領域毎にクリーニングの種類を異ならせることを可能とする。
【0052】
図8は、媒体30および印刷ヘッド19であって、図2とは異なる例を上方からの視点により簡易的に示している。図2は、キャリッジ18により主走査方向D1に移動するいわゆるシリアルタイプのヘッドを示しているが、図8では、キャリッジ18を有さない、いわゆるラインヘッドを示している。図8では、複数のノズル20が並ぶ様をごく簡単に点の並びで示している。図8によれば、印刷ヘッド19は、主走査方向D1をノズル並び方向とするノズル列26を、搬送方向D2に沿って複数列並べて有している。各ノズル列26は、主走査方向D1における媒体30の幅に亘る長さを有し、印刷ヘッド19は静止した状態で、搬送される媒体30に対して各ノズル列26からインクを吐出することで印刷を行う。言うまでもなく、図8に示す各ノズル列26は、互いに異なる色のインクに対応していると解してもよいし、同じ色のインクに対応していると解してもよい。
【0053】
このようなラインヘッドとしての印刷ヘッド19は、ポスター等の比較的大型の印刷物の生産に適しており、主走査方向D1において長尺である。そのため、印刷ヘッド19を複数の領域に分けて把握することが可能である。図8の例では、印刷ヘッド19を、主走査方向D1に沿って複数の領域191,192,193,194,195に分けている。印刷ヘッド19は、複数のヘッドチップを主走査方向D1に繋げて構成されることもあるため、複数のヘッドチップのそれぞれを領域191,192,193,194,195と解釈してもよい。
【0054】
図9は、制御部11がプログラム12に従って実行する、第3実施形態にかかるクリーニング制御をフローチャートにより示している。
ステップS100の後、ステップS104では、制御部11は、印刷ヘッド19における領域の選択を受け付ける。つまり、ユーザーは、ステップS100で印刷されたテストパターン40を見た上で、ドット抜けによる印刷品質の低下を改善したい領域を、操作受付部14を操作することにより選択する。印刷ヘッド19が図8に示す構成である場合、図示は省略するが、媒体30には図4に示したようなテストパターン40が90度回転した状態で印刷されると解せばよい。つまり、ラインヘッドによれば、テストパターン40の各線群を構成する各罫線45は、その長手方向が搬送方向D2と平行となる。
【0055】
図7Bは、表示部13が表示するUI画面であって、印刷ヘッド19の領域の選択を受け付けるための領域選択画面56を例示している。領域選択画面56には、印刷ヘッド19と印刷ヘッド19内を区分する複数の領域とを模したイメージが描画されており、ユーザーは、このようなUIに対する操作により領域を選択する。図7Bの例では、印刷ヘッド19における左から2番目の領域が選択されている。左から2番目の領域は、図8によれば領域192を意味する。制御部11は、このような領域の選択を受け付ける。
【0056】
ステップS104,S110を経たステップS120では、制御部11は、上述したように、クリーニング選択画面50が表示するいずれかのテストパターン画像の選択を受け付けるが、この選択を、ステップS104で受け付けた領域に紐づいた選択として受け付ける。印刷ヘッド19が図8に示す構成である場合、図示は省略するが、クリーニング選択画面50に表示される各テストパターン画像も当然、図8に示す構成の印刷ヘッド19により印刷されるテストパターン40を模したイメージである。
【0057】
ステップS124では、制御部11は、印刷ヘッド19の全領域について、テストパターン画像の選択を終えたか否かを判定し、全領域について選択を終えている場合は“Yes”からステップS134へ進み、全領域についての選択を終えていない場合は“Nо”からステップS104へ戻る。テストパターン40の印刷結果によっては、クリーニングが不要な領域もある。そのため、制御部11は、印刷ヘッド19のある領域について、第2実施形態でも説明したようにクリーニング不要が選択された場合、当該領域についてはテストパターン画像が選択された場合と同様に、ステップS124では選択済みとして扱う。
【0058】
ステップS134では、制御部11は、ステップS130と同様に、ステップS120で選択されたテストパターン画像に対応するクリーニングを、クリーニング部に実行させる。ただしステップS134では、テストパターン画像の選択に紐づいた領域の各ノズル20に対して、当該テストパターン画像に対応するクリーニングを実行する。つまり、印刷ヘッド19の領域毎に、テストパターン画像に対応するクリーニングを実行する。例えば、最も左端の領域191についてテストパターン画像51が選択され、左から2番目の領域192についてテストパターン画像52が選択されたのであれば、クリーニング部は、領域191の各ノズル20に対して強度=“弱”のクリーニングを実行し、領域192の各ノズル20に対して強度=“中”のクリーニングを実行する。クリーニング不要が選択された領域についてはクリーニングを実行しない。
【0059】
ステップS174では、制御部11は、ステップS170と同様にテストパターン画像の絞り込みをする。ただしステップS174では、印刷ヘッド19の領域毎にテストパターン画像の絞り込みを行う。例えば、直近のステップS134において、最も左端の領域191に対して強度=“弱”のクリーニングを実行し、左から2番目の領域192に対して強度=“中”のクリーニングを実行したとする。この場合、制御部11は、最も左端の領域191が選択された場合にクリーニング選択画面50に表示するテストパターン画像からテストパターン画像51を除外し、左から2番目の領域192が選択された場合にクリーニング選択画面50に表示するテストパターン画像からテストパターン画像51,52を除外する。
【0060】
なお、印刷ヘッド19が図8に示す構成である場合、印刷ヘッド19の領域から吐出されるインクを受容できる位置へMTB22が移動すると解してよい。例えば、領域191のクリーニングを実行するにあたり、制御部11は、領域191から吐出されるインクを受容できる位置へMTB22を移動させる。他の領域のクリーニング実行に際しても同様である。また、印刷ヘッド19が図2に示すようなシリアルタイプのヘッドであっても、印刷ヘッド19を搬送方向D2に沿って複数の領域に分け、領域毎にテストパターン画像の選択やクリーニングを実行することが可能である。
【0061】
5.第4実施形態:
テストパターン40に対する評価からクリーニング種類の決定までを自動化した「自動判定」について説明する。
図10は、制御部11がプログラム12に従って実行する自動判定をフローチャートにより示している。図10のフローチャートの前提として、印刷装置10はテストパターン40を印刷する。ユーザーは、印刷装置10によってテストパターン40が印刷された媒体30を、不図示のスキャナーにセットし、スキャナーに読み取らせる。
【0062】
制御部11は、テストパターン40の読取データを取得する(ステップS200)。読取データとは、スキャナーがテストパターン40を読み取ることにより生成した、読取結果としての画像データである。読取データの取得方法は問わない。印刷装置10は、通信IF15を介してスキャナーと接続して、スキャナーからの読取データの送信を受けるとしてもよい。あるいは、ユーザーが持ち運び可能なメモリーに読取データを保存し、印刷装置10は、このメモリーから読取データを読み込むとしてもよい。
【0063】
ステップS210では、制御部11は、読取データを解析して印刷の不良の程度を判定する。ここでは、不良画素の数を不良の程度として扱い、不良画素をカウントする。制御部11は、読取データを輝度データに変換する等、読取データに対して解析のために必要な変換を適宜施すことができる。不良画素とは、テストパターン40の印刷に用いた印刷データを基準としたとき、読取データにおいて本来有するべき色情報や輝度を有さない画素を言う。例えば、読取データのうち、ノズル列26Cの各ノズル20によって印刷されたパターンに該当する位置の画素であれば、Cインクの所定の色情報や輝度に相当する値を有すべきであるが、そのような本来有するべき色情報や輝度を有さない画素を、ドット抜けの影響を受けた不良画素と判定する。不良画素か否かを判定するための詳細な基準はここでは示さないが、いずれにしても制御部11は、読取データを解析して、色情報や輝度が所定の基準を満たさない画素を不良画素と判定し、その数をカウントする。
【0064】
ステップS220では、制御部11は、ステップS210でカウントした不良画素の数を、予め設定されたしきい値と比較する。
ステップS230では、制御部11は、ステップS220による比較結果に応じて、クリーニングの種類を決定する。つまり、ステップS220,S230により、印刷の不良の程度に応じて、実行すべきクリーニングの種類を決定する。
【0065】
例えば、前記しきい値として第1しきい値および第2しきい値が設定されており、第1しきい値<第2しきい値であるとする。制御部11は、不良画素の数であるカウント値が0より大きく第1しきい値以下であれば、強度=“弱”のクリーニングを決定する。また、不良画素のカウント値が第1しきい値より大きく、第2しきい値以下であれば、強度=“中”のクリーニングを決定し、不良画素のカウント値が第2しきい値より大きければ、強度=“強”のクリーニングを決定する。
【0066】
次に、本実施形態における自動判定の利用態様として、第1態様および第2態様を説明する。
第1態様:
第1態様では、ステップS140のテストパターンの再印刷後、リトライするための選択肢の1つとして、自動判定をユーザーに提示する。
【0067】
制御部11は、再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、テストパターン画像を表示部13に表示させる場合に、選択肢の1つとして自動判定の表示も表示部13に実行させる。つまり、ステップS160の“Yes”を経て実行するステップS110では、制御部11は、クリーニング選択画面50に、クリーニングの種類に対応する各テストパターン画像だけでなく、自動判定の選択を受け付けるための例えばアイコン等の表示も含める。そして、ユーザーの操作により、テストパターン画像ではなく自動判定が選択された場合は、制御部11は自動判定を実行する。このような第1態様の自動判定においてステップS200で取得する読取データは、直近のステップS140により再印刷されたテストパターン40の、スキャナーによる読取データである。そして、制御部11は、自動判定により決定したクリーニングを、ステップS130の替わりに実行する。
【0068】
第2態様:
第2態様では、先ず自動判定を実行し、自動判定により決定したクリーニングの実行後リトライする場合に、ユーザーに対して、これまで説明したようにテストパターン画像を提示する。第2態様の説明では、自動判定をするために印刷するテストパターン40を、便宜上「プレテストパターン」と呼び、自動判定により決定したクリーニングの実行後に印刷するテストパターン40と区別する。プレテストパターンと、自動判定により決定したクリーニングの実行後に印刷するテストパターン40との違いは、印刷するタイミングの違いである。つまり、制御部11は、テストパターン40の印刷よりも先に、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させることによりプレテストパターンを印刷させる。そして、制御部11は、印刷したプレテストパターンのスキャナーによる読取データを取得することで自動判定を開始する。
【0069】
制御部11は、自動判定により決定した種類のクリーニングをクリーニング部に実行させた上で、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させることにより、テストパターン40の印刷、すなわち再印刷を実行させる。第2態様では、ここからはステップS140後の処理と解してよい。つまり、制御部11は、操作受付部14を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて(ステップS160“Yes”)、複数のテストパターン画像を表示部に表示させる(ステップS110)。
【0070】
なお、自動判定においても、インクの色毎や印刷ヘッド19の領域毎にクリーニングを決定することが可能である。つまり、制御部11は、ステップS210~S230の処理を、CMYKといったインクの色毎に実行したり、印刷ヘッド19の領域毎に実行したりしてインクの色毎や印刷ヘッド19の領域毎にクリーニングを決定し、決定した通りにクリーニングを実行してもよい。
【0071】
6.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、インクを吐出可能な複数のノズル20を有する印刷ヘッド19と、印刷ヘッド19によるインクの吐出を制御する制御部11と、表示部13と、外部からの操作を受け付け可能な操作受付部14と、印刷ヘッド19のクリーニングを実行可能なクリーニング部と、を備える。そして、制御部11は、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させることにより、テストパターン40を印刷させ、テストパターン40の印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数のテストパターン画像を複数の選択肢として表示部13に表示させ、操作受付部14を通じてテストパターン画像の選択を受け付け、複数のテストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類のクリーニングのうち、選択されたテストパターン画像に対応するクリーニングをクリーニング部に実行させる。
【0072】
前記構成によれば、印刷装置10は、それぞれが異なるクリーニングに対応付けられた複数のテストパターン画像を表示する。そのため、ユーザーは、印刷装置10が印刷したテストパターン40と、テストパターン画像とを見比べることにより、テストパターン40に生じている印刷の不良を改善するために最適なクリーニングを、テストパターン画像の選択を通じて選ぶことができる。つまり、印刷ヘッド19の状態に適したクリーニングを選択することが、ユーザーにとってより簡単になる。そして、適切なクリーニングを選択し易いため、必要以上に強度の高いクリーニングを実行してインクを無駄に消費してしまうことを、回避することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、制御部11は、クリーニング部によるクリーニングの実行後に、印刷ヘッド19にテストパターン40の再印刷を実行させ、操作受付部14を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、テストパターン画像を表示部13に表示させる場合に、前記実行指示を受ける前に実行したクリーニングの強度以下のクリーニングに対応するテストパターン画像は表示させない、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、リトライのクリーニングをユーザーに選択させるにあたり、印刷ヘッド19の現在の状態にとって不十分な強度のクリーニングが再び選択される可能性を排除することができる。その結果、リトライ回数がさらに増えることを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、印刷ヘッド19は、複数のノズル20が並ぶノズル列26であって、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズル列26を有する。
制御部11は、複数のノズル列26のそれぞれが形成する複数のパターンを含むテストパターン40を印刷させ、テストパターン画像の選択であってインクの色に紐づいた選択を受け付け、クリーニング部に、前記選択にかかるテストパターン画像に対応するクリーニングを、前記選択に紐づいた色のインクを吐出するノズル列26に対して実行させる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズル列26のそれぞれについて、テストパターン画像の提示を通じて、ユーザーに最適なクリーニングを選択させ、ノズル列26毎のクリーニングを実行することができる。また、印刷ヘッド19を構成する各ノズル列26に対して一律に同じクリーニングを実行する場合よりも、インク消費を抑制し易い。
【0075】
また、本実施形態によれば、制御部11は、テストパターン画像の選択であって印刷ヘッド19の領域に紐づいた選択を受け付け、クリーニング部に、前記選択にかかるテストパターン画像に対応するクリーニングを、前記選択に紐づいた領域に対して実行させる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、印刷ヘッド19の領域のそれぞれについて、テストパターン画像の提示を通じて、ユーザーに最適なクリーニングを選択させ、領域毎のクリーニングを実行することができる。また、印刷ヘッド19の各領域に対して一律に同じクリーニングを実行する場合よりも、インク消費を抑制し易い。
【0076】
また、本実施形態によれば、制御部11は、クリーニング部によるクリーニングの実行後に、印刷ヘッド19にテストパターン40の再印刷を実行させ、操作受付部14を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、テストパターン画像を表示部13に表示させる場合に、選択肢の1つとして自動判定の表示も表示部13に実行させ、操作受付部14を通じて自動判定の選択を受け付けた場合、再印刷したテストパターン40のスキャナーによる読取データを取得し、読取データに基づいて印刷の不良の程度を判定し、当該不良の程度に応じて実行すべきクリーニングの種類を決定し、決定した種類のクリーニングをクリーニング部に実行させる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、リトライのために、ユーザーに自動判定を選択肢の1つとして提示することができる。そして、ユーザーによる選択に応じて自動判定をして、リトライのための最適なクリーニングを選択、実行することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、制御部11は、テストパターン40の印刷よりも先に、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させることによりプレテストパターンを印刷させ、印刷したプレテストパターンのスキャナーによる読取データを取得し、読取データに基づいて印刷の不良の程度を判定し、当該不良の程度に応じて実行すべきクリーニングの種類を決定し、決定した種類のクリーニングをクリーニング部に実行させた上で、印刷ヘッド19にテストパターン40を印刷させ、操作受付部14を通じて再度のクリーニングの実行指示を受け付けたことに応じて、複数のテストパターン画像を表示部13に表示させる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、先ず自動判定と自動判定により決定したクリーニングとを実行し、リトライのために、ユーザーに複数のテストパターン画像を提示してクリーニングを選択させることができる。
【0078】
なお、特許請求の範囲においては、請求項同士の組み合わせの一部のみを記載しているが、本実施形態は、独立請求項と従属請求項との一対一の組み合わせだけでなく、当然に、複数の従属請求項の各種組み合わせを開示範囲に含める。
本実施形態は、印刷装置10以外にも、方法や、当該方法をプロセッサーと協働して実現するためのプログラム12を開示する。
つまり、インクを吐出可能な複数のノズル20を有する印刷ヘッド19を用いて印刷を行う印刷装置10の制御方法は、印刷ヘッド19に複数のノズル20から媒体30へインクを吐出させることによりテストパターン40を印刷するテストパターン印刷工程と、テストパターン40の印刷結果を模したテストパターン画像であって、印刷の不良の程度が異なる複数のテストパターン画像を複数の選択肢として表示部13に表示するテストパターン画像表示工程と、テストパターン画像の選択を外部から受け付ける選択受付工程と、印刷ヘッド19のクリーニングであって、複数のテストパターン画像のそれぞれに予め対応付けられた複数種類のクリーニングのうち、選択されたテストパターン画像に対応するクリーニングを印刷ヘッド19に対して実行するクリーニング工程と、を備える。
【0079】
クリーニング部による印刷ヘッド19のクリーニングには、ノズル20からインクを強制的に吐出する処理に加え、例えば、ノズル20に詰まったインク等をノズル20からノズル面23の外へポンプにより吸い出す処理や、ノズル面23をワイパーで拭く処理等も含む。これら様々なクリーニングの方法を組み合わせてクリーニングの強度に差を設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…記憶部、17…搬送部、18…キャリッジ、19…印刷ヘッド、20…ノズル、21…駆動回路、22…MTB、23…ノズル面、26,26C,26M,26Y,26K…ノズル列、30…媒体、40…テストパターン、41…第1罫線群、42…第2罫線群、43…第3罫線群、44…第4罫線群、45…罫線、50…クリーニング選択画面、51,52,53…テストパターン画像、54…色選択画面、56…領域選択画面、191,192,193,194,195…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10