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特開2024-13027建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械
<図1>
  • 特開-建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械 図1
  • 特開-建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013027
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20240124BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F15B11/02 C
E02F9/22 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114924
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥平
(72)【発明者】
【氏名】坂田 淳哉
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA05
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
3H089BB15
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB46
3H089DB49
3H089DB54
3H089EE36
3H089FF07
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システムと建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械の制御方法は、目標圧力以下になるように油圧ポンプ511の吐出流量を制御し、少なくとも特定の方向切換弁514bに対する特定操作がされると、特定操作に対応する特定の方向切換弁514bに設定された設定圧力の中から目標圧力を決定し、他の方向切換弁514aに対する通常操作のみが行われると、通常操作に対応する他の方向切換弁514aに設定された設定圧力の中から目標圧力を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、前記目標圧力が操作に応じて前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定されることと、を有する建設機械の制御方法であって、少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する建設機械の制御方法。
【請求項2】
前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力が、前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力より小さい請求項1記載の建設機械の制御方法。
【請求項3】
前記特定の方向切換弁に対して同時に2以上の特定操作がされると、前記2以上の特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の内もっとも小さい値に前記目標圧力が決定される請求項2記載の建設機械の制御方法。
【請求項4】
前記特定の方向切換弁に対応するアクチュエータの少なくとも一つが前記建設機械に着脱自在に装着可能であるアタッチメントの一部である請求項3記載の建設機械の制御方法。
【請求項5】
前記建設機械が上部旋回体に配置された前記他の方向切換弁から延びる油圧配管と下部走行体に設置された下部アクチュエータから延びる油圧配管を回転自在に連結するスイベルジョイントを備え、前記下部アクチュエータが前記特定方向切換弁により制御される請求項4記載の建設機械の制御方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5記載の何れか1項に記載の建設機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための建設機械用制御プログラム。
【請求項7】
目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記目標圧力を前記アクチュエータの操作に対応する各々の前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定する目標圧力決定部と、を備える建設機械用制御システムであって、 前記目標圧力決定部が少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する建設機械用制御システム。
【請求項8】
前記建設機械の制御システムを備える請求項7記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、油圧ショベルのフロントアタッチメントである油圧ブレーカを装着可能な油圧回路装置を有する油圧ショベルにおいて、油圧ブレーカを装着したときフロントアタッチメント用油圧回路の方向制御弁から油圧ブレーカに圧油が供給される高圧側のアクチュエータ回路部分に可変リリーフ弁を設置し、油圧ポンプの過大な圧力から油圧ブレーカの破損を防止する油圧ショベルが知られている。(特許文献1参照)又、油圧ショベルの液圧装置の制御システムとして、ポンプを機材(アクチュエータ)から要求される圧力のうち最大圧力を要求するアクチュエータの要求圧力に基づき制御する油圧ショベルの液圧装置の制御システムが知られている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-076411号公報
【特許文献2】特開2021-110461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ブレーカを保護するために、フロントアタッチメント用油圧回路の方向制御弁から油圧ブレーカに圧油が供給される高圧側のアクチュエータ回路部分に可変リリーフ弁を設置することは、製造コストが上昇する問題だけでなくエネルギーロスが発生するという問題がある。
【0005】
また油圧ショベルの油圧回路は上部旋回体の油圧ポンプがある回路から下部走行体にある走行モータに対してスイベルジョイントを介して油を供給しているが、スイベルジョイントの耐圧の上限やスイベルジョイントから走行モータを結ぶ油圧ホースの耐圧の上限が上部旋回体上のアクチュエータに設定されている耐圧の上限よりも低い場合、耐圧の高い上部旋回体のアクチュエータと走行モータを同時に操作し、ポンプの目標圧力を、耐圧の高いアクチュエータに合わせて制御すると、スイベルジョイントや油圧ホースを破損してしまうという問題が発生する場合がある。
【0006】
上記問題を解決するために、スイベルジョイントの耐圧の上限や油圧ホースの耐圧の上限を上げるという方法があるが、製造コストが上昇するという問題が発生する。仮に耐圧の低い油圧機器にあわせて常に油圧ポンプを制御した場合作業効率が低下するという問題も発生しうる。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、その課題は、簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システムと建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る建設機械の制御方法は、目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、前記目標圧力が操作に応じて前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定されることと、を有する建設機械の制御方法であって、少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する。
【0009】
本発明の一態様に係る建設機械用制御プログラムは、前記建設機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させる。
【0010】
本発明の一態様に係る建設機械用制御システムは、目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記目標圧力を前記アクチュエータの操作に対応する各々の前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定する目標圧力決定部と、を備える建設機械用制御システムであって、前記目標圧力決定部が少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する。
【0011】
本発明の一態様に係る建設機械は、前記建設機械用制御システムを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システムと建設機械を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの左側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの運転席の斜視図である
図3】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御装置の制御フローのフローチャート図である。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る油圧ショベルの左側面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建設機械の代表例として油圧ショベル100を例に挙げ添付図面を参照しつつ本発明にかかる第1の実施形態について詳細に説明する。なお上部旋回体300に対して作業装置400が取り付けられている方向を前方としその反対方向を後方とする。
【0015】
図1で示すように油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、下部走行体200上に旋回可能に支持された上部旋回体300と、上部旋回体300の前方で上下に回動自在に支持された作業装置400を備えて構成されており、さらに図3の制御システム500をさらに備えている。
【0016】
下部走行体200は、センターフレーム(図示せず)とセンターフレームに左右対称に対をなし前後方向に延びるサイドフレーム210を有しており、左右のサイドフレーム210の後端には走行モータ(図示せず)により駆動する駆動輪211が設置され、前方に向け複数の遊動輪212が配置されており、そして駆動輪211と遊動輪212は、履帯213が巻装されている。そしてセンターフレーム前方には、排土装置220が装着され、排土装置220の排土板の裏面とセンターフレームをつなぐように装着されたブレードシリンダ(図示せず)によって排土装置220は上下に昇降する。
【0017】
上部旋回体300は、左側方に、機体前部から後端にかけて配置されたキャビン310と、機体後端部からキャビン310の後部下部の切かけ部を埋めるように形成された機関室320と、機体前端の突設部に左右に回動自在に支持され、作業機400を上下に回動自在に支持するスイングポスト330から構成されている。
【0018】
作業装置400は、スイングポスト330に上下に回動自在に支持されたブーム420と、ブーム420の先端に上下に回動可能に装着されたアーム430と、アーム430の先端に回動可能に装着されたアタッチメント450と、上部旋回体300のフレーム右側方には、スイングポスト330を動かすスイングシリンダ(図示せず)が配置され、ブーム420の前方かつ下方に設置されたブーム420を動かすブームシリンダ460と、ブーム420の上方に設置され、アーム430を動かすアームシリンダ470と、アーム430の前方に設置され、バケットリンク440を介してアタッチメント450を動かすバケットシリンダ480により構成されている。
【0019】
アタッチメント450は、作業用途ごとに着脱自在に換装することができ、標準で使用されるバケットのほか、本実施形態のブレーカ、クラッシャ、チルトフォーク、ブッシュカッタ等のように本体内部にアタッチメントを動作させるアクチュエータが組み込まれているものであってもよい。
【0020】
機関室320には、エンジン(図示せず)と、エンジンにより駆動し、ブームシリンダ460やアームシリンダ470等の油圧ショベル100を動かす複数のアクチュエータに作動油を圧送する可変容量ポンプ511と、対応するアクチュエータを制御する方向切換弁の集合体であるコントロールバルブ514、とコントロールバルブ514に入力される制御信号圧(パイロット圧)及び可変容量ポンプ511の流量を制御するレギュレータ511aに入力されるパイロット圧の1次圧を生成するパイロットポンプ512等の複数の機器が配置されている。
【0021】
機関室320の上方のキャビン310の内部には運転室340が設置されている。
【0022】
図2で示すように運転席340は、座席341と、座席341の下方のシートマウント342の下部前面から前方に向けて延びる床材343と、操作装置344と、座席341の右前方に配置された表示装置345から形成される。
【0023】
操作装置344は、運転席340の前方に左右に列設され、床材343から突設された左走行レバー344a及び右走行レバー344bと、座席341の左右に配置されたコンソールボックスに立設された左操作レバー344cと、右操作レバー344dと、右操作レバー344d、右操作レバー344dが立設するコンソールボックスの右側方から上方に延びるブレードレバー344eと、右走行レバー334bの右方に隣接して配置されたスイングペダル344fと、左走行レバー344aの左側方に隣接されたPTOペダル344g、から構成されている。
【0024】
続いて、図3を用いて油圧ショベル100の制御システム500について説明する。
【0025】
制御システム500は、油圧回路510と、制御装置520と、操作装置344と、表示装置335から構成されている。
【0026】
操作装置344は、各操作レバーの操作方向および操作量を操作信号として制御装置520に出力することにより、制御装置520は、電気信号を電磁比例弁517に出力し、電磁比例弁517は、パイロット圧をコントローバルブ514の入力ポートに出力し各アクチュエータを操作することができる。
【0027】
油圧回路510は、可変容量ポンプ511から延設される高圧の作動油配管を実線で表し、パイロットポンプ512から延設される低圧の作動油(パイロット圧)配管を点線で表す。
【0028】
油圧回路510は、電磁比例弁518によって減圧されたパイロット圧をレギュレータ511aに入力することにより吐出流量を制御する可変容量ポンプ511から延びるセンターバイパス流路513と、センターバイパス流路513から延びる油路とそれぞれ接続する各アクチュエータを制御する方向切換弁から構成されるコントールバルブ514からなり、油圧回路510は、方向切換弁のスプールの摺動位置にかかわらずセンターバイパス流路513からタンク515につながる流路は形成されないいわゆるクローズドセンター回路であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
コントールバルブ514は、ブームシリンダ460を制御する方向切換弁514aと、ブレーカ450を制御する方向切換弁514bと、複数の他のアクチュエータ例えば、アームシリンダ470、左右の走行モータ、バケットシリンダ480、ブレードシリンダ、旋回モータ(図示せず)等をそれぞれ制御する複数の他の方向切換弁からなり、複数の他のアクチュエータと複数の他の方向切換弁については、油圧回路510には、記載を省略している。またコントールバルブ514を構成する方向切換弁のパイロット圧の入力ポートには、電磁比例弁517から操作装置344の操作量に応じたパイロット圧が入力される。
【0030】
方向切換弁514aのパイロット圧の入力ポート514a1,514a2には、左操作レバー344c又は右操作レバー344dの操作の方向と操作量(傾倒量)に応じて電磁比例弁517a1,電磁比例弁517a2から出力されたパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514aのスプ
ールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油がブームシリンダ460のロッド側又はボトム側に流れ、ブーム420を昇降させる。
【0031】
方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b1には、PTOペダル344gの踏み量に応じて電磁比例弁517b1から出力したパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油がブレーカ450を駆動させる。
【0032】
つまり操作装置344のアクチュエータに対応する操作は、操作装置344の方向切換弁514に対する操作と同義である。
【0033】
油圧回路510の圧力は圧力センサ519によって検出され、検出結果は、制御装置520に送信される。
【0034】
圧力センサ519の検出結果に従い制御装置520は、油圧回路510の破損を防止するために、任意に設定された目標圧を越えないように可変容量ポンプ511の吐出流量を制御している。
【0035】
制御装置520は、油圧ショベル100の操作性を上げるため操作装置344の操作量に応じて可変容量ポンプ511の吐出流量を制御している。
【0036】
油圧回路510中のアクチュエータは、設定されている耐圧性能が異なる例えば、ブレーカ450の耐圧性能は、アームシリンダ470、左右の走行モータ、バケットシリンダ480、ブレードシリンダ、旋回モータに比べて低く設定されている。
【0037】
油圧回路510の圧力をブレーカ450以外の他のアクチュエータの耐圧性能の近辺まで昇圧された状態で作動させるとブレーカ450を破損する恐れがあるため、ブレーカ450を操作する際の油圧回路510の圧力は、ブレーカ450の耐圧以下の圧力になるように設定された目標圧で可変容量ポンプ511の流量は制御される。
【0038】
ブーム420を単独又はアーム430と共に操作する場合は、油圧ショベル100の作業性を上げるために油圧回路510の圧力がブレーカ450の耐圧より大きい圧力かつブレーカ450以外の他のアクチュエータの耐圧性能以下の圧力になるように設定された目標圧で可変容量ポンプ511の流量は制御される。
【0039】
ブーム420とブレーカ450を共に操作する場合は、ブレーカ450の破損を防止するために、油圧回路510の圧力は、ブレーカ450の耐圧以下の圧力になるように設定された目標圧で可変容量ポンプ511の流量は制御される。
【0040】
制御装置520は、ECU(電子制御ユニット)であり、デジタル入力信号の信号レベルの変換を行う入力バッファ及びアナログ入力信号のデジタル変換を行うADコンバータと、各種入力信号から制御量の演算を行うマイコンからなる演算部521と、マイコンの出力信号に従いアクチュエータを駆動させる駆動信号の形態に変換させる出力ドライバと通信ドライバ,通信レシーバ等から構成される。
【0041】
制御装置520に入力される信号は、制御装置520に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現され、制御装置520から出力される信号は、信号が入力される機器に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現される。
【0042】
演算部521は、記憶部522と、目標圧力決定部523と、ポンプ流量演算部524を有する。
【0043】
記憶部522は、各アクチュエータに対する操作(各方向切換弁に対する操作)とこれらの操作の組み合わせに対してそれぞれ油圧回路510の圧力の上限である目標圧力の設定値である設定圧力テーブルが記憶されている。
【0044】
設定圧力のテーブルは、ブレーカ450(アタッチメント)の方向切換弁の操作の実行又はアタッチメントの方向切換弁操作と他のアクチュエータ(ブーム420,アーム430,旋回,走行,ブレード)の方向切換弁の操作を同時に実行する場合は、設定圧力をP1とする第1テーブルと、他のアクチュエータの方向切換弁の操作を単独又は複数同時に実行する場合は、設定圧力をP2とする第2テーブルを有する。
【0045】
P1はP2より小さい値に設定されており、ブレーカ450の耐圧以下の値に設定されている。
【0046】
P2はブレーカ450の耐圧より大きい値で他のアクチュエータの耐圧以下の値に設定されている。
【0047】
目標圧力決定部523、操作装置344の操作からの操作信号により、どの方向切換弁514の操作がなされたか判断して設定圧力のテーブルから目標圧力を決定する。
【0048】
ブレーカ450の操作が単独でなされた場合、目標圧力決定部523は、第1テーブルから目標圧力をP1と決定する。
【0049】
ブレーカ450の操作とブーム420の操作が同時にされた場合、目標圧力決定部523は、第1テーブルから目標圧力をP1と決定する。
【0050】
ブーム420の操作がされた場合、目標圧力決定部523は、第2テーブルから目標圧力をP2と決定する。
【0051】
ブーム420とアーム430の操作がされた場合、目標圧力決定部523は、第2テーブルから目標圧力をP2と決定する。
【0052】
ポンプ流量演算部524は、操作装置344の操作からの操作信号から算出された操作量に基づき可変容量ポンプ511の吐出流量を算出し、さらに圧力センサ519の圧力が目標圧力決定部523で決定された目標圧力を越えない流量になるように吐出流量を補正し、電磁比例弁518に制御装置520が出力する信号量を演算する。(目標圧力P1に基づく制御を第1流量制御とし、目標圧力P2に基づく制御を第2流量制御と称する。)
【0053】
図4を用いて制御フローについて説明する。図4は制御方法に係るフローチャートである。
【0054】
右操作レバー344dを前方に傾倒させ、ブーム420の下げ操作を実行する。(S1)制御装置520は、目標圧力をP2に設定し、第2制御を実行する。(S2)
【0055】
右操作レバー344dを前方に傾倒させたまま(ブーム420の下げ操作を継続)、PTOペダル344gを前方に踏み込む。ブレーカ450の操作を実行する。(S3)制御装置520は、目標圧力をP1に設定し、第1制御を実行する。(S4)
【0056】
右操作レバー344dとPTOペダル344gを中立状態にする。ブーム420とブレーカ450の操作は、中止する。(S5)第1制御を停止する。(S6)
【0057】
図4に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理を繰り返して実行してもよく、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0058】
本発明の制御方法によれば、耐圧性の低いブレーカ450のようなアタッチメントに対応する特定の方向切換弁514に対する操作に応じて、可変容量ポンプ511の吐出流量をブレーカ450の耐圧を越えないように制御できるため耐圧性の低い油圧機器を保護することができ、特定の方向切換弁514に対する操作がされずに、耐圧性の低いブレーカ450を除く耐圧性の高い他のアクチュエータに対応する他の方向切換弁514に対する操作がされると耐圧性の高い他のアクチュエータ耐圧を越えないように可変容量ポンプ511の吐出流量を制御できるため、油圧ショベル100の作業性をよくすることができる。
【0059】
続いて本発明の第1の実施形態の変形例につい説明するが、第1の実施形態と共通部分については、説明を省略する。
【0060】
図5に第1の実施形態の変形例の油圧ショベル101を表示する。第1の実施形態の油圧ショベル100と異なる点は、作業機400の先端に装着されたアタッチメントがクラッシャ451である点で異なる。
【0061】
図6で示すように、方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b1,514b2には、PTOペダル344gの踏みこみ操作の方向と操作量(踏み込み量)に応じて電磁比例弁517b1、電磁比例弁517b2から出力されたパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が内蔵するアクチュエータに流れ、クラッシャ451の開閉動作を行わせる。
【0062】
設定圧力のテーブルは、クラッシャ451(アタッチメント)の方向切換弁の操作の実行又はアタッチメントの方向切換弁操作と他のアクチュエータ(ブーム420,アーム430,旋回,走行,ブレード)の方向切換弁の操作を同時に実行する場合は、設定圧力をP2とする第3テーブルを有する。
【0063】
表示装置335は、第1制御の実行を禁止する操作をすることができる。
【0064】
表示装置335から第1制御の実行を禁止する操作が行われ、少なくとも、クラッシャ451の操作がされると、目標圧力決定部523は、第3テーブルから目標圧力をP2に決定する。
【0065】
ポンプ流量演算部524は、圧力センサ519の圧力が目標圧力決定部523で決定されたP2を越えないように操作装置344の操作からの操作信号から算出された操作量に基づき可変容量ポンプ511の吐出流量を算出し、電磁比例弁518に制御装置520が出力する信号量を演算する第2制御を実行する。
【0066】
上記構成によれば、アタッチメントの耐圧に応じて、油圧回路510の最高圧を選択できるため、簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる。
【0067】
さらに他の変形例としては、表示装置335により第1制御の実行を禁止するかわりに、表示装置335により第1テーブルの目標圧力を任意に書き換えてもよい。その場合より柔軟にアタッチメントの耐圧に応じて、油圧回路510の最高圧を選択できるため、簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる。
【0068】
続いて本発明の第2の実施形態につい説明するが、第1の実施形態と共通部分については、説明を省略する。
【0069】
油圧回路510のアクチュエータは、上部旋回体300内にスイングシリンダ、ブーム420ブームシリンダ460、アームシリンダ470と、アーム430、バケットシリンダ480、ブレーカ450と旋回モータが配置され、下部旋回体200内に、走行モータとブレードシリンダが配置されている。
【0070】
上部旋回体に配置されたコントロールバルブ514を流れる作動油配管と走行モータとブレードシリンダを流れる作動油配管は、スイベルジョイント(図示せず)を介して回動自在に接続されている。
【0071】
ブレーカ450の耐圧性能は、他のアクチュエータに比べ低く設定され、スイベルジョイントの耐圧性能は、ブレーカ450に比べ高く設定されているが、他のアクチュエータに比べ低く設定されている。
【0072】
走行モータとブレードシリンダにスイベルジョイントの耐圧性能を超える作動油を流すことができない。
【0073】
記憶部522に記憶されている設定圧力のテーブルは、ブレーカ450(アタッチメント)の方向切換弁の操作の実行又はアタッチメントの方向切換弁操作と他のアクチュエータ(スイングシリンダ、ブーム420ブームシリンダ460、アームシリンダ470と、アーム430、バケットシリンダ480、ブレーカ450)の方向切換弁の操作とブレードシリンダ(もしくは走行モータ)の方向切換弁の操作を同時に実行する場合は、設定圧力をP1とする第4テーブルと、他のアクチュエータ(スイングシリンダ、ブーム420ブームシリンダ460、アームシリンダ470と、アーム430、バケットシリンダ480、ブレーカ450)の方向切換弁の操作を単独又は複数同時に実行する場合は、設定圧力をP2とする第5テーブルと、ブレードシリンダ(もしくは走行モータ)の方向切換弁の操作を実行又はブレードシリンダ(もしくは走行モータ)の方向切換弁の操作と他のアクチュエータ(スイングシリンダ、ブーム420ブームシリンダ460、アームシリンダ470と、アーム430、バケットシリンダ480、ブレーカ450)の方向切換弁の操作を同時に実行する場合は、設定圧力をP3とする第6テーブルを有する。
【0074】
設定圧力はP2を最大値とし、P1を最小値として設定されている。
【0075】
ブレーカ450と他のアクチュエータ又はブレードシリンダ(もしくは走行モータ)が同時操作された場合、目標圧力決定部523は、目標圧力を第4テーブルからP1に設定する。
【0076】
ブレードシリンダ(もしくは走行モータ)と他のアクチュエータ
が同時に操作された場合、目標圧力決定部523は、目標圧力を第6テーブルからP3に設定する。
【0077】
他のアクチュエータを同時に操作された場合、目標圧力決定部523は、目標圧力を第6テーブルからP2に設定する。
【0078】
ポンプ流量演算部524は、圧力センサ519の値が目標圧力決定部523で決定された目標圧力を越えないように操作装置344の操作からの操作信号から算出された操作量に基づき可変容量ポンプ511の吐出流量を算出し、電磁比例弁518に制御装置520が出力する信号量を演算する。
【0079】
上記構成によれば、簡易な方法で作業効率を低下させず耐圧性の低い油圧機器を保護できる。
【0080】
続いて本発明の第2の実施形態の変形例として、スイベルジョイントと走行モータもしくは、スイベルジョイントとブレードシリンダを結ぶ配管の耐圧性能をスイベルジョイントより低く、他のアクチュエータより低く設定してもよい。
【0081】
本発明の実施形態にかかる発明は、以下の付記のように特定することができる。
【0082】
〈付記1〉目標圧力以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御することと、前記目標圧力が操作に応じて前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定されることと、を有する建設機械の制御方法であって、少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する建設機械の制御方法。
【0083】
〈付記2〉前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力が、前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力より小さい付記1記載の建設機械の制御方法。
【0084】
〈付記3〉前記特定の方向切換弁に対して同時に2以上の特定操作がされると、前記2以上の特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の内もっとも小さい値に前記目標圧力が決定される付記1又は付記2記載の建設機械の制御方法。
【0085】
〈付記4〉前記特定の方向切換弁に対応するアクチュエータの少なくとも一つが前記建設機械に着脱自在に装着可能であるアタッチメントの一部である付記1から付記3の何れかに記載の建設機械の制御方法。
【0086】
〈付記5〉前記建設機械が上部旋回体に配置された前記他の方向切換弁から延びる油圧配管と下部走行体に設置された下部アクチュエータから延びる油圧配管を回転自在に連結するスイベルジョイントを備え、前記下部アクチュエータが前記特定方向切換弁により制御される付記1から付記4の何れかに記載の建設機械の制御方法。
【0087】
〈付記6〉付記1から付記5記載の何れか1項に記載の建設機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための建設機械用制御プログラム。
【0088】
〈付記7〉目標圧力を以下になるように複数のアクチュエータに対して油圧ポンプが吐出する油の流量を制御する流量制御部と、前記目標圧力を前記アクチュエータの操作に対応する各々の前記アクチュエータを制御する方向切換弁ごとに設定された設定圧力の中から決定する目標圧力決定部と、を備える建設機械用制御システムであって、前記目標圧力決定部が少なくとも特定の方向切換弁に対する特定操作がされると、前記特定操作に対応する前記特定の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定し、他の方向切換弁に対する通常操作のみが行われると、前記通常操作に対応する前記他の方向切換弁に設定された前記設定圧力の中から前記目標圧力を決定する建設機械用制御システム。
【0089】
〈付記8〉前記建設機械の制御システムを備える請求項7記載の建設機械。
【0090】
上記で説明した第1,第2の実施形態及びこれらの変形例で説明した種々の構成は、適宜組み合わせて採用可能である。
【0091】
以上では、建設機械として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械は油圧ショベルに限定されず、コンパクトトラックローダ、ホイルローダ、などの建設機械だけでなくトラクターなどの他の作業機械であってもよく、さらに原動機としてエンジンを挙げて説明したが電動モータでもよい。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で拡張又は、変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、建設機械の制御方法、建設機械用制御プログラム、建設機械用制御システム、建設機械に関するものであり産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0094】
100 油圧ショベル(建設機械)511 可変容量ポンプ(油圧ポンプ)514a 方向切換弁(他の方向切換弁)514b 方向切換弁(特定の方向切換弁)520 制御装置522 記憶部523 目標圧力決定部524 ポンプ流量演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6