(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130271
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】観測用チップ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/05 20060101AFI20240920BHJP
G01N 15/1409 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N15/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039902
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517110494
【氏名又は名称】シンクサイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 純一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 達徳
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 啓吾
【テーマコード(参考)】
2G057
【Fターム(参考)】
2G057AA03
2G057AB04
2G057AB06
2G057AC01
2G057BA05
2G057BB01
2G057BB06
2G057BB08
2G057CA07
2G057CB05
(57)【要約】
【課題】サンプル流体を安定して観測することができる観測用チップを提供する。
【解決手段】複数の基板10を、複数の基板の厚さ方向Zに重ねた状態で備える観測用チップ1であって、複数の基板に沿う第1軸O1に沿って延伸する第1流路25と、第1流路の端部から第1流路の全体合流地点P2までに、第1流路における第1軸に直交する断面において、第1流路を全周にわたって囲い、第1流路と一体となって、複数の基板に沿う第2軸O2に沿って延伸する第2流路55を形成する囲い流路30と、第2流路における全体合流地点よりも、第1流路から離間する側に設けられ、外部からの電磁波を第2流路まで透過する観測部60と、を備え、全体合流地点から観測部までにおける第2流路の厚さ方向の長さは、一定である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を、前記複数の基板の厚さ方向に重ねた状態で備える観測用チップであって、
前記複数の基板に沿う第1軸に沿って延伸する第1流路と、
前記第1流路の端部から前記第1流路の全体合流地点までに、前記第1流路における前記第1軸に直交する断面において、前記第1流路を全周にわたって囲い、前記第1流路と一体となって、前記複数の基板に沿う第2軸に沿って延伸する第2流路を形成する囲い流路と、
前記第2流路における前記全体合流地点よりも、前記第1流路から離間する側に設けられ、外部からの電磁波を前記第2流路まで透過する観測部と、
を備え、
前記全体合流地点から前記観測部までにおける前記第2流路の前記厚さ方向の長さは、一定である、観測用チップ。
【請求項2】
前記囲い流路は、
前記第1流路における前記全体合流地点よりも前記第2流路から離間する側に位置する一部合流地点において、前記第1軸及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する第1直交方向に前記第1流路を挟む一対の第1分岐流路と、
前記第1流路の前記全体合流地点において、前記厚さ方向に前記第1流路を挟む一対の第2分岐流路と、
を有する、請求項1に記載の観測用チップ。
【請求項3】
前記一対の第1分岐流路は、前記第1軸を含み前記厚さ方向に沿う基準面に対して面対称である、請求項2に記載の観測用チップ。
【請求項4】
前記一対の第2分岐流路は、前記第1軸を含み前記厚さ方向に沿う基準面に対して面対称である、請求項2又は3に記載の観測用チップ。
【請求項5】
前記一部合流地点と前記全体合流地点との中間部における前記第1流路及び前記一対の第1分岐流路の前記第1直交方向の長さは、前記一部合流地点における前記第1流路及び前記一対の第1分岐流路の前記第1直交方向の長さよりも短い、請求項2に記載の観測用チップ。
【請求項6】
前記第2流路の前記全体合流地点と前記観測部との中間部における、前記第2軸及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する第2直交方向の長さは、前記第2流路の前記全体合流地点における前記第2直交方向の長さよりも短い、請求項1又は2に記載の観測用チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や微粒子等を検出し、計数や選別をするため、フローサイトメーターが用いられている。フローサイトメーターでは、内部に微細流路が形成された観測用チップ(ソートデバイス)に細胞が含まれるサンプル液(サンプル流体)を導入する。そして、レーザー光等で各細胞の特徴を分析し、分析結果に応じて細胞を選別する。
観測用チップとしては、例えば、非引用文献1に記載されているように、複数の流路が形成されたシリコン基板の上下をガラス基板で封止した構成が知られている。この観測用チップでは、サンプル流路にシース液を上下方向(垂直方向)から導入するための流路とシース液を左右方向(水平方向)から導入するための流路が形成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】The Royal Society of Chemistry 2017, “On-chip cell sorting by high-speed local-flow control using dual membrane pumps”, Lab Chip, 2017, 17, 2760-2767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の観測用チップでは、サンプル流体を観測する際に、観測用チップ内を流れるサンプル流体の流れが乱れ、サンプル流体の観測が良好に行えない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、複数の基板を、前記複数の基板の厚さ方向に重ねた状態で備える観測用チップであって、前記複数の基板に沿う第1軸に沿って延伸する第1流路と、前記第1流路の端部から前記第1流路の全体合流地点までに、前記第1流路における前記第1軸に直交する断面において、前記第1流路を全周にわたって囲い、前記第1流路と一体となって、前記複数の基板に沿う第2軸に沿って延伸する第2流路を形成する囲い流路と、前記第2流路における前記全体合流地点よりも、前記第1流路から離間する側に設けられ、外部からの電磁波を前記第2流路まで透過する観測部と、を備え、前記全体合流地点から前記観測部までにおける前記第2流路の前記厚さ方向の長さは、一定である、観測用チップである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の観測用チップの平面図である。
【
図2】
図1中の切断線A1-A1で破断した斜視図である。
【
図7】同観測用チップにおける観測部の断面図である。
【
図8】同観測用チップの動作を説明する要部の断面図である。
【
図9】従来の観測用チップの動作を説明する要部の断面図である。
【
図10】同観測用チップのシミュレーション結果を説明する斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例における観測用チップの動作を説明する要部の断面図である。
【
図12】同観測用チップの動作を説明する要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る観測用チップの一実施形態を、
図1から
図12を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の観測用チップ1は、複数の基板10を、複数の基板10の厚さ方向Zに重ねた状態で備える。
図2に示すように、例えば、複数の基板10は、流路基板11,12,13と、保護基板16,17と、を備える。すなわち、複数の基板10は、3枚の流路基板11,12,13を備える。
例えば、流路基板11,12,13は、厚さ方向Zに見たときに、所定の方向に長い矩形状に形成されている。流路基板11,12,13は、ステンレス鋼等の金属で形成されている。流路基板11,12,13は、ヤング率が2GPa(ギガパスカル)程度の樹脂、ヤング率が70GPa~500GPa程度の金属、ガラス、セラミックス等で形成されてもよい。
例えば、流路基板11,12,13の厚さは、0.1mm以下である。
【0008】
以下では、流路基板12に対する流路基板11側を、厚さ方向Zの第1側Z1と言う(単に第1側Z1とも言う)。流路基板12に対する流路基板13側を、厚さ方向Zの第2側Z2と言う(単に第2側Z2とも言う)。すなわち、流路基板11,12,13は、第1側Z1から第2側Z2に向かって、流路基板11,12,13の順で配置されている。
なお、観測用チップ1が備える流路基板の数に制限はなく、1枚、2枚でもよいし、4枚以上でもよい。
【0009】
保護基板16,17は、透明なガラス等で、流路基板11,12,13と同様な外形形状に形成されている。保護基板16は、流路基板11よりも第1側Z1に配置されている。保護基板17は、流路基板13よりも第2側Z2に配置されている。
すなわち、保護基板16、流路基板11、流路基板12、流路基板13、及び保護基板17は、第1側Z1から第2側Z2に向かって、この順で配置されている。厚さ方向Zに隣り合う基板10同士は、図示しない公知の接着剤により互いに接合されている。
【0010】
流路基板11,12,13には、厚さ方向Zに貫通するスリット(符号省略)等がそれぞれ形成されている。スリット等が形成された流路基板11,12,13に保護基板16,17を重ねることで、
図1及び
図2に示すように、複数の基板10がサンプル流体供給部20、第1流路25、囲い流路30、及び第2流路55、観測部60、第3流路65、分離部70を備える。
【0011】
図1に示すように、サンプル流体供給部20は、円柱状に形成されている。例えば、サンプル流体供給部20は、流路基板12に形成されている。サンプル流体供給部20に、開口部21が連通している。例えば、開口部21は、流路基板13及び保護基板17に形成されている。
ここで、
図1及び
図2に示すように、複数の基板10に沿うとともに、前記所定の方向に沿う第1軸O1を規定する。第1軸O1を含み厚さ方向Zに沿う基準面S1を規定する。第1軸O1に直交する断面S2を規定する(
図2参照)。第1軸O1及び厚さ方向Zにそれぞれ直交する方向を、直交方向(第1直交方向)Yと規定する。
【0012】
第1流路25は、サンプル流体供給部20から第1軸O1に沿って延伸して(延びて)いる。
図3に示すように、第1流路25の断面S2による断面形状(以下では、第1流路断面形状と言う)は、矩形状である。
図3以下の第1流路25等の断面形状は、概略構成を示す。例えば、第1流路25は、流路基板12に形成されている。
図1及び
図2に示すように、第1軸O1に沿う、第1流路25に対するサンプル流体供給部20側を、上流側X1と規定する。第1軸O1に沿う、サンプル流体供給部20に対する第1流路25側を、下流側X2と規定する。サンプル流体供給部20は、第1流路25の上流側X1の端部に設けられている。
【0013】
図1及び
図2に示すように、囲い流路30は、一対の第1分岐流路31A,31Bと、一対の第2分岐流路41,46と、を有する。
本実施形態では、第1分岐流路31Aの構成と第1分岐流路31Bの構成とは、互いに第1基準面S1に対して面対称である。このため、第1分岐流路31Aの構成を、符号の数字に英大文字「A」を付加することで示す。第1分岐流路31Bのうち第1分岐流路31Aに対応する構成を、第1分岐流路31Aの符号と同一の数字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。例えば、第1分岐流路31Aの後述する直状部32Aと第1分岐流路31Bの直状部32Bとは、第1基準面S1に対して面対称である。
【0014】
第1分岐流路31Aは、直状部32Aと、折れ部33Aと、折れ部34Aと、を備える。
直状部32Aは、第1軸O1に沿って延伸している。直状部32Aは、第1流路25に対する直交方向Yの第1側Y1(以下では、単に第1側Y1とも言う)に、第1流路25から離間した位置に配置されている。
折れ部33Aは、直状部32Aの下流側X2の端部から、直交方向Yにおける第1側Y1とは反対の第2側Y2(以下では、単に第2側Y2とも言う)に向かって突出している。折れ部33Aの第2側Y2の端部は、第1流路25における一部合流地点P1で第1流路25に、第1流路25の第1側Y1から連なっている。
図1に示すように、折れ部34Aは、直状部32Aの上流側X1の端部から第2側Y2に向かって、第1軸O1上まで突出している。
【0015】
第1分岐流路31Bは、第1分岐流路31Aの直状部32A、折れ部33A、折れ部34Aと同様に構成された、直状部32B、折れ部33B、折れ部34Bを備える。
直状部32Bは、第1流路25に対する第2側Y2に、第1流路25から離間した位置に配置されている。折れ部33Bの第1側Y1の端部は、第1流路25における一部合流地点P1で第1流路25に、第1流路25の第2側Y2から連なっている。
折れ部34Bは、折れ部34Aに連通している。
以上のように、第1流路25の一部合流地点P1において、第1分岐流路31A,31Bは、第1流路25を直交方向Yに挟んでいる。
【0016】
図4に示すように、第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの一部合流地点P1における断面S2による断面形状(以下では、一部合流地点断面形状と言う)は、矩形状である。
一部合流地点断面形状の厚さ方向Zの長さL13は、第1流路断面形状の厚さ方向Zの長さL11(
図3参照)に等しい。一部合流地点P1における第1流路25の直交方向Yの長さL14は、第1流路断面形状の直交方向Yの長さL12(
図3参照)と、同程度である。一部合流地点断面形状の直交方向Yの長さL15は、第1流路断面形状の直交方向Yの長さL12よりも長い。
例えば、第1分岐流路31A,31Bは、流路基板12に形成されている。
【0017】
図1に示すように、第1分岐流路31A,31Bは、第1基準面S1に対して面対称である。
例えば、折れ部34A,34Bにおける互いに連通する部分には、開口部36が連通している。例えば、開口部36は、流路基板13及び保護基板17に形成されている。
例えば、第1分岐流路31A,31Bは、流路基板12に形成されている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、第2分岐流路41は、直状部42と、折れ部43と、折れ部44と、を備える。
直状部42は、第1軸O1に沿って延伸している。直状部42は、第1分岐流路31Aの直状部32Aに対する第1側Y1に、直状部32Aから離間した位置に配置されている。
折れ部43は、直状部42の下流側X2の端部から、第2側Y2と上流側X1との間の向きに向かって突出している。折れ部43の第2側Y2の端部は、第1流路25における全体合流地点P2で第1流路25に、第1流路25の第2側Z2から連なっている。全体合流地点P2は、第1流路25における一部合流地点P1よりも下流側X2(第2流路55側)に位置する。言い換えれば、一部合流地点P1は、第1流路25における全体合流地点P2よりも第2流路55から離間する側に位置する。
【0019】
図1に示すように、折れ部44は、直状部42の上流側X1の端部から、第2側Y2に向かって、第1軸O1上まで突出している。折れ部44は、第1分岐流路31Aの折れ部34Aよりも第1側Y1に配置されている。
例えば、直状部42及び折れ部43は流路基板13に形成され、折れ部44は流路基板12に形成されている。
【0020】
第2分岐流路46は、第2分岐流路41の直状部42、折れ部43、折れ部44と同様に構成された、直状部47と、折れ部48と、折れ部49と、を備える。
直状部47は、第1軸O1に沿って延伸している。直状部47は、直状部32Bに対する第2側Y2に、直状部32Bから離間した位置に配置されている。
折れ部48は、直状部47の下流側X2の端部から、第1側Y1と上流側X1との間の向きに向かって突出している。折れ部48の第1側Y1の端部は、第1流路25における全体合流地点P2で第1流路25に、第1流路25の第1側Z1から連なっている。
折れ部49は、直状部47の上流側X1の端部から第1側Y1に向かって突出し、折れ部44に連通している。
第2分岐流路41,46は、基準面S1に対して面対称であることが好ましい。
【0021】
以上のように、第1流路25の全体合流地点P2において、第2分岐流路41,46は、第1流路25を厚さ方向Zに挟んでいる。囲い流路30が有する第1分岐流路31A,31B及び第2分岐流路41,46は、第1流路25の上流側X1の端部から第1流路25の全体合流地点P2までに、第1流路25における断面S2において、第1流路25を全周にわたって囲う。そして、第1分岐流路31A,31B及び第2分岐流路41,46は、第1流路25と一体となって、複数の基板10に沿う第2軸O2に沿って延伸する第2流路55を形成する。
本実施形態では、第2軸O2は、第1軸O1に一致している。なお、第2軸O2は、複数の基板10に沿う面上において、第1軸O1に交差していてもよい。
本実施形態では、第2軸O2及び厚さ方向Zにそれぞれ直交する第2直交方向は、直交方向Yに平行である。なお、第2直交方向は、直交方向Yに交差してもよい。
【0022】
図5に示すように、第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの一部合流地点P1と全体合流地点P2との中間部における断面S2による断面形状(以下では、第1流路中間部断面形状と言う)は、矩形状である。第1流路中間部断面形状の厚さ方向Zの長さL17は、一部合流地点断面形状の厚さ方向Zの長さL13に等しい。第1流路中間部断面形状の直交方向Yの長さL18は、一部合流地点断面形状の直交方向Yの長さL15よりも短く、第1流路断面形状の直交方向Yの長さL12程度である。すなわち、一部合流地点P1と全体合流地点P2との中間部における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL18は、一部合流地点P1における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL15よりも短い。
なお、一部合流地点P1と全体合流地点P2との中間部における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL18は、一部合流地点P1における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL15に等しくてもよい。
【0023】
図6に示すように、第2流路55の全体合流地点P2における第2軸O2に直交する断面による断面形状(以下では、全体合流地点断面形状と言う)は、矩形状である。全体合流地点断面形状の厚さ方向Zの長さL21は、第1流路中間部断面形状の厚さ方向Zの長さL17よりも長い。全体合流地点断面形状の直交方向Yの長さL22は、第1流路中間部断面形状の直交方向Yの長さL18と同等である。
【0024】
図1に示すように、例えば、折れ部44,49における互いに連通する部分には、開口部51が連通している。例えば、開口部51は、流路基板13及び保護基板17に形成されている。
【0025】
観測部60は、第2流路55の下流側X2の端部に形成されている。言い換えれば、観測部60は、第2流路55における全体合流地点P2よりも、第1流路25から離間する側に設けられている。
図7に示すように、例えば、観測部60は、流路基板11,12,13全てにわたって形成されている。観測部60は、観測用チップ1の外部からのレーザー光(電磁波)L1を第2流路55まで透過する。すなわち、観測部60に対応する部分の保護基板16,17は、透明である。この例では、レーザー光L1は、観測部60を厚さ方向Zに透過する。
なお、保護基板16は透明でなくてもよい。この場合、観測部でレーザー光L1を反射させて観測する。電磁波は、レーザー光L1に限定されず、紫外線等でもよい。
全体合流地点P2から観測部60までにおける第2流路55の厚さ方向Zの長さL21は、一定である。
【0026】
全体合流地点P2から観測部60までにおける第2流路55の直交方向Yの長さは、全体合流地点P2から下流側X2に向かうに従い漸次短くなり、その後、下流側X2に向かうに従い漸次短くなる。すなわち、第2流路55の全体合流地点P2と観測部60との中間部における直交方向Yの長さは、第2流路55の全体合流地点P2における直交方向Yの長さよりも短い。
なお、全体合流地点P2から観測部60までにおける第2流路55の直交方向Yの長さは、一定であってもよい。
【0027】
図1に示すように、第3流路65は、観測部60から第2軸O2に沿って下流側X2に延伸している。この例では、第3流路65の直交方向Yの長さは、第2流路55(観測部60)の直交方向Yの長さL22よりも長い。
分離部70は、円柱状に形成されている。分離部70は、第3流路65の下流側X2の端部に設けられている。
例えば、第2流路55、観測部60、第3流路65、及び分離部70は、流路基板12にそれぞれ形成されている。
分離部70には、開口部71が連通している。例えば、開口部71は、流路基板13及び保護基板17に形成されている。
【0028】
次に、以上のように構成された観測用チップ1の動作について説明する。
観測用チップ1を使用する際には、開口部21には図示しないサンプル流体供給チューブが接続され、開口部36,51には図示しない保護流体チューブがそれぞれ接続される。サンプル流体供給チューブには図示しないサンプル流体供給ポンプが接続され、保護流体チューブには図示しない保護流体供給ポンプが接続されている。
まず、サンプル流体供給ポンプを駆動し、サンプル流体供給チューブ及び開口部21を通して第1流路25に、血清等の、細胞を含むサンプル流体を供給する。
次に、保護流体供給ポンプを駆動し、保護流体チューブ及び開口部36,51を通して、囲い流路30が有する第1分岐流路31A,31B及び第2分岐流路41,46に、保護流体を供給する。例えば、保護流体は、水、生理食塩水等である。
【0029】
なお、保護流体供給ポンプを駆動してからサンプル流体供給ポンプを駆動してもよい、両供給ポンプを同時に駆動してもよい。
図2から
図6では、白抜きの矢印B1でサンプル流体の流れを表し、白抜きの丸印C1でサンプル流体を模式的に表す。灰色の(ハッチングを付した)矢印B2で第1分岐流路31A,31Bを通した保護流体の流れを表し、灰色の丸印C2で第1分岐流路31A,31Bを通した保護流体を模式的に表す。黒色の矢印B3で第2分岐流路41,46を通した保護流体の流れを表し、黒色の丸印C3で第2分岐流路41,46を通した保護流体を模式的に表す。
【0030】
両供給ポンプを駆動し続けると、サンプル流体は第1流路25を下流側X2に向かって流れ、保護流体は、第1分岐流路31A,31B及び第2分岐流路41,46を下流側X2に向かって流れる。
図4に示すように、第1流路25の一部合流地点P1において、サンプル流体C1は、第1分岐流路31A,31Bを通した保護流体C2により直交方向Yから挟まれる。そして、
図5に示すように、一部合流地点P1と全体合流地点P2との中間部において、第1流路中間部断面形状の直交方向Yの長さL18が、一部合流地点断面形状の長さL15よりも短いことより、保護流体C2の間にサンプル流体C1が閉じ込められる。
そして、
図6に示すように、全体合流地点P2において、サンプル流体C1及び保護流体C2が、第2分岐流路41,46を通した保護流体C3により厚さ方向Zから挟まれる。
【0031】
以上のように、観測用チップ1では、サンプル流体C1を保護流体C2により直交方向Yから挟んだ後で、サンプル流体C1及び保護流体C2を保護流体C3により厚さ方向Zから挟む。
こうして、保護流体C2,C3がサンプル流体C1を全周にわたって囲う。保護流体C2,C3により囲われたサンプル流体C1は、第2流路55を流れる。そして、観測部60において、レーザー光L1により観測される。
【0032】
観測されたサンプル流体C1及び保護流体C2,C3は、第3流路65を通して、分離部70に流れ込む。分離部70に流れ込んだサンプル流体C1及び保護流体C2,C3は、適宜処理される。
【0033】
ここで、観測用チップ1の第2流路55におけるサンプル流体C1の流れについて説明する。
図8に示すように、観測用チップ1では、全体合流地点P2から観測部60までにおける第2流路55の厚さ方向Zの長さは一定である。このため、保護流体C3に挟まれたサンプル流体C1の流れは乱れにくい。
一方で、
図9に、非特許文献1等の従来の観測用チップ2の断面図を示す。観測用チップ2の第2流路75には、流路が厚さ方向Zに狭くなるように、段部76,77が形成されている。このため、段部76,77においてサンプル流体C1及び保護流体C3の流れが乱れ、サンプル流体C1が保護流体C2,C3により囲われ難くなる。従って、観測部80において、レーザー光L1等によるサンプル流体C1の観測が困難になる。
【0034】
次に、観測用チップ1の第2流路55におけるサンプル流体C1の流れのシミュレーション結果について説明する。
図10に示すように、保護流体C2,C3により囲われたサンプル流体C1の流れは、第2流路55において第2軸O2に沿い、流れが乱れずに安定していることが分かる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の観測用チップ1では、第1流路25から全体合流地点P2に向かってサンプル流体C1を流し、囲い流路30から全体合流地点P2に向かって保護流体C2,C3を流す。このときに、サンプル流体C1は、保護流体C2,C3により、断面S2において全周にわたって囲われる。そして、全体合流地点P2から観測部60までにおける第2流路55の厚さ方向Zの長さは一定であるため、サンプル流体C1及び保護流体C2,C3の流れが乱されない。従って、観測部60において、サンプル流体C1を安定して観測することができる。
【0036】
囲い流路30は、第1分岐流路31A,31Bと、第2分岐流路41,46と、を有する。このため、第1分岐流路31A,31Bを流れる保護流体C2によりサンプル流体C1を直交方向Yから一度に挟むとともに、第2分岐流路41,46を流れる保護流体C3によりサンプル流体C1及び保護流体C2を、厚さ方向Zから一度に挟むことができる。
第1分岐流路31A,31Bは、基準面S1に対して面対称である。このため、第1分岐流路31A,31Bを流れる保護流体C2によりサンプル流体C1を安定して挟むことができる。
【0037】
第2分岐流路41,46は、基準面S1に対して面対称である場合がある。この場合には、第2分岐流路41,46を流れる保護流体C3によりサンプル流体C1を安定して挟むことができる。
一部合流地点P1と全体合流地点P2との中間部における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL18は、一部合流地点P1における第1流路25及び第1分岐流路31A,31Bの直交方向Yの長さL15よりも短い。これにより、第1流路25を流れるサンプル流体C1を、第1分岐流路31A,31Bを流れた保護流体C2の間に、より確実に閉じ込めることができる。
【0038】
第2流路55の全体合流地点P2と観測部60との中間部における直交方向Yの長さは、第2流路55の全体合流地点P2における直交方向Yの長さL22よりも短い。このため、保護流体C2,C3全体によるサンプル流体C1を閉じ込める性能を高めることができる。
【0039】
なお、
図11及び
図12に示すように、変形例の観測用チップ3を構成してもよい。観測用チップ3では、
図11に示すように、一部合流地点P6において、サンプル流体C1を保護流体C3により厚さ方向Zから挟む。その後で、
図12に示すように、全体合流地点P7において、サンプル流体C1及び保護流体C3を保護流体C2により直交方向Yから挟む。
変形例の観測用チップ3によっても、本実施形態の観測用チップ1と同様の効果を奏することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第1分岐流路31A,31Bは、基準面S1に対して面対称でなくてもよい。
なお、例えば、細胞をより分けるソートデバイスにも、本実施形態で用いられる、流路に直交する断面において、粒子が流路の定位置を安定して流れる構造が必須である。
【符号の説明】
【0041】
1,3 観測用チップ
10 基板
25 第1流路
30 囲い流路
31A,31B 第1分岐流路
41,46 第2分岐流路
55 第2流路
60 観測部
L1 レーザー光(電磁波)
O1 第1軸
O2 第2軸
P1,P6 一部合流地点
P2,P7 全体合流地点
S1 基準面
S2 断面
Y 直交方向(第1直交方向、第2直交方向)
Z 厚さ方向