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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130272
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】流路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240920BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20240920BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
B81C3/00
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039905
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 純一
【テーマコード(参考)】
3C081
4G075
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA23
3C081BA24
3C081CA05
3C081CA13
3C081CA23
3C081CA31
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA11
3C081EA37
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA56
4G075DA02
4G075EB50
4G075FA05
4G075FA12
4G075FB02
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】スリットに接着剤が入り込むのを抑制した流路の製造方法を提供する。
【解決手段】流路の製造方法S1は、第1基板の第1面に、スリット及び第1凹部を互いに離間させて形成する第1形成工程S5aと、第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、第1基板の第1面に転写する第1転写工程S7と、第1基板の第1面に、第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程S9と、を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の第1面に、スリット及び第1凹部を互いに離間させて形成する第1形成工程と、
第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、
前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、
を行う、流路の製造方法。
【請求項2】
前記第1形成工程では、前記第1凹部を複数形成するとともに、前記複数の第1凹部を千鳥状に形成する、請求項1に記載の流路の製造方法。
【請求項3】
前記第1形成工程では、前記スリットが湾曲部を有するように形成するとともに、前記第1凹部を前記湾曲部の近傍に形成する、請求項1又は2に記載の流路の製造方法。
【請求項4】
前記第1基板における前記第1面とは反対側の第2面に、前記スリットから離間させて第2凹部を形成する第2形成工程と、
第2塗布用基板に塗布した第2接着剤を、前記第1基板の前記第2面に転写する第2転写工程と、
前記第1基板の前記第2面に、前記第2接着剤を介して第3基板を接着し、前記第1基板の前記スリット、前記第2基板、及び前記第3基板により流路を形成する第2接着工程と、
を行う、請求項1又は2に記載の流路の製造方法。
【請求項5】
第1基板の第1面に、スリットを形成する形成工程と、
第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、
前記第1基板の前記第1面に、第3面に凹部が形成された第2基板を、前記凹部が前記スリットの近傍に配置されるように、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、
を行う、流路の製造方法。
【請求項6】
第1基板の第1面にスリット、前記第1基板における前記スリットの開口周縁部に段部をそれぞれ形成する第1形成工程と、
第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、
前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、
を行う、流路の製造方法。
【請求項7】
第1基板の第1面に、スリット及び第1凹部を互いに離間させて形成する第1形成工程と、
前記第1基板の前記第1面における、前記第1凹部に対する前記スリットとは反対側に第1接着剤を塗布する第1塗布工程と、
前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、
を行う、流路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子捕捉用チップを製造する際に、複数の基板が接着剤の転写により接合され、流路が形成されている(例えば、特許文献1参照)。流路は、基板を貫通するように溝(スリット)が形成された基板を積層すること等により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-122776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板の間の接着剤の厚みが大きく過剰だと、接着剤が溝へ漏れ出す。この場合、例えば、流路を流れる液体の流れを乱したり、光観察時に蛍光を発し、液体に含まれる細胞を見分けるのに重要な細胞からの蛍光の観察の邪魔をしてしまう、といった信頼性の問題につながる。
一方で、基板の間の接着剤の厚みが足らないと、基板の接着強度が不足する。この場合、粒子捕捉用チップの製造上の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、第1基板の第1面に、スリット及び第1凹部を互いに離間させて形成する第1形成工程と、第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、を行う、流路の製造方法である。
【0006】
(2)本発明の態様2は、第1基板の第1面に、スリットを形成する形成工程と、第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、前記第1基板の前記第1面に、第3面に凹部が形成された第2基板を、前記凹部が前記スリットの近傍に配置されるように、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、を行う、流路の製造方法である。
【0007】
(3)本発明の態様3は、第1基板の第1面にスリット、前記第1基板における前記スリットの開口周縁部に段部をそれぞれ形成する第1形成工程と、第1塗布用基板に塗布した第1接着剤を、前記第1基板の前記第1面に転写する第1転写工程と、前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、を行う、流路の製造方法である。
【0008】
(4)本発明の態様4は、第1基板の第1面に、スリット及び第1凹部を互いに離間させて形成する第1形成工程と、前記第1基板の前記第1面における、前記第1凹部に対する前記スリットとは反対側に第1接着剤を塗布する第1塗布工程と、前記第1基板の前記第1面に、前記第1接着剤を介して第2基板を接着する第1接着工程と、を行う、流路の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップの一例を示す平面図である。
図2図1中の切断線A1-A1の断面図である。
図3】同粒子捕捉用チップの流路基板の平面図である。
図4】同粒子捕捉用チップにおける観測部の断面図である。
図5】同流路の製造方法を示すフローチャートである。
図6】同流路の製造方法において、流路基板の一例の製造工程を説明する断面図である。
図7】同流路基板の一例の製造工程を説明する断面図である。
図8】同流路基板の一例の製造工程を説明する断面図である。
図9】同流路基板の一例の製造工程を説明する断面図である。
図10】同流路の製造方法において、流路基板の他の一例の製造工程を説明する断面図である。
図11】同流路基板の他の一例の製造工程を説明する断面図である。
図12】同流路基板の他の一例の製造工程を説明する断面図である。
図13】同流路の製造方法における第1転写工程を説明する断面図である。
図14】同流路の製造方法における第1転写工程を説明する断面図である。
図15】同流路の製造方法における第1転写工程を説明する断面図である。
図16】同流路の製造方法における第1接着工程を説明する断面図である。
図17】同流路の製造方法における第2転写工程を説明する断面図である。
図18】同流路の製造方法における第2転写工程を説明する断面図である。
図19】本発明の第1実施形態の第1変形例における流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップの一例を示す平面図である。
図20】本発明の第2実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップを側面視した断面図である。
図21】同流路の製造方法を示すフローチャートである。
図22】本発明の第3実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップを側面視した断面図である。
図23】同流路の製造方法を示すフローチャートである。
図24】本発明の第4実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップを側面視した断面図である。
図25】同流路の製造方法を示すフローチャートである。
図26】変形例の粒子捕捉用チップにおける観測部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る流路の製造方法の第1実施形態を、図1から図19を参照しながら説明する。以下では、まず、流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップについて説明する。
図1及び図2に示すように、粒子捕捉用チップ1は、複数の基板10を、複数の基板10の厚さ方向Zに重ねた状態で備える。
図2に示すように、例えば、複数の基板10は、第2基板12と、第1基板11と、第3基板13と、を備える。
例えば、第2基板12、第1基板11、及び第3基板13は、厚さ方向Zに見たときに、所定の方向に長い矩形状に形成されている。
【0011】
以下では、第1基板11に対する第2基板12側を、厚さ方向Zの第1側Z1と言う(単に第1側Z1とも言う)。第1基板11に対する第3基板13側を、厚さ方向Zの第2側Z2と言う(単に第2側Z2とも言う)。すなわち、第2基板12、第1基板11、及び第3基板13は、第1側Z1から第2側Z2に向かって、この順で配置されている。
【0012】
以下では、まず、第1基板11について説明する。
第1基板11は、流路基板16,17,18を有する。流路基板16,17,18は、厚さ方向Zに見たときに前記所定の方向に長い矩形状に形成されている。流路基板16,17,18は、シリコン、ステンレス鋼等で形成されている。
流路基板16,17,18は、第1側Z1から第2側Z2に向かって、この順で配置されている。
例えば、流路基板16,17,18の厚さは、0.1mm以下である。なお、第1基板11が備える流路基板の数に制限はなく、4枚以上でもよい。
流路基板16には、厚さ方向Zに貫通する溝16a,16bが形成されている。溝16a,16bは、互いに離間している。
同様に、流路基板17には溝17aが形成され、流路基板18には溝18a,18bが形成されている。
【0013】
溝16a,17a,18aは、厚さ方向Zに互いに連通している溝である。溝16a,17a,18aそれぞれの幅は、互いに同程度である。
溝16b,18bは、厚さ方向Zにおいて流路基板17により仕切られている溝である。溝16b,18bは、流路基板17を挟んで厚さ方向Zに対向するように配置されている。
なお、溝16aは、後で詳しく説明する流路25の形状に沿う延在方向に沿って延びている。ただし、図1に示すように、流路基板16において、溝16aが延びる方向の一部には、ブリッジ16cが設けられている。
同様に、流路基板17にはブリッジ17cが設けられ、流路基板18にはブリッジ18cが設けられている。なお、図1では、ブリッジ17c,18cにハッチングを付している。ブリッジ16c,17c,18cは、前記延在方向に位置をずらして配置されている。これにより、溝16a,17a,18aを後述するサンプル流体が流れる際に、ブリッジ16c,17c,18cが支障になり難い。
図3に示すように、流路基板17には、溝17a及びブリッジ17cが形成されている。
流路基板16,17,18は、公知の接合方法により互いに接合されている。
【0014】
図2に示すように、互いに連通している溝16a,17a,18aにより、第1基板11における第1側Z1を向く第1面11aに形成される、スリット11cが構成される。スリット11cは、流路基板16,17,18を厚さ方向Zに貫通している。スリット11cは、第1基板11における第1面11aとは反対側の第2面11bに達する。
溝16b及び流路基板17により、第1基板11の第1面11aに形成される第1凹部11dが構成される。第1凹部11dは、スリット11cから離間している。
溝18b及び流路基板17により、第1基板11の第2面11bに形成される第2凹部11eが構成される。第2凹部11eは、スリット11cから離間している。第2凹部11eは、流路基板17を挟んで第1凹部11dに対向している。
【0015】
基板12,13は、透明なガラス等で形成されている。
第2基板12は、流路基板16の第1側Z1に配置されている。第2基板12と流路基板16とは、第1接着剤21により接着されている。
第3基板13は、流路基板18の第2側Z2に配置されている。第3基板13と流路基板18とは、第2接着剤22により接着されている。
第1接着剤21及び第2接着剤22には、シリコーン接着剤、エポキシ接着剤、アクリル接着剤、フェノール接着剤、酢酸ビニル接着剤、クロロプレンゴム接着剤、ニトリルゴム接着剤を用いることができる。
【0016】
図1及び図2に示すようにスリット11cの第1側Z1及び第2側Z2が、第2基板12及び第3基板13により塞がれることにより、粒子捕捉用チップ1に、流路25であるサンプル流体供給部26、第1分岐流路27、第2分岐流路28、合流流路29、観測部30、及び分離部31が形成される。
さらに、粒子捕捉用チップ1には、第1凹部11dである、分岐脇凹部35,36、及び合流脇凹部37,38が形成されている。図示はしないが、粒子捕捉用チップ1には、第2凹部11eである、分岐脇凹部、及び合流脇凹部が形成されている。
【0017】
ここで、図1に示すように前記所定の方向を、長手方向Xと規定する。長手方向X及び厚さ方向Zにそれぞれ直交する方向を、短手方向Yと規定する。
サンプル流体供給部26は、円柱状に形成されている。サンプル流体供給部26は、第1基板11における、長手方向Xの第1端部であって短手方向Yの中央部に配置されている。
サンプル流体供給部26には、開口部26aが連通している。例えば、開口部26aは第2基板12に形成されている。
以下では、第1基板11における、長手方向Xの第1端部に対する第2端部側を、長手方向Xの第1側X1(以下では、単に第1側X1とも言う)と言う。長手方向Xにおける第1側X1とは反対側を、長手方向Xの第2側X2(以下では、単に第2側X2とも言う)と言う。
【0018】
厚さ方向Zに見たときに、第1分岐流路27は、短手方向Yの第1側Y1(以下では、単に第1側Y1とも言う)に向かって凸となるように湾曲している。具体的には、第1分岐流路27は、直状部27aと、湾曲部27b,27cとを有する。
直状部27aは、長手方向Xに沿って延伸している(延びている)。湾曲部27b,27cは、それぞれ四分円弧状である。例えば、直状部の幅方向の中心における曲率半径は10mm以上であり、湾曲部の幅方向の中心における曲率半径は10mm未満である。
湾曲部27bは、第1側Y1と第2側X2との間の向きに向かって凸となるように湾曲している。湾曲部27bの第1側X1の端部は、直状部27aの第2側X2の端部に連通している。
湾曲部27cは、第1側Y1と第1側X1との間の向きに向かって凸となるように湾曲している。湾曲部27bの第2側X2の端部は、直状部27aの第1側X1の端部に連通している。
第1分岐流路27を構成するスリット11cは、湾曲部27bに対応する位置に、湾曲部11c1を有する。
【0019】
第1分岐流路27における第2側X2の端部は、サンプル流体供給部26に、サンプル流体供給部26の第1側Y1から連通している。
厚さ方向Zに見たときに、第2分岐流路28は、短手方向Yにおける第1側Y1とは反対側の第2側Y2(以下では、単に第2側Y2とも言う)に向かって凸となるように湾曲している。第2分岐流路28における第2側X2の端部は、サンプル流体供給部26に、サンプル流体供給部26の第2側Y2から連通している。
第2分岐流路28における第1側X1の端部は、第1分岐流路27における第2側X2の端部に連通している。
【0020】
合流流路29は、分岐流路27,28における互いに連通している部分から、第1側X1に向かって延伸している。
観測部30は、合流流路29の第1側X1の端部に設けられている。図4に示すように、観測部30は、粒子捕捉用チップ1の外部からのレーザー光L1を合流流路29まで透過する。すなわち、観測部30に対応する部分の基板12,13は、透明である。この例では、レーザー光L1は、観測部30を厚さ方向Zに透過する。
【0021】
図1に示すように、分離部31は、円柱状に形成されている。分離部31は、合流流路29の第1側X1の端部(観測部30)の第1側X1に設けられている。分離部31には、開口部31aが連通している。例えば、開口部31aは第2基板12に形成されている。
【0022】
分岐脇凹部35は、粒子捕捉用チップ1に複数形成されている。各分岐脇凹部35は、長手方向Xに沿って延伸している。複数の分岐脇凹部35は、第1分岐流路27における長手方向Xに沿って延伸する直状部27aを、直状部27aから離間した位置で、短手方向Yに挟むように配置されている。第1分岐流路27と分岐脇凹部35との距離は、第1分岐流路27(スリット11c)の幅の5倍以下であることが好ましい。
分岐脇凹部36は、粒子捕捉用チップ1に複数形成されている。各分岐脇凹部36は、長手方向Xに沿って延伸している。複数の分岐脇凹部36は、第2分岐流路28における長手方向Xに沿って延伸する直状部28aを、直状部28aから離間した位置で、短手方向Yに挟むように配置されている。
【0023】
合流脇凹部37は、粒子捕捉用チップ1に複数形成されている。例えば、複数の合流脇凹部37は、合流流路29よりも第1側Y1で千鳥状に配置されている。より詳しく説明すると、複数の合流脇凹部37の一部は、長手方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。複数の合流脇凹部37の残部は、複数の合流脇凹部37の一部よりも第1側Z1であって、長手方向Xにおいて、複数の合流脇凹部37の前記一部における長手方向Xに隣り合う合流脇凹部37の間に対応するように配置されている。
合流脇凹部38は、長手方向Xに沿って延伸している。合流脇凹部38は、合流流路29よりも第2側Y2に配置されている。
【0024】
例えば、流路基板16には、流路25に対応する溝16a、及び第1凹部11dに対応する溝16bが形成されている。流路基板18には、溝16a,16bと同様の溝18a,18bが形成されている。
一方で、図3に示すように、流路基板17には、流路25に対応する溝17aが形成される。
【0025】
次に、以上のように構成された粒子捕捉用チップ1を製造する流路の製造方法について説明する。図5は、流路の製造方法S1を示すフローチャートである。
まず、形成工程(図5に示すステップS5)において、第1基板11を製造する。この例では、個別に製造した流路基板16,17,18を、互いに接合させる。なお、形成工程における第1基板11の製造方法は、これに限定されない。
【0026】
具体的には、流路基板16を製造するために、図6に示すように、流路基板16に溝16a,16bが形成される前の流路基板16Aを用いる。流路基板16Aから流路基板16を製造するには、公知のフォトリソグラフィ等を用いる。スピンコータ等により、流路基板16Aの両表面に、レジスト39aを設ける。
図示はしないが、露光により、マスクを通して紫外線等を照射し、図7に示すように、各レジスト39aに貫通孔39a1を形成する。
図8に示すように、エッチングにより、各レジスト39aの貫通孔39a1に対応する流路基板16Aの部分に、溝16a,16bを形成する。
図9に示すように、流路基板16から各レジスト39aを剥離する。
以上の工程により、流路基板16を製造する。流路基板16と同様の工程により、流路基板18を製造する。
【0027】
流路基板17を製造するために、図10に示すように、流路基板17に溝17aが形成される前の流路基板17Aを用いる。流路基板17Aの両表面に、レジスト39bを設ける。各レジスト39bに貫通孔39b1を形成する。
図11に示すように、各レジスト39bの貫通孔39b1に対応する流路基板17Aの部分に、溝17aを形成する。
図12に示すように、流路基板17から各レジスト39bを剥離する。
以上の工程により、流路基板17を製造する。
【0028】
製造した流路基板16,17,18を互いに接合することにより、第1基板11を製造する。
形成工程S5では、図5に示す第1形成工程S5a及び第2形成工程S5bが行われる。第1形成工程S5aでは、第1基板11の第1面11aに、スリット11c及び第1凹部11dを互いに離間させて形成する。第1形成工程S5aでは、複数の合流脇凹部37用に、第1凹部11dを複数形成するとともに、複数の第1凹部11dを千鳥状に形成する。
第2形成工程S5bでは、第1基板11の第2面11bに、スリット11cから離間させて第2凹部11eを形成する。
第1形成工程S5a及び第2形成工程S5bのうち、どちらの工程を先に行ってもよいし、両工程を同時に行ってもよい。
形成工程S5が終了すると、ステップS7に移行する。
【0029】
次に、図13に示すように、第1転写工程S7において、第1塗布用基板40に第1接着剤21をスピンコータ等により設ける。
第1塗布用基板40に塗布した第1接着剤21を、第1基板11の第1面11aに転写する。第1塗布用基板40には、光学定に透明で、自家蛍光の少ないガラス基板、環状オレフィンポリマー(COC, COP)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)等を用いることができる。
具体的には、図14に示すように、第1塗布用基板40を、第1基板11の第1面11aに近づけ、第1塗布用基板40に塗布した第1接着剤21を、第1基板11の第1面11aに付着させる。図15に示すように、第1塗布用基板40を第1基板11の第1面11aから離間させ、第1接着剤21を、第1基板11の第1面11aに転写する。
第1転写工程S7が終了すると、ステップS9に移行する。
次に、図16に示すように、第1接着工程S9において、第1基板11の第1面11aに、第1接着剤21を介して第2基板12を接着する。
第1形成工程S5a、第1転写工程S7、及び第1接着工程S9は、この順で行われる。第1接着工程S9が終了すると、ステップS11に移行する。
【0030】
次に、第2転写工程S11において、第2塗布用基板42に塗布した第2接着剤22を、第1基板11の第2面11bに転写する。具体的には、図17に示すように、第2塗布用基板42を、第1基板11の第2面11bに近づけ、第2塗布用基板42に塗布した第2接着剤22を、第1基板11の第2面11bに付着させる。図18に示すように、第2塗布用基板42を第1基板11の第2面11bから離間させ、第2接着剤22を、第1基板11の第2面11bに転写する。
第2転写工程S11が終了すると、ステップS13に移行する。
【0031】
次に、第2接着工程S13において、図2に示すように、第1基板11の第2面11bに、第2接着剤22を介して第3基板13を接着する。そして、第1基板11のスリット11c、第2基板12、及び第3基板13により、流路25を形成する。
第2形成工程S5b、第2転写工程S11、及び第2接着工程S13は、この順で行われる。第2接着工程S13が終了すると、流路の製造方法S1の全工程が終了し、粒子捕捉用チップ1が製造される。
【0032】
なお、流路の製造方法S1では、第2形成工程S5bを行わなくてもよい。
【0033】
次に、以上のように構成された粒子捕捉用チップ1の動作について説明する。
粒子捕捉用チップ1を使用する際には、開口部26aには図示しない供給チューブが接続される。供給チューブには、図示しない供給ポンプが接続される。
供給ポンプを駆動すると、供給チューブ及び開口部26aを通して、サンプル流体供給部26にサンプル流体を供給する。例えば、サンプル流体は、血清等の、細胞を含む流体である。
【0034】
サンプル流体は、分岐流路27,28を第1側X1に向かって流れ、合流流路29で合流する。そして、観測部30において、レーザー光L1により観測される。
観測されたサンプル流体は、分離部31に流れ込む。分離部31に流れ込んだサンプル流体は、適宜処理される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の流路の製造方法S1では、第1転写工程S7において、例えば、第1基板11の第1面11aにおける、第1凹部11dとスリット11cとの間、及び第1凹部11dに対するスリット11cとは反対側に過剰に付着した第1接着剤21の一部は、第1凹部11dに入り込む。
従って、スリット11cに第1接着剤21が入り込むのを抑制することができる。
【0036】
第1形成工程S5aでは、第1凹部11dを複数形成するとともに、複数の第1凹部11dを千鳥状に形成する。このため、複数の第1凹部11dを形成した際に、第1基板11の強度が低下するのを抑制することができる。また、複数の第1凹部11dに第1接着剤21が入り込むため、アンカリング効果により、第1基板11から第1接着剤21が剥がれ難くなる。
流路の製造方法S1では、第2形成工程S5b、第2転写工程S11、及び第2接着工程S13を行う。これにより、第2転写工程S11において、第1基板11の第2面11bにおける、第2凹部11eとスリット11cとの間、及び第2凹部11eに対するスリット11cとは反対側に過剰に付着した第2接着剤22の一部は、第2凹部11eに入り込む。
従って、スリット11cに第2接着剤22が入り込むのを抑制することができる。
【0037】
なお、図19に示す第1変形例の粒子捕捉用チップ1Aのように、粒子捕捉用チップ1の各構成において、分岐脇凹部35,36及び合流脇凹部37,38に代えて、第1分岐流路27の湾曲部27bの近傍に、分岐脇凹部45が形成されてもよい。なお、図19では、ブリッジ16c,17c,18cを示していない。分岐脇凹部45は、厚さ方向Zに直交する平面上で、湾曲部27bを挟むように配置されている。
粒子捕捉用チップ1Aでは、分岐流路27,28と合流流路29とが連通している部分に、分岐脇凹部46が形成されている。
【0038】
図5に示すように、第1変形例の粒子捕捉用チップ1Aを製造する第1変形例の流路の製造方法S1Aでは、流路の製造方法S1の第1形成工程S5aに代えて、第1形成工程S5a1を行う。
第1形成工程S5a1では、スリット11cが湾曲部11c1を有するように形成するとともに、第1凹部11dを湾曲部11c1の近傍に形成する。ここで言う湾曲部11c1の近傍とは、例えば、湾曲部11c1の幅方向の中心を基準にして、前記幅方向の第1側及び第2側にそれぞれ湾曲部11c1の幅方向の長さの2倍の範囲内を意味する。
【0039】
一般的に、粒子捕捉用チップの製造時に、湾曲部に接着剤が入り込みやすい。
第1形成工程S5a1において、第1凹部11dを湾曲部11c1の近傍に形成することにより、スリット11cに第1接着剤21が入り込むのを、より確実に抑制することができる。分岐脇凹部46についても、分岐脇凹部45と同様である。
【0040】
なお、本実施形態の第1形成工程S5aにおいて、複数の第1凹部11dを千鳥状に形成する範囲は限定されない。例えば、複数の第1凹部11dを、合流流路29の第1側Y1及び第2側Y2の両側に千鳥状に形成してもよい。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図20及び図21を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図20に示すように、本実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップ2は、粒子捕捉用チップ1の各構成において、流路25及び溝16bに代えて、流路50を備えている。流路50は、第1基板11のスリット11f、第2基板12、及び第3基板13により構成されている。
【0042】
粒子捕捉用チップ2では、溝16a,18aの幅は、溝17aの幅よりも広い。
流路基板16,17,18の溝16a,17a,18aにより、第1基板11の第1面11aにスリット11fが形成される。
流路基板16,17の溝16a,17aにより、第1基板11におけるスリット11fの第1面11a側の開口周縁部に、第1段部(段部)51が形成される。流路基板17,18の溝17a,18aにより、第1基板11におけるスリット11fの第2面11b側の開口周縁部に、第2段部52が形成される。
【0043】
次に、以上のように構成された粒子捕捉用チップ2を製造する流路の製造方法について説明する。図21は、流路の製造方法S2を示すフローチャートである。
流路の製造方法S2では、まず、形成工程(図21に示すステップS15)において、第1基板11の第1面11aにスリット11f、第1段部51及び第2段部52をそれぞれ形成する。
形成工程S15では、第1形成工程S15aが行われる。第1形成工程S15aでは、第1基板11の第1面11aにスリット11f、第1基板11におけるスリット11fの開口周縁部に第1段部51をそれぞれ形成する。
形成工程S15が終了すると、ステップS17に移行する。
【0044】
次に、第1転写工程S17において、第1塗布用基板40に塗布した第1接着剤21を、第1基板11の第1面11aに転写する。スリット11fに段部51,52が形成されているため、スリット11fに入り込んだ第1接着剤21が第1段部51に溜まり、スリット11fが塞がれ難い。
第1転写工程S17が終了すると、ステップS19に移行する。
次に、第1接着工程S19では、第1基板11の第1面11aに、第1接着剤21を介して第2基板12を接着する。
第1接着工程S19が終了すると、第1転写工程S17、第1接着工程S19と同様の第2転写工程、第2接着工程を行うことにより、流路の製造方法S2の全工程が終了し、粒子捕捉用チップ2が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の流路の製造方法S2では、第1転写工程S17において、例えば、第1基板11の第1面11aに過剰に付着した第1接着剤21の一部は、第1接着工程S19において第1段部51に溜まる。従って、スリット11fに入り込んだ第1接着剤21によりスリット11fが塞がれるのを抑制することができる。
なお、形成工程S15では、第2段部52は形成されなくてもよい。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図22及び図23を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図22に示すように、本実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップ3は、粒子捕捉用チップ1の各構成において、溝16b,18bに代えて、第2基板12に第1凹部(凹部)12a、第3基板13に第2凹部13aがそれぞれ形成されている。
第1凹部12aは、第2基板12の第3面12bに形成されている。第2凹部13aは、第3基板13の第4面13bに形成されている。
【0047】
次に、以上のように構成された粒子捕捉用チップ3を製造する流路の製造方法について説明する。図23は、流路の製造方法S3を示すフローチャートである。
流路の製造方法S3では、まず、形成工程(図21に示すステップS21)において、第1基板11の第1面11aに、スリット11cを形成する。
形成工程S21が終了すると、ステップS23に移行する。
次に、第1転写工程S23において、第1塗布用基板40に塗布した第1接着剤21を、第1基板11の第1面11aに転写する。
第1転写工程S23が終了すると、ステップS25に移行する。
【0048】
次に、第1接着工程S25において、第1基板11の第1面11aに、第2基板12を、第1凹部12aが第2基板12のスリット11cの近傍に配置されるように、第1接着剤21を介して第2基板12を接着する。ここで言うスリット11cの近傍とは、例えば、スリット11cの幅方向の中心を基準にして、前記幅方向の第1側及び第2側にそれぞれスリット11cの幅方向の長さの5倍の範囲内を意味する。
第1接着工程S25が終了すると、第1転写工程S23、第1接着工程S25と同様の第2転写工程、第2接着工程を行うことにより、流路の製造方法S3の全工程が終了し、粒子捕捉用チップ3が製造される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の流路の製造方法S3では、第1接着工程S25において、第1接着剤21が第2基板12の第1凹部12aに入り込む。従って、スリット11cに第1接着剤21が入り込むのを抑制することができる。
なお、第3基板13に第2凹部13aは形成されなくてもよい。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図24及び図25を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図24に示すように、本実施形態の流路の製造方法により製造される粒子捕捉用チップ4は、粒子捕捉用チップ1の各構成において、接着剤21,22が配置される範囲が異なる。
第1接着剤21は、第1基板11の第1面11aにおける、第1凹部11dに対するスリット11cとは反対側に配置されている。第2接着剤22は、第1基板11の第2面11bにおける、第2凹部11eに対するスリット11cとは反対側に配置されている。
【0051】
次に、以上のように構成された粒子捕捉用チップ4を製造する流路の製造方法について説明する。図5は、流路の製造方法S4を示すフローチャートである。
まず、前記形成工程S5を行う。形成工程S5が終了すると、ステップS31に移行する。
次に、第1塗布工程S31において、第1基板11の第1面11aにおける、第1凹部11dに対するスリット11cとは反対側に第1接着剤21を塗布する。第1接着剤21を塗布する範囲を制御するのには、公知のシルク印刷等を用いることができる。
第1塗布工程S31が終了すると、第1接着工程S9を行う。
第1接着工程S9が終了すると、第1塗布工程S31、第1接着工程S9と同様の第2塗布工程、第2接着工程を行うことにより、流路の製造方法S4の全工程が終了し、粒子捕捉用チップ4が製造される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の流路の製造方法S4では、第1塗布工程S31において、第1基板11の第1面11aにおける、第1凹部11dに対するスリット11cとは反対側に第1接着剤21を塗布する。従って、スリット11cに第1接着剤21が入り込むのを抑制することができる。
【0053】
以上、本発明の第1実施形態から第4実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態の粒子捕捉用チップ1では、図26に示すように、観測部30における第3基板13は透明でなくてもよい。この場合、観測部30において、サンプル流体は、レーザー光L1を第3基板13で反射させることで観測される。
第2実施形態から第4実施形態の粒子捕捉用チップでも、粒子捕捉用チップ1と同様である。
【符号の説明】
【0054】
11 第1基板
11a 第1面
11b 第2面
11c,11f スリット
11c1 湾曲部
11d 第1凹部
11e 第2凹部
12 第2基板
12a 第1凹部(凹部)
12b 第3面
13 第3基板
21 第1接着剤
22 第2接着剤
25,50 流路
40 第1塗布用基板
42 第2塗布用基板
51 第1段部(段部)
S1,S1A,S2,S3,S4 流路の製造方法
S5a,S5a1,S15a 第1形成工程
S5b 第2形成工程
S7,S17,S23 第1転写工程
S9,S19,S25 第1接着工程
S11 第2転写工程
S13 第2接着工程
S21 形成工程
S31 第1塗布工程
Z 厚さ方向
図1
図2
図3
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