IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表示灯および防災システム 図1
  • 特開-表示灯および防災システム 図2
  • 特開-表示灯および防災システム 図3
  • 特開-表示灯および防災システム 図4
  • 特開-表示灯および防災システム 図5
  • 特開-表示灯および防災システム 図6
  • 特開-表示灯および防災システム 図7
  • 特開-表示灯および防災システム 図8A
  • 特開-表示灯および防災システム 図8B
  • 特開-表示灯および防災システム 図9A
  • 特開-表示灯および防災システム 図9B
  • 特開-表示灯および防災システム 図9C
  • 特開-表示灯および防災システム 図10
  • 特開-表示灯および防災システム 図11
  • 特開-表示灯および防災システム 図12
  • 特開-表示灯および防災システム 図13
  • 特開-表示灯および防災システム 図14
  • 特開-表示灯および防災システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130273
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】表示灯および防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20240920BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20240920BHJP
   H05B 47/175 20200101ALI20240920BHJP
【FI】
G08B17/00 F
G08B17/00 L
G08B27/00 A
H05B47/105
H05B47/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039906
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹下 理和
(72)【発明者】
【氏名】大澤 隆司
【テーマコード(参考)】
3K273
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
3K273PA08
3K273QA07
3K273QA36
3K273QA37
3K273RA08
3K273SA08
3K273SA32
3K273SA35
3K273SA46
3K273SA48
3K273TA15
3K273TA18
3K273TA22
3K273TA28
3K273TA32
3K273TA41
3K273TA42
3K273TA62
3K273TA66
3K273TA67
3K273TA69
3K273UA21
3K273UA27
3K273UA29
5C087AA19
5C087DD04
5C087DD23
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG45
5C087GG68
5C087GG82
5G405AA08
5G405AB01
5G405AB02
5G405CA28
(57)【要約】
【課題】不適切な避難路への誘導を抑制できる表示灯および防災システムを得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る表示灯は、避難路を示す第1表示部と、前記第1表示部を照らす第1光源部と、外部からの消灯信号に応じて、非常時に前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難路を示す第1表示部と、
前記第1表示部を照らす第1光源部と、
外部からの消灯信号に応じて、非常時に前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御部と、
を備えることを特徴とする表示灯。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1表示部が、非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する場合に、前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させることを特徴とする請求項1に記載の表示灯。
【請求項3】
前記第1表示部は、互いに異なる方向に誘導する複数の部分を有し、
前記第1光源部は、前記複数の部分に対応する複数の光源を有することを特徴とする請求項1に記載の表示灯。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の部分のうち非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源を消灯させることを特徴とする請求項3に記載の表示灯。
【請求項5】
前記制御部は、前記消灯信号の受信が無くなった場合、または外部から復帰信号を受信した場合に、前記第1光源部を再度点灯させることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の表示灯。
【請求項6】
進入禁止を示す第2表示部と、
前記第2表示部を照らす第2光源部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1光源部を消灯させるとともに第2光源部を点灯させることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の表示灯。
【請求項7】
避難路を示す第1表示部と、前記第1表示部を照らす第1光源部と、を備えた表示灯と、
非常時に前記表示灯に消灯信号を送信して、前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御装置と、
を備えることを特徴とする防災システム。
【請求項8】
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記表示灯が不適切な避難路に誘導する場合に前記表示灯に前記消灯信号を送信することを特徴とする請求項7に記載の防災システム。
【請求項9】
複数の前記表示灯を備え、
前記制御装置は、非常事態の発生位置と、前記複数の表示灯のうち前記消灯信号を送信する表示灯との対応関係を記憶し、前記非常時に前記対応関係を参照して、前記複数の表示灯のうち不適切な避難路に誘導する表示灯に前記消灯信号を送信することを特徴とする請求項8に記載の防災システム。
【請求項10】
前記第1表示部は、互いに異なる方向に誘導する複数の部分を有し、
前記第1光源部は、前記複数の部分に対応する複数の光源を有することを特徴とする請求項7に記載の防災システム。
【請求項11】
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記第1表示部の前記複数の部分のうち不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源を消灯させることを特徴とする請求項10に記載の防災システム。
【請求項12】
前記第1光源部の前記複数の光源には、それぞれアドレスが付与され、
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記第1表示部の前記複数の部分のうち不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源のアドレス宛に前記消灯信号を送信することを特徴とする請求項11に記載の防災システム。
【請求項13】
前記表示灯は、進入禁止を示す第2表示部と、前記第2表示部を照らす第2光源部と、を備え、
前記制御装置は、前記第1光源部を消灯させるとともに、第2光源部を点灯させることを特徴とする請求項7から12の何れか1項に記載の防災システム。
【請求項14】
非常事態の発生位置を検出する自動火災報知システムを備えることを特徴とする請求項7から12の何れか1項に記載の防災システム。
【請求項15】
前記自動火災報知システムは、非常事態の発生を検知する火災検知センサを備え、
前記火災検知センサは、熱または煙の少なくとも一方を感知することを特徴とする請求項14に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示灯および防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の誘導灯装置では、従来の誘導灯に相当する主表示部の背面側に、火災等の非常事態発生時のみ表示する補助表示部が配置される。補助表示部による表示は、主表示部のシンボルが照らし出された表示板上に同様に照らし出される。補助表示部による表示は、非常事態の発生現場近傍の誘導灯装置及び発生現場に通ずる通路を表示している誘導灯装置に対して行われる。これにより、避難者が火災現場に向かわないような情報を確実に避難者に提供することによって、該避難者が安全な避難行動を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-277545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に火災発生時には、自動火災報知システムが火災発生を検出し、警報または音声で滞在者に火災発生を報知する。これにより施設への滞在者は災害を知り、避難することになる。このとき、一般に避難者は点灯している誘導灯の矢印に従って避難する。しかし、避難者が誘導された先に火災が発生している様なリスクは避けるべきである。
【0005】
これに対し特許文献1では、誘導表示面の背面に進入禁止を示すデザインとして×印を表示させ、避難路として不適切であることを示している。しかし、特許文献1では、誘導灯としての通常時に点灯している表示部を点灯させながら、進入禁止の表示を付加する。つまり、避難を促す意味を持つ表示と、進入禁止の意味を持つ表示とが、2重に表示される。これは、災害時における心理的に緊張した状態においては、冷静な判断を妨げる要因となるおそれがある。
【0006】
本開示は、不適切な避難路への誘導を抑制できる表示灯および防災システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る表示灯は、避難路を示す第1表示部と、前記第1表示部を照らす第1光源部と、外部からの消灯信号に応じて、非常時に前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御部と、を備える。
【0008】
本開示に係る防災システムは、避難路を示す第1表示部と、前記第1表示部を照らす第1光源部と、を備えた表示灯と、非常時に前記表示灯に消灯信号を送信して、前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る表示灯および防災システムによれば、非常時に、避難路を示す第1表示部を照らす第1光源部の少なくとも一部が消灯する。これにより、不適切な避難路への誘導を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る防災システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る表示灯の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る表示灯を分解した状態を示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係る防災システムを適用した施設を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
図6】実施の形態1の変形例に係る防災システムを適用した施設を説明する図である。
図7】実施の形態1の変形例に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
図8A】実施の形態2に係る表示灯の正面図である。
図8B】実施の形態2に係る表示灯の側面図である。
図9A】実施の形態2に係る表示灯の点灯状態を説明する図である。
図9B】実施の形態2に係る表示灯の点灯状態を説明する図である。
図9C】実施の形態2に係る表示灯の点灯状態を説明する図である。
図10】実施の形態2に係る防災システムを適用した施設を説明する図である。
図11】実施の形態2に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
図12】実施の形態2に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
図13】実施の形態2の変形例に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
図14】実施の形態3に係る表示灯の構成を示すブロック図である。
図15】実施の形態3に係る表示灯の点灯状態の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各実施の形態に係る表示灯および防災システムについて図面を参照して説明する。同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る防災システム100の構成を示すブロック図である。防災システム100は、誘導灯制御システム10と自動火災報知システム50を備える。誘導灯制御システム10は、複数の表示灯20と、非常時に表示灯20に消灯信号80を送信して表示灯20を消灯させる制御装置12と、電源14とを備える。自動火災報知システム50は、複数の感知器54と制御装置52を備える。
【0013】
自動火災報知システム50は、非常事態の発生位置を検出する。以下では、主に非常事態が火災である例について説明するが、非常事態は火災に限定されない。非常事態は火災以外の災害であっても良い。複数の感知器54の各々は、火災の発生を検知する火災検知センサ56と、検知回路58を有する。火災検知センサ56は、例えば熱または煙の少なくとも一方を感知する。つまり、火災検知センサ56は、煙感知型または熱感知型である。火災検知センサ56は、熱感知型と煙感知型を併用していても良く、他の方式のセンサであっても構わない。感知器54からの火災発生位置情報は、制御装置52を介して誘導灯制御システム10に送信される。
【0014】
誘導灯制御システム10の制御装置12は制御部12aと記憶部12bを有している。制御部12aは、火災発生位置情報として通知された火災の発生位置に応じて、表示灯20が不適切な避難路に誘導する場合に表示灯20に消灯信号80を送信する。制御装置12は、火災の発生位置と、複数の表示灯20のうち消灯信号80を送信する表示灯20との対応関係を記憶部12bに記憶している。つまり記憶部12bは、施設内の各位置で火災が発生した場合に、消灯させるべき表示灯20もしくは表示灯20のアドレスの情報を保持している。制御部12aは、非常時に記憶部12bに記憶された対応関係を参照して、複数の表示灯20のうち不適切な避難路に誘導する表示灯20に消灯信号80を送信する。
【0015】
例えば、記憶部12bには、予めシミュレーションにより火災発生位置毎の安全な避難路が登録されている。制御部12aは、安全な避難路に該当しない不適切な避難路へ誘導する表示灯20を消灯させるように消灯信号80を送信する。制御部12aは、火災発生位置情報と記憶部12bの情報を照らし合わせ、消灯信号80を何れの表示灯20に送信するかを自動で判別する。消灯信号80は、消灯させる表示灯20のアドレス宛に送信される。
【0016】
制御部12aの機能は、マイコン、プロセッサ等により実現できる。また、記憶部12bの機能は不揮発性メモリ等のメモリにより実現できる。
【0017】
表示灯20は例えば蓄電池内蔵型の誘導灯である。表示灯20は、避難路を示す表示部21と、表示部21を照らす光源部22と、消灯信号80を受信する通信部23と、外部からの消灯信号80に応じて、非常時に光源部22を消灯させる制御部24とを備える。上述の通り消灯信号80が送信されるため、制御部24は、表示部21が非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する場合に、光源部22を消灯させることとなる。制御部24は、自己のアドレス宛の消灯信号80を受信すると、光源部22を消灯させる。制御部24の機能は、マイコン、プロセッサ等により実現できる。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る表示灯20の斜視図である。表示灯20は非常時に避難者が避難口まで安全に避難できる様に設置されている。表示灯20は定期的な点検が義務付けられており、保守されている。一般に、表示灯20は消防法に定められた位置と間隔で設置されている。
【0019】
表示部21は誘導方向を表示している。光源部22は表示部21の上に設けられ、表示部21を照らす。光源部22は、光源として例えば複数のLEDを備えた直線状のモジュールである。光源部22の光は表示部21の背面に設けられた導光体36に入射する。導光体36は下方ほど薄いため、導入された光を表示部21の方向へ照射できる。これにより、表示部21は背面から照射されて照明として明るく点灯し、注意喚起が促される。このように光源部22は、例えばエッジライト方式のバックライトである。
【0020】
図3は、実施の形態1に係る表示灯20を分解した状態を示す斜視図である。表示灯20は商用電源である電源14に接続されている。表示灯20には蓄電池25および、電源14をAC/DC変換して蓄電池25を充電する回路を内蔵している。蓄電池25は、常時は充電状態が維持され、概ね満充電状態が維持されている。停電が発生すると、表示灯20内に設けられた、光源部22の電源を電源14から蓄電池25に切替える切替回路によって、電源が切替えられる。このため、表示灯20は常時の点灯に加えて、停電時においても所定の時間、点灯を継続できる。なお、表示灯20は、停電時に外部の非常用電源装置から給電されて点灯を継続しても良い。
【0021】
蓄電池25は蓄電池コネクタ26に接続される。制御部24および切替回路は、ユニット27に設けられる。また、表示灯20の筐体の下面には蓄電池25の容量点検を自動で実施する為の自動点検スイッチ28、点検を行うための点検スイッチ29、リモコンからの信号を受信するためのリモコン受光部30、表示灯20の状態をモニタするためのモニタ31が設けられる。さらに、表示灯20の筐体には、表示灯20を天井に取り付ける際に用いられる電源穴32および表示灯20を壁に取付ける際に用いられる電源穴33が設けられる。電源穴32、33はノックアウトである。電源穴32、33を介して、電源端子台35と電源14は配線により電気的に接続される。
【0022】
表示灯20は、天井取付金具38と六角ナット37により、天井に取付けられる。表示灯20を壁に取付ける場合は、取付穴34が用いられる。取付穴34はノックアウトである。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る防災システム100を適用した施設を説明する図である。ここでは4階建てビルを例に説明する。施設には複数の表示灯20a~20lと複数の感知器54が設けられている。各階の左右には階段室があり、階段室は避難用の階段も兼ねている。右側の階段室の2階で火災が発生したとする。この火災は、階段室内に設置された感知器54により検出される。制御装置52は、複数の感知器54からの火災発生情報を収集し、感知器54のアドレスから火災発生位置が右側階段室の2階であることを把握する。
【0024】
火災発生位置情報が誘導灯制御システム10に通知されない場合、表示灯20は全て点灯し続ける。このため、2階右側の階段室前の表示灯20fも点灯し続け、火災が発生している階段室へ誘導するおそれがあった。本実施の形態では、制御装置12は火災発生位置情報を受け、不適切な避難路へ誘導する表示灯20を消灯させる。図4の例では、右階の階段室の2階以上に誘導する表示灯20f、20i、20lを消灯させている。
【0025】
図5は、実施の形態1に係る表示灯20の点灯状態の変化を説明する図である。図5の左側は、点灯中の表示灯20を示し、右側は消灯中の表示灯20を示す。表示灯20が消灯することで、表示を目立たなくすることができる。
【0026】
図6は、実施の形態1の変形例に係る防災システム100を適用した施設を説明する図である。表示灯20b、20e、20h、20kは、右側および左側の階段室へ誘導する2つの矢印が表示されている。このうち表示灯20e、20h、20kは、右階の階段室の2階以上へ誘導する表示を含む。表示灯20e、20h、20kのうち左矢印は適切な避難路を示すが、不適切な誘導表示である右矢印を含んでいるため、消灯させている。
【0027】
図7は、実施の形態1の変形例に係る表示灯20の点灯状態の変化を説明する図である。図7の左側は点灯中の表示灯20を示し、右側は消灯中の表示灯20を示す。表示灯20が消灯することで、表示を目立たなくすることができる。
【0028】
次に、本実施の形態の効果を説明する。従来の誘導灯では、誘導表示の先に火災発生位置がある場合に、避難者が火災発生方向に向かって非難してしまう可能性がある。特に防火扉の反対側が火災発生場所であった場合、避難者は誤って防火扉を開けて避難しようとするおそれがある。
【0029】
これを避けるために、例えば音声点滅形誘導灯において、防火扉の反対側の煙を感知する煙感知器が付帯し、煙感知器が火災を検知した際は音声による誘導または光の点滅を中止し、誤った誘導を抑制することが考えられる。しかし、この場合も、誘導灯そのものは点灯し続ける。このため避難者には、誘導灯が音声点滅機能付であり防火扉の反対側の火災を検知して音声点滅の動作を停止しているのか、音声点滅機能が付いていない通常の誘導灯であるのかを判別することが難しい。従って、やはり防火扉を開けて避難しようとするリスクがある。
【0030】
これに対し本実施の形態では、非常時に非常事態の発生位置に応じて表示灯20が消灯する。これにより、不適切な避難路への誘導を抑制できる。つまり、非常時に表示灯20を意図的に消灯させることで、こちらに避難してはいけない、または避難すべき方向ではないと言った意味を持たせることができる。本実施の形態では、常時点灯している表示灯20の消灯をすることにより、様々な国、地域、文化を超越して、不適切な避難路への誘導を抑制できる。例えば普段誘導灯がどのように表示されるかの認識が無い可能性がある来日外国人にとっても誤解なく、不適切な避難路への誘導を抑制できる。
【0031】
特に、誘導灯は定められた期間で定期点検されることで管理され、常時には点灯し、停電時にも定められた時間点灯を維持する。このため、故障等を除いて誘導灯は常に点灯し、非常口に至る経路または非常口であることを示していることが一般に認識されている。また、多くの人は誘導灯が消灯している状態を見たことが無いと想定される。このように、誘導灯が消灯している状態は、一般の人にとって常時にはあり得ないことであり、避難路として不適切であることを理解させ易い。なお、「誘導灯が消灯している時は、誘導灯の指示に従ってはいけない」、「誘導灯が消灯している時は、その先に火災が発生している」といった啓蒙を行うことで、本実施の形態の更に効果をさらに向上できる。
【0032】
また、夜間の震災などにより停電と火災が同時に発生した場合、避難者は非常用照明器具による最低限の明るさの下、誘導灯の指示に従って避難する。このような暗い環境では、避難路として不適切な方向へ誘導している表示灯20の表示を消しておけば、表示灯20は目立たないため、不適切な方向への避難を抑制できる。このように、火災発生時に誘導灯に対し何らかの重複表示をして進入禁止を示すのではなく、表示灯20を消灯して表示を目立たなくすることで、不適切な方向への誘導を抑制できる。本実施の形態によれば、災害時における心理的に緊張した状態においても、避難者が不適切な方向へ誘導されることを抑制できる。
【0033】
ここで、複数の防災灯が連携無く独立して設置されていた施設において、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の一環として、照明制御システムを介して防災灯を制御できるようにすることがある。これにより、例えば蓄電池の定期点検を、点検者を介さず自動で行う自動点検を導入することができる。この場合、各誘導灯、非常用照明器具などにアドレスが付与され、アドレスと点検結果とが紐づけられる。このように照明制御システムを導入する際に、本実施の形態の防災システム100の機能を盛込むことで、容易に本実施の形態の効果を得ることができる。従って、設備投資を抑制して防災システム100を構築できる。
【0034】
施設の構造、表示灯20および感知器54の数および配置は、上述したものに限定されない。防災システム100は少なくとも1つの表示灯20を備えれば良い。また、図5、7ではピクトグラムで避難路を表示する表示灯20の例を示した。これに限らず、表示灯20は、ピクトグラムに加えてストロボ光または音で避難者を誘導する音声点滅形誘導灯であっても良い。
【0035】
表示灯20の制御部24は、消灯信号80の受信が無くなった場合、または外部から復帰信号を受信した場合に、光源部22を再度点灯させても良い。
【0036】
また、本実施の形態では、消灯信号80に応じて光源部22を消灯させるものとした。これについて、消灯に代えて、表示部21の誘導表示の色と同じ色の光源を点灯させても良い。例えば誘導表示が緑色である場合、消灯信号80に応じて緑色光の光源を点灯させる。これにより、誘導表示が目立たなくなり、ピクトグラムを避難者に認識させないようにすることができる。
【0037】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る表示灯および防災システムについて適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る表示灯および防災システムについては実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0038】
実施の形態2.
図8Aは、実施の形態2に係る表示灯220の正面図である。図8Bは、実施の形態2に係る表示灯220の側面図である。表示灯220の表示部221は複数の部分221a~221cを有する。複数の部分221a~221cは、互いに異なる方向に誘導する複数の部分221a、221cを含む。光源部22は、複数の部分221a~221cに対応する複数の光源222a~222cを有する。制御部24は、光源222a~222c毎に点灯状態の切り替えが可能である。光源222a、222b、222cが点灯することで、それぞれ部分221a、221b、221cが点灯し、光源222a、222b、222cが消灯することで、それぞれ部分221a、221b、221cが消灯する。
【0039】
実施の形態1と同様に、光源部222は直線状のモジュールであり、部分221a~221cのエッジライトとして機能する。光源部222の照射方向は、部分221a~221cが並ぶ方向対して垂直である。導光体236は下方ほど薄いため、光源部222から導入された光を表示部221の方向へ照射できる。光源部222および導光体236は、少なくとも部分221a、221cを独立して照明できる様に設けられていれば良い。また、導光体236は部分221a~221cといった領域毎に別個に設けることが望ましい。別個に設けることにより、表示領域の境界の識別をより明確にすることが可能となる。
【0040】
光源部222の複数の光源222a~222cには、それぞれアドレスが付与されている。このため、制御装置12は光源222a~222cを別個に制御できる。
【0041】
本実施の形態では、制御装置12は非常時に表示灯220に消灯信号80を送信して、光源部22の少なくとも一部を消灯させる。制御装置12は、火災等の非常事態の発生位置に応じて、表示部221の複数の部分221a~221cのうち、不適切な避難路に誘導する部分に対応する光源を消灯させる。
【0042】
図9A~9Cは、実施の形態2に係る表示灯220の点灯状態を説明する図である。例えば左方向への避難が不適切な場合、制御装置12は、複数の光源222a~222cのうち光源222aを消灯させる。このとき制御装置12は、不適切な避難路に誘導する部分221aに対応する光源222aのアドレス宛に消灯信号80を送信する。これにより、表示灯220の制御部24は、複数の部分221a~221cのうち非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する部分221aに対応する光源222aを消灯させることとなる。この結果、図9Aに示されるように、左方向へ誘導する矢印部分が目立たなくなり、表示灯220に右側の正しい避難路のみを表示させることができる。
【0043】
逆に右方向への避難が不適切な場合、部分221cに対応する光源222cを消灯させる。この結果、図9Bに示されるように、表示灯220に左側の正しい避難路のみを表示させることができる。さらに、いずれの方向も避難路として不適切な場合は、光源222a~222cの全てを消灯させる。これにより、図9Cに示されるように、表示灯220そのものが消灯し、いずれの方向も不適切であることを避難者に伝えることができる。または、不適切な避難路への誘導を抑制できる。
【0044】
図10は、実施の形態2に係る防災システム200を適用した施設を説明する図である。図10の施設は、表示灯20b、20e、20h、20kが表示灯220b、220e、220h、220kに置き換わっている点が図6の施設と異なる。また、図10の表示灯220b、220e、220h、220kの表示部221および光源部222は左右に2分割されている点が図8Aに示される表示灯220と異なっている。ここでは、右側の階段室の2階で火災が発生したとする。
【0045】
図6の例では、中央部の表示灯20e、20h、20kは避難路として不適切な方向である右矢印を含んでいるため、全体が消灯した。この結果、正しい誘導方向の左矢印も消灯し、誘導表示としての機能が低下していた。これに対し本実施の形態では、表示灯220e、220h、220kのうち、火災が発生している右側の階段室へ誘導する右矢印部分のみを消灯させることができる。これにより、誘導表示としての機能低下を抑制できる。
【0046】
図11、12は、実施の形態2に係る表示灯220の点灯状態の変化を説明する図である。図11の左側は点灯中の表示灯220を示し、右側は部分的に消灯して右矢印の表示が目立たない状態となった表示灯220を示す。図12に示される通り、火災発生位置より右矢印または左矢印の表示部分を消灯させることができる。また、いずれの方向も避難路として適切ではない場合、表示灯220の全体を消灯して目立たなくすることができる。避難者は、消灯した表示灯220を見て、来た通路を戻り他の避難路を探すことができる。もしくは、避難者は消灯中の表示灯220に気付かず、後方の表示灯220を探して正しい避難路を進むことができる。
【0047】
本実施の形態では、表示部221が左右に2分割または3分割された表示灯220の点灯/消灯パターンを示したが、点灯/消灯パターンは上述したものに限定されない。一般に、誘導灯は左右への誘導を示す矢印が表示されることが多い。場合によっては、表示部221の矢印が上下方向を向いていても良い。この場合、光源部222と導光体236が構成する光源ユニットと、表示部221を、図8Aに示される位置から90°回転させれば良い。これにより、左右ではなく上下方向で点灯、消灯を切り替えることができる。
【0048】
図13は、実施の形態2の変形例に係る表示灯220の点灯状態の変化を説明する図である。表示部21の形状は、図13に示されるように長方形であっても良い。
【0049】
図8Aに示される表示灯220について、制御装置12は、複数の光源222a~222cを例えば光源222aと光源222b、光源222bと光源222cのグループとして制御しても良い。このように複数の光源222a~222cがグループとして制御される場合、光源部222および導光体236は、グループを独立して照明できる様に設けられていれば良い。
【0050】
実施の形態3.
図14は、実施の形態3に係る表示灯320の構成を示すブロック図である。表示灯320は、避難路を示す表示部21と、表示部21を照らす光源部22に加えて、進入禁止を示す表示部341と、表示部341を照らす光源部342を備える。制御装置12は、消灯信号80を送信して、非常時に光源部22を消灯させるとともに、光源部342を点灯させる。表示灯320では、通信部23が消灯信号80を受信すると、制御部24は光源部22を消灯させるとともに光源部342を点灯させる。
【0051】
図14は、実施の形態3に係る表示灯320の点灯状態の変化を説明する図である。図14の左側は、光源部22が点灯し光源部342が消灯している状態を示し、右側は光源部22が消灯し光源部342が点灯している状態を示す。表示部341は例えば×印により進入禁止を示す。表示部341は、例えば表示部21と重ねて配置される。表示部341の表示は、表示部21を照らす光源部22が点灯しているときは、透過して視認できない。なお、図15の左側では、説明のために表示部341の表示内容が点線で示されている。光源部22が消灯し光源部342が点灯することで、表示部21による避難路の表示が目立たなくなり、表示部341による進入禁止の表示が現れる。
【0052】
避難を促す意味を持つ表示と、進入禁止の意味を持つ表示とが誘導灯に2重に表示されると、避難者は誘導灯が不適切な避難路を示していることを認識できないおそれがある。本実施の形態では、避難路を示す表示部21を消灯させ、進入禁止を示す表示部341を点灯させる。これにより、不適切な避難路への誘導を抑制できる。
【0053】
表示部341は、表示部21と重ねて配置されなくても良く、例えば表示部341の周辺部または隣接する位置に配置されても良い。
【0054】
また、本実施の形態では光源部22が消灯することで、表示部21と表示部341の重複表示を避けている。表示部21と表示部341の重複表示を防ぐ別の方法として、光源部22または光源部342を表示部21の表示と同じ色で点灯させて、表示部21の表示内容を認識できないようにしても良い。表示部21において緑色と白色のコントラストにより避難路が表示されている場合は、緑色光を点灯させることでコントラストを下げて、避難路の表示を避難者に視認できないようにすることができる。この場合、表示部341の侵入禁止の表示を、赤色等の表示部21とは異なる色で表示することで、進入禁止の表示のみを行うことができる。
【0055】
本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【0056】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
避難路を示す第1表示部と、
前記第1表示部を照らす第1光源部と、
外部からの消灯信号に応じて、非常時に前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御部と、
を備えることを特徴とする表示灯。
(付記2)
前記制御部は、前記第1表示部が、非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する場合に、前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させることを特徴とする付記1に記載の表示灯。
(付記3)
前記第1表示部は、互いに異なる方向に誘導する複数の部分を有し、
前記第1光源部は、前記複数の部分に対応する複数の光源を有することを特徴とする付記1または2に記載の表示灯。
(付記4)
前記制御部は、前記複数の部分のうち非常事態の発生位置に対して不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源を消灯させることを特徴とする付記3に記載の表示灯。
(付記5)
前記制御部は、前記消灯信号の受信が無くなった場合、または外部から復帰信号を受信した場合に、前記第1光源部を再度点灯させることを特徴とする付記1から4の何れか1項に記載の表示灯。
(付記6)
進入禁止を示す第2表示部と、
前記第2表示部を照らす第2光源部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1光源部を消灯させるとともに第2光源部を点灯させることを特徴とする付記1から5の何れか1項に記載の表示灯。
(付記7)
避難路を示す第1表示部と、前記第1表示部を照らす第1光源部と、を備えた表示灯と、
非常時に前記表示灯に消灯信号を送信して、前記第1光源部の少なくとも一部を消灯させる制御装置と、
を備えることを特徴とする防災システム。
(付記8)
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記表示灯が不適切な避難路に誘導する場合に前記表示灯に前記消灯信号を送信することを特徴とする付記7に記載の防災システム。
(付記9)
複数の前記表示灯を備え、
前記制御装置は、非常事態の発生位置と、前記複数の表示灯のうち前記消灯信号を送信する表示灯との対応関係を記憶し、前記非常時に前記対応関係を参照して、前記複数の表示灯のうち不適切な避難路に誘導する表示灯に前記消灯信号を送信することを特徴とする付記8に記載の防災システム。
(付記10)
前記第1表示部は、互いに異なる方向に誘導する複数の部分を有し、
前記第1光源部は、前記複数の部分に対応する複数の光源を有することを特徴とする付記7から9の何れか1項に記載の防災システム。
(付記11)
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記第1表示部の前記複数の部分のうち不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源を消灯させることを特徴とする付記10に記載の防災システム。
(付記12)
前記第1光源部の前記複数の光源には、それぞれアドレスが付与され、
前記制御装置は、非常事態の発生位置に応じて、前記第1表示部の前記複数の部分のうち不適切な避難路に誘導する部分に対応する前記光源のアドレス宛に前記消灯信号を送信することを特徴とする付記11に記載の防災システム。
(付記13)
前記表示灯は、進入禁止を示す第2表示部と、前記第2表示部を照らす第2光源部と、を備え、
前記制御装置は、前記第1光源部を消灯させるとともに、第2光源部を点灯させることを特徴とする付記7から12の何れか1項に記載の防災システム。
(付記14)
非常事態の発生位置を検出する自動火災報知システムを備えることを特徴とする付記7から13の何れか1項に記載の防災システム。
(付記15)
前記自動火災報知システムは、非常事態の発生を検知する火災検知センサを備え、
前記火災検知センサは、熱または煙の少なくとも一方を感知することを特徴とする付記14に記載の防災システム。
【符号の説明】
【0057】
10 誘導灯制御システム、12 制御装置、12a 制御部、12b 記憶部、14 電源、20、20a~20l 表示灯、21 表示部、22 光源部、23 通信部、24 制御部、25 蓄電池、26 蓄電池コネクタ、27 ユニット、28 リセットスイッチ、29 点検スイッチ、30 リモコン受光部、31 モニタ、32、33 電源穴、34 取付穴、35 電源端子台、36 導光体、37 六角ナット、38 天井取付金具、50 自動火災報知システム、52 制御装置、54 感知器、56 火災検知センサ、58 検知回路、80 消灯信号、100、200 防災システム、220、220b、220e、220h、220k 表示灯、221 表示部、221a~221c 部分、222 光源部、222a~222c 光源、236 導光体、320 表示灯、341 表示部、342 光源部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15