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特開2024-130279オーディオ用D/Aコンバータ、DSD信号のD/A変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130279
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】オーディオ用D/Aコンバータ、DSD信号のD/A変換方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/74 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H03M1/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039916
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 真司
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AB00
5J022BA01
5J022CC03
5J022CD03
(57)【要約】
【課題】DSDネイティブのままで出力レベルを大きくすることが可能なオーディオ用D/Aコンバータを提供する。
【解決手段】シフトレジスタ210は、DSDデータのMビット(N<M≦N/m)を格納する。制御部220は、シフトレジスタ210に格納される1の個数がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードC1をセグメント型D/Aコンバータ230に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換するオーディオ用D/Aコンバータであって、
Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、
前記DSDデータのMビット(N<M≦N/m)を格納するシフトレジスタと、
前記シフトレジスタに格納される1の個数がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを前記セグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項2】
m=0.5,N=16,M=32である、請求項1に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項3】
前記シフトレジスタは、直列に接続されたM個のフリップフロップを含む、請求項1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項4】
前記シフトレジスタは、
直列に接続されたN個のフリップフロップと、
直列に接続された(M-N)個のフリップフロップと、
を含む、請求項1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項5】
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、
を含む、請求項2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項6】
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第3フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第4フリップフロップ群と、
を含む、請求項2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項7】
前記シフトレジスタは、
前記第1フリップフロップ群から前記第4フリップフロップ群の少なくともひとつには、遅延された前記DSDデータが入力される、請求項6に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項8】
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換するオーディオ用D/Aコンバータであって、
Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、
前記DSDデータのNビットを保持するシフトレジスタと、
前記シフトレジスタに含まれる1の個数がnであるとき、α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードを前記セグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項9】
前記制御部は、
前記シフトレジスタに含まれる1の個数nを取得するカウンタと、
前記個数nを表すバイナリコードをα倍する乗算器と、
前記乗算器の出力がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを生成するエンコーダと、
を含む、請求項8に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項10】
α=2(kは自然数)であるとき、
前記乗算器は、前記個数nを表すバイナリコードをkビット、左にビットシフトするビットシフタである、請求項9に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項11】
前記シフトレジスタは、前記DSDデータの連続するNビットを保持する、請求項8から10のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項12】
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第2フリップフロップ群と、
を含む、請求項8から10のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項13】
ひとつの半導体基板に一体集積化された、請求項1,2,8から10のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項14】
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する方法であって、
前記DSDデータの連続するMビット(N<M≦N/m)に含まれる1の個数pをカウントするステップと、
p個の1を含むNビットの出力コードを生成するステップと、
前記Nビットの出力コードを、Nビットのセグメント型D/Aコンバータによって前記アナログ信号に変換するステップと、
を備える、方法。
【請求項15】
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する方法であって、
前記DSDデータのNビットに含まれる1の個数nをカウントするステップと、
α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードを生成するステップと、
前記Nビットの出力コードを、Nビットのセグメント型D/Aコンバータによって前記アナログ信号に変換するステップと、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ信号処理に関し、特にDSD信号の再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ分野において、音源のハイレゾ化が進められている。こうした状況のもと、音源のネットワーク配信などではDSD(Direct Stream Digital)と呼ばれるフォーマットの普及が進んでおり、それに対応した再生装置が求められている。DSD方式は、それ自体は従来から存在しており、SACD(スーパーオーディオCD)などでも採用されていた。
【0003】
DSD方式は、PDM(パルス密度変調)の一種であり、オーディオ波形が1ビットのパルス密度変調されたビットストリームとして記録されたものであり、原理的にはそれをローパスフィルタを通過させることで、もとのオーディオ波形を再生できる。
【0004】
DSDフォーマットのオーディオ信号の再生方法は、非ネイティブ再生とネイティブ再生の2つに分けられる。非ネイティブ再生では、DSD信号を一旦、PCM(Pulse Code Modulation)信号に変換した後に、D/Aコンバータによってアナログオーディオ信号に変換する。
【0005】
一方、ネイティブ再生では、DSD信号をPCM信号に変換することなく、そのままD/A変換を行い、アナログオーディオ信号に変換する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DSD信号は、変調率が50%以下となるように変調されている。したがって、PCM信号とDSD信号を比較すると、DSD信号の方が、出力レベルが-6dB低くなる。この出力レベルの違いを解消するため手法として、2つのアプローチが考えられる。ひとつは、PCM信号の出力レベルを-6dB低下させ、DSD信号に合わせたあとに、アナログ信号に変換するものである。これはPCM信号のフルスケールが-6dB小さくなることを意味し、S/Nやダイナミックレンジなどの特性が悪化し、D/Aコンバータがもつ本来の性能が生かせなくなる。
【0007】
別のアプローチは、DSD信号を一旦、PCM信号に変換して、出力レベルを変化させたあとに、アナログ信号に変換するものである。この手法は、非ネイティブ再生となるため、DSDネイティブ特有の音質が損なわれるという問題がある。
【0008】
本開示はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、DSDネイティブのままで出力レベルを大きくすることが可能なオーディオ用D/Aコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様は、D/Aコンバータに関し、特に変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換するオーディオ用D/Aコンバータに関する。オーディオ用D/Aコンバータは、Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、DSDデータのMビット(N<M≦N/m)を格納するシフトレジスタと、シフトレジスタに格納される1の個数がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードをセグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、を備える。
【0010】
本開示の別の態様もまた、オーディオ用D/Aコンバータである。このオーディオ用D/Aコンバータは、Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、DSDデータのNビットを保持するシフトレジスタと、シフトレジスタに含まれる1の個数がnであるとき、α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードをセグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0012】
本開示のある態様によれば、DSDネイティブ再生で出力レベルを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係るオーディオ回路の回路図である。
図2図2は、制御部の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、比較技術に係るオーディオ回路のブロック図である。
図4図4は、一実施例に係るシフトレジスタの回路図である。
図5図5は、一実施例に係るシフトレジスタの回路図である。
図6図6は、シフトレジスタの構成例を示す回路図である。
図7図7は、シフトレジスタの構成例を示す回路図である。
図8図8は、実施形態2に係るオーディオ回路の回路図である。
図9図9は、図8の制御部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0015】
一実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータは、変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する。オーディオ用D/Aコンバータは、Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、DSDデータのMビット(N<M≦N/m)を格納するシフトレジスタと、シフトレジスタに格納される1の個数がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードをセグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、を備える。
【0016】
変調率mのDSDデータから取り出したMビットには最大でM×m個の1が含まれることとなる。このMビットに含まれる1の個数をカウントし、N個のセグメント型D/Aコンバータを制御することにより、信号レベルを、M/N倍に大きくすることができる。
【0017】
一実施形態において、m=0.5,N=16,M=32であってもよい。
【0018】
一実施形態において、シフトレジスタは、直列に接続されたM個のフリップフロップを含を含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、シフトレジスタは、直列に接続されたN個のフリップフロップと、直列に接続された(M-N)個のフリップフロップと、を含んでもよい。
【0020】
一実施形態において、シフトレジスタは、DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、を含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、シフトレジスタは、DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第3フリップフロップ群と、DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第4フリップフロップ群と、を含んでもよい。
【0022】
一実施形態において、シフトレジスタは、第1フリップフロップ群から第4フリップフロップ群の少なくともひとつには、遅延されたDSDデータが入力されてもよい。
【0023】
一実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータは、変調率Aを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する。オーディオ用D/Aコンバータは、Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、DSDデータのNビットを保持するシフトレジスタと、シフトレジスタに含まれる1の個数がnであるとき、α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードを、セグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、を備える。
【0024】
変調率mのDSDデータから取り出したNビットには最大でN×m個の1が含まれる。Nビットのセグメント型D/Aコンバータに供給されるNビットの出力コードには、最大でN×m×α個の1が含まれることとなり、信号レベルをα倍に大きくすることができる。
【0025】
一実施形態において、制御部は、シフトレジスタに含まれる1の個数nを取得するカウンタと、個数nを表すバイナリコードをα倍する乗算器と、乗算器の出力がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを生成するエンコーダと、を含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、シフトレジスタは、DSDデータの連続するNビットを保持してもよい。
【0027】
一実施形態において、シフトレジスタは、DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第1フリップフロップ群と、DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第2フリップフロップ群と、を含んでもよい。
【0028】
一実施形態において、α=2(kは自然数)であるとき、乗算器は、個数nを表すバイナリコードをkビット、左にビットシフトするビットシフタであってもよい。
【0029】
一実施形態において、α=2(kは自然数)であるとき、制御部は、シフトレジスタに含まれる1の個数nを取得するカウンタと、個数nを表すバイナリコードをkビット、左にビットシフトするビットシフタと、ビットシフト後のバイナリコードが表す値がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを生成するエンコーダと、を含んでもよい。
【0030】
一実施形態において、オーディオ用D/Aコンバータは、DSDデータの(α-1)×Nビット(αは、1<α≦1/mを満たす定数)を保持する追加シフトレジスタをさらに備えてもよい。制御部は、シフトレジスタおよび追加シフトレジスタに含まれる1の個数pを取得するカウンタと、カウンタの出力が表す値に対応する個数の1を含むNビットの出力コードを生成するエンコーダと、を含んでもよい。
【0031】
一実施形態において、オーディオ用D/Aコンバータは、ひとつの半導体基板に一体集積化されていてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0032】
(実施の形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るオーディオ回路100Aの回路図である。オーディオ回路100Aは、オーディオインタフェース回路110、D/Aコンバータ200Aを備え、ひとつの半導体基板に集積化されたDACチップである。
【0036】
オーディオ回路100AはデータピンDATAとクロックピンCLKを有する。オーディオインタフェース回路110は、外部の音源(不図示)から、DSDデータとDSDクロックCLKを含むDSD信号を受ける。DSD信号の変調率はmであるとする。現行の規格では、変調率m=0.5と定められているが、本開示の適用は、m=0.5のDSD信号には限定されず、任意の変調率を有するPDM信号に適用可能である。
【0037】
D/Aコンバータ200Aは、シフトレジスタ210A、制御部220A、セグメント型D/Aコンバータ230を備える。セグメント型D/Aコンバータ230は、たとえば電流セグメント型D/Aコンバータであり、複数N個(N≧2)の電流セグメント232を備える。複数の電流セグメント232は個別にオン、オフが切り替え可能であり、オン状態において等しい電流量を出力する。複数の電流セグメント232の電流が加算され、出力信号OUTが生成される。出力信号OUTは、電流信号であってもよいし、電流信号を電圧に変換して得られる電圧信号であってもよい。
【0038】
セグメント型D/Aコンバータ230は、スイッチドキャパシタ型のD/Aコンバータであってもよく、その場合、電流セグメント232に代えて、容量セグメントが設けられる。
【0039】
シフトレジスタ210Aは、M個のフリップフロップFF~FFを含み、DSDデータの隣接するMビット(ただしMは、N<M≦N/mを満たす整数)を格納する。DSDデータは、シフトレジスタ210A内を、DSDクロックCLKと同期して、1ビットずつシフトしていく。なお、シフトレジスタ210Aは、インタフェース回路110の一部であってもよい。
【0040】
一例として、セグメント型D/Aコンバータ230のビット数Nを16とする。また規格で策定されるDSD信号の変調率mは0.5である。このとき、シフトレジスタ210Aのビット数Mは、16<M≦32の範囲から選ぶことができる。以下では、M=32とする。
【0041】
制御部220Aは、シフトレジスタ210Aに格納されるMビットのうち、1の個数pをカウントする。そして、p個の1を含むNビットの出力コードC1を、セグメント型D/Aコンバータ230に供給する。出力コードC1は、N個のビットb~bを含み、i番目のビットbは、i番目の電流セグメント232_iのオン、オフを規定する。具体的には、b=1のとき、電流セグメント232_iはオンであり、b=0のとき、電流セグメント232_iはオフとなる。
【0042】
出力コードC1の生成手法は特に限定されない。もっとも簡易には、出力コードC1は端からpビットが1であり、残りが0であるサーモメータコードであってもよい。ただしその場合、使用される電流セグメント232が偏るため、D/Aコンバータの精度が低くなる。そこで、出力コードC1の複数のビットb~bの中で、1が時間的、空間的にまんべんなく分布するように、出力コードC1を生成するとよい。このために、たとえばDWA(Data Weighted Average)などの技術を利用することができる。
【0043】
図2は、制御部220Aの構成例を示すブロック図である。制御部220Aは、カウンタ222およびエンコーダ224を含む。カウンタ222は、シフトレジスタ210Aに格納される1の個数pをカウントし、カウント値pを示すコードC2を生成する。エンコーダ224は、コードC2を受け、出力コードC1に変換する。
【0044】
以上がオーディオ回路100Aの構成である。オーディオ回路100Aの利点は、比較技術との対比によって明確となる。そこで比較技術について説明する。
【0045】
図3は、比較技術に係るオーディオ回路100Aのブロック図である。D/Aコンバータ200Rは、シフトレジスタ210R、制御部220R、セグメント型D/Aコンバータ230を備える。セグメント型D/Aコンバータ230は、図1のセグメント型D/Aコンバータ230と同様にNビットで構成される。
【0046】
比較技術では、シフトレジスタ210RがNビットで構成されており、Mビットを有する実施形態1のシフトレジスタ210Aとビット数が異なっている。制御部220Rは、Nビットのシフトレジスタ210Rに格納される1の個数pをカウントし、p個の1を含む出力コードC1を生成する。
【0047】
以上がD/Aコンバータ200Rの構成である。続いてD/Aコンバータ200Rの動作を説明する。
【0048】
D/Aコンバータ200Rでは、シフトレジスタ210Rに格納される16ビットのうち、1の個数pは、0~8の範囲で変動する。したがって、Nビットの出力コードC1のうち1の個数pも、0~8の範囲で変化する。つまり、セグメント型D/Aコンバータ230の出力は、0~16をとりうるところ、DSD信号を再生する際には、セグメント型D/Aコンバータ230の出力は、0~8の範囲で変化することとなる。
【0049】
これに対して実施形態1に係るD/Aコンバータ200では、シフトレジスタ210Aに格納される32ビットのうち、1の個数pは、0~16の範囲で変動する。したがって、Nビットの出力コードC1のうち1の個数pも、0~16の範囲で変化する。つまり、セグメント型D/Aコンバータ230の出力は、0~16の範囲で変化することとなる。このことは、従来技術に比べて、信号レベルを大きくできることを意味する。
【0050】
なお、シフトレジスタ210Aおよびシフトレジスタ210Rは移動平均フィルタとしてみなすことができる。Mビットのシフトレジスタ210Aを利用した実施形態1では、比較技術に比べて、移動平均フィルタの時定数が長く(言い換えるとカットオフ周波数が低く)なっているが、これらの移動平均フィルタのカットオフ周波数は、可聴帯域より高いノイズの領域に位置しているため、音質に与える影響は小さいと言える。
【0051】
したがって、実施形態1に係るオーディオ回路100Aによれば、DSDのネイティブ再生を維持しつつ、再生信号の信号レベルを大きくすることができる。
【0052】
続いてシフトレジスタ210Aの別の構成例を説明する。図1のシフトレジスタ210Aは、M個のフリップフロップFF~FFがすべて直列に接続されていたが、本開示はそれに限定されない。
【0053】
図4は、一実施例に係るシフトレジスタ200Aaの回路図である。シフトレジスタ210Aaは、第1フリップフロップ群G1と、第2フリップフロップ群G2を含む。第1フリップフロップ群G1はN個のフリップフロップFFを含んでいる。第2フリップフロップ群G2は、M-N個のフリップフロップFFを含む。この構成では、図1のシフトレジスタ210Aに比べて、フィルタのカットオフ周波数を高くすることができる。
【0054】
図5は、一実施例に係るシフトレジスタ200Abの回路図である。シフトレジスタ210Aaは、第1フリップフロップ群G1と、第2フリップフロップ群G2を含む。第1フリップフロップ群G1はN個のフリップフロップFFを含んでいる。第2フリップフロップ群G2は、M-N個のフリップフロップFFを含む。第2フリップフロップ群G2の前段には、遅延用のフリップフロップFFdが挿入されており、第2フリップフロップ群G2には、第1フリップフロップ群G1に対して遅延されたDSDデータが入力される。
【0055】
図6は、一実施例に係るシフトレジスタ200Acの回路図である。シフトレジスタ210Acは、第1フリップフロップ群G1~第4フリップフロップ群G4を含む。第1フリップフロップ群G1および第2フリップフロップ群G2はそれぞれ、N/2個のフリップフロップを含んでいる。この構成では、第3フリップフロップ群G3および第4フリップフロップ群G4はそれぞれ、(M-N)/2個のフリップフロップを含んでいる。図6の構成によれば、図1のシフトレジスタ210Aに比べて、フィルタのカットオフ周波数を高くすることができる。
【0056】
図7は、一実施例に係るシフトレジスタ200Adの回路図である。シフトレジスタ210Adは、第1フリップフロップ群G1~第4フリップフロップ群G4を含む。第1フリップフロップ群G1および第2フリップフロップ群G2はそれぞれ、N/2個のフリップフロップを含んでいる。この構成では、第3フリップフロップ群G3および第4フリップフロップ群G4はそれぞれ、(M-N)/2個のフリップフロップを含んでいる。第3フリップフロップ群G3および第4フリップフロップ群G4には、遅延されたDSDデータが入力される。
【0057】
第1フリップフロップ群G1~第4フリップフロップ群G4に対する遅延量は特に限定されず、所望のフィルタ特性に応じて決めることができる。たとえば、第1フリップフロップ群G1の入力を基準としたとき、第2フリップフロップ群G2に対して1クロック、第3フリップフロップ群G3に対して2クロック、第4フリップフロップ群G4に対して3クロック、遅延したDSDデータを入力してもよい。
【0058】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るオーディオ回路100Bの回路図である。D/Aコンバータ200Bは、シフトレジスタ210B、制御部220B、セグメント型D/Aコンバータ230を備える。セグメント型D/Aコンバータ230の構成は、実施形態1と同様である。
【0059】
実施形態2において、シフトレジスタ210Bのビット数Nは、セグメント型D/Aコンバータ230のビット数と等しく、DSDデータのNビットが、シフトレジスタ210Bに格納される。
【0060】
制御部220Bは、シフトレジスタ210に含まれる1の個数がnであるとき、p=α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードC1を生成し、セグメント型D/Aコンバータ230に供給する。αは分数や小数であってもよく、その場合pはα×nを丸めた整数となる。
【0061】
以上がD/Aコンバータ200Bの構成である。続いてその動作を説明する。
【0062】
D/Aコンバータ200Bでは、シフトレジスタ210Bに格納される16ビットのうち、1の個数nは、0~8の範囲で変動する。制御部220Bにおいて、この個数nをα倍した値p、すなわち、セグメント型D/Aコンバータ230Bの電流セグメント232_1~232_Nのうち、オンとなる電流セグメントの個数は、0~8αの範囲をとる。α>1であるから、D/Aコンバータ200Bによれば、実施形態1と同様に、出力信号OUTの信号レベルを比較技術に比べて大きくすることができる。
【0063】
なお実施形態2では、シフトレジスタ210Bのビット数が比較技術と同じであるため、移動平均フィルタの時定数が比較技術と同じである。
【0064】
続いて実施形態2における制御部220Bの構成例を説明する。
【0065】
図9は、制御部220Bの構成例を示すブロック図である。制御部220Bは、カウンタ222、乗算器226、エンコーダ224を含む。カウンタ222は、Nビットのシフトレジスタ210Bに含まれる1の個数nをカウントし、カウント値nを示すバイナリコードC3を生成する。乗算器226は、コードC3を定数α倍し、コードC4を生成する。エンコーダ224は、コードC4を受け、p個の1を含むNビットの出力コードC1を生成する。
【0066】
α=2(kは自然数)である場合には、乗算器226は、バイナリコードC3を、kビット、左にビットシフトするビットシフタで構成することができる。ビットシフト後のバイナリコードC4は、nを2倍したpを表す。
【0067】
図8では、シフトレジスタ210Bは、直列に接続されたN個のフリップフロップFFで構成されたが本開示はそれに限定されない。たとえば、シフトレジスタ210Bは、図6に示したように、N/2個のフリップフロップを含む第1シフトレジスタ群G1と、N/2個のフリップフロップを含む第2シフトレジスタ群G2と、の組み合わせで構成することができる。この場合に、第2シフトレジスタ群G2には、第1シフトレジスタ群G1と同一のDSDデータを入力してもよいし、第1シフトレジスタ群G1の入力に対して、遅延されたDSDデータを入力してもよい。
【0068】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0070】
(項目1)
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換するオーディオ用D/Aコンバータであって、
Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、
前記DSDデータのMビット(N<M≦N/m)を格納するシフトレジスタと、
前記シフトレジスタに格納される1の個数がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを前記セグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【0071】
(項目2)
m=0.5,N=16,M=32である、項目1に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0072】
(項目3)
前記シフトレジスタは、直列に接続されたM個のフリップフロップを含む、項目1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0073】
(項目4)
前記シフトレジスタは、
直列に接続されたN個のフリップフロップと、
直列に接続された(M-N)個のフリップフロップと、
を含む、項目1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0074】
(項目5)
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、
を含む、項目2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0075】
(項目6)
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第2フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第3フリップフロップ群と、
前記DSDデータが入力される直列に接続されたN/2個のフリップフロップを含む第4フリップフロップ群と、
を含む、項目2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0076】
(項目7)
前記シフトレジスタは、
前記第1フリップフロップ群から前記第4フリップフロップ群の少なくともひとつには、遅延された前記DSDデータが入力される、項目6に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0077】
(項目8)
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換するオーディオ用D/Aコンバータであって、
Nビット(N≧2)のセグメント型D/Aコンバータと、
前記DSDデータのNビットを保持するシフトレジスタと、
前記シフトレジスタに含まれる1の個数がnであるとき、α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードを前記セグメント型D/Aコンバータに供給する制御部と、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【0078】
(項目9)
前記制御部は、
前記シフトレジスタに含まれる1の個数nを取得するカウンタと、
前記個数nを表すバイナリコードをα倍する乗算器と、
前記乗算器の出力がpであるとき、p個の1を含むNビットの出力コードを生成するエンコーダと、
を含む、項目8に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0079】
(項目10)
α=2k(kは自然数)であるとき、
前記乗算器は、前記個数nを表すバイナリコードをkビット、左にビットシフトするビットシフタである、項目9に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0080】
(項目11)
前記シフトレジスタは、前記DSDデータの連続するNビットを保持する、項目8から10のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0081】
(項目12)
前記シフトレジスタは、
前記DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第1フリップフロップ群と、
前記DSDデータの連続するN/2ビットを保持する第2フリップフロップ群と、
を含む、項目8から10のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0082】
(項目13)
ひとつの半導体基板に一体集積化された、項目1から12のいずれかに記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0083】
(項目14)
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する方法であって、
前記DSDデータの連続するMビット(N<M≦N/m)に含まれる1の個数pをカウントするステップと、
p個の1を含むNビットの出力コードを生成するステップと、
前記Nビットの出力コードを、Nビットのセグメント型D/Aコンバータによって前記アナログ信号に変換するステップと、
を備える、方法。
【0084】
(項目15)
変調率mを有するDSD(Direct Stream Digital)データをアナログ信号に変換する方法であって、
前記DSDデータのNビットに含まれる1の個数nをカウントするステップと、
α×n(αは、1<α≦1/mを満たす定数)個の1を含むNビットの出力コードを生成するステップと、
前記Nビットの出力コードを、Nビットのセグメント型D/Aコンバータによって前記アナログ信号に変換するステップと、
を備える、オーディオ用D/Aコンバータ。
【符号の説明】
【0085】
100 オーディオ回路
110 インタフェース回路
200 D/Aコンバータ
210 シフトレジスタ
220 制御部
222 カウンタ
224 エンコーダ
226 乗算器
230 セグメント型D/Aコンバータ
232 電流セグメント
G1 第1フリップフロップ群
G2 第2フリップフロップ群
G3 第3フリップフロップ群
G4 第4フリップフロップ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9