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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013029
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】風力発電装置を装備した船
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/32 20160101AFI20240124BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240124BHJP
【FI】
F03D9/32
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114928
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】721000413
【氏名又は名称】日高 修文
(72)【発明者】
【氏名】日高 修文
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA24
3H178AA43
3H178AA53
3H178BB90
3H178DD12Z
3H178DD26X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】地球温暖化対策として化石燃料使用量の削減策として風力等の自然エネルギーの利用が望まれているが、石炭や石油等による既存エネルギーの利用と比較したとき太陽光や風力等の自然エネルギーの利用はコストが高く、環境問題など課題も多く、その利用の大きな制限となっている。
【解決手段】本発明は台風等の強風を利用して発電できる風力発電装置と水素製造設備及び/又は金属精錬装置を装備した船に関し、該発電装置で得た電気により水の電気分解で水素を製造し及び/又は該電気で直接金属精錬により又は水素を利用した還元金属精錬法により金属精練を行うことで地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量削減し、低コストで水素又は/及び金属を製造できる総合システムを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置を装備した船であり、
(ア) 当該風力発電装置が主として風速10m/秒以上の強い風力を利用した発電装置であり、
(イ) 当該船は時速10km以上の速力で走航可能であり、
(ウ) 当該風力で発電した電力を利用して水素を製造するための水の電気分解装置を装備しており発生させた水素を保存するための水素の保存装置を装備している又は/及び当該風力発電した電力により直接精錬法により、又は製造した水素を用いた水素還元精錬法により金属精錬を行うための金属精錬装置を装備している、
ことを満足する風力発電装置を装備した船。
【請求項2】
風力発電装置としては縦型で設置可能なATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等を含むサボニウス風車やジャイロミル型風車やそれらの複合型の風車であることを満足する請求項1の風力発電装置を装備した船。
【請求項3】
縦型の風車の風車部分を支える軸受けが下側に加えて上側にも軸受けを設けた両持ち(両端支持型)とした風車であることを満足する請求項2の風力発電装置を装備した船。
【請求項4】
風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングの中に、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸が設置してあり、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根が固定してあり、該ロータ軸に取り付けられた受風羽根のロータ径は円筒型のケーシングの内径より小さく風取り入れ窓から取り入れられた風の風力により軸の中心線を中心として該ロータ軸は回転し、ロータ軸を回転させた風は排出口より随時排出され、回転する該ロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電することを特徴とする風力発電装置を装備して発電し、得た電力で直接精錬法に、又は得た電気を用いて水を電気分解により水素を製造し、この水素を用いた水素還元精錬法により金属精錬を行うための金属精錬装置を装備した請求項1の風力発電装置を装備した船。
【請求項5】
(ア) 円筒型のケーシングの内径は0.5m以上から50mで、長さが0.5mから100mであり、
(イ) 円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線をもつロータ軸が設けてあり、
(ウ) 該ロータ軸の直径は5cm以上200cm以下であり、ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けた軸受にて受け止められて回転するようになっており、
(エ) ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定して風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、
(オ) 該板状の個々の受風羽根の大きさは、風車ランナのロータ径が円筒型のケーシングの内径より小さくなる高さで、長さは10cm以上で円筒型のケーシングの長さより小さく、
(カ) 個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、
(キ) ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されてあり、
(ク) 風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている
ことを満足する請求項1の風力発電装置を装備して発電し、得た電力で直接精錬法に、又は得た電気を用いて水を電気分解により水素を製造し、この水素を用いた水素還元精錬法により金属精錬を行うための金属精錬装置を装備した金属精錬船請求項3の風力発電装置を装備した船。
【請求項6】
当該風力発電装置が主として風速25m/秒以上の強い風力を利用した発電装置であることを満足する請求項1の風力発電装置を装備した船。
【請求項7】
船の甲板の面積が 400m2以上であることを満足する風力発電装置を装備した請求項1の風力発電装置を装備した船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、地球温暖化による大規模な気候変動が地球規模で顕在化しているが、この地球温暖化の主たる原因が産業に欠かすことのできない化石燃料の使用であることが知られている。化石燃料は必然的なその使用に伴う燃焼熱の発生に加えて、燃焼で副成する二酸化炭素ガスも大気圏に蓄積されてその保熱作用により地球の温暖化が促進されることが知られており、このため、その対策として、化石燃料使用量の削減が叫ばれているのであり、その一つの有望な削減策は自然エネルギーの利用であり、その一つは風力を利用した風力発電の活用であり、とりわけ洋上風力発電が有望視され、欧州等の諸国の海岸沿いに洋上風力発電装置が多数設置されつつある。
【0002】
本発明もまた洋上風力を活用するシステム関するが、現状の洋上風力発電装置の問題点、即ち基本的に固定又は半固定式の現状の洋上風力発電装置の問題点を解決するもので、本発明は洋上を自由移動できる風力発電装置を装備した船としての風力発電システムに関する。
現状の洋上風力発電装置が海岸沿いに固定又は半固定で設置される主たる理由は該風力発電で得た電力を送電ケーブルにより陸地に送電して通常の化石燃料や原子力による発電の電力を補完して共に利用するためであり、陸地では既存の電力インフラをそのまま利用できるという大きなメリットがあるためであるが、洋上風力発電としての効率を追跡したものではない。これに対して、本発明の風力発電装置を装備した船はかかる既存の実質的に固定された場所で風力としてもその頻度の面でも最適とは言えない洋上の風を受け身で受けて発電する洋上風力発電装置とは全く発明の思想が異なるもので、洋上風力発電に適した風力を現在の気象学を利用して洋上で移動追跡し、この移動する船上で洋上風力発電を行ない、得た該電力で実質的に同一の船上に装備した電気分解装置により水素を製造するシステムであり及び/又は該電力を直接利用して直接電気精錬により及び/又は電気分解装置により得た水素を用いた水素還元精錬によりアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、レアアース、鉄などの金属の鉱物や粗担体や化合物を精錬するシステムである。ここで得た水素は公知の技術や設備を用いて一時的に液体水素にして又は高圧圧縮して実質的に同一の船中に保管するための設備を装備して保管することも可能である。また、一時保管した水素を用いて船中に設置した公知の発電装置で発電して電力を得ることもできる。
【0003】
本発明が目的とするのは既存のシステムでは想定されない効果、特にコスト的を顕著に低減することである。即ち、本発明の風力発電装置を装備した船は、何時風が吹くか、どの位吹くか正に自然任せで、真に風のエネルギーとして高い強風のときは装置保護のために装置を止めるように設計されている既存の風力発電装置とは異なり、自然エネルギーである強い風力が確実に、無限に、しかも集中して入手可能な場所、例えば台風や低気圧などが頻度高く発生する南太平洋や、南緯40度から50度にかける海域などの偏西風による強風が高頻度で発生する場所にて、又はそのような季節により強風の得られる場所などを利用すべく移動追跡することも可能であり風力発電の効率が著しく高めることが可能であり、しかも、その風力発電の場で該電力を用い水素を製造し、及び/又はその風力発電の場で該電力を用い直接金属精錬により及び/又は得た水素での還元精錬により金属精錬を行ない水素及び/又は各種金属やその化合物を画期的な低コストで製造することも可能となり、それにより二酸化炭素排出量の削減や地球温暖化防止に寄与するものである。
【背景技術】
【0004】
地球温暖化対策としての化石燃料使用の削減、二酸化炭素排出量削減が可能な有力な発電方法として太陽光、風力、波力、地熱などの自然エネルギー(以下、総括的に「新エネルギー」と称する)を利用した発電が有望視され、その比率はたしかに年々高まってきている。しかし、依然としてその利用比率は全発電電力量の10%程度に過ぎない。これは石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(以下、総括的に「既存エネルギー」と称する)と比較した場合の新エネルギー発電のコストが非常に高いことが原因である。このため現在、世界的にも新エネルギー発電は既存エネルギー発電の設置が困難な場所や地域での例を除けば、環境対策や温暖化の要因の一つである二酸化炭素排出量の削減のための手段として経済面をある程度犠牲にして政策的に実施されているというのが実情である。このためその普及は遅々としている。ところが、令和3年1月9日に放映されたNHKスペシャル 気候大異変という番組によれば「地球シミュレータの警告として世界屈指の計算速度を誇る日本のスーパーコンピューターの地球シミュレータは、私たちの未来に横たわる危機を子細に予測している。100年後、世界のCO2濃度は倍増し、気温は最大4.2度上昇する。東京は奄美大島付近の気温になり、真夏日の日数は100日以上に増加。気温の上昇は世界中で熱波による死者の増加という突然の災害をもたらす」と世界の著名な環境学者達の意見なども含めて報道している。地球温暖化対策は絶対的に必要なことであり、そして何より緊急なことである。地球上で記録的な熱波や、氷河崩壊、大規模山林火災などが頻発している。
【0005】
かくも緊急の問題であるにも関わらず既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法が開発されない限り今後とも既存エネルギー発電を全面的に代替できるとは考えられていない、少なくともその変換速度は遅々たるものとなる、そしてそれは現在の利益優先の経済学上では正論とされている。どこの国も自国の経済を犠牲にして他国に先駆けて既存エネルギーを新エネルギーに変換することはない。どの企業も利益の出ない事業は実施しない。これらはエネルギーのコストの問題であり、現在、それに対応できる解決策がないのである。即ち、現実問題として化石燃料である天然ガス、石油、石炭が妥当と思われる価格で入手できる限り、新エネルギーの利用は世界の国の努力目標に過ぎない。その間、地球の温暖化は着実に進行し環境破壊は益々深刻化している。既存エネルギーにコスト的に勝る新エネルギーが必要な理由である。
【0006】
将来のエネルギー源として及び大気汚染防止の観点から期待されている水素についても、現状は陸上で通常の発電で得た電力を用いた水の電気分解や、石油成分の分解・精留、金属と酸の化学反応などにより得ているが、その元となる電力は水力や原子力などを除けば地球温暖化の原因となる化石燃料である石炭、石油、天然ガスから得ており環境対策にはなるが地球温暖化対策にはならない。現在、世界的に発電に使用する燃料を石炭から石油に、さらに石油から天然ガスへの転換が進められているが、これらは単位エネルギー当たりの発生二酸化炭素の排出量を削減するだけで二酸化炭素そのものの発生を止めるものではなく地球温暖化を多少遅らせるだけで本質的は対策ではない。二酸化炭素を発生しない原子力発電も地球上での新たな発熱を伴うので地球温暖化を促進すると推定され地球温暖化になるか不明である。
【0007】
地球温暖化の二次的原因である二酸化炭素についてはその排出量の削減が必要で、鉄鋼業などでの直接的な石炭などの化石燃料使用量の削減、さらに直接的又は間接的に莫大な電力を使用している金属精錬での削減も必要である。
また、多くの金属の最終的な精錬は電気精錬によって行われる。アルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、シリコン、レアアース、鉄などの金属は工業においても日常生活においても欠かすことのできない基本的資材であり莫大な量が使用されており、それに対応して毎年莫大な量製造され、それらの金属の精錬工程では莫大な量の電力が消費されている。それに必要な電気は既存エネルギーを用いて製されている。即ち、間接的であるが地球温暖化し、莫大な二酸化炭素を排出させているのである。
【0008】
例えば、アルミニウムの場合、その製造コストの実に30%が電力コストという報告がある。鉄の場合、鉄鉱石から鉄を製造する溶鉱炉では製造する鉄に相当する量のコークス(石炭)が使用されている。世界鉄鋼協会によると2019年の世界粗鋼生産量は約18億トンであり、この値から使用されたコークス(石炭)の量は製造する鉄と同量の約19億トン程度と推定されるが、C+O2→CO2の化学量論的にはそのコークスから排出される二酸化炭素は70億トンと計算されるのであり、この途方もない値は世界の二酸化炭素総排出量330億トン(2018年)の実に20%に相当する。鉄鋼業では溶鉱炉からの二酸化炭素排出量を削減または凍結して封じ込めるための方法等が種々適用されておりこの鉄鋼業での二酸化炭素総排出量がそのまま直ちに大気に放出されることはないが、石炭を使用する製鉄法は二酸化炭素排出量削減の観点からも水素還元精錬へと変換は必定と考えられている。
【0009】
金属精錬に限定して考えた場合、直接電気精錬にしても将来的な水素還元精錬が有望視されているが、水素還元精錬に変えたとて、その水素が既存エネルギーで製される限り問題の解決にならない。水素をどのように製造するか詰るところ、いずれの場合も、その解決は発電の問題であり電気を如何に低コストでしかも二酸化炭素を排出することなく入手するか、そしてその電力を如何に効率的に水素製造や金属精錬に利用するかの問題である。
本発明は実質的に化石燃料を全く使用せずに水素を製造する方法、化石燃料を全く使用せずに金属を製造する方法に関し、しかも、何よりも既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる新規な技術的思想と方法を提供するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる課題、特にエネルギーコストの問題を解決するために鋭意思慮し検討した結果、自然エネルギーである洋上風力、しかも洋上風力発電では設備保全上(カットオフ)して使用が避けられている台風などの強風も利用して発電しその電力を利用して水素を製造し、その水素を既存の化石燃料に代替して使用することが有利であること、及び/又は洋上風力発電で得られる該電力を電力使用量が特に大きく直接的にまた間接的に二酸化炭素排出量も多い金属精錬を組み合わせることが有利であることを見いだし、即ち、既存エネルギーよりも低コストで新エネルギーを利用できることを見いだし、既存の知識と技術を総合的に俯瞰し、それらを巧妙に組み合わせ、さらには新規な技術を取り入れて応用して総合的システムとして完成させたものである。即ち、まず第一に重要なこととして既存エネルギーよりも低コストで新エネルギーを大気を汚染することなく利用できること、次に重要なこととして、しかも地球のエネルギーバランスに影響を与えないでそのことを実現することである。それが既存の技術ではできていない。例えば、時に理想のエネルギーと言われる核融合発電は、それが実現できたとしても地球上にて全く新たなエネルギーを追加することとなる、それが地球温暖化に与える熱の影響は議論されていない。自然エネルギー以外のエネルギーが地球で新たに発生すれば「孤立系のエネルギーの総量は変化しない」という物理学法則であるエネルギー保存の法則上、地球の温度はさらに上昇するのではないか。
本発明はかかる解決しようとするものである。以下、本発明の効果、用途について、個々に説明する。
【0011】
新エネルギー発電の代表的な現実的な従来技術として例えば、太陽光発電が各家庭の家の屋根に取り付けたソーラパネルによる家庭用電源などとして政府の奨励金もありかなり広く普及しているが、全消費エネルギーに対する太陽光発電の全発電量に対する比率は数%程度にすぎず今後、太陽光発電の発電効率が高まり、そしてその施行コストが低減できるように大幅な技術革新が進むと家庭用などでの普及は拡大すると予想されるが、工業用を含めて今後、この比率が劇的に上がるとは予想されていない。太陽光発電はエネルギーのわずか数%を電気に変換し発電量として利用しているに過ぎない。太陽光はあまりにもエネルギー密度が小さく、工業用として利用する発電装置を設置しようとすると途方もない敷地を必要とし、それから得られる電力コストも石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(既存エネルギー)と比較して2倍以上、時には4倍近くなる状況は変わらない。何故なら、既存エネルギーのコストも技術革新で下がるのである。
【0012】
一方、世界的には太陽光発電よりも風力発電が普及している。風力も地上に広く小さいエネルギー密度で分布しているが夜間でも風さえあれば発電できるというメリットがあり、大型化により投資当たりの発電効率は太陽光発電より優れているとされており、特に人口密度も小さく環境意識の高い欧州諸国でその比率が高く、広大な住民非住居の土地を持つ中国でも、非住居地区を利用するなどして、その比率は未だ高くないが量的には採用が相当に進んでいる。一方で、発電装置からの騒音、台風などの強風に対する対策、地震対策、景観などの問題のため人口密度が高い日本ではあまり普及していない。風の力を利用するという意味で陸上でなく洋上でのいわゆる洋上風力発電は四方を海に囲まれた日本に敷地的に向いている側面が多いと考えられている。しかし、洋上風力発電も特に、オランダや英国を中心とする欧州で導入が進んでいるが日本ではその将来的な可能性とは別で未だ実証実験段階である。
【0013】
日本政府は2020年12月15日の官民協議会で2040年までに日本全国で洋上風力設備を最大4500万キロ・ワットとし、発電コストは既存の火力発電よりも安くするというチャレンジングな目標を掲げている。しかし、日本で実際に実行しようとすると環境アセスメントや沿岸での漁業補償の問題、日本の近海は水深が深いという問題、年々巨大化している台風に対する対策、極めつけは地震や津波に対する対策、洋上発電装置からの陸上への送電と送電ロス対策など多くの未解決課題があり、さらに確立されている既存発電(既存エネルギー)の継続利用やそこでの更なる技術革新の進行があり、新規投資の場合であっても特に天然ガスを利用した最新の既存発電(既存エネルギー)との投資効果比較等から二酸化炭素排出量削減を目的とした政府補助金など政策的に強力な後押しがない限り洋上風力発電は容易に普及しないと思われる。
【0014】
これらは偏に既に確立されている既存エネルギー発電に対して新エネルギー発電がコスト的に優位でないからであり、コスト的に優位でないものを環境保全という大義名分や権力による強制力だけで継続的に早期に普及させることはできない。2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロにするという日本政府の公約を実現するためには結局、今後特段の技術革新が無い限り既存エネルギー発電より割高となる費用を国の予算で、ひいては国民の追加的な負担で補填するということになる可能性が高く、地球が抱える問題からいえばそれも仕方ないことと考えられている。特に、巨大化した台風では今後風速70m/秒以上の強風が高い頻度で日本に来襲することが現実問題として予測されており洋上設備における設備対策費は大きくなる。また欧州と全く異なり日本は地震国であり地震とそれに伴う津波の可能性は単に可能性だけでなく現実に高い確率で起きると多くの学者により予測されておりその対策も検討課題であるが、そもそも巨大津波に対する対策が洋上固定設備できるかという課題があり、これも結局、そのような事態に対する損害保険をかけることとなる可能性がある。例えば、2011年3月の東日本大震災でマグニチュード9.0の地震とそれに伴う最大40メートル近い津波では東北地方沿岸に設置された何百キロに及び海岸線に設置されていた巨大で数キロ以上の防波堤が根こそぎ破壊されていたのを誰もが目撃した。津波に襲われた沿岸の距離は600kmを超えたのである。今後、巨大な津波が襲わないと言える沿岸を日本で考えることは難しい。想定以上の台風、地震、津波などは仕方がないという考えは2011年3月の東日本大震災で経験からあってはならない考えである。
【0015】
しかし、このような地震や津波に耐え得る固定型の洋上風力発電はできない。そして、洋上風力発電の比率が高まるほどかかる災害発生時の日本経済への影響ははかり知れず、地上の設備の復旧と異なり洋上設備の復旧は数年が必要で、一度そのような自然災害が起きれば経済や国民生活に与える影響は正に壊滅的、致命傷となる可能性もあり、結局、石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(既存エネルギー)もBCP(事業継続計画)保険として設備保全していつでも使用可能な状態で並行して維持することが日本経済の存続のために必定であり、その必要規模からしてその維持費用は莫大となる。日本の洋上風力発電ではその費用を考慮しておかなくてはならない。東日本大震災での原子力発電装置への損害は莫大であった。結局この時も休止中の既存の火力発電装置が復旧されて急場を凌ぎ使用された。東日本大震災後10年以上経過しても日本経済への影響は継続している。
【0016】
即ち、永年の技術開発により確立され、さらに今なお急速に技術的進歩を遂げている既存発電(既存エネルギー)のコスト競争力は強大である。それにコストで勝てる自然エネルギー(新エネルギー)発電は一部の古い水力発電以外には現在は存在しない。従来の自然エネルギー(新エネルギー)は地球上に広く低い密度で存在する太陽光、地上風力、洋上風力、地熱などを利用して広大は面積を使用して発電し、それを既存の送電装置に接続して通常に電気として使用するものであり、当然インフラストラクチャーは巨大となり、結果、投資額も保全などの管理費用も莫大となり、長期的に考えて既存発電(既存エネルギー)に対してコスト的に不利となる。
【0017】
かかる事情から、地球温暖化の原因となる化石燃料に代わり得る水素の利用においても、また直接的又は間接的に莫大な量の二酸化炭素を排出し、莫大な電力を使用するアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、レアアース、鉄などの金属の精錬においても既存発電(既存エネルギー)の使用がコスト的に有利であり、敢えて自然エネルギー(新エネルギー)発電に限定して使用する理由がない。本発明の目的の一つである二酸化炭素排出量削減は達成できない。即ち、既存発電(既存エネルギー)よりも低コストである自然エネルギー(新エネルギー)発電は存在しておらす、代替できる技術もシステムも存在していないのである。
そして地球温暖化はますます確実に悪化する。
【0018】
上記の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、移動できる船上に構築した洋上風力発電で電力を得て該電力を用いた電気分解での水素の製造及び/又は該水素を用いた金属還元精錬や該電力を直接用いた直接電気精錬によるアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、シリコン、レアアース、鉄などの金属の鉱物や粗担体や化合物の製造を、二酸化炭素の排出を無くし、しかも既存発電(既存エネルギー)を利用した場合よりも低コストで行うという画期的システム・方法を提供することである。かくして得た水素は確実に化石燃料に代替されていく。
【0019】
本発明では、かかる水素製造及び/又は金属精錬を行うシステム全体、即ち風力発電装置及び精錬装置、さらに必要なら水の電気分解による水素発生装置と水素貯蔵装置を洋上移動が可能な実質的に1隻(連動して移動する2隻以上の船は1隻とする)の船舶上に構築し、必要とするエネルギーは風力発電装置により洋上風力を利用し風力発電して作り、該電力で水素を製造し貯蔵し、及び/又は得た電力で船舶上にて直接電気精錬により、又は該電力で製造した水素を用いて水素還元精錬によりアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、レアアース、鉄などの金属の鉱物や粗担体や化合物を精錬する。
【0020】
本発明で陸地や海岸や艀(バージ)上ではなく、洋上移動が可能な船舶上にシステムを構築する理由は、
まず第一は、自然エネルギーである強い風力が無限に、しかも集中して入手可能なエネルギーの観点で好ましい場所は地球上の固定された場所ではなく、例えば台風や低気圧などが頻度高く発生する南太平洋の場所とか台風や低気圧などが現実に発生している場所や、南緯40度から50度にかける海域などの偏西風による強風が高頻度で発生する場所などであり、それは時時刻刻変動する場所であるが気象学の進歩によりその場所は予測可能となっておりその変動に合せて移動追跡することで固定された場所に比較して風力発電の効率を著しく高めることが可能であるためであること、
第二は、洋上風力発電は有力な方法であるが固定場所での洋上風力発電では、それが如何に陸地に近い場合でも得た電気を陸上などの固定された場所に送電する必要がありそのための設備投資費用が莫大であり、その上、確実に発生する送電ロス(通常、発電量の約10%と言われている)によるコストが莫大となるが、洋上風力発電しその地で、即ち洋上風力発電で得た該電力を実質的に送電せずに地産地消で使用することで送電設備や送電ロスがなくなりコスト上非常に有利であること、また、本発明のシステムで最終的な産物が水素である場合も、その水素を国内外の消費地に一番近い場所に輸送してその水素を燃料として利用して発電や動力源として利用できること、
第三は、洋上風力発電の場合、陸地に近い場所では近隣地区との騒音問題や沿岸漁業業者との間の莫大で継続的な漁業補償問題、景観問題など多くの立地障害等があり、洋上での設備保全にも困難が伴うこと、
第四は、台風や地震や津波など強力な自然災害の多い日本では固定された洋上風力発電装置の保護には大きな投資が必要であり、時には設備の保護それ自体が建築技術上及び経済的な不可能でありBCP(事業継続計画)保険上、既存の陸上発電装置(火力発電など)を同時並行的に維持する必要があることである。例えば、民間会社により大規模な固定された洋上風力発電装置を設置させ、それに国が依存した場合、一度、その装置が自然災害などで破壊されたとき国の経済は破綻するので、儲けるのは民間会社、大被害を受けるのは国となる。2011年3月の東日本大震災で東京電力が福島に設置した大規模原子力発電装置が被災したときそのような状況となった。津波情報を得て避難できるものとして船は適している、危険も分散できる。
【0021】
本発明では洋上発電で得た電力をその船舶上で直接水の電気分解で水素を製造し保存するなどして直接利用し、及び/又は該水素を利用した水素還元洗練により又は風力発電で得た電力で直接的に電気精錬により金属精錬を行う。
即ち、地球温暖化対策として、又排気ガス対策として今後ますます必要性が高まる水素を既存発電(既存エネルギー)を用いることなく、しかもそれよりも低コストで製造でき、及び/又は現代社会で必須なっているが莫大なエネルギー、電力を必要とする金属精錬を二酸化炭素を排出することなく、しかも正に地産地消で送電ロスもなく既存発電(既存エネルギー)を用いる場合よりも低コストで製することができ、目的となる水素を得、精錬された金属類を得ることができるのである。
【0022】
本発明の構成要素の自然エネルギーである強い風力を追跡して移動できるための移動できる船、船上での洋上風力発電、船上で地産地消にて得た電力による水素製造及び/又は金属精錬は、既存の技術や設備を用いることのできるシステムであるが、これらのどの基本的要素が欠けても本発明の目的である強力な既存発電(既存エネルギー)コストに勝る自然エネルギーの利用を達成できないのである。しかも、繰り返し説明した通り本発明の目的は既存エネルギーでのコストに勝る自然エネルギーの利用法システムであり、後述するとおりシステムの規模が小さい場合、絶対に目的を達成できない。実験室レベルなど小規模で風力発電して水素を製造しても、それは地球温暖化の対策にならないし、既存エネルギーに勝る低コストを絶対に達成できないし、産業上の用途はない。本発明の思想を想像させるものでもない。
【0023】
経済学では「規模の経済」という概念があり、それは一定の生産設備の下で、生産量や生産規模を高めることで単位当たりのコストが低減されるというものであるが、本発明での本システムの適した規模は、単位当たりのコストを低減するということでなく、第一は本発明の船は台風などの強風を利用するために小さい船では安定性及び安全上対応できないこと、第二は必須構成要素が多くしかも製造した製品たる水素や金属等を妥当な期間実質的に同一船内で保管することが必要であり小さく規模の船では対応できないこと、第三は地球温暖化対策は緊急のことであり本発明の構成要素となる設備は可能な限り既存の技術や商業化設備を利用して早期対応できるようにするのが望ましく、その場合大きな設備設置面積を確保できる大きな船が必要となるのである。当然、その上で、第一の目標である既存発電(既存エネルギー)コストに勝る自然エネルギーのコストを達成するために大きなシステムは有利となる面はあるが、現在真に必要となる自然エネルギー活用量は莫大であり、そのために可能な限り大きなシステムとすることが望ましく、しかも地球上の利用可能な洋上の強風は無限にあるのである。
【0024】
前述したとおり、例えば台風や低気圧などが頻度高く発生する南太平洋の場所、現実に発生している場所や、南緯40度から50度にかける海域などの偏西風による強風が高頻度で発生する場所は経時的に変動するのでその変動に合せた場所にて、又はそのような強風の季節を移動追跡できるか否かで風力発電の効率は圧倒的に変動する。本発明の風力発電では、近年急速に発達した人工衛星を利用した最新の気象衛星と気象学から低気圧、台風、偏西風、風速、風向きなどの情報を得て洋上を自由に航行し、得られる風力から風力発電を最適化して移動できようすることで、固定された位置で風を待っている通常の風力発電とは効率が異なり、しかも通常の風力発電装置が対象としていない(設備保全のためにカットオフしている)強風にも対応とすることができるのである。
【0025】
風力発電そのものは広く商業化された汎用となった技術であり、風力発電装置としては多くの確立された種類があり、多くは既存技術として実用化され広範に使用されている。本発明ではそれらの既存の風力発電装置を用いることが可能である。それらの既存の風力発電装置は風力発電装置に使用されている風車の違いによりプロペラ型、多翼型、ダリウス型、サボニウス型、それらの組み合わせ型などの種類があり、既存の産業利用方法や設置方法での代表的なものはプロベラ型の風車であり、プロベラ型の受風羽根により2~15m/秒程度(特に、5~10m/秒)の低速の風を固定された位置にて受け身で利用することを目的としたものである。
【0026】
代表的な装置の固定形のプロペラ型では、1基あたりの発電能力を高めるためにプロベラのブレードもますます巨大化しており、最近ではロータ(回転体)直径の大きさが100m以上のものも建造されている。例えば、GE Renewable Energy社のHalide-13MXという機種ではロータ径が220mで設備の高さは実に260mで定格出力は1基で12000kwとされている。これらの風車は風向きに対してブレードの受風面で風を受けており、ブレードの設計により空気の流れで羽根の周りに揚力を発生させてそれを利用して高い回転を得て、その回転を増速機でさらに高い回転に転換させて効率よく発電している。しかし、これらの既存の風力発電装置は固定された場所での発電を目的としたものであり、これらの固定形の風力発電装置では莫大は自然エネルギーを持つ台風などの強い風の利用は想定されていないし適しておらず、むしろ例えば10~25m/秒以上の強風では設備保護のため装置を停止(カットアウト)するようにしている。即ち、これら既存の風力発電装置の基本的な考えは微風から弱風を如何に効率的に利用するかである。
【0027】
風の持つエネルギーである風圧という面で考えたとき、計算上、プロペラ型の風車ではロータ直径から計算できる円の面積に向かって吹いてくる実際の風の量(風力、風圧)の数十分の一の力を利用しているに過ぎない。しかも、装置の利用効率を高めるために巨大すればするほど風車の高さも50~100m以上、時には260m以上となっており、ブレードの長さ方向の長さが100m以上にもなるのであり、風車のブレードが風圧により破壊される危険性は益々高まるので、実際に利用できる風(カットアウト風速)も15m/秒以下となる。機器材質や機械的補強によりより強い風にも耐えるように設計し建造することはある程度可能であるがコスト高となり発電効率も下がるので自ずと限界がある。風のエネルギーは風速の3乗に比例するので台風などの15m/秒以上の強い風は特段に優れたエネルギー源であるにも関わらず、既存の風力発電装置での最適風速は10m/秒程度とされており、設備にもよるが20m/秒程度以上の風のときは設備保護の観点から設備を固定するとかブレードの向きを変えるなどの方法で風を受けないように変化させるなどして運転そのものを停止(カットアウト)させているというのが実情である。まして、そのような風力発電装置を移動する船上に設置することはできない。特に、強風下を通過する船に設置することはできない。即ち、本発明は既存の洋上風力発電装置を利用するが既存の洋上風力発電装置で好ましい形態である装置の巨大化は本発明では必要なく必ずしも好ましくもないのである。
【0028】
本発明ではかかる莫大で無限な自然エネルギー源であるが既存風力発電装置では利用が避けられてきた特に強い風の力を高い効率で電気エネルギーに変換できる発電装置の利用をも想定している。
前述したとおり、本発明の究極の目的は地球温暖化の防止に寄与することであり、そのために「孤立系のエネルギーの総量は変化しない」という物理学法則の一つであるエネルギー保存の法則上、地球上で熱を発生することなく地球上で集中して得られる強大はエネルギーを利用しようとするものである。
即ち、そのために本発明では地球上に広く低い密度で存在する自然エネルギーを受け身で利用するのではなく、人類が災難、災害とさえ考えてそれから避けることを優先的に考えているが実は巨大なエネルギーをもつ台風や地球上の特定場所で高頻度で入手可能な強風を逆転の発想で、それをむしろ無限の自然エネルギー源としてとらえ積極的に利用する。さらにはそのために、それに適した発電装置もより好ましい風力発電装置として提供することである。即ち、既存の風力発電装置は風力発電装置の技術的原理はそのまま使用可能であるが、好ましい風力発電装置は異なる。通常、「台風を利用する」と言うと人はあのスーパー台風を想像し、「それは非常識な考え」と思う、しかし台風はその中心からの距離により風力は異なり、正に風力発電に好ましい風速域さえも常に同時に提供できるのである。しかし、その好ましい域は時々刻々変化する。そこで、それを追跡する必要があるが、それは気象衛星と気象学の発達により近年可能となった。気象衛星が現在のように高度化していない時代には台風を正確に数日~数週間の間追跡することは不可能であった。本発明は正にこの進化した現在の科学を利用するのであり、そのために本発明のシステムは移動するのである。即ち、本発明のシステムを船に上に構成し、現在は、或いは既存の思想では「非常識であった」技術思想を好ましい技術に変換するのである。
【0029】
単に洋上の風力を利用して発電し、それを利用しようとする船の考えはこれまでも多く提案されている。例えば、特開平6-159224 「風力発電航行船」では船体上に風力発電機を備えたポスト及び高空風力発電装置を持つ繋留索を設置して、風力発電で発生した電力で船舶の推進プロペラを駆動する風力発電航行船」が提案されている。
特開平7-189884 「水面航行風水力発電装置と風力発電装置」では風力発電で水平軸回転風車を駆動して、船を航行させて、この船の航行での水力を手段として水力発電させることが提案されている。
特開2020-6795では「風力発電機搭載型船舶」として従来型の化石燃料のみに頼った水上航行および水上輸送を改善する方法として提案されている。
特開2007-326535「風力発電装置付き船舶」が提案され風力の有効利用を図ることができ、また船内で必要とされる電力の少なくとも一部を賄うことが可能になるとして提案されている。
特開2013-29101では「洋上風力発電施設の輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージ」が提案されている。
これらは、いずれも洋上での風力を利用してそのエネルギーを主としてその船の動力としてあるいはその動力の一部として利用しようとするものである。洋上の風力の中で台風などの強い風も言及されている。
特開2001-349272「洋上風力発電システム」では風力発電した得た電力を電気自動車用二次電池搭載のトラックに溜めてその電力を溜めたトラックを陸に揚げて利用する方法が提案されている。この場合は、洋上風力発電で得たエネルギーの電力をそのまま蓄電池のまま陸上で利用しようとするものである。
しかし、これらの提案は何れも本発明が目的とする「自然エネルギーを利用してしかも石炭や石油や天然ガスなどの化石燃料による火力発電や原子力発電等の既存エネルギーよりも低コストにて電気を製して、水素を製造したり及び/又は電気を発電したその場で利用して金属精錬を行う」とし、そのためには洋上移動可能な船舶の上に金属精錬システムを構築するという本発明の思想とは全く異なるものであり、本発明の思想を想起させるものでもない。本発明が目的とする地球温暖化対策となるものではなく、その思想は全くない。さらに、本発明が主として利用するのは通常の洋上風力発電で利用している風速10m/秒程度の風速の風力ではなく、現行の洋上風力発電ではカットオフされて避けられているような風速として例えば15~50m/秒程度、あるいはそれ以上の風力をも利用して、現状の既存発電(既存エネルギー)のコストに勝てる自然エネルギー(新エネルギー)活用発電に関するものである。そうでなくては本発明の効果を得られない。システムを作り、それを維持するエネルギー(費用)がそのシステムから得られ、且つ産業的に利用できるエネルギー(費用)よりも大きい場合、本発明の目的は達成できないのである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、風力発電装置を装備した移動できる船であり、当該風力発電装置は強風、主として風速10m/秒以上、好ましくは15m/秒以上の強い風力を利用した発電装置であり、当該船はかかる強い風力が得られる場所を追跡するため時速10km以上の速力で走航可能であり、当該風力で発電した電力を利用して水素を製造するための水の電気分解装置を装備しており発生させた水素を液化するための冷凍装置又は発生させた水素を高圧圧縮する装置及び水素の保存装置を装備している又は/及び当該風力で発電した電力により直接精錬法により、又は貯蔵した水素を用いた水素還元精錬法により金属精錬を行うための金属精錬装置を装備している、ことを満足する風力発電装置を装備した船である。
本発明の風力発電装置を装備した船に装備する風力発電装置としては公知の既存の装置を使用可能で風車としてプロペラ型、多翼型、ダリウス型、サボニウス型、ジャイロミル型、それらの組み合わせ型、複合型などを用いた装置を用いることが可能である。
【0031】
従来の洋上風力発電で主力発電装置は圧倒的にプロペラ型で代表的な装置はブレードの長さ方向の長さが100m以上にもなる固定形のプロペラ型あるが、本発明では、敷地が無限である沿岸などに設置するのと異なり、限られた面積の船上に設置すること、風向きに影響を受けないこと、強い風力の高い風速で高い回転数を得られることが望ましいことからかかる代表的な巨大な風力発電装置よりも風力発電装置としては縦型で設置可能なサボニウス風車やジャイロミル型風車やそれらの複合型などが好ましい風車である。例えば、無指向性で風向きに対応でき風速変動にも対応できるATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等の名称で商業化されている風車と同じ技術でその大きさを本発明で必要とする大きさにして、即ち、ブレードと支持軸のサイズ及び強度を本発明で利用する強風下でも効率的に利用できるように高めることで単機あたりの発電能力が100~1000kW以上なるように強化設計してそれを本発明の船上に密に主として縦型で10~1000基程度設置するのが好ましい形態である。通常、ATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等を縦型で設置する場合、支える軸受けが下側だけの片持ちとなっているが、本発明では強風の利用を指向しているため下側に加えて上側にも軸受けを設けた両持ち(両端支持型)とするのが好ましい。両端支持型とすることで設備単機のサイズをより大きくすることが可能となる。何よりも本発明が求める強い風に対してより安定となる。
【0032】
これらの風力発電装置は風力で得られる力でロータ軸を回転させ、その軸回転により各単機で発電させるのが通常でありその機構をそのまま使用することも可能であるが、本発明では多数のこれらの風力発電装置で得る回転軸の回転運動そのものだけを歯車装置などの回転動力伝動装置を用いて二次的、三次的な回転軸に集合させてより強大で強力で回転運動の増減速が可能な回転運動として風力発電装置単機に比例した発電能力の発電装置(発電用モーター)に連結してより集中的に発電させることが設備保全、発電効率などの面でより好ましい。例えば100kwの発電能力の単機10基では総合の発電能力は1000kwとなるが、集合化することで回転数の増減装置を投資額上より合理的に設置することが可能となり、発電用モーターの回転運動をより円滑化でき1000kw以上の発電能力をより安定に確保することが可能となる。また、設備保全費用も合理化できるようになる。さらに、限られた面積である船上でより多くの風力発電装置単機(発電部分のないもの、ブレード部分)を設置できるようになる。
【0033】
さらには、本発明の風力発電装置を装備した船での、洋上での強い風も積極的に利用できる好ましい別形態の風力発電装置として、風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングの中に、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸が設置してあり、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根が固定してあり、該ロータ軸に取り付けられた受風羽根のロータ径は円筒型のケーシングの内径より小さく風取り入れ窓から取り入れられた風の風力により軸の中心線を中心として該ロータ軸は回転し、ロータ軸を回転させた風は排出口より随時排出され、回転する該ロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電することを特徴とする風力発電装置で、
特に、
(ア) 円筒型のケーシングの内径は0.5m以上から50mで、長さが0.5mから100mであり、
(イ) 円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線をもつロータ軸が設けてあり、
(ウ) 該ロータ軸の直径は5cm以上200cm以下であり、ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けた軸受にて受け止められて回転するようになっており、
(エ) ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定して風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、
(オ) 該板状の個々の受風羽根の大きさは、風車ランナのロータ径が円筒型のケーシングの内径より小さくなる高さで、長さは10cm以上で円筒型のケーシングの長さより小さく、
(カ) 個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、
(キ) ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されてあり、
(ク) 風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている
ことを特徴とする風力発電装置を用いることでより高度に洋上風力の利用が可能となる。
【0034】
本発明の風力発電装置を装備した船には水の電気分解による水素製造装置及び/又は金属精錬装置が装備されており、かくして得られた電気により水素製造及び/又は金属精錬が行われる、又は水の電気分解で水素を製した水素を用いて水素還元精錬法で金属精錬が行われる。水素はそのまま高圧圧縮又は冷凍して船中に保存し水素として利用することが可能である。
本発明の風力発電装置を装備した船で用いる水電気分解装置については既存の高性能の電気分解装置を用いることが商業的に可能である。例えば、商業的に入手可能な日立造船のHYDROSPRINGの場合(大きさは幅2.33m×長さ12m程度)、1セットで最大200Nm3/hの水素を発生可能である。この200Nm3/hでの使用電気量は1000kwh程度であり、年間の水素を発生量に単純換算するとその量は480000 Nm3(42トン)となる。本発明では本発明の船の最大発電能力に相当する数は本電気分解装置では計算上1基~5000(=5000000kw÷1000Kw)基となる。後述するマンモスタンカー並の船に設置して利用した場合、約1000基の電気分解装置が設置可能である。実際はかかる技術をベースに発明の船に適した等価の電気分解能力の水電気分解装置を特注発注して設置することも可能である。いずれの場合でも水素発生量は40~42000トン以上となる。本発明の液化水素製造船は既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法を指向として、台風の強風の利用を指向しており、台風の持つ風のエネルギーは真に無限であり、その正に目の前にある無限のエネルギーを利用して最大限発電し、それを最大限水素に変換するため水素発生量は40~42000トン以上とするのが好ましい。
【0035】
本発明の風力発電装置を装備した船で水素を製造する場合は発生した水素ガスを直ちに冷凍装置により-253℃程度以下で連続して液化して保存するか、又は得られた水素を別の物質に加えて、例えば、水素吸蔵合金やハイドライドや有機物に加えて保存する等、公知の低圧保存法で保存する。そのための冷凍装置や低圧保存法については既存設備や技術をそのまま、又は特注して用いることが可能で、例えば、現在では気体圧縮液化法については世界最大のものは冷凍能力60トン/日のものが商業的に入手可能であり、本発明の船での必要装置数は1基から700基程度となる。実際はかかる技術をベースに船に適した等価の冷凍能力の冷凍装置を適宜設置してもよい。液化水素の代わりに水素を700気圧以上の圧力で封じ込める圧縮水素として保存することも可能である。
【0036】
本発明の風力発電装置を装備した船で水素を製造してそれを保存する場合は既存の保存設備を利用できる。例えば、低温の液化水素の貯蔵タンクも既存の設備が利用可能であり、液化水素の液密度は 70.8 kg/m3 であり、例えば、川崎重工の世界最大級(令和2年12月)の11200m3球形液化水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)の場合、1基で容量の80%と仮定しても最大634トンの液化水素を保管できる。本液化水素製造船では製造した液化水素を適宜他の輸送船や陸上の貯蔵施設に移送するため本液化水素製造船の年間製造能力の1/10程度の容量となる1基から10基の保存タンクを装備すればよい。外槽球殻径についても最大とする必要はなく、船内の空間と液化水素製造船の寄港頻度などを考慮して容易に設計し、採用できる。また、本発明の風力発電装置を装備した船で製造した水素を液状又は高圧圧縮されたままで主として水素を保存するだけの別に船舶や寄港基地の保存施設に適宜、移送することは当然に可能で、それに本発明の風力発電装置を装備した船での保存設備費用を合理化できる。
【0037】
さらに、得られて電気及び/又は水素を用いて金属精錬する場合、対象となる金属は電気又は水素を用いて精錬できる全ての金属やその金属の鉱物や化合物であり、具体的な金属の例としてはアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、シリコン、レアアース、鉄などである。これらの金属の精錬法や精錬装置はこれらの金属について現在陸地の加工工場で実施されている多くの学術書、特許などの文献に詳細が示されている公知の方法や装置をそのまま使用できる。通常、これらの金属の精錬は複数の工程を経て精錬されているが本発明が適用されるのはそれらの複数の精錬加工段階で電気精錬を行う工程や水素による還元精錬を行う工程である。例えば、アルミニウムの場合は粗アルミニウムを電気精錬で高純度のアルミニウムをする工程などである。本発明の金属精錬船で水素還元精錬法が採用されている場合は、該金属精錬船には風力発電装置で発電された発電電力を利用して水素を製造するための水の電気分解装置が装備しており、発生させた水素を貯蔵するための高圧保存タンク又は水素保存タンク又は水素吸着金属を利用した水素保存装置などの適当な保存装置が装備されている。これらの水の電気分解装置も水素保存装置についても多くの学術書、特許などの文献に詳細が示されている公知の方法や装置をそのまま使用できる。
【0038】
本発明の風力発電装置を装備した船は洋上移動が可能で、時速10km以上の速力で走航可能とする。即ち、本発明の風力発電装置及びその風力発電装置を取り付けた金属精錬船は、本発明の目的に鑑みて、洋上の利用可能な風を最適追跡して利用でき、さらには人類が災害と考えて避けている台風などによる強風も積極的に利用し、風力発電、金属精錬、水の電気分解による水素製造や水素貯蔵等に関する既存・公知の知識、技術や設備を巧妙に組み合わせることでそれぞれの従来技術では到底達成できなかった驚くべき量的、質的、経済的効果を達成するものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の風力発電装置を装備した船は、アルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、レアアース、鉄などの金属の鉱物や粗担体や化合物を精錬を行うため洋上風力発電装置、金属精錬装置、さらに必要なら水の電気分解による水素発生装置と水素貯蔵装置を洋上移動が可能な船舶上に構築し、必要とするエネルギーは風力発電装置により洋上風力を利用し風力発電して作り、得た電力で船舶上にて直接電気精錬により、又は該電力でまず水素を製造しその水素を用いて水素還元精錬により精錬する一つのシステムである。
【0040】
本発明で用いる風力発電装置としては公知の風力発電装置を用いることができる。
サボニウス風車やジャイロミル型風車やそれらの複合型などが好ましい風車である。 例えば、無指向性で風向きに対応でき風速変動にも対応できるATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等の名称で商業化されている風車と同じ技術でその大きさを本発明で必要とする大きさにして、即ち、ブレードと支持軸のサイズ及び強度を本発明で利用する強風下でも効率的に利用できるように高めることで単機あたりの発電能力が100~1000kW以上なるように設計してそれを本発明の船上に密に主として縦型で10~1000基程度設置するのが好ましい形態である。通常、ATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等を縦型で設置する場合、支える軸受けが下側だけの片持ちとなっているが、本発明では強風の利用を指向しているため下側に加えて上側にも軸受けを設けた両持ち(両端支持型)とするのが好ましい。両端支持型とすることで設備単機のサイズをより大きくすることが可能となる。
【0041】
本発明の風力発電装置を装備した船での、洋上での強い風も積極的に利用できる好ましい別形態の風力発電装置として、風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングもつ風力発電装置を用いる場合は、風力発電装置の円筒型のケーシングの好ましい内径は0.5m以上から50mで、特に好ましい内径は5m以上であり、長さは0.5mから100mであり、好ましい長さは5m以上であり、好ましい長さは50m以下である。本発明の風力発電装置の円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線で回転するロータ軸が設けてあり、このロータ軸は受風羽根で受けた風力により回転するが、本発明では台風などの強風を利用するためにロータ軸には非常に大きい外力がかかることとなるのでロータ軸の機械的強度が重要であり、その強度はロータ軸の材質とその直径で決まる。ロータ軸の材質は水力発電の羽根などに使用されている鋼材や複合樹脂などが適しているが、その直径が重要であり5cm以上、好ましくは10cm以上、さらに20cm以上から200cm以下のものも用いることができる好ましくは15cm以上、200cm以下で好ましくは50cm以下である。ロータ軸の材質が鋼材で直径が大きいときロータ軸の回転慣性により風力の変動が多少吸収されるという効果も期待できる。ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けたロータ軸の直径に応じた抗力の既存の軸受にて受け止められて回転するようになっている。
【0042】
該ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにしたロータ軸の円周周りに3枚以上、好ましくは12枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように直接又は間接的に固定して風車ランナを形成している。板状の受風羽根の幅(ロータ軸表面からの高さ)はロータ軸の直径と円筒型のケーシングの内径と円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)から自ずと決まる。受風羽根の横方向の最長の長さは円筒型ケーシングの長さより0.1mm以上短い。受風羽根は横方向の長さを円筒型ケーシングの長さの数分の一に短くして、ロータ軸の軸方向に数枚付けることもできる。例えば円筒型のケーシングの長さが20mのとき、受風羽根の横方向の長さは約20mとしてロータ軸の軸方向に1枚とすることも、受風羽根の横方向の長さを約0.5mとしてロータ軸の軸方向を40区画として40枚取り付けることもできる。横方向に区画分けするとき各区画の幅は同じである必要はない、またこのように区画区分した場合、各区画内のロータ軸の円周周りの枚数や取り付け角度を変更させることができ、それによりロータ軸の回転をより円滑にできる場合がある。板状の受風羽根の形状は長方形や多角形や曲線のある板状でもよく、より風を確実に円滑に受けるために適当な湾曲を設けることも可能である。湾曲を付ける別の方法としてロータ軸への受風羽根の取り付けをロータ軸の中心線に平行(これを取り付け角度0度とする)ではなく、取り付け角度を60度以下とすることができる。
【0043】
本発明の風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシング、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた板状の受風羽根、風が随時排出できる排出口、回転する該ロータ軸、該ロータ軸を直接又は動力伝動装置を介して通常の風力発電装置に連結する設備は通常の発電装置に使用されているような金属やカーボンファイバーとガラス強化繊維(FRP)等の樹脂などを材料として製造することができるが本発明の風力発電装置は台風などの強風の利用を想定しているので、それらの強風に耐えられるように通常の確立されている材料強度の基礎と安全率の考え方に則り設計し建造する。ロータ軸と受風羽根を一体型として鋳物等で工作することも可能であり強度上は好ましい。
【0044】
本発明の風力発電装置では風取り入れ窓(この設置位置を風上側の位置とする)は、円筒型のケーシングの長さ方向に長方形等で円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側約半分)又は円筒型のケーシングの上側(円筒型のケーシングの上側約半分)等に開いた窓(風取り入れ窓)として取り付けられるが、通常は円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側約半分)に取り付けられる。この窓を通して風上側からの強い風が風の風取り入れ窓から入り、円筒型のケーシングの中にある複数の受風羽根の内の下側に位置して受風羽根のみに当たりにロータ軸を回転させるエネルギーとして利用するためである(円筒型のケーシングの上側、即ち円筒型のケーシングの上側約半分に設置した場合は上側に位置して受風羽根のみに当たりにロータ軸を回転させる。上側と下側ではロータ軸の回転方向が異なるだけであるので以下の説明は円筒型のケーシングの下側約半分に設置した場合で説明する)。風上側の風は円筒型のケーシングの下側半分のみでなく、上側半分にも吹いてくるのでこの上側半分にも吹いてくる風を多少なりとも取り込むために円筒型のケーシング本体に開ける(風取り入れ窓)は同じ大きさのままで風取り入れ窓よりも大きい風の導入口として円筒型のケーシングの上側にまたがる長方形等の風導入案内口(風導入案内口)を設けることができる。これにより風上側から吹いてきた風は広い面積の風導入案内口より捕らえられて絞り込まれて風取り入れ窓より円筒型のケーシング内に入り受風羽根に当たり、ロータ軸が回転する。風取り入れ窓の形状や寸法その数は任意に変更可能である。
風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電する。
【0045】
本発明の風力発電装置は台風などの強風の利用を意図しているが、自然現象であり風の強さや向きが極端に変化することは当然予想されるので風取り入れ窓及び/又は風導入案内口の前に自動又は手動の風量調整ダンパーを設けることもできる。これにより好ましい風速として例えば15~50m/秒を想定しているとき、例えば70m/秒以上の強烈な風が吹いているとき風力発電装置そのものを停止(カットアウト)することなく風量調整ダンパーで取り入れる風のエネルギーを適当化できる。かかる風量調整ダンパーの一つの変化形態は飛行機に採用されている自動式又は手動式のスプリットフラップのように風取り入れ窓の前で風向を変化させて風量調整を行う方式である。これにより風取り入れ窓に入る風量を調整(増加及び減少)することが可能となり発電装置での風の適用範囲が非常におおきくなりロータ軸への風力を好ましい範囲内に調整できる。これにより安定した発電量を確保し易くなる。また、風取り入れ窓の大きさは円筒型のケーシングの下側半分全体とする必要はなく、それよりも小さく又は大きくすることが可能であり大きくすればより低速の風を束ねて高い風量として利用できる、また、1本の円筒型のケーシングに1個でなく複数の風取り入れ窓とすることができ、その複数の窓の大きさや形状も異なるものとすることができる。
【0046】
本発明の風力発電装置のロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上、好ましくは6枚以上、さらに好ましくは12枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定してロータ軸が回転する風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、円筒型のケーシングの中で風力を受けて自由に回転できるようになっている。個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、1本の円筒型のケーシングの中の受風羽根の形状は様々に異なってもよい。受風羽根のロータ軸の長さ方向の長さは円筒型のケーシングの長さよりは短ければよく、例えば円筒型のケーシングの長さが10mのときに、長さが0.99mのものを10枚同じ方向に並べるごとく、円筒型のケーシングの長さより短いものを1枚又は複数同じ方向に並べることも可能であり、ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されている。複数の区画で受風羽根を異なる角度や枚数で取り付けることで風車ランナの回転をより円滑にできる。
【0047】
本発明の風力発電装置では風排出口は風取り入れ窓(風上側の位置)とは反対側(これを風下側の位置という)に円筒型のケーシングの長さ方向に長方形等で円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側半分)に開いた窓(風排出口窓)として取り付けられる。風排出口窓の大きさは基本的に風取り入れ窓と同じかそれ以上の開口面積として風取り入れ窓から円筒型のケーシングに入った風力が円筒型のケーシングの中で蓄積しないようにする。風排出口窓には排出される風が水平方向又はそれより下側に排出されるようにダクト(風導)を設けることができる。本発明の風力発電装置では台風などの強風の利用を想定しており、風は自然現象で必ずしも風上は常に一定ではなく時には風下側が風上(逆風)となることも、又上方向や下方向の風もあり得るのでダクト(風導)の出口は逆風が円筒型のケーシングに浸入するのを極力阻害するように、出口の向き風を受けにくい下向きにしたり、単純な開口部の先端を小さくしたり、開口部の側面を多孔板にして逃げる風は出やすいが逆方向に入る風は入りにくいようにしたり、風向き調整板や邪魔板を出口付近に設置するなどするのが好ましい。さらに、ロータ軸に取り付ける板状の受風羽根の構造を風取り入れ窓からの風(順風)は効率よく受けるが風排出口窓からの風(逆風)は受け難くすることや、風向き調整板により順風でない風も利用するなどの方法も好ましい方法である。
【0048】
回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている。発電量は発電装置の軸(回転子)の回転数の2乗に比例するので、本発明の発電装置においては風力により得た回転軸の回転をそのまま発電機で用いるのではなく、その回転をギアなどの回転数増速装置などの動力伝動装置を用いてより高速の回転とすることで高い発電量を得ることが可能である。このとき、1本の円筒型ケーシングに対して1基の発電機とする必要はなく、本発明の風力発電装置を金属精錬船に設置するとき、金属精錬船の甲板に複数の円筒型ケーシングを並べて設置するので、複数の円筒型ケーシングで得られる回転運動を動力伝動装置を介して高い発電能力の1基の発電機に連結することが可能であり、このとき高価な発電機の数を大幅に減少して高い発電量を得ることが可能となり、発電コストの低減に繋がる。
通常の風力発電装置の主流であるプロペラ型風車では風向きに対してブレードの受風面で風を受けて、ブレードの形状設計により羽根に空気の流れにより揚力が発生するようになっておりその揚力を利用して高い回転を得て、その回転を増速機でより高い回転として発電しており、装置に巨大化によりコスト競争力も高くなっているが、それでも計算上、実際にロータ直径から計算できる円の面積に向かって吹いてくる風の量(風圧)の数十分の一の力を利用しているに過ぎない。しかも、装置を巨大すればするほど風車の高さも50~100m以上、時には260m以上ともなり、長さ方向の長さが100m以上にもなる風車のブレードが破壊される危険性は高まるので、実際に利用できる風も15m/秒以下となる。まして、このような巨大で、高く不安定な装置を移動する船に搭載することは現実的でない。これに対して、本発明の風力発電装置では10m/秒から時には40m/秒、45m/秒を超える強風の利用を想定している。風のエネルギー量は風速の3乗に比例するので、例えば、既存の風力発電装置での利用風速を平均10m/秒とした場合(実際には平均は約6m/秒程度という報告が多い)、本発明での利用風速の平均を20m/秒とした場合(実際は15m/秒から50m/秒、あるいはそれ以上)でも風力としては風のエネルギーは8倍となる計算である。風圧については風速の二乗に比例して強くなるので、風速が平均10m/秒の場合は面積1m2にかかる風圧は61.25[N(ニュートン)] で、風速を20m/秒とした場合は平均240.5[N]と4倍となる計算であり、しかも実際に風を受けるプロペラ型風車のブレード面と、本発明の風力発電装置の受風羽根を同じ大きさで単純に比較すると10倍以上の差があるので羽根が受ける風圧は40倍(4×10)以上となる。しかも、台風などの風は風雨であることが多いが、風圧は空気の密度に比例するので乾いた空気と風雨での密度の差は空気の密度が1.225kg/m3であるのに対して水の密度は1000kg/m3であることを考慮すると雨粒を含む風による風圧は更に大きくなるのである。風力発電装置の実際の発電機の発電量は利用する発電機の(回転子の)回転数に依存するので風力発電装置の回転軸から実際の発電機の(回転子の)回転数に如何に効率よく高い回転数に変換できるかにかかっている。プロペラ型風車からの風圧と本発明の風力発電装置の風圧の差の大凡40倍をそのまま、(回転子の)回転数の差にできると考えることはできないが、例えば2倍にした場合でも発電量は回転数の2乗に比例するので発電量は4倍となるのであり、このことは大きさを4分の一としても同じ発電量が期待できるということである。少なくとも本発明の風力発電装置の大きさを巨大な既存のプロペラ型風車よりも大幅に小型化しても、同じ発電量を得られる。しかも、本発明の風力発電装置は台風などの強い風を追いかけて風量を最適化して好ましい風速の位置を探して運転されるのでカットアウトすることもなく、受け身にて風任せで相対的に弱い風を利用する通常の風力発電装置よりも確実に大きな発電量を得ることが期待できるのである。
【0049】
例えば、現在世界最大といわれるGE Renewable Energy社のHalide-13MXという機種ではロータ径が220mで設備の高さ260mで定格出力は1基で12000kwであるが、このような巨大は設備を例え1基であっても洋上で、しかも船に乗せて移動などできないが、本発明の風力発電装置はコンパクトで小型であっても高い発電能力を有しており、例えば円筒型のケーシングの直径を10m、長さを20mとした場合一隻の船に搭載せきる風力発電装置の数は同じ幅でも縦方向に1列でも13倍となり、これを並列や2段、3段等と多段搭載を考えれば100倍以上にもできる。
【0050】
本発明の風力発電装置はコンパクト化が可能であり、更に台風の風の場合では通常それは風と雨(風雨)であり通常の陸上や洋上にある風車が受ける乾いた風よりも非常に高い風力であり風力を高速回転に変換する歯車増速装置等の回転速度増速装置を取り付けることが可能となる。船上に載せて建造費等を含めて効率的なサイズとして円筒型のケーシングの直径を更に小さくして10mでその長さを20m(5分の一)とした場合でも、高さ100mの通常の風力発電の1000kwの2~10倍(2000~10000kw/風車1基)に大きくできる。さらに、高く不安定なプロペラ型風車と異なり本発明の風車はコンパクト(径が10mで長さが20mのとき、専有平面の面積は200m2)で強固であり、一隻の船(後述するように甲板の総面積は1、000m2以上が好ましく、さらに好ましくはマンモスタンカー並の20、000m2以上)に設置することのできる風車の数は飛躍的に多くすることが可能(1段配置でも5基から100基、複数段とした場合はその数倍から10倍)となり、船の甲板の広さと風車の大きさや配列方法により異なるが10基から計算上1000基程度に設置することが可能となる。このため、本発明の金属精錬船一隻当たりの発電能力は10、000kw(1000kw×10基)から計算上は100,000kw(1000kw×100基)も300,000kw(3000kw×100基)も5、000、000kw以上も可能となる。風車の数を増やしても原料となる風がなければその効果を発揮できないが本発明の風力発電装置を装備した船は台風などの無限にある強力な風を利用できる、また幾ら強風があっても効果的に捕らえてそれを電気に変換できる風力発電装置がなければ利用することはできないが本発明の風力発電装置はそれを可能としており、増加した風車の数に単純に比例して発電量を大きくできる。それは風車の効率と、その強い風力を高い回転に変換して高い発電を行うことであり、そのための場の提供として船の甲板の広さが大きいことである。
【0051】
このように船の甲板上に多数の風車発電を設置することは、前述した無指向性で風向きに対応でき風速変動にも対応できるATLASX風力タービン式発電機、垂直風力タービン発電機、トルネード型風車発電機、垂直軸型マグナス風力発電機等の技術でその大きさを大きした装置を縦型に設置する場合も同じとなる。
本発明の風力発電装置及びそれを取り付けた金属精錬船は利用目的とする台風などの強風のある地球上の位置に移動して発電し、得た電気で直接金属精錬を行うか、又は得た電気で水の電気分解で水素を製しその水素を用いた水素還元精錬法により金属の精錬を行う。
【0052】
本発明の究極の目的は二酸化炭素の排出量削減を削減すること、そして既存エネルギーを用いた場合よりも低コストで水素を製造することであり、及び/又は既存エネルギーを用いた金属精錬よりも低コストで金属精錬を行うことであり、金属精錬船そのものを大型化するのが好ましい。
【0053】
本発明の風力発電装置を装備した船で金属精錬を行う場合は、風力発電装置を装備しており得た電力を直接利用して電気精錬を行うための電気金属精錬のための設備及び/又は当該船で得た水素を用いれ水素還元精錬を行うためのを装備しており、金属精錬船上に設置した風力発電装置で得た電気を利用してアルミニウム、銅、亜鉛、貴金属、レアアース、鉄などの金属の鉱物や粗担体や化合物の精錬を行う。又は、必要な場合は得られた電気を用いて水を電気分解して、水素を製造する設備を備えており、この水素を用いた水素還元精錬法により金属精錬を行う。
【0054】
例えば、アルミニウムの場合、原料のボーキサイトからアルミナを得た後でこのアルミナを電解炉の中で電気分解することで製しているが本発明の金属精錬船ではこの電解炉の中で電気分解を行う既存の設備を装備しておりアルミニウムを得る。この電解炉は公知の技術で多くの世界中のエンジニアリングメーカがセットとして販売しており設置する。本発明の金属精錬船では単にそのための場所を提供する形となる。多くの金属の最終的な精錬は電気精錬によって行われるが、それらのその他の金属の精錬でも全く同じである。具体的には、金属製錬工学の電気精錬や電解精錬に関する多数の書籍に示されており、又実機に関しては三井金属エンジニアリング株式会社、日揮ホールディングス株式会社、川崎重工業株式会社、千代田化工建設株式会社、日本軽金属株式会社、住友金属鉱山株式会社、三菱マテリアル株式会社などでレアメタル製錬プラント、レアアース製錬プラント、銅製錬プラント、亜鉛製錬プラント、貴金属製錬プラント、などとして使用又はプラント建設されている。
【0055】
本発明は移動する船舶上で好ましい風を追跡して洋上風力発電により低コストで電気を製し、その電気で陸上での金属精錬よりも低コストで、しかも二酸化炭素の排出を削減して金属精錬を行なうことができるという思想によるものであり、本発明の金属精錬船に設置する電気精錬や電解精錬の設備そのものに特徴はなく、全く公知のものを利用できる。しかし、それらの設備は洋上風力発電を備えた船舶上に共に一つのシステムとして構築する。この一体システムの構築により、このシステム構築のみにより本発明の効果が発揮できる。
【0056】
本発明の風力発電装置を装備した船では水素を用いた水素還元法での金属精錬を行うことも可能である。その代表例は鉄鉱石からの鉄の水素還元法により精錬である。
このように水素金属還元を行う場合は、本発明の金属精錬船に本風力発電装置で発電した電気を利用して水を分解して水素ガスを製造する電気分解装置、及び必要なら発生した水素ガスを直ちに連続して液化するための冷凍装置又は圧縮貯蔵装置を装備して、得た水素を用いて水素還元法での金属精錬を行う。
本発明の金属精錬船で水素を用いた還元精錬を行うために水素を製造するとき用いる水電気分解装置については既存の高性能の電気分解装置を用いることが商業的に可能である。例えば、商業的に入手可能な日立造船のHYDROSPRINGの場合(大きさは幅2.33m×長さ12m程度)、1セットで最大200Nm3/hの水素を発生可能である。この200Nm3/hでの使用電気量は1000kwh程度であり、年間の水素を発生量に単純換算するとその量は480000 Nm3(42トン)となる。本発明では本発明の船の最大発電能力に相当する数は本電気分解装置では計算上1基~5000(=5000000kw÷1000Kw)基となる。後述するマンモスタンカー並の船に設置して利用した場合、約1000基の電気分解装置が設置可能である。実際はかかる技術をベースに発明の船に適した等価の電気分解能力の水電気分解装置を特注発注して設置することも可能である。いずれの場合でも水素発生量は40~42000トン以上となる。本発明の金属精錬船は既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法を指向として、台風の強風の利用を指向しており、台風の持つ風のエネルギーは真に無限であり、その正に目の前にある無限のエネルギーを利用して最大限発電し、それを最大限水素に変換するため水素発生量は40~42000トン以上とするのが好ましい。
【0057】
本発明の風力発電装置を装備した船は発生した水素ガスを高圧圧縮して保存することも可能であるが、直ちに連続して液化するための冷凍装置を用いることもできる。液化する場合、水素の沸点は-253℃でありそれ以下で液化する、又加圧下ではそれより高い温度でも液化するが、そのための冷凍装置については既存の気体圧縮液化法や磁気冷凍液化法など広く実用化されておりそれらの既存設備や技術をそのまま、又は特注して用いることが可能で、現在では気体圧縮液化法については世界最大のものは冷凍能力60トン/日のものが商業的に入手可能であり、本発明の船での必要装置数は1基から700基程度となる。実際はかかる技術をベースに船に適した等価の冷凍能力の冷凍装置を適宜設置してもよい。水素の代わりに水素を700気圧以上の圧力で封じ込める圧縮水素として保存することも可能である。かくして保存した水素を水素還元精錬に用いることができる。さらに、得られた水素を別の物質に加えて、例えば、水素吸蔵合金やハイドライドや有機物に加えて保存する等、公知の低圧保存法で保存することも可能である。
【0058】
本発明の風力発電装置を装備した船は製造した水素を一時的に気体状態又は液体状態で保管するための保存タンクを装備することができる。かかる水素の保存法として低温を利用する場合、低温の水素の貯蔵タンクも既存の設備が利用可能であり、水素の液密度は 70.8 kg/m3 であり、例えば、川崎重工の世界最大級(令和2年12月)の11200m3球形水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)の場合、1基で容量の80%と仮定しても最大634トンの水素を保管できる。本金属精錬船では製造した水素を適宜他の輸送船や陸上の貯蔵施設に移送するため本金属精錬船の年間製造能力の1/10程度の容量となる1基から10基の保存タンクを装備すればよい。外槽球殻径についても最大とする必要はなく、船内の空間と金属精錬船の寄港頻度などを考慮して容易に設計し、採用できる。
【0059】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した風力発電装置を装備した船は熱帯低気圧や台風を追随できるようにするため時速10km以上の速力で走航可能とする。巨大なマンモスタンカーなどでも時速30km以上での航行が可能であり、時々刻々変化する洋上風力の好ましい風力をより長時間利用するためには当該船は時速15km以上がより好ましく、さらに時速20km以上はさらに好ましい。前述したとおり北西太平洋における台風の発生数は年間25個程度で発生から消滅までの期間は5日程度であるが、発生の場所は北緯8度から16度のマリアナ、カロリン、マーシャル諸島付近の海上が多いがその範囲は広範囲であり、しかもその後の熱帯低気圧や台風の進路はもっと多様である。従って、熱帯低気圧や台風の風を有効活用するためには金属精錬船は台風を追跡するのが好ましいが台風は停滞もするが、通常台風は時速10km、時には40km、50kmで移動する。しかし、台風の風速15m/秒以上の暴風圏は大型台風の場合は半径500km、超大型となると800kmとなるのであり、必ずしも台風の移動速度に追随できなくても確実にその台風の好ましい風速範囲の風を長い期間利用できる。しかも、気象衛星の進歩、気象学の進歩により台風の卵である熱帯低気圧の発生の位置や発生後台風に発達してからその後の進行方向まで驚くほど正確に予測が可能となっているので船での追随走行距離を最短にして、台風の速度よりも遅い速度の船でも確実に効率よく風を利用することが可能である。その上、北半球の台風の場合、反時計回り方向の風が吹いているので船の進行にその風も利用できるのである。台風の風を利用するために船で台風に近づくのは無謀で危険であるという固定観念はかかる技術進歩を鑑みれば全く陳腐な観念である。驚くべきことに、気象衛星の進歩、気象学の進歩を応用すれば例えば本発明の風力発電装置を装備した船の最適設計風速が15m/秒から30m/秒の範囲内にある場合でも、気象情報と通信衛星の利用によりその好ましい風速となる台風暴風圏の中の特定の位置範囲内に船を長い期間配置することが可能となるのである。しかも地球の北半球の台風(台風、ハリケーン、サイクロンなど)は反時計方向の風の向きとなり、地形が複雑で建造物などもあり風の向きも複雑な陸地や近海と違い大洋は平坦な海原であるため台風の渦の特性から陸地で台風に接するよりも容易となる側面がある。勿論、自然現象であり、想定外の突風が吹くことも横方向だけでなく上下の激しい風も当然起きるし、風の強弱も相当に大きいことは当然であり、高い波の影響もあるのでそれ相応の船体や風車の強度は必要である。この点でも船は大型で風車の小型化は好ましい。特に甲板上に配置する風車の翼の破壊は他の風車の破壊へと直接的に連鎖するので強度と工作精度が大切である。しかし、このことは近年の材料工学の進歩や機械設計の技術からは大きな問題ではない。
【0060】
即ち、これらのことは陸上や洋上に配置した風力発電装置の場合も同じでその知見を利用できるが、むしろ固定した位置で陸上や洋上に配置した風車の場合は発達して上陸してくる台風、今後時には風速100m/秒になることもあると予想されているような巨大台風の猛烈な風や波や地震と津波から逃れるすべはなく全壊や部分破損などの危険度は非常に高いのでこれらの破損を防止するための基礎工事や設備対策や管理はむしろ大きく、厄介となる。そのコスト負担は非常に大きい。過去に台風の度に破壊された巨大な風車を日本で何度も新聞などの写真で見てきたが、今後はこれまで以上の経験したことのないような強風の台風の来襲も予測されている。このことは風力発電の先進国ではあるが台風もなく(強風の強さやその頻度が小さいという意味)、強い地震もない欧州とは全く異なり、日本は遥かに厳しい環境状況であることを示している。これに対して本発明の金属精錬船は走行でき、通信衛星などの先端技術を取り入れるためそのような巨大台風からも地震による津波からの影響を避けて、しかもそのエネルギーを最適な風速で必要なだけ悠々と利用できるのである。このようなことは台風が危ないものという固定観念だけで想像していては絶対に知り得ないことであり、陸上や洋上の設備の方が船舶の設備よりも安全ということも固定観念である。
【0061】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した風力発電装置を装備した船は既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法を提供すること目的としており、そのためには水素1kgあたりの製造コストを300円(26.7円/Nm3)以下とすることが望まれているが、台風などの無限のエネルギーを可能な限り多く利用するために船一隻に配置できる発電装置用の風車の数を増やす程、得られる水素の製造コストが低下する。このような単純さは原料(資源)となる風力エネルギーが無限に、しかも無料で存在する洋上で移動して追跡するからできることである。しかし、通常の洋上風力発電ではその数を増加するほどコストが下がるのではなく、数を増やしてコストが下がるとすれば、それは単に同種のものを多量に製造することでの設備を多量発注での単価の低下や地上での管理の固定費が減少するからであり、洋上風力発電装置のコスト低下のためには如何に効率よく風を捕らえるか、そしてそれを電力に変換できるかにかかっている。
本発明の金属精錬船で風車の数を増加するための方法としては風車の単位直径を小型化する、風車の船への搭載方法を複数段とする等があるが、それらの対策をした上でさらに母体となる船の甲板面積を広くすることが好ましく、そのためには航行上安全な範囲で出来るかぎり大型化することが好ましく、これも既存の商業化技術で問題なく対応できる。即ち、既存の風力発電では前述したとおり、代表的風力発電であるプロペラ型で、ひたすら設備の単体を巨大化しているのは根本的に発想が異なる。それを可能としているのは本発明では強風を洋上で追跡して望ましい風力をほぼ無限に入手できるからである。
【0062】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した風力発電装置を装備した船で台風などの無限のエネルギーを可能な限り多く利用するために船は大型とするのが好ましい。本発明の金属精錬船は風力発電装置、その電気を用いて行う直接の電気精錬のための金属精錬装置、及び水素還元法による金属精錬を行う場合は船内で発電した電力を利用した水の電気分解装置、発生させた水素を高圧で保存する装置や液化するための冷凍して貯蔵するために保存タンクを備えているが、風力を最大限利用するためには無限のエネルギーを取得するための設備であり船の甲板に配置する風車の効率を高めその数を多くする。その他の電気分解装置、発生させた水素を高圧圧縮保存する装置や水素を液化保存する場合は液化するための冷凍装置、船内で製造した水素を貯蔵するために保存タンクは既存の商業化済みの設備を取捨選択して配置すればよく、本発明の金属精錬船の甲板の下に位置する船の内部は甲板の広さに比例して広大であり、そこでの天井までの高さは吃水が約10mあるため通常15mから20mあるのであり場所上問題となることはなく、むしろ有り余る空間ができる。敢えて言えば、水素は可燃性のガスであり、空気中4.0~75%が爆発濃度範囲であるということで設備上及び取扱い上十分な注意が必要であるということである。海上の船内の水素濃度を4.0%以下はおろか、0.1%以下にすることも容易である。
【0063】
甲板に配置する風車の数については、単機風車の大きさ、円筒形の風車の場合は円筒型のケーシングの長さとロータ径と、その配置方法、例えば、並列に単段配置か、複数段配置かに影響されるし、何よりも甲板の広さにより決まる。通常の陸上、洋上の風車は少ない風を捕らえるために大きな間隔を開けて配置されているが、本発明の場合、基本的に強風の場所を追跡するために一つの風車と隣の風車の間隔はお互いに衝突しない距離であればよく、それは上下についても言える。かかる特徴は既存の風力発電とは根本的に異なるものである。甲板の広さは大きい方が望ましく、特に、甲板面積とコストの関係から400m2以上とするのが好ましい。これは経済学での「生産規模の拡大により、固定費比率などが低下して単位当たりの生産コストが低くなる」という規模の経済と経験曲線効果によるものではなく、本発明では既存エネルギーに勝る低コストで液体水素を作るために自然エネルギーを集めるための風車の数を増やすために大きい甲板面積を確保するのが目的である。かかることができるのは「原料」である強風が無限にしかも無料に得られる強風を利用するからである。通常の洋上風力発電では数を増やしてもコストは低下せず、コストを下げる方法として風車の径を大きくすることが採られているが、気候変動による損傷や軸受け部の寿命などから自ずとその大きさにも最適化範囲があるのであり本発明とは全く異なる。後述するように日本でもこれまでの大型船の実績を考慮した上で、本発明の効果を更に高め、より低コストの水素を得るために甲板の総面積は1、000m2以上が好ましく、さらにマンモスタンカー並の20、000m2以上、あるいはそれ以上とするのが特に好ましい。
【0064】
風力発電装置を装備した船は風車の数を増やすために大きい甲板面積を確保するためマンモスタンカー並かそれ以上の大型となるのが特に好ましい。海に囲まれた日本は昔より造船大国であり造船技術に優れ、大型の船も数多く建造されてきた。例えば1940年に進水した全長264.40 m、最大幅38.9 m(計算上の甲板面積10、246m2)の世界最大の戦艦大和があり、この船の速力は実に時速50kmであった。この船は戦艦であり大砲など多くの重量物を多量に積載する能力の船であったと想像されるが、本発明の金属精錬船はそれに比較すると各段に簡単で単純な構造で圧倒的に軽量となる。また、1960年に建造された石油タンカー「日章丸」は全長326メートル、幅49.8メートル(計算上の甲板面積16、234m2)、速度16.79ノット(時速31km)であり、また世界的には、世界最大のノルウェー船籍の石油タンカーKnock Nevisは、全長458.45メートル、幅68.8メートル(計算上の甲板面積31、541m2)、速度13~16ノット(時速24~29km)で、世界最大の客船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」は全長361.0m、最大幅46.9m(計算上の甲板面積16、930m2)、高さ72mで速力は時速37kmであり、巨大船は既存技術で、特に石油タンカーのように単純構造の場合、比較的低い投資額で建造可能で本発明の速力15km以上も問題なく達成可能である。特に オアシス・オブ・ザ・シーズの場合、船上に15層の客室デッキがあり高さも72mであった。これは本発明の金属精錬船の甲板の上に本発明の風力発電装置を例えば円筒型シーケンスの直径が10mを7段に設置した高さとほぼ同じである。さらに、本発明の金属精錬船もほとんどが既存の風力発電装置、船内で発電した電力を利用した水の電気分解装置、発生させた水素を液化するための冷凍装置、船内で製造した水素を貯蔵するために保存タンクを単に搭載設置するための場所を提供するだけの船体であり建造上の問題はなく、必要な補強材の追加も容易である。
【0065】
そして、例えば、石油タンカーKnock Nevisと同じ全長458.45メートル、幅68.8メートルとした場合、直径10mで長さが20mの風車は単段配置でそれぞれ1mの余裕をもって搭載した場合でも21×6=126基設置可能であり、それを2段、又は3段又は7段とした場合、それぞれ252基、378基、882基設置可能となる。実際には設置や保全作業を考慮して、それなりの余裕空間が必要であるが、例えば3段配置でもその高さの追加は約30mに過ぎない。風車の直径を10mより小さくすれば更に多くの風車を設置できる。また、既存の石油タンカーの場合、船が破壊された場合その環境被害は甚大となるためその最大サイズの巨大化には単に船が経済的に建造できるか否かの問題だけでなく環境破壊とその時の海水汚染と巨大な損害賠償というリスクが伴うが、風力発電装置を装備した船の場合、万が一破壊されても元々が鉄鋼や複合樹脂であり回収も可能であり、石油タンカーの場合の多量の原油流出のような環境を汚染するものはほとんど出ない、少なくも流れ出さない。製造済みの水素が同時に生産される酸素と共に大気に揮散し、装備した殆どが既存設備のみが破損されるのであり、スエズ運河やパナマ運河などの狭い海峡を通過する必要もなく、浅瀬を避けることも可能で、単に波力による破壊を防止できる強度を持つ単純な構造であり石油タンカーKnock Nevis以上の巨大化も可能であり、それは好ましい。特に、本発明の風力発電装置及びその装置を装備した風力発電装置を装備した船の移動のための動力を水素利用の船とした場合、万が一、船が破壊されても自然破壊はほとんどなく、好ましい船となる。また、大切なことは強力な台風の風を利用すると言っても、世界最先端の造船技術で建造し、最新の気象学、通信衛星情報、人工知能を駆使して航行し、本発明に適した風車設計を考慮した条件で最適運転するのであり破壊のリスクも環境破壊もほとんど考えられない。例えば、10m/秒から50m/秒の間とか、更に最適化して10m/秒から40m/秒の間とかを選択して運転することが可能であり、近年台風が巨大化して、風速100m/秒の猛烈な台風の発生も予想されているが、そのような台風でも中心からの距離から離れるほど、例えば10m/秒から20m/秒の間を選択することも全く問題なく可能である。最新の気象学、通信衛星情報、人工知能を駆使できる点、航行できる点は洋上などに固定する強風から逃げることの出来ない風力発電などに比較すると風力発電装置を装備した船は各段に有利である。
【0066】
即ち、利用する風速が例えば2倍となる場合として、既存の風力発電装置での利用風速を平均10m/秒(実際には平均は約6m/秒程度という報告が多い)、本発明での利用風速の平均を20m/秒(実際は15m/秒から50m/秒、あるいはそれ以上)とした場合、受風羽根が受ける風圧としては4倍となる計算であり、しかも実際に風を受ける風に向かった平面での受風面積も大きさが同じとき10倍以上の差があるので羽根が受ける風圧は40倍(4×10)以上となるのであり、その上に台風などの風は風雨であることが多く利用する風の密度を高くなることが多いので風圧の差は更に大きくなるのである。風力発電装置の実際の発電機の発電量は利用する発電機の(回転子の)回転数の2乗に比例するので風力発電装置の回転軸から実際の発電機の(回転子の)回転数に如何に効率よく高い回転数に変換できるかにかかっているが、大きさは4分の一としても同じ発電量が期待できることである。
【0067】
本発明の風力発電装置で発電して得る電力の一部または全部を本発明の風力発電装置上に設置する蓄電装置に蓄電して電気として本発明の船以外の電気運搬船にて陸地に送付することも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明の風力発電装置の風車ランナの全体を示す模式図である。
図2】本発明の風車ランナを円筒型のケーシングにとり付けた状態を示す断面図である。
図3】本発明の円筒型のケーシングとその中に設置した風車ランナと、風取り入れ窓と風排出口を示したA-A線に沿う断面図である。矢印は風の移動方向を示している。
【符号の説明】
【0069】
1 風車ランナ
2 円筒型のケーシング
3 円筒型のケーシングの中心線
4 ロータ軸
5 軸受
6 受風羽根
7 風取り入れ窓
8 風排出口
【実施例0070】
以下、本文にて説明した本発明の風力発電装置及びその装置を装備した風力発電装置を装備した船は構成要素を用いて1例を組み立てて実施例として説明するが、本発明は該実施例に拘束されるものではない。
【実施例0071】
風力発電装置は、円筒型のケーシングの直径(内径)が10mで長さが20mで、ロータ軸の直径20cm、軸の外周から均等な間隔でロータ軸から16枚の受風羽根が風を受けて軸を回転するように溶接により取り付けてあって風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には5~20mmの隙間(クリアランス)となるように受風羽根の先端面は研磨により調整してあり、該風車ランナのロータ軸は円筒型のケーシングの両端に設けた軸受けで自由回転できるように受けおり、該ロータ軸の片側は軸受を経た後で既存技術による回転速度調整のための回転数増速装置を経て既存技術による発電装置に連結されており、円筒型のケーシングの風上となる側には高さ方向に5mで長さ方向に20mの風取り入れ窓が設けてあり、円筒型のケーシングの風下となる側には高さ方向に6mで長さ方向に20mの風排出口が設けてあり、平均風速20m/秒想定での発電能力4000kwの風力発電装置を形成している。
全長460メートル、幅70メートル、吃水10メートル(甲板面積32、200m2)、航海速力20ノット(時速37km)の既存の最大タンカーとほぼ同じ大きさの船体であり、その甲板に当該風力発電装置と同じ風力発電装置を一列に20基で、5列に並列に配置し、それを2段に配置(合計200基)して発電し(800、000kw/hr)、その甲板の下に位置する船内空間に水素発生能力200Nm3/hの既存の電気分解装置を760基据付けて(水素発生量152、000 Nm3/h)、この水素を冷凍する冷凍能力60トン/日の気体圧縮液化法の既存冷凍設備を6基設置(製造量302トン/日)、既存では最大となる11、200m3球形水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)を2基(合計水素貯蔵量18、000トン)設置したもの。気象衛星からの台風情報を逐次受信しコンピュータを用いたAI(人工知能)を駆使して熱帯低気圧や台風による主として風速10m/秒から40m/秒を最適風速となる位置を追跡して航行し運転して最大29、032トン/年の水素を製造する。
推定投資額は750億円で、水素の製造コストは300円/kg以下となる。
本金属精錬船にはアルミナから電気分解によりアルミニウムを製造する公知の商業化装置が装備してあり、得られた電気を用いてアルミニウムを製造する
【実施例0072】
風力発電装置は、円筒型のケーシングの直径(内径)が10mで長さが20mで、ロータ軸の直径20cm、軸の外周から均等な間隔でロータ軸から16枚の受風羽根が風を受けて軸を回転するように溶接により取り付けてあって風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には5~20mmの隙間(クリアランス)となるように受風羽根の先端面は研磨により調整してあり、該風車ランナのロータ軸は円筒型のケーシングの両端に設けた軸受けで自由回転できるように受けおり、該ロータ軸の片側は軸受を経た後で既存技術による回転速度調整のための回転数増速装置を経て既存技術による発電装置に連結されており、円筒型のケーシングの風上となる側には高さ方向に5mで長さ方向に20mの風取り入れ窓が設けてあり、円筒型のケーシングの風下となる側には高さ方向に6mで長さ方向に20mの風排出口が設けてあり、平均風速20m/秒想定での発電能力4000kwの風力発電装置を形成している。
全長460メートル、幅70メートル、吃水10メートル(甲板面積32、200m2)、航海速力20ノット(時速37km)の既存の最大タンカーとほぼ同じ大きさの船体であり、その甲板に当該風力発電装置と同じ風力発電装置を一列に20基で、5列に並列に配置し、それを2段に配置(合計200基)して発電し(800、000kw/hr)、その甲板の下に位置する船内空間に水素発生能力200Nm3/hの既存の電気分解装置を760基据付けて(水素発生量152、000 Nm3/h)、この水素を冷凍する冷凍能力60トン/日の気体圧縮液化法の既存冷凍設備を6基設置(製造量302トン/日)、既存では最大となる11、200m3球形水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)を2基(合計水素貯蔵量18、000トン)設置したもの。気象衛星からの台風情報を逐次受信しコンピュータを用いたAI(人工知能)を駆使して熱帯低気圧や台風による主として風速10m/秒から40m/秒を最適風速となる位置を追跡して航行し運転して最大29、032トン/年の水素を製造する。
推定投資額は750億円で、水素の製造コストは300円/kg以下となる。
風力発電装置を装備した船には得られた水素を用いて、 鉄鉱石から水素還元精錬により鉄を製造する公知の商業化装置が装備してあり、得られた電気と水素を用いて鉄を製造する
図1
図2
図3