(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130293
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リリーフ弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16K17/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039935
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達夫
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA03
3H059BB06
3H059CA02
3H059CB02
3H059CD05
3H059CD11
3H059CE04
3H059EE01
3H059FF03
(57)【要約】
【課題】リリーフ弁内にエアが混入しても、リリーフ弁の作動が不安定になることを抑制する。
【解決手段】リリーフ弁100は、背圧室5とドレン室9とを連通または遮断するパイロットポペット10と、パイロットポペット10を閉弁方向に付勢するスプリング22と、スプリング22のパイロットポペット10と反対側の端部の位置を規定し、当該位置を変化させることでスプリング22のパイロットポペット10への付勢力を調整する圧電アクチュエータ20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リリーフ弁であって、
高圧側と低圧側とを連通または遮断する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する弾性部材と、
前記弾性部材の前記弁体と反対側の端部の位置を規定し、前記位置を変化させることで前記弾性部材の前記弁体への付勢力を調整する圧電アクチュエータと、を備えることを特徴とするリリーフ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧通路内の作動油の圧力が設定圧に達すると開弁し、高圧通路から低圧通路へ作動油を逃がすことにより、高圧通路内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止する電磁リリーフ弁が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電磁リリーフ弁は、設定圧を変更することを可能にするソレノイド部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリリーフ弁は、出荷時に検査を行った後、搬送され、その後、バルブブロックなどの油圧機器に取り付けられる。特許文献1に記載のリリーフ弁では、搬送中の振動などの影響により、弁内部にエアが混入することがある。
【0006】
例えば、ソレノイド部のプランジャを付勢するスプリングが収容されるスプリング室にエアが混入してしまうと、プランジャの移動に伴いエアが膨張及び収縮して、リリーフ弁の作動が不安定になる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、リリーフ弁内にエアが混入しても、リリーフ弁の作動が不安定になることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高圧側の通路と低圧側の通路とを連通または遮断する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢する弾性部材と、弾性部材の弁体と反対側の端部の位置を規定し、位置を変化させることで弾性部材の弁体への付勢力を調整する圧電アクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明では、圧電アクチュエータによって弾性部材の弁体への付勢力を調整しているため、プランジャが存在しない。したがって、弁内部にエアが混入しても、リリーフ弁の作動が不安定になることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リリーフ弁内にエアが混入しても、リリーフ弁の作動が不安定になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るリリーフ弁の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例に係るリリーフ弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るリリーフ弁100について説明する。
【0013】
リリーフ弁100は、パイロット形式のリリーフ弁である。リリーフ弁100は、高圧通路H内の作動油の圧力が設定圧(リリーフ圧)に達すると開弁し、高圧通路Hから低圧通路Lへ作動油を逃がすことにより、高圧通路H内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止する。
【0014】
図1に示すように、リリーフ弁100は、機器本体1にねじ結合により取り付けられる。機器本体1は、油圧シリンダ、油圧ポンプ、油圧モータ、複数の弁を有するバルブブロック等の油圧機器の本体である。本実施形態では、機器本体1の作動液として作動油を使用した場合を例に説明するが、作動液は、作動水などの他の液体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、リリーフ弁100は、高圧通路Hと低圧通路Lとが設けられる機器本体1に取り付けられる第1バルブハウジング2と、第1バルブハウジング2の内側に設けられる第2バルブハウジング3と、第2バルブハウジング3に形成されたシート部3cから離座またはシート部3cに着座することで高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断する主弁体としてのメインポペット4と、第2バルブハウジング3内に設けられ、高圧通路Hからメインポペット4を閉弁方向に付勢するための作動油が導かれる背圧室5と、メインポペット4に設けられ、高圧通路Hと背圧室5とを連通するパイロット通路6と、リリーフ弁100の設定圧(リリーフ圧)を調整するための圧電アクチュエータ20と、圧電アクチュエータ20を収容するハウジング8と、ハウジング8内に設けられ背圧室5の作動油が排出されるドレン室9と、ハウジング8に設けられドレン室9と背圧室5とを連通する第1連通路P1と、ハウジング8内に設けられ、第1連通路P1を開閉する弁体としてのパイロットポペット10と、を備える。
【0016】
図1に示すように、第1バルブハウジング2は、機器本体1に取り付けられる第1円筒部2aと、第1円筒部2aとは反対側においてハウジング8とねじ結合される第2円筒部2bと、を有する円筒状に形成された部材である。
【0017】
第2バルブハウジング3は、円筒部3aと底部3bとを有する有底円筒状に形成された部材である。第2バルブハウジング3は、円筒部3aの開口端側がハウジング8の先端部8aに固定され、底部3b側が第1バルブハウジング2の第1円筒部2aの開口から突出する。第2バルブハウジング3の底部3bには、高圧通路Hに連通する高圧ポート3Hが設けられ、円筒部3aの底部3b近傍には、低圧通路Lに連通する低圧ポート3Lが設けられる。
【0018】
第2バルブハウジング3の底部3b側には、メインポペット4が収容される第1収容孔3dが設けられ、底部3bとは反対側の端部には、第1収容孔3dより径が大きい第2収容孔3eが設けられる。
【0019】
メインポペット4は、第1収容孔3d内を摺動可能な本体部40と、本体部40に軸方向に貫通して形成された摺動孔40a内を摺動可能なパイロットピストン41と、を有する。
【0020】
本体部40は、第2バルブハウジング3の内側に形成されるシート部3cに着座する弁部40bを有する。弁部40bがシート部3cに着座することにより、第2バルブハウジング3とメインポペット4との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。本体部40の外周面と第2バルブハウジング3の内周面との間には、本体部40と第2バルブハウジング3との間の隙間をシールするシール部材(Oリング)が設けられる。
【0021】
パイロットピストン41は、第2バルブハウジング3の内周面とメインポペット4とハウジング8の先端部8aとによって区画される空間である背圧室5に臨んで設けられるフランジ部41aと、フランジ部41aから軸方向に延在し摺動孔40a内に挿入される円柱状の軸部41bと、を有する。軸部41bの先端部は、高圧通路Hに臨む本体部40の先端面から突出する。また、パイロットピストン41には、高圧通路Hと背圧室5とを連通するパイロット通路6が設けられる。パイロット通路6には、パイロット通路6を流れる作動油に抵抗を付与する絞りが設けられる。
【0022】
図1に示すように、パイロットピストン41のフランジ部41aとハウジング8の先端部8aとの間にはスプリング21が設けられる。スプリング21は、フランジ部41aがメインポペット4の本体部40に当接するようにパイロットピストン41を付勢するとともに、本体部40が第2バルブハウジング3のシート部3cに着座するようにフランジ部41aを介して本体部40を付勢する。
【0023】
ハウジング8は、有底円筒状に形成された部材である。ハウジング8は、第2バルブハウジング3の第2収容孔3eに挿入される先端部8aと、先端部8aより大径の連結部8bと、連結部8bより大径の本体部8cと、ハウジング8の一端に開口し、先端部8a、連結部8b及び本体部8cにわたって軸方向に延びる収容孔8dと、を有する。
【0024】
先端部8aの外周面には、第2バルブハウジング3の円筒部3aが固定される。先端部8aの外周面と第2バルブハウジング3の円筒部3aの内周面との間には、これらの間の隙間をシールするシール部材(Oリング)が設けられる。
【0025】
また、先端部8aには、背圧室5と収容孔8dとを連通する第1連通路P1と、一端が収容孔8dに開口するとともに他端が先端部8aの外周面に開口するドレン通路13と、が形成される。ドレン通路13は、先端部8aの周方向に間隔を開けて複数設けられる。
【0026】
連結部8bは、先端部8aと本体部8cとの間に設けられる。連結部8bの外周面には、第1バルブハウジング2の第2円筒部2bと連結するためのおねじが形成される。
【0027】
ハウジング8の収容孔8dの開口端には、パイロットポペット10の移動方向における圧電アクチュエータ20の位置を調整するアジャスタ30が設けられる。アジャスタ30の具体的な構成については、後で説明する。
【0028】
収容孔8dに開口する第1連通路P1の開口端には、パイロットポペット10の弁部10aが離着座するシート部8eが設けられる。また、シート部8eと背圧室5との間の第1連通路P1上には、第1連通路P1を流れる作動油の流れに抵抗を与える絞り8fが設けられる。なお、本実施形態では、第1連通路P1及び背圧室5が、特許請求の範囲における「高圧側」に相当する。
【0029】
ドレン室9は、ハウジング8の収容孔8dと圧電アクチュエータ20とによって区画された空間である。ドレン室9は、ドレン通路13、及び第2バルブハウジング3の外周面と第1バルブハウジング2の内周面との間の隙間14と、を通じて低圧通路Lと常時連通する。なお、本実施形態では、ドレン室9、ドレン通路13、及び隙間14が、特許請求の範囲における「低圧側」及び「ドレン通路」に相当する。
【0030】
図1に示すように、パイロットポペット10は、収容孔8dに収容される。パイロットポペット10は、円錐状に形成された弁部10aと、弁部10aから軸方向に延びるガイド部10bと、を有する。
【0031】
パイロットポペット10は、パイロットポペット10と圧電アクチュエータ20との間に設けられた弾性部材としてのスプリング22によって閉弁方向に付勢される。スプリング22は、ガイド部10bによって径方向の移動が規制される。
【0032】
圧電アクチュエータ20は、ピエゾ素子を複数枚積層して形成される。圧電アクチュエータ20のリード線(図示せず)は、ハウジング8を通って外部のコントローラ(図示せず)に接続される。圧電アクチュエータ20は、コントローラから印加される電流に応じて、積層方向(
図1におけるリリーフ弁100の軸方向)に伸長または収縮する。印加電流として、圧電アクチュエータ20を伸張させる電流を「正の電流」といい、圧電アクチュエータ20を収縮させる電流を「負の電流」という。正の電流と負の電流とは、互いに極性が異なる電流である。
【0033】
圧電アクチュエータ20は、スプリング22の一端(パイロットポペット10と反対側の端部)の位置を規定するとともに、スプリング22のパイロットポペット10へ付勢力を調整する。具体的には、圧電アクチュエータ20に負の電流が印加されると、圧電アクチュエータ20が収縮する。これにより、スプリング22が伸張することで、パイロットポペット10へ付勢力が小さくなる。この結果、パイロットポペット10の弁部10aをシート部8eから離座させるために必要となる圧力、いわゆるクラッキング圧が小さくなる。
【0034】
これに対し、圧電アクチュエータ20に正の電流が印加されると、圧電アクチュエータ20が伸張する。これにより、スプリング22が圧縮されることで、パイロットポペット10へ付勢力が大きくなる。この結果、パイロットポペット10の弁部10aをシート部8eから離座させるために必要となる圧力、いわゆるクラッキング圧が大きくなる。
【0035】
このように、リリーフ弁100では、圧電アクチュエータ20に印加する電流を制御してパイロットポペット10に作用するスプリング22の付勢力を変化させることによって、パイロットポペット10が開弁する設定圧(リリーフ圧)を変更することができる。
【0036】
アジャスタ30は、圧電アクチュエータ20の初期位置及びスプリング22の初期荷重を調整するために用いられる。アジャスタ30は、調節ねじ31と、ロックナット32と、を有する。
【0037】
調節ねじ31は、ハウジング8の収容孔8dの開口端に形成されためねじ部8gに螺合する。調節ねじ31を回転させることで、調節ねじ31がハウジング8に対して軸方向に移動する。具体的には、調節ねじ31をねじ込むことにより、圧電アクチュエータ20がスプリング22を圧縮する方向に移動する。反対に、調節ねじ31を緩めることにより、圧電アクチュエータ20がスプリング22が伸張する方向に移動する。
【0038】
ロックナット32は、調節ねじ31のゆるみ止めとして機能する。
【0039】
次に、リリーフ弁100の動作について説明する。
【0040】
高圧通路Hの作動油は、パイロット通路6及び背圧室5を通じて第1連通路P1に導かれる。第1連通路P1に導かれた作動油の圧力が、スプリング22によって設定される設定圧(クラッキング圧)に達すると、作動油の圧力によって、パイロットポペット10の弁部10aがシート部8eから離座する。
【0041】
パイロットポペット10の弁部10aがシート部8eから離座すると、背圧室5内の作動油が、第1連通路P1、ドレン室9、ドレン通路13及び隙間14を通じて低圧通路Lへと排出される。
【0042】
背圧室5には、パイロット通路6を通じて高圧通路Hから作動油が常時供給される。しかしながら、高圧通路Hから背圧室5への作動油の供給は、パイロット通路6に設けられた絞りによって制限される。このため、弁部10aがシート部8eから離座して背圧室5内の作動油が排出されると、背圧室5の圧力は、高圧通路Hの圧力よりも次第に低くなる。
【0043】
このように、背圧室5の圧力が低下すると、メインポペット4の本体部40を第2バルブハウジング3のシート部3cに着座させる方向に作用する背圧室5の圧力による付勢力が低下する。そして、背圧室5の圧力と高圧通路Hの圧力との圧力差が予め設定された圧力差を超えると、メインポペット4の本体部40が第2バルブハウジング3のシート部3cから離座し、メインポペット4が開弁する。これにより、高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油が排出され、高圧通路Hの圧力が設定圧よりも高圧となることが防止される。
【0044】
ところで、スプリング22のパイロットポペット10へ付勢力を調整するために、圧電アクチュエータ20に換えてソレノイドを用いることが考えられる。ここで、
図2を参照して、比較例であるソレノイドを用いたリリーフ弁200について、簡単に説明する。なお、以下では、ソレノイド部分のみを説明する。
【0045】
リリーフ弁200は、ソレノイドへの電流の通電量を大きくするにつれて、設定圧(リリーフ圧)が高くなる逆比例タイプのリリーフ弁である。逆比例タイプとは、ソレノイドに印加する電流値が大きくなるほど、リリーフ圧が小さくなるように構成されたリリーフ弁である。
【0046】
リリーフ弁200のソレノイド部Sは、ソレノイドハウジング71内に摺動自在に収容されるプランジャ72、プランジャ72に固定され先端がパイロットポペット10に当接するロッド73と、ソレノイドハウジング71内に係止されプランジャ72をパイロットポペット10側に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング74と、ソレノイドハウジング71に収容されプランジャ72にスプリング74の付勢力に対向する反力を付与するコイル75と、を有する。
【0047】
ソレノイドハウジング71には、プランジャ72が摺動する収容孔71aと軸方向に連続して形成され、スプリング74が収容される付勢部材室としてのスプリング室76が設けられる。
【0048】
スプリング74の付勢力は、プランジャ72及びプランジャ72に連結されるロッド73を介してパイロットポペット10を閉弁方向に付勢するように作用する。つまり、スプリング74は、パイロットポペット10の弁部(
図1参照)がシート部(
図1参照)に着座するようにパイロットポペット10を付勢している。
【0049】
コイル75は、電流が印加されると、プランジャ72にスプリング74の付勢力に対向する推力を付与する。コイル75に印加される電流が大きくなるにつれて、プランジャ72及びロッド73を介してパイロットポペット10に作用するスプリング74の付勢力が小さくなる。この結果、クラッキング圧が小さくなる。
【0050】
このように、リリーフ弁200では、コイル75に印加する電流を制御してパイロットポペット10に作用するスプリング74の付勢力を変化させることによって、パイロットポペット10が開弁する設定圧(リリーフ圧)を変更することができる。
【0051】
このようなリリーフ弁200では、パイロットポペット10が開弁するために移動すると、プランジャ72が移動してスプリング室76の容積が縮小する。このとき、スプリング室76の作動油の一部が貫通孔72aを通じて移動する。しかしながら、リリーフ弁200内に混入したエアが、スプリング室76内に入り込んでしまうと、プランジャ72が移動した際に、パイロットポペット10が開いて発振するおそれがある。これにより、リリーフ弁200の作動が不安定になるおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態のリリーフ弁100は、圧電アクチュエータ20によってスプリング22のパイロットポペット10への付勢力を調整しているため、プランジャが存在しない。したがって、リリーフ弁100の内部にエアが混入しても、発振することがないため、リリーフ弁100の作動が不安定になることを抑制することができる。
【0053】
なお、リリーフ弁100は、上記実施形態に例示したものに限らない。ここで、
図3を参照して、リリーフ弁100の変形例であるリリーフ弁300について具体的に説明する。以下では、リリーフ弁100と異なる点のみを説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0054】
図3に示すリリーフ弁300は、パイロット形式のリリーフ弁であるが、本変形例におけるリリーフ弁300は、直動形式のリリーフ弁である。具体的には、
図3に示すように、リリーフ弁300では、パイロットポペット10、背圧室5、パイロット通路6及びパイロットピストン41が存在していない。このため、リリーフ弁300では、スプリング22の付勢力は、メインポペット304に直接作用する。
【0055】
リリーフ弁300では、ハウジング308に、高圧通路Hに連通する高圧ポート303Hと、低圧通路Lに連通する低圧ポート303Lと、が設けられる。メインポペット304は、高圧ポート303Hと低圧ポート303Lとの連通を制御する。なお、この変形例におけるメインポペット304は、特許請求の範囲の「弁体」に相当し、高圧ポート303Hは、特許請求の範囲の「高圧側」に相当し、低圧ポート303Lは、特許請求の範囲の「低圧側」に相当する。
【0056】
このように構成されたリリーフ弁300では、高圧ポート303Hの作動油の圧力が、スプリング22によって設定される設定圧(クラッキング圧)に達すると、作動油の圧力によって、メインポペット304の弁部304aがシート部308eから離座する。これにより、高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油が排出され、高圧通路Hの圧力が設定圧よりも高圧となることが防止される。
【0057】
本変形例のリリーフ弁300においても、圧電アクチュエータ20によってスプリング22のメインポペット304への付勢力を調整しているため、プランジャが存在しない。したがって、リリーフ弁300の内部にエアが混入しても、発振することがないため、リリーフ弁300の作動が不安定になることを抑制することができる。
【0058】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0059】
リリーフ弁100,300は、高圧側(背圧室5、高圧ポート303H)と低圧側(ドレン室9、低圧ポート303L)とを連通または遮断する弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)と、弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)を閉弁方向に付勢する弾性部材(スプリング22)と、弾性部材(スプリング22)の弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)と反対側の端部の位置を規定し、当該位置を変化させることで弾性部材(スプリング22)の弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)への付勢力を調整する圧電アクチュエータ20と、を備える。
【0060】
この構成では、圧電アクチュエータ20によって弾性部材(スプリング22)の弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)への付勢力を調整しているため、プランジャが存在しない。したがって、リリーフ弁100,300の内部にエアが混入しても、リリーフ弁100,300の作動が不安定になることを抑制することができる。
【0061】
リリーフ弁100は、リリーフ弁100が取り付けられる機器本体1に設けられた高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断する主弁体(メインポペット4)と、高圧通路Hから主弁体(メインポペット4)を閉弁方向に付勢するための作動液(作動油)が導かれる背圧室5と、をさらに備え、高圧側である背圧室5の圧力が弾性部材(スプリング22)の付勢力を上回ったときに、弁体(パイロットポペット10)が開弁して低圧側であるドレン通路(ドレン室9、ドレン通路13、隙間14)に背圧室5内の作動液(作動油)を排出する。
【0062】
この構成では、弁体(パイロットポペット10)が背圧室5とドレン通路(ドレン室9、ドレン通路13、隙間14)との間の作動液(作動油)の流れを制御するだけでよいので、弁体(パイロットポペット10)及び弾性部材(スプリング22)を小さくできる。また、主弁体(メインポペット4)によって高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断しているので、リリーフ流量を大きくすることができる。よって、リリーフ弁100の流量を大きくしつつ、リリーフ弁100の大型化を抑制できる。
【0063】
リリーフ弁100,300は、圧電アクチュエータ20を収容するハウジング8,308と、ハウジング8,308に取り付けられ、弁体(パイロットポペット10、メインポペット304)の移動方向における圧電アクチュエータ20の位置を調整するアジャスタ30と、をさらに備える。
【0064】
この構成では、圧電アクチュエータ20の初期位置ないし弾性部材(スプリング22)の初期荷重を簡単に調整することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
上記リリーフ弁100,300は、パイロット形式のリリーフ弁、及び直動形式のリリーフ弁の一例を示すものであり、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
100,200,300・・・リリーフ弁、1・・・機器本体、2・・・第1バルブハウジング、3・・・第2バルブハウジング、3H・・・高圧ポート、3L・・・低圧ポート、3c・・・シート部、4・・・メインポペット(主弁体)、5・・・背圧室(高圧側)、6・・・パイロット通路、8・・・ハウジング、8e・・・シート部、9・・・ドレン室(低圧側、ドレン通路)、10・・・パイロットポペット(弁体)、13・・・ドレン通路(低圧側)、14・・・隙間(低圧側、ドレン通路)、20・・・圧電アクチュエータ、22・・・スプリング(弾性部材)、30・・・アジャスタ、72・・・プランジャ、74・・・スプリング、76・・・スプリング室、303H・・・高圧ポート(高圧側)、303L・・・低圧ポート(低圧側)、304・・・メインポペット(弁体)、308・・・ハウジング、308e・・・シート部、H・・・高圧通路、L・・・低圧通路、P1・・・第1連通路(高圧側)、S・・・ソレノイド部