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特開2024-130295OTFS変調とOFDM変調とを切り替える送信局及び受信局
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130295
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】OTFS変調とOFDM変調とを切り替える送信局及び受信局
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20240920BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20240920BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240920BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240920BHJP
【FI】
H04L27/26 100
H04J99/00
H04W28/18 110
H04W72/0446
H04W72/0453
H04W16/28 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039937
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金 燦鎬
(72)【発明者】
【氏名】大澤 昇
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC02
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】ドップラー周波数の影響に応じて、OTFS変調とOFDM変調とを切り替えることができる送信局及び受信局を提供する。
【解決手段】所定のキャリア周波数で受信局と無線通信する送信局において、シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、受信局との間の相対的な移動速度を取得する移動速度取得手段と、移動速度に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と、切替手段を制御する際に、制御信号としての切替通知を受信局へ送信する切替通知手段とを有する。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のキャリア周波数で受信局と無線通信する送信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
受信局との間の相対的な移動速度を取得する移動速度取得手段と、
移動速度に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と、
切替手段を制御する際に、制御信号としての切替通知を受信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする送信局。
【請求項2】
切替制御手段は、移動速度毎に、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方が予め対応付けられた切替制御テーブル用いて、切替手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項3】
移動速度取得手段は、時刻毎に、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度が既定された移動速度テーブルを予め記憶しており、
時刻に応じて、当該移動速度テーブルを参照して移動速度を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項4】
移動速度取得手段は、受信局から移動速度及び移動方位を受信し、受信局との間の距離及び角度における単位時間当たりの変位によって、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項5】
移動速度取得手段は、受信局から位置情報を周期的に受信し、受信局との間の距離及び角度における単位時間当たりの変位によって、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項6】
当該送信局又は受信局の一方が固定局であり、他方が移動局である
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項7】
受信局との間で、時刻を同期させる時刻同期手段を更に有し、
切替制御手段は、受信局と同期して、直交周波数分割多重化手段と直交時間周波数空間多重化手段とを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項8】
移動速度からドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段を更に有し、
切替制御手段は、切替手段に対して、
ドップラー周波数が所定閾値以下の場合に、直交周波数分割多重化手段へ切り替え、
ドップラー周波数が所定閾値よりも高い場合に、直交時間周波数空間多重化手段へ切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項9】
切替制御手段は、直交時間周波数空間多重信号における1シンボル当たりのチャネル容量が、直交周波数分割多重信号における1シンボル当たりのチャネル容量よりも高くなるドップラー周波数の所定閾値をシミュレーションによって予め設定する
ことを特徴とする請求項8に記載の送信局。
【請求項10】
切替制御手段は、当該チャネル容量が3倍以上となる方の直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段が選択されるように、ドップラー周波数の所定閾値をシミュレーションによって予め設定する
ことを特徴とする請求項9に記載の送信局。
【請求項11】
ドップラー周波数推定手段は、以下のように推定する
f'=fc・v・k
f':ドップラー周波数
fc:キャリア周波数
v:移動速度
k:係数
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の送信局。
【請求項12】
直交周波数分割多重化手段は、時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換部からなり、
直交時間周波数空間多重化手段は、時間-周波数領域の信号に変換する逆シンプレクティックフーリエ変換部と、当該逆フーリエ変換部とからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の送信局。
【請求項13】
所定のキャリア周波数で受信局と無線通信する送信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
受信局から参照信号を受信し、当該参照信号における振幅及び位相の変位から、ドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段と、
ドップラー周波数に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を受信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする送信局。
【請求項14】
所定のキャリア周波数で送信局と無線通信する受信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
送信局との間の相対的な移動速度を取得する移動速度取得手段と、
移動速度に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と、
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を送信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする受信局。
【請求項15】
所定のキャリア周波数で送信局と無線通信する受信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
送信局から参照信号を受信し、当該参照信号における振幅及び位相の変位から、ドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段と、
ドップラー周波数に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を送信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする受信局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTFS(Orthogonal time frequency space)(直交時間周波数空間)変調の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信局と受信局との間に相対的な速度が存在する場合、電波の周波数が、実際の周波数と異なる周波数として受信される現象がある。この現象は一般に、ドップラー効果(Doppler effect)と称される。ドップラー効果によって、送信局と受信局とが高速に近づくほど、電波の振動が詰められて周波数が高くなり、逆に高速に遠ざかるほど、電波の振動が伸ばされて周波数が低くなる。
【0003】
このようなドップラー効果の影響を低減して通信する技術として、OTFS変調がある。OTFS変調とは、情報シンボルを、遅延-ドップラー領域のリソースエレメント(Resource Element)にマッピングし、ISFFT(Inverse Symplectic Fast Fourier Transform)によって時間-周波数領域の信号に変換する技術をいう。OTFSを実装する際に、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を拡張した技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。具体的には、OTFSの1ブロックは、複数のOFDMシンボルから生成されることとなる。
【0004】
OTFS変調は、リソースエレメントにマッピングした情報シンボルを、時間-周波数領域に拡散する。具体的には、周波数領域では信号帯域幅に拡散し、時間領域では1サブフレーム区間に拡散する。そのために、OTFS変調は、OFDM変調と比較して大きな周波数ダイバーシチ効果と時間ダイバーシチ効果とを得ることができる。OTFS変調は、ドップラー効果の影響が大きくなる高速移動の環境では、OFDM変調よりもブロック誤り率が低下する。
【0005】
図1は、ドップラー周波数の影響が生じるシステムの例である。
【0006】
図1(a)によれば、送信局1は、地上に固定された基地局であり、受信局2は、宇宙空間の衛星である。基地局から見た衛星は、移動速度vで高速に移動している。
図1(b)によれば、送信局1は、固定された基地局であり、受信局2は、鉄道車両である。基地局から見た鉄道車両は、移動速度vで高速に移動している。
例えば携帯電話用周波数3GHz~7GHz帯によれば、固定局と、200km/h~800km/h程度の新幹線や航空機のような移動局との間の通信では、ドップラー効果の影響による通信レートの劣化が生じやすい。このような通信環境に対処するために、OTFS変調を適用することは好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第11456908号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Study on Doppler Frequency Offset Estimation Algorithm for High Speed Maglev、[online]、[令和5年3月12日検索]、インターネット<URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/9445904>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、ドップラー効果の影響が大きい場合には、OTFS変調を適用することは好ましい。
しかしながら、OTFS変調は、消費電力が増大するという課題がある。例えば、送受信時における1ビットシンボル単位の計算量について、OTFS変調の計算量は、OFDM変調の計算量の3乗に増大する。それに応じて、消費電力量も増大することとなる。
即ち、ドップラー効果の影響が小さい場合には、OTFS変調よりも、OFDM変調を適用した方が、計算量が少なく且つ消費電力が抑えられ、通信容量も大きくなるといえる。
【0010】
そこで、本発明は、ドップラー効果の影響に応じて、OTFS変調とOFDM変調とを切り替えることができる送信局及び受信局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、所定のキャリア周波数で受信局と無線通信する送信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
受信局との間の相対的な移動速度を取得する移動速度取得手段と、
移動速度に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と、
切替手段を制御する際に、制御信号としての切替通知を受信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
切替制御手段は、移動速度毎に、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方が予め対応付けられた切替制御テーブル用いて、切替手段を制御する
ことも好ましい。
【0013】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
移動速度取得手段は、時刻毎に、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度が既定された移動速度テーブルを予め記憶しており、
時刻に応じて、当該移動速度テーブルを参照して移動速度を取得する
ことも好ましい。
【0014】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
移動速度取得手段は、受信局から移動速度及び移動方位を受信し、受信局との間の距離及び角度における単位時間当たりの変位によって、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度を推定する
ことも好ましい。
【0015】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
移動速度取得手段は、受信局から位置情報を周期的に受信し、受信局との間の距離及び角度における単位時間当たりの変位によって、当該送信局から見た受信局の相対的な移動速度を推定する
ことも好ましい。
【0016】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
当該送信局又は受信局の一方が固定局であり、他方が移動局である
ことも好ましい。
【0017】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
受信局との間で、時刻を同期させる時刻同期手段を更に有し、
切替制御手段は、受信局と同期して、直交周波数分割多重化手段と直交時間周波数空間多重化手段とを切り替える
ことも好ましい。
【0018】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
移動速度からドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段を更に有し、
切替制御手段は、切替手段に対して、
ドップラー周波数が所定閾値以下の場合に、直交周波数分割多重化手段へ切り替え、
ドップラー周波数が所定閾値よりも高い場合に、直交時間周波数空間多重化手段へ切り替える
ことも好ましい。
【0019】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
切替制御手段は、直交時間周波数空間多重信号における1シンボル当たりのチャネル容量が、直交周波数分割多重信号における1シンボル当たりのチャネル容量よりも高くなるドップラー周波数の所定閾値をシミュレーションによって予め設定する
ことも好ましい。
【0020】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
切替制御手段は、当該チャネル容量が3倍以上となる方の直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段が選択されるように、ドップラー周波数の所定閾値をシミュレーションによって予め設定する
ことも好ましい。
【0021】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
ドップラー周波数推定手段は、以下のように推定する
f'=fc・v・k
f':ドップラー周波数
fc:キャリア周波数
v:移動速度
k:係数
ことも好ましい。
【0022】
本発明の送信局における他の実施形態によれば、
直交周波数分割多重化手段は、時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換部からなり、
直交時間周波数空間多重化手段は、時間-周波数領域の信号に変換する逆シンプレクティックフーリエ変換部と、当該逆フーリエ変換部とからなる
ことも好ましい。
【0023】
本発明によれば、所定のキャリア周波数で受信局と無線通信する送信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
受信局から参照信号を受信し、当該参照信号における振幅及び位相の変位から、ドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段と、
ドップラー周波数に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を受信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、所定のキャリア周波数で送信局と無線通信する受信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
送信局との間の相対的な移動速度を取得する移動速度取得手段と、
移動速度に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と、
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を送信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、所定のキャリア周波数で送信局と無線通信する受信局において、
シンボル列を、直交周波数分割多重化する直交周波数分割多重化手段と、
シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する直交時間周波数空間多重化手段と、
ビットストリームをマッピングしたシンボル列を、直交周波数分割多重化手段又は直交時間周波数空間多重化手段の一方のみへ入力するべく切り替える切替手段と、
送信局から参照信号を受信し、当該参照信号における振幅及び位相の変位から、ドップラー周波数を推定するドップラー周波数推定手段と、
ドップラー周波数に基づいて、切替手段を制御する切替制御手段と
切替手段を制御した際に、制御信号としての切替通知を送信局へ送信する切替通知手段と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の送信局及び受信局によれば、ドップラー効果の影響に応じて、OTFS変調とOFDM変調とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ドップラー周波数の影響が生じるシステムの例である。
図2】本発明における切替主導となる送信局の機能構成図である。
図3】本発明における切替制御の説明図である。
図4】本発明における送信局と受信局との間のシーケンス図である。
図5】参照信号からドップラー周波数を推定する送信局の機能構成図である。
図6図2に送信局に対向する受信局の機能構成図である。
図7】本発明における切替主導となる受信局の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明における切替主導となる送信局の機能構成図である。
【0030】
一般に、通信方式の制御は、基地局側によって実行される。ここでは、送信局1が、基地局としての固定局であり、受信局2が移動局であるとする。
図2によれば、送信局1は、シンボルマッパ101と、CP(Cyclic Prefix)部102と、OFDM部11と、OTFS部12と、切替部13と、移動速度取得部14と、切替制御部15と、ドップラー周波数推定部16と、時刻同期部17と、切替通知部18とを有する。これら機能構成部は、送信局に搭載されたモデムチップ(コンピュータ)を機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、モデムチップの送信方法としても理解できる。
【0031】
<送信局1>
[シンボルマッパ101]
シンボルマッパ101は、送信データのビットストリームを、変調方式に応じた複素(IQ)平面にマッピングしたN個のシンボル列に変換する。例えば64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)であれば、ビットストリームを6ビット単位に区切り、複素平面に64点でマッピングする。複素平面の横軸は、振幅単位の実部となり、縦軸は、振幅単位の虚部となる。変換されたシンボル列は、切替部13へ出力される。
【0032】
[切替部13]
切替部13は、シンボル列を、OFDM部11又はOTFS部12の一方のみへ入力するべく切り替える。その切り替えは、切替制御部15からの制御に従う。
【0033】
[OFDM部11]
OFDM部11は、シンボル列を、直交周波数分割多重化する。これは、時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換(IFFT(Inverse Fast Fourier Transform))部110からなる。逆フーリエ変換部110によって、例えば6ビット単位で正弦波に変換される。
【0034】
[OTFS部12]
OTFS部12は、シンボル列を、直交時間周波数空間多重化する。これは、時間-周波数領域の信号に変換する逆シンプレクティックフーリエ変換(ISFFT(Inverse Symplectic Fast Fourier Transform))部120と、逆フーリエ変換部110とからなる。OTFS部12は、OFDM部11を拡張して実装されるものであってもよい(例えば特許文献1参照)。
【0035】
[CP部102]
CP部102は、OFDM部11又はOTFS部12から入力されたシンボルの先頭に、冗長信号(サイクリックプレフィクス)を付加する。具体的には、シンボルの後端からの一定時間分のデータをサイクリックプレフィクスとして、シンボルの先頭に挿入する。これによって、シンボル間干渉やキャリア間干渉を抑制する。
CP部102からの出力信号は、D/A変換(Digital Analog Converter)後、アンテナから送信される。
【0036】
図3は、本発明における切替制御の説明図である。
図4は、本発明における送信局と受信局との間のシーケンス図である。
【0037】
[移動速度取得部14]
移動速度取得部14は、受信局2との間の相対的な移動速度を取得する。例えば以下の3つの方法がある。
<移動速度テーブルとして記憶する方式>
<受信局から移動速度及び移動方位を受信する方式>
<受信局から位置情報を受信する方式>
【0038】
<移動速度テーブルとして記憶する方式>(図4のS141参照)
移動速度取得部14は、時刻毎に、送信局1から見た受信局2の相対的な移動速度が既定された「移動速度テーブル」を予め記憶しておく。これによって、時刻に応じて、当該移動速度テーブルを参照して移動速度を取得することができる。
例えば周期的に移動する中軌道衛星又は低軌道衛星や、時刻表に基づいて移動する新幹線のような高速鉄道の場合、1日の時刻に応じて、位置が特定され、送信局1から見た移動速度も、予め特定することができる。特定された移動速度に応じて、ドップラー周波数も推定することができる。そのために、時刻に応じて移動速度をテーブルに規定しておくことができる。
【0039】
例えば送信局1が地球の地上固定局であり、受信局2が衛星である場合を想定する。地上固定局である送信局1は、地球として1700km/hで回っており、衛星である受信局2は、地球上から高度500km(低軌道衛星)のとこで、7~8km/hで移動していることとなる。送信局1から見た受信局2の角度によって、送信局1と受信局2との間の距離も変位し、移動速度も変わる。
【0040】
<受信局から移動速度及び移動方位を受信する方式>(図4のS142参照)
移動速度取得部14は、受信局2から、制御情報として、「移動速度及び移動方位」を受信する。これによって、送信局1から見た受信局2との間の距離及び角度における単位時間当たりで変位する移動軌跡から、相対的な移動速度を推定することができる。
【0041】
<受信局から位置情報を受信する方式>(図4のS143参照)
移動速度取得部14は、受信局2から、制御情報として、「位置情報(緯度・経度・高度)」を周期的に受信し、送信局1から見た受信局2との間の距離及び角度における単位時間当たりの変位する移動軌跡から、相対的な移動速度を推定することができる。
【0042】
[時刻同期部17]GNSS
時刻同期部17は、受信局2との間で、高精度に時刻を同期させる。具体的には、GNSS(Global Navigation Satelite System)プロトコル等の電波を受信することによって、UTC(Coordinated Universal Time)を生成する。また、SNTP(Simple Network Time Protocol)やNTP(Network Time Protocol)、PTP(Precision Time Protocol)を用いるものであってもよい。
送信局1と受信局2との間で、高精度に時刻を同期させることによって、切替制御部15は、受信局2との間でOFDM部11とOTFS部12との切り替えを同期させる。また、移動速度取得部14は、時刻に応じた受信局2の移動速度を高精度に導出することができる。
【0043】
[ドップラー周波数推定部16]
ドップラー周波数推定部16は、移動速度から、ドップラー周波数を推定する。ドップラー周波数推定部16は、具体的には以下のように、最大ドップラー周波数を推定する。
f'=fc・v・k
f':最大ドップラー周波数
fc:キャリア周波数
v:移動速度
k:係数
ここで、係数kは、以下のように算出される。
k=cosθ/c
θ:電波の受信角度(固定局から見た移動局の角度)
c:光速
【0044】
[切替制御部15]
切替制御部15は、以下の2つの方法で、切替部13を制御する。
<移動速度テーブルを用いた移動速度による切替制御>
<推定したドップラー周波数による切替制御>
【0045】
<移動速度テーブルを用いた移動速度による切替制御>
切替制御部15は、移動速度毎に、OFDM部11又はOTFS部12の一方が予め対応付けられた「切替制御テーブル」を有する。切替制御部15は、移動速度取得部14から入力された移動速度に応じて、切替制御テーブルを参照して、切替部13を制御する。
ここで、切替制御部15の切替制御テーブルは、移動速度から、ドップラー周波数を推定し、そのドップラー周波数に応じて、OFDM部11又はOTFS部12に切り替えるように規定される。
【0046】
ここで、切替制御テーブルは、キャリア周波数fcに応じて異なる。キャリア周波数が一定であれば、移動速度vが高速になるほど、ドップラー周波数f'も高くなる。一方で、移動速度vが一定であっても、キャリア周波数fcが高くなるほど、ドップラー周波数f'も高くなる。
【0047】
切替制御部15は、切替部13に対して、ドップラー周波数に応じて以下のように切り替える。
・ドップラー周波数が所定閾値以下の場合: OFDM部11へ切り替え
・ドップラー周波数が所定閾値よりも高い場合: OTFS部12へ切り替え
【0048】
ここで、ドップラー周波数の所定閾値は、シミュレーションによって予め設定したものである。
切替制御部15は、OTFS部12における1シンボル当たりのチャネル容量が、OFDM部11における1シンボル当たりのチャネル容量よりも高くなる時のドップラー周波数に設定する。具体的には、切替制御部15は、当該チャネル容量が3倍以上となる方のOFDM部11又はOTFS部12が選択されるように、ドップラー周波数の所定閾値をシミュレーションによって予め設定することも好ましい。
【0049】
<推定したドップラー周波数による切替制御>
図5は、参照信号からドップラー周波数を推定する送信局の機能構成図である。
【0050】
図5によれば、図2と異なって、送信局1は、受信局2から参照信号を受信する。そして、送信局1のドップラー周波数推定部16は、その参照信号における振幅及び位相の変位(例えば位相回転)から、ドップラー周波数を推定することができる(例えば非特許文献1参照)。この場合、前述した移動速度テーブルを用いた移動速度による切替制御テーブルと比較して、ドップラー周波数の計測に時間を要することとなる。
これによって、切替制御部15は、ドップラー周波数と所定閾値とを比較して、OFDM部11又はOTFS部12のいずれか一方へ切り替える。
【0051】
[切替通知部18]
切替通知部18は、切替部13が制御される際に、制御信号としての「切替通知」を受信局2へ送信する。これによって、送信局1と受信局2とは、OFDM部11又はOTFS部12の切り替えを、同期させることができる。
【0052】
<受信局2>
図6は、図2に送信局に対向する受信局の機能構成図である。
【0053】
図6によれば、受信局2は、シンボルデマッパ201と、CP部202と、OFDM部21と、OTFS部22と、切替部23と、移動速度取得部24と、切替制御部25とを有する。これら機能構成部は、受信局に搭載されたモデムチップ(コンピュータ)を機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、モデムチップの受信方法としても理解できる。
【0054】
図6によれば、受信局2は、切替通知受信部29によって、送信局1から送信された「切替通知」を受信する。切替通知には、切替先となるOFDM部21又はOTFS部22のいずれか一方が指定されていると共に、切替タイミングも指定されている。これによって、切替制御部25は、送信局1と同期して、OFDM部21又はOTFS部22のいずれが一方に切り替えることができる。
【0055】
図7は、本発明における切替主導となる受信局の機能構成図である。
【0056】
図7は、図2の送信局主導の切り替えに対して、受信局主導の切り替えを表す。各機能構成部の処理は、図2と全く同様である。
尚、受信局2も、送信局1から参照信号を受信する場合、ドップラー周波数推定部26が、その参照信号における振幅及び位相の変位から、ドップラー周波数を推定することもできる。そして、そのドップラー周波数に基づいて、切替部23を制御することができる。
【0057】
尚、前述した実施形態によれば、送信局1が固定局であり、受信局2が移動局であるとして説明した。勿論、これに限られず、送信局1が移動局であり、受信局2が固定局であってもよい。また、送信局1及び受信局2の両方とも移動局であってもよく、相対的移動速度を取得できればよい。
【0058】
以上、詳細に説明したように、本発明の送信局及び受信局によれば、ドップラー周波数の影響に応じて、OTFS変調とOFDM変調とを切り替えることができる。
【0059】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0060】
1 送信局、基地局
101 シンボルマッパ
102 CP部
11 OFDM部
110 逆フーリエ変換部
12 OTFS部
120 逆シンプレクティックフーリエ変換部
13 切替部
14 移動速度取得部
15 切替制御部
16 ドップラー周波数推定部
17 時刻同期部
18 切替通知部
2 受信局、端末
201 シンボルデマッパ
202 CP部
21 OFDM部
22 OTFS部
23 切替部
24 移動速度取得部
25 切替制御部
26 ドップラー周波数推定部
27 時刻同期部
28 切替通知部
29 切替通知受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7