(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130304
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】エネルギー管理システム、エネルギー管理方法及びエネルギー管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240920BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039954
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】林崎 浩典
(72)【発明者】
【氏名】原 朱里
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】組織全体よりも細かい単位におけるクリーンエネルギーの度合いの評価を実現することを課題とする。
【解決手段】エネルギー管理システム1は、クリーンエネルギーの取得量を受け付ける第1受付部と、エネルギーの使用量を受け付ける第2受付部と、クリーンエネルギーの取得量の割当先の優先度の設定を受け付ける第3受付部と、クリーンエネルギーの取得量と割当先の使用量とを比較して、優先度に基づいて割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する決定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンエネルギーの取得量を受け付ける第1受付部と、
エネルギーの使用量を受け付ける第2受付部と、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付ける第3受付部と、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する決定部と、
を備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
前記第1受付部は、クリーンエネルギーの種類ごとに前記取得量を受け付け、
前記第3受付部は、前記種類ごと及び時間帯ごとに前記優先度の設定を受け付け、
前記決定部は、前記種類ごと及び前記時間帯ごとに前記割当量を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記種類ごとのクリーンエネルギーの生産で排出される二酸化炭素排出量を示す係数と、前記割当量と、に基づいて二酸化炭素排出量を演算する演算部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記第1受付部は、非クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
前記決定部は、非クリーンエネルギーの前記取得量と前記使用量とを比較して、前記割当先への非クリーンエネルギーの割当量を決定する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記決定部は、前記割当先の前記使用量と同一の電力量を上限として、クリーンエネルギーの前記取得量を前記割当先に割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項6】
前記割当先は、製品、製造プロセス、製造ライン、または、前記製造プロセスもしくは前記製造ラインに含まれる製造装置のいずれかに対応する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項7】
クリーンエネルギーの前記取得量は、非化石エネルギーから分離された環境価値の売買を取引する電力取引システムで購入することにより得られる環境価値を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項8】
クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
エネルギーの使用量を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項9】
クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
エネルギーの使用量を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするエネルギー管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー管理システム、エネルギー管理方法及びエネルギー管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ、いわゆるRE100(Renewable Energy 100%)の注目度の高まりに伴って発電源の由来を証明する電力トラッキングの重要性が高まっている。
【0003】
このような電力トラッキングに関して、次のような従来技術が提案されている。例えば、再利用可能エネルギーに係る電力取引において流通する電力についていつ、どこで、誰が、どのような発電方式で生成したかに応じて適正な環境価値を評価し証明する電力取引プラットフォームが提案されている。さらに、既存のトラッキングシステムを用いて、製品ID(IDentification)ごとに一定量の生産物を生産するために必要とされる電力消費量や燃料等の製品原単位を計算するエネルギー管理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-151174号公報
【特許文献2】特開2022-92898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、製品または製造プロセスといった組織全体よりも細かい単位で再生可能エネルギーを含むクリーンエネルギーに由来する電力が消費された度合いを評価するという点で改善の余地がある。
【0006】
例えば、上記の電力取引プラットフォームにあっては、ユーザと呼ばれる組織全体ごとに発電または消費の電力量の測定、電力価値および環境価値の算定などが行われるばかりであるので、組織全体よりも細かい単位でクリーンエネルギーの度合いを評価できない。また、上記のエネルギー管理装置にあっても、製品ごとに消費エネルギーが算出されるばかりであって製品単位でクリーンエネルギーに由来する電力が消費された度合いは算出できない。
【0007】
本発明は、組織全体よりも細かい単位におけるクリーンエネルギーの度合いの評価を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面にかかるエネルギー管理システムは、クリーンエネルギーの取得量を受け付ける第1受付部と、エネルギーの使用量を受け付ける第2受付部と、クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付ける第3受付部と、クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する決定部と、を備える。
【0009】
本発明の一側面にかかるエネルギー管理方法では、クリーンエネルギーの取得量を受け付け、エネルギーの使用量を受け付け、クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、処理をコンピュータが実行する。
【0010】
本発明の一側面にかかるエネルギー管理プログラムは、クリーンエネルギーの取得量を受け付け、エネルギーの使用量を受け付け、クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、組織全体よりも細かい単位におけるクリーンエネルギーの度合いの評価を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、エネルギー管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、データ受付処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、電力供給システムを示す模式図である。
【
図5】
図5は、エネルギー割当処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、RE度合い算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ユーザ端末の表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、ユーザ端末の表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、ハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本願に係るエネルギー管理システム、エネルギー管理方法及びエネルギー管理プログラムの実施例について説明する。各実施例には、1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0014】
<全体構成>
まず、本実施形態にかかるエネルギー管理システム1の全体構成について説明する。
図1は、エネルギー管理システム1の構成例を示す図である。
図1に示すエネルギー管理システム1は、電力トラッキングにおいて製品や製造プロセスといった組織全体よりも細かい対象に当該対象におけるエネルギーの使用量に応じて組織全体に供給されたクリーンエネルギーの一部を割り当てる割当機能を提供するものである。
【0015】
ここで言う「対象」とは、エネルギーの割当先の一例に対応し、例えば、製品、製造プロセス、製造ライン、あるいは製造工場などが含まれてよい。このように製造に関する対象に限定されず、オフィス等に含まれる需要設備が含まれることを妨げない。以下、これらの対象を総称して「割当先」と記載する場合がある。
【0016】
また、「エネルギー」には、クリーンエネルギーおよび非クリーンエネルギーが含まれてよい。このうち、「クリーンエネルギー」は、グリーンエネルギーとも呼ばれ、例えば、いわゆる再生可能エネルギーを含んでよい。また、「非クリーンエネルギー」は、クリーンエネルギーでないエネルギーを指し、例えば、化石エネルギーを含んでよい。以下、クリーンエネルギーの一例として、再生可能エネルギーを挙げ、この再生可能エネルギーを指して「再エネ」、あるいは「RE」と記載する場合がある。
【0017】
図1に示すように、エネルギー管理システム1には、各種システム3と、各種デバイス5と、情報処理装置10と、ユーザ端末30とが含まれ得る。これら各種システム3、各種デバイス5およびユーザ端末30と、情報処理装置10との間は、任意のネットワークNWを介して通信可能に接続され得る。なお、ネットワークNWは、有線や無線を問わず、インターネット技術、工業用通信規格、あるいはIoT(Internet of Things)向けの省電力無線通信規格などの任意の技術により実現されてよい。
【0018】
各種システム3は、情報処理装置10に接続され得る各種のシステムである。例えば、各種システム3には、グリーン電力証書やJクレジット、非化石証書などの環境価値を取引する電力取引システムが含まれてよい。なお、電力取引システムについては、
図4を用いて後述する。この他、各種システム3には、上記の割当機能の提供を受けるユーザが使用する製造管理システムなどが含まれてよい。
【0019】
各種デバイス5は、情報処理装置10に接続され得る各種のデバイスである。例えば、各種デバイス5には、上記の割当機能の提供を受けるユーザが有する需要設備における電力使用量を測定するスマートメータなどが含まれてよい。このような需要設備には、製造工場の設備である製造ライン、製造ラインに含まれる製造装置が含まれてよい他、オフィスの設備などが含まれることを妨げない。
【0020】
情報処理装置10は、上記の割当機能を提供するコンピュータの一例である。例えば、情報処理装置10は、上記の割当機能をオンプレミスに提供するサーバとして実現されてよい。この他、情報処理装置10は、PaaS(Platform as a Service)型、あるいはSaaS(Software as a Service)型のアプリケーションとして実現することで、上記の割当機能をクラウドサービスとして提供することもできる。
【0021】
ユーザ端末30は、上記の割当機能の提供を受けるユーザにより使用される端末装置である。ここで言う「ユーザ」は、一例として、企業等の組織のみならず、組織の関係者などが含まれてよい。例えば、ユーザ端末30は、パーソナルコンピュータを始め、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などの任意のコンピュータにより実現されてよい。
【0022】
<情報処理装置10の構成>
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成例について説明する。
図1には、情報処理装置10が有する割当機能に関連するブロックが模式化されている。
図1に示すように、情報処理装置10は、通信制御部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、
図1には、上記の割当機能に関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部が情報処理装置10に備わることとしてもよい。
【0023】
通信制御部11は、各種システム3や各種デバイス5、ユーザ端末30などの他の装置との間の通信を制御する機能部である。例えば、通信制御部11は、ネットワークインタフェイスカードにより実現され得る。
【0024】
記憶部13は、各種のデータを記憶する機能部である。例えば、記憶部13は、情報処理装置10の内部、外部または補助のストレージにより実現される。例えば、記憶部13は、電力供給量13A、設定情報13B、電力使用量13Cおよび製造過程情報13Dなどのデータを記憶する。なお、電力供給量13A、設定情報13B、電力使用量13Cおよび製造過程情報13Dなどのデータの説明は、参照、生成または登録が実行される場面で併せて説明することとする。
【0025】
制御部15は、情報処理装置10の全体制御を行う機能部である。例えば、制御部15は、ハードウェアプロセッサにより実現され得る。
図1に示すように、制御部15は、受付部15Aと、決定部15Bと、演算部15Cと、出力部15Dとを有する。なお、制御部15は、ハードワイヤードロジックなどにより実現されてもよい。
【0026】
受付部15Aは、各種の情報を受け付ける処理部である。受付部15Aは、第1受付部、第2受付部および第3受付部の一例に対応する。一実施形態として、受付部15Aは、各種システム3、各種デバイス5、あるいはユーザ端末30を介して、発電電力量、設定情報、電力使用量および製造過程情報などのデータを受け付ける。
【0027】
図2は、データ受付処理の手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、各種システム3、各種デバイス5、あるいはユーザ端末30は、発電電力量、設定情報、電力使用量、あるいは製造過程情報などのデータを送信する(ステップS101)。
【0028】
このようにデータが送信されると、受付部15Aは、ネットワークNWを介して、発電電力量、設定情報、電力使用量、あるいは製造過程情報などのデータを受け付ける(ステップS102)。
【0029】
そして、受付部15Aは、発電電力量、設定情報、電力使用量、あるいは製造過程情報などのデータを電力供給量13A、設定情報13B、電力使用量13C、あるいは製造過程情報13Dとして記憶部13へ登録する(ステップS103)。なお、電力供給量13A、設定情報13B、電力使用量13Cおよび製造過程情報13Dは、リレーショナルデータベースを始め、任意のデータ形式で記憶部13に格納されてよい。
【0030】
1つの側面として、受付部15Aは、電力トラッキングを実現する側面から、上記のステップS102においてユーザが発電家から供給されるエネルギーの供給量を受け付けることができる。
【0031】
ここで言う「電力トラッキング」とは、ある需要家が消費する電気が、特定の発電源に由来することを証明することを指す。ただし、電力系統(送配電網)を流れる電気は、発電源の由来に関して物理的には識別不可能と見なし、電力系統を流れる電気の物理的な識別・追跡は行わない。
【0032】
トラッキングの基本的な考え方は、同一電力系統に接続される電源の発電量と需要家施設の消費量が等しく(電力の同時同量)、かつ当該電源から発電された電気が他で消費されていないと確認できるときに、特定の電源由来の電気が、特定の需要家によって消費されたと見なされて成立する。
【0033】
ここで、発電家から需要家へのエネルギーの供給は、次に挙げる形態で実施され得る。ここに記載する「発電家」は、クリーンエネルギーや化石エネルギーを含む電力を発生させる発電設備を有する供給者の一例に対応する。また、「需要家」とは、電力の供給を受けて消費する需要設備を有する消費者の一例に対応する。これら発電家および需要家は、個人や法人などの事業者であってよく、また、地方や国などの公共団体であってもよい。1つ目として、事前に特定の需要家と特定の発電源の組合せが定義されている場合が挙げられる。
図3は、電力供給システムを示す模式図である。
図3に示すように、電力供給システムは、発電部門、送配電部門および小売部門に分類され得る。例えば、発電部門には、化石エネルギーを使用する発電源である火力発電の他、太陽光発電や風力発電、水力発電などといった再生可能エネルギーを使用する発電源が含まれる。さらに、送電部門には、発電所から需要家へつながる送配電用ネットワークが形成される。送配電用ネットワークには、発電所から送電用変電所、例えば超高圧変電所や一次変電所、二次変電所などを接続する送電線、配電用変電所から一般の需要家までを接続する配電線などが含まれ得る。さらに、小売部門には、特別高圧の電力の供給を受ける大規模工場や大規模ビルなどの需要家と、高圧の電力の供給を受ける中規模工場などの需要家と、低圧の電力の供給を受ける一般の需要家とが含まれ得る。
【0034】
例えば、上記の電力供給システムにおける同時同量の例を挙げれば、ある太陽光発電が1kWhを発電し、同じときにこの太陽光発電の会社と契約しているユーザが1kWhを消費したとしたら、「この1kWh分は太陽光発電の電気」とみなされる。太陽光発電に限らず、どのような発電源の種類の電力会社と契約しても、電力の供給には同じ送配電線が使用されるので、電力会社(供給側)と使う側(需要側)を一致させることで、同時同量が成立する。
【0035】
このような電力供給システムでは、発電事業者および需要家の間の契約に基づいて電力が供給される。このため、受付部15Aは、一例として、ユーザ端末30から発電事業者およびユーザ組織の間の契約情報を受け付けることにより、各々の契約情報に定義された電力量をユーザ組織に対するエネルギーの供給量として取得できる。ここで言う「供給量」は、一例として、同時同量で標準とされる間隔、例えば30分間とすることができる。このように契約情報ごとに供給量を取得することで、発電事業者が有する発電源のエネルギーの種類ごとに供給量を取得できる。例えば、化石エネルギーや再生可能エネルギーといった分類に限らず、再生可能エネルギーの中でも太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマスなどの種類ごとに供給量を取得できる。なお、契約情報のからの自動抽出に限らず、GUI(Graphical User Interface)を介してユーザ組織に対するエネルギーの供給量を入力させることとしてもよい。
【0036】
2つ目として、発電後に電気から分離された属性価値を表象する証書が発行され、証書購入を通じて初めて決定する場合が挙げられる。例えば、属性価値として代表的なものは環境価値である。環境価値には、「グリーン電力証書」、「Jクレジット」や「非化石証書」などが含まれ得る。このうち、グリーン電力証書は、再生可能エネルギーの電気の価値を「電気そのものの価値」と「環境価値」に分けて、「環境価値」が証書化されたものである。
【0037】
図4は、証書の購入例を示す模式図である。
図4に示すように、非化石証書の入札時には、需要家における電力使用量から非化石証書の購入量(オフセット)が算出される。例えば、オフセットの例として、RE100に不足する分の電力量に対応する購入量が挙げられる。このように購入量が決定されると、需要家などの購入サイドでは、1コマ(30分)あたり50kWhを最低取引単位とし、1日分の48コマから需要家が購入を希望するコマの枠と購入量とを指定する入札が電力取引システムに行われる。一方、発電事業者Aや発電事業者Bなどの販売サイドにおいても、発電事業者が販売を希望するコマの枠と販売量とを指定する入札が電力取引システムに行われる。このような入札の下、電力取引システムが「売り」と「買い」の入札をマッチングして約定価格や約定量を決定することにより取引が実施される結果、非化石証書が調達される。なお、ここでは、需要家が電力取引システムへ入札する例を挙げたが、需要家の環境価値の管理を代行する代行者が電力取引システムへ入札することができるのは言うまでもない。
【0038】
例えば、上記の証書購入における同時同量の例を挙げれば、ある工場Aで太陽光発電を取り付けて自家消費したとする。このとき、工場Aでは「二酸化炭素を排出しない」という環境価値は不要という場合は、この環境価値を「グリーン電力証書」として販売できる。この証書を別の工場Bが買った場合、工場Bで再エネを使い、二酸化炭素排出を削減したことになる。
【0039】
このような証書購入の場合、電力取引システムを介して非化石証書が調達される。このため、受付部15Aは、各種システム3の一例として、電力取引システムから非化石証書の購入量を受け付ける。例えば、各種システム3は、当該非化石証書の購入量をユーザ組織に対する再生可能エネルギーの供給量として取得できる。なお、ここでも当然のことながら、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの種類ごとに供給量を取得できるのは言うまでもない。
【0040】
他の側面として、受付部15Aは、上記のステップS102においてユーザ端末30からユーザの設定情報を受け付けることができる。
【0041】
例えば、設定情報には、各発電家のエネルギーの種別、CO2排出係数、再エネ係数などの設定が含まれてよい。このうち、「CO2排出係数」は、1kWhの電気を供給するためにどのくらいのCO2を排出しているのかを示す指標である。例えば、CO2排出係数(kg-CO2/kWh)は、CO2排出量÷販売電力量により算出される。また、「再エネ係数」は、発電家のエネルギーがクリーンエネルギーに対応する度合いを示す指標である。例えば、再エネ係数は、0~1の数値範囲に正規化された値であってよい。この場合、再エネ係数が1に近づくにつれて完全にクリーンなエネルギーに近づく一方で、再エネ係数が0に近づくにつれて純化石エネルギーに近づく。このような再エネ係数は、一括または時間帯ごとに設定できる。
【0042】
さらに、設定情報には、製品、製造プロセス、製造ライン、あるいは製造工場などの割当先の優先度の設定が含まれてよい。例えば、割当先として製造ラインA~Zを例に挙げると、製造ラインA~Zのうち優先する製造ラインから昇順または降順に優先度が設定される。この他、設定情報には、ユーザ組織が有する施設間の優先度の設定が含まれてもよい。例えば、優先度1:工場A、優先度2:工場B、優先度3:オフィスなどを設定できる。この場合、工場A>工場B>オフィスという優先度にしたがって各電力が割り当てられる。さらに、設定情報には、割当先に割り当てる発電家または発電家のエネルギーの種類の優先度の設定が含まれてよい。例えば、優先度1:風力、優先度2:太陽光、優先度3:化石などを設定できる。この場合、風力>太陽光>化石という優先度にしたがって各電力が割り当てられる。なお、割当先、施設およびエネルギー種類などの優先度は、一括または時間帯ごとに設定できる。
【0043】
この他、設定情報には、同時同量間隔の設定が含まれてよい。例えば、同時同量間隔には、標準である30分の他、任意の間隔、例えば15分間、60分間などを設定することができる。
【0044】
更なる側面として、受付部15Aは、上記のステップS102において各種デバイス5からユーザ組織のエネルギーの使用量を受け付けることができる。例えば、受付部15Aは、各種デバイス5の一例として、ユーザ組織が有する需要設備に接続されたスマートメータごとに当該スマートメータにより測定された電力の使用量を受け付けることができる。一般に、スマートメータでは、同時同量間隔の標準とされる30分間隔の消費電力の平均値、いわゆる30分デマンド値が検針される。このとき、スマートメータの検針対象は、ユーザ組織が有する設備における任意の単位、例えば製品、製造プロセス、あるいは製造ラインを実現する機器の他、工場全体などの単位であってよい。なお、ここでは、スマートメータからエネルギーの使用量を受け付ける例を挙げたが、ユーザ端末30からエネルギーの使用量の入力をGUIなどを介して受け付けることとしてもよい。この場合、受付部15Aは、所定の期間、例えば1日分や1週間分などのエネルギーの使用量を一括で入力させることとしてもよい。
【0045】
他の側面として、受付部15Aは、上記のステップS102において各種システム3の一例に対応する製造管理システムから製品の製造過程情報を受け付けることができる。ここで言う「製造管理システム」は、製品の製造を管理するシステムを指し、その一機能として、製造過程情報の登録や更新などの機能が含まれる。例えば、製造過程情報は、生産計画に含まれる製品ごとに製造工場、製造ラインまたは製造ラインに含まれる製造装置が使用される製造時間帯、例えば使用開始時刻および使用終了時刻が対応付けられたデータであってよい。また、製造過程情報は、製品の製造プロセスごとに当該製造プロセスで製造工場、製造ラインまたは製造装置が使用される製造時間帯、例えば使用開始時刻および使用終了時刻が対応付けられたデータであってよい。この他、製造過程情報には、オプションとして、製造に使用した部品や素材の再エネ比率、CO2排出量が含まれてよい。なお、ここでは、製造管理システムから製造過程情報を受け付ける例を挙げたが、ユーザ端末30から製造過程情報をGUIなどを介して受け付けることとしてもよい。この場合、受付部15Aは、所定の期間、例えば1日分や1週間分などの製品の製造過程情報を一括で入力させることとしてもよい。
【0046】
決定部15Bは、優先度が高い割当先の順に当該割当先におけるエネルギーの使用量と、組織全体に供給されたクリーンエネルギーの供給量とを比較して当該割当先にクリーンエネルギーを割り当てる割当量を決定する処理部である。
【0047】
図5は、エネルギー割当処理の手順を示すフローチャートである。
図5に示すように、決定部15Bは、記憶部13に記憶された電力供給量13A、設定情報13B、電力使用量13Cを取得する(ステップS301)。
【0048】
続いて、決定部15Bは、設定情報13Bに設定された同時同量間隔と、電力供給量13Aおよび電力使用量13Cの測定間隔とを一致させる前処理を実行する(ステップS302)。
【0049】
例えば、電力供給量13Aおよび電力使用量13Cの測定間隔が30分間であり、同時同量間隔の設定が1時間であるとしたとき、ペアとなる2つの電力供給量を合算するとともにペアとなる2つの電力使用量を合算する。また、電力供給量13Aおよび電力使用量13Cの測定間隔が30分間であり、同時同量間隔の設定が15分間であるとしたとき、30分間の電力供給量および30分間の電力使用量の各々を同時同量間隔の比率、例えば2で除算することで、15分間の電力供給量および15分間の電力使用量を算出する。
【0050】
そして、決定部15Bは、クリーンエネルギーの割り当てが未処理である時間帯の枠数Kに対応する回数の分、下記のステップS303から下記のステップS311までの処理を反復するループ処理1を実行する。
【0051】
すなわち、決定部15Bは、設定情報13Bに設定された発電家の優先度に基づいてクリーンエネルギーの割当元である発電家の選択順序を決定する(ステップS303)。例えば、発電家の優先度として、優先度1:発電家A、優先度2:発電家C、優先度3:発電家Bといった優先度が設定されている場合、選択順序は、発電家A、発電家C、発電家Bと決定される。なお、ここでは、発電家の選択順序が発電家の優先度に基づいて決定される例を挙げたが、発電家のエネルギーの種類の優先度に基づいて発電家の選択順序が決定されてもよい。
【0052】
その上で、決定部15Bは、M個の発電家の選択が終了するまで、あるいはN個の割当先の選択が終了するまで、下記のステップS304から下記のステップS311までの処理を反復するループ処理2およびループ処理3を実行する。なお、ここで言う「割当先」は、製品、製造プロセス、製造ライン、あるいは製造プロセスまたは製造ラインに含まれる製造装置であってよい。
【0053】
すなわち、決定部15Bは、選択中の割当先nの電力使用量が「0」よりも大きいか否かを判定する(ステップS304)。このとき、割当先nの電力使用量が「0」よりも大きくない場合(ステップS304No)、割当先nのエネルギーの割り当てが終了していることが判明する。この場合、ステップS305からステップS309までの処理をスキップし、割当先のループカウンタnをインクリメントして次の割当先を選択する。このような割当先の選択順序も設定情報13Bに設定された割当先の優先度により定まる。
【0054】
一方、割当先nの電力使用量が「0」よりも大きい場合(ステップS304Yes)、割当先nのエネルギーの割り当てが終了していないことが判明する。この場合、決定部15Bは、選択中の発電家mの電力供給量が「0」よりも大きいか否かをさらに判定する(ステップS305)。
【0055】
そして、発電家mの電力供給量が「0」よりも大きくない場合(ステップS305No)、発電家mには割当先nに割り当てる電力が残っていないことが判明する。この場合、ステップS306からステップS311までの処理をスキップし、発電家のループカウンタmをインクリメントして次の発電家を選択する。
【0056】
また、発電家mの電力供給量が「0」よりも大きい場合(ステップS305Yes)、発電家mには割当先nに電力を割り当てる余地があることが判明する。この場合、決定部15Bは、割当先nの電力使用量と、発電家mの電力供給量とを比較する(ステップS306)。
【0057】
ここで、割当先nの電力使用量が発電家mの電力供給量未満である場合(ステップS307No)、発電家mの残りの電力供給量で割当先nへの電力の割り当てを終了できることが判明する。この場合、決定部15Bは、割当先nの電力使用量を「0」に更新し(ステップS308)、発電家mの電力供給量から割当先nの電力使用量を減算することにより発電家mの電力供給量を最新に更新する(ステップS309)。その後、割当先のループカウンタnをインクリメントして次の割当先を選択する。
【0058】
このようなループ処理3が反復されることにより、優先度が高い割当先から順に優先度が高い発電家、あるいは優先度が高い種別のエネルギーが割り当てられることになる。
【0059】
また、割当先nの電力使用量が発電家mの電力供給量以上である場合(ステップS307Yes)、発電家mの残りの電力供給量の全てを割当先nに割り当てても割当先nへの電力の割り当てが終了しないことが判明する。この場合、決定部15Bは、割当先nの電力使用量から発電家mの電力供給量を減算することにより割当先nの電力使用量を最新に更新し(ステップS310)、発電家mの電力供給量を「0」に更新する(ステップS311)。その後、発電家のループカウンタmをインクリメントして次の発電家を選択する。
【0060】
このようなループ処理2が反復されることにより、優先度が高い発電家、あるいは優先度が高いエネルギーの種別から順に優先度が高い割当先へエネルギーが割り当てられることになる。
【0061】
さらに、ループ処理1が反復されることにより、クリーンエネルギーの割り当てが未処理である時間帯ごとに優先度が高い割当先から順に優先度が高い発電家、あるいは優先度が高い種別のエネルギーが割り当てられるとともに、優先度が高い発電家、あるいは優先度が高いエネルギーの種別から順に優先度が高い割当先へエネルギーが割り当てられる。
【0062】
なお、
図5に示すフローチャートでは、目標とする再エネ比率をRE100とし、割当先nの全電力使用量と1対1に対応する電力量のクリーンエネルギーを割当先に割り当てる例を挙げたがこれに限定されない。例えば、目標とする再エネ比率は、RE100未満の任意の値、例えばRE90やRE80であってもよい。
【0063】
図1の説明に戻り、演算部15Cは、割当先のRE度合いを演算する処理部である。ここで言う「RE度合い」とは、割当先における電力使用量のうち割当先に割り当てられた再生可能エネルギーの度合いのことを指し、例えば、再エネ比率やCO2排出量などが含まれてよい。
【0064】
図6は、RE度合い算出処理の手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、演算部15Cは、決定部15Bによる割当結果と、記憶部13に記憶された製造過程情報13Dとを取得する(ステップS501)。
【0065】
そして、演算部15Cは、製造過程情報13Dに含まれる製品の個体数Pに対応する回数の分、下記のステップS502から下記のステップS504までの処理を反復するループ処理1を実行する。
【0066】
すなわち、演算部15Cは、製造過程情報13Dのうち選択中の製品pの製造時間帯を参照して、決定部15Bによる割当結果のうち製品pの製造時間帯が重複する時間帯の割当結果を抽出する(ステップS502)。
【0067】
そして、演算部15Cは、製品pの製造時間帯に対応する時間帯の枠数Tに対応する回数の分、下記のステップS503の処理を反復するループ処理2を実行する。さらに、ループ処理2には、選択中の時間帯tで稼働する製品pの製造ラインまたは製造装置の個数Kの分、下記のステップS503の処理を反復するループ処理3が含まれる。すなわち、演算部15Cは、選択中の時間帯tのうち製品pの製造時間帯が重複する期間、すなわち製品pの製造ラインkの実稼働時間または製造装置kの実稼働時間に基づいて時間帯tにおける製品pの製造ラインkの稼働割合または時間帯tにおける製品pの製造装置kの稼働割合を算出する(ステップS503)。例えば、稼働割合は、時間帯tの実稼働時間を単位時間あたりの実稼働時間に正規化することにより算出できる。計算例を挙げれば、時間帯tの枠のサイズを30分間とし、単位時間を1時間とし、実稼働時間が10分間であるとしたとき、1時間あたりの実稼働時間は、10分×(60分/30分)の計算により「20分」と求まるので、この「20分」を単位時間で除算する計算により稼働割合が「1/3」と求まる。
【0068】
このようなループ処理3が反復されることにより、選択中の時間帯tにおける製品pの製造ラインkまたは製造装置kごとに稼働割合が算出されることになる。さらに、ループ処理2が反復されることにより、製品pの製造時間帯が重複する時間帯tごとに製品pのK個の製造ラインの稼働割合または製品pの製造装置の稼働割合が算出されることになる。
【0069】
その後、演算部15Cは、製品pのRE度合いを演算する(ステップS504)。例えば、RE度合いの例として再エネ比率が演算される場合、演算部15Cは、下記の式(1)にしたがって製品pの再エネ比率を演算できる。ここで、下記の式(1)における「時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのRE度合い」は、下記の式(2)にしたがって演算できる。なお、下記の式(1)および下記の式(2)における「i」は、製造ラインkまたは製造装置kに割り当てられた発電家の数を指す。
【0070】
再エネ比率=Σ(時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのRE度合い×稼働割合)/Σ(稼働割合)・・・(1)
時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのRE度合い=Σ(割当量it×割当電力の再エネ指数i)/Σ電力使用量kt・・・(2)
【0071】
また、RE度合いの例としてCO2排出量が演算される場合、演算部15Cは、下記の式(3)にしたがって製品pのCO2排出量を演算できる。ここで、下記の式(3)における「時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのCO2排出量」は、下記の式(4)にしたがって演算できる。
【0072】
CO2排出量=Σ(時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのCO2排出量×稼働割合)+Σ(製造ラインkまたは製造装置kで使用された素材のCO2排出量)・・・(3)
時間帯tの製造ラインkまたは製造装置kのCO2排出量=Σ(割当量it×割当電力のCO2排出係数i)・・・(4)
【0073】
このようなループ処理1が反復されることにより、P個の製品ごとにRE度合い、例えば再エネ比率やCO2排出量などが算出されることになる。なお、
図6には、製品単位でRE度合いが演算される例を挙げたが、製品の部分を製造プロセス、製造ライン、あるいは製造工場に置き換えることで、製造プロセス単位、製造ライン単位、あるいは製造工場単位でRE度合いを演算できる。
【0074】
このように製品単位または製造プロセス単位で演算されたRE度合いの演算結果は、記憶部13に保存することができる。ここで、RE度合いの演算結果は、必ずしもリレーショナルデータベースなどに保存されずともかまわない。例えば、RE度合いの演算結果の記録先をブロックチェーンネットワークとすることもできる。
【0075】
ブロックチェーンは、P2P(Peer to Peer)ネットワークを構成する複数のノードが同一のデータベースを保持する分散型台帳技術の1つである。ブロックチェーンでは、P2Pネットワーク上のトランザクション群がブロックとしてまとめて処理され、ハッシュ関数によって各ブロックがリンクされている。ブロックチェーンにおいて記録されたブロックのデータは、後続のすべてのブロックを変更しない限り遡及的に変更することはできず、ブロックチェーンを用いた台帳管理のプラットフォームは改変に対する安全性が高い。
【0076】
このようなブロックチェーンネットワークを形成するノード間で用いられるコンセンサスアルゴリズムには、PoW(Proof of Work)、あるいはPoS(Proof of Stake)などの任意の方式を用いることができる。
【0077】
ブロックチェーンでは、トランザクションデータに秘密鍵を用いた電子署名が付与されることにより、なりすましが防止される。なお、トランザクションデータの暗号化には、必ずしも公開鍵暗号方式を用いずともよい。例えば、AES(Advanced Encryption Standard)、SHA(Secure Hash Algorithm)、RSA(Rivest-Shamir-Adleman cryptosystem)、ECC(Elliptic Curve Cryptography)などの任意の暗号化アルゴリズムを用いることができる。
【0078】
また、各トランザクションのデータは、公開されると共にブロックチェーンネットワーク全体で共有される。なお、P2Pデータベースの種類によっては、P2Pネットワーク全体で必ずしも同一の記録を保持せずともよい。
【0079】
このようなブロックチェーンネットワークを形成するノード間で用いられるコンセンサスアルゴリズムには、PoW(Proof of Work)、あるいはPoS(Proof of Stake)などの任意の方式を用いることができる。
【0080】
このようにRE度合いの演算結果をブロックチェーンネットワークに記録する場合、決定部15Bは、1つの時間帯の枠のRE度合いの演算結果に対応するトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータの登録を要求するリクエストをブロックチェーンネットワークに送信することにより、RE度合いの演算結果をブロックチェーンに記録させることができる。
【0081】
図1の説明に戻り、出力部15Dは、各種の情報を出力する処理部である。1つの側面として、出力部15Dは、製品ごとに演算されたRE度合いをユーザ端末30を含む任意の出力先に出力することができる。なお、ここで言う出力先には、ユーザ組織のコンピュータで実行されるアプリケーションやサービスの他、ユーザ組織以外の第三者、例えば製品の取引先のコンピュータやコンピュータで実行されるアプリケーションやサービスが含まれてよい。
【0082】
図7は、ユーザ端末30の表示例を示す図である。
図7には、製品の例として「ウェハ1」のRE度合いが表示される例が示されている。
図7に示す例で言えば、製品「ウェハ1」の電力使用量「4725kWh」に占める再生可能エネルギーの電力量が「1821kWh」であることを意味する。さらに、製品「ウェハ1」のCO2排出量のうち、購入電力に由来するCO2排出量が1313kg-CO2であり、太陽光パネルに由来するCO2排出量が0kg-CO2であることを意味する。さらに、製品「ウェハ1」の製造プロセスごとにRE度合いが示されている。すなわち、製品「ウェハ1」の製造プロセスのうち、製造装置2を用いる製造プロセスの再エネ比率が「54%」であり、製造装置1を用いる製造プロセスの再エネ比率が「61%」であり、製造装置5を用いる製造プロセスの再エネ比率が「27%」であることを意味する。そして、製品「ウェハ1」の全製造プロセスにおける総合の再エネ比率が「39%(≒1821kWh/4725kWh)×100」であることを意味する。
【0083】
このような表示によれば、組織全体よりも細かい製品単位および製造プロセス単位におけるRE度合いの評価を実現できる。これにより、ユーザ組織は事業運営に再エネ導入を推進していることが証明できる。また、脱炭素化などの社会的目標への対応をプロモートすることで、企業の価値向上にもつながる。また、電力調達においては、製品ごとの製造そのものに関する再エネ割当がわかるので、RE100達成までにあとどれだけ足りていないかの見える化が実現されるので、効率的な再エネ投資ができるようになる。例えば、
図7に示す例で言えば、製品「ウェハ1」の電力トラッキングでRE100に適合させるには2904kWh分の環境価値を購入すればよいことを把握できる。
【0084】
他の側面として、出力部15Dは、製品のRE度合いを証明する証書を発行することもできる。
図8は、ユーザ端末30の表示例を示す図である。
図8には、
図7に示す製品「ウェハ1」の電力トラッキングの結果に対応する証書が示されている。例えば、製品「ウェハ1」の電力トラッキングの識別情報の一例であるトラキッキングID「xxxyyyzzz」のリンクを操作することにより、製品「ウェハ1」の電力トラッキングの結果として、製品「ウェハ1」を製造する製造装置2における電量使用量の詳細情報と、製品「ウェハ1」を製造する製造装置2に割り当てられた再生可能エネルギーの割当量を含む詳細情報とが表示されている。このように割り当てられた再生可能エネルギーごとに電力充当証明を出力できる。例えば、
図8には、製品「ウェハ1」を製造する製造装置2の電量使用量に割り当てられた太陽光についての電力充当証明が示されている。すなわち、電力充当証明には、電力取引システムで行われた取引の詳細情報、電力取引システムでユーザ組織が環境価値を購入した購入先の移転前後の太陽光の残量情報、当該太陽光の割当結果が記録されたブロックのハッシュ値などが含まれてよい。
【0085】
<効果の一側面>
上述してきたように、本実施形態にかかるエネルギー管理システム1は、電力トラッキングにおいて製品や製造プロセスといった組織全体よりも細かい対象に当該対象におけるエネルギーの使用量に応じて組織全体に供給されたクリーンエネルギーを割り当てる。したがって、本実施形態にかかるエネルギー管理システム1によれば、組織全体よりも細かい単位におけるクリーンエネルギーの度合いの評価を実現できる。さらに、割り当てにあたって優先度が高い割当先から優先して割当量を決定するので、優先度が低い割当先の割り当てを必ずしも決定せずともよい分、情報処理装置10の計算量を削減できる。
【0086】
<数値等>
上記実施形態で説明した事項、例えばエネルギーの種類や発電家の数、さらには、RE度合いの表示例や電力トラッキングの証書などの具体例などは、一例であり、変更することができる。また、実施形態で説明したフローチャートも、矛盾のない範囲内で処理の順序を変更することができる。
【0087】
<システム>
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、受付部15A、決定部15B、演算部15Cおよび出力部15Dのうちいずれか1つ以上の機能部は、別々の装置で構成されていてもよい。
【0088】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散および統合して構成することができる。なお、各構成は、物理的な構成であってもよい。
【0089】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0090】
<ハードウェア>
次に、実施形態で説明したコンピュータのハードウェア構成例を説明する。
図9は、ハードウェア構成例を示す図である。
図9に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図9に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0091】
通信装置10aは、ネットワークインタフェイスカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図1に示す機能を動作させるプログラムやDBなどを記憶する。
【0092】
プロセッサ10dは、
図1に示された処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、
図1等で説明した機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、受付部15A、決定部15B、演算部15Cおよび出力部15D等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、受付部15A、決定部15B、演算部15Cおよび出力部15D等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0093】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することでオペレーション支援方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0094】
上記のプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、上記のプログラムは、任意の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。例えば、記録媒体は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などにより実現され得る。
【0095】
<その他>
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0096】
(1)クリーンエネルギーの取得量を受け付ける第1受付部と、
エネルギーの使用量を受け付ける第2受付部と、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付ける第3受付部と、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する決定部と、
を備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【0097】
(2)前記第1受付部は、クリーンエネルギーの種類ごとに前記取得量を受け付け、
前記第3受付部は、前記種類ごと及び時間帯ごとに前記優先度の設定を受け付け、
前記決定部は、前記種類ごと及び前記時間帯ごとに前記割当量を決定する、
ことを特徴とする(1)に記載のエネルギー管理システム。
【0098】
(3)前記種類ごとのクリーンエネルギーの生産で排出される二酸化炭素排出量を示す係数と、前記割当量と、に基づいて二酸化炭素排出量を演算する演算部をさらに備えることを特徴とする(2)に記載のエネルギー管理システム。
【0099】
(4)前記第1受付部は、非クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
前記決定部は、非クリーンエネルギーの前記取得量と前記使用量とを比較して、前記割当先への非クリーンエネルギーの割当量を決定する、
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【0100】
(5)前記決定部は、前記割当先の前記使用量と同一の電力量を上限として、クリーンエネルギーの前記取得量を前記割当先に割り当てる、
ことを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【0101】
(6)前記割当先は、製品、製造プロセス、製造ライン、または、前記製造プロセスもしくは前記製造ラインに含まれる製造装置のいずれかに対応する、
ことを特徴とする(1)~(5)のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【0102】
(7)クリーンエネルギーの前記取得量は、非化石エネルギーから分離された環境価値の売買を取引する電力取引システムで購入することにより得られる環境価値を含む、
ことを特徴とする(1)~(6)のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【0103】
(8)クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
エネルギーの使用量を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とするエネルギー管理方法。
【0104】
(9)クリーンエネルギーの取得量を受け付け、
エネルギーの使用量を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量の割当先の優先度の設定を受け付け、
クリーンエネルギーの前記取得量と前記割当先の前記使用量とを比較して、前記優先度に基づいて前記割当先へのクリーンエネルギーの割当量を決定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするエネルギー管理プログラム。