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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130309
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】荷重支持部材、及び椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20240920BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A47C31/02 A
B68G7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039962
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石丸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】脇園 浩一郎
(57)【要約】
【課題】紐材を用いて表皮材の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる荷重支持部材、及び椅子を提供する。
【解決手段】座体4は、利用者の荷重を受ける上面10tを有する本体部10と、クッション材30と、被覆材40と、を備える。クッション材30は、本体部10の上面10t上に配置された第1クッション部31と、第1クッション部31の外周縁部から下方に延びる第2クッション部32と、を備えている。被覆材40は、クッション材30に一体に接合された被覆材第1部41と、被覆材第1部41に連続して設けられて本体部10の内側に向かって延び、クッション材30に非接合とされた被覆材第2部42と、被覆材第2部42の内周縁部に形成され、本体部10の周方向に延びる被覆材締め付け部45と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の第1側を向いて利用者の荷重を受ける第1面を有する本体部と、
前記本体部の前記第1面を覆うように設けられるクッション材と、
前記クッション材を覆うように設けられる被覆材と、を備え、
前記クッション材は、
前記本体部の前記第1面上に配置された第1クッション部と、
前記第1クッション部の外周縁部から下方に延び、前記本体部において前記第1面の外周縁部から第1方向の第2側に延びる本体外周面に沿って設けられる第2クッション部と、を備え、
前記被覆材は、
前記クッション材に一体に接合された被覆材第1部と、
前記被覆材第1部に連続して設けられ、前記本体部に対して第1方向の第2側で、前記本体部の内側に向かって延び、前記クッション材に非接合とされた被覆材第2部と、
前記被覆材第2部において、前記被覆材第1部から離間した側の内周縁部に形成され、前記本体部の周方向に延びる挿通孔に挿通された紐材によって引き締められた被覆材締め付け部と、を備えている
ことを特徴とする荷重支持部材。
【請求項2】
前記第1クッション部において第1方向の第2側を向く第1クッション材裏面に一体に接合され、前記本体部の前記第1面に接触する布材からなるシート材、を更に備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷重支持部材。
【請求項3】
前記本体部は、前記第1面の外周縁から第1方向の第2側に延びて前記本体外周面を形成する外周壁部を有し、
前記クッション材は、
前記第2クッション部から第1方向の第2側に延出し、前記外周壁部における第1方向の第2側の先端部を覆うように設けられ、前記被覆材と前記外周壁部の前記先端部との間に挟み込まれた第3クッション部、を更に備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷重支持部材。
【請求項4】
前記クッション材及び前記本体部の一方の部材には、他方の部材に形成された凸部を収容する位置決め凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷重支持部材。
【請求項5】
前記第2クッション部は、第1方向の第1側から第2側に向かって厚みが漸次小さくなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷重支持部材。
【請求項6】
床面上に載置される支持構造体と、
前記支持構造体上に設けられ、着座者が着座可能な座面を有する座体として備えられた、請求項1または2に記載の荷重支持部材と、を備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重支持部材、及び椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の座体、背凭れ等、着座者の荷重を受ける荷重支持部材には、基板と、その表面に取付けたクッション材とを、表皮材により覆うものがある。
特許文献1には、このような表皮材の周縁に形成した引締め部を、基板の裏面に突設した複数の係止部に係止する構成が開示されている。引締め部には、締付紐が挿入されている。このような構成では、締付紐を緊張させて表皮材の周縁を締め付けることにより、表皮材を張設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5230929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、締付紐を備えた引締め部により、表皮材を張設する構成においては、上方から見た際に、クッションの外周縁部等において、表皮材にしわが生じやすく、外観を損ねることに繋がる。
本発明は、紐材を用いて表皮材の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる荷重支持部材、及び椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る荷重支持部材は、第1方向の第1側を向いて利用者の荷重を受ける第1面を有する本体部と、前記本体部の前記第1面を覆うように設けられるクッション材と、前記クッション材を覆うように設けられる被覆材と、を備え、前記クッション材は、前記本体部の前記第1面上に配置された第1クッション部と、前記第1クッション部の外周縁部から下方に延び、前記本体部において前記第1面の外周縁部から第1方向の第2側に延びる本体外周面に沿って設けられる第2クッション部と、を備え、前記被覆材は、前記クッション材に一体に接合された被覆材第1部と、前記被覆材第1部に連続して設けられ、前記本体部に対して第1方向の第2側で、前記本体部の内側に向かって延び、前記クッション材に非接合とされた被覆材第2部と、前記被覆材第2部において、前記被覆材第1部から離間した側の内周縁部に形成され、前記本体部の周方向に延びる挿通孔に挿通された紐材によって引き締められた被覆材締め付け部と、を備えている。
本態様によれば、被覆材は、クッション材に一体に接合された被覆材第1部と、第1方向の第2側で、本体部の内側に向かって延びる被覆材第2部と、を備えている。被覆材締め付け部は、被覆材第2部の内周縁部に形成されている。被覆材第1部は、クッション材に一体に接合されているため、被覆材締め付け部の紐材を締め付けても、その影響が被覆材第1部に及びにくく、しわが生じにくい。
また、本体部の第1面を覆うように設けられるクッション材は、第1面上に配置された第1クッション部と、第1クッション部の外周縁部から下方に延び、本体部の本体外周面に沿って設けられる第2クッション部とを備えている。このようなクッション材に被覆材第1部が一体に接合されることで、第1方向の第1側から見た場合、クッション材の全体が、被覆材第1部に覆われているため、利用者からすると、被覆材のしわを視認しにくい。したがって、紐材を用いて表皮材の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる。
【0006】
(2)上記(1)の態様に係る荷重支持部材において、前記第1クッション部において第1方向の第2側を向く第1クッション材裏面に一体に接合され、前記本体部の前記第1面に接触する布材からなるシート材、を更に備えていることが好ましい。
本態様によれば、第1クッション材裏面に一体に接合され、本体部の第1面に接触する布材からなるシート材を備えている。これにより、クッション材が、本体部の第1面に接触することが抑えられ、第1クッション材裏面の摩耗を抑制することができる。また、第1クッション材裏面と本体部の第1面が直接接触する場合よりし、シート材と本体部の第1面が接触する場合の方が、摩擦係数が高ければ、シート材を備えることで、利用者の荷重によって、クッション材が本体部の第1面に沿ってずれるのを抑えることができる。
【0007】
(3)上記(2)の態様に係る荷重支持部材において、前記本体部は、前記第1面の外周縁から第1方向の第2側に延びて前記本体外周面を形成する外周壁部を有し、前記クッション材は、前記第2クッション部から第1方向の第2側に延出し、前記外周壁部における第1方向の第2側の先端部を覆うように設けられ、前記被覆材と前記外周壁部の前記先端部との間に挟み込まれた第3クッション部、を更に備えていることが好ましい。
本態様によれば、クッション材が、第2クッション部から第1方向の第2側に延出する第3クッション部を備えている。第3クッション部は、外周壁部における第1方向の第2側の先端部を覆うように設けられ、被覆材と外周壁部の先端部との間に挟み込まれている。これにより、第3クッション部により、本体部に対してクッション材を係止させるような機能が発揮される。これにより、クッション材を、本体部に対して、より強固に固定することができる。また、被覆材締め付け部の紐材を締め付けることによって、被覆材第2部が外周壁部の先端部側に押し付けられる。第3クッション部が、被覆材と外周壁部の先端部との間に挟み込まれることで、被覆材第2部が外周壁部の先端部に強く押し付けられるのを抑えることができる。その結果、被覆材第2部の摩耗についても抑えることができる。
【0008】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る荷重支持部材において、クッション材及び前記本体部の一方の部材には、他方の部材に形成された凸部を収容する位置決め凹部が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、クッション材及び本体部の一方の部材に、他方の部材に形成された凸部を収容する位置決め凹部が形成されている。これにより、荷重支持部材の組立時、凸部と位置決め凹部とを嵌め合わせることで、本体部に対するクッション材の位置決めを容易に行うことができる。また、被覆材締め付け部の紐材を締め付ける際にも、クッション材の位置ずれが抑えられるので、作業を効率良く行うことができる。
【0009】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様に係る荷重支持部材において、前記第2クッション部は、第1方向の第1側から第2側に向かって厚みが漸次小さくなることが好ましい。
本態様によれば、本体外周面に沿って設けられる第2クッション部が、第1方向の第1側から第2側に向かって厚みが漸次小さくなっている。これにより、クッション材の第2クッション部の表面から外周壁部の先端部へとスムーズに繋がり、これを覆う表皮材に、局所的な張力が生じるのを抑えることが期待できる。
【0010】
(6)床面上に載置される支持構造体と、前記支持構造体上に設けられ、着座者が着座可能な座面を有する座体として備えられた、上記(1)から(5)の何れかの態様に係る荷重支持部材と、を備える。
本態様によれば、紐材を用いて表皮材の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる荷重支持部材を備えた椅子を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、紐材を用いて表皮材の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における椅子を前方から見た正面図である。
図2】本発明の実施形態における椅子の座体を構成する本体部を斜め上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態における座体の一部を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態における椅子の座体を下側から見た図である。
図5】本発明の実施形態における座体の組立途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明による荷重支持部材、及び椅子を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態の椅子1を前方から見た正面図である。本実施形態の椅子1は、着座者を着座姿勢の状態で支持する什器であり、例えばオフィスや店舗で用いられる。図1に示すように、本実施形態の椅子1は、支持構造体7としての脚部2及び支基3と、座体(荷重支持部材)4と、背凭れ5とを備える。
【0015】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、座体4に正規姿勢で着座した着座者から見た方向を椅子1の方向とする。例えば、着座者から見て前側は椅子1の前側とする。また、着座者から見て後側は椅子1の後側とする。前側と後側とを結ぶ方向を前後方向とする。本実施形態において、前後方向の第1側は前側である。前後方向の第2側は後側である。また、着座者から見て左側は椅子1の左側とする。また、着座者から見て右側は椅子1の右側とする。左側と右側とを結ぶ方向は左右方向である。着座者から見て、左右方向において、椅子1の中央部側を左右方向の内側とし、左右方向において椅子1の中央部から離れる側を左右方向の外側とする。また、着座者から見て上側は椅子1の上側(第1方向の第1側)とする。また、着座者から見て下側は椅子1の下側(第1方向の第2側)とする。上側と下側とを結ぶ方向は上下方向(第1方向)である。さらに、座体4の説明においては、座体4の中央部側を径方向の内側、座体4の中央部から離間する側を径方向の外側とする。
【0016】
脚部2は、床面に接触し、下方から直接的あるいは間接的に支基3、座体4及び背凭れ5を支持する。脚部2は、多岐脚2aと、脚柱2bとを有する。多岐脚2aは、中央部から放射状に延伸する複数の脚体2a1を有している。各々の脚体2a1の先端部は、キャスタ2a2が設置されている。各々のキャスタ2a2は、床面に対して転動可能に接触する。
【0017】
脚柱2bは、多岐脚2aの中央部に立設されており、多岐脚2aの中央部から上方に向けて延伸している。脚柱2bは、外筒2b1と、内筒2b2とを有している。外筒2b1は、多岐脚2aに固定されている。内筒2b2は、下部が外筒2b1に接続されており、外筒2b1に対して上下方向に移動可能に接続されている。内筒2b2は、脚柱2bの内部に収容された不図示のスプリングによって支持されている。また、内筒2b2の上端部は、支基3に固定されている。このような脚柱2bは、支基3を介して、座体4を上下方向に移動可能に支持する。
【0018】
支基3は、脚部2の上方に位置するボックス状の部位である。支基3は、内部に、例えば、座体4の昇降機構と、背凭れ5の傾動機構とを備える。支基3は、座体4の下方に位置し、座体4を下方から支持する。脚部2及び支基3により、座体4を下方から支持する支持構造体7が構成されている。
【0019】
支基3の後部は、背凭れ5が接続される。座体4は、着座者が直接的に座る部位であり、上面が着座面である。なお、椅子1は、着座者の肘や腕先が載せ置かれる肘掛けを備えてもよい。このような肘掛けは、例えば、座体4の側部に固定される。
【0020】
図2は、本実施形態における椅子1の座体4を構成する本体部10を斜め上方から見た斜視図である。図3は、本実施形態における座体4の一部を示す断面図である。図4は、本実施形態における椅子1の座体4を下側から見た図である。なお、この図4において、表装部材20の被覆材40は図示されていない。
座体4は、本体部10と、表装部材20と、を備えている。
【0021】
本体部10は、着座者からの荷重を下側から受ける。図2図4に示すように、本体部10は、例えば硬質樹脂製の成形体からなる。本体部10は、上側を向いて利用者の荷重を受ける上面10tを有している。上面10tは、本体部10の中心側に向かって下方に湾曲しつつ窪む湾曲形状を呈している。本体部10の上面10tは、複数のリブ12により高強度に形成されている。図4に示すように、本体部10は、支基3が装着される支基取付部11を備えている。支基取付部11は、下側から見た際にコ字状の突条11aを有している。支基3は、突条11aの内側に取り付けられる。
【0022】
図2図3に示すように、本体部10は、上面10tの外周縁から下側に延びる外周壁部13を有している。外周壁部13は、本体部10の全周に亘って延びている。外周壁部13の外周面は、本体部10から見て外側を向く本体外周面10fを形成する。本体部10において、上面10tと本体外周面10fとのなす角部は、本体部10の最上端部である頂部(凸部)10t1を構成する。
【0023】
図3図4に示すように、本体部10には、下方に開口する凹溝18が設けられている。凹溝18は、下側から見た際に、本体部10の外周形状に沿って周方向の全周にわたって形成されている。図3に示すように、凹溝18は、外周壁部13と、内周壁部14と、の間に形成されている。内周壁部14は、外周壁部13に対して本体部10の中央部を中心とした径方向の内側に間隔をあけて形成されている。内周壁部14は、外周壁部13に倣って本体部10の全周に亘って延びている。内周壁部14は、本体部10のうち、中央部寄りの下面を形成する下面形成部材15の外周縁から上側に延びている。外周壁部13の上端と内周壁部14の上端とは、本体部10の上面10tの一部を形成する上面形成部材16によって接続されている。
【0024】
図4に示すように、凹溝18の内部には、周方向に間隔をあけて複数の係止爪19が設けられている。図3に示すように、各係止爪19は、内周壁部14から凹溝18内に突出するように形成されている。各係止爪19は、内周壁部14から径方向外側(外周壁部13側)に延びる基部19aと、基部19aの先端から上側に延びる延出部19bとを一体に有している。
【0025】
表装部材20は、クッション材30と、被覆材40と、シート材50と、を一体に備えている。
【0026】
クッション材30は、本体部10の上側に配置される。クッション材30は、例えば、発泡ウレタン等の柔軟性を有した材料から形成されている。クッション材30は、金型(不図示)内に材料を注入し、発泡させることで、予め所定の形状に成形されている。ここで、後述する被覆材40とシート材50とは、クッション材30の成形時に金型内に配置することで、クッション材30と一体成形されている。クッション材30と被覆材40、クッション材30とシート材50とは、接着剤等を用いることなく、クッション材30を形成する材料そのものによって、一体に接合されている。つまり、クッション材30と、被覆材40と、シート材50と、を備える表装部材20は、一体の部品として構成されている。
【0027】
クッション材30は、第1クッション部31と、第2クッション部32と、第3クッション部33と、を一体に有している。
第1クッション部31は、本体部10の上面10t上に配置されている。第1クッション部31は、上側から見た際に上面10tの全体を覆うように形成されている。第1クッション部31は、上下方向に所定の厚さT1を有して形成されている。第1クッション部31のうち、下側を向く第1クッション材裏面31g及び上側を向く第1クッション材表面31fは、上面10tの形状に倣って第1クッション部31の中心に向かうに従い下方に湾曲しつつ窪む湾曲形状を呈している。
【0028】
第2クッション部32は、上側から見た際、第1クッション部31の全周を取り囲むように形成されている。第2クッション部32は、第1クッション部31の外周縁部から下側に延びている。第2クッション部32は、本体部10において上面10tの外周縁部から下側に延びる外周壁部13(本体外周面10f)に沿って設けられている。
【0029】
第2クッション部32は、座体4の中央部を中心とした径方向の厚さT2が、第1クッション部31の厚さT1寄りも小さい。第2クッション部32の厚さT2は、径方向で外周壁部13と重なる部分で、上側から下側に向かって漸次小さくなっている。
【0030】
クッション材30において本体部10の上面10t及び本体外周面10fに接する面には、クッション材裏面30gには、溝状部(位置決め凹部)35が形成されている。溝状部35は、第1クッション部31の第1クッション材裏面31gと、第2クッション部32において本体外周面10fに接する第2クッション材裏面32gとが交差する部分に形成されている。溝状部35は、第1クッション部31と第2クッション部32との境界部に形成された上方に窪む凹部である。溝状部35は、第1クッション部31の外周縁部に沿って、第1クッション部31の全周に亘って延びている。溝状部35内には、本体部10の頂部10t1が収容されている。溝状部35は、本体部10の頂部10t1に沿って周方向に延びている。
【0031】
第3クッション部33は、第2クッション部32から下側に延出している。第3クッション部33は、外周壁部13における下側(第2側)の先端部を覆うように設けられている。第3クッション部33は、第2クッション部32の下端から、座体4の中心部側に折り込まれるようにして、外周壁部13の先端部を下側から覆っている。第3クッション部33は、後述する被覆材40と外周壁部13の先端部との間に挟み込まれている。第3クッション部33の厚さT3は、第2クッション部32の厚さT2よりも更に小さい。
【0032】
被覆材40は、クッション材30を覆うように設けられている。被覆材40としては、布材、ビニールレザー等、各種の什器用の被覆材が用いられる。被覆材40は、被覆材第1部41と、被覆材第2部42と、を一体に有している。
【0033】
被覆材第1部41は、クッション材30に一体に接合されている。被覆材第1部41は、第1クッション部31、第2クッション部32、及び第3クッション部33において、外側を向く面の全体に接合されている。
【0034】
被覆材第2部42は、第1クッション部31の外周縁部から連続して設けられている。被覆材第2部42は、本体部10に対して下側で、本体部10の内側に向かって延びている。被覆材第2部42は、クッション材30に非接合とされている。ここで、図3の例では、被覆材第2部42は、クッション材30よりも、本体部10の内側に向かって延びているため、被覆材第2部42に沿って、クッション材30は存在していない。
これに対し、被覆材第2部42に沿って、クッション材30も本体部10の内側に向かって延びていてもよい。ただし、その場合、被覆材第2部42は、クッション材30に非接合とする。また、被覆材第2部42は、図3に図示したものより、図3における左右方向に、より広く形成してもよい。
【0035】
被覆材第2部42において、被覆材第1部41から離間した側の内周縁部には、被覆材締め付け部45が設けられている。被覆材締め付け部45は、下方から見た際に、被覆材第2部42の内周縁部において、周方向の全周にわたって延びている。被覆材締め付け部45は、被覆材第2部42の内周縁部に形成された挿通孔45hと、挿通孔45hに挿通された紐材47と、を有している。挿通孔45hは、例えば被覆材第2部42の内周縁部に螺旋状のステッチを施したり、被覆材第2部42の内周縁部を折り返したりすることで、周方向で連続的に形成されている。挿通孔45hは、周方向の一部において、外部に開口する引出口(不図示)を有している。
【0036】
紐材47は、挿通孔45hの内径よりも細い例えば有端状のものである。紐材47は、引出口を通じて挿通孔45hの全周に亘って配索されている。被覆材締め付け部45は、本体部10の下側から凹溝18内に収容されている。被覆材締め付け部45は、被覆材第2部42の内周縁部を紐材47で引き締めた状態で、紐材47のうち引出口から引き出された両端部同士を結ぶ等することで、平面視において本体部10の平面視形状よりも小さく保持されている。被覆材締め付け部45は、凹溝18内で、周方向に間隔をあけて設けられた複数の係止爪19に係止されている。
【0037】
シート材50は、クッション材30において下側を向く第1クッション材裏面31gに一体に接合されている。シート材50は、例えば不織布(布材)からなる。シート材50は、本体部10の上面10tの少なくとも一部を覆うように設けられている。シート材50は、第1クッション材裏面31gと本体部10の上面10tとの間に介在している。
【0038】
シート材50は、先述したように、クッション材30と一体成形する際、予め金型内に配置される。シート材50として用いられる不織布は、その内部に微少な空隙を多数有している。これにより、クッション材30の成形時に、不織布からなるシート材50を金型内に配置すると、金型内には、シート材50の厚み分の微小な隙間が形成されることになる。これにより、成形時に金型内に溜まる空気をシート材50の内部に逃がすことができる。したがって、クッション材30を形成する発泡ウレタン等の材料中に気泡が発生するのを抑え、クッション材30の密度が低下するのを抑えることができる。
【0039】
図5は、実施形態における座体4の組立途中の状態を示す断面図である。
図5に示すように、このような表装部材20は、クッション材30の成形時に、本体部10の形状に対応した所定の形状に形成されている。なお、被覆材締め付け部45は、紐材47の締め付け前において、本体部10の平面視外形よりも大きく形成されている。このため、座体4の組立に際しては、本体部10上に、表装部材20を被せるよう載せる。具体的に、被覆材締め付け部45の内側を通じて被覆材40の内側に本体部10を配置する。この際、クッション材30の溝状部35内に、本体部10における頂部10t1が収容されることで、本体部10に対する表装部材20の位置決めが行われる。
【0040】
続いて、本体部10の下側で、紐材47を引き締める。すると、被覆材締め付け部45が径方向の内側かつ周方向の長さが縮小するように変位することで、第2クッション部32が本体外周面10fと被覆材第1部41との間で圧縮されるとともに、第3クッション部33が被覆材第1部41と外周壁部13の先端部との間で圧縮される。その後、紐材47の端部同士を縛ることで、被覆材締め付け部45の形状が保持される。紐材47を縛った後、被覆材締め付け部45は凹溝18内に押し込んだ後、複数の係止爪19に係止される。なお、紐材47の結び目や端部は、凹溝18内に収容されていてもよい。
【0041】
このように、本実施形態において、被覆材40は、クッション材30に一体に接合された被覆材第1部41と、本体部10の内側に向かって延びる被覆材第2部42と、を備え、被覆材締め付け部45は、被覆材第2部42の内周縁部に形成されている構成とした。
この構成によれば、被覆材第1部41は、クッション材30に一体に接合されているため、被覆材締め付け部45の紐材47を締め付けても、その影響が被覆材第1部41に及びにくく、しわが生じにくい。
また、本体部10の上面10tを覆うように設けられるクッション材30は、上面10t上に配置された第1クッション部31と、第1クッション部31の外周縁部から下方に延び、本体部10の本体外周面に沿って設けられる第2クッション部32とを備えている。このようなクッション材30に被覆材第1部41が一体に接合されることで、上側から見た場合、クッション材30の全体が、被覆材第1部41に覆われていることになる。このため、利用者からすると、被覆材40のしわを視認しにくい。したがって、紐材47を用いて被覆材40の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる。
【0042】
本実施形態において、第1クッション材裏面31gに一体に接合され、本体部10の上面10tに接触する不織布からなるシート材50を備えている構成とした。
この構成によれば、クッション材30が、本体部10の上面10tに接触することが抑えられ、第1クッション材裏面31gの摩耗を抑制することができる。また、第1クッション材裏面31gと本体部10の上面10tが直接接触する場合によりも、シート材50と本体部10の上面10tが接触する場合の方が、摩擦係数が高ければ、シート材50を備えることで、利用者の荷重によって、クッション材30が本体部10の上面10tに沿ってずれるのを抑えることができる。
【0043】
本実施形態において、クッション材30が、第2クッション部32から下側に延出する第3クッション部33を備えている構成とした。第3クッション部33は、外周壁部13における下側の先端部を覆うように設けられ、被覆材40と外周壁部13の先端部との間に挟み込まれている構成とした。
この構成によれば、第3クッション部33により、本体部10に対してクッション材30を係止させるような機能が発揮される。これにより、クッション材30を、本体部10に対して、より強固に固定することができる。また、被覆材締め付け部45の紐材47を締め付けることによって被覆材第2部42は、外周壁部13の先端部に押し付けられる。このとき、第3クッション部33が、被覆材40と外周壁部13の先端部との間に挟み込まれることで、被覆材第2部42が外周壁部13の先端部に強く押し付けられるのを抑えることができる。その結果、被覆材第2部42の摩耗についても抑えることができる。
【0044】
本実施形態において、クッション材30には、本体部10の頂部10t1を収容する溝状部35が形成されている構成とした。
この構成によれば、座体4の組立時、クッション材30の溝状部35を、本体部10の上面10tの外周縁を形成する頂部10t1に合わせることで、本体部10に対するクッション材30の位置決めを容易に行うことができる。また、被覆材締め付け部45の紐材47を締め付ける際にも、クッション材30の位置ずれが抑えられるので、作業を効率良く行うことができる。
また、溝状部35は、第1クッション部31と第2クッション部32との境界部に形成されている。これにより、第1クッション部31と第2クッション部32とが簡易的に隔てられ、被覆材締め付け部45の紐材47を締め付けたときに生じる周方向の締付力が、第2クッション部32から第1クッション部31へと伝わりにくくなる。これにより、特に被覆材第1部41において第1クッション部31を覆う部分で、しわの発生が有効に抑えられる。
【0045】
本実施形態において、第2クッション部32が、上側から下側に向かって厚みが漸次小さくなっている構成とした。
この構成によれば、クッション材30の第2クッション部32の表面から外周壁部13の先端部へとスムーズに面が繋がり、これを覆う表皮材に、局所的な張力が生じるのを抑えることが期待できる。
【0046】
本実施形態において、椅子1は、床面上に載置される支持構造体7と、上記の座体4と、を備える構成とした。
この構成によれば、紐材47を用いて表装部材20の周縁部を引き締める構造においても、しわの発生を抑え、外観を向上させることができる座体4を備えた椅子を提供することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、支持構造体として、椅子1の座体4を例示したが、これに限られない。荷重支持材としては、座体4に限らず、背凭れ等にも同様の構成を適用可能である。荷重支持部材が背凭れである場合、第1方向は前後方向となり、第1方向の第1側は前側、第1方向の第2側は後側となる。
【0049】
また、荷重支持材の形状は、適宜変更可能であり、例えばベンチの座体や背凭れのように、荷重支持材は長方形状等であってもよい。クッション材30と被覆材40とを一体化する手段として、接着剤を使用してもよい。その場合の接着剤は、溶剤タイプでもよいし、例えばシート状のホットメルト型接着剤のような固形タイプでもよい。
また、シート材50は、不織布に限らず、含浸性のある布材であってもよい。
また、挿通孔45hは、被覆材第2部42の内周縁部に、被覆材第2部42の厚さ方向に貫通するとともに、周方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。このような場合において、複数の挿通孔45hを通過するように紐材47を挿通させた状態で、紐材47を締め付ければよい。
上述した実施形態では、第1クッション部31と第2クッション部32との境界部に溝状部35が形成された構成について説明したが、この構成に限られない。溝状部は、クッション材30における任意の位置に形成することが可能である。
上述した実施形態では、クッション材30に位置決め凹部が形成され、本体部10に凸部が形成された構成について説明したが、この構成に限られない。クッション材30に凸部が形成され、本体部10に位置決め凹部が形成されていてもよい。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 椅子
2 脚部
2a 多岐脚
2a1 脚体
2a2 キャスタ
2b 脚柱
2b1 外筒
2b2 内筒
3 支基
4 座体(荷重支持部材)
5 背凭れ
7 支持構造体
10 本体部
10f 本体外周面
10t 上面(第1面)
10t1 頂部(凸部、他方の部材)
11 支基取付部
11a 突条
12 リブ
13 外周壁部
14 内周壁部
15 下面形成部材
16 上面形成部材
18 凹溝
19 係止爪
19a 基部
19b 延出部
20 表装部材
30 クッション材
31 第1クッション部
31g 第1クッション材裏面
32 第2クッション部
33 第3クッション部
35 溝状部(位置決め凹部、一方の部材)
40 被覆材
41 被覆材第1部
42 被覆材第2部
45 被覆材締め付け部
45h 挿通孔
47 紐材
50 シート材
図1
図2
図3
図4
図5