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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130320
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】捕集タンク及び給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20240920BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240920BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240920BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240920BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20240920BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20240920BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240920BHJP
【FI】
F24H9/00 Z
B01D21/24 Z
B01D21/24 D
C02F1/32
C02F1/50 520L
C02F1/50 531T
C02F1/78
A47K3/00 K
A47K3/00 E
F24H1/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039983
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古河 俊輔
【テーマコード(参考)】
3L036
3L122
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
3L036AD31
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA63
3L122AA64
3L122AA74
3L122AB23
3L122AB56
4D037AA09
4D037AB03
4D037BA18
4D050AA10
4D050AB06
4D050BB02
4D050BD02
4D050BD06
(57)【要約】
【課題】給湯機内の異物を捕集可能な捕集タンクを提供する。
【解決手段】捕集タンク12は、少なくとも浴槽に湯水を供給する給湯機に備えられ、配管を流れる湯水中の異物を捕集する捕集タンクであって、筐体100と、筐体100に形成され、筐体100の内部に湯水を流入させる流入口101と、流入口101よりも上方で筐体100に形成され、筐体100の内部から湯水を流出させる流出口102と、筐体100の内側底部に形成され、流入口101を通じて流入した湯水中の異物を捕集する捕集空間103と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも浴槽に湯水を供給する給湯機に備えられ、配管を流れる湯水中の異物を捕集する捕集タンクであって、
筐体と、
前記筐体に形成され、前記筐体の内部に湯水を流入させる流入口と、
前記筐体において前記流入口とは反対側で前記筐体に形成され、前記筐体の内部から湯水を流出させる流出口と、
前記筐体の内側底部に形成され、前記流入口を通じて流入した湯水中の異物を捕集する捕集空間と、
を備える
ことを特徴とする捕集タンク。
【請求項2】
前記筐体の内部で前記流入口に接続され、側壁に開口を有する有底筒状に構成される第1内管と、
前記筐体の内部で前記流出口に接続され、側壁に開口を有する有底筒状に構成される第2内管と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集タンク。
【請求項3】
前記第1内管の底と、前記第2内管の底とは、所定距離を有して離間し
前記第1内管は、前記流入口と連通するように前記筐体の内側で嵌装され、
前記第2内管は、前記流出口と連通するように前記筐体の内側で嵌装され、
前記所定距離は、前記第1内管又は前記第2内管が前記筐体の内壁から脱離したときに、脱離した一方の内管が他方の内管の底部によって前記筐体内でのぐらつきを抑制可能な距離であり、
前記第1内管に形成される開口の向きと、前記第2内管に形成される開口の向きとが異なっている
ことを特徴とする請求項2に記載の捕集タンク。
【請求項4】
前記開口は、前記第1内管の延在方向に対して90°又は下向きに90°未満の角度方向の向きを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の捕集タンク。
【請求項5】
前記筐体は、前記筐体の内部での湯水の流通方向に少なくとも2つの単位筐体が溶着されて形成され、
前記単位筐体は、外部から内部を視認不可能な樹脂製であり、
少なくとも2つの前記単位筐体のうち、少なくとも1つの前記単位筐体には、誤組抑制用の目印が付されている
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集タンク。
【請求項6】
前記開口の総面積は、前記流入口の面積以上の大きさを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の捕集タンク。
【請求項7】
前記流入口の開口面積が前記流出口の開口面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集タンク。
【請求項8】
少なくとも浴槽に供給される湯水を生成する湯水生成部と、
前記浴槽に繋がる配管を流れる湯水中の異物を捕集する捕集タンクと、を備え、
前記捕集タンクは、
筐体と、
前記筐体に形成され、前記筐体の内部に湯水を流入させる流入口と、
前記筐体において前記流入口とは反対側で前記筐体に形成され、前記筐体の内部から湯水を流出させる流出口と、
前記筐体の内側底部に形成され、前記流入口を通じて流入した湯水中の異物を捕集する捕集空間と、
を備える
ことを特徴とする給湯機。
【請求項9】
前記捕集タンクは、前記浴槽の追い焚きを行う際に湯水が流れる配管に備えられる
ことを特徴とする請求項8に記載の給湯機。
【請求項10】
前記捕集タンクは、前記浴槽に湯水が供給されるときの湯水の流通方向において、湯水の除菌を行う除菌装置の下流側かつ前記浴槽の上流側に備えられる
ことを特徴とする請求項8に記載の給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、捕集タンク及び給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯機に接続された浴槽における異物の吸込みを抑制する技術が知られている。特許文献1の要約書には、「浴槽内の水を浴槽外へ送出するための吸入部と、供給された水を浴槽内へ吐出するための吐出部と、を有し、浴槽に固定される固定部(50)と、固定部(50)に当接するとともに、浴槽内の水を吸入する吸入口(39)を有するカバー部(38)と、固定部またはカバー部(38)のうち一方に形成された複数の突起部(51)と、固定部またはカバー部(38)のうち他方に形成され、複数の突起部(51)に当接する当接面と、を設けた。突起部(51)と当接面とに囲まれた空間であるメッシュ孔(55)を介して浴槽内の水を吸入する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-155998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、例えば浴槽内で抜けてしまった毛髪1本等の小さな異物の給湯機への侵入については考慮されていない。そして、いったん給湯機に侵入した異物は、例えば追い炊き時に浴槽に流入し、使用者に不安感を与え得る。また、例えば湯張り時においても、配管内に残存した異物が浴槽に供給されることがあり、この場合にも、使用者に不安感を与え得る。
本開示が解決しようとする課題は、給湯機内の異物を捕集可能な捕集タンク及び給湯機の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の捕集タンクは、少なくとも浴槽に湯水を供給する給湯機に備えられ、配管を流れる湯水中の異物を捕集する捕集タンクであって、筐体と、前記筐体に形成され、前記筐体の内部に湯水を流入させる流入口と、前記筐体において前記流入口とは反対側で前記筐体に形成され、前記筐体の内部から湯水を流出させる流出口と、前記筐体の内側底部に形成され、前記流入口を通じて流入した湯水中の異物を捕集する捕集空間と、を備えることを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の給湯機を示す系統図であり、追い焚き時の湯水の流れを説明する図である。
図2】本開示の捕集タンクの上方からの斜視図である。
図3】本開示の捕集タンクの上面図である。
図4】本開示の捕集タンクの正面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6】本開示の給湯機を示す系統図であり、浴槽への湯張り時の湯水の流れを説明する図である。
図7】本開示の捕集タンクの製造方法を説明する図であり、単位筐体(外管)の断面図である。
図8】本開示の捕集タンクの製造方法を説明する図であり、単位筐体(外管)に内管を嵌装するときの断面図である。
図9】本開示の捕集タンクの製造方法を説明する図であり、単位筐体(外管)に内管を嵌装した状態の断面図である。
図10図9に示した単位筐体を接合するときの断面図である。
図11】別の実施形態に係る捕集タンクのA-A線断面図である。
図12】別の実施形態に係る捕集タンクのA-A線断面図である。
図13】別の実施形態に係る捕集タンクのA-A線断面図である。
図14】別の実施形態に係る捕集タンクの上方からの斜視図である。
図15】別の実施形態に係る給湯機を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0008】
図1は、本開示の給湯機1を示す系統図であり、追い焚き時の湯水の流れを説明する図である。用語の意味として、一般的な成分名としての水(HO)は、温度に応じて湯(例えば30℃以上)又は水(例えば30℃未満)の何れをも含む総称である。本明細書では、説明の便宜のため、温度に関わらずこれらを総称するため、「湯水」との名称が使用される。従って、例えば、「浴槽2内の湯水」、「配管22を流れる湯水」というときは、「浴槽2内の湯水(HO)」、「配管22を流れる湯水(HO)」を意味し、「湯」又は「水」の名称に応じて、必ずしも温度を限定的に解釈するものではない。従って、便宜的に、例えば水温10℃の「水」も、水温40℃の「湯」も、総称して「湯水」というものとする。
【0009】
給湯機1は、少なくとも浴槽2に湯水を供給するものである。給湯機1は、更に、風呂場、台所等に設置された蛇口を通じて湯水を使用者に供給してもよい。浴槽2に溜まった湯水は、給湯機1を用いた追い焚きによって加熱され、浴槽2に戻される。給湯機1を構成する各設備は、配管22(例えば樹脂製、金属製等)により接続される。湯水は配管22を流れる。
【0010】
給湯機1は、熱交換器11を備える貯湯タンク10(湯水生成部)と、捕集タンク12と、ポンプ13と、除菌装置14とを備える。更に、給湯機1は、三方弁50,51と、混合弁52,53と、流量センサ54,55と、電磁弁56と、水位センサ57と、減圧弁59と、開放弁58,61と、ヒートポンプ60と、を備える。
【0011】
追い焚き時には、浴槽2の湯水は、実線矢印で示すように、水位センサ57、ポンプ13、除菌装置14、捕集タンク12、三方弁50及び熱交換器11を設置した配管22を通じて、浴槽2に戻される。熱交換器11(湯水生成部)は、少なくとも浴槽2に供給される湯水を生成するものであり、貯湯タンク10に貯湯された湯の熱によって配管22を流れる湯水(浴槽2に供給される湯水)を加熱する。なお、貯湯タンク10に貯湯される湯は、ヒートポンプ60によって生成される。
【0012】
追い炊き時での湯水の流れを詳細に説明する。浴槽2の湯水は、ポンプ13の駆動により、浴槽2に備えられた循環口(不図示。例えば循環ユニット21に形成)を通じ配管22を流れて除菌装置14に供給される。除菌装置14では湯水が除菌(滅菌、殺菌等を含む概念である)される。除菌装置14は、例えば、深紫外線を湯水に照射する装置、オゾンを湯水内に発生させる装置、ウルトラファインバブル(登録商標)による湯水の除菌を行う装置、銀イオン等を用いた除菌装置等である。除菌装置14で殺菌された湯水は、捕集タンク12に供給される。
【0013】
捕集タンク12は、配管22を流れる湯水中の異物を捕集するものである。異物は、例えば、浴槽2で使用者から抜けた毛髪、使用者から剥がれ落ちた角質等の有機物等や、系外から流入する微細な無機物等であってもよい。また、異物は、浴槽2で生じた異物に限定されず、配管22を流れる湯水中に含まれる異物であればよい。異物は、例えば、概ね大きさ(最も長い部分の長さ)が例えば1mm以上10mm以下であるが、この大きさに限定されない。
【0014】
捕集タンク12は、浴槽2に繋がる配管22を流れる湯水中の異物を捕集する。配管22は、少なくとも、追い焚き時に浴槽2の湯水が循環する配管23と、浴槽2の湯張り時に湯水が浴槽2に供給されるときに流れる配管24(図6)とを含む。図1の例では、捕集タンク12は、浴槽2の追い焚きを行う際に湯水が流れる配管23に備えられる。これにより、浴槽2との間で異物が循環することを抑制できる。
【0015】
図2は、本開示の捕集タンク12の上方からの斜視図である。以下、特に断らない限り、z軸方向を高さ方向(上下方向)、x軸及びy軸方向を水平方向(横方向)等という。捕集タンク12は、例えば鉛直方向に設置されるが、流入口101に対する流出口102の相対的高さ位置が流入口101と同じか、又は流入口101よりも高ければ、鉛直方向に対して90°未満の角度を有して配置されてもよい。以下では一例として、捕集タンク12は鉛直方向に配置されるものとする。
【0016】
捕集タンク12は、筐体100と、筐体100の内部に湯水を流入させる流入口101と、筐体100の内部から湯水を流出させる流出口102とを備える。筐体100は、流入口101と流出口102との間で、これらの大きさよりも大きな外形を有する。また、筐体100は、概ね円筒形状を有し、高さ方向端部で流入口101及び流出口102に向かって窄まる略円筒状を有する。従って、筐体100の内径は、流入口101及び流出口102の開口径よりも大きい。
【0017】
図3は、本開示の捕集タンク12の上面図である。略円筒状を有する捕集タンク12の水平方向の大きさ(即ち太さ)は、外径として例えば20mm以上80mm以下であるが、この太さに限定されず、給湯機1の性能に応じて適宜決定すればよい。また、流入口101(図2)及び流出口102は、本開示の例では同じ大きさ及び形状を有し、同じ開口面積を有するが、いずれも例えば、内径10mm以上30mm以下の円形の開口により形成できる。
【0018】
図4は、本開示の捕集タンク12の正面図である。筐体100の高さ(z軸方向)は例えば100mm以上500mm以下であるが、この高さに限定されず、給湯機1の性能に応じて適宜決定すればよい。また、詳細は図7以降を参照して後記するが、筐体100は、筐体100の内部での湯水の流通方向(上下方向)に少なくとも2つの単位筐体100a,100bが溶着されて形成される。これにより、捕集タンク12を容易に製造できる。筐体100は、例えば、外部から内部を視認不可能な樹脂製であるが、これに限られない。
【0019】
流入口101は、筐体100に形成され、除菌装置14(図1)に接続される。従って、除菌装置14の直下(すぐ下流)には捕集タンク12が配置され、除菌装置14で除菌された湯水中の異物が捕集タンク12で捕集される。このため、捕集タンク12に堆積した異物(後記)からの異臭の発生を抑制できる。
【0020】
流出口102は、筐体100において流入口101とは反対側(図示の例では流入口101よりも上側(真上))で筐体100に形成され、三方弁50(図1)に接続される。従って、捕集タンク12で異物を捕集し、異物を含まなくなった湯水が、浴槽2に供給される。これにより、浴槽2に異物が供給されることを抑制でき、使用者に不安感を与え難くできる。
【0021】
図5は、図4のA-A線断面図である。筐体100は、流入口101からの湯水の流入方向(高さ方向、z方向、鉛直方向)を長手方向とする内空間110を備える。内空間110を備えることで、内空間110を流れる湯水から異物を捕集できる。筐体100に流入した湯水は内空間110を上方向に流れ、流出口102から流出する。なお、内空間110に臨む面(例えば筐体100の内壁面、内管104,105の外壁面等)には、内空間110の流速を低下させる部材(例えばリブ、凹凸、溝等)を設けてもよい。これにより、内空間110で湯水をゆっくりと流すことができ、詳細は後記するが、異物を沈殿し易くできる。
【0022】
捕集タンク12は、流入口101を通じて流入した湯水中の異物を捕集する捕集空間103を備える。捕集空間103は、内空間110の一部として形成され、筐体100の内側底部に形成される。なお、筐体100の内側底部は、捕集タンク12の設置形態によって異なり得る。例えば詳細は後記するが、捕集タンク12が水平方向(水平方向に沿った方向でもよい)に配置された場合、筐体100の内側底部は、図5に図示される筐体100における側壁部分近傍に相当する。
【0023】
捕集タンク12は、湯水より密度が大きな異物を捕集する。具体的には、流入口101から筐体100の内部に流入した湯水は、筐体100の内部で上昇する間に、相対的に比重が大きな異物が下方に向かう(即ち沈む)。これにより、異物は、筐体100の内側底部に形成された捕集空間103に例えば堆積される。従って、湯水が捕集タンク12の内部に存在する時間(内部を流れる時間)は長いことが好ましい。一方で、このようにして捕集されることで異物が除去された湯水は、上方に形成された流出口102から筐体100の外部に流出する。
【0024】
捕集タンク12は内管104(第1内管)を備える。内管104は、筐体100の内部で流入口101に接続され、側壁に開口104aを有する有底筒状に構成される。内管104を備えることで、流入口101を通じて筐体100に流入した湯水は、内管104の内部を流れる。そして、湯水は、開口104aを通じて、筐体100(内管104からみれば「外管」に相当)の内部かつ内管104の外部に流出する。このようにすることで、筐体100の内部で湯水の流通方向を高さ方向から水平方向に変更でき、湯水が捕集タンク12の内部を流れる時間を長くできる。即ち、内管104に流入した湯水は、内側の底104bに衝突し、向きを変える。このため、湯水の流速が高速のまま流出口102から流出することを抑制でき、異物を捕集空間103に沈殿し易くできる。
【0025】
内管104と筐体100との内径の比は、特に制限されないが、例えば内管104の内径を1としたときに、例えば、筐体100の内径は3以上にすることができる。上限は、給湯機1の占有体積に応じて決定すればよい。
【0026】
開口104aの形状は、例えば、円形状又は長丸形状(水平方向に長径を有する楕円形状)を有することが好ましい。これにより、開口104aを湯水が通過する際に圧力損失が局所的に大きくなることを抑制できる。開口104aの大きさは特に制限されないが、異物を通過可能な程度の大きさが好ましく、例えば円形であれば、直径が1mm以上10mm以下が好ましい。なお、開口104aの形状はスリット等でもよい。
【0027】
捕集空間103は、上記のように、筐体100の内部かつ内管104の外部に形成される。そして、開口104aは、内管104の延在方向である高さ方向に複数備えられる。このようにすることで、複数備えられる開口104aのうち、一部の開口104aが捕集空間103に堆積した異物で覆われたとしても、残部の開口104aを通じて流出できるため、開口104aを通じた流出が過度に妨げられることを抑制できる。なお、仮に全ての開口104aが異物で覆われれば、圧力損失が大きくなり、浴槽2に供給される単位時間当たりの湯水の流量が低下する。そこでこの場合には、例えば捕集タンク12を交換したり、内部に異物を除去したりすることが好ましい。
【0028】
開口104aは、開口104a1(第1開口)と、開口104a1よりも内管104の底104b側に配置され、開口104a1よりも小さな開口104a2(第2開口)と、を含む。開口104a,104a2を含むことで、流入口101に相対的に近い開口104a1では相対的に多くの湯水が流出し、相対的に遠い開口104a2では相対的少ない湯水が流出する。即ち、相対的に下方に形成された開口104a1を通じて湯水が流出し易くなる。これにより、開口104aから流出した湯水が、内管104の外部に形成される捕集空間103を流れる時間を長くでき、異物を沈殿させ易くできる。
【0029】
開口104aは、本開示の例では、同じ高さ位置で水平方向(y方向)に対向して2個ずつ、異なる高さ位置に4個ずつ、合計で8個形成される。また、開口104aは、内管104の延在方向である高さ方向(z軸方向)に対して90°の角度方向の向きを有する。従って、開口104aは、水平方向に開口しており、湯水は水平方向に流出する。なお、詳細は図13を参照しながら後記するが、開口104aは、90°の角度方向の向きに限らず、内管104の延在方向に対して90°又は下向きに90°未満の角度方向の向きを有することができる。
【0030】
開口104aの総面積は、流入口101の面積以上の大きさを有する。これにより、流入口101を通じた流入時の流速と同じ又は遅い流速で開口104aから湯水を流出できる。このため、筐体100の内部で湯水の流速を遅くでき、内空間110での湯水の存在時間(流通時間)を長くできるから、異物の沈殿機会を大きくできる。
【0031】
捕集タンク12は、内管105(第2内管)を備える。内管105は、筐体100の内部で流出口102に接続され、側壁に開口105aを有する有底筒状に構成される。内管105を備えることで、内管105を備えない場合と比べて、筐体100の内部で湯水を意図的に流し難くできる。このため、内空間110での湯水の存在時間(流通時間)を長くできるから、異物の沈殿機会を大きくできる。
【0032】
内管104に形成される開口104aの向きと、内管105に形成される開口105aの向きとが異なっている。これにより、湯水は、内空間110で内管104,105を中心に旋回するように流れる。このため、内空間110での湯水の存在時間(流通時間)を長くできるから、異物の沈殿機会を大きくできる。図示の例では、開口105aは、同じ高さ位置で水平方向(x方向)に対向して2個ずつ、異なる高さ位置に4個ずつ、合計で8個形成される。
【0033】
内管104と内管105とは同じ形状及び材質(樹脂製)で構成される。従って、内管105の設計条件は、上記の内管104の設計条件を同様に適用できる。また、何れも有底の円筒形状を有する内管104と内管105とは、それぞれの中心軸が一致するように配置される。
【0034】
内管104の底104bと、内管105の底105bとは、所定距離dを有して離間している。このようにすることで、詳細は後記するが、単位筐体100a,100b同士を組み立てる(例えば溶着)する際に、内管104,105同士の接触を抑制して、これらの破損を抑制できる。なお、所定距離dは、底104bのうちの外側面と、底105bのうちの外側面との間の距離である。
【0035】
内管104は、流入口101と連通するように筐体100の内側で嵌装される。内管105は、流出口102と連通するように筐体100の内側で嵌装される。具体的には、内管104は、流入口101の付近で筐体100の内壁に形成された嵌装部106に嵌め込まれる(挿入される、差し込まれる、ともいう)。嵌装部106にはガイド106a(図7。例えば突起)が形成されるとともに、内管104の開口端近傍にもガイド104c(図7。例えば溝)が形成される。このため、ガイド106a,104cによって誤組が抑制され、開口104aの向きが所望の方向になる。また、嵌装部106は、内管104の外径よりもわずかに大きい内径を有する。
【0036】
内管105は、流出口102の付近で筐体100の内壁に形成された嵌装部107に嵌め込まれる。嵌装部107は、内管105の外径よりもわずかに大きい内径を有する。嵌装部107にはガイド107a(例えば突起)が形成されるとともに、内管105の開口端近傍にもガイド105c(例えば溝)が形成される。このため、ガイド107a,107cによって誤組が抑制され、開口105aの向きが所望の方向になる。
【0037】
上記所定距離dは、内管104又は内管105が筐体100の内壁から脱離したときに、脱離した一方の内管104,105が他方の内管105,104の底105b,104bによって筐体100内でのぐらつきを抑制可能な距離である。内管104,105は、上記のように嵌装部106,107に嵌装されるため、流通する湯水の水圧によって、嵌装部106,107から脱離し得る(外れ得る)。しかし、仮に一方の内管104が嵌装部106から外れた場合においても、内管104の底104bが内管105の底105bに接触することで、内管104が筐体100の内部で例えば傾く等、筐体100内部でのぐらつきを抑制できる。これにより、湯水が捕集タンク12の内部で意図しない挙動を生じることを抑制でき、捕集タンク12での異物除去効率の大幅な低下を抑制できる。
【0038】
所定距離dは、例えば、嵌装部106,107の深さ(内管104,105と筐体100の内壁との接触部分の高さ方向の長さ)等を考慮し、試運転、実験、シミュレーション、計算等によって決定できる。例えば、内管104が、深さd0(mm)の嵌装部106に嵌装されている場合、通常は、内管104と筐体100の内壁との接触部分の高さ方向の長さはd0(mm)である。そして、内管104が、嵌装部106から完全に抜けたとき、内管104と筐体100の内壁との接触が解かれ、これらの間に摩擦が生じなくなるから、内空間110において、内管104に、傾き等のぐらつきが生じ得る。
【0039】
しかし、内管104が、嵌装部106から完全に抜けたときであっても、内管104の底104bを抑え込む部材、即ち内管105の底105bが底104bの上方に配置されていれば、完全に抜けたときに底104b,105b同士が接触する。これにより、底104b,105b同士の間に摩擦が生じ、内管104のぐらつきを抑制できる。従って、この場合には、所定距離dとしては、例えば、深さd0以下の距離に設定すればよい。なお、これらの事項は簡略的に行った計算であり、より精度を高めるため、上記のように、試運転、実験、シミュレーション等によって決定してもよい。
【0040】
図1に戻って、捕集タンク12は、浴槽2に湯水が供給されるとき(追い焚き、湯張り)の湯水の流通方向において、湯水の除菌を行う除菌装置14、又は、湯水を流すポンプ13、のうちの少なくとも一方(図示の例では双方。除菌装置14の直下)の構造物の下流側かつ浴槽2の上流側に備えられる。これらのうち、特に除菌装置14の下流側に備えられることで、捕集タンク12には除菌後の異物が捕集されるため、捕集タンク12での異物からの異臭の発生を抑制できる。また、特にポンプ13の下流側に備えられることで、ポンプ13で昇圧された湯水を捕集タンク12に供給できるため、湯水を捕集タンク12の内部に流し易くでき、単位時間当たりの浴槽2への湯量の低下を抑制できる。図示の例では、捕集タンク12は、浴槽2に湯水が供給されるときの湯水の流通方向において、除菌装置14の下流側かつ浴槽2の上流側に備えられる。
【0041】
捕集タンク12で異物が捕集された湯水は、三方弁50に流れる。三方弁50では、湯水は熱交換器11に流れ、熱交換器11で設定温度に迄加熱された後、浴槽2に供給される。
【0042】
図6は、本開示の給湯機1を示す系統図であり、浴槽2への湯張り時の湯水の流れを説明する図である。本開示の例では、捕集タンク12は、浴槽2への湯張りを行う際に湯水が流れる配管24にも備えられる。湯張り時、給水された水(例えば水道水)は、減圧弁59を経由して、貯湯タンク10の下部及び混合弁52に至る。混合弁52では、貯湯タンク10の上部から排出された湯と、給水(水道水等)とが混合され、設定温度の湯水が得られる。混合により得られた湯水は、流量センサ55、電磁弁56、ポンプ13、除菌装置14、捕集タンク12、三方弁50を経由して、浴槽2に供給される。
【0043】
湯張りの際、浴槽2に供給される湯水は、通常は例えば水道水の加熱により生じた湯水であるため、通常は異物を含まない。しかし、例えば追い焚き時に吸入し、配管22に残存した異物が湯張り時の湯水に含まれる場合であっても、捕集タンク12を備えることで、異物が浴槽2に供給されることを抑制できる。特に、本開示の例のように、配管24が配管23(図1)の少なくとも一部を兼ねる場合に、この効果を大きくできる。
【0044】
図7は、本開示の捕集タンク12の製造方法(以下、本開示の製造方法という)を説明する図であり、単位筐体100a(外管)の断面図である。上記のように、捕集タンク12は、内管104,105(図5)を嵌装した単位筐体100a,100b(図5)同士の溶着等によって製造できる。以下、図7図9を参照して、本開示の製造方法を説明する。なお、単位筐体100bは、単位筐体100aと同様に製造できる。そこで、以下では説明の簡略化のために、単位筐体100aの製造方法のみを説明する。なお、単位筐体100a,100bは、外部から内部を視認不可能な樹脂製である。
【0045】
単位筐体100aは、流入口101とは反対側に、円形の開口120aを備える。開口120aの縁には、環状の接合部121aが形成される。接合部121aは、単位筐体100bにおいて流出口102とは反対側に備えられる開口120bの縁に形成された接合部121bと接合する。
【0046】
図8は、本開示の捕集タンク12の製造方法を説明する図であり、単位筐体100a(外管)に内管104を嵌装するときの断面図である。嵌装部106には、上記のように、ガイド106aが形成される。内管104の開口側(底104bの反対側)にも、上記のように、ガイド106aと嵌合可能なガイド104cが形成される。従って、白抜き矢印で示すように、ガイド106aとガイド104cとが嵌り合うようにして、内管104が嵌装部106に嵌装される。これにより、開口104aの水平方向向きを所望の向きに配置できる。
【0047】
図9は、本開示の捕集タンク12の製造方法を説明する図であり、単位筐体100a(外管)に内管104を嵌装した状態の断面図である。図9に示すように、内管104の底104bは、単位筐体100aの開口120aよりも奥まった位置に配置される。これにより、接合部121a,121b(図10)同士の溶着することで単位筐体100a,100bの高さが樹脂の溶融によって少し短くなったとしても、内管104の底104bと、内管105の底105bとの接触を抑制できる。
【0048】
図10は、図9に示した単位筐体100a,100bを接合するときの断面図である。単位筐体100aと同様にして製造された単位筐体100bは、水平面内で90°回転させることで開口104a,105aの向きを変えて、単位筐体100aと接合される。上記のように、単位筐体100aと単位筐体100bとは同じ構造を有する。そこで、一方の単位筐体100bを水平面内で回転させることで、同じ単位筐体を使用して、捕集タンク12を製造できる。
【0049】
接合は、本開示の例では、何れも円環状に形成された接合部121aと接合部121bとの溶着によって実行できる。
【0050】
図11は、別の実施形態に係る捕集タンク12のA-A線断面図である。図11に示す実施形態では、流入口101の開口面積が流出口102の開口面積よりも大きい。これにより、流入口101の開口面積を相対的に大きくして湯水をゆっくりと流入させることができ、捕集タンク12の内部での流速を低下できる。この結果、内空間110での湯水の存在時間を長くでき、異物を沈殿させ易くできる。また、上記のように、筐体100の内部を外部から視認できないが、流入口101と流出口102との開口面積が異なれば、外部から、流入口101と流出口102とを区別できるため、給湯機1への設置方向の誤りを抑制できる。
【0051】
図11の例では、円形に開口する流入口101の直径D1が、円形に開口する流出口102の直径D2よりも大きい。ただし、流入口101の開口面積が、流出口102の開口面積よりも小さくてもよい。
【0052】
図12は、別の実施形態に係る捕集タンク12のA-A線断面図である。図12に示す実施形態では、内管105(図5)が備えられていない。このため、開口104aから内空間110に流出した湯水は内空間110で上昇し、上方に配置された流出口102から流出する。このようにすることで、圧力損失の過度の増加を抑制でき、給湯機1から浴槽2に供給される湯水の単位時間当たりの流量を増やすことができる。
【0053】
図13は、別の実施形態に係る捕集タンク12のA-A線断面図である。図13に示す実施形態では、開口104aは、内管104の延在方向に対して下向きに90°未満の角度方向の向きを有する。このようにすることで、開口104aから流出する湯水の方向を水平方向未満にでき、単位量当たりの湯水が内空間110に存在する時間を長くできる。これにより、異物の沈殿機会を増やすことができる。
【0054】
なお、内管105に形成される開口105aは、内管105の延在方向である上下方向に対して垂直な方向(水平方向、xy方向)又は水平方向よりも上方向に向くことが好ましい。これにより、湯水を内空間110で意図的に流れ難くでき、流速を遅くできるため、異物の沈殿機会を増やすことができる。
【0055】
図14は、別の実施形態に係る捕集タンク12の上方からの斜視図である。図14に示す実施形態では、少なくとも2つの単位筐体100a,100bのうち、少なくとも1つ(図示の例では双方)の単位筐体100a,100bには、誤組抑制用の目印111が付されている。目印111が付されていることで、外部から視認できない内管104,105(図5)に形成された開口104a,105a(図5)の向きを把握でき、単位筐体100a,100bを目的の向きに接合できる。
【0056】
目印111は、例えば、リブ、凹凸、スリット等により構成できる。また、目印111の数は、1つでもよく、複数でもよい。図示の例では、開口104a,105aの向きにそれぞれ目印111が2つずつ形成される。目印111は、例えば、樹脂成型品である単位筐体100a,100bの成型時、目印111を備える単位筐体100a,100bを形成可能な金型を使用すればよい。目印111は、単位筐体100a,100bの成形後に、後から備えられてもよい。
【0057】
図15は、別の実施形態に係る給湯機1を示す系統図である。図15に示す給湯機1も、上記図1に示した給湯機1と同様に、貯湯タンク10と、捕集タンク12とを備える。更に、給湯機1は、流量センサ62と、水位センサ63と、熱交換器64(湯水生成部)と、混合弁65,66と、四方弁67と、ポンプ68、三方弁69とを備える。上記図1に示した給湯機1とは異なり、貯湯タンク10の外部に設置された熱交換器64において、浴槽2に供給される湯水が生成する。
【0058】
水道水等の給水は、減圧弁59を介して、貯湯タンク10の下部から貯湯タンク10に供給される。一方で、貯湯タンク10の内部の湯水は、下方から抜き出され、四方弁67、ポンプ68、三方弁69を適宜流れ、ヒートポンプ60で加熱される。ヒートポンプ60で加熱された湯水は、貯湯タンク10の上部から貯湯タンク10に戻される。貯湯タンク10の内部の湯水は、上部から熱交換器64に供給され、熱交換器64では、上記のように例えば追い炊きの際に浴槽2の湯水が加熱される。
【0059】
捕集タンク12は、浴槽2に湯水が供給されるときの湯水の流通方向において、除菌装置14又はポンプ13のうちの少なくとも一方(図示の例では双方。除菌装置14の直下)の構造物の下流側かつ浴槽2の上流側に備えられる。これらの位置に備えられることで、上記図1を参照して説明した効果が得られる。中でも、捕集タンク12は、浴槽2に湯水が供給されるときの湯水の流通方向において、除菌装置14の下流側かつ浴槽2の上流側に備えられる。
【0060】
捕集タンク12は、浴槽2の追い焚きを行う際に湯水が流れる配管23に備えられる。追い焚きの際、浴槽2の湯水は、ポンプ13、除菌装置14、捕集タンク12、水位センサ63、流量センサ62、熱交換器64を備えた配管22,23を流れ、浴槽2に戻される。
【符号の説明】
【0061】
1 給湯機
10 貯湯タンク
100 筐体
100a 単位筐体
100b 単位筐体
101 流入口
102 流出口
103 捕集空間
104 内管
104a 開口
104a1 開口
104a2 開口
104b 底
104c ガイド
105 内管
105a 開口
105b 底
106 嵌装部
106a ガイド
107 嵌装部
11 熱交換器
110 内空間
111 目印
12 捕集タンク
120a 開口
120b 開口
121a 接合部
121b 接合部
13 ポンプ
14 除菌装置
2 浴槽
21 循環ユニット
22 配管
60 ヒートポンプ
64 熱交換器
68 ポンプ
d 距離
D1 直径
D2 直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15