IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

特開2024-130334解析装置、解析方法および情報処理プログラム
<>
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図1
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図2
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図3
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図4
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図5
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図6
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図7
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図8
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図9
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図10
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図11
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図12
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図13
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図14
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図15
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図16
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図17
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図18
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図19
  • 特開-解析装置、解析方法および情報処理プログラム 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130334
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240920BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240920BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240920BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
G05B23/02 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039999
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸太
(72)【発明者】
【氏名】川ノ上 真輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩臣
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3C100
3C223
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
3C100AA29
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100BB34
3C223AA11
3C223BA03
3C223BB02
3C223BB08
3C223BB09
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB05
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF45
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH01
3C223HH02
3C223HH03
3C223HH06
3C223HH08
3C223HH17
3C223HH22
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】簡易な方式で異常の原因の推定が容易に可能な解析装置を提供する。
【解決手段】解析装置は、製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出する第1演算部と、製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出する第2演算部と、第1特徴量および第2特徴量に基づいて製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成する因果モデル生成部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出する第1演算部と、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出する第2演算部と、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成する因果モデル生成部とを備える、解析装置。
【請求項2】
前記第1演算部は、前記画像データに基づいて前記製造ラインのワークの位置、向き、および姿勢の少なくともいずれか1つを前記第1特徴量とする、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記第1演算部は、
前記音声データまたは画像データをタクトタイム毎に分割し、
タクトタイム毎の前記音声データまたは画像データの前記第1特徴量を算出する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項4】
前記第1演算部は、
前記画像データのフレーム単位で画像特徴量を算出し、
前記タクトタイム毎の前記画像特徴量の統計量を前記第1特徴量として算出する、請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記第1演算部は、前記音声データの所定の周波数の音量を前記第1特徴量として算出する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項6】
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを備える、解析方法。
【請求項7】
コンピュータに、
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等における製造ラインは、コンベア、ロボットアーム等の複数の機構で構成されている。この製造ラインのいずれかの機構で異常が発生すると、製品の製造が停止してしまい、大きな損害をもたらす可能性がある。そのため、工場等では、保全員が、製造ラインを定期的に巡回して、異常の発生又はその予兆の有無の確認を行っている。
【0003】
製造ライン内で異常の発生又はその予兆を検知したとき、異常が検知された機構よりも前の機構に真の異常の原因が存在する場合がある。したがって、真の異常の原因を特定するためには、製造ラインのある現象を特定するための製造ライン内の各機構の物理的な機構関係および当該機構で生じた現象間に関する因果関係を把握することが重要である。しかしながら、製造ラインを構成する機構の数が多くなり、かつ各機構の動作条件が日々変化し得ることから、製造ライン内の全ての機構の物理的な機構関係および当該機構で生じた現象間に関する因果関係を正確に把握するのは困難である。
【0004】
そのため、従来、熟練の保全員が、自身の経験及び勘に基づいて、製造ラインを構成する複数の機構間の物理的な機構関係および当該機構で生じた現象間に関する因果関係を把握して、製造ライン内で生じた異常又はその予兆の検知を行っていた。このような保全業務を非熟練の保全員が行うことができるようにするため、製造ラインを構成する複数の機構の物理的な機構関係および当該機構で生じた現象間に関する因果関係を可視化する技術の開発が望まれていた。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている装置では、製造ライン内の装置間の関係を容易にモデル化することにより、異常の検知を可視化する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-80630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、人間は情報の大部分を視覚、聴覚から取得するため製造ライン内の装置のデータを見せられたとしても簡易に異常を特定することができなかった。
【0008】
本開示の目的は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡易な方式で異常の原因の推定が容易に可能な解析装置、解析方法および情報処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例によれば、解析装置は、製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出する第1演算部と、製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出する第2演算部と、第1特徴量および第2特徴量に基づいて製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成する因果モデル生成部とを備える。
【0010】
本開示の一例によれば、解析方法は、製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと、製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと、第1特徴量および第2特徴量に基づいて製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを備える。
【0011】
本開示の一例によれば、情報処理プログラムは、コンピュータに、製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと、製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと、第1特徴量および第2特徴量に基づいて製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、簡易な方式で異常の原因の推定を容易に実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に従う解析装置1の利用場面の一例を模式的に例示する図である。
図2】実施形態に従う解析装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図3】実施形態に従うPLC2のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図4】実施形態に従う製造ライン3の具体例について説明する図である。
図5】実施形態に従う解析装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
図6】実施形態に従うノード生成部1256および因果モデル生成部1258における処理について説明するフロー図である。
図7】実施形態に従う取得部1252で取得された状態データと、音声および画像データとについて説明する図である。
図8】実施形態に従う状態データに基づく無向グラフ情報の作成について説明する図である。
図9】実施形態に従う製造ライン3の実施する製造工程における因果モデル生成部1258による状態データ223に基づく因果モデルを説明する図である。
図10】実施形態に従う包装機の画像特徴量について説明する図である。
図11】実施形態に従う画像データの特徴量の算出について説明する図である。
図12】実施形態に従う音声データの特徴量の算出について説明する図である。
図13】実施形態に従う画像データおよび音声データの特徴量を追加した因果モデルの生成について説明する図である。
図14】実施形態に従う状態データ、画像データおよび音声データの特徴量に基づく因果モデルについて説明する図である。
図15】実施形態に従う異常検知部1262における異常の検知について説明する図である。
図16】実施形態に従う異常検知部1262における異常の検知について説明する別の図である。
図17】実施形態に従うGUI部1260による推定結果確認画面について説明する図である。
図18】実施形態に従うイベント関係登録部1266のイベントリストについて説明する図である。
図19】実施形態に従うイベント関係推定部1264のイベントリストを用いたイベント推定処理について説明する図である。
図20】実施形態に従うイベント関係推定部1264のイベントリストを用いたイベント推定処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。以下で説明される各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0015】
<1.適用例>
図1は、実施形態に従う解析装置1の利用場面の一例を模式的に例示する図である。図1に示すように、実施形態に従う解析装置1は、製造ライン3を構成する複数の機構31の状態に関する状態データ223を取得する。製造ライン3は、何らかの物を製造可能であればよく、複数の装置で構成されてもよいし、包装機等の1つの装置で構成されてもよい。各機構31は、製造工程の何らかの処理を実施可能であればよく、1又は複数の装置で構成されてもよいし、装置の一部で構成されてもよい。1つの機構31が装置の一部で構成される場合、複数の機構31は、1つの装置で構成されてもよい。同一の装置が複数の処理を実施する場合には、それぞれを別の機構31とみなしてもよい。例えば、同一の装置が第1の処理と第2の処理とを実施する場合に、第1の処理をする当該装置を第1の機構31とみなし、第2の処理をする当該装置を第2の機構31とみなしてもよい。状態データ223は、製造ライン3を構成する各機構31の状態に関連するあらゆる種類のデータを含んでもよい。各機構31は、例えば、コンベア、ロボットアーム、サーボモータ、シリンダ(成形機等)、吸着パッド、カッター装置およびシール装置等の少なくともいずれかの装置またはその装置の一部で構成されてよい。各機構31は、例えば、印刷機、実装機、リフロー炉および基板検査装置等の少なくともいずれかの複合装置であってもよい。各機構31は、上記のような何らかの物理的な動作を伴う装置の他に、例えば、各種センサにより何らかの情報を検知する装置、各種センサからデータを取得する装置、取得したデータから何らかの情報を検知する装置および取得したデータを情報処理する装置等の内部処理を行う装置を含んでもよい。具体例として、コンベアを流れる対象物に付与されたマークを検知する光学センサを備える製造ラインにおいて、当該光学センサ及び光学センサにより検知した情報を利用する装置が各機構31として取り扱われてよい。また、各件の状態データ223は、例えば、トルク、速度、加速度、温度、電流、電圧、空圧、圧力、流量、位置、寸法(高さ、長さ、幅)および面積の少なくともいずれかを示すデータであってよい。このような状態データ223は、公知のセンサおよびカメラ等の少なくともいずれかの計測装置によって得ることができる。例えば、流量は、フローセンサにより得ることができる。また、位置、寸法、及び面積は、画像センサにより得ることができる。
【0016】
また、状態データ223は、各機構31の状態を示す際の入力指令値および制御値のような各機構31に入力するデータであってもよい。
【0017】
なお、状態データ223は、1又は複数の計測装置から得られるデータで構成されてもよい。また、状態データ223は、計測装置から得られるデータそのままであってもよいし、画像データから取得される位置データ等のように計測装置から得られたデータに何らかの処理を適用することで取得可能なデータであってもよい。各件の状態データ223は、各機構31に対応して取得される。各計測装置は、製造ライン3の各機構31を監視可能に適宜配置される。PLC2は、製造ライン3を稼働させて、各計測装置から各件の状態データ223を収集する。制御部11は、PLC2から、製造ライン3を正常に稼働させたときの各機構31の状態に関する状態データ223を取得する。
【0018】
また、実施形態に従う解析装置1は、製造ライン3の動作を制御するための制御プログラム222を取得する。制御プログラム222は、製造ライン3を構成する各機構31の動作を制御するあらゆる種類のプログラムを含んでよい。制御プログラム222は、1件のプログラムで構成されてもよいし、複数件のプログラムで構成されてもよい。制御プログラム222は、PLC2で実行可能なように、例えば、ラダー・ダイアグラム言語、ファンクション・ブロック・ダイアグラム言語、ストラクチャード・テキスト言語、インストラクション・リスト言語、及びシーケンシャル・ファンクション・チャート言語およびC言語の少なくともいずれかを利用して記述される。なお、実施形態では、製造ライン3の動作は、PLC(programmable logic controller)2によって制御される。解析装置1は、複数件の状態データ223及び制御プログラム222をPLC2から取得する。
【0019】
解析装置1は、PLC2から取得したデータに基づいて因果モデルを生成する。
【0020】
また、本例においては、後述するが解析装置1は、製造ライン3で実施される工程における音声または画像データも用いて因果モデルを生成する。
【0021】
<2.解析装置のハードウェア構成>
図2は、実施形態に従う解析装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。図2に示されるとおり、実施形態に従う解析装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図2では、通信インタフェースを「通信I/F」と記載している。
【0022】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブ等の少なくともいずれかの補助記憶装置であり、制御部11で実行されるOS112、PLCインタフェースプログラム114、GUIプログラム116および解析プログラム118等を記憶する。
【0023】
解析プログラム118は、製造ライン3で実行される工程に関する情報、状態データ223、及び制御プログラム222等を利用して、製造ライン3のある現象を特定するための製造ライン3の実施する製造工程における複数の機構31間の物理的な機構関係および当該機構31で生じた現象間に関する因果関係を解析する処理を解析装置1に実行させるためのプログラムである。
【0024】
GUIプログラム116は、GUIに係る処理を実行するためのプログラムである。
【0025】
PLCインタフェースプログラム114は、PLC2との間で必要なデータをやり取りするためのプログラムである。
【0026】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュールおよび無線LANモジュール等の少なくともいずれか1つであり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。解析装置1は、この通信インタフェース13により、PLC2との間でネットワークを介したデータ通信を行うことができる。なお、ネットワークの種類は、例えば、インターネット、無線通信網、移動通信網、電話網および専用網等から適宜選択されてよい。
【0027】
入力装置14は、例えば、マウスおよびキーボード等の少なくともいずれか1つの入力を行うための装置である。また、出力装置15は、例えば、ディスプレイおよびスピーカ等の少なくともいずれか1つの出力を行うための装置である。オペレータは、入力装置14及び出力装置15を介して、解析装置1を操作することができる。
【0028】
ドライブ16は、例えば、CDドライブおよびDVDドライブ等の少なくともいずれか1つであり、記憶媒体91に記憶されたプログラムを読み込むためのドライブ装置である。ドライブ16の種類は、記憶媒体91の種類に応じて適宜選択されてよい。上記解析プログラム118は、この記憶媒体91に記憶される。
【0029】
記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的および化学的作用の少なくともいずれか1つによって蓄積する媒体である。解析装置1は、この記憶媒体91から、上記解析プログラム118を取得してもよい。
【0030】
ここで、図2では、記憶媒体91の一例として、CDおよびDVD等の少なくともいずれか1つのディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
【0031】
なお、解析装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のプロセッサを含んでもよい。解析装置1は、複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また、解析装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、PC(Personal Computer)等であってもよい。
【0032】
<3.PLC>
図3は、実施形態に従うPLC2のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。図3に示されるとおり、PLC2は、制御部21、記憶部22、入出力インタフェース23、及び通信インタフェース24が電気的に接続されたコンピュータである。これにより、PLC2は、製造ライン3の各機構31の動作を制御するように構成される。なお、図3では、入出力インタフェース及び通信インタフェースをそれぞれ「入出力I/F」及び「通信I/F」と記載している。
【0033】
制御部21は、CPU、RAMおよびROM等を含み、プログラム及びデータに基づいて各種情報処理を実行するように構成される。記憶部22は、例えば、RAMおよびROM等の少なくともいずれか1つで構成され、制御プログラム222、状態データ223等を記憶する。制御プログラム222は、製造ライン3の動作を制御するためのプログラムである。状態データ223は、各機構31の状態に関するデータである。入出力インタフェース23は、外部装置と接続するためのインタフェースであり、接続する外部装置に応じて適宜構成される。実施形態では、PLC2は、入出力インタフェース23を介して、製造ライン3に接続される。なお、単一の装置について異なる状態データを取得可能な場合、当該対象の単一の装置は、複数の機構31とみなされてもよいし、単一の機構31とみなされてもよい。そのため、入出力インタフェース23の数は、製造ライン3を構成する機構31の数と同じであってもよいし、製造ライン3を構成する機構31の数と相違してもよい。
【0034】
通信インタフェース24は、例えば、有線LANモジュールおよび無線LANモジュール等の少なくともいずれか1つであり、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。PLC2は、通信インタフェース24により、解析装置1との間でデータ通信を行うことができる。
【0035】
なお、PLC2の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が可能である。例えば、制御部21は、複数のプロセッサを含んでもよい。記憶部22は、制御部21に含まれるRAM及びROMにより構成されてもよい。記憶部22は、ハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブ等の少なくともいずれか1つの補助記憶装置で構成されてもよい。また、PLC2は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、制御する対象に応じて、汎用のデスクトップPCおよびタブレットPC等の少なくともいずれか1つに置き換えられてもよい。
【0036】
<4.製造ライン3の具体例>
図4は、実施形態に従う製造ライン3の具体例について説明する図である。
【0037】
図4を参照して、実施形態に従う製造ライン3の各機構が示されている。具体的には、製造ラインは、ワーク位置ズレ300を検出するセンサ、フィルムメイン軸トルク302を検知するセンサ、ワーク乗り上げ303を検出するセンサ、ワークを検知するセンサ、ワーク搬送軸トルク306、フィルムサブ軸トルク307およびトップシール軸トルク310等の機構を含む。当該機構には、それぞれ変数が割り当てられている。
【0038】
また、機構に関連するデータについて変数が割り当てられている。例えば、フィルム残量301(「RoomHumidity」)、駆動時間305(「Chapter」)、センターシール温度308(「CurrentTemperatureCenterSeal」)、センターシールヒータ309(「CenterHeaterDPC_MV」)、トップシール温度(「CurrentTemperatureSeal」)、トップシールヒータ(「TopSealHeaterDPC_MC」)、トップシール温度314(「CurrentTemperatureTopSeal」)、トップシール軸トルク310(「TopSeal」)、フィルムサブ軸トルク307(「FilmFeedSub」)、ワーク搬送軸トルク306(「ProductFeed」)およびフィルムメイン軸トルク302(「FilmFeedMain」)等が割り当てられている。
【0039】
製造ライン3の機構に関連してカメラ320,330,340が設けられている。また、製造ライン3の機構に関連してマイク350,360が設けられている。
【0040】
カメラ320~340は、ワーク等を撮像した画像データを解析装置1に出力する。マイク350,360は、ワークおよび製造ライン3の各機構の音を集音し、音声データを解析装置1に出力する。
【0041】
<5.解析装置のソフトウェア構成>
図5は、実施形態に従う解析装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する図である。図5に示されるように、解析装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された解析プログラム118をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された解析プログラム118をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これによって、図5に示されるとおり、実施形態に従う解析装置1は、ソフトウェアモジュールとして、取得部1252と、第1演算部1254と、第2演算部1255と、ノード生成部1256と、因果モデル生成部1258と、GUI部1260と、異常検知部1262と、イベント関係推定部1264と、イベント関係登録部1266と、寄与率算出部1268とを含む。
【0042】
取得部1252は、製造ライン3で実行される工程に関する情報として状態データ223を取得する。また、取得部1252は、カメラ320~340からの画像データおよびマイク350,360からの音声データを取得する。
【0043】
第1演算部1254は、取得部1252で取得した状態データに基づいて第1特徴量を算出する。
【0044】
第2演算部1255は、取得部1252で取得した音声データまたは画像データに基づいて第2特徴量を算出する。
【0045】
ノード生成部1256は、第1演算部1254および第2演算部1255で算出した第1および第2特徴量に基づいてノードを生成する。
【0046】
因果モデル生成部1258は、ノード生成部1256で生成したノードに基づいて製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成する。
【0047】
GUI部1260は、因果モデル生成部1258で生成した因果モデルを表示するとともに、ユーザ操作を受け付ける。
【0048】
異常検知部1262は、状態データに基づいて通常状態と異なる異常状態を検知する。具体的には、異常スコアを算出し、異常スコアが所定の閾値を超えたか否かを判断する。異常検知部1262は、異常スコアが所定の閾値を超えた場合に異常と判断する。本例において、異常スコアとは正常範囲からの逸脱度を示す。
【0049】
寄与率算出部1268は、異常スコアに基づいて当該異常スコアに寄与した変数の寄与率を算出する。
【0050】
イベント関係登録部1266は、イベントに対応するイベントリストを登録する。イベントリストは、イベント概要と、イベントが生じた際のイベントデータと、因果モデルと、確認された複数の機構に関連する事象(実際の物理現象)と、復旧作業内容と、異常に寄与した変数の寄与率の情報とを含む。
【0051】
イベント関係推定部1264は、イベント関係登録部1266で登録されたイベントリストを取得する。イベント関係推定部1264は、寄与率算出部1268から算出された異常スコアに寄与した変数の寄与率を取得して、寄与率の類似の高いイベントリストを抽出して出力する。ユーザは、異常が検知された場合に、イベントリスト候補を容易に特定して、復旧作業を早期に実行することが可能である。
【0052】
本開示において、因果モデルを出力することは(1)解析装置1に含まれる出力装置の一種であるディスプレイ上で、または解析装置1とは別のディスプレイ上で、因果モデルを表現する画像または映像を表示すること、(2)解析装置1に含まれるディスプレイ等のデバイス、または解析装置1とは別の装置に因果モデルを表現するためのデータまたは信号を送出すること、(3)解析装置1に含まれるディスプレイ等のデバイスまたは、解析装置1とは別の装置に、因果モデルを表現するための命令を送出することを少なくとも含む。そのため、(1)の意味において、因果関係グラフを出力する出力装置は、因果モデルを再現した画像または映像を視覚化する表示デバイスを含む。(2)の意味において、因果モデルを出力する出力装置は、因果モデルを表現するためのデータまたは信号を生成および送出するためのソフトウェアまたはハードウェアを含む。(3)の意味において、因果モデルを出力する出力装置は、因果関係グラフを表現するための命令を生成および送出するためのソフトウェアまたはハードウェアを含む。
【0053】
解析装置1の各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、実施形態では、解析装置1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUにより実現される例について説明している。しかしながら、以上のソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のハードウェアプロセッサにより実現されてもよい。また、解析装置1のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0054】
上記の構成は、情報処理プログラム(解析プログラム)を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて実現可能である。
【0055】
<5.1 因果関係>
まず、説明を簡易にするために、以下に因果モデルの生成について説明する。
【0056】
因果モデルは、あるイベント(結果の現象)に対して、要因となる現象を特定するための因果関係をモデル化したものである。
【0057】
図6は、実施形態に従うノード生成部1256および因果モデル生成部1258における処理について説明するフロー図である。
【0058】
以下の説明では、説明の便宜のため、製造ライン3は、複数の機構31として、4つの機構F1~F4を備えているものとする。
【0059】
図6(A)を参照して、ノード生成部1256は、各機構F1~F4の状態データ223および音声および画像データを取得する(ステップS101)。
【0060】
図7は、実施形態に従う取得部1252で取得された状態データと、音声および画像データとについて説明する図である。
【0061】
図7を参照して、状態データとともに音声および画像データが時刻に関連付けられて取得される。各時刻毎に複数の状態データおよび音声および画像データが取得される。
【0062】
再び図6(A)を参照して、次に、ノード生成部1256は、状態データを解析する(ステップS103)。
【0063】
図6(B)は、状態データの解析処理について説明するサブルーチンフロー図である。
【0064】
図6(B)を参照して、ノード生成部1256は、ステップS101で取得した各件の状態データ223から特徴量2221を算出する(ステップS1301)。特徴量2221の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてもよい。また、特徴量2221を算出する方法は、実施の形態に応じて適宜決定可能である。具体例として、本実施形態では、ノード生成部1256は、次のような方法で、状態データ223から特徴量2221を算出する。まず、ノード生成部1256は、特徴量2221を算出する処理範囲を規定するため、取得した各件の状態データ223をフレーム毎に分割する。各フレームの長さは、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。
【0065】
ノード生成部1256は、例えば、各件の状態データ223を一定時間長のフレーム毎に分割してもよい。ただし、製造ライン3は必ずしも一定時間間隔で動作しているとは限らない。そのため、各件の状態データ223を一定時間長のフレーム毎に分割すると、各フレームに反映される各機構31の動作がずれてしまう可能性がある。
【0066】
そこで、ノード生成部1256は、状態データ223をタクト時間毎にフレーム分割してもよい。タクト時間は、製造ライン3が製品を所定個数分生産するのにかかる時間である。このタクト時間は、製造ライン3を制御する信号、例えば、PLC2が製造ライン3の各機構31の動作を制御する制御信号に基づいて特定することができる。
【0067】
次に、ノード生成部1256は、状態データ223の各フレームから特徴量2221の値を算出する。状態データ223が計測データ等のような連続値データである場合には、ノード生成部1256は、例えば、フレーム内の振幅、最大値、最小値、平均値、分散値、標準偏差および瞬時値(1点サンプル)等の少なくともいずれか1つを特徴量2221として算出してもよい。また、状態データ223が検出データ等のような離散値データである場合には、制御部11は、例えば、各フレーム内の「on」時間、「off」時間、Duty比、「on」回数および「off」回数等の少なくともいずれか1つを特徴量2221として算出してもよい。これにより、各特徴量2221の算出が完了すると、ノード生成部1256は、次のステップS1302に処理を進める。各特徴量は因果モデルを構成するノードになる。
【0068】
次に、因果モデル生成部1258は、各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数を算出する(ステップS1302)。相関係数は、以下の数1の計算式により算出することができる。また、偏相関係数は、以下の数2の計算式により算出することができる。
【0069】
【数1】
【0070】
なお、rijは、行列2222のi行目j列目の要素を示す。xi及びxjは、各件の状態データ223から算出された特徴量2221を示すデータに対応する。Xi及びXjはそれぞれ、xi及びxjの標本平均を示す。nは、相関の計算に利用する各特徴量2221の数を示す。
【0071】
【数2】
【0072】
なお、行列R(rij)の逆行列をR-1(rij)と表現し、rijは行列2222の逆行列のi行目j列目の要素を示す。
【0073】
これにより、因果モデル生成部1258は、相関係数又は偏相関係数を各要素とする行列2222を得ることができる。各特徴量2221間の相関係数及び偏相関係数は、対応する機構31のそれぞれで生じるイベント(現象)間の関係の強さを示す。すなわち、行列2222の各要素により、対応する機構31のそれぞれで生じるイベント(現象)間の関係の強さが特定される。各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数の算出が完了すると、因果モデル生成部1258は、次のステップS1303に処理を進める。
【0074】
次に、因果モデル生成部1258は、各特徴量2221間の相関係数又は偏相関係数に基づいて、対応する機構31のそれぞれで生じるイベント(現象)間の関係の強さを示す無向グラフ情報2223を構築する(ステップS1303)。
【0075】
例えば、因果モデル生成部1258は、各機構31に対応するノードを作成する。そして、2つの機構31間に対して算出した相関係数又は偏相関係数の値が閾値以上である場合に、制御部11は、対応する両ノード間をエッジで連結する。一方、2つの機構31間に対して算出した相関係数又は偏相関係数の値が閾値未満である場合には、制御部11は、対応する両ノード間をエッジで連結しない。なお、閾値は、解析プログラム121内で規定された固定値であってもよいし、オペレータ等により変更可能な設定値であってもよい。また、エッジの太さは、対応する相関係数又は偏相関係数の値の大きさに対応して決定されてもよい。
【0076】
図8は、実施形態に従う状態データに基づく無向グラフ情報の作成について説明する図である。図8に示されるように、無向グラフ情報2223を作成することができる。一例として、4つの機構F1~F4に対応する4つのノードが作成されている。そして、機構F1及びF2のノード間、機構F1及びF3のノード間、機構F2及びF3のノード間、並びに機構F3及びF4のノード間にそれぞれエッジが形成されている。また、機構F1及びF3の間並びに機構F3及びF4の間の相関が他の機構間の相関よりも大きいことに対応して、機構F1及びF3のノード間並びに機構F3及びF4のノード間のエッジが他のエッジに比べて太く形成されている。以上により、複数の機構31間の関係の強さを示す無向グラフ情報2223の構築が完了すると、本実施形態に係る状態データ223の解析処理は完了する。
【0077】
なお、図8の例では、無向グラフ情報2223は、形成された無向グラフを画像により表現している。しかしながら、無向グラフ情報2223の出力形式は、画像に限定されなくてもよく、テキスト等により表現されてもよい。また、上記の例では、相関係数又は偏相関係数と閾値との比較により、関係の弱いノード(機構31)間にエッジを形成しないようにしている。しかしながら、関係の弱いノード間のエッジを除去する方法は、このような例に限られなくてもよい。例えば、全てのノードをエッジで連結したグラフを形成した後、因果モデル生成部1258は、逸脱度を表わす適合度指標(GFI、SRMR等)が閾値を超えないように、相関係数又は偏相関係数の小さいエッジから順に、形成したグラフのエッジを削除してもよい。
【0078】
図9は、実施形態に従う製造ライン3の実施する製造工程における因果モデル生成部1258による状態データ223に基づく因果モデルを説明する図である。
【0079】
図9を参照して、本例においては、生成された因果モデルの一例が示されている。相関係数又は偏相関係数の値の大きさに対応してフィルムメイン軸トルクとフィルムサブ軸トルクとの間にエッジが形成される。同様にして、コンベア軸トルクとフィルムサブ軸トルクとの間にエッジが形成される。センターシールヒータとセンターシール温度との間にエッジが形成される。センターシール温度とフィルムサブ軸トルクとの間にエッジが形成される。フィルムサブ軸トルクとトップシール軸トルクとの間にエッジが形成される。トップシールヒータとトップシール温度との間にエッジが形成される。トップシール温度とトップシール軸トルクとの間にエッジが形成される。
【0080】
再び図6(A)を参照して、ノード生成部1256は、音声および画像データを解析する(ステップS104)。
【0081】
図6(C)は、音声および画像データの解析処理について説明するサブルーチンフロー図である。
【0082】
図6(C)を参照して、ノード生成部1256は、ステップS101で取得した各件の音声および画像データ223から特徴量を算出する(ステップS1311)。特徴量については後述する。また、特徴量を算出する方法は、実施の形態に応じて適宜決定可能である。
【0083】
図10は、実施形態に従う包装機の画像特徴量について説明する図である。
【0084】
図10(A)を参照して、ここでは、包装機が示されている。
【0085】
本例においては、包装機を撮像した画像データの画像特徴量を算出する場合について説明する。具体的には、一例として画像データに基づいてフィルム位置、ワークサイズ、ワーク噛み込み量、シール面積を画像特徴量として算出する場合について説明する。
【0086】
図10(B)を参照して、フィルム位置の画像特徴量としてフィルムずれ量を抽出する場合が示されている。
【0087】
図10(C)を参照して、ワークサイズの画像特徴量としてワークの傾きを抽出する場合が示されている。
【0088】
図10(D)を参照して、ワーク噛み込み量の画像特徴量としてトップシール面積を抽出する場合が示されている。
【0089】
図10(D)を参照して、シール面積の画像特徴量として包装長を抽出する場合が示されている。
【0090】
図11は、実施形態に従う画像データの特徴量の算出について説明する図である。
【0091】
図11を参照して、ノード生成部1256は、取得した画像データについてフレーム単位で画像特徴量を算出する。例えば、フィルム位置についてフィルムずれ量の画像特徴量を算出する。ワークサイズについてワークの傾きの画像特徴量を算出する。ワーク噛み込みについてトップシール面積の画像特徴量を算出する。シール面積について包装長の画像特徴量を算出する。なお、フィルム位置に限られず、フィルムの向きまたはフィルムの姿勢の少なくともいずれか1つを画像特徴量としてもよい。また、フィルムに限られずワークについても同様である。ワークの位置、向きおよび姿勢の少なくともいずれか1つの画像特徴量を算出してもよい。
【0092】
次に、それぞれ算出した画像特徴量をタクト時間単位で分割する。
【0093】
そして、タクト時間単位で得られた画像特徴量の統計量を特徴量として算出する。例えば、統計量としてタクト時間単位で得られた画像特徴量の平均、標準偏差、最大および最小等の少なくとも1つを演算して特徴量を算出する。
【0094】
ノード生成部1256は、当該算出された特徴量について因果モデルを構成するノードとして生成する。
【0095】
図12は、実施形態に従う音声データの特徴量の算出について説明する図である。
【0096】
図12を参照して、取得した音声データについてタクト時間単位で分割する。そして、タクトタイム毎の音声データに対してフーリエ変換処理(FFT)を実行する。
【0097】
所定周波数帯の中からピーク値の音量を特徴量として算出する。
【0098】
一例として15000Hzと20000Hzとの間の周波数帯の中からピーク値を特徴量として算出する場合が示されている。
【0099】
例えば、本例においては、マイク350で集音された音声データに基づいて搬送軸振動を特徴量として算出する。マイク360で集音された音声データに基づいてカット時インパクト音を特徴量として算出する。
【0100】
ノード生成部1256は、当該算出された特徴量について因果モデルを構成するノードとして生成する。
【0101】
図13は、実施形態に従う画像データおよび音声データの特徴量を追加した因果モデルの生成について説明する図である。
【0102】
図13を参照して、図9で説明した状態データに基づく因果モデルに対して、画像データおよび音声データに基づく因果モデルを合成した場合が示されている。
【0103】
具体的には、ノード生成部1256は、第2演算部1255で演算した画像データの特徴量としてワークサイズ、フィルムずれ量、ワーク噛み込みおよびシール面積のノードを生成する。
【0104】
また、ノード生成部1256は、第2演算部1255で演算した音声データの特徴量として搬送軸振動、カット時インパクト音のノードを生成する。
【0105】
当該ノードは一例であり、他のノードを設けることも当然に可能である。
【0106】
因果モデル生成部1258は、ノード生成部1256で生成したノードに基づいて因果モデルを生成する。具体的には、因果モデル生成部1258は、上記したように各特徴量間の相関係数又は偏相関係数に基づいて、両ノード間をエッジで連結する。
【0107】
再び図6(A)を参照して、次のステップS105では、因果モデル生成部1258は、複数の機構間の因果関係を示す有効グラフを構築する。具体的には、因果モデル生成部1258は、作成した無向グラフ情報に対して、製造ライン3の情報を活用し向きを付加し、製造ライン3内における複数の機構31の順序関係を特定する。
【0108】
次のステップS106では、GUI部1260は、因果モデル生成部1258で生成した因果モデルを出力する。例えば、GUI部1260は、ディスプレイ等の出力装置15に作成した因果モデルを画像形式で出力する。以上により、データ因果モデルの生成処理を終了する。
【0109】
図14は、実施形態に従う状態データ、画像データおよび音声データの特徴量に基づく因果モデルについて説明する図である。
【0110】
図14を参照して、製造ライン3で実行される工程に関する情報として各種センサ等からの状態データ(センサデータ)223、マイク350,360からの音声データおよびカメラ320,330,340からの画像データに基づいて因果モデルを生成する。
【0111】
因果モデル生成部1258は、ノード生成部1256で生成したノードに基づいて因果モデルを生成する。具体的には、因果モデル生成部1258は、上記したように各特徴量間の相関係数又は偏相関係数に基づいて、両ノード間をエッジで連結する。
【0112】
因果モデル生成部1258は、製造ライン3の情報を活用し向きを付加し、製造ライン3内における複数の機構31の順序関係を特定する。
【0113】
本例においては、フィルム位置からフィルムメイン軸トルクに進むベクトルが設定される。また、搬送軸振動からフィルムメイン軸トルクに進むベクトルが設定される。
【0114】
また、ワークサイズからコンベア軸トルクに進むベクトルが設定される。また、トップシール軸トルクからシール面積に進むベクトルが設定される。トップシール温度からシール面積に進むベクトルが設定される。
【0115】
トップシール軸トルクからカット時インパクト音に進むベクトルが設定される。
【0116】
トップシール軸トルクからワーク噛み込みに進むベクトルが設定される。
【0117】
フィルムメイン軸トルクからフィルムサブ軸トルクに進むベクトルが設定される。コンベア軸トルクからフィルムサブ軸トルクに進むベクトルが設定される。センターシールヒータからセンターシール温度に進むベクトルが設定される。センターシール温度からフィルムサブ軸トルクに進むベクトルが設定される。
【0118】
フィルムサブ軸トルクからトップシール軸トルクに進むベクトルが設定される。トップシールヒータからトップシール温度に進むベクトルが設定される。トップシール温度からトップシール軸トルクに進むベクトルが設定される。
【0119】
他の場合についても同様である。
【0120】
また、本例においては、因果モデル生成部1258は、製造ライン3の情報をさらに活用して、品質検査結果として得られるシール強度の状態データを取得してノードを生成し、当該ノードと他のノードとを組み合わせた因果モデルを生成するとともに、当該因果モデルの入力側および出力側との因果関係も示している。具体的には、先の入力側の前工程1および前工程2との相関関係が示されており、前工程1および前工程2はそれぞれ当該工程における因果モデルを表している。また、後工程は後工程における因果モデルを表している。当該構成により因果モデルの関係性を容易に理解できるようにしている。
【0121】
なお、これ以外にもさらに関係性を理解するためのノードを生成して因果モデルを生成するようにしてもよい。
【0122】
当該因果モデルに基づいてノードの関係性を容易に確認することが可能となり、簡易な方式で異常の原因の推定が容易となる。
【0123】
なお、本例においては、画像データおよび音声データの特徴量に基づく因果モデルの生成について説明したが、いずれか一方のみの特徴量に基づく因果モデルの生成としてもよい。
【0124】
<6.異常の検知>
図15は、実施形態に従う異常検知部1262における異常の検知について説明する図である。
【0125】
図15を参照して、異常検知部1262は、状態データ223に基づいて異常を検知する。
【0126】
本例においては、一例として3つの変数P1~P3のデータについて説明する。
【0127】
変数P1~P3に関して、3軸の3次元空間が設定され、学習したモデルとして正常の範囲を示すデータ群と、異常の状態を示すデータとが示されている。黒色の点群データは、正常の範囲を示すデータ群を示す。一方、ハッチングされたデータは、正常の範囲から離れたデータを指し示す。正常の範囲を示すデータ群の中心点からの距離が異常スコアとなる。すなわち、距離が大きくなればなるほど、異常スコアの値が高くなる。
【0128】
本例においては、3つの変数P1~P3の3次元空間について説明しているが、変数の個数に応じた多次元空間に拡張することも当然に可能である。
【0129】
図16は、実施形態に従う異常検知部1262における異常の検知について説明する別の図である。
【0130】
図16(A)を参照して、点から点へのデータ変化が示されている。本例においては、2次元の場合が示されており、x軸に対してΔx、y軸に対してΔy変化した場合が示されている。2次元の場合には、Δx、Δyの距離の変化が異常スコアとして算出される。
【0131】
図16(B)を参照して、分布から点のデータ変化が示されている。3次元の場合には、分布の中心から点への距離の変化が異常スコアとして算出される。
【0132】
異常スコアの算出のアルゴリズムの一例として、マハラノビス距離に基づく異常検知、LOF(Local Outlier Factor)またはIsolationForest等の異常検知アルゴリズムを用いるようにしても良い。
【0133】
図17は、実施形態に従うGUI部1260による推定結果確認画面について説明する図である。
【0134】
図17を参照して、推定結果確認画面には、装置の異常を監視するスコア時系列グラフが示されている。また、装置の因果関係について因果モデルを表示する表示部が設けられている。さらに、変数の寄与率を表示する表示部が設けられている。また、分析対象範囲の設定部が設けられており、当該範囲を変更することにより任意の期間における分析が可能である。
【0135】
異常スコアは、時間軸に従って変化するスコア値を示す。本例においては、時刻T1において、スコア値が閾値TH1を越えた場合が示されている。
【0136】
異常検知部1262は、時刻T1においてスコア値が閾値TH1を越えたことに基づいて異常を検知する。寄与率算出部1268は、時刻T1におけるスコア値に基づいて、変数の寄与率を算出する。
【0137】
一例として、寄与率算出部1268は、寄与率データを出力する。本例においては、寄与率データは、フィルム位置が寄与率45%、ワーク噛み込み量が寄与率23%、トップシール軸トルクが寄与率14%、フィルムメイン軸トルクが寄与率4%およびシール強度が寄与率2%である場合が示されている。
【0138】
因果モデルと算出された変数の寄与率とに基づいて異常となる因果を推定するようにしてもよい。
【0139】
例えば、1,2番目の寄与率の高い変数を抽出する。本例においては、フィルム位置とワーク噛み込み量とを抽出して、それと関連するノードを強調してもよい。当該表示により、因果モデルにおけるノードの関係性を容易に確認することが可能となり、異常の原因の推定が容易となる。
【0140】
上記においては、スコアデータの時刻T1においてスコア値が閾値TH1を越えたことに基づいて異常を検知する場合について説明した。そして、当該時刻T1における変数の寄与率の算出について説明した。
【0141】
なお、当該時刻T1に関して、ユーザの任意の時刻を指定可能にするようにしてもよい。例えば、ポインティングデバイスを用いて、任意の時刻を指定し、当該指定した時刻におけるスコア値を取得する。取得したスコア値に基づいて、上記で説明したように寄与率データを出力し、変数の寄与率を表示するようにしてもよい。そして、寄与率データの1,2番目の寄与率の高い変数を抽出して、上記で説明したのと同様に選択した因果モデルの推定を表示するようにしてもよい。
<7.イベントリスト>
図18は、実施形態に従うイベント関係登録部1266のイベントリストについて説明する図である。図18を参照して、ユーザにより複数のイベントが登録されたイベントリストが示されている。
【0142】
具体的には、イベント関係登録部1266は、イベントリストとして、イベント概要、イベントデータ、因果モデル、実際の物理現象および復旧作業内容の情報を含む。また、イベントリストは、寄与率算出部1268で算出した変数および寄与率のデータをさらに含む。
【0143】
イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「プレスローラ摩耗」と、復旧作業内容として「プレスローラの交換」が登録されている場合が示されている。また、変数PA~PDの寄与率として「39.1」、「1.8」、「9.3」および「12.3」がそれぞれ登録されている場合が示されている。
【0144】
また、イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「革ベルト摩耗」と、復旧作業内容として「革ベルト交換」が登録されている場合が示されている。また、変数PA~PDの寄与率として「39.1」、「1.8」、「9.3」および「12.3」がそれぞれ登録されている場合が示されている。また、変数PA~PDの寄与率として「19.1」、「21.8」、「39.3」および「12.3」がそれぞれ登録されている場合が示されている。
【0145】
イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「集電リング接触不良」と、復旧作業内容として「集電リング交換」が登録されている場合が示されている。また、変数PA~PDの寄与率として「29.1」、「31.8」、「29.3」および「2.3」がそれぞれ登録されている場合が示されている。
【0146】
また、イベント概要として、「シール接着強度不良」に対応して、イベントデータと、因果モデルが登録されるとともに、実際の物理現象として「フィルム蛇行」と、復旧作業内容として「フィルム搬送軸の歪み補正」が登録されている場合が示されている。また、変数PA~PDの寄与率として「9.1」、「11.8」、「19.3」および「12.3」がそれぞれ登録されている場合が示されている。
【0147】
図19は、実施形態に従うイベント関係推定部1264のイベントリストを用いたイベント推定処理について説明する図である。図19を参照して、イベント関係推定部1264は、イベント関係登録部1266で登録したイベントリストを用いてイベント推定を行う。
【0148】
具体的には、イベント関係推定部1264は、イベントデータを取得して、寄与率の類似度を算出する。
【0149】
一例として、次式のコサイン類似度Sijを用いることも可能である。
【0150】
【数3】
【0151】
xi:イベントデータリストの各変数の寄与率、xj:寄与率算出部1268で算出した各変数の寄与率
本例においては、イベント関係推定部1264は、寄与率の類似度の高いイベントリストを抽出する。一例として、類似度の高い最上段のイベントリストを抽出した場合が示されている。
【0152】
具体的には、イベント概要が「シール接着強度不良」、因果モデル、実際の物理現象「プレスローラ摩耗」、復旧作業内容「プレスローラの交換」が登録されているイベントリストである。
【0153】
したがって、当該内容に基づいて、ユーザに異常の推定箇所として「プレスローラ摩耗」を提示するとともに、その復旧作業内容であるプレスローラの交換を提示することにより、早期にイベントに対する復旧作業を実行することが可能である。
【0154】
なお、イベント関係推定部1264は、イベントデータは、(類似度)が所定値以上の場合にそれらをすべてユーザに提示するようにしてもよい。
【0155】
図20は、実施形態に従うイベント関係推定部1264のイベントリストを用いたイベント推定処理のフロー図である。図20を参照して、イベント関係推定部1264は、イベントリストを取得する(ステップS201)。具体的には、図18で説明したイベント関係登録部1266で登録されたイベントリストを取得する。
【0156】
次に、イベント関係推定部1264は、取得したイベントリストに含まれる変数の寄与率と、寄与率算出部1268で算出した変数の寄与率との類似度を算出する(ステップS202)。具体的には、イベント関係推定部1264は、取得したイベントリストに含まれる変数の寄与率と、寄与率算出部1268で算出した変数の寄与率とのコサイン類似度Sijを算出する。
【0157】
次に、イベント関係推定部1264は、算出した類似度に基づいて候補となるイベントリストを抽出する(ステップS203)。
【0158】
そして、イベント関係推定部1264は、処理を終了する(エンド)。当該処理により、イベントリストを抽出して、早期にイベントに対する復旧作業を実行することが可能である。
【0159】
<付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
【0160】
[構成1]
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出する第1演算部(1254)と、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出する第2演算部(1255)と、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成する因果モデル生成部(1258)とを備える、解析装置。
【0161】
[構成2]
前記第1演算部(1254)は、前記画像データに基づいて前記製造ラインのワークの位置、向き、および姿勢の少なくともいずれか1つを前記第1特徴量とする、構成1に記載の解析装置。
【0162】
[構成3]
前記第1演算部(1254)は、
前記音声データまたは画像データをタクトタイム毎に分割し、
タクトタイム毎の前記音声データまたは画像データの前記第1特徴量を算出する、構成1または2に記載の解析装置。
【0163】
[構成4]
前記第1演算部(1254)は、
前記画像データのフレーム単位で画像特徴量を算出し、
前記タクトタイム毎の前記画像特徴量の統計量を前記第1特徴量として算出する、構成3に記載の解析装置。
【0164】
[構成5]
前記第1演算部(1254)は、前記音声データの所定の周波数の音量を前記第1特徴量として算出する、構成1~4のいずれか1つに記載の解析装置。
【0165】
[構成6]
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと(S1301)、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと(S1311)、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを備える(S105)、解析方法。
【0166】
[構成7]
コンピュータに、
製造ラインで実施される工程における音声データまたは画像データの第1特徴量を算出することと(S1301)、
前記製造ラインで実施される工程における複数の機構のそれぞれの状態データの第2特徴量を算出することと(S1311)、
前記第1特徴量および前記第2特徴量に基づいて前記製造ラインのある現象を特定するための因果関係をモデル化した因果モデルを生成することとを実行させる(S105)、情報処理プログラム。
【0167】
本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
1 解析装置、3 製造ライン、11,21 制御部、12,22 記憶部、13,24 通信インタフェース、14 入力装置、15 出力装置、16 ドライブ、23 入出力インタフェース、31 機構、91 記憶媒体、114 インタフェースプログラム、116 GUIプログラム、118 解析プログラム、222 制御プログラム、320,330,340 カメラ、350,360 マイク、1252 取得部、1254 演算部、1256 ノード生成部、1258 因果モデル生成部、1260 GUI部、1262 異常検知部、1264 イベント関係推定部、1266 イベント関係登録部、1268 寄与率算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20