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特開2024-130339ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130339
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/12 20160101AFI20240920BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240920BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20240920BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W20/12
B60K6/46 ZHV
B60W20/15
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L15/20 J
B60L50/61
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040004
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小石 瑛文
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB00
3D202BB08
3D202BB51
3D202CC35
3D202DD00
3D202DD16
3D202DD24
3D202DD50
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BD17
5H125CA01
5H125CA09
5H125CA18
5H125CC03
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE61
5H125EE66
(57)【要約】
【課題】エンジンの不必要な始動・停止の回数を減少させ、ハイブリッド車両の燃費性能及び音振性能の向上を図る。
【解決手段】EVモード又はHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御方法において、コントローラが、ハイブリッド車両の、走行ルートと、走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成し、走行ルート上に、必要駆動力が定常HEV閾値を超える高出力区間がある場合には、高出力区間をHEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、第1エネルギ効率又は第1CO負荷率の方が第2エネルギ効率又は第2CO負荷率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替えることを特徴とする、ハイブリッド車両制御方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力により作動する走行用モータと、
発電した電力を前記バッテリ又は前記走行用モータの少なくとも一方に供給する発電用モータと、
前記発電用モータの駆動源となる内燃機関と、を備え、
前記内燃機関を停止させた状態で走行するEVモード、又は、前記内燃機関を作動させた状態で走行するHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御方法において、
コントローラが、
前記ハイブリッド車両の、走行ルートと、前記走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成し、
前記走行ルート上に、前記必要駆動力が、加減速度が無視し得る程度に小さい走行状態である定常状態における前記EVモードから前記HEVモードへの切り替え用判定値である定常HEV閾値を超える高出力区間がある場合には、
前記高出力区間を前記HEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、前記EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、
前記第1エネルギ効率又は前記第1CO負荷率の方が前記第2エネルギ効率又は前記第2CO負荷率より高いときだけ、前記高出力区間で前記HEVモードに切り替えることを特徴とする、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記走行計画を、少なくとも道路情報及び前記ハイブリッド車両の周辺情報に基づいて作成する、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記ハイブリッド車両の車両特性及び前記ハイブリッド車両のユーザーの志向を前記走行計画に反映させる、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、先行車両がある場合には、前記先行車両をセンシングしたセンシングデータ及び前記先行車両との通信で得られた情報の少なくとも一方に基づいて前記先行車両の現時点以降の挙動を推定し、推定結果を前記走行計画に反映させる、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記第1エネルギ効率及び前記第2エネルギ効率を推定する前に、
前記高出力区間において前記EVモードで前記必要駆動力を発生できるか否かを判定し、
発生できないと判定した場合は前記HEVモードへの切り替えを行い、
発生できると判定した場合は前記第1エネルギ効率及び前記第2エネルギ効率を推定し、前記第1エネルギ効率の方が前記第2エネルギ効率より高いときだけ、前記高出力区間で前記HEVモードに切り替える、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記第1エネルギ効率及び前記第2エネルギ効率を推定する前に、
前記高出力区間において前記EVモードで前記必要駆動力を発生できるか否かを判定し、
発生できないと判定した場合は、前記走行計画の前記必要駆動力を前記EVモードで発生できる大きさに変更し、変更後の前記必要駆動力に基づいて前記第1エネルギ効率及び前記第2エネルギ効率を推定し、前記第1エネルギ効率の方が前記第2エネルギ効率より高いときだけ、前記高出力区間で前記HEVモードに切り替える、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項7】
バッテリの電力により作動する走行用モータと、
発電した電力を前記バッテリ又は前記走行用モータの少なくとも一方に供給する発電用モータと、
前記発電用モータの駆動源となる内燃機関と、を備え、
前記内燃機関を停止させた状態で走行するEVモード、又は、前記内燃機関を作動させた状態で走行するHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御装置において、
前記ハイブリッド車両の、走行ルートと、前記走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成し、
前記走行ルート上に、前記必要駆動力が、加減速度が無視し得る程度に小さい走行状態である定常状態における前記EVモードから前記HEVモードへの切り替え用判定値である定常HEV閾値を超える高出力区間がある場合には、
前記高出力区間を前記HEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、前記EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、
前記第1エネルギ効率又は前記第1CO負荷率の方が前記第2エネルギ効率又は前記第2CO負荷率より高いときだけ、前記高出力区間で前記HEVモードに切り替えるモード切替部を備えることを特徴とする、ハイブリッド車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンと走行用モータを備えるハイブリッド車両では、エンジンの始動と停止が短時間で繰り返されると燃費性能が悪化するという問題がある。また、エンジンと走行用モータによる走行モード(HEVモード)と走行用モータのみを駆動源とする走行モード(EVモード)とが頻繁に切り替わると、燃費性能の悪化だけでなく、切り替わり時に生じるトルク変動が頻繁に起こることとなり、いわゆる音振性能が悪化するという問題がある。例えば、自車両が加速の途中でEVモードからHEVモードへ切り替わった直後に、隣接する車線を走行する車両が自車両の前方に割り込んできた場合、自車両の運転者はアクセルペダルを開放する等の減速操作を行う。すると、走行モードはEVモードに再び切り替えられてエンジンが停止するので、短時間でトルク変動が発生する。
【0003】
特許文献1には、自車両前方への割込車を認識した際に、減速操作を行うと予測した場合にEVモードからHEVモードへの入り替えを中断させる制御が記載されている。これによれば、短時間でEVモードに再び切り替わることが予測される状況ではEVモードのまま走行することになるので、上記問題を解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-118690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自車両が減速する必要があるような割り込みをしてくる車両の走行リズムは安定していないことがある。例えば、減速しながら割り込んできて、その後すぐに加速に転じる場合がある。この場合、上記文献の制御では、割込車が割り込んでくる段階ではEVモードのまま走行しているが、割込車の加速に応じて自車両も加速した場合には、HEVモードへの切り替え、つまりエンジンの始動が許可されてしまう。そして、割込車が前方車両に追いついた等の理由で割込車の加速が長く続かなかった場合には、自車両も加速を緩めざるを得ないので、HEVモードへ切り替えたことで無駄なエネルギを使用したことになる。つまり、上記文献の制御には、燃費性能及び音振性能の観点から改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、エンジンの不必要な始動・停止の回数を減少させ、ハイブリッド車両の燃費性能及び音振性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、バッテリの電力により作動する走行用モータと、発電した電力をバッテリ又は走行用モータの少なくとも一方に供給する発電用モータと、発電用モータの駆動源となる内燃機関と、を備え、内燃機関を停止させた状態で走行するEVモード、又は、内燃機関を作動させた状態で走行するHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御方法が提供される。この制御方法において、コントローラが、ハイブリッド車両の、走行ルートと、走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成し、走行ルート上に、必要駆動力が、加減速度が無視し得る程度に小さい走行状態である定常状態におけるEVモードからHEVモードへの切り替え用判定値である定常HEV閾値を超える高出力区間がある場合には、高出力区間をHEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、第1エネルギ効率又は第1CO負荷率の方が第2エネルギ効率又は第2CO負荷率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替えることを特徴とする。
【0008】
本発明の別のある態様によれば、バッテリの電力により作動する走行用モータと、発電した電力を前記バッテリ又は走行用モータの少なくとも一方に供給する発電用モータと、発電用モータの駆動源となる内燃機関と、を備え、内燃機関を停止させた状態で走行するEVモード、又は、内燃機関を作動させた状態で走行するHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御装置が提供される。この制御装置において、ハイブリッド車両の、走行ルートと、走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成し、走行ルート上に、必要駆動力が、加減速度が無視し得る程度に小さい走行状態である定常状態におけるEVモードからHEVモードへの切り替え用判定値である定常HEV閾値を超える高出力区間がある場合には、高出力区間をHEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、第1エネルギ効率又は第1CO負荷率の方が第2エネルギ効率又は第2CO負荷率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替えるモード切替部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、エンジンの不必要な始動・停止の回数を減少させ、ハイブリッド車両の燃費性能及び音振性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、走行モードマップの一例を示す図である。
図3図3は、必要駆動力のプロファイルと走行モード切替パターンを示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る走行計画の作成のための制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、走行モード切替制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6図6は、走行計画による必要駆動力及び車速のプロファイルの一例を示す図である。
図7図7は、出力領域マップの一例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る走行計画の作成のための制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態の変形例に係る走行計画の作成のための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[システム構成]
図1は、本実施形態の制御を適用するハイブリッド車両100の概略構成図である。
【0013】
ハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう。)100は、バッテリ4の電力により作動する走行用モータ3と、発電した電力をバッテリ4又は走行用モータ3の少なくとも一方に供給する発電用モータ2と、発電用モータ2の駆動源となる内燃機関1と、を備える。
【0014】
内燃機関1は、図示しない減速機構を介して発電用モータ2に接続される。発電用モータ2は内燃機関1により駆動されて発電する。なお、発電用モータ2は、バッテリ4の電力により力行して内燃機関1を回転させる、いわゆるモータリングを行うこともできる。
【0015】
走行用モータ3は駆動輪5と接続されている。走行用モータ3は、車両100の駆動を行う一方、減速時には回生発電を行う。
【0016】
発電用モータ2及び走行用モータ3は三相交流モータであり、図示しないインバータを介してコントローラ10により制御される。
【0017】
バッテリ4は、発電用モータ2及び走行用モータ3の電力源を構成する。バッテリ4は発電用モータ2で発電された電力及び走行用モータ3で回生発電された電力により充電される。
【0018】
上記の通り、車両100のハイブリッドシステムは、内燃機関1が専ら発電用モータ2の駆動に用いられ、駆動輪5は専ら走行用モータ3により駆動される、シリーズ式である。ただし、本実施形態を適用可能なハイブリッドシステムはこれに限られるわけではなく、走行中に内燃機関1を始動・停止するものであれば同様に適用可能である。また、外部電力によりバッテリ4を充電可能な、いわゆるプラグイン・ハイブリッド車両(PHEV)であっても構わない。
【0019】
コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで、内燃機関1及び図示しないインバータ等を統合的に制御する。
【0020】
コントローラ10には、バッテリ4の充電率(SOC:State of Charge)を検出するためのSOCセンサ20、内燃機関1の冷却液の温度を検出する冷却液温センサ21、車外の温度を検出する外気温センサ22、アクセルペダル操作量を検出するためのアクセルペダル開度センサ23、車速を検出するための車速センサ24の他、様々なセンサ・スイッチ類からの信号が入力される。また、コントローラ10には、ナビゲーションシステム6、カメラ7、レーダ8、及び通信装置9等が接続されており、これらから種々の情報が入力される。上記の信号及び情報はコントローラ10による各種制御に用いられる。
【0021】
[走行計画の作成]
ここで、コントローラ10が行う制御の1つである、走行計画の作成について説明する。
【0022】
コントローラ10は、走行ルートと、走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成する。走行ルートは、目的地が設定されている場合は目的地に応じて設定され、目的地が設定されていない場合は、現在走行している車線を現在の進行方向に進むものとして設定される。
【0023】
走行計画は、少なくとも道路情報及び車両100の周辺情報に基づいて作成する。
【0024】
道路情報とは、例えば、制限速度や道路勾配に関する情報、渋滞情報、走行ルート周辺の天候に関する情報等である。制限速度や道路勾配に関する情報は、ナビゲーションシステム6の地図情報及び位置情報により取得可能である。渋滞情報は、例えばナビゲーションシステム6での取得や、通信装置9による車車間通信又は路車間通信での取得が可能である。天候に関する情報は、インターネットを介して取得してもよいし、車車間通信や路車間通信により取得してもよい。
【0025】
周辺情報は、例えば、先行車両の有無、先行車両の車速、先行車両との車間距離等である。先行車両に関する情報はカメラ7及びレーダ8により取得可能である。
【0026】
走行計画を作成するにあたり、コントローラ10は、先行車両がある場合には、上記の道路情報及び周辺情報に加え、さらに先行車両をセンシングしたセンシングデータ(上記の先行車両に関する情報)を用いて先行車両の現時点以降の挙動を推定し、推定結果を走行計画に反映させる。なお、車両100と先行車両との間で通信可能な場合には、通信により先行車両の車速や走行計画等を取得し、これを走行計画に反映させてもよい。
【0027】
また、走行計画に、車両100の車両特性及びユーザーの志向を反映させてもよい。車両特性とは、例えば、車両重量、走行用モータ3の出力、及び制動力等といった、加速性能や制動性能に関係する特性である。ユーザーの志向とは、例えば、加速の際のアクセルペダルの踏み込み方、制動の際のブレーキペダルの踏み込み方等といった、車速の変化のしかたに関係する特性である。なお、ユーザーの志向については、直接的にユーザーの志向を用いて走行計画を作成してもよいし、基準となる志向を予め設定しておき、当該基準となる志向に基づいて走行計画を作成し、これを今回のユーザーの志向と基準となる志向との違いに基づいて補正してもよい。
【0028】
コントローラ10は、上記の走行計画を所定の周期で繰り返し作成し、上書きする。
【0029】
[走行モード切替]
次に、コントローラ10が走行モード切替部として行う制御の1つである走行モード切替について説明する。
【0030】
車両100は、EVモードとハイブリッドモード(以下、HEVモードと称す)という2つの走行モードを有し、コントローラ10はこれらを選択的に切り替えて実行する。
【0031】
EVモードは、内燃機関1を停止し、バッテリ4から供給される電力によって走行用モータ3を駆動し、走行用モータ3のみの駆動力によって走行するモードである。
【0032】
HEVモードは、内燃機関1を駆動して、発電用モータ2で発電を行いながら走行用モータ3を駆動するモードである。
【0033】
まず、コントローラ10による走行モード切り替え制御の原則について説明する。
【0034】
コントローラ10は、走行計画の各地点について後述する走行モードマップを用いて走行モードを決定し、当該地点に到達したら決定した走行モードが実現されるよう内燃機関1及び走行用モータ3を駆動する。
【0035】
図2は走行モードマップの一例を示す図である。当該マップは、x軸を車速、y軸を必要駆動力、z軸をバッテリSOCとする三次元マップである。なお、y軸の必要駆動力は、アクセルペダル開度と車速とに基づいて図示しない駆動力マップを用いて算出する。また、図中の面THは、EVモードの方が高効率の領域とHEVモードの方が高効率の領域との境界面である。この面THは、シミュレーションや実験等により予め求めておく。なお、ここでいう効率とは、投入エネルギに対する出力エネルギの割合、つまりエネルギ効率のことをいう。
【0036】
コントローラ10は、車速、バッテリSOC、及び必要駆動力で定まる動作点が面THより低駆動力側であればEVモードを、面THより高駆動力側であればHEVモードを、それぞれ選択する。換言すると、動作点の必要駆動力が、面TH上の駆動力(以下、定常HEV閾値ともいう。)より小さい場合はEVモードを選択し、HEV閾値以上の場合はHEVモードを選択する。
【0037】
以上が走行モード切り替え制御の原則である。車両100の加減速が無視し得る程度に小さい走行状態(以下、これを定常状態ともいう。)であれば、この原則通りの制御で問題はない。
【0038】
しかし、加減速度が変化する過渡状態においては、原則通りの制御では燃費性能及び音振性能の悪化を招く場合がある。これについて図3を参照して説明する。
【0039】
図3は、走行計画に基づく必要駆動力のプロファイルと、これに応じた走行モード切替パターンのタイミングチャートである。必要駆動力の推移は、いったん定常HEV閾値を超えたらそのまま高駆動力側で推移する高駆動力パターンと、定常HEV閾値を超えた後、再び定常HEV閾値より低駆動力に戻る低駆動力パターンの2つを示している。
【0040】
走行モード切替パターンは、上記の原則にしたがって切り替える第1パターンと、燃費性能及び音振性能の悪化を回避可能な第2パターンの2つを示している。第1パターンと第2パターンのいずれも、実線は高駆動力パターンに対応する場合を示し、一点鎖線は低駆動力パターンに対応する場合を示している。なお、図3では説明を簡略化するために定常HEV閾値を一定値としているが、定常HEV閾値は実際には車速やバッテリSOCに応じて変動するものである。
【0041】
高駆動力パターン及び低駆動力パターンのいずれも、タイミングt3までは同一である。すなわち、必要駆動力は、タイミングt0では定常HEV閾値より低く、そこから増大してタイミングt1で定常HEV閾値を超え、その後のタイミングt2で減少に転じ、タイミングt3で定常HEV閾値に到達する。
【0042】
高駆動力パターンでは、必要駆動力はタイミングt3で再び増大に転じ、その後も定常HEV閾値より高い状態を維持する。一方の低駆動力パターンでは、必要駆動力はタイミングt3以降も減少し、タイミングt4で増大に転じるものの定常HEV閾値を超えることはなくタイミングt5で減少に転じ、タイミングt6まで定常HEV閾値より低い状態を維持する。
【0043】
高駆動力パターンの場合は、第1パターン及び第2パターンのいずれも、タイミングt1でEVモードからHEVモードに切り替わり、タイミングt6までHEVモードが維持されている。
【0044】
一方、低駆動力パターンの場合には、第1パターンではタイミングt3でHEVモードからEVモードへ切り替わっている。つまり、走行計画でタイミングt3以降は必要駆動力が定常HEV閾値を下回ることが分かっているのに、タイミングt1からタイミングt3の間だけHEVモードを実行している。これに対し第2パターンでは、すぐに必要駆動力が定常HEV閾値を下回ることを見越して、タイミングt1からタイミングt3の間もEVモードを維持している。
【0045】
内燃機関1を始動する際には、いわゆる始動時増量によって余分に燃料を噴射することになる。このため、第1パターンのようにいったんHEVモードに切り替えてから再びEVモードに戻す場合には、タイミングt1からタイミングt3までの時間によっては、第2パターンのようにEVモードを維持する場合に比べてエネルギ効率で損をするおそれがある。また、内燃機関1の始動と停止が行われれば、これに伴う振動やトルクショックが発生するため、音振性能も悪化する。
【0046】
そこで本実施形態では、低駆動力パターンの場合に、タイミングt1からタイミングt3までの区間を、EVモードのまま走行するのとHEVモードに切り替えて走行するのとで、どちらがエネルギ効率で有利かを判定し、EVモードの方が有利であれば第2パターンを実行し、HEVモードの方が有利であれば第1パターンを実行する。
【0047】
以下、本実施形態に係る走行計画の作成及び走行モード切替制御について説明する。
【0048】
図4は、コントローラ10が実行する走行計画の作成のための制御ルーチンを示すフローチャートである。図5は、コントローラ10が実行する走行モード切替制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。まず、図4のフローチャートから説明する。
【0049】
ステップS100で、コントローラ10は各種の情報、つまり上記の道路情報及び周辺情報、を取得する。
【0050】
ステップS110で、コントローラ10はステップS100で取得した情報に基づいて先行車両の有無を判定し、先行車両がいる場合はステップS120の処理を実行し、いない場合はステップS150の処理を実行する。
【0051】
ステップS120で、コントローラ10は先行車両の情報を取得する。ここで取得する情報は、先行車両の車速、加減速度等である。これらはステップS100で取得した情報から抽出してもよいし、ステップS100では取得せずに本ステップで初めて取得してもよい。また、可能であれば先行車両との車車間通信により先行車両の走行計画を取得する。
【0052】
ステップS130で、コントローラ10は車両100の走行計画と先行車両の情報とに基づいて、車両100が先行車両に追従するか否かを判定し、追従する場合はステップS140の処理を実行し、追従しない場合はステップS150の処理を実行する。追従する場合とは、例えば、先行車両と所定の車間距離をもって走行する場合である。追従しない場合とは、例えば、車両100の前方に隣車線から他車両が割り込んできたためステップS110では先行車両有りと判定されたものの、他車両の車速や加速度等から、他車両がすぐに車両100の遥か前方へ行ってしまうと推定される場合である。
【0053】
ステップS140で、コントローラ10は第1走行計画を作成する。第1走行計画とは、先行車両に追従することを前提とする走行計画である。ステップS150で、コントローラ10は第2走行計画を作成する。第2走行計画とは、車両100が単独で走行することを前提とする走行計画である。なお、第1走行計画の作成にあたり、先行車両の走行計画が分かっている方が走行計画の精度が高くなる。このため、先行車両も走行計画を作成しており、これを車車間通信で取得できることが望ましい。ただし、レーダ8等で先行車両の前方を走る先々行車両の有無、先行車両と先々行車両の車間距離等を取得し、これらに基づいて先行車両の動きを推定することもできる。
【0054】
第1走行計画、第2走行計画のいずれも、少なくとも走行ルートの制限速度や勾配、カーブの曲率等といった道路情報及び車両100の特性に基づいて作成する。第1走行計画では先行車両との車間距離等も考慮する。また、走行計画に車両100の特性やユーザーの運転特性等を反映させてもよい。例えば、必要駆動力の大きさ及び増加の傾きを、車両100がスポーツタイプであれば大きくし、ミニバンタイプであれば小さくする。また例えば、標準となる運転特性を予め設定しておき、過去の運転履歴に基づいて、ユーザーの運転特性が標準よりも積極的に加速するタイプ、標準より緩やかに加速するタイプ、標準タイプのいずれに該当するかを判定し、判定結果に応じて必要駆動力の大きさ及び増加の傾き等を変える。
【0055】
また、先行車両の特性や先行車両のユーザーの運転特性が分かる場合には、これを第1走行計画に反映させてもよい。例えば、先行車両がミニバンタイプであったり、先行車両のユーザーが緩やかに加速するタイプであったりする場合には、車両100がスポーツタイプや車両100のユーザーが積極的に加速するタイプであっても、緩やかに加速する走行計画を作成する。
【0056】
上記のように第1走行計画又は第2走行計画を作成したら、コントローラ10は図5の制御ルーチンを実行することによって、走行ルート上の各地点の走行モードを設定する。
【0057】
ステップS200で、コントローラ10は必要駆動力が定常HEV閾値を超える区間(以下、高出力区間ともいう。)があるか否かを判定し、ある場合はステップS210の処理を実行し、ない場合はステップS250の処理を実行する。
【0058】
ステップS210で、コントローラ10は、高出力区間をEVモードで走行した場合のエネルギ効率Eevを算出する。高出力区間が複数ある場合は、それぞれの高出力区間について算出する。エネルギ効率Eevは上記の通り投入エネルギに対する出力エネルギの割合である。ここでは、出力エネルギは当該高出力区間を走行するのに要する出力(以下、力行出力ともいう。)、入力エネルギはバッテリ4からの持ち出し電力、バッテリ4の充放電効率、及びバッテリ4の充電に供した燃料量に基づいて算出する。
【0059】
なお、PHEVの場合には、エネルギ効率に替えてCO負荷率を算出する。この場合、バッテリ4の充電に供した燃料量に替えて、バッテリ4の充電に伴うCO排出量を用いる。PHEVの場合、バッテリ4を外部電力でも充電可能であるため、充電に要した外部電力の発電時のCO排出量も考慮し、充電電力当たりのCO排出量が少ないほど高くなるCO負荷率を算出する。
【0060】
ステップS220で、コントローラ10は高出力区間をHEVモードで走行した場合のエネルギ効率Ehevを算出する。高出力区間が複数ある場合は、それぞれの高出力区間について算出する。具体的には、まず、力行出力をバッテリ4で担う分(以下、バッテリ相当分ともいう。)と内燃機関1で担う分(以下、内燃機関相当分ともいう。)に分け、それぞれに対する投入エネルギを算出する。バッテリ相当分に対する投入エネルギは、ステップS210と同様に、バッテリ4からの持ち出し電力、バッテリ4の充放電効率、及びバッテリ4の充電に供した燃料量に基づいて算出する。内燃機関相当分に対する投入エネルギは、内燃機関1の出力と内燃機関1の熱効率とに基づいて算出する。PHEVの場合は、内燃機関1の熱効率に基づいてCO排出量を算出すればよい。そして、バッテリ相当分と内燃機関相当分との合計を全出力エネルギとし、バッテリ相当分に対する投入エネルギと内燃機関相当分に対する投入エネルギの合計を全入力エネルギとして、エネルギ効率を算出する。
【0061】
なお、エネルギ効率Eev及びエネルギ効率Ehevは、過去のトリップの平均値を用いてもよいし、直近の所定時間の履歴に基づいて算出してもよい。
【0062】
ステップS230で、コントローラ10はエネルギ効率Ehevがエネルギ効率Eevより高いか否かを判定し、高い場合はステップS240の処理を実行し、そうでない場合はステップS250の処理を実行する。
【0063】
コントローラ10は、ステップS240ではHEVモードで走行させることを決定し、ステップS250ではEVモードで走行させることを決定する。
【0064】
PHEVの場合は、エネルギ効率に替えてCO負荷率を用いる。そして、高出力区間をHEVモードで走行した場合の第1CO負荷率と、EVモードで走行した場合の第2CO負荷率とを比較し、高い方のモードを選択する。
【0065】
図6は、走行計画による必要駆動力及び車速のプロファイルの一例を示す図である。図中の実線は必要駆動力、破線は定常HEV閾値、一点鎖線は車速をそれぞれ示している。この走行計画では、タイミングt1からタイミングt2までの区間S1、タイミングt3からタイミングt4までの区間S2、及びタイミングt5からタイミングt6までの区間S3の3つの高出力区間がある。そして、区間S1と区間S2はエネルギ効率Eev≧エネルギ効率Ehev、区間S3はエネルギ効率Eev>エネルギ効率Ehevであるものとする。
【0066】
この場合、区間S1と区間S2はHEVモードに切り替えずEVモードを維持し、区間S3はEVモードからHEVモードへ切り替えることになる。その結果、区間S1及び区間S2でHEVモードに切り替える場合に比べて、エネルギ効率を向上させ、かつ内燃機関1の始動・停止によるトルクショックの発生を回避できる。
【0067】
以上の通り本実施形態では、バッテリ4の電力により作動する走行用モータ3と、発電した電力をバッテリ4又は走行用モータ3の少なくとも一方に供給する発電用モータ2と、発電用モータ2の駆動源となる内燃機関1と、を備え、内燃機関1を停止させた状態で走行するEVモード、又は、内燃機関1を作動させた状態で走行するHEVモードで走行するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両制御方法が提供される。この制御方法において、コントローラ10が、ハイブリッド車両100の、走行ルートと、走行ルート上の各地点における車速及び必要駆動力と、を含む走行計画を作成する。そして、走行ルート上に、必要駆動力が、加減速度が無視し得る程度に小さい走行状態である定常状態におけるEVモードからHEVモードへの切り替え用判定値である定常HEV閾値(その車速、そのSOC、その駆動力が(仮に長期的に)維持された場合、HEVモードの方がエネルギ効率が良くなると判定できる閾値)を超える高出力区間がある場合には、高出力区間をHEVモードで走行した場合の第1エネルギ効率又は第1CO負荷率と、EVモードで走行した場合の第2エネルギ効率又は第2CO負荷率と、を推定し、第1エネルギ効率又は第1CO負荷率の方が第2エネルギ効率又は第2CO負荷率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替える。これにより、内燃機関1が短時間だけ稼働する機会を減らすことができるので、燃費性能及び音振性能の悪化を抑制できる。
【0068】
本実施形態では、コントローラ10は、走行計画を少なくとも道路情報及びハイブリッド車両100の周辺情報に基づいて作成する。これにより、実際の状況に応じた、より精度の高い走行計画を作成できる。
【0069】
本実施形態において、コントローラ10は、ハイブリッド車両100の車両特性及びハイブリッド車両100のユーザーの志向を走行計画に反映させる。これにより、より実情に則した走行計画を作成できる。
【0070】
本実施形態では、コントローラ10は、先行車両がある場合には、先行車両をセンシングしたセンシングデータ及び先行車両との通信で得られた情報の少なくとも一方に基づいて先行車両の現時点以降の挙動を推定し、推定結果を走行計画に反映させる。これにより、先行車の動きに応じた精度の高い走行計画を作成できる。
【0071】
[第2実施形態]
本実施形態は、高出力区間についてはHEVモードとEVモードのうちエネルギ効率の高い方を選択するという基本的な考え方は第1実施形態と同じだが、エネルギ効率を比較する前に、EVモードのまま当該区間を走行できるか否かの判定を行う点で第1実施形態と相違する。
【0072】
第1実施形態では、高出力区間においてEVモードのままでも必要駆動力を発生させられることが前提となっている。しかし、バッテリ4の供給電力はバッテリ4の容量、温度、SOC、及び劣化度等によって定まる閾値によって制限されるので、必要駆動力を発生させられない場合もある。
【0073】
上記の閾値は、一般的に安定して連続供給できる電力の上限とされる。したがって、一時的であれば閾値を超えて供給させても問題ない場合もある。一方、供給電力の制限がなくても、バッテリ4の供給電力だけでは必要駆動力を発生させられない場合もある。これらを図にまとめると図7のようになる。
【0074】
図7は縦軸を必要駆動力、横軸を車速とする出力領域マップの一例を示す図である。領域Aはバッテリ4の供給電力だけで必要駆動力を発生可能な領域、つまりEVモードで走行可能な領域である。領域Bは、一時的であればバッテリ4の供給電力だけで必要駆動力を発生可能な領域である。領域Cは、バッテリ4の供給電力だけでは必要駆動力を発生させられない領域である。
【0075】
つまり、走行計画中の高出力区間が領域Aに該当すれば第1実施形態と同様にエネルギ効率Eevとエネルギ効率Ehevの大小関係に基づいてEVモードかHEVモードのいずれかを選択すればよい。走行計画中の高出力区間が領域Cに該当する場合には、当然、EVモードからHEVモードへ切り替える必要がある。
【0076】
走行計画中の高出力区間が領域Bに該当する場合には、領域Bに滞在する時間(以下、滞在時間ともいう。)が、閾値を超えて供給しても問題ない時間(以下、許容時間ともいう。)を超えるか否かによって対応を変える必要がある。滞在時間が許容時間以内であれば、領域Aと同様の処理で問題ない。一方、滞在時間が許容時間を超える場合には、EVモードからHEVモードへ切り替える必要がある。
【0077】
図8は、供給電力の制限を考慮した場合の、走行モードを設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。ステップS200、S210~S250は図5と同様なので説明を省略する。以下、本実施形態の特徴であるステップS202~S206について説明する。
【0078】
ステップS202で、コントローラ10は高出力領域の動作点が図7の領域C内にあるか否かを判定し、領域C内にある場合はステップS240でHEV走行させることを決定し、そうでない場合はステップS204の処理を実行する。
【0079】
ステップS204で、コントローラ10は高出力領域の動作点が図7の領域B内にあるか否かを判定し、領域B内にある場合はステップS206の処理を実行し、そうでない場合は領域A内にあるということなのでステップS210の処理を実行する。
【0080】
ステップS206で、コントローラ10は走行計画に基づいて領域B内にいる時間が許容時間内か否かを判定し、許容時間内である場合にはステップS210の処理を実行し、そうでない場合はステップS240の処理を実行する。許容時間は、走行計画の必要駆動力のプロファイルと、現在のバッテリ4の状態(容量、温度、SOC、劣化度等)に応じて定まる。
【0081】
以上のように本実施形態では、コントローラ10は、第1エネルギ効率及び第2エネルギ効率を推定する前に、高出力区間においてEVモードで必要駆動力を発生できるか否かを判定し、発生できないと判定した場合はHEVモードへの切り替えを行い、発生できると判定した場合は第1エネルギ効率及び第2エネルギ効率を推定し、第1エネルギ効率の方が第2エネルギ効率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替える。これにより、バッテリ4の供給電力が制限を受けている場合であっても、EVモードを選択したら、その高出力区間をEVモードで走り切ることができる。
【0082】
[変形例]
次に、第2実施形態の変形例について説明する。本変形例も第2実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
【0083】
第2実施形態では、ステップS202で動作点が領域C内にないと判定した場合と、ステップS206で動作点の領域B内の滞在時間が許容時間を超えると判定した場合には、ステップS240においてHEVモードで走行させることを決定している。つまり、EVモードで走り切れない場合にはHEVモードへの切り替えを決定している。これに対し本変形例では、EVモードで走り切れない場合には、走行計画を修正する。
【0084】
図9は、本変形例に係る走行モードを設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。ステップS200、S202、S204、S206、S210~S250は図8と同じなので説明を省略する。以下、図8との相違点であるステップS203及びステップS207について説明する。
【0085】
コントローラ10は、ステップS202で動作点が領域C内にあると判定した場合は、ステップS203で走行計画を修正する。ここでの修正を第1修正という。第1修正では、動作点が領域Cに入らないようにする修正、つまり必要駆動力を低下させる修正を行う。例えば、走行計画の車速を低下させたり、加速度を低下させたりする。具体的には、例えば車速及び加速度を所定の割合で低下させてもよいし、領域Bと領域Cとの境界値に基づいて車速及び加速度を再設定してもよい。そして、第1修正を行ったら、ステップS200の処理に戻る。
【0086】
また、コントローラ10は、ステップS206で動作点が領域B内にいる時間が許容範囲を超えると判定した場合には、ステップS207で走行計画を修正する。ここでの修正を第2修正という。第2修正では、動作点が領域B内にいる時間が許容範囲を超えないように、第1修正と同様に必要駆動力を低下させる修正を行う。そして、第2修正を行ったら、ステップS200の処理に戻る。
【0087】
上記のように第1修正又は第2修正を行うことで、HEVモードへ切り替える頻度をより低下させることができる。
【0088】
以上のように本変形例では、コントローラ10は、第1エネルギ効率及び第2エネルギ効率を推定する前に、高出力区間においてEVモードで必要駆動力を発生できるか否かを判定し、発生できないと判定した場合は、走行計画の必要駆動力をEVモードで発生できる大きさに変更し、変更後の必要駆動力に基づいて第1エネルギ効率及び第2エネルギ効率を推定し、第1エネルギ効率の方が第2エネルギ効率より高いときだけ、高出力区間でHEVモードに切り替える。これにより、バッテリ4の供給電力が制限を受けている場合であっても、EVモードで走行する機会を増加させることができる。
【0089】
なお、パラレル式のハイブリッドシステムの場合には、モータの体格による制限を受けることもある。この場合、モータについても、出力領域を安定的に発生可能な領域と、一時的であれば発生可能な領域と、モータだけでは出力不可能な領域とに分けて、モータについてのステップS202、S204及びS206と同様の処理を図8又は図9に追加すればよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0091】
1 内燃機関、 2 発電用モータ、 3 走行用モータ、 4 バッテリ、 6 ナビゲーションシステム、 7 カメラ、 8 レーダ、 9 通信装置、 10 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9