(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130341
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ガイドブッシュ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 13/12 20060101AFI20240920BHJP
B23B 21/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23B13/12 B
B23B21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040007
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 厚志
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC18
3C045GA04
(57)【要約】
【課題】工作機械への適用が容易であり、かつ主軸によって保持されつつ加工されるワークを適切に支持できるガイドブッシュ装置を提供する。
【解決手段】ガイドブッシュ装置70は、主軸に対して相対的に、主軸の軸線に沿ったZ軸方向及び軸線と交差するX軸方向に少なくとも移動可能に第1タレット刃物台20に設けられる。ガイドブッシュ装置70は、ガイドブッシュスリーブ72と、ガイドブッシュ73と、を備えるロータリーガイドブッシュである。ロータリーガイドブッシュ(ガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73)は、主軸の回転と同期して回転可能に制御されることで、主軸によって送り出されるワークWを回転しながらガイドする構成である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する主軸と、前記ワークを加工する刃物台とを備える工作機械の前記刃物台に搭載されるガイドブッシュ装置であって、
前記ガイドブッシュ装置は、前記主軸に対して相対的に、前記主軸の軸線に沿った方向及び前記軸線と交差する方向に少なくとも移動可能に設けられ、
前記ガイドブッシュ装置は、
回転自在に支持されたガイドブッシュスリーブと、
前記ガイドブッシュスリーブ内に挿入されたガイドブッシュと、を備えたロータリーガイドブッシュであり、
前記ロータリーガイドブッシュは、前記主軸の回転と同期して回転可能に制御されることで、前記主軸に保持される前記ワークを回転しながらガイドする構成であることを特徴とするガイドブッシュ装置。
【請求項2】
前記刃物台は、本体部と、前記本体部により旋回自在に支持されたタレットと、前記タレットに取り付けられた工具を回転駆動する駆動機構と、を備えるタレット刃物台であり、
前記タレットは、旋回軸回りの周面及び前記旋回軸に直交する端面を有し、前記周面が複数に分割されて、工具が装着される複数の取付面を有し、前記旋回軸回りに旋回することにより選択された旋回位置で、前記工具の各々を前記主軸に対して割り出す構成であり、
前記ガイドブッシュ装置は、前記取付面の何れかに着脱自在に取り付けられ、前記駆動機構により回転駆動される構成であることを特徴とする請求項1に記載のガイドブッシュ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガイドブッシュ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主軸と、工具タレットを備える工作機械において、工具タレットの工具取付ステーションに取り付けられ、加工しようとするワークの外径を回転自在に保持する孔径の異なる複数のガイドブッシュを備えたガイドブッシュ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような工作機械は、ワークの丸棒部を保持して行う加工と、ニードル部を保持して行う加工とが1個のガイドブッシュ装置で実行可能となっている。
【0003】
また、特許文献2には、旋盤の主軸中心線回りに配置される刃物台と、主軸中心線周りに配置される複数のガイドブッシュ保持台と、刃物台および各ガイドブッシュ保持台とをそれぞれ独立して主軸中心線に対して進出退避させる移動機構を有する刃物台切り込み装置が開示されている。
【0004】
ところで、工作機械には、ガイドブッシュ装置を搭載していないものもある。このような装置でも、主軸によってワークを保持しつつ加工する際、特に外径の細いワークや外径(短手)に対して長手の長いワークを保持しつつ加工する際に、ワークを適切に支持できる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4271402号公報
【特許文献2】特許第4730831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであって、工作機械への適用が容易であり、かつ主軸に保持されつつ加工されるワークを適切に支持できるガイドブッシュ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のガイドブッシュ装置は、ワークを保持する主軸と、前記ワークを加工する刃物台とを備える工作機械の前記刃物台に搭載されるガイドブッシュ装置である。前記ガイドブッシュ装置は、前記主軸に対して相対的に、前記主軸の軸線に沿った方向及び前記軸線と交差する方向に少なくとも移動可能に設けられ、前記ガイドブッシュ装置は、回転自在に支持されたガイドブッシュスリーブと、前記ガイドブッシュスリーブ内に挿入されたガイドブッシュと、を備えたロータリーガイドブッシュである。前記ロータリーガイドブッシュは、前記主軸の回転と同期して回転可能に制御されることで、前記主軸に保持される前記ワークを回転しながらガイドする構成である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るガイドブッシュ装置によれば、ガイドブッシュ装置を搭載していない工作機械への適用が容易であり、かつ主軸に保持されつつ加工されるワークを適切に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるガイドブッシュ装置を備えた自動旋盤の主要部の概略構成を示す平面図である。
【
図2】第1タレット刃物台を、第1タレット刃物台の、Z軸方向の前方から見た正面図である。
【
図3】第1タレット刃物台のZ軸に沿った断面図である。
【
図4】ガイドブッシュ装置のZ軸に沿った断面図である。
【
図5】第1タレット刃物台を回転させて、ガイドブッシュ装置を割り出したときの第1タレット刃物台を、Z軸方向の前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るガイドブッシュ装置70を搭載した工作機械の一例である自動旋盤100は、図面を参照して以下のように説明される。
図1は、本開示の一実施形態であるガイドブッシュ装置70を備えた自動旋盤100の主要部の概略構成を示す図である。
【0011】
図1に示されるように、自動旋盤100は、図示しないベッドに、正面主軸10、第1タレット刃物台20、背面主軸50及び第2タレット刃物台60が設置されている。なお、本実施形態では、正面主軸10及び背面主軸50の軸線に沿う方向は、Z軸方向とされ、Z軸方向に直交する水平方向はX軸方向とされ、Z軸方向及びX軸方向に直交する上下方向は、Y軸方向とされる。また、正面主軸10が第1タレット刃物台20に向けてワークWを送り出す方向は前方、その反対方向は後方とされる。
【0012】
自動旋盤100は、この自動旋盤100全体の動作を制御する制御装置1を備える。制御装置1は、正面主軸10、第1タレット刃物台20、背面主軸50及び第2タレット刃物台60等とケーブル等により接続され、各部の動作を制御する。
【0013】
正面主軸10は、先端に図示しないコレットチャックを備え、このコレットチャックにより、棒状のワークWを保持する。正面主軸10は、軸線に沿うZ軸回りに回転可能で、これにより、保持したワークWを軸(Z軸)回りに回転させることができる。
【0014】
背面主軸50は、正面主軸10のZ軸方向の前方(正面主軸10の前端よりもZ軸方向の前方側)に、正面主軸10と対向して配置されている。背面主軸50も、先端に図示しないコレットチャックを備え、このコレットチャックにより、正面主軸10に保持されたワークWを背面主軸50が受け取って保持することができる。
【0015】
背面主軸50も、軸線に沿うZ軸回りに回転可能で、これにより、保持したワークWを軸(Z軸)回りに回転させることができる。背面主軸50は、公知の移動機構により、例えば、Z軸方向とX軸方向に自在に移動可能である。
【0016】
第1タレット刃物台20は、正面主軸10のZ軸方向の前方(正面主軸10の前端よりもZ軸方向の前方側)に、正面主軸10と並列に配置されている。第1タレット刃物台20は、正面主軸10に保持されたワークWや背面主軸50に保持されたワークWに対して、所定の工具により機械加工を施す。また第1タレット刃物台20は、ガイドブッシュ装置70が着脱自在に取り付け可能となっている。
【0017】
第2タレット刃物台60は、背面主軸50のZ軸方向の前方(背面主軸50の前端よりもZ軸方向の前方側)に、背面主軸50と並列に配置されている。第2タレット刃物台60は、背面主軸50に保持されたワークWや正面主軸10に保持されたワークWに対して、工具により機械加工を施す。また、第2タレット刃物台60も、ガイドブッシュ装置70が着脱自在に取り付け可能となっている。
【0018】
第1タレット刃物台20及び第2タレット刃物台60は、公知の移動機構によって、X軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能である。すなわち、第1タレット刃物台20及び第2タレット刃物台60は、正面主軸10及び/又は背面主軸50に対して、X軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能である。
【0019】
なお、第1タレット刃物台20及び第2タレット刃物台60は、正面主軸10及び/又は背面主軸50に対して、相対的に、少なくともX軸方向及びZ軸方向に移動可能であればよい。例えば、正面主軸10がX軸方向やZ軸方向に移動しない場合には、第1タレット刃物台20がX軸方向及び/又はZ軸方向に移動する。第2タレット刃物台60及び背面主軸50は、一方がX軸方向及び/又はZ軸方向に移動可能であってもよいし、双方がX軸方向及び/又はZ軸方向に移動可能であってもよい。第1タレット刃物台20及び第2タレット刃物台60は、公知の移動機構によって正面主軸10及び/又は背面主軸50に対して、Y軸方向に自在に移動可能であってもよい。
【0020】
図2は第1タレット刃物台20を、第1タレット刃物台20の、Z軸方向の前方から見た正面図である。
図3は第1タレット刃物台20のZ軸に沿った断面図である。
図4はガイドブッシュ装置70のZ軸に沿った断面図である。
【0021】
図2に示されるように、第1タレット刃物台20は、本体部21と、タレット面(取付面)22aを有するタレット22と、工具回転モータ28等の駆動機構を主に備える。本体部21とタレット22とは、Z軸方向に沿って並んだ配置となっている。
図1に示されるように、第2タレット刃物台60は、本体部61と、タレット面(取付面)62aを有するタレット62と、図示しない駆動機構を主に備える。本体部61とタレット62とは、Z軸方向に沿って並んだ配置となっている。
【0022】
第1タレット刃物台20の詳細な構成は、以下のようにして説明される。なお第2タレット刃物台60は、第1タレット刃物台20と同様に構成されることができるため、詳細な説明は省略される。
【0023】
タレット22は、
図2に示されるように、Z軸方向の前方から見た場合に、外形が角柱状に形成されている。タレット22は、その角柱の軸をZ軸に沿わせた状態で、Z軸回りにタレット旋回軸25を回転させることにより旋回可能に、本体部21に取り付けられている。
【0024】
タレット22は、角柱の軸回りの周面に、複数(
図2では12個)の平らなタレット面22aが設けられている。各タレット面22aは、二点鎖線の想像線で示した切削用のバイトなどの工具91が装着される工具ホルダ90が取り付けられる。なお、タレット面22aは、切削用の工具以外のドリルやエンドミル等の回転工具や工具ユニットが取り付けられてもよい。本実施形態では、タレット面22aの一つに、ガイドブッシュ装置70が取り付けられている。なお、ガイドブッシュ装置70は、複数のタレット面22aの何れに取り付けられてもよい。
【0025】
第1タレット刃物台20は、X軸方向及びZ軸方向に移動し、タレット旋回軸(
図3参照)25回りにタレット22が旋回することにより、選択された旋回位置における、タレット面22aに取り付けられた工具ホルダ90や工具を、正面主軸10に保持されて回転するワークWに接触させる。これにより、工具がワークWを加工する。
【0026】
第1タレット刃物台20は、タレット旋回軸25回り(
図3参照)にタレット22が旋回することにより、選択された旋回位置に、タレット面22aに取り付けられたガイドブッシュ装置70を配置する。ガイドブッシュ装置70は、正面主軸10に保持されて回転するワークWが挿通され、正面主軸10の回転と同期して回転しながらワークWをガイドする。正面主軸10及びガイドブッシュ装置70に保持されたワークWは、第2タレット刃物台60の工具によって加工される。
【0027】
本体部21は中空状の内部に、
図3に示すように、中空状の固定軸23がZ軸方向に沿って固定されている。この固定軸23は、内部に挿入された中空状の工具回転駆動軸24を、軸受を介して回転可能に支持している。また、固定軸23は、外周にタレット旋回軸25が回転自在に配置されている。また、工具回転駆動軸24は、内側にパイプ26が配置されている。パイプ26は本体部21に固定されている。
【0028】
工具回転駆動軸24及びタレット旋回軸25は、いずれも、Z軸回りに回転自在である。工具回転駆動軸24及びタレット旋回軸25は、別個に独立して回転する。
【0029】
工具回転駆動軸24は、Z軸回りに回転することにより、タレット22に取り付けられたドリル等の回転工具を、その回転工具の軸回りに回転させる。また本実施形態では、工具回転駆動軸24は、タレット22に取り付けられたガイドブッシュ装置70のガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73を、Z軸回りに回転させる。
【0030】
タレット旋回軸25は、Z軸回りに回転することにより、タレット22を、本体部21に対してZ軸回りに旋回させる。
【0031】
工具回転駆動軸24の一端側(後方側)に第1プーリ27aが取り付けられている。本体部21は工具回転モータ28を備え、この工具回転モータ28のモータ軸28aに第2プーリ27bが取り付けられている。第1プーリ27aと第2プーリ27bは、ベルト29を介して連係されており、工具回転モータ28の回転駆動力が、第1プーリ27a、ベルト29、第2プーリ27bを介して工具回転駆動軸24に伝達される。工具回転駆動軸24は、他端側(前方側)に第1かさ歯車30が取り付けられている。
【0032】
タレット旋回軸25は一端側にタレット旋回歯車31が一体的に取り付けられている。タレット旋回歯車31には、図示しないタレット旋回モータから駆動力が伝動される。タレット旋回軸25の他端側には、タレット22が一体的に固定されている。
【0033】
タレット旋回軸25の外側には、軸受を介して摺動軸32がZ軸方向に摺動自在に設けられている。摺動軸32の一端側は、本体部21に形成されたシリンダ室33に挿入されるピストン34を構成している。摺動軸32の一端部には、3体式のカップリング機構35を構成する第1カップリング要素35aが一体的に固定されている。本体部21側とタレット旋回軸25側の各々には、第1カップリング要素35aに対向する第2、第3カップリング要素35b,35cが一体的に固定されている。前記3体式のカップリング機構35は、第1、第2、第3カップリング要素35a,35b,35cによって構成される。
【0034】
ピストン34を作動させて摺動軸32をタレット22側(前方)に移動させることによって、第1カップリング要素35aと第2、第3カップリング要素35b,35cとが噛合する。第1カップリング要素35aを介して本体部21側の第2カップリング要素35bに、タレット旋回軸25側の第3カップリング要素35cが噛合されることで、タレット旋回軸25の旋回が規制される。また第1カップリング要素35aと第2、第3カップリング要素35b,35cとの噛合を解除するように摺動軸32が摺動駆動されることで、第2カップリング要素35bと第3カップリング要素35cとが分離し、タレット旋回軸25の旋回が許容される。
【0035】
タレット旋回軸25の旋回が許容され、タレット旋回軸25が旋回駆動されることで、タレット22が旋回される。所定の旋回角度位置でタレット旋回軸25の旋回が規制されることで、タレット22の割り出し旋回が行われる。タレット22の割り出し旋回によって、タレット22の所定のタレット面22aが選択されることで、所定の工具ホルダ90又はガイドブッシュ装置70の選択が行われる。
【0036】
固定軸23の先端にはタレット22の中空の内部に位置する支持部36が一体的に固定されている。支持部36は固定軸23を介して本体部21に一体的に固定される。支持部36には工具回転伝動軸37が回転自在に軸支されている。工具回転伝動軸37の一端側に第2かさ歯車38が取り付けられている。第2かさ歯車38は、第1かさ歯車30と噛み合っており、工具回転駆動軸24から工具回転伝動軸37に駆動力が伝動される。
【0037】
支持部36には、ブラケット39を介して工具旋回モータユニット40が固定されている。工具旋回モータユニット40は、工具旋回モータ41、工具旋回モータ41の駆動力を伝達する第2モータ軸41a等を備えている。回転工具を旋回させて加工可能な工具ユニットがタレット面22aに設置された場合には、例えば工具旋回モータユニット40からの旋回駆動力を、第2モータ軸41aを介してタレット面22aに垂直な方向を軸線とした所定の角度へ回転工具を旋回させて、所望の角度での加工が可能となる。工具旋回モータ41に接続されている電気配線等は、中空のパイプ26内を通して外部に引き出され、制御装置1に接続される。
【0038】
各タレット面22aには、中空の筒状をなす固定部22bが形成されている。固定部22bは、工具91が装着される工具ホルダ90又はガイドブッシュ装置70が着脱自在に固定される。
【0039】
工具回転伝動軸37の他端側(第2かさ歯車38と反対側)には、タレット22の割り出し旋回によってガイドブッシュ装置70又は工具ホルダ90が選択された場合に、後述するホゾ状突起部82が係合する溝部42が設けられている。この溝部42とホゾ状突起部82とは、工具回転モータ28の回転駆動力を、後述するガイドブッシュ装置70の回転駆動力伝達機構76又は工具ホルダ90の図示しない回転駆動力伝達機構に伝動する駆動力伝動部を構成している。
【0040】
図3、
図4に示されるように、ガイドブッシュ装置70は、ガイドブッシュホルダ71、ガイドブッシュスリーブ72、ガイドブッシュ73、第1軸受(アンギュラ玉軸受)74、第1平歯車75、及び回転駆動力伝達機構76を主に備えたロータリーガイドブッシュである。
【0041】
正面主軸10等によって加工される棒状のワークWは、ガイドブッシュ73に挿通されて支持され、ガイドブッシュ装置70によって第2タレット刃物台60に向けてガイド(案内)される。
【0042】
ガイドブッシュホルダ71は、タレット22の固定部22bに着脱自在に固定される。ガイドブッシュホルダ71は、内部にガイドブッシュスリーブ72が挿入されている。ガイドブッシュホルダ71とガイドブッシュスリーブ72との間に第1軸受74が配置されている。
【0043】
ガイドブッシュスリーブ72は、第1軸受74を介してガイドブッシュホルダ71に対して、Z軸回りに回転可能である。第1平歯車75は、ガイドブッシュスリーブ72の後方側の外周に設けられている。第1平歯車75とガイドブッシュスリーブ72とは、それぞれに設けられて互いに係合する図示しないキーを介してZ軸回りに一体的に回転可能である。第1平歯車75は、図示しない固定具によってZ軸方向の位置が固定されている。
【0044】
ガイドブッシュスリーブ72の内部に、ガイドブッシュ73が挿入されている。ガイドブッシュ73の前方側には、Z軸方向に延びた切り込みである図示しない摺割りが設けられている。ガイドブッシュ73は、前方側の外周面に、後方に向かうにしたがって外径が小さくなる第1テーパ73aが設けられている。
【0045】
ガイドブッシュ73は、ガイドブッシュスリーブ72に対して、Z軸回りに一体的に回転可能とされている一方、ガイドブッシュ73はガイドブッシュスリーブ72に対してZ軸方向に変位可能となっている。
【0046】
ガイドブッシュスリーブ72の前方側の内周面には、後方に向かうにしたがって内径が小さくなる、第1テーパ73aに対応した第2テーパ72aが設けられている。ガイドブッシュ73がガイドブッシュスリーブ72に対してZ軸方向に沿って後方に変位することにより、第1テーパ73aが第2テーパ72aに押圧され、摺割りによって前端部の直径が縮められる方向に調節される。これにより、ガイドブッシュ73は、図示しないガイドブッシュ開度調整機構を用いることで、前方側の内径(開度)が変化する。
【0047】
第1平歯車75が軸Z回りに回転駆動されると、ガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73は、第1平歯車75とともに一体的に回転する。
【0048】
回転駆動力伝達機構76は、第2軸受77、第1回転駆動力伝達軸78、第3軸受79、及び第2回転駆動力伝達軸80を主に備える。第1回転駆動力伝達軸78は、ガイドブッシュホルダ71内に、第2軸受77を介して回転可能に挿入支持されている。第1回転駆動力伝達軸78の一端部に、第3かさ歯車81が設けられている。
【0049】
第1回転駆動力伝達軸78の他端部に、ホゾ状突起部82が設けられている。タレット22が旋回してガイドブッシュ装置70が選択されたときに、ホゾ状突起部82が工具回転伝動軸37の溝部42に係脱自在に係合する(嵌まる)ように構成されている。ホゾ状突起部82が溝部42に係合されると、工具回転伝動軸37に伝達される回転駆動力を、第1回転駆動力伝達軸78に伝達することができる。
【0050】
第2回転駆動力伝達軸80は、Z軸方向に沿ってガイドブッシュホルダ71内に、第3軸受79を介して回転可能に挿入支持されている。第2回転駆動力伝達軸80の一端側(後方側)に、第4かさ歯車83が設けられている。第4かさ歯車83と第3かさ歯車81とが噛み合うことで、第1回転駆動力伝達軸78と第2回転駆動力伝達軸80とが連係している。第2回転駆動力伝達軸80は、第4かさ歯車83が設けられた側(後方側)に、第2平歯車84が設けられている。第2平歯車84は、第1平歯車75と噛みあっている。
【0051】
回転駆動力伝達機構76において、第1回転駆動力伝達軸78のホゾ状突起部82が溝部42に係合されて、工具回転伝動軸37から第1回転駆動力伝達軸78に回転駆動力が伝動されると、第1回転駆動力伝達軸78から、第3かさ歯車81、第4かさ歯車83、第2回転駆動力伝達軸80、及び第2平歯車84を介して第1平歯車75に回転駆動力が伝達される。これにより、第1平歯車75とともに、ガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73が一体的に回転する。
【0052】
工具ホルダ90は、タレット22の内部に図示しない旋回駆動力伝達機構と、回転駆動力伝達機構とが設けられている。旋回駆動力伝達機構は、タレット22の割り出し時に第2モータ軸41aと接続される。旋回駆動力伝達機構は、第2モータ軸41aを介して工具旋回モータ41の回転駆動力が伝達されることで、工具ホルダ90を、第2モータ軸41aの軸回りに旋回させる。また、回転駆動力伝達機構は、ガイドブッシュ装置70と同様に、図示しないホゾ状突起部と溝部42との係合により工具回転伝動軸37と接続される。回転駆動力伝達機構は、工具回転伝動軸37の回転駆動力が伝達されることで、工具91を回転させる。
【0053】
以上のように構成された自動旋盤100は、第1タレット刃物台20の一つのタレット面22aに、ガイドブッシュ装置70を取り付けることができ、他のタレット面22aに工具ホルダ90を取り付けることができる。第1タレット刃物台20を用いて、工具によって正面主軸10に保持されたワークWを加工する場合には、タレット22が旋回され、選択された旋回位置に、所望の工具ホルダ90が配置される。選択された工具ホルダ90に取り付けられた工具91で、正面主軸10に保持されて回転するワークWを加工することができる。
【0054】
他方、比較的外径が小さいワークWや加工時の負荷を受けやすいワークWを加工するとき等は、ガイドブッシュ装置70を使用することが好ましい。この場合、
図5に示されるように、タレット22が旋回され、選択された旋回位置に、ガイドブッシュ装置70が配置される。制御装置1の制御により、第1タレット刃物台20は、X軸方向及びZ軸方向に移動されて、正面主軸10に対する位置合わせが行われる。この位置合わせにより、ガイドブッシュ73の軸線と正面主軸10の軸線とが一致するとともに、ガイドブッシュ73は正面主軸10に保持されるワークWを保持可能な位置に配置される。また第2タレット刃物台60では、所望の工具ホルダ90が割り出され、X軸方向及びZ軸方向に移動され、ガイドブッシュ装置70によりガイドされるワークWを加工可能な位置に配置される。
【0055】
制御装置1の制御により、正面主軸10の回転と同期するように工具回転モータ28が回転される。工具回転モータ28の回転駆動力は、工具回転駆動軸24、工具回転伝動軸37を介して回転駆動力伝達機構76に伝達され、ガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73が一体的に回転する。ガイドブッシュ73は、正面主軸10によって回転されながら保持されるワークWを、正面主軸10と同期して回転しながらガイドする。ワークWは、第2タレット刃物台60の工具によって加工される。
【0056】
ワークWは、ガイドブッシュ装置70によって支持されているため、切削加工等の負荷による、ワークWの歪みや反り等の変形が適切に抑制される。特に、外径が小さいワークWや、外径(短手)に対して長手の長いワークW等は、変形が適切に抑制され、加工がより高精度に行われる。しかも、本実施形態のガイドブッシュ装置70は、正面主軸10や背面主軸50の回転と同期して回転しながらワークWをガイドするため、ワークWの変形や傷の発生が、より適切に抑制される。したがって、自動旋盤100は、ワークWの加工精度を向上させることができる。
【0057】
本実施形態の刃物台は、本体部21,61と、本体部21,61により旋回自在に支持されたタレット22,63と、駆動機構を備えるタレット刃物台(第1タレット刃物台20、第2タレット刃物台60)である。このようなタレット刃物台のタレット面22a,62aに、本実施形態のガイドブッシュ装置70を取り付けることができる。そして、工具を回転駆動させる駆動機構を、ガイドブッシュ装置70のガイドブッシュスリーブ72及びガイドブッシュ73を回転させる駆動力とすることができ、別個に駆動機構を設ける必要がない。このため、制御装置1は、ガイドブッシュ装置70を容易に制御できるとともに、製造コストを低減することができる。
【0058】
本実施形態のガイドブッシュ装置70は、ガイドブッシュ装置を備えていない工作機械にも適用することができる。このため、工作機械は正面主軸10及びガイドブッシュ装置70によりワークWを適切に支持することができ、変形等を適切に抑制して、より高精度なワークWの加工が可能となる。工作機械は、ガイドブッシュ装置70を用いない加工、ガイドブッシュ装置70を用いた加工が可能となり、外径の異なるワークWの高精度な加工も可能となる。
【0059】
本実施形態のガイドブッシュ装置70は、タレット22内部に図示しない旋回駆動力伝達機構と、回転駆動力伝達機構とが設けられている。旋回駆動力伝達機構は、タレット22の割り出し時に第2モータ軸41aと接続される。旋回駆動力伝達機構は、第2モータ軸41aを介して工具旋回モータ41の回転駆動力が伝達されることで、工具ホルダ90を旋回させるのと同様に第2モータ軸41aの軸回りにロータリーガイドブッシュ装置70を旋回させることが可能である。第1タレット刃物台20はZ軸方向に移動可能であるので、背面主軸50の近くに第1タレット刃物台20が移動し、ロータリーガイドブッシュ装置70が旋回することで、背面主軸50で保持したワークWを背面主軸50と同期して回転しながらガイドする。ワークWは、第2タレット刃物台60の工具によって加工される。
【0060】
本開示に係るガイドブッシュ装置70が適用される工作機械は、自動旋盤に限定されない。また、本開示に係るガイドブッシュ装置70は、タレット刃物台に取り付けられているが、刃物台がタレット刃物台に限定されない。刃物台は、刃具等の工具が送り台に並列に固定された、いわゆるクシ刃型の刃物台であってもよい。本開示のガイドブッシュ装置70は、このような刃物台にも搭載することができる。
【0061】
以上、本開示の実施形態を図面により詳細に説明したが、実施形態は本開示の例示に過ぎず、本開示は上述した実施形態のみに限定されない。
【符号の説明】
【0062】
10 :正面主軸(主軸)
20 :第1タレット刃物台(刃物台)
21 :本体部
22 :タレット
22a :タレット面(取付部)
28 :工具回転モータ(駆動機構)
61 :本体部
62 :タレット
50 :背面主軸(主軸)
62 :第2タレット刃物台(刃物台)
62a :タレット面(取付部)
63 :タレット
70 :ガイドブッシュ装置
72 :ガイドブッシュスリーブ
73 :ガイドブッシュ
91 :工具
W :ワーク