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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130342
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】脈波センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B5/02 310P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040008
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 高志
(72)【発明者】
【氏名】徳田 祐太
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC03
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】脈波センサにおいて、被験者への装着時間の短縮及び測定精度の向上を実現する。
【解決手段】本脈波センサは、第1面、及び前記第1面とは反対側に位置する第2面を備えた起歪体と、前記起歪体に設けられた互いに交差する複数の梁と前記第1面において、各々の前記梁の交差する領域に配置された負荷部と、前記第2面において、前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージと、前記第2面において、前記一対のひずみゲージが配置された前記梁と交差する前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージと、を有し、前記梁の変形に伴う各々の前記ひずみゲージの抵抗値の変化に基づいて脈波を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、及び前記第1面とは反対側に位置する第2面を備えた起歪体と、
前記起歪体に設けられた互いに交差する複数の梁と
前記第1面において、各々の前記梁の交差する領域に配置された負荷部と、
前記第2面において、前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージと、
前記第2面において、前記一対のひずみゲージが配置された前記梁と交差する前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージと、を有し、
前記梁の変形に伴う各々の前記ひずみゲージの抵抗値の変化に基づいて脈波を検出する、脈波センサ。
【請求項2】
前記一対のひずみゲージと前記他の一対のひずみゲージの一方は、前記負荷部の押圧に伴なって生じる前記梁の圧縮ひずみを検出し、
前記一対のひずみゲージと前記他の一対のひずみゲージの他方は、前記負荷部の押圧に伴なって生じる前記梁の引張ひずみを検出する、請求項1に記載の脈波センサ。
【請求項3】
前記圧縮ひずみを検出するひずみゲージの間隔は、前記引張ひずみを検出するひずみゲージの間隔よりも広い、請求項2に記載の脈波センサ。
【請求項4】
複数の前記梁は、1つの梁と、前記1つの梁と交差する複数の梁を含む、請求項2又は3に記載の脈波センサ。
【請求項5】
前記1つの梁は、第1方向に延び、
前記1つの梁と交差する複数の梁は、前記第1方向と直交する第2方向に延びる、請求項4に記載の脈波センサ。
【請求項6】
前記1つの梁と交差する複数の梁は、互いに等間隔に配置された3つ以上の梁を含む、請求項5に記載の脈波センサ。
【請求項7】
前記圧縮ひずみを検出するひずみゲージは、前記第2方向に延びる梁に配置され、
前記引張ひずみを検出するひずみゲージは、前記第1方向に延びる梁に配置される、請求項5又は6に記載の脈波センサ。
【請求項8】
前記起歪体は、前記第1方向を長手方向とし、前記第2方向を短手方向とする形状である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の脈波センサ。
【請求項9】
すべての前記ひずみゲージは、1つのブリッジ回路を構成するように接続され、
平面視で、各々の前記負荷部に対して同一方向の最も近い位置にあるひずみゲージは、直列に接続されて前記ブリッジ回路の各辺を構成する、請求項4乃至8のいずれか一項に記載の脈波センサ。
【請求項10】
隣接する前記負荷部の間隔は、1mm以上3mm以下である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の脈波センサ。
【請求項11】
隣接する前記負荷部の間隔は、1mm以上2.4mm以下である、請求項10に記載の脈波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓が血液を送り出すことに伴い発生する脈波を検出する脈波センサが知られている。一例として、外力の作用により撓み可能に支持されている起歪体となる受圧板と、その受圧板の撓みを電気信号に変換する圧電変換手段とが設けられた脈波センサが挙げられる。この脈波センサは、受圧板の可撓領域が外方に向かって凸曲面となるドーム状に形成されており、圧電変換手段として受圧板における頂部の内面に圧力検出素子を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-78689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脈波センサは、微小な信号を検出する必要があるため、検出部分を被験者の橈骨動脈等の近傍に確実に配置する必要がある。しかしながら、脈波センサの検出部分を被験者の橈骨動脈等に位置決めすることは困難であるため、脈波の取得までの装着時間が長くなったり、位置ずれにより測定精度が低下したりする問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、脈波センサにおいて、被験者への装着時間の短縮及び測定精度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る脈波センサは、第1面、及び前記第1面とは反対側に位置する第2面を備えた起歪体と、前記起歪体に設けられた互いに交差する複数の梁と前記第1面において、各々の前記梁の交差する領域に配置された負荷部と、前記第2面において、前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージと、前記第2面において、前記一対のひずみゲージが配置された前記梁と交差する前記梁に、平面視で各々の前記負荷部を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージと、を有し、前記梁の変形に伴う各々の前記ひずみゲージの抵抗値の変化に基づいて脈波を検出する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、脈波センサにおいて、被験者への装着時間の短縮及び測定精度の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る脈波センサを例示する平面図である。
図2】第1実施形態に係る脈波センサを例示する断面図である。
図3】各負荷部の押圧に伴なって生じる梁のひずみ量のシミュレーション結果(その1)である。
図4】各負荷部の押圧に伴なって生じる梁のひずみ量のシミュレーション結果(その2)である。
図5】ブリッジ接続について説明する図である。
図6】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図7】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図8】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一の符号を付す場合がある。また、各図面において、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を規定する場合がある。この場合、X方向において、矢印の始点(根元)側をX-側、矢印の終点(矢尻)側をX+側と称する場合がある。Y方向及びZ方向についても同様である。また、各図面の説明において、既に説明した構成部と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る脈波センサを例示する平面図である。図2は、第1実施形態に係る脈波センサを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。
【0011】
図1及び図2を参照すると、脈波センサ1は、筐体10と、起歪体20と、線材30と、複数のひずみゲージ(100L1、100L2、100L3、100L4、100C1、100C2、100C3、100C4、100R1、100R2、100R3、100R4)とを有している。なお、特に区別する必要がない場合は、各ひずみゲージをひずみゲージ100と総称する場合がある。
【0012】
起歪体20は、基部21と、梁22、22、22、及び22と、負荷部23、23、23と、複数の延伸部24とを有している。なお、特に区別する必要がない場合は、各梁を梁22と総称する場合がある。また、特に区別する必要がない場合は、各負荷部を負荷部23と総称する場合がある。
【0013】
起歪体20は、平板状である。起歪体20は、第1面20m、及び第1面20mとは反対側に位置する第2面20nを備えている。起歪体20は、例えば、平面視で2回対称の形状である。起歪体は、例えば、Y方向を長手方向とし、X方向を短手方向とする形状である。具体的には、起歪体20は、楕円形、長方形、角丸長方形等とすることができる。図示の例では、起歪体20は、Y方向を長手方向とする角丸長方形である。なお、角丸長方形とは、長方形の角の一部又は全部を丸くした形状の図形である。角丸長方形は、長さが等しい2本の平行線と、この平行線の両端に配置された半円形とからなる形状であってもよい。起歪体20を楕円形や角丸長方形とすることにより、Y方向の長さが等しい場合、円形と比べて、起歪体20をX方向に小型化することができる。なお、必要な場合には、起歪体20を、平面視で円形や正方形等としてもよい。
【0014】
起歪体20の材料としては、例えば、金属、セラミック、ガラス等を用いることができる。起歪体20の材料として用いる金属としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、銅、アルミニウム等が挙げられる。起歪体20は、例えば、プレス加工法等により一体に形成することができる。負荷部23を除く起歪体20の厚さtは一定である。負荷部23を除く起歪体20の厚さtは、例えば、0.03mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0015】
なお、本実施形態では、便宜上、脈波センサ1において、起歪体20の負荷部23が設けられている側を「上側」と称し、起歪体20の負荷部23が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、脈波センサ1は天地逆の状態で用いることもできる。又、脈波センサ1は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、起歪体20の第1面20mに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0016】
脈波センサ1において、筐体10は起歪体20を保持する部分である。筐体10は中空であって、下面側が塞がれ上面側が開口されている。筐体10は、例えば、金属や樹脂等から形成できる。筐体10の上面側の開口を塞ぐように、起歪体20が接着剤等により固定されている。
【0017】
起歪体20において、基部21は、起歪体20の外縁部の所定幅の領域である。具体的には、基部21は、図1に示す破線よりも外側の環状の領域である。基部21の幅wは、例えば、1mm以上5mm以下である。基部21の幅wは、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。基部21の内側のX方向の長さは、例えば、5mm以上35mm以下である。基部21の内側のY方向の長さは、基部21の内側のX方向の長さよりも長い。
【0018】
起歪体20には、互いに交差する複数の梁22が設けられている。複数の梁22は、1つの梁と、1つの梁と交差する複数の梁を含んでもよい。複数の梁22は、互いに直交してもよい。各々の梁22は、基部21の内側を橋渡しするように設けられている。
【0019】
図示の例では、複数の梁22は、Y方向に延びる直線状の1つの梁22と、1つの梁22と直交するX方向に延びる直線状の梁22、22、及び22とを含む。梁22は、梁22、22、及び22よりも長い。図示の例では、1つの梁22と交差する梁22、22、及び22は、互いに等間隔に配置されている。複数の梁22は、互いに等間隔に配置された4つ以上の梁を含んでもよい。
【0020】
梁22、22、22、及び22において、交差する領域以外の幅wは一定であり、例えば、1mm以上5mm以下である。幅wが一定であることは必須ではないが、幅wを一定とすることで、ひずみをリニアに検出できる点で好ましい。
【0021】
なお、複数の梁22は、1つの梁と、1つの梁と交差する複数の梁を含んでいればよい。1つの梁や、1つの梁と交差する複数の梁は、直線状でなくてもよい。1つの梁と交差する複数の梁は、2本以上あればよい。
【0022】
起歪体20の第1面20mにおいて、各々の梁22の交差する領域に負荷部23が配置されている。図示の例では、起歪体20の第1面20mにおいて、梁22と梁22の交差する領域に負荷部23が配置されている。また、梁22と梁22の交差する領域に負荷部23が配置されている。また、梁22と梁22の交差する領域に負荷部23が配置されている。
【0023】
起歪体20では、1つの梁22に複数の負荷部23が配置されているため、各々の負荷部23は互いに影響し合う。すなわち、1つの負荷部23が押圧されると、他の負荷部23の周辺にもひずみが発生する。いずれの負荷部23が押圧された場合も、各々の負荷部23の周辺に発生するひずみの総和は一定となる。
【0024】
負荷部23は、梁22の上面から突起している。梁22の上面を基準とする負荷部23の突起量は、例えば、0.1mm程度である。なお、各負荷部23の突起量は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。梁22は可撓性を有しており、負荷部23に負荷が加わると弾性変形する。
【0025】
負荷部23の平面形状は、例えば、円形であるが、楕円形等であってもよい。負荷部23の平面形状が円形である場合、直径は、例えば、1.5mm以上2.5mm以下とすることができる。負荷部23の平面形状が楕円形である場合、橈骨動脈に接しやすくする観点から、長径方向がY方向を向くことが好ましい。
【0026】
隣接する負荷部23のピッチは、例えば、4mm以上6mm以下程度とすることができる。隣接する負荷部23の間隔は、例えば、1mm以上3mm以下程度とすることができる。隣接する負荷部23の間隔は、橈骨動脈の太さ以下であることが好ましい。橈骨動脈の太さは、一般的に日本人女性の8割が2.4mm以上、最大で3.0mm、日本人男性の8割が2.6mm以上、最大で4.0mmと言われている。すなわち、日本人の8割は、橈骨動脈の太さが2.4mm以上4.0mm以下である。
【0027】
そこで、隣接する負荷部の間隔は、4mm以下に設計するのがよく、3mm以下とするとより好ましく、2.4mm以下とするとさらに好ましい。隣接する負荷部の間隔を3mm以下とすることにより、多くの日本人の被験者において、いずれかの負荷部が橈骨動脈に接する確率が高くなる。隣接する負荷部の間隔を2.4mm以下とすることにより、さらに多くの日本人の被験者において、いずれかの負荷部が橈骨動脈に接する確率がさらに高くなる。
【0028】
複数の延伸部24は、平面視で基部21の内側から梁22の方向に延伸する扇形や矩形の部分である。各々の延伸部24と梁22との間には、1mm程度の隙間(スリット)が設けられている。延伸部24は、脈波センサ1のセンシングには寄与しないため、設けなくてもよい。
【0029】
なお、X方向に延びるスリットの長さと、Y方向に延びるスリットの長さとは、同じであってもよいし、同じでなくてもよい。例えば、梁22の負荷部23よりもX+側に位置する部分を規定するスリットのX方向の長さと、そのスリットと連続し、梁22の負荷部23よりもY-側に位置する部分を規定するスリットのY方向の長さとは、同じであってもよいし、同じでなくてもよい。
【0030】
線材30は、脈波センサ1と外部との電気信号の入出力を行うケーブルである。線材30は、シールドケーブルやフレキシブル基板等であってもよい。なお、線材30は、脈波センサ1の必須の構成要素ではない。脈波センサ1は、線材30を用いずに、無線等の方法で外部と通信する形態であってもよい。
【0031】
脈波センサ1は、起歪体20の第2面20nにおいて、梁22に、平面視で各々の負荷部23を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージと、この一対のひずみゲージが配置された梁22と交差する梁22に、平面視で各々の負荷部23を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージとを有している。
【0032】
図示の例では、脈波センサ1は、起歪体20の第2面20nにおいて、X方向に延びる梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージ100L1及び100L2を有している。また、一対のひずみゲージ100L1及び100L2が配置された梁22と交差する梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージ100L3及び100L4を有している。
【0033】
ひずみゲージ100L1及び100L2は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の圧縮ひずみを検出し、ひずみゲージ100L3及び100L4は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の引張ひずみを検出する。圧縮ひずみを検出するひずみゲージ100L1とひずみゲージ100L2との間隔は、引張ひずみを検出するひずみゲージ100L3とひずみゲージ100L4との間隔よりも広い。
【0034】
また、脈波センサ1は、起歪体20の第2面20nにおいて、X方向に延びる梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージ100C1及び100C2を有している。また、一対のひずみゲージ100C1及び100C2が配置された梁22と交差する梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージ100C3及び100C4を有している。
【0035】
ひずみゲージ100C1及び100C2は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の圧縮ひずみを検出し、ひずみゲージ100C3及び100C4は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の引張ひずみを検出する。圧縮ひずみを検出するひずみゲージ100C1とひずみゲージ100C2との間隔は、引張ひずみを検出するひずみゲージ100C3とひずみゲージ100C4との間隔よりも広い。
【0036】
また、脈波センサ1は、起歪体20の第2面20nにおいて、X方向に延びる梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された一対のひずみゲージ100R1及び100R2を有している。また、一対のひずみゲージ100R1及び100R2が配置された梁22と交差する梁22に、平面視で負荷部23を挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージ100R3及び100R4を有している。
【0037】
ひずみゲージ100R1及び100R2は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の圧縮ひずみを検出し、ひずみゲージ100R3及び100R4は、負荷部23の押圧に伴なって生じる梁22の引張ひずみを検出する。圧縮ひずみを検出するひずみゲージ100R1とひずみゲージ100R2との間隔は、引張ひずみを検出するひずみゲージ100R3とひずみゲージ100R4との間隔よりも広い。
【0038】
各ひずみゲージ100をこのように配置することにより、圧縮ひずみと引張ひずみを有効に検出してフルブリッジにより大きな出力を得ることができる。
【0039】
脈波センサ1は、複数の負荷部23のうちの1以上の負荷部23が被験者の橈骨動脈に当たるように被験者の腕に固定して使用される。被験者の脈波に応じていずれかの負荷部23に負荷が加わって梁22が弾性変形すると、ひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値が変化する。脈波センサ1は、梁22の変形に伴なうひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値の変化に基づいて脈波を検出できる。脈波は、例えば、ひずみゲージ100の電極と接続された測定回路から、周期的な電圧の変化として出力される。
【0040】
図1及び図2に示す形状の脈波センサ1について、各負荷部の押圧に伴なって生じる梁のひずみ量のシミュレーションを行った。起歪体20において、図1及び図2のX方向の最大長さは15mm、のY方向の最大長さは25mm、厚さtは0.1mmとした。また、各々の負荷部23は平面視で直径2mmの円形とし、高さは0.1mmとした。また、隣接する負荷部23の間隔は、3mmとした。なお、ここでは、一例として隣接する負荷部23の間隔を3mmとしたが、原理的に、3mm以外の場合であっても同様の結果が得られると予想される。
【0041】
図3は、各負荷部の押圧に伴なって生じる梁のひずみ量のシミュレーション結果(その1)である。図4は、各負荷部の押圧に伴なって生じる梁のひずみ量のシミュレーション結果(その2)である。図3は、負荷部23のみを押圧したときのひずみ量を示し、図4は、負荷部23のみを押圧したときのひずみ量を示している。
【0042】
また、図3及び図4において、Lの外は、ひずみゲージ100L1及び100L2により得られたひずみ量を示し、Lの内は、ひずみゲージ100L3及び100L4により得られたひずみ量を示している。また、Cの外は、ひずみゲージ100C1及び100C2により得られたひずみ量を示し、Cの内は、ひずみゲージ100C3及び100C4により得られたひずみ量を示している。また、Rの外は、ひずみゲージ100R1及び100R2により得られたひずみ量を示し、Rの内は、ひずみゲージ100R3及び100R4により得られたひずみ量を示している。
【0043】
図3に示すように、負荷部23のみを押圧した場合は、負荷部23のX方向及びY方向の最も近くに配置されたひずみゲージ100L1、100L2、100L3、及び100L4により、最も大きなひずみ量が得られる。
【0044】
負荷部23と負荷部23及び23とは、同一の梁22上に配置されているため、負荷部23が押圧された影響は、直接押圧されていない負荷部23及び23にも及ぶ。そのため、図3に示すように、Cの外及び内、並びにRの外及び内においても、ひずみ量が検出される。
【0045】
負荷部23は負荷部23よりも、負荷部23に近い。そのため、ひずみゲージ100C1、100C2、100C3、及び100C4により得られるCのひずみ量の方が、ひずみゲージ100R1、100R2、100R3、及び100R4により得られるRのひずみ量よりも大きくなる。
【0046】
また、図4に示すように、負荷部23のみを押圧した場合は、負荷部23のX方向及びY方向の最も近くに配置されたひずみゲージ100C1、100C2、100C3、及び100C4により、最も大きなひずみ量が得られる。
【0047】
負荷部23と負荷部23及び23とは、同一の梁22上に配置されているため、負荷部23が押圧された影響は、直接押圧されていない負荷部23及び23にも及ぶ。そのため、図4に示すように、Lの外及び内、並びにRの外及び内においても、ひずみ量が検出される。
【0048】
負荷部23と負荷部23との距離は、負荷部23と負荷部23との距離と同じである。そのため、ひずみゲージ100L1、100L2、100L3、及び100L4により得られるLのひずみ量は、ひずみゲージ100R1、100R2、100R3、及び100R4により得られるRのひずみ量と同等になる。
【0049】
また、図3に示すL、C、Rのひずみ量の総和は、図4に示すL、C、Rのひずみ量の総和と一致する。なお、負荷部23のみを押圧した場合のシミュレーション結果は示していないが、図3において、Lの外及び内のひずみ量と、Rの外及び内のひずみ量が入れ替わったものになる。
【0050】
このように、脈波センサ1では、複数の負荷部23のいずれか1つが押圧されれば、ひずみ量を検出できる。すなわち、負荷部23の配列方向(図1及び図2ではY方向)を橈骨動脈の延びる方向に対して略垂直な方向に向けて脈波センサ1を被験者の腕に固定することにより、複数の負荷部23のいずれか1つ以上を、容易に被験者の橈骨動脈に当てることができる。そして、いずれの負荷部23が被験者の橈骨動脈に当たっても、一定のひずみ量を得ることができる。これにより、橈骨動脈の位置検出機構や位置の調整が不要となり、脈波センサ1を被験者の腕に容易に固定することができるとともに、脈波を確実に検出することができる。すなわち、脈波センサ1を用いることにより、被験者への装着時間の短縮及び測定精度の向上を実現できる。
【0051】
脈波センサ1では、図5に示すように、各ひずみゲージがフルブリッジ接続される4ゲージ法により、大きな出力を得ることができる。
【0052】
図5では、図1及び図2に示すすべてのひずみゲージ100は、1つのブリッジ回路を構成するように接続されている。具体的には、図1に示す平面視で、各々の負荷部23に対して同一方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100は、直列に接続されてブリッジ回路の各辺を構成している。
【0053】
例えば、負荷部23に対してX-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100L1と、負荷部23に対してX-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100C1と、負荷部23に対してX-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100R1とは、直列に接続されて図5に示すブリッジ回路の左上の一辺を構成している。
【0054】
また、負荷部23に対してX+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100L2と、負荷部23に対してX+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100C2と、負荷部23に対してX+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100R2とは、直列に接続されて図5に示すブリッジ回路の右下の一辺を構成している。
【0055】
また、負荷部23に対してY-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100L3と、負荷部23に対してY-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100C3と、負荷部23に対してY-方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100R3とは、直列に接続されて図5に示すブリッジ回路の右上の一辺を構成している。
【0056】
また、負荷部23に対してY+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100L4と、負荷部23に対してY+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100C4と、負荷部23に対してY+方向の最も近い位置にあるひずみゲージ100R4とは、直列に接続されて図5に示すブリッジ回路の左下の一辺を構成している。
【0057】
図5において、左上の辺と左下の辺の接続部と、右上の辺と右下の辺の接続部との間には、直流電圧Eが供給される。これにより、ブリッジ回路の出力として、左上の辺と右上の辺の接続部と、左下の辺と右下の辺の接続部との間から、出力電圧eを得ることができる。
【0058】
ブリッジ接続は、筐体10の内側で行ってもよいし、外側で行ってもよい。必要に応じ、筐体10の内側にブリッジ接続を行うための配線基板を配置してもよい。
【0059】
[ひずみゲージ100]
図6は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図7は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図6のB-B線に沿う断面を示している。
【0060】
図6及び図7を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。すなわち、ひずみゲージ100は、検出素子として抵抗体130を有している。カバー層160は、必要に応じて設けることができる。なお、図6及び図7では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ100を構成する各部について詳細に説明する。
【0061】
なお、図6図8を用いて行うひずみゲージの説明は、上面と下面の定義が他の図の場合とは異なる。具体的には、図6図8では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材110の抵抗体130が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体130が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材110の上面110aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。ひずみゲージ100は、基材110が起歪体20の第2面20n側を向くように、起歪体20の第2面20nに貼り付けられる。
【0062】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材である。基材110は可撓性を有する。基材110の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材110の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、起歪体20の第2面20nから受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材110の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材110の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0063】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0064】
基材110が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材110は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0065】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材110の材料としてもよい。又、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属製の基材110を用いる場合、上面110aを被覆するように絶縁膜が設けられる。
【0066】
抵抗体130は、基材110の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体130は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図6では、便宜上、抵抗体130を密度の高い梨地模様で示している。
【0067】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図6の例ではB-B線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図6の例ではB-B線と垂直な方向)となる。
【0068】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eを形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eは、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eと各々の電極150とを電気的に接続している。
【0069】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0070】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0071】
抵抗体130の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体130の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体130の厚さが1μm以下である場合、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラック及び(ii)膜の基材110からの反りが、低減される。
【0072】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体130の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体130の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0073】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体130はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0074】
又、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0075】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体130のセラミックス化を低減し、抵抗体130の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0076】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0077】
ひずみゲージ100において、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0078】
配線140は、基材110上に設けられている。配線140は、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図6では、便宜上、配線140を抵抗体130よりも密度の低い梨地模様で示している。
【0079】
電極150は、基材110上に設けられている。電極150は、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されている。電極150は、平面視において、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極150には、例えば外部接続用のリード線等が接合される。電極150の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体130と配線140と電極150とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図6では、便宜上、電極150を配線140と同じ密度の梨地模様で示している。
【0080】
カバー層160(保護層)は、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように設けられる。カバー層160の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層160の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層160を設けることで、抵抗体130に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層160を設けることで、抵抗体130を湿気等から保護することができる。
【0081】
[ひずみゲージ100の製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材110上に、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とが形成される。なお、基材110とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0082】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、配線140、及び電極150となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、配線140、及び電極150の材料や厚さと同様である。
【0083】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材110の上面110aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図6の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。
【0084】
なお、基材110の上面110aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材110の上面110aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0085】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0086】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0087】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0088】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0089】
図8は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図8は、抵抗体130、配線140、及び電極150の下地層として機能層120を設けた場合のひずみゲージ100の断面形状を示している。
【0090】
機能層120の平面形状は、例えば抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層120と抵抗体130、配線140、及び電極150との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層120が絶縁材料から形成される場合には、機能層120を抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層120は例えば抵抗体130、配線140、及び電極150が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層120は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0091】
抵抗体130、配線140、及び電極150を形成した後、必要に応じ、基材110の上面110aにカバー層160を形成する。カバー層160は抵抗体130及び配線140を被覆するが、電極150はカバー層160から露出していてよい。例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層160を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0092】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係る脈波センサは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係る脈波センサについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【0093】
例えば、上記の実施形態では、図1においてL、C、Rの各符号を付した引張ひずみを検出するひずみゲージ100が配置される1つの梁22を設けた。しかし、図1においてL、C、Rの各符号を付した引張ひずみを検出するひずみゲージ100に対して、Y方向に延びる独立した3つの梁を設けてもよい。この場合には、図1においてLの各符号を付した4つのひずみゲージ100に対して1つのブリッジ回路、Cの各符号を付した4つのひずみゲージ100に対して1つのブリッジ回路、Rの各符号を付した4つのひずみゲージ100に対して1つのブリッジ回路を設けることにより、ひずみ量を検出することができる。
【0094】
また、負荷部23は、3つには限定されず、2つ以上あればよい。もちろん、負荷部23は、4つ以上でもよい。また、負荷部23の配列は、一列には限定されず、複数列であってもよい。
【0095】
また、上記の実施形態では、脈波センサ1等が脈波を検出する例を示したが、脈波センサ1の検出対象は脈波には限定されない。脈波センサ1等は、例えば、脈圧、血圧、脈拍、酸素レベル等を検出対象とすることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 脈波センサ、10 筐体、20 起歪体、20m 第1面、20n 第2面、21 基部、22,22,22,22 梁、23、23、23 負荷部、24 延伸部、30 線材、100L1,100L2,100L3,100L4,100C1,100C2,100C3,100C4,100R1,100R2,100R3,100R4 ひずみゲージ、110 基材、110a 上面、130 抵抗体、140 配線、150 電極、160 カバー層、130e,130e 終端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8