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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130346
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0444 20160101AFI20240920BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/04694
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/04313
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040015
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭平
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB02
5H127AB04
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB02
5H127DB03
5H127DB04
5H127DB05
5H127DB12
5H127DB13
5H127DB63
5H127DC02
5H127DC05
5H127DC08
5H127DC44
(57)【要約】
【課題】燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】実施の形態による燃料電池システムは、燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、燃料電池に供給される燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断する判断部と、判断部により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に供給される前記燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断する判断部と、
前記判断部により判断された前記不活性ガスの混入割合に基づいて、前記燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、
を備えた、燃料電池システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記燃料電池への燃料ガス供給量と、前記燃料電池における燃料ガス消費量と、に基づいて、前記不活性ガスの混入割合を判断する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池に供給される前記燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁に流入する前記燃料ガスの圧力値を計測する第1圧力計と、
前記流量調整弁から流出する前記燃料ガスの圧力値を計測する第2圧力計と、
前記燃料電池から出力された発電電力の電流値を計測する電流計と、
を備え、
前記判断部は、前記第1圧力計により計測された圧力値と、前記第2圧力計により計測された圧力値と、前記流量調整弁の開度とに基づいて、前記燃料ガス供給量を算出するとともに、前記電流計により計測された発電電流値に基づいて、前記燃料ガス消費量を算出する、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記判断部により判断された前記不活性ガスの混入割合に基づいて、前記燃料電池の発電電流の上限値を調整するとともに前記燃料ガス供給量を調整する、
請求項2または3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池から排出された前記燃料ガスを前記燃料電池に戻す燃料ガス循環流路と、
前記燃料ガス循環流路から前記燃料ガスを外部に排出する脱気流路と、
前記脱気流路に設けられた脱気弁と、
を備え、
前記運転制御部は、前記判断部により判断された前記不活性ガスの混入割合に基づいて、前記脱気弁を閉じている時間間隔または前記脱気弁の開いている時間間隔を調整する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池システムであって、
燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から排出された前記燃料ガスを前記燃料電池に戻す燃料ガス循環流路と、
前記燃料ガス循環流路内の前記燃料ガスの圧力値を計測する第3圧力計と、
前記燃料ガス循環流路から前記燃料ガスを外部に排出する脱気流路と、
前記脱気流路に設けられた脱気弁と、
前記第3圧力計により計測された圧力値に基づいて、前記燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、
を備えた、燃料電池システム。
【請求項7】
前記運転制御部は、前記第3圧力計により計測された圧力値の上昇速度に基づいて、前記脱気弁を閉じている時間間隔または前記脱気弁を開いている時間間隔を調整する、
請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記第3圧力計により計測された圧力値に基づいて、前記脱気弁を閉じている時間間隔または前記脱気弁を開いている時間間隔を調整する、
請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
燃料電池システムであって、
燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池システムの上位の制御システムに記憶された情報に基づいて、前記燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、
を備えた、燃料電池システム。
【請求項10】
前記制御システムの情報には、燃料タンクに燃料を補給する際に行われたパージ処理のパージ終了時刻が含まれ、
前記運転制御部は、前記パージ終了時刻から所定期間が経過するまでの間、前記燃料電池システムの運転条件を変更する、
請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記制御システムの情報に基づいて、前記燃料電池に供給される前記燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断する判断部を更に備え、
前記運転制御部は、前記判断部により判断された前記不活性ガスの混入割合に基づいて、前記燃料電池システムの運転条件を変更する、
請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記制御システムの情報には、燃料タンクに燃料を補給する際に行われたパージ処理のパージ終了時刻が含まれ、
前記判断部は、前記パージ終了時刻から所定の経過期間が経過するまでの間、前記燃料電池への燃料ガス供給量と、前記燃料電池における燃料ガス消費量との差が第1の閾値よりも大きい場合、不活性ガスの混入割合が増えたと判断し、前記経過期間が経過した後、前記燃料ガス供給量と前記燃料ガス消費量との差が第2の閾値よりも大きい場合、前記不活性ガスの混入割合が増えたと判断し、
前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも小さい、
請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記制御システムの情報に、前記燃料ガス中の不活性ガスの濃度が含まれ、
前記判断部は、前記不活性ガスの前記濃度に基づいて、前記燃料電池に供給される前記燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断する、
請求項11に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料極と酸化剤極との間に電解質膜が介在された燃料電池を備えている。燃料電池では、燃料極に供給されて燃料ガスと酸化剤極に供給された酸化剤ガスとが電解質膜を介して電気化学的に反応する。このように、燃料電池は、化学エネルギを電気エネルギに変換する発電装置である。燃料ガスは、例えば水素ガスであり、酸化剤ガスは、例えば空気である。
【0003】
燃料電池システムには、燃料極に供給する燃料ガスを貯留する燃料タンクが接続されている。通常運転時には、燃料タンクから燃料極に燃料ガスが供給され、燃料電池が発電を行う。燃料タンクには、高圧の水素ガスまたは液体水素が貯留される。
【0004】
燃料タンクに燃料を補給する際には、別体の補給タンクが配管などの補給流路を介して燃料タンクに接続される。補給流路は、窒素ガス若しくはヘリウムガスなどの不活性ガスでパージされ、その後、補給タンクから燃料タンクに燃料が、気体状態または液体状態で供給される。
【0005】
このようにして燃料タンクに貯留された燃料には、不活性ガスが混入され得る。不活性ガスを含有した燃料ガスが燃料極に供給されると、燃料電池システムにおいて燃料極内部に不活性ガスが蓄積されやすくなる。また、燃料電池の通常運転時においては、燃料電池内部において酸化剤極に含まれる不活性ガスが電解質膜を通って燃料極に移動し得る。
【0006】
このようにして燃料極内部に不活性ガスが蓄積されると、燃料極内の燃料ガス濃度が低下し得る。このため、燃料電池の性能が低下し、燃料電池の運転が停止する可能性がある。
【0007】
燃料電池システムが、燃料電池から排出された燃料ガスを燃料電池に戻す燃料ガス循環流路を備える場合がある。この場合、燃料ガス循環流路には、脱気弁を含む脱気ラインが接続される。このような燃料電池システムにおいては、脱気弁から燃料極内の不活性ガスを放出することができ、燃料ガスの濃度の回復操作を行うことができる。しかしながら、通常の脱気操作で放出可能な不活性ガス量を上回る不活性ガスが燃料極に供給されると、燃料極内の不活性ガスの濃度が高くなり得る。このため、燃料電池の性能が低下し、燃料電池の運転が停止する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/165824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施の形態は、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態による燃料電池システムは、燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、燃料電池に供給される燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断する判断部と、判断部により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、を備えている。
【0011】
実施の形態による燃料電池システムは、燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、燃料電池から排出された燃料ガスを燃料電池に戻す燃料ガス循環流路と、燃料ガス循環流路内の燃料ガスの圧力値を計測する第3圧力計と、燃料ガス循環流路から燃料ガスを外部に排出する脱気流路と、脱気流路に設けられた脱気弁と、第3圧力計により計測された圧力値に基づいて、燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、を備えている。
【0012】
実施の形態による燃料電池システムは、燃料ガスが供給されて発電を行う燃料電池と、燃料電池システムの上位の制御システムに記憶された情報に基づいて、燃料電池システムの運転条件を変更する運転制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
実施の形態によれば、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施の形態による燃料電池システムを示す図である。
図2図2は、図1に示す脱気弁の開閉時間間隔を説明するための図である。
図3図3は、第2の実施の形態による燃料電池システムを示す図である。
図4図4は、図3に示す脱気弁の開閉時間間隔の変形例を説明するための図である。
図5図5は、第3の実施の形態による燃料電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、図1を用いて、第1の実施の形態による燃料電池システム1について説明する。本実施の形態による燃料電池システム1は、例えば、建物に設置されてもよく、あるいは移動体に搭載されてもよい。建物の例としては、マンション、オフィスビル、工場または商業施設等が挙げられる。この場合、燃料電池システム1の発電電力を、エレベータの駆動、建物内の照明や空調等で利用してもよい。移動体の例としては、船舶、自動車または鉄道車両等が挙げられる。この場合、燃料電池システム1の発電電力を、移動体の駆動、移動体内の照明や空調等で利用してもよい。
【0017】
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料タンク3と、燃料ガス供給流路4と、酸化剤ガス供給部5と、酸化剤ガス供給流路6と、酸化剤ガス排出流路8と、燃料ガス循環流路9と、脱気流路10と、電力変換装置11と、制御装置30と、を備えている。
【0018】
燃料電池2は、発電を行うことができるように構成されている。燃料電池2は、燃料タンク3から供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給部5から供給される酸化剤ガスとを用いて発電を行う発電装置である。燃料ガスとしては、水素ガス、水素ガスを含む混合ガス等が挙げられる。酸化剤ガスとしては空気等が挙げられる。より具体的には、燃料電池2は、図示しないが、燃料極(アノード)と、酸化剤極(カソード)と、燃料極と酸化剤極との間に介在された電解質膜と、を含んでいる。燃料極に供給された燃料ガスと、酸化剤極に供給された酸化剤ガスが、電解質膜を介して電気化学的に反応する。このようにして、化学エネルギが電気エネルギに変換されて、燃料電池2は発電を行うことができる。
【0019】
燃料タンク3は、燃料供給部の一例である。燃料タンク3は、燃料極に供給するための燃料ガスを貯留するように構成されている。燃料タンク3には、高圧の水素ガスまたは液体水素が貯留される。
【0020】
燃料ガス供給流路4は、燃料タンク3に貯留されている燃料ガスを燃料電池2の燃料極に供給する。燃料ガス供給流路4に、燃料ガス供給弁12、流量調整弁13、第1圧力計14および第2圧力計15が設けられていてもよい。燃料ガス供給弁12は、燃料タンク3から燃料極への燃料ガスの供給を制御する弁である。燃料ガス供給弁12は、燃料電池システム1の運転時に開いて、燃料ガスを燃料極に供給する。燃料ガス供給弁12は、制御装置30に制御されてもよい。
【0021】
流量調整弁13は、燃料電池2の燃料極への燃料ガスの供給流量を調整するための弁である。流量調整弁13の開度は、制御装置30の指令に基づいて調整される。制御装置30による開度指令値は、制御装置30に保存されている。流量調整弁13は、燃料ガス供給弁12の下流側に設けられていてもよい。流量調整弁13には、開度を制御可能なインジェクタ、比例電磁弁または比例電動弁等を用いてもよい。
【0022】
第1圧力計14は、燃料ガス供給流路4において流量調整弁13に流入する燃料ガスの圧力値P1を計測するように構成されている。圧力値P1は、流量調整弁13の入口圧力値に相当する。第1圧力計14は、燃料ガス供給流路4において流量調整弁13の上流側に設けられている。第1圧力計14は、燃料ガス供給弁12と流量調整弁13との間に設けられていてもよい。第1圧力計14により計測された圧力値P1は、制御装置30に送信される。
【0023】
第2圧力計15は、燃料ガス供給流路4において流量調整弁13から流出する燃料ガスの圧力値P2を計測するように構成されている。圧力値P2は、流量調整弁13の出口圧力値に相当する。第2圧力計15は、燃料ガス供給流路4において流量調整弁13の下流側に設けられている。第2圧力計15は、流量調整弁13と燃料電池2との間に設けられていてもよい。第2圧力計15により計測された圧力値P2は、制御装置30に送信される。
【0024】
酸化剤ガス供給部5は、酸化剤極に酸化剤ガスを供給するように構成されている。酸化剤ガス供給部5は、例えば、ブロワまたはコンプレッサで構成されていてもよい。
【0025】
酸化剤ガス供給流路6は、酸化剤ガス供給部5から燃料電池2の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する。酸化剤ガス供給流路6に、酸化剤ガス供給弁16が設けられていてもよい。酸化剤ガス供給弁16は、酸化剤ガス供給部5から酸化剤極への酸化剤ガスの供給を制御する弁である。酸化剤ガス供給弁16は、燃料電池システム1の運転時に開いて、酸化剤ガスを酸化剤極に供給する。酸化剤ガス供給弁16は、制御装置30に制御されてもよい。
【0026】
酸化剤ガス排出流路8は、燃料電池2の酸化剤極から排出された酸化剤ガスを外部に排出する。酸化剤ガス排出流路8に、酸化剤ガス排出弁18が設けられていてもよい。酸化剤ガス排出弁18は、酸化剤極から外部への酸化剤ガスの排出を制御する弁である。酸化剤ガス排出弁18は、燃料電池システム1の運転時に開いて、酸化剤ガスを酸化剤極から排出する。酸化剤ガス排出弁18は、制御装置30に制御されてもよい。
【0027】
燃料ガス循環流路9は、燃料電池2の燃料極から排出された燃料ガスを燃料電池2に戻すように構成されている。燃料ガス循環流路9の上流端は、上述した燃料電池2の燃料極に接続されていてもよく、燃料ガス循環流路9の下流端は、上述した燃料ガス供給流路4に接続されていてもよい。この場合、燃料極から排出された燃料ガスを、燃料ガス供給流路4に供給することができ、燃料ガスをリサイクルすることができる。燃料ガス循環流路9に、循環ブロワ19が設けられていてもよい。循環ブロワ19は、燃料極から燃料ガスを引き込むとともに、燃料ガスを燃料ガス供給流路4に送り込む。
【0028】
脱気流路10は、燃料ガス循環流路9から燃料ガスを外部に排出するように構成されている。脱気流路10には、脱気弁20が設けられていてもよい。
【0029】
脱気弁20は、燃料ガス循環流路9に設けられており、燃料ガス循環流路9から外部への燃料ガスの排出を制御する弁である。図2に示すように、脱気弁20は、所定の時間間隔t1で維持される閉状態と、所定の時間間隔t2で維持される開状態とが、繰り返されてもよい。
【0030】
図1に示すように、電力変換装置11は、燃料電池2の発電電力の電圧および電流を変換するための装置である。電力変換装置11により変換された電力は、外部の負荷に供給される。電力変換装置11は、DC/DCコンバータであってもよく、インバータであってもよい。電力変換装置11は、出力ライン21を介して燃料電池2に接続されている。出力ライン21に電流計22が設けられている。電流計22は、燃料電池2から出力された発電電力の電流値を計測するように構成されている。
【0031】
制御装置30は、判断部31と、運転制御部32と、を含んでいてもよい。制御装置30は、上述した、燃料ガス供給弁12、流量調整弁13、酸化剤ガス供給弁16、酸化剤ガス排出弁18、脱気弁20および電力変換装置11を制御するように構成されている。
【0032】
判断部31は、燃料電池2に供給される燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断するように構成されている。本実施の形態による判断部31は、燃料電池2への燃料ガス供給量と、燃料電池2における燃料ガス消費量と、に基づいて、不活性ガスの混入割合を判断する。
【0033】
より具体的には、判断部31は、燃料極に供給される燃料ガス供給量と、燃料電池2で消費された燃料ガス消費量と、を算出する。燃料ガス供給量は、第1圧力計14により計測された圧力値P1と、第2圧力計15により計測された圧力値P2と、流量調整弁13の開度θとに基づいて算出される。燃料ガス供給量Qinは、燃料ガスの比重をG、燃料ガスの温度をT、流量調整弁13の容量係数をCとすると、以下の式(1)により算出されてもよい。
【数1】
【0034】
燃料ガス消費量は、電流計22により計測された電流値に基づいて算出される。燃料ガス消費量は、発電電力の電流値に比例する。燃料ガス消費量Qcoは、燃料電池2の発電電流をI、燃料電池2のセルスタックのセル枚数をN、ファラデー数をFとすると、以下の式(2)により算出されてよい。
【数2】
【0035】
判断部31は、上述のように算出された燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差を算出する。この差が、所定の閾値よりも大きい場合、不活性ガスの混入割合が増えたと判断してもよい。
【0036】
燃料ガスへの不活性ガスの混入割合が増大するにつれて、燃料ガス供給量は増大し得る。より具体的には、窒素ガス若しくはヘリウムガスなどの不活性ガスの分子量は、水素ガスの分子量よりも大きい。このことにより、燃料ガスへの不活性ガスの混入割合が増大するにつれて、燃料ガスの比重が増大する。この場合、燃料ガスの圧力損失が増大し、流量調整弁13を通過する燃料ガスの流量が低下し、圧力値P1が低下する。制御装置30は、圧力値P1の低下を検出すると、燃料ガスの流量を増大させるために、流量調整弁13の開度を増大させる。その結果、式(1)で示す燃料ガス供給量Qinが増大する。
【0037】
このようにして、燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が大きくなり、この差に基づいて、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断することができる。この判断部31による判断に基づいて、燃料電池システム1の運転条件が変更され、燃料電池システム1の運転の継続が図られる。
【0038】
運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システム1の運転条件を変更する。例えば、運転制御部32は、不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池2の発電電流の上限値を調整するとともに、燃料供給量を調整するようにしてもよい。運転制御部32は、上述した電力変換装置11を制御することにより、不活性ガスの混入割合が増大した場合に燃料電池2の発電電流の上限値を低下させてもよい。また、運転制御部32は、流量調整弁13を制御することにより、不活性ガスの混入割合が増大した場合に燃料ガス供給量を低下させてもよい。
【0039】
次に、このような構成からなる本実施の形態による燃料電池システム1の運転方法について説明する。
【0040】
燃料電池システム1の運転を開始する前に、燃料タンク3に、燃料が補給される。例えば、まず、図1に示すように、燃料タンク3に、配管などの補給流路40の一端が接続される。続いて、補給流路40が、窒素ガスなどの不活性ガスでパージされる。その後、補給流路40の他端に補給タンク41が接続され、補給タンク41から燃料タンク3に燃料が補給される。燃料タンク3に供給された燃料には、不活性ガスが残留し得る。補給タンク41から燃料タンク3に補給される燃料は、液体状態の燃料であってもよく、気体状態の燃料であってもよい。燃料の補給が完了した後、燃料タンク3から、補給流路40および補給タンク41が取り外される。
【0041】
燃料の補給が完了した後、燃料電池システム1の運転を開始する。
【0042】
まず、燃料ガス供給弁12および酸化剤ガス供給弁16を開くとともに、酸化剤ガス供給部5および循環ブロワ19を駆動する。このことにより、燃料タンク3から燃料電池2の燃料極に燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス供給部5から燃料電池2の酸化剤極に酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスの供給流量は、制御装置30の指令に基づいて酸化剤ガス供給部5によって調整される。燃料極に供給された燃料ガスと、酸化剤極に供給された酸化剤ガスが、電解質膜を介して電気化学的に反応する。このことにより、化学エネルギが電気エネルギに変換され、燃料電池2は発電を行う。発電電力は燃料電池2から出力され、電力変換装置11において電圧および電流が変換される。発電電力は、電力変換装置11から負荷に供給される。
【0043】
燃料極を通過した燃料ガスは、燃料ガス循環流路9に引き込まれる。酸化剤極を通過した酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出弁18が開いているため、酸化剤ガス排出流路8から外部に排出される。
【0044】
燃料ガス循環流路9に流入した燃料ガスは、循環ブロワ19によって燃料ガス供給流路4に送り込まれ、再び燃料極に供給される。このようにして、燃料電池システム1の運転中、燃料ガスが循環し、燃料ガスがリサイクルされる。
【0045】
燃料電池システム1の運転中、制御装置30の判断部31が、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を判断し、電力制御部24が、その混入割合の判断に基づいて、燃料電池システム1の運転条件を変更する。
【0046】
より具体的には、第1圧力計14および第2圧力計15は、燃料ガス供給流路4内の燃料ガスの圧力値P1、P2を計測し、計測された圧力値が制御装置30に送信される。電流計22は、燃料電池2から出力される発電電力の電流値を計測し、計測された電流値は制御装置30に送信される。制御装置30の判断部31は、第1圧力計14により計測された圧力値P1と、第2圧力計15により計測された圧力値P2と、保存していた流量調整弁13の開度とに基づいて、燃料ガス供給量を算出する。また、判断部31は、電流計22により計測された電流値に基づいて、燃料ガス消費量を算出する。燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が、所定の閾値よりも大きい場合に、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が大きいと判断する。
【0047】
判断部31により不活性ガスの混入割合が大きいと判断された場合、運転制御部32は、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに、燃料ガス供給量を低下させる。例えば、運転制御部32は、発電電流の上限値を低下させるように電力変換装置11を制御するとともに、燃料ガス供給量を低下させるように流量調整弁13を制御する。このことにより、燃料電池システム1の燃料極に供給される燃料ガスの供給流量が低下するため、燃料極に蓄積される不活性ガスの蓄積速度を低下させることができ、燃料電池の性能低下を防止できる。
【0048】
その後、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が低下した場合には、判断部31は、不活性ガスの混入割合が大きくないと判断してもよい。より具体的には、上述した燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が、所定の閾値以下である場合には、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合は大きくないと判断してもよい。この場合、運転制御部は、燃料電池2の発電電流の上限値および燃料ガス供給量を元に戻してもよい。
【0049】
このように本実施の形態によれば、燃料電池2に供給される燃料ガス中の不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システム1の運転条件が変更される。このことにより、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が多い場合であっても、これに応じて燃料電池システム1の運転を適切に行うことができる。このため、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、判断部31は、燃料電池2への燃料ガス供給量と、燃料電池2における燃料ガス消費量と、に基づいて、不活性ガスの混入割合を判断する。このことにより、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を精度良く判断することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、判断部31は、第1圧力計14により計測された圧力値P1と、第2圧力計15により計測された圧力値P2と、流量調整弁13の開度とに基づいて、燃料ガス供給量を算出することができる。判断部31は、電流計22により計測された発電電流値に基づいて、燃料ガス消費量を算出することができる。算出された燃料ガス供給量と燃料ガス消費量とに基づいて、不活性ガスの混入割合を判断することができる。このことにより、不活性ガスの混入割合の判断精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池2の発電電流の上限値を調整するとともに、燃料ガス供給量を調整する。このことにより、不活性ガスの混入割合が増大した場合に、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに燃料ガス供給量を低下させることができる。このため、燃料極に蓄積される不活性ガスの蓄積速度を低下させることにより、燃料電池の性能低下を防止でき、燃料ガス中に不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0053】
ここで、燃料ガスに不活性ガスが混入することにより、燃料ガスの比重が増大し、燃料ガスの圧力損失が大きくなり得る。この場合、流量調整弁13における燃料ガスの調整範囲が縮小され、調整可能な最大流量値が低減し得る。これに対して本実施の形態によれば、運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに、燃料ガス供給量を低下させる。このことにより、燃料ガスの供給流量を低下させることができ、流量調整弁13における燃料ガスの調整範囲を拡大させることができる。
【0054】
また、不活性ガスが混入した燃料ガスが供給されると、燃料ガス供給流路4および燃料ガス循環流路9を含むアノード系への不活性ガスの蓄積速度が増大し得る。この場合、脱気弁20を開いて燃料ガスを外部に排出したとしても、不活性ガスの混入割合を低減して、燃料ガス中の水素濃度を所定の濃度に維持することは困難になり得る。これに対して本実施の形態によれば、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに、燃料ガス供給量を低下させる。燃料ガス供給量が低下するため、アノード系に蓄積される不活性ガスの蓄積速度を低下させることができ、脱気流路10における脱気処理によって、燃料ガス中の水素濃度を所定の濃度に維持することができる。
【0055】
なお、上述した本実施の形態においては、運転制御部32は、不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに、燃料供給量を低下させる例について説明した。しかしながら、本実施の形態はこのことに限られることはない。例えば、運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、脱気弁20を閉じている時間間隔t1(図2参照)を調整してもよい。
【0056】
例えば、運転制御部32は、判断部31が不活性ガスの混入割合が大きいと判断した場合、脱気弁20を閉じている時間間隔t1を短くしてもよい。このことにより、脱気弁20が開いている時間割合を増大させることができ、脱気流路10から効率良く燃料ガスを外部に放出することができる。このため、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を低減することができる。その後、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が低下した場合には、脱気弁20を閉じている時間間隔t1を元に戻してもよい。
【0057】
また、例えば、運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、脱気弁20が開いている時間間隔t2を調整してもよく、例えば、脱気弁20の開いている時間間隔t2を長くしてもよい。このことにより、脱気弁20が開いている時間割合を増大させることができ、脱気流路10から効率良く燃料ガスを外部に放出することができる。このため、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を低減することができる。その後、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が低下した場合には、脱気弁20の開いている時間間隔t2を元に戻してもよい。
【0058】
(第2の実施の形態)
次に、図3および図4を用いて、第2の実施の形態における燃料電池システムについて説明する。
【0059】
図3および図4に示す第2の実施の形態においては、第3圧力計により計測された圧力値に基づいて、脱気弁を閉じている時間間隔または脱気弁を開いている時間間隔を調整する点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3および図4において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
図3に示すように、本実施の形態による燃料電池システム1は、第3圧力計50を備えている。本実施の形態による燃料電池システム1は、上述した判断部31を備えていなくてもよい。
【0061】
第3圧力計50は、燃料ガス循環流路9において燃料ガスの圧力値を計測するように構成されている。第3圧力計50は、燃料ガス循環流路9において循環ブロワ19の下流側に設けられている。第3圧力計50は、循環ブロワ19と脱気流路10の分岐点との間に設けられていてもよい。第3圧力計50により計測された圧力値は、制御装置30に送信される。第3圧力計50は、循環ブロワ19の上流側に設けられていてもよい。
【0062】
本実施の形態による運転制御部32は、第3圧力計50により計測された圧力値P3に基づいて、脱気弁20を閉じている時間間隔t1(図2参照)を調整する。また、運転制御部32は、第3圧力計50により計測された圧力値P3に基づいて、脱気弁20を開いている時間間隔t2(図2参照)を調整してもよい。
【0063】
例えば、運転制御部32は、第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度に基づいて、脱気弁20を閉じている時間間隔t1を調整してもよい。圧力値P3の上昇速度が所定の閾値よりも大きい場合、脱気弁20を閉じている時間間隔t1を短くしてもよい。
【0064】
また、運転制御部32は、第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度が所定の閾値よりも大きい場合、脱気弁20を開いている時間間隔t2を調整してもよい。圧力値P3の上昇速度が所定の閾値よりも大きい場合、脱気弁20を開いている時間間隔t2を長くしてもよい。
【0065】
ここで、燃料ガスに不活性ガスが混入していない場合、酸化剤ガス供給流路6などを含むカソード系から、アノード系に酸化剤ガス中の窒素ガスがアノード系に移動する。このことにより、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が上昇し得る。この場合の不活性ガスの混入割合の上昇速度は比較的低い。一方、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合、カソード系からアノード系への窒素ガスの移動に加えて、不活性ガスが混入した燃料ガスが供給される。このため、アノード系における燃料ガス中の不活性ガスの混入割合の上昇速度が比較的高い。この場合、第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度が高まるため、燃料ガスに混入している不活性ガスの混入割合が増大する。第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度を監視することは、不活性ガスの混入割合の判断に効果的である。
【0066】
このように本実施の形態によれば、燃料ガス循環流路9に設けられた第3圧力計50により計測された圧力値P3に基づいて、燃料電池システム1の運転条件が変更される。このことにより、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が多い場合であっても、これに応じて燃料電池システム1の運転を適切に行うことができる。このため、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度に基づいて、脱気弁20を閉じている時間間隔t1が調整される。圧力値P3の上昇速度を用いることにより、酸化剤ガス中に含まれる不活性ガスの混入割合を、カソード系からアノード系に移動した窒素ガスと区別して判断することができる。このため、脱気弁20による脱気によって、燃料ガスに含まれる不活性ガスの混入割合を効果的に低減することができ、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、第3圧力計50により計測された圧力値P3の上昇速度に基づいて、脱気弁20を開いている時間間隔t2が調整される。圧力値P3の上昇速度を用いることにより、酸化剤ガス中に含まれる不活性ガスの混入割合を、カソード系からアノード系に移動した窒素ガスと区別して判断することができる。このため、脱気弁20による脱気によって、燃料ガスに含まれる不活性ガスの混入割合を効果的に低減することができ、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0069】
なお、上述した本実施の形態においては、運転制御部32は、燃料ガス循環流路9内の燃料ガスの圧力値P3の上昇速度に基づいて、脱気弁20を閉じている時間間隔t1が調整されるとともに脱気弁20を開いている時間間隔t2が調整される例について説明した。しかしながら、本実施の形態はこのことに限られることはない。運転制御部32は、燃料ガス循環流路9内の燃料ガスの圧力値P3に基づいて、脱気弁20を開閉してもよい。例えば、図4に示すように、第3圧力計50により計測された圧力値P3が所望の上限値Paに達した場合、脱気弁20を開く。このことにより、不活性ガスの混入割合が高い燃料ガスを脱気流路10から外部に排出することができる。燃料ガス循環流路9には、燃料タンク3から供給される燃料ガスが供給され、燃料ガス循環流路9内の燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を低減させることができる。不活性ガスの混入割合が低減すると、燃料ガスの圧力損失が低減し、圧力値P3が低下する。運転制御部32は、圧力値P3が所望の下限値Pbに達した場合、脱気弁20を閉じてもよい。このことにより、不活性ガスの混入割合が低い燃料ガスが脱気流路10から外部に排出することを防止できる。このようにして、圧力値P3を、上限値Paと下限値Pbとの間で調整することができ、燃料電池システム1の運転を適切に行って継続することができる。
【0070】
(第3の実施の形態)
次に、図5を用いて、第3の実施の形態における燃料電池システムについて説明する。
【0071】
図5に示す第3の実施の形態においては、燃料電池システムの上位の制御システムに記憶された情報に基づいて、燃料電池システムの運転条件を変更する点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
図5に示すように、制御装置30に、上位の制御システム60が接続されている。制御システム60は、制御装置30に、運転指令などの種々の指令を発する。この指令に基づいて、制御装置30は、燃料電池2の運転を制御する。また、制御システム60は、種々の情報を記憶しており、制御装置30は、燃料電池2の運転の制御に必要な情報を、制御システム60から取得している。本実施の形態による燃料電池システム1は、上述した判断部31を備えていなくてもよい。
【0073】
本実施の形態による運転制御部32は、制御システム60に記憶された情報に基づいて、燃料電池システム1の運転条件を変更する。制御システム60に記憶された情報には、上述した燃料タンク3に燃料を補給する際に行われたパージ処理のパージ終了時刻が含まれている。このパージ終了時刻を制御装置30が取得し、パージ終了時刻に基づいて、運転制御部32は、燃料電池システム1の運転条件を変更してもよい。例えば、運転制御部32は、パージ終了時刻から所定の経過期間が経過するまでの間、不活性ガスの混入割合が大きいと捉えて、燃料電池システム1の運転条件を変更してもよい。この経過期間は、任意に調整されてもよい。例えば、経過期間は、燃料電池2の発電が継続する期間として調整されていてもよく、または燃料電池2の発電電力量が所定の電力量に達するまでの期間であってもよい。例えば、経過期間は、パージ処理に用いたガスの種類に基づいて任意に調整されてもよく、パージガスによる置換回数に基づいて任意に調整されてもよい。
【0074】
この場合、運転制御部32は、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過するまでの間、燃料電池2の発電電流の上限値を低下させるとともに、燃料ガス供給量を低下させてもよい。このことにより、燃料電池2の燃料極に蓄積される不活性ガスの蓄積速度を低下させることにより、燃料電池の性能低下を防止できる。発電電流の上限値の低下率および燃料ガス供給量の低下率は、任意に調整されてもよい。例えば、パージ処理に用いたガスの種類またはパージガスによる置換回数に基づいて、発電電流の上限値の低下率および燃料ガス供給量の低下率は、任意に調整されてもよい。なお、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過した後では、運転制御部32は、発電電流の上限値および燃料ガス供給量を元に戻してもよい。
【0075】
あるいは、運転制御部32は、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過するまでの間、脱気弁20の閉じている時間間隔t1(図2参照)を短くしてもよい。このことにより、脱気弁20が開いている時間割合を増大させることができ、脱気流路10から効率良く燃料ガスを外部に放出することができる。このため、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合を低減することができる。さらに、運転制御部32は、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過するまでの間、脱気弁20の開いている時間間隔t2(図2参照)を長くしてもよい。なお、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過した後では、運転制御部32は、脱気弁20の閉じている時間間隔t1および開いている時間間隔t2を元に戻してもよい。
【0076】
このように本実施の形態によれば、燃料電池システム1の上位の制御システム60に記憶された情報に基づいて、燃料電池システム1の運転が制御される。このことにより、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が多い場合であっても、これに応じて燃料電池システム1の運転を適切に行うことができる。このため、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0077】
なお、上述した本実施の形態においては、燃料電池システム1が判断部31を備えていない例について説明した。しかしながら、本実施の形態はこのことに限られることはない。例えば、燃料電池システム1は、判断部31を備えていてもよい。
【0078】
一般に、燃料電池システム1は燃料ガスのリークを検知するために、燃料極への燃料ガス供給量と、燃料電池2の発電電流から算出される燃料ガス消費量との差を監視している。不活性ガスの分子量は、燃料ガスの分子量よりも大きいため、不活性ガスが混入することによって燃料極への燃料ガス供給量が過大に検知される。この場合、燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が過大評価されやすく、燃料ガスのリークが誤検知されやすくなる。
【0079】
このことに対処するために、判断部31は、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過するまでの間、燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が第1の閾値よりも大きい場合、不活性ガスの混入割合が増えたと判断してもよい。運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システム1の運転条件を上述と同様にして変更してもよい。燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が大きくないと判断した場合には、運転制御部32は、燃料電池システム1の運転条件を元に戻してもよい。上述の経過期間が経過した後には、判断部31は、燃料ガス供給量と燃料ガス消費量との差が第2の閾値よりも大きい場合、不活性ガスの混入割合が増えたと判断してもよい。この場合、運転制御部32は、同様に燃料電池システム1の運転条件を変更してもよい。第2の閾値は、第1の閾値よりも小さくてもよい。上述の経過期間が経過した後においても、燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が大きくないと判断した場合には、運転制御部32は、燃料電池システム1の運転条件を元に戻してもよい。このようにして、パージ終了時刻から上述の経過期間が経過するまでの間、判断部31が用いる第1の閾値を大きくすることにより、運転を継続することができる。
【0080】
また、燃料電池システム1が判断部31を備える場合の他の例について説明する。この場合、制御システム60に記憶された情報には、燃料ガス中の不活性ガスの濃度が含まれている。この不活性ガスの濃度を制御装置30が取得し、不活性ガスの濃度に基づいて、判断部31が、燃料電池2に供給される燃料ガス中の不活性ガスの混入割合が大きいか否かを判断してもよい。例えば、判断部31は、制御システム60に記憶された不活性ガスの濃度が、所定の閾値よりも大きい場合、不活性ガスの混入割合が増えたと判断してもよい。運転制御部32は、判断部31により判断された不活性ガスの混入割合に基づいて、燃料電池システム1の運転条件を変更してもよい。判断部31は、制御システム60に記憶された不活性ガスの濃度が、所定の閾値よりも大きくないと判断した場合には、運転制御部32は、燃料電池システム1の運転条件を元に戻してもよい。
【0081】
以上述べた実施の形態によれば、燃料ガスに不活性ガスが混入している場合であっても運転を継続することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1:燃料電池システム、2:燃料電池、9:燃料ガス循環流路、10:脱気流路、13:流量調整弁、14:第1圧力計、15:第2圧力計、20:脱気弁、22:電流計、30:制御装置、31:判断部、32:運転制御部、50:第3圧力計、60:制御システム
図1
図2
図3
図4
図5