(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013035
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】運転状況判定システム、及び運転状況判定方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240124BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240124BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114935
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康佑
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181DD07
5H181FF05
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】危険行為をしている車両等の移動体を適切に認識し、また、危険行為をする可能性が高い移動体を認識することを可能として、移動体の移動の安全性向上に寄与する。
【解決手段】運転状況判定システム1は、移動体50に設けられて、移動体50の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識部12と、移動体50の利用者Uが利用しているSNSにおける利用者Uの投稿情報を取得し、投稿情報に基づいて利用者Uの人格を推定する利用者人格推定部13と、危険運転潜在状況認識部12により認識された危険運転潜在状況と、利用者人格推定部13により推定された利用者Uの人格とに基づいて、移動体50が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定部14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識部と、
前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて前記利用者の人格を推定する利用者人格推定部と、
前記危険運転潜在状況認識部により認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定部により推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定部と、
を備える運転状況判定システム。
【請求項2】
前記危険運転潜在状況認識部は、前記危険運転潜在状況に対応した、前記移動体が危険運転を行っている可能性の高さを示す第1指標値を設定し、
前記利用者人格推定部は、推定した前記利用者の人格に対応した、前記利用者が前記移動体の危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを示す第2指標値を設定し、
前記危険運転判定部は、前記第1指標値と前記第2指標値を合算した危険運転指標値に基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する
請求項1に記載の運転状況判定システム。
【請求項3】
前記検出部には、前記移動体の加速度を検出する加速度センサが含まれ、
前記危険運転潜在状況認識部は、前記加速度センサにより所定レベル以上の減速が検出されたときに、前記移動体が前記危険運転潜在状況であると認識する
請求項1又は請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項4】
前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、
前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する
請求項1又は請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項5】
前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、
前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる攻撃性に関する語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する
請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項6】
前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、
前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する
請求項1又は請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項7】
前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、
前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する
請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項8】
前記危険運転判定部により前記移動体が危険運転を行っていると認識されたときに、前記移動体の情報を所定の情報提供先に提供する危険移動体情報提供部を備える
請求項1又は請求項2に記載の運転状況判定システム。
【請求項9】
コンピュータにより実行される運転状況判定方法であって、
移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識ステップと、
前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて、前記利用者の人格を推定する利用者人格推定ステップと、
前記危険運転潜在状況認識ステップにより認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定ステップにより推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定ステップと、
を含む運転状況判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転状況判定システム、及び運転状況判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両に搭載されたドライブレコーダーにより撮影された自車両の後方の撮影画像から、自車両の後方を走行する他車両による煽り運転を判定し、煽り運転が継続的である場合に、他車両に関する情報を自車両の運転者に提供するようにした運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、自車両の前方と後方の少なくとも一方の撮影画像を用いて、自車両の周囲に位置する車両の中から危険車両を検出し、検出された危険車両の情報を取得して記憶するようにした情報処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-112892号公報
【特許文献2】特開2020-57133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の運転支援装置では、自車両に備えられたカメラによる撮影画像のみによって煽り運転等の危険行為をする他車両が認識される。そのため、走行の安全性向上を鑑みると、危険運転を行っている車両を適切に認識することが難しい場合があり、また、危険運転を行う可能性が高い車両を認識する必要があることが課題である。
本願は、上記課題の解決のため、危険運転を行っている車両等の移動体を適切に認識し、また、危険運転を行う可能性が高い移動体を認識することを可能として、移動体の移動の安全性向上に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識部と、前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて前記利用者の人格を推定する利用者人格推定部と、前記危険運転潜在状況認識部により認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定部により推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定部と、を備える運転状況判定システムが挙げられる。
【0006】
上記運転状況判定システムにおいて、前記危険運転潜在状況認識部は、前記危険運転潜在状況に対応した、前記移動体が危険運転を行っている可能性の高さを示す第1指標値を設定し、前記利用者人格推定部は、推定した前記利用者の人格に対応した、前記利用者が前記移動体の危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを示す第2指標値を設定し、前記危険運転判定部は、前記第1指標値と前記第2指標値を合算した危険運転指標値に基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する構成としてもよい。
【0007】
上記運転状況判定システムにおいて、前記検出部には、前記移動体の加速度を検出する加速度センサが含まれ、前記危険運転潜在状況認識部は、前記加速度センサにより所定レベル以上の減速が検出されたときに、前記移動体が前記危険運転潜在状況であると認識する構成としてもよい。
【0008】
上記運転状況判定システムにおいて、前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する構成としてもよい。
【0009】
上記運転状況判定システムにおいて、前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる攻撃性に関する語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する構成としてもよい。
【0010】
上記運転状況判定システムにおいて、前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する構成としてもよい。
【0011】
上記運転状況判定システムにおいて、前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する構成としてもよい。
【0012】
上記運転状況判定システムにおいて、前記危険運転判定部により前記移動体が危険運転を行っていると認識されたときに、前記移動体の情報を所定の情報提供先に提供する危険移動体情報提供部を備える構成としてもよい。
【0013】
上記目的を達成するための第2態様として、コンピュータにより実行される運転状況判定方法であって、移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識ステップと、前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて、前記利用者の人格を推定する利用者人格推定ステップと、前記危険運転潜在状況認識ステップにより認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定ステップにより推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定ステップと、を含む運転状況判定方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
上記運転状況判定システムによれば、危険運転を行っている移動体を適切に認識し、また、危険運転を行う可能性が高い移動体を認識することを可能として、移動体の移動の安全性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、運転状況判定システムによる危険運転の判定態様の説明図である。
【
図2】
図2は、運転状況判定システムの構成図である。
【
図3】
図3は、運転状況判定処理の第1フローチャートである。
【
図4】
図4は、運転状況判定処理の第2フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.運転状況判定システムによる危険運転の判定態様]
図1を参照して、本実施形態の運転状況判定システム1による危険運転の判定態様について説明する。運転状況判定システム1は、通信ネットワーク200を介して複数の通信対象車両との間で定期的に通信を行い、各通信対象車両の挙動及び運転状況を認識する。
図1では、他車両60に対して危険運転を行っている可能性がある判定対象車両50について、危険運転を行っているか否かを判定する状況を例示している。判定対象車両50は、本開示の移動体に相当する。
【0017】
運転状況判定システム1は、通信ネットワーク200を介して、SNS(Social Networking Service)サーバー210、警察のシステム220、及び保険会社のシステム230等との間で通信を行う。
【0018】
判定対象車両50は、制御ユニット51を備えている。制御ユニット51は、判定対象車両50の位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ等の位置検出センサ、通信ネットワーク200を介した通信を行う通信ユニット、プロセッサ、及びメモリ等を有している。判定対象車両50の車室では、判定対象車両50の利用者により携帯端末52が使用されており、運転状況判定システム1は、携帯端末52との間でも通信を行う。携帯端末52は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ノートパソコン等である。
【0019】
図1は、判定対象車両50が、後方からの他車両60への急接近という危険運転を行っている状況を例示している。なお、危険運転としては、判定対象車両50による他車両60の前方への割り込み、判定対象車両50による他車両60の付近での蛇行運転等も挙げられる。
【0020】
この状況で、運転状況判定システム1は、判定対象車両50から送信される判定対象車両50の挙動又は運転状況のセンサ検出情報を受信して、判定対象車両50が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況であるか否かを判断する。そして、運転状況判定システム1は、判定対象車両50が危険運転潜在状況であると認識したときに、判定対象車両50の利用者が利用しているSNSにおける、利用者の投稿状況を示す投稿履歴情報に基づいて、判定対象車両50の利用者の人格を推定する。
【0021】
運転状況判定システム1は、判定対象車両50の制御ユニット51、携帯端末52、或いはSNSサーバー210から送信される、SNSの利用履歴を示す利用履歴情報を受信して取得する。そして、運転状況判定システム1は、利用履歴情報に含まれる投稿履歴情報に基づいて、判定対象車両50の利用者の人格を推定し、危険運転潜在状況と利用者の人格とに基づいて、判定対象車両50が危険運転を行っているか否かを判断する。
【0022】
このように、判定対象車両50の利用者の人格を考慮することにより、判定対象車両50が危険運転を行っているか否かを適切に判定すること、及び危険運転を行う可能性が高い判定対象車両50を認識することが可能となる。運転状況判定システム1は、危険運転を行っていると判定した判定対象車両50の情報を、判定対象車両50の制御ユニット51、判定対象車両50で使用されている携帯端末52、警察のシステム220、保険会社のシステム230等に送信し、これにより危険運転を行っている判定対象車両50の利用者に対して、注意喚起を行うと共に、警察のシステム22等による判定対象車両50への対応を可能としている。
【0023】
[2.運転状況判定システムの構成]
図2を参照して、運転状況判定システム1の構成について説明する。運転状況判定システム1は、プロセッサ10、メモリ20、通信部30等を備えるコンピュータシステムである。通信部30は、通信ネットワーク200を介して、通信対象車両(
図2では、判定対象車両50を例示)、及び他のシステム(
図2では、SNSサーバー210、警察のシステム220、及び保険会社のシステム230を例示)との間で通信を行う。
【0024】
メモリ20には、運転状況判定システム1の制御用のプログラム21と、判定対象車両50で使用されている携帯端末52又はSNSサーバー210から送信される利用履歴情報SNi(
図2では、利用履歴情報22として示している)が保存されている。プロセッサ10は、プログラム21を読み込んで実行することにより、移動体位置情報取得部11、危険運転潜在状況認識部12、利用者人格推定部13、危険運転判定部14、及び危険移動体情報提供部15として機能する。利用履歴情報SNiには、SNSにおける利用者の投稿状況を示す投稿履歴情報が含まれる。なお、後述するように、利用履歴情報SNiに、SNSにおいて利用者が閲覧した対象を示す閲覧対象履歴情報を含めてもよい。
【0025】
危険運転潜在状況認識部12により実行される処理は、本開示の運転状況判定方法における危険運転潜在状況認識ステップに相当し、利用者人格推定部13により実行される処理は、本開示の運転状況判定方法における利用者人格推定ステップに相当する。危険運転判定部14により実行される処理は、本開示の運転状況判定方法における危険運転判定ステップに相当する。
【0026】
移動体位置情報取得部11は、定期的に判定対象車両50から送信される移動体位置情報Pdを通信部30により受信して取得する。移動体位置情報Pdは、判定対象車両50に備えらえた位置検出センサにより検出される判定対象車両50の位置を示している。危険運転潜在状況認識部12は、判定対象車両50から送信されるセンサ検出情報Deiを受信して、センサ検出情報Deiに基づいて、判定対象車両50が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況であることを認識する。
【0027】
センサ検出情報Deiには、判定対象車両50に備えられて、判定対象車両50の挙動を検出するセンサ類(速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等)、及び判定対象車両50の運転操作を検出するセンサ類(ブレーキペダルセンサ、アクセルペダルセンサ、操舵角センサ等)による検出状況の情報が含まれる。
【0028】
危険運転潜在状況認識部12は、例えば、センサ類により検知される以下の状況を、危険運転潜在状況として認識する。
(1-1)判定対象車両50に備えられた加速度センサにより、所定レベル以上の減速度が検出された。
(1-2)判定対象車両50に備えられた速度センサにより検出される走行速度が、所定レベル以上急変した。
(1-3)判定対象車両50に備えられた操舵角センサにより検出される操舵角が、所定レベル以上急変した。
(1-4)判定対象車両50に備えられたブレーキペダルセンサにより、所定レベル以上の踏力が検出された。
【0029】
危険運転潜在状況認識部12は、認識した危険運転潜在状況の内容に応じて、判定対象車両50が危険運転を行っている可能性の高さを示す第1指標値を設定する。危険運転潜在状況認識部12は、危険運転潜在状況から推定される判定対象車両50が危険運転を行っている可能性が高いほど、第1指標値の値を大きく設定する。例えば、危険運転潜在状況認識部12は、危険運転潜在状況の内容に応じて、1~10の10段階の値を第1指標値として設定する。具体的には、危険運転潜在状況認識部12は、例えば、上記(1-1)の危険運転潜在状況に対して第1指標値を10に設定し、上記(1-2)の危険運転潜在状況に対して第1指標値を8に設定する。
【0030】
利用者人格推定部13は、判定対象車両50の利用者Uの人格を、携帯端末52或いはSNSサーバー210から送信される利用履歴情報SNiに含まれる投稿履歴情報に基づいて推定する。具体的には、利用者人格推定部13は、以下の(2-1)~(2-3)の処理により、利用者Uの攻撃的な性格の程度を示す第2指標値を算出する。なお、判定対象車両50の利用者Uには、運転者の他に同乗者も含まれる。
【0031】
攻撃性指標値の算出処理。
(2-1)利用者人格推定部13は、投稿履歴情報に含まれる、利用者UがSNSで投稿した文章から、攻撃性に関する語彙を抽出する。メモリ20には、攻撃性に関する語彙のリストが予め保存されており、利用者人格推定部13はこのリストを参照して、利用者Uが投稿した文章に含まれる攻撃性に関する語彙を抽出する。攻撃性に関する語彙には、侮蔑的な語彙、乱暴な語彙等が含まれる。そして、利用者人格推定部13は、抽出された攻撃性に関する語彙の数が多いほど、また、文章全体に占める攻撃性に関する語彙の割合が高いほど、数値を大きく設定した第2-1指標値を算出する。また、攻撃性に関する語彙が有する攻撃性の強さの印象に応じて、各語彙に重み付けを行って第2-1指標値を算出してもよい。
(2-2)利用者人格推定部13は、投稿履歴情報に含まれる、利用者UがSNSで文書を投稿した対象を抽出する。そして、利用者人格推定部13は、利用者Uが攻撃性に関する対象に投稿していた場合に、対象の攻撃性のレベルが高いほど、また、複数の対象に投稿している場合の攻撃性に関する対象の割合が高いほど、数値を大きく設定した第2-2指標値を算出する。また、攻撃性に関する対象が有する攻撃性の強さの度合に応じて、各対象に重み付けを行って第2-2指標値を算出してもよい。
(2-3)利用者人格推定部13は、第2-1指標値と第2-2指標値との加算値を第2指標値として算出する。
第2指標値は、利用者Uの攻撃的な性格の強さを示し、第2指標値が大きいほど、利用者Uが、判定対象車両50による危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性が高くなると想定される。
【0032】
また、利用者人格推定部13による人格の推定を、以下の判断要素(3-1)~(3-4)を用いて行うようにしてもよい。
(3-1)人格推定の対象利用者について、攻撃的或いは公的秩序良俗に反する内容を含むコンテンツ(動画や投稿)に対して、「いいね」や「保存」の操作を行った場合、他者への共有・拡散などに賛同する操作が多い場合、或いは、視聴傾向が極端に攻撃的又は公的秩序良俗に反する内容を含むコンテンツに偏重している場合に、対象利用者の攻撃性が強いと判断する。
(3-2)対象利用者について、不特定多数の信条や出自、人種、その他個人的な属性を貶めるような内容の投稿やそれに類する行為、またはこれらに類似する内容に対して「いいね」や「保存」の操作を行った場合、或いは他者への共有・拡散などの賛同に相当する行為が多く見受けられる場合に、対象利用者の基本的な性格傾向のうち、一般的な数値と比較して「外向性」「開放性」が強く顕出していると評価し、比較的享楽的に刺激を求める傾向があると仮定し、「自己の外部的刺激欲求のために短絡的な手法を選択する可能性が高い人間」であると推定する。
(3-3)上記(3-2)の場合、基本的性格傾向のうち「協調性」「誠実性」が比較的低いものと判定し、「法令遵守意識、正義感が低く、論理的正当性を持って事象を判断する能力に乏しく、自己中心的な思考や振る舞いを起こしやすい人間」であると推定する。
(3-4)対象利用者の攻撃性を評価するための対象語彙に関しては、投稿された内容(記事投稿や返信等のやりとり)の文章に対して形態素を解析して、感情分析を行ってもよい。あおり運転等の危険運転をしやすい利用者の形態素分析のパターンと、ノーマルな利用者の形態素分析のパターンを比較することで、危険運転を起こし易い人格かどうかを数値的に評価してもよい。
【0033】
危険運転判定部14は、危険運転潜在状況認識部12により設定された第1指標値と、利用者人格推定部13により算出された第2指標値とを合算して、危険運転指標値を算出する。この場合、第1指標値と第2指標値に重み付けを行って、危険運転指標値を算出してもよい。
【0034】
危険運転判定部14は、危険運転指標値が所定の判定値以上であるときに、判定対象車両50が危険運転を行っていると判定する。危険移動体情報提供部15は、危険運転判定部14により危険運転を行っていると判定された判定対象車両50の情報を、判定対象車両50の制御ユニット51、携帯端末52、警察のシステム220、保険会社のシステム230等の情報提供先に、通信部30により送信する。送信される判定対象車両50の情報には、判定対象車両50の登録番号、車種、利用者Uの情報、移動体位置情報取得部11により取得された移動体位置情報Pdに基づく判定対象車両50の現在位置等が含まれる。
【0035】
[3.運転状況判定処理]
図3,
図4に示したフローチャートに従って、
図1に示した状態において、運転状況判定システム1により実行される運転状況判定処理の手順について説明する。
【0036】
図3のステップS1で、危険運転潜在状況認識部12は、判定対象車両50から送信されるセンサ検出情報Deiを、通信部30により受信して取得したときに、ステップS2に処理を進める。ステップS2で、危険運転潜在状況認識部12は、上述したように、センサ類による検出状況に基づいて、判定対象車両50が危険運転潜在状況であるか否かを認識する。
【0037】
続くステップS3で、危険運転潜在状況認識部12は、判定対象車両50が危険運転潜在状況であると認識したときはステップS4に処理を進め、判定対象車両50が危険運転潜在状況でないと認識したときには
図4のステップS15に処理を進める。次のステップS4で、危険運転潜在状況認識部12は、上述したように、危険運転潜在状況に応じた第1指標値を設定する。
【0038】
続くステップS5で、利用者人格推定部13は、判定対象車両50の利用者Uが利用しているSNSにおける、利用者Uの投稿状況を示す投稿履歴情報を含む利用履歴情報SNiを、通信部30により受信して取得し、メモリ20に保存する。次のステップS6で、利用者人格推定部13は、利用者UがSNSで投稿した文章を解析する。
【0039】
続くステップS7で、利用者人格推定部13は、利用者Uが投稿した文章に、攻撃性に関する語彙が含まれるときはステップS20に処理を進め、攻撃性に関する語彙が含まれていないときにはステップS8に処理を進める。ステップS20で、利用者人格推定部13は、上述したように、文章に含まれる攻撃性に関する語彙の数、文章に占める攻撃性に関する語彙の割合等に基づいて、第2-1指標値を設定し、
図2のステップS9に処理を進める。また、ステップS8で、利用者人格推定部13は、第2-1指標値を0とする。
【0040】
図4のステップS9で、利用者人格推定部13は、利用者UがSNSで投稿した対象を解析する。投稿した対象には、利用者Uが参加したトークテーマ、利用者Uが閲覧した画像や文書等が含まれる。
【0041】
続くステップS10で、利用者人格推定部13は、利用者Uが攻撃性に関する対象に投稿したか否かを判断する。そして、利用者人格推定部13は、利用者Uが攻撃性に関する対象に投稿したときはステップS30に処理を進め、利用者Uが攻撃性に関する対象に投稿したときにはステップS11に処理を進める。ステップS30で、利用者人格推定部13は、利用者Uが投稿した対象の攻撃性のレベルに応じて第2-2指標値を設定し、ステップS12に処理を進める。また、ステップS11で、利用者人格推定部13は、第2-2指標値を0とする。
【0042】
ステップS12で、利用者人格推定部13は、第2-1指標値と第2-2指標値の合計値を第2指標値として算出する。次のステップS13で、危険運転判定部14は、第1指標値と第2指標値を合算して危険運転指標値を算出する。続くステップS14で、危険運転判定部14は、危険運転指標値が閾値以上であるか否かを判断する。そして、危険運転判定部14は、危険運転指標値が閾値以上であるときはステップS40に処理を進め、危険運転指標値が閾値未満であるときにはステップS15に処理を進める。
【0043】
ステップS40で、危険運転判定部14は、判定対象車両50が危険運転を行っていると認識する。次のステップS41で、危険移動体情報提供部は、危険運転判定部14により危険運転を行っていると判定された判定対象車両50の情報を、判定対象車両50の制御ユニット51、判定対象車両50の利用者Uが使用している携帯端末52、警察のシステム220、保険会社のシステム230等の情報提供先に送信して、ステップS15に処理を進める。
【0044】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、本開示の移動体として判定対象車両50を例示したが、本開示の移動体は、危険運転を行う可能性がある移動体であればよく、飛行体、船舶等であってもよい。
【0045】
上記実施形態では、利用者人格推定部13は、SNSにおいて投稿された文書に含まれる語彙に基づく第2-1指標値と、SNSにおける投稿対象に基づく第2-2指標値とに基づいて、第2指標値を設定して判定対象車両50の利用者Uの人格を推定した。他の実施形態として、投稿された文書に含まれる語彙と投稿対象のいずれか一方のみに基づいて、判定対象車両50の利用者Uの人格を推定するようにしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、利用者人格推定部13は、SNSにおける投稿文書に含まれる攻撃性に関する語彙、又はSNSにおける攻撃性に関すると投稿対象に基づいて、判定対象車両の利用者の人格を推定した。他の実施形態として、移動体による危険行為に影響すると想定される攻撃性以外の要素(気の短さ、落ち着きのなさ、情緒の不安定さ等)に基づいて、判定対象車両の利用者の人格を推定するようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、利用者人格推定部13は、利用履歴情報22に含まれる投稿履歴情報に基づいて、判定対象車両の利用者の人格を推定した。他の実施形態として、利用履歴情報22にSNSにおける利用者の過去の閲覧対象に関する閲覧対象履歴情報が含まれる構成として、利用者人格推定部13が、閲覧対象履歴情報から認識される利用者が閲覧した対象に基づいて、利用者の人格を推定するようにしてもよい。さらに、利用者が閲覧した対象が攻撃性に関する対象である場合に、利用者が車両による危険行為を起こし易い所定人格を有していると推定するようにしてもよい。
【0048】
なお、
図2は、本願発明の理解を容易にするために、運転状況判定システム1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、運転状況判定システム1の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、
図3,
図4に示したフローチャートによる各構成要素の処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0049】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
(構成1)移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識部と、前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて前記利用者の人格を推定する利用者人格推定部と、前記危険運転潜在状況認識部により認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定部により推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定部と、を備える運転状況判定システム。
構成1の運転状況判定システムによれば、移動体が危険運転潜在状況であることを認識すると共に、移動体の利用者の人格を推定することにより、危険行為をしている移動体を適切に認識し、また、危険行為をする可能性が高い移動体を認識することを可能として、移動体の移動の安全性向上に寄与することができる。
【0050】
(構成2)前記危険運転潜在状況認識部は、前記危険運転潜在状況に対応した、前記移動体が危険運転を行っている可能性の高さを示す第1指標値を設定し、前記利用者人格推定部は、推定した前記利用者の人格に対応した、前記利用者が前記移動体の危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを示す第2指標値を設定し、前記危険運転判定部は、前記第1指標値と前記第2指標値を合算した危険運転指標値に基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する構成1に記載の運転状況判定システム。
構成2の運転状況判定システムによれば、危険運転潜在状況から想定される危険運転行為が行われている可能性の高さと、推定された利用者の人格から想定される利用者が危険行為を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを、数値化することにより、移動体が危険運転を行っているか否かを客観的に判定することができる。
【0051】
(構成3)前記検出部には、前記移動体の加速度を検出する加速度センサが含まれ、前記危険運転潜在状況認識部は、前記加速度センサにより所定レベル以上の減速が検出されたときに、前記移動体が前記危険運転潜在状況であると認識する構成1又は構成2に記載の運転状況判定システム。
構成3の運転状況判定システムによれば、移動体が急減速をして危険行為を行ったことが推定される加速度センサの検出情報から、危険運転潜在状況を認識することができる。
【0052】
(構成4)前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する構成1から構成3のうちいずれか1項に記載の運転状況判定システム。
構成4の運転状況判定システムによれば、利用者がSNSで投稿した文章に含まれる語彙又は投稿した対象(トークテーマ、写真、映像等)が持つ意味や語彙が用いられる状況等から想起される印象によって、利用者の人格を推定することができる。
【0053】
(構成5)前記利用履歴情報には前記投稿履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した文章に含まれる攻撃性に関する語彙、又は前記投稿履歴情報から認識される前記利用者が投稿した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する構成2に記載の運転状況判定システム。
構成5の運転状況判定システムによれば、攻撃性に関する語彙を含む文章を投稿、又は攻撃性に関する対象に投稿した利用者について、攻撃性に関する語彙に基づいて、移動体の危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを示す第2指標値を設定することができる。
【0054】
(構成6)前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した対象に基づいて、前記利用者の人格を推定する構成1から構成5のうちいずれか1つの構成に記載の運転状況判定システム。
構成6の運転状況判定システムによれば、利用者がSNSで閲覧した対象(トークテーマ、写真、映像等)から想起される印象等によって、利用者の人格を推定することができる。
【0055】
(構成7)前記利用履歴情報には前記閲覧対象履歴情報が含まれ、前記利用者人格推定部は、前記閲覧対象履歴情報から認識される前記利用者が閲覧した攻撃性に関する対象に基づいて、前記第2指標値を設定する構成2に記載の運転状況判定システム。
構成7の運転状況判定システムによれば、攻撃性に関する対象を閲覧した利用者について、移動体の危険運転を生じさせる運転操作を行う可能性の高さを示す第2指標値を設定することができる。
【0056】
(構成8)前記危険運転判定部により前記移動体が危険運転を行っていると認識されたときに、前記移動体の情報を所定の情報提供先に提供する危険移動体情報提供部を備える構成1から構成7のうちいずれか1つの構成に記載の運転状況判定システム。
構成8の運転状況判定システムによれば、危険運転を行っていると認識された移動体の情報を提供することにより、移動体の移動の安全性の向上を図ることができる。
【0057】
(構成9)コンピュータにより実行される運転状況判定方法であって、移動体に設けられて、前記移動体の挙動又は運転状況を検出する検出部による検出状況に基づいて、前記移動体が危険運転を行っている可能性がある危険運転潜在状況を認識する危険運転潜在状況認識ステップと、前記移動体の利用者が利用しているSNS(Social Networking Service)における前記利用者の投稿履歴情報又は閲覧対象履歴情報を含む利用履歴情報を取得し、前記利用履歴情報に基づいて、前記利用者の人格を推定する利用者人格推定ステップと、前記危険運転潜在状況認識ステップにより認識された前記危険運転潜在状況と、前記利用者人格推定ステップにより推定された前記利用者の人格とに基づいて、前記移動体が危険運転を行っているか否かを判定する危険運転判定ステップと、を含む運転状況判定方法。
構成9の運転状況判定方法をコンピュータにより実行することによって、構成1の運転状況判定システムと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…運転状況判定システム、10…プロセッサ、11…移動体位置情報取得部、12…危険運転潜在状況認識部、13…利用者人格推定部、14…危険運転判定部、15…危険移動体情報提供部、20…メモリ、21…プログラム、22…利用履歴情報、30…通信部、50…判定対象車両(移動体)、51…制御ユニット、52…携帯端末、60…他車両、200…通信ネットワーク、210…SNSサーバー、220…警察のシステム、230…保険会社のシステム、U…判定対象車両の利用者。