(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130364
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水回りシステム
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20240920BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20240920BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A47K17/00
E03D5/10
H01Q1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040040
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻田 正実
(72)【発明者】
【氏名】家令 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】中田 雅也
【テーマコード(参考)】
2D037
2D039
5J047
【Fターム(参考)】
2D037EA00
2D037EB00
2D039AA02
2D039AA04
2D039DB00
2D039FD00
5J047AB01
5J047EF03
(57)【要約】
【課題】複数の水回り機器に対して1つの送電部によって電力を供給する場合でも水回り機器の動作不良の発生を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る水回りシステムは、送電部と、複数の水回り機器とを備える。送電部は、マイクロ波信号を送信する。複数の水回り機器は、トイレ空間に設置され、送電部から送信されたマイクロ波信号を変換して得られた電力で動作する。送電部は、複数の水回り機器のそれぞれが送電部から送信されたマイクロ波信号から得る単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波信号を送信する送電部と、
トイレ空間に設置され、前記送電部から送信されたマイクロ波信号を変換して得られた電力で動作する複数の水回り機器と
を備え、
前記送電部は、前記複数の水回り機器のそれぞれが前記送電部から送信されたマイクロ波信号から得る単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である
ことを特徴とする水回りシステム。
【請求項2】
前記単位時間あたりの電力量の割合は、前記送電部から送信されるマイクロ波信号の送信方向および/または電力強度で調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の水回りシステム。
【請求項3】
前記送電部は、前記複数の水回り機器の情報に基づいて、前記単位時間あたりの電力量の割合を調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の水回りシステム。
【請求項4】
前記複数の水回り機器は、それぞれ動作情報を前記送電部へ送信可能であり、
前記送電部は、前記複数の水回り機器の動作情報に応じて、前記単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の水回りシステム。
【請求項5】
前記送電部は、前記複数の水回り機器の2種類以上の情報に応じて、送信するマイクロ波信号の送信方向の順番を設定可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の水回りシステム。
【請求項6】
前記水回り機器は、前記送電部から送信されたマイクロ波信号を受信し、受信したマイクロ波信号を電力に変換する受電部と、
前記受電部によって変換された電力で駆動する負荷と、
前記負荷への電力供給を制御する制御部と
を備え、
前記受電部と前記制御部とがハーネスを介して電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の水回りシステム。
【請求項7】
前記送電部から送信されたマイクロ波信号を受信し、受信したマイクロ波信号を電力に変換する受電部
をさらに備え、
前記受電部は、前記複数の水回り機器と電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の水回りシステム。
【請求項8】
前記受電部は、前記制御部と比べて前記送電部により近い位置に配置される
ことを特徴とする請求項6に記載の水回りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水回りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電部から送信されたマイクロ波信号が変換されて得られる電力を供給するいわゆる無線給電を行う水回りシステムにおいて、1つの送電部から送信されたマイクロ波信号によって複数の便器などの水回り機器へ電力を供給する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パブリック用などのトイレ空間に設置される水回り機器は、設置される位置、水回り機器の機能の違いなどによって消費電力が異なる。また、1つの送電部から同時に電力を供給できる電力量の総量には上限がある。
【0005】
このため、上記の従来技術のように、1つの送電部から複数の水回り機器へマイクロ波信号を送信する場合に、複数の水回り機器に対して電力量が均一となるようにマイクロ波信号を送信すると、複数の水回り機器のうち一部で電力が不足して動作不良が発生するおそれがあった。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の水回り機器に対して1つの送電部によって電力を供給する場合でも水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる水回りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る水回りシステムは、マイクロ波信号を送信する送電部と、トイレ空間に設置され、前記送電部から送信されたマイクロ波信号を変換して得られた電力で動作する複数の水回り機器とを備え、前記送電部は、前記複数の水回り機器のそれぞれが前記送電部から送信されたマイクロ波信号から得る単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である。
【0008】
このような構成によれば、送電部は、複数の水回り機器に対して、水回り機器の状況などに応じて判断された優先順位に基づいた最適な電力量バランスでマイクロ波信号を送信することができるようになる。これにより、複数の水回り機器に対して1つの送電部によって電力を供給する場合でも水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0009】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記単位時間あたりの電力量の割合は、前記送電部から送信されるマイクロ波信号の送信方向および/または電力強度で調整される。
【0010】
このような構成によれば、1つの送信部による簡単な構成で単位時間あたりの電力量の割合を調整することができ、これにより、水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0011】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記送電部は、前記複数の水回り機器の情報に基づいて、前記単位時間あたりの電力量の割合を調整する。
【0012】
このような構成によれば、送電部が、水回り機器の優先順位を判断し、判断した優先順位に基づいて電力量バランスを調整する。これにより、施工者の負担を軽減しつつ水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0013】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記複数の水回り機器は、それぞれ動作情報を前記送電部へ送信可能であり、前記送電部は、前記複数の水回り機器の動作情報に応じて、前記単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である。
【0014】
このような構成によれば、複数の水回り機器が設置されたトイレ空間における動作状態に応じて、単位時間あたりの電力量の割合を逐次調整することができる。これにより、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0015】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記送電部は、前記複数の水回り機器の2種類以上の情報に応じて、送信するマイクロ波信号の送信方向の順番を設定可能である。
【0016】
このような構成によれば、送電部が複数の水回り機器の2種類以上の情報から単位時間あたりの電力量の割合を調整するため、より実状に適した調整が可能となり、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0017】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記水回り機器は、前記送電部から送信されたマイクロ波信号を受信し、受信したマイクロ波信号を電力に変換する受電部と、前記受電部によって変換された電力で駆動する負荷と、前記負荷への電力供給を制御する制御部とを備え、前記受電部と前記制御部とがハーネスを介して電気的に接続される。
【0018】
このような構成によれば、受電部と制御部とがハーネスで接続されることで両者を物理的に分離して配置することができるようになるため、受電部を所定の場所にまとめて配置することができる。これにより、単位時間あたりの電力量の割合を調整する水回り機器の母数を減らすことができ、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0019】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記送電部から送信されたマイクロ波信号を受信し、受信したマイクロ波信号を電力に変換する受電部をさらに備え、前記受電部は、前記複数の水回り機器と電気的に接続される。
【0020】
このような構成によれば、マイクロ波信号を受信する受電部の数を減らして単位時間あたりの電力量の割合を調整する水回り機器の母数を減らすことができる。これにより、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0021】
また、上記の水回りシステムにおいて、前記受電部は、前記制御部と比べて前記送電部により近い位置に配置される。
【0022】
このような構成によれば、送電部の電波を受信しやすい配置で受電部を設置することができる。これにより、受電不良となる可能性をより低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
実施形態の一態様に係る水回りシステムによれば、複数の水回り機器に対して1つの送電部によって電力を供給する場合でも水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水回りシステムが設置されたトイレ空間を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る水回りシステムが備える水回り機器の1種である手洗器の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る水回りシステムが備える水回り機器の1種である大便器の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る水回りシステムが備える水回り機器の1種である小便器の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る水回りシステムが備える水回り機器における無線給電の概要を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その1)の説明図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その2)の説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その3)の第1説明図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その4)の第2説明図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その5)の説明図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る水回りシステムにおける優先順位のパラメータ(その6)の説明図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る水回りシステムの構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る水回りシステムの構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係る水回りシステムの構成の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、送電部の送電電力と受電側の受電電力とが異なる場合の電力の調整の一例の説明図である。
【
図16】
図16は、優先順位をつける場合の情報の重みの一例の説明図である。
【
図17】
図17は、受電部および制御部のハーネス接続の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水回りシステムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
<第1実施形態>
まず、
図1を参照して第1実施形態に係る水回りシステム1が設置されたトイレ空間TRについて説明する。
図1は、第1実施形態に係る水回りシステム1が設置されたトイレ空間TRを示す図である。
【0027】
図1に示すように、たとえば、パブリック用のトイレ空間TRには、水回りシステム1が備える水回り機器10の1種である、たとえば、手洗器11、大便器12および小便器13が設置される。手洗器11、大便器12および小便器13は、トイレ空間TRにおける所定の場所へそれぞれ複数設置される。
【0028】
また、トイレ空間TRには、各水回り機器10(11,12,13)に備えられる後述する受電部31へ向けた無線給電を行い、負荷35(
図5参照)へ給電を行うための送電部20が設置される。送電部20は、たとえば、トランスミッターのような電波方式の無線送信機であり、信号を電波(マイクロ波信号)として送信する。送電部20は、たとえば、トイレ空間TRの天井などに設置される。なお、「マイクロ波」とは、たとえば、300MHz以上300GHz以下の波長の電波である。
【0029】
次に、
図2~4を参照して第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10の一例について説明する。
図2は、第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10の1種である手洗器11の一例を示す図である。
図3は、第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10の1種である大便器12の一例を示す図である。
図4は、第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10の1種である小便器の一例を示す図である。
【0030】
図2に示すように、水回り機器10の1種である手洗器11は、対象物(人体や物体など)を検知して自動的な吐止水を行う。手洗器11は、洗面台に備え付けられる洗面器B1に対して吐止水する。
【0031】
洗面器B1は、洗面カウンタ50の下面に設けられる。洗面カウンタ50の上方には、洗面器B1のボウル面BS1に対して水を吐出するためのスパウトを構成する吐水部11aが設けられる。吐水部11aは、水を吐出する吐水口11aaを有し、吐水口11aaから吐出される水が洗面器B1のボウル面BS1へ吐出されるように設けられる。
【0032】
吐水部11aが吐水口11aaから吐出する水は、給水路11cから供給される。給水路11cは、水道管などの給水源から供給される水を吐水口11aaへと導く。洗面器B1には、排水路11dが接続される。排水路11dは、吐水口11aaから洗面器B1のボウル面BS1へと吐水された水を排出する。
【0033】
また、手洗器11は、制御部34と、センサ部351と、電磁弁352とを備える。制御部34は、たとえば、検知信号に基づいて、対象物の位置や動きなどを検知する。制御部34は、検知結果に基づいて電磁弁352の開閉動作を制御する。また、制御部34は、センサ部351に対して制御信号を出力して、センサ部351のセンシング動作を制御する。
【0034】
なお、制御部34は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部(図示せず)をはじめ、各種プログラムや必要なデータ類が記憶される、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部などを備える。
【0035】
センサ部351は、センサ部351に内蔵されたセンサによって吐水口11aaに接近する使用者の手などの対象物を検知する。この場合、吐水口11aaの吐水先が、センサ部351の検知領域となる。センサ部351は、たとえば、光信号を送信し、送信した光信号を受けた人体などの対象物から反射した反射信号を受信することによって、対象物の位置や動きなどを検知する。
【0036】
なお、センサ部351のセンサは、たとえば、赤外光の光信号を用いた光センサである。センサから送信される光信号は、たとえば、可視光でもよい。なお、「赤外光」とは、たとえば、0.7μm以上1000μm以下の波長の光である。また、センサには、たとえば、超音波センサやマイクロ波センサなどを用いてもよい。
【0037】
センサ部351は、吐水部11aの吐水口11aa近傍の内部に設けられ、洗面台の使用者側(
図2における左側)へ向けて光信号を送信するように配置される。これにより、センサ部351は、吐水口11aaに人体が近づいてきたことや、吐水口11aaに近づいた人体から吐水口11aaへ向けて手が差し出されたことなどが検知可能である。
【0038】
センサ部351は、対象物の検知結果を示す検知信号を制御部34へ入力する。制御部34は、センサ部351から入力された検知信号に基づいて、対象物の有無を検知する。
【0039】
電磁弁352は、給水路11cに設けられ、給水路11cの開閉を行う。電磁弁352が開くと、給水路11cから供給された水が吐水口11aaから吐出され、電磁弁352が閉じると、給水路11cから供給された水の吐水口11aaからの吐出を止める。
【0040】
電磁弁352は、制御部34と接続されており、制御部34は、電磁弁352を駆動して電磁弁352の開閉動作を制御する。電磁弁352は、制御部34からの制御信号によって電気的に制御され、給水路11cを開閉する。このように、電磁弁352は、吐水口11aaから吐出される水の給水路11cを開閉する給水バルブとして機能する。
【0041】
なお、電磁弁352は、いわゆるラッチング・ソレノイド・バルブと称される自己保持型電磁弁(ラッチ式電磁弁)であり、ソレノイドコイルへの一方向への通電によって閉じた状態から開いた状態へ切り替わり、その後、ソレノイドコイルへの通電を遮断しても開いた状態を保持し、ソレノイドコイルへの他方向への通電によって、開いた状態から閉じた状態へ切り替わり、その後、ソレノイドコイルへの通電を遮断しても閉じた状態を保持する。
【0042】
また、手洗器11は、制御部34、センサ部351および電磁弁352などへ電力を供給可能な電源(バックアップ電源)の1つとして、水力発電機を備えてもよい。水力発電機は、たとえば、吐水部11aと電磁弁352との間の給水路12cに設けられ、電磁弁352を開いた場合に、給水路11cを流れる水の流れを利用して発電を行う。
【0043】
また、手洗器11は、制御部34、センサ部351および電磁弁352などへ電力を供給可能なバックアップ電源の1つとして、AC電源や乾電池などの電池(図示せず)を備えてもよい。
【0044】
図3に示すように、水回り機器10の1種である大便器12は、凹状のボウル部B2と、ボウル部B2のボウル面BS2へ洗浄水を吐出する吐水口(図示せず)とを備える。大便器12は、給水路12cを介して供給された洗浄水を吐水口からボウル部B2へ吐出することで、ボウル部B2へ排泄された汚物などを洗い流す。なお、図示の例では、大便器12は、洋式大便器である。
【0045】
大便器12は、制御部34と、センサ部351と、電磁弁352とを備える。なお、大便器12において、上記の手洗器11と機能や構成が実質的に同じものについては、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
なお、大便器12は、制御部34、センサ部351および電磁弁352などへ電力を供給可能な電源(バックアップ電源)の1つとして、AC電源や乾電池などの電池を備える。
【0047】
図3に示すように、水回り機器10の1種である小便器13は、凹状のボウル部B3と、ボウル部B3のボウル面BS3へ洗浄水を吐出する吐水口(図示せず)とを備える。小便器13は、給水路12cを介して供給された洗浄水を吐水口からボウル部B3へ吐出することで、ボウル部B3のボウル面BS3を洗い流す。
【0048】
小便器13は、制御部34と、センサ部351と、電磁弁352とを備える。なお、小便器13において、上記の手洗器11や大便器12と機能や構成が実質的に同じものについては、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
なお、小便器13は、上記の大便器12と同様、制御部34、センサ部351および電磁弁352などへ電力を供給可能な電源(バックアップ電源)の1つとして、AC電源や乾電池などの電池を備える。
【0050】
なお、水回り機器10としては、トイレ空間TRに設置された上記の手洗器11、大便器12および小便器13の他、たとえば、キッチン用の水栓やシャワーなどがある。
【0051】
次に、
図5を参照して第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10における無線給電の概要について説明する。
図5は、第1実施形態に係る水回りシステム1が備える水回り機器10における無線給電の概要を示すブロック図である。
【0052】
図5に示すように、水回り機器10へ向けてマイクロ波信号を送信する送電部20には、AC電源23、AC/DCコンバータ24を介して電力が供給される。送電部20は、マイクロ波信号を送信する。送電部20は、たとえば、送信IC21と、送電アンテナ22とを備える。送信IC21は、マイクロ波信号の送信方向および送信の順番を決定する。送電アンテナ22は、送信IC21によって決定された送信方向へ向けてマイクロ波信号を発信するとともに、送信IC21によって決定された順番でマイクロ波信号を発信する。
【0053】
水回り機器10は、たとえば、手洗器11であり、受電部31と、蓄電部340と、ダイオード341と、電圧変換部342と、負荷35とを備える。受電部31は、送電部20から送信されたマイクロ波信号を受信する。受電部31は、受信したマイクロ波信号を電力に変換する。
【0054】
受電部31は、たとえば、レクテナ(Rectifying Antenna)で構成される。レクテナは、受信アンテナおよび整流回路が一体化されたアンテナである。受電部31は、たとえば、受電アンテナと、入力低域通過フィルタと、整流回路と、出力低域通過フィルタとを備える。なお、受電アンテナ、入力低域通過フィルタ、整流回路および出力低域通過フィルタは、この順番で電気的に接続される。
【0055】
受電アンテナは、マイクロ波信号を受信する。受電アンテナには、たとえば、アレイアンテナが用いられる。入力低域通過フィルタは、ローパスフィルタ回路で構成され、マイクロ波信号の整流時に発生する高調波が受電アンテナから空間へ再放射されるのを抑える。整流回路は、ブリッジ整流回路などで構成される。出力低域通過フィルタは、ローパスフィルタ回路で構成され、直流電力のみを負荷へ向けて流す。
【0056】
蓄電部340は、受電部31によって変換された電力を蓄えておく役割を担う。ダイオード341は、蓄電部340から受電部31へ電流が逆流することを防止するための部品である。電圧変換部342は、受電部31または蓄電部340から供給される電力を負荷35が駆動できるための電力(電圧)に変換する。
【0057】
負荷35は、水回り機器10(手洗器11)が備える、センサ部351や電磁弁352であり、受電部31によって変換された電力で駆動される。なお、負荷35には、制御部34が含まれてもよい。
【0058】
水回り機器10(手洗器11)は、送電部20から送信されたマイクロ波信号を変換して得られた電力で負荷35(センサ部351や電磁弁352)が駆動する。これにより、たとえば、吐水部と機能部とを接続するハーネスや機能部と電源とを接続するハーネスを省略することができ、メンテナンス性を向上させることができるとともに、機能部のレイアウトフリー化を図ることができる。
【0059】
ここで、第1実施形態に係る水回りシステム1では、複数の水回り機器10の各種情報に基づいて、無線給電を行う水回り機器10に優先順位をつける。
【0060】
次に、
図6~11を参照して第1実施形態に係る水回りシステム1における優先順位のパラメータについて説明する。
図6~11は、第1実施形態に係る水回りシステム1における優先順位のパラメータの説明図である。
【0061】
まず、第1実施形態に係る水回りシステム1の構成について説明する。たとえば、
図7に示すように、水回りシステム1は、送電部20と、複数の水回り機器(手洗器11、大便器12および小便器13)とを備える。送電部20は、上記のように、マイクロ波信号を送信する。水回り機器は、トイレ空間TR(
図7参照)に設置される。水回り機器は、送電部20から送信されたマイクロ波信号を変換して得られた電力で動作する。
【0062】
水回り機器は、たとえば、手洗器11、大便器12および小便器13である。水回りシステム1は、一例として、たとえば、
図7に示すように、3つの手洗器11(111~113)、3つの大便器12(121~123)および3つの小便器13(131~133)を備える。
【0063】
送電部20は、複数の水回り機器(手洗器11、大便器12および小便器13)のそれぞれが、送電部20から送信されたマイクロ波信号から得る単位時間あたりの電力量の割合を調整可能である。この場合、単位時間あたりの電力量の割合は、送電部20から送信されるマイクロ波信号の送信方向および/または電力強度で調整される。
【0064】
また、送電部20は、複数の水回り機器(手洗器11、大便器12および小便器13)の動作情報に基づいて、複数の水回り機器のそれぞれが、送電部20から送信されたマイクロ波信号から得る単位時間あたりの電力量の割合を調整する。このため、複数の水回り機器は、それぞれ動作情報を送電部20へ送信可能である。
【0065】
なお、たとえば、水回り機器である手洗器11、大便器12および小便器13が制御部34(
図12参照)を備える場合、送電部20において調整する複数の水回り機器における単位時間当たりの電力量の割合を調整を、制御部34が行うようにすることも可能である。この場合、たとえば、複数の水回り機器は、それぞれ動作情報を制御部34へ送信し、制御部34は、受信した動作情報に基づいて送電部20を制御して、単位時間当たりの電力量の割合の調整が可能となる。
【0066】
図6に示すように、複数の水回り機器(手洗器11、大便器12および小便器13)の動作情報、すなわち、マイクロ波信号を送信して電力を供給するための優先順位をつけるパラメータとして、まず、水回り機器の種類がある。この場合、消費電力が大きく、便器洗浄によって大便を流す必要があり、小便にも使用することができ、電力の消費スピードが最も高い大便器12の優先順位が最も高い。次いで、便器洗浄によって大便を流す必要がある小便器13の優先順位が高く、手洗器11が最も低い。
【0067】
また、送電部20は、複数の水回り機器の2種類以上の情報に応じて、送信するマイクロ波信号の送信方向の順番を設定可能である。
【0068】
図7に示すように、複数の水回り機器の動作情報、すなわち、マイクロ波信号を送信して電力を供給するための優先順位をつけるパラメータとして、次に、水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)の使用頻度がある。この場合、トイレ空間TRの出入口DW付近に設置された手洗器113の使用頻度が高いことから電力の消費スピードが最も高い手洗器113の優先順位が最も高い。次いで、出入口DW付近や端に設置された手洗器111、大便器121,123および小便器131,133の使用頻度が高いため、優先順位が高い。
【0069】
図8に示すように、複数の水回り機器の動作情報、すなわち、マイクロ波信号を送信して電力を供給するための優先順位をつけるパラメータとして、次に、無線給電と並列で設けられた給電の種類がある。すなわち、無線給電が想定どおりに行われなかった場合に、補助的に電力を供給する電力供給機器の種類がある。この場合、電力の収入がない電池が並列に設けられた手洗器113が優先順位が最も高い。次いで、使用時のみ電力の収入がある、たとえば、水力発電機などの発電機が並列に設けられた手洗器112の優先順位が高く、常時電力の収入があるAC電源が並列に設けられた手洗器111が最も低い。
【0070】
図9および10に示すように、複数の水回り機器の動作情報、すなわち、マイクロ波信号を送信して電力を供給するための優先順位をつけるパラメータとして、次に、バックアップ用の蓄電手段の蓄電量がある。この場合、手洗器111~113のうち、蓄電手段の蓄電量(残量)が最も少ない手洗器113の優先順位が最も高い。次いで、蓄電手段の蓄電量(残量)が少ない手洗器112の優先順位が高く、蓄電手段の蓄電量(残量)が最も多い手洗器111の優先順位が最も低い。
【0071】
図11に示すように、複数の水回り機器の動作情報、すなわち、マイクロ波信号を送信して電力を供給するための優先順位をつけるパラメータとして、次に、水回り機器の数や割合が他の種類の水回り機器と比べて少ないことがある。この場合、数や割合が最も少ない手洗器111の優先順位が最も高い。次いで、数や割合が少ない小便器131,132の優先順位が高く、数や割合が最も多い大便器121,122,123の優先順位が最も低い。
【0072】
以上説明した第1実施形態によれば、送電部20は、複数の水回り機器(手洗器11、大便器12および小便器13)に対して、水回り機器の状況などに応じて判断された優先順位に基づいた最適な電力量バランスでマイクロ波信号を送信することができるようになる。これにより、複数の水回り機器に対して1つの送電部20によって電力を供給する場合でも水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0073】
また、1つの送電部20による簡単な構成で単位時間あたりの電力量の割合を調整することができ、これにより、水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0074】
また、送電部20が、水回り機器の優先順位を判断し、判断した優先順位に基づいて電力量バランスを調整する。これにより、施工者の負担を軽減しつつ水回り機器の動作不良の発生を抑制することができる。
【0075】
また、水回り機器の使用頻度やバックアップ蓄電手段の蓄電量などの動作情報に基づいて優先順位をつけることで、リアルタイムな情報に基づいて優先順位をつけることができ、複数の水回り機器が設置されたトイレ空間TRにおける動作状態に応じて、単位時間あたりの電力量の割合を逐次調整することができる。これにより、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0076】
また、送電部20が複数の水回り機器の2種類以上の情報から単位時間あたりの電力量の割合を調整するため、より実状に適した調整が可能となり、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0077】
<第2実施形態>
次に、
図12を参照して第2実施形態に係る水回りシステム1の構成について説明する。
図12は、第2実施形態に係る水回りシステム1の構成の一例を示す図である。なお、以下で説明する第2実施形態において、上記の第1実施形態と実質的に同じものについては、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0078】
図12に示すように、第2実施形態に係る水回りシステム1は、受電部31を備える。受電部31は、送電部20から送信されたマイクロ波信号を受信し、受信したマイクロ波信号を電力に変換する。受電部31は、複数の水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)と電気的に接続される。
【0079】
また、受電部31は、水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)のそれぞれの制御部34から物理的に分離して設けられる。
【0080】
第2実施形態に係る水回りシステム1によれば、マイクロ波信号を受信する受電部31の数を減らして単位時間あたりの電力量の割合を調整する水回り機器の母数を減らすことができる。これにより、水回り機器の動作不良の発生をより効果的に抑制することができる。
【0081】
また、受電部31が制御部34から物理的に分離していることから、受電部31を、たとえば、送電部20との間に金属や水などの遮蔽物が介在しない、マイクロ波信号を受信するのに最適な位置に設けることができる。
【0082】
<第3実施形態>
次に、
図13を参照して第3実施形態に係る水回りシステム1の構成について説明する。
図13は、第3実施形態に係る水回りシステム1の構成の一例を示す図である。なお、以下で説明する第3実施形態においても、上記の第1および2実施形態と実質的に同じものについては、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0083】
図13に示すように、第3実施形態に係る水回りシステム1では、受電部31は、1つが複数の制御部34と接続される。受電部31は、複数の水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)のそれぞれの制御部34と接続される。たとえば、複数の水回り機器の1つ1つに受電部31が設けられると、管理が複雑になる。
【0084】
ところが、第3実施形態に係る水回りシステム1によれば、水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)の種類ごとに受電部31で管理すればよいため、管理が容易となる。
【0085】
<第4実施形態>
次に、
図14を参照して第4実施形態に係る水回りシステム1の構成について説明する。
図14は、第4実施形態に係る水回りシステム1の構成の一例を示す図である。なお、以下で説明する第3実施形態においても、上記の第1~3実施形態と実質的に同じものについては、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
図14に示すように、第4実施形態に係る水回りシステム1でも、上記の第3実施形態と同様、受電部31は、1つが複数の制御部34と接続される。受電部31は、複数の水回り機器(手洗器111~113、大便器121~123および小便器131~133)のそれぞれの制御部と接続される。
【0087】
また、第4実施形態に係る水回りシステム1では、水回り機器において、手洗器11、大便器12および小便器13の1セットに1つの受電部31が設けられる。
図14に示す例では、手洗器111、大便器121、小便器131および受電部31のセット、手洗器112、大便器122、小便器132および受電部31のセット、手洗器113、大便器123、小便器133および受電部31のセットとなっている。
【0088】
第4実施形態に係る水回りシステム1によれば、任意の種類の水回り機器が全滅しないように、1セットは確実に停止させないようにすることができる。
【0089】
次に、
図15を参照して送電部20の送電電力と受電側の受電電力とが異なる場合の電力の調整の一例について説明する。
図15は、送電部20の送電電力と受電側の受電電力とが異なる場合の電力の調整の一例の説明図である。
【0090】
図15に示すように、送電部20が、たとえば、手洗器111へ「50」、手洗器112へ「50」送電しても、手洗器111が「10」受電、手洗器112が「20」受電である場合には、送電部20は、それぞれの受電側の使用頻度の情報に基づいて、電力の割合を調整する。送電部20からの送電電力の割合を調整する場合には、たとえば、手洗器111へ「80」、手洗器112へ「20」送電する。手洗器11の受電電力の割合を調整する場合には、手洗器111が「16」受電し、手洗器112が「8」受電する。
【0091】
次に、
図16を参照して水回り機器に優先順位をつける場合の情報の重みの一例について説明する。
図16は、優先順位をつける場合の情報の重みの一例の説明図である。
【0092】
図16に示すように、無線給電を行う水回り機器(受電部)に優先順位をつける場合、「使用頻度」、「バックアップ蓄電量」、「水回り機器の種類」の項目の順に重みが高い。また、2つの水回り機器で重みが高い項目がどちらも該当する場合には、次に重みが高い項目が該当する方が優先順位が高くなる。
【0093】
<受電部および制御部の接続>
次に、
図17を参照して、上記の第1~4実施形態に係る水回り機器10(手洗器11)における受電部31および制御部34と電磁弁352との接続について説明する。
図17は、受電部31および制御部34のハーネス接続の一例を示す図である。
【0094】
図17に示すように、受電部31は、洗面カウンタ50の上方に設置される。また、負荷35(
図5参照)への電力供給を制御する制御部34は、洗面カウンタ50の下方に設置される。受電部31と制御部34とは、洗面カウンタ50の下方において、ハーネス60で接続されるとともに、ハーネス60を介して電気的に接続される。
【0095】
受電部31および制御部34の送電部20との位置関係においては、受電部31が制御部34よりも送電部20に対して近い距離の位置に設置される。この状況下では、制御部34の位置よりも受電部31の位置の方が送電部20からの電波を受信しやすいこととなる。
【0096】
具体的には、トイレ空間TRの天井C
TRに送電部20が設置されていれば、受電部31は、制御部34よりも上方の位置(天井C
TRに近い位置)に設置される。また、たとえば、トイレ空間TRの横壁W
TRに送電部20が設置されていれば、受電部31は、制御部34よりも横壁W
TRに近い位置に設置される。なお、
図17には、送電部20が天井C
TRに設置されている例を示している。
【0097】
また、1つの受電部31がハーネス60を介して複数(
図17に示す例では、3つ)の制御部34に接続される。制御部34および受電部31と電磁弁352との位置関係においては、制御部34が受電部31よりも電磁弁352に対して近い距離の位置に設置される。この状況下では、受電部31がよりよく電波を受信するために電磁弁352から遠く離れた位置に設置されたとしても、駆動負荷である電磁弁352の近くに制御部34を設置することができ、電磁弁352をより確実に開閉制御することが可能となる。仮に、制御部34と電磁弁352との位置が離れていると、両者を接続するハーネス60の長さが長くなり、周囲からのノイズ影響を受ける可能性や、ハーネス抵抗成分による電圧降下が発生して、電磁弁352の制御が容易ではなくなる。
【0098】
このような構成によれば、受電部31と制御部34とがハーネス60で接続されることで両者を物理的に分離して配置することができるようになる。このため、送電部20からのマイクロ波信号を受信しやすい位置に受電部31を配置しやすくなる。これにより、受電不良となる可能性を低減することができる。
【0099】
また、受電部31と制御部34とを分離することで、複数の制御部34に対して受電部31が1つで済む構成とすることができ、受電部31を増やすことなく制御部34を自由に増減することが可能となる。さらには、受電のために最適な受電位置が限られている場合にも、複数の受電部31が密集することなく設置可能となる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 水回りシステム
10 水回り機器
20 送電部
31 受電部
34 制御部
35 負荷
60 ハーネス