(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013037
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20240124BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F28F9/00 321
F28F9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114940
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065AA05
3L065AA10
3L065FA13
(57)【要約】
【課題】溶接や支持部材を用いることなくブラケットを熱交換器に取り付け、ブラケットの熱交換器に対する取り付け位置を変更可能にする。
【解決手段】熱交換器は、一方向に延在するチューブがチューブの延在方向に交差する方向に並列配置され、チューブの並列方向に延在する一対のヘッダダンクが複数のチューブの両端に接続され、ヘッダタンクにブラケットが取り付けられた熱交換器であって、ヘッダタンクに対するブラケットの動きを制限する取り付け部として、チューブの延在方向の動きを制限する第1取り付け部とヘッダタンクの延在方向の動きを制限する第2取り付け部が、ヘッダタンクの延在方向に並列配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延在するチューブが前記チューブの延在方向に交差する方向に複数並列配置され、前記チューブの並列方向に延在する一対のヘッダダンクが複数の前記チューブの両端に接続され、前記ヘッダタンクにブラケットが取り付けられた熱交換器であって、
前記ヘッダタンクに対する前記ブラケットの動きを制限する取り付け部として、前記チューブの延在方向の動きを制限する第1取り付け部と前記ヘッダタンクの延在方向の動きを制限する第2取り付け部が前記ヘッダタンクの延在方向に並列配置されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1取り付け部は、前記ヘッダタンクの延在方向に沿った一対の側面に互いに逆向きに突起する一対の突起部を有し、
前記突起部に嵌合する一対の嵌合凹部が前記ブラケットに設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2取り付け部は、前記ヘッダタンクの外面に凹部を設け、
前記凹部に係合する一対の爪部が前記ブラケットに設けたことを特徴とする請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記突起部は、前記ヘッダタンクの延在方向に沿って直線的且つ等間隔に複数配置されていることを特徴とする請求項2記載の熱交換器。
【請求項5】
前記凹部は、前記ヘッダタンクの延在方向に沿って等間隔に複数配置されていることを特徴とする請求項3記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、複数並列されたチューブの両端にヘッダタンクを接続し、ヘッダタンクを介してチューブ内を流れる熱媒体や冷媒と、複数のチューブ間を通過する流体(例えば、空気)との間で熱交換を行う。
【0003】
車載用等の熱交換器(ラジエータ、エバポレータ、コンデンサなど)は、ブラケットを介して車体等の被取り付け位置に取り付けられている。また、熱交換器は、一体ろう付で接合され、この際、ブラケットはヘッダタンクに仮固定された状態で炉内に搬入される。
【0004】
熱交換器に対するブラケットの取り付けは、ヘッダタンクにブラケットを溶接で仮固定する場合と、熱交換器の側部に支持部材を取り付け、この支持部材にブラケットを係止する場合などがある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61-13183号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラケットをヘッダタンクに溶接する場合には、薄肉のヘッダタンクなどでは溶接時に穴空きのリスクが生じると共に溶接不良によって一体ろう付け時にブラケットが脱落するリスクがある。また、ブラケットを支持部材に係止する場合には、支持部材を設けることで部品点数が増えて、設置箇所に余分なスペースを要すると共にコスト高になる問題がある。
【0007】
また、前述した従来技術のように、溶接によってヘッダタンクなどにブラケットを固定する場合や支持部材にブラケットを係止する場合は、熱交換器におけるブラケットの取り付け位置を変更することが容易ではない。このため、車両等に対して熱交換器を取り付け固定するに際して、取り付け位置の変更を簡易に行うことができず、異なる車種等への適用を行い難い問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、溶接を採用すること無くブラケットを取り付けることで、溶接時の穴空きリスクや溶接不良による脱落リスクを回避すること、支持部材を用いることなくブラケットを取り付けることで、設置箇所に余分なスペースを要しないようにすること、熱交換器におけるブラケットの取り付け位置を変更可能にすることで、異なる車種等への適用を容易にすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
一方向に延在するチューブが前記チューブの延在方向に交差する方向に複数並列配置され、前記チューブの並列方向に延在する一対のヘッダダンクが複数の前記チューブの両端に接続され、前記ヘッダタンクにブラケットが取り付けられた熱交換器であって、前記ヘッダタンクに対する前記ブラケットの動きを制限する取り付け部として、前記チューブの延在方向の動きを制限する第1取り付け部と前記ヘッダタンクの延在方向の動きを制限する第2取り付け部が前記ヘッダタンクの延在方向に並列配置されていることを特徴とする熱交換器。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、一つには、溶接を採用すること無くブラケットを取り付けることで、溶接時の穴空きリスクや溶接不良による脱落リスクを回避することができる。また、支持部材を用いることなくブラケットを取り付けることで、設置箇所に余分なスペースを要さない。また、熱交換器においてブラケットの取り付け位置を変更可能にするので、異なる車種等への適用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の全体構成を示した斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る熱交換器の全体構成を示した側面図。
【
図4】ブラケットの取り付けを説明する分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、熱交換器1は、複数並列配置されたチューブ2と、複数のチューブ2の両端に接続されるヘッダタンク3と、ヘッダタンク3に取り付けられるブラケット4を備えている。熱交換器1は、ヘッダタンク3を介してチューブ2内を流れる熱媒体や冷媒と、複数のチューブ2間を通過する流体(空気)との間で熱交換を行うものである。
【0014】
チューブ2は、図示の例では、一方向(図示矢印X方向)に延在して、その延在方向(図示矢印X方向)に交差する方向(図示矢印Z方向)に沿って偏平な形状の管体である。チューブ2は、その延在方向(図示矢印X方向)に交差する方向(図示矢印Y方向)に所定間隔で複数並列されており、複数のチューブ2の間の空間が熱交換対象となる流体の通過経路になる。熱交換対象の流体は、図示Z方向に流れて、複数のチューブ2間を通過する間にチューブ2内を流れる熱媒体や冷媒との間で熱交換を行う。複数のチューブ2間の空間には、熱交換効率を高めるために、一般に図示省略したフィン(例えば、コルゲートフィン)が設けられている。
【0015】
ヘッダタンク3は、図示の例では、タンク成形体3Aと連結体3Bを結合して端部をキャップ3Cで塞ぐことで、内部に熱媒体や冷媒の溜まり空間を形成しており、連結体3Bに前述したチューブ2の端部が接続されている。
【0016】
また、一対のヘッダタンク3の間には、キャップ3Cの近傍に一対のサイドプレート5が設けられている。一対のサイドプレート5は、一対のヘッダタック3の間隔を規定し、その内側に複数のチューブ2による熱交換コア部を形成している。
【0017】
図示の例では、一対のヘッダタンク3は、一方のヘッダタンク(アッパータンク)3のタンク成形体3Aに流入口30が設けられ、他方のヘッダタンク(ロアタンク)3のタンク成形体3Aに流出口31が設けられており、流入口30から流入された熱媒体や冷媒が一方のヘッダタンク(アッパータンク)3を介してチューブ2に流れ、チューブ2を流れた熱媒体や冷媒が他方のヘッダタンク(ロアタンク)3に溜って流出口31から流出する。
【0018】
ヘッダタンク3には、ブラケット4の取り付け部が設けられている。この取り付け部は、ヘッダタンク3に対するブラケット4の動きを制限する第1取り付け部A1と第2取り付け部A2を備えている。第1取り付け部A1と第2取り付け部A2は、ヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)に並列配置されている。
【0019】
第1取り付け部A1は、ブラケット4におけるチューブ2の延在方向(図示矢印X方向)の動きを制限する。第1取り付け部A1は、ヘッダタンク3の延在方向に沿った一対の側面に互いに逆向きに突起する一対の突起部32を有している。そして、突起部32は、単体の突起部32がヘッダタンク3の延在方向に沿って直線的に延びており、複数の突起部32が、間隔を空けて配置され、ヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)に沿って直線的且つ等間隔に配置されている。
【0020】
第2取り付け部A2は、ブラケット4におけるヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)の動きを制限する。第2取り付け部A2は、ヘッダタンク3の外面に一対の凹部33を設けている。そして、凹部33は、単体の凹部33がヘッダタンク3の幅方向(図示矢印Z方向)に沿って延びており、複数の凹部33が、隔を空けて配置され、ヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)に沿って等間隔に並列配置されている。なお、凹部33が設けられるヘッダタンク3(タンク成形体3A)の上面は、チューブ2が接続される連結体3Bに対向する面になる。
【0021】
このような第1取り付け部A1と第2取り付け部A2にて、ヘッダタンク3に取り付けられるブラケット4は、
図3及び
図4に示すように、一対の嵌合凹部4A1,4A2と一対の爪部4B1,4B2を有している。
【0022】
一対の嵌合凹部4A1,4A2は、ブラケット4におけるブラケット本体4Tから延びてヘッダタンク3の横幅を挟むように形成された一対のアーム部4F1,4F2の内側に対向するように設けられている。また、一対の爪部4B1,4B2は、ブラケット本体4Tからヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)に沿って張り出すように設けられている。
【0023】
ブラケット4は、熱交換器1を図示省略した車体等の取り付け位置に固定するための部品であり、熱交換器1の構成要素であるチューブ2やヘッダタンク3と共に一体ろう付けされる場合には、ろう付けに適する金属材で形成される。また、熱交換器1に対して取り外し自在に取り付けられる場合には、弾性変形可能な金属材や樹脂材によって形成される。
【0024】
図4によって、ブラケット4の取り付け方法を説明する。一つの取り付け方法としては、ブラケット4における一対のアーム部4F1,4F2を突起部32の間に挿入して、嵌合凹部4A1,4A2の位置を突起部32の位置に合わせた後、ブラケット4をヘッダタンク3の延設方向(図示矢印Y方向)にスライドさせることで、嵌合凹部4A1,4A2を一対の突起部32に嵌合させる。これによって、ブラケット4は、チューブ2の延在方向(図示矢印X方向)の動きが制限されることになる。
【0025】
そして、ブラケット4における一対の爪部4B1,4B2をヘッダタンク3の凹部33に係合させることで、ブラケット4は、ヘッダタンク3の延在方向(図示矢印Y方向)の動きが制限されることになる。この際、爪部4B1,4B2は、工具等を用いて凹部33の内側に向けて曲げられ、カシメ止めされる。
【0026】
ブラケット4が弾性変形可能な金属材や樹脂材で形成されている場合は、ブラケット4のアーム部4F1,4F2を弾性変形させて乗り越え嵌合で嵌合凹部4A1,4A2を突起部32に嵌合させ、爪部4B1,4B2を塑性変形させて凹部33に係合させる、もしくは爪部4B1,4B2を元から凹部33に係合する形状にしておく。
【0027】
ブラケット4が取り付けられるヘッダタンク3は、
図4に示すように、タンク成形体3A側に突起部32と凹部33が設けられており、ブラケット4をタンク成形体3Aに取り付けた状態で、チューブ2が接続された連結体3Bをタンク成形体3Aに結合し、その後キャップ3Cを嵌めることで、ブラケット4が取り付けられチューブ2が接続されたヘッダタンク3が形成される。
【0028】
なお、図示の例では、タンク成形体3Aに凹部33の他に凹状リブ34が設けられている。凹状リブ34は、断面U字状のタンク成形体3Aにおける湾曲部に沿って形成され、且つ、並列配置される凹部33の間に形成されている。このような凹状リブ34を設けることで、ヘッダタンク3は耐圧強度を高めることができるが、凹状リブ34に加えて複数の凹部33を設けることで、凹状リブ34を追加したと同様の効果があり、更に耐圧強度を高めることができる。
【0029】
このような熱交換器1によると、溶接を採用すること無くブラケット4をヘッダタンク3に取り付けることができるので、溶接時の穴空きリスクや溶接不良による脱落リスクを回避することができる。また、支持部材を用いることなく、ブラケット4を直接ヘッダタンク3に取り付けることで、設置箇所に余分なスペースを要すことがない。
【0030】
また、第1取り付け部A1(突起部32)と第2取り付け部A2(凹部33)をヘッダタンク3の延在方向に並列配置しているので、任意の位置の第1取り付け部A1(突起部32)と第2取り付け部A2(凹部33)を選択してブラケット4をヘッダタンク3に取り付けることができる。これによって、熱交換器1におけるブラケット4の取り付け位置が変更可能になり、異なる車種等への適用を容易にすることができる。
【0031】
また、金型によって第1取り付け部A1(突起部32)と第2取り付け部A2(凹部33)をヘッダタンク3に形成する場合に、金型をヘッダタンク3の延在方向に分割して、第1取り付け部A1と第2取り付け部A2が形成された金型と取り付け部が形成されていない金型の組み合わせ位置を変更するなどして、任意の位置に第1取り付け部A1と第2取り付け部A2を形成し、異なる車種等への適用を行うようにしてもよい。
【0032】
更に、第1取り付け部A1(突起部32)が断面U字状のタンク成形体3Aにおける側面に形成され、第2取り付け部A2(凹部33)は、断面U字状のタンク成形体3Aにおいて、連結体3Bと対向する上面に形成されている。これにより、第1取り付け部A1と第2取り付け部A2によって取り付けられるブラケット4を、ヘッダタンク3におけるチューブ2の接続箇所から離すことができ、ブラケット4を介して伝わる振動(車両の振動など)がチューブ2の接続箇所に直接伝わることを抑制することができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:熱交換器,2:チューブ,3:ヘッダタンク,
3A:タンク成形体,3B:連結体,3C:キャップ,
30:流入口,31:流出口,32:突起部,33:凹部,34:凹状リブ,
4:ブラケット,4A1,4A2:嵌合凹部,4B1,4B2:爪部,
4F1,4F2:アーム部,4T:ブラケット本体,5:サイドプレート,
A1:第1取り付け部,A2:第2取り付け部