(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130381
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】方法、プログラムおよび装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20240920BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R27/02 R
H05B3/00 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040061
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】若林 武志
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】津端 創
【テーマコード(参考)】
2G028
3K058
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BB01
2G028BE10
2G028CG02
2G028DH01
3K058AA42
3K058CA03
3K058CA04
(57)【要約】
【課題】三相ヒータの各相の抵抗値を容易に算出可能な方法を提供すること。
【解決手段】本開示の方法は、第1電線および第2電線の線間電圧値と、第2電線および第3電線の線間電圧値と、第3電線および第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、第1電線、第2電線および第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得することと、取得された線間電圧値および線電流値に基づいて、三相ヒータの各相の抵抗値を算出することとを備える。第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおいて、線間電圧値および線電流値が取得される。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値が取得される、方法。
【請求項2】
取得された3つの前記線電流値のうち、1つの前記線電流値が第1閾値未満であり、残り2つの前記線電流値が第2閾値よりも大きい場合、前記第1閾値未満の前記線電流値に対応する電線に電流が流れていないと判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3つの前記抵抗器がデルタ結線されている場合、各相の電流値を取得しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
3つの前記抵抗器がスター結線されている場合、中性点を基準とした電圧値を取得しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第3電線にのみ電流が流れていない状態を第3状態とすると、
前記第1状態における前記三相ヒータの合成抵抗値である第1合成抵抗値と、前記第2状態における前記三相ヒータの合成抵抗値である第2合成抵抗値と、前記第3状態における前記三相ヒータの合成抵抗値である第3合成抵抗値とを算出し、
前記第1合成抵抗値、前記第2合成抵抗値および前記第3合成抵抗値から、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1状態における前記三相ヒータの合成抵抗値である第1合成抵抗値と、前記第2状態における前記三相ヒータの合成抵抗値である第2合成抵抗値とを算出し、
前記第1合成抵抗値および前記第2合成抵抗値と、前記三相ヒータの各相の抵抗値の比とから、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つに、前記三相ヒータに供給される電流を調整可能な調整部が設けられ、
前記調整部が、オンオフ制御可能であると共に、オンにすることで前記三相ヒータに電流が供給されるように構成されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記調整部が、少なくとも2つのトライアック方式のソリッドステートリレーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
取得された前記線間電圧値および前記線電流値を平滑処理した後に、前記抵抗値を算出する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータに、
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値が取得される、方法を実行させる、プログラム。
【請求項11】
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得するように構成された取得部と、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出するように構成された算出部と
を備え、
前記取得部が、前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値を取得するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三相ヒータの各相の抵抗値を算出する方法、プログラムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3つの抵抗器を有する三相ヒータで消費される消費電力と、三相ヒータに印加される電流または電圧に関する実効値とに基づいて、3つの抵抗器のそれぞれの抵抗値を計算する、三相ヒータ抵抗値検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置には、三相ヒータの各相の抵抗値を容易に算出する点において、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、三相ヒータの各相の抵抗値を容易に算出可能な方法、プログラムおよび装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の方法は、
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値が取得される。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、
コンピュータに、
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値が取得される、方法を実行させる。
【0008】
本開示の一態様の装置は、
3つの抵抗器を含む三相ヒータおよび三相電源をそれぞれ接続する第1電線、第2電線および第3電線の前記第1電線および前記第2電線の線間電圧値と、前記第2電線および前記第3電線の線間電圧値と、前記第3電線および前記第1電線の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線、前記第2電線および前記第3電線の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得するように構成された取得部と、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータの各相の抵抗値を算出するように構成された算出部と
を備え、
前記取得部が、前記第1電線にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値を取得するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、三相ヒータの各相の抵抗値を容易に算出可能な方法、プログラムおよび装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態の装置を示すブロック図。
【
図2】3つの抵抗器がデルタ結線されている三相ヒータを示すブロック図。
【
図3】3つのSSRを含む調整部により三相ヒータに供給される電流が調整されるときの各電線の電流波形の一例を示すグラフ。
【
図4】トライアック方式のSSRの特性を説明するためのグラフ。
【
図5】電力調整器を含む調整部により三相ヒータに供給される電流が調整されるときの各電線の電流波形の一例を示すグラフ。
【
図6】
図2の三相ヒータの第1状態を示す第1のブロック図。
【
図7】
図2の三相ヒータの第2状態を示す第1のブロック図。
【
図8】
図2の三相ヒータの第3状態を示す第1のブロック図。
【
図9】
図2の三相ヒータの第1状態を示す第2のブロック図。
【
図10】
図2の三相ヒータの第2状態を示す第2のブロック図。
【
図11】
図2の三相ヒータの第3状態を示す第2のブロック図。
【
図12】3つの抵抗器がスター結線されている三相ヒータを示すブロック図。
【
図16】本開示の方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、本開示の適用物、または、本開示の用途を制限することを意図するものではない。図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0012】
本開示の一実施形態の装置1は、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出可能に構成されている。三相ヒータ100は、
図1に示すように、3つの抵抗器(以下、第1抵抗器101、第2抵抗器102および第3抵抗器103と言う。)を含む。三相ヒータ100は、
図2に示すように、3つの電線(以下、第1電線111、第2電線112および第3電線113と言う。)を介して三相電源120に接続されている。三相ヒータ100および三相電源120の間には、調整部130が位置している。調整部130は、オンオフ制御可能であると共に、オンにすることで三相電源120から三相ヒータ100に電流が供給されるように構成されている。
【0013】
本実施形態では、一例として、三相ヒータ100の第1抵抗器101、第2抵抗器102および第3抵抗器103がデルタ結線され、調整部130が、3つのSSR131、132、133を有している。第1抵抗器101の一端には、第2電線112と第2抵抗器102の他端とが電気的に接続されている。第2抵抗器102の一端には、第3電線113と第3抵抗器103の他端とが電気的に接続されている。第3抵抗器103の一端には、第1電線111と第1抵抗器101の他端とが電気的に接続されている。SSR131は、第1電線111を介して三相ヒータ100に供給される電流を調整可能に構成されている。SSR132は、第2電線112を介して三相ヒータ100に供給される電流を調整可能に構成されている。SSR133は、第3電線113を介して三相ヒータ100に供給される電流を調整可能に構成されている。SSR131、132、133は、例えば、共通の入力信号で制御される。
【0014】
各電線の線電流値Ir、Is、Itは、電流計測回路140により検出され、例えばアナログ信号として装置1に送信される。電流計測回路140は、少なくとも2つの線電流を検出可能に構成されている。第1電線111および第2電線112の線間電圧値Vrsと、第2電線112および第3電線113の線間電圧値Vstと、第3電線113および第1電線111の線間電圧値Vtrとは、電圧計測回路150により検出され、例えばアナログ信号として装置1に送信される。電圧計測回路150は、少なくとも2つの線間電圧値を検出可能に構成されている。
【0015】
装置1は、
図1に示すように、取得部21および算出部22を備えている。本実施形態では、装置1は、プロセッサ11および記憶部12を備える。取得部21および算出部22は、例えば、記憶部12に記憶されている所定のプログラムをプロセッサ11が実行することにより実現される。
【0016】
プロセッサ11は、例えば、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGAまたはASICを含む。記憶部12は、例えば、内部記録媒体または外部記録媒体で構成されている。内部記録媒体は、不揮発メモリ等を含む。外部記録媒体は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)または光ディスク装置等を含む。
【0017】
取得部21は、第1電線111および第2電線112の線間電圧値Vrsと、第2電線112および第3電線113の線間電圧値Vstと、第3電線113および第1電線111の線間電圧値Vtrとの少なくともいずれか2つの線間電圧値と、第1電線111、第2電線112および第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得するように構成されている。本実施形態では、取得部21は、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを同じタイミングで取得するように構成されている。「同じタイミング」は、完全に同一のタイミングに限らず、例えば、電流計測回路140および電圧計測回路150の性能上、同一とみなせる範囲のタイミングをも含む。
【0018】
具体的には、取得部21は、下記の3つの状態のうちの少なくともいずれか2つの状態における線間電圧値および線電流値を取得するように構成されている。線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itは瞬時値であり、例えば、一定のサンプリング周期毎に取得される。取得された各サンプリング点の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itは、第1状態、第2状態、第3状態およびその他の状態のいずれかに分類される。その他の状態は、3つの線電流値Ir、Is、Itが全てゼロの状態、または、3つの線電流値Ir、Is、Itのいずれもゼロではない状態である。三相ヒータ100の性質により、3つの線電流値Ir、Is、Itの合計および3つの線間電圧値Vrs、Vst、Vtrの合計がゼロとなる。このため、少なくともいずれか2つの線間電圧値および少なくともいずれか2つの線電流値を取得することができれば、取得された線間電圧値および線電流値から、残り1つの線間電圧値および線電流値を算出できる。残り1つの線間電圧値および線電流値は、サーバ等の外部装置で算出されてもよいし、装置1で算出されてもよい。
・(第1状態)第1電線111、第2電線112および第3電線113のいずれか1つにのみ電流が流れていない状態。
・(第2状態)第1電線111、第2電線112および第3電線113のうち、1状態で電流が流れていなかった電線を除いた2つの電線のいずれか一方にのみ電流が流れていない状態。例えば、第1状態で第1電線111に電流が流れていなかった場合、第2状態では、第2電線112または第3電線113のいずれかに電流が流れてない。
・(第3状態)第1電線111、第2電線112および第3電線113のうち、1状態および第2状態で電流が流れていなかった電線を除いた電線にのみ電流が流れていない状態。例えば、第1状態で第1電線111にのみ電流が流れておらず、第2状態で第2電線112にのみ電流が流れていなかった場合、第3状態では、第3電線にのみ電流が流れてない。
【0019】
図3に、3つのソリッドステートリレー(SSR)を含む調整部130により三相ヒータ100に供給される電流が調整されるときの各電線の電流波形の一例を示す。
図3において、第1電線111の線電流値Irを実線で示し、第2電線112の線電流値Isを破線で示し、第3電線113の線電流値Itを一点鎖線で示している。調整部130は、3つのSSRを含む場合に限らず、少なくとも2つのSSRを含んで入ればよい。
【0020】
通常のAC波形では、電流値がゼロとなるタイミングは電流波形のゼロクロス点であり、サンプリング点がゼロクロス点に合致しないことが考えられる。
図3に示すように、トライアック方式のSSRでは、導通(オン時)の最後が必ず線電流値のゼロクロス点となり、SSRがオンからオフに切り替わる直前の所定期間P1において、3つの電線のうちの1つの線電流値のみが必ずゼロになる。所定期間P1は幅のある期間であるため、サンプリング周期が一定であっても、サンプリング周期を電源周期より十分小さくしておけば、線電流値がゼロになるサンプリング点は豊富に存在する。つまり、調整部130がトライアック方式のSSRで構成されている場合、第1状態~第3状態における線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを容易に取得できる。
【0021】
トライアック方式のSSRの中でも、ゼロクロス機能を有するSSRでは、
図3に示すように、導通の最後に加えて導通の最初も必ず線電流値のゼロクロス点となり、SSRがオフからオンに切り替わった直後の所定期間P2において、3つの電線のうちの1つの線電流値が必ずゼロになる。つまり、調整部130がゼロクロス機能を有するトライアック方式のSSRを含む場合、第1状態~第3状態における線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを容易に取得できる。
【0022】
トライアック方式のSSRは、出力量が100%であっても、線電流値はきれいな正弦波にならず、
図4に示すように、ゼロクロス点P0で一旦非導通となった後、暫くして導通する(電流値がゼロになる期間T0)という特性がある。つまり、調整部130がトライアック方式のSSRを含む場合、ゼロクロス点毎に線電流値がゼロになる幅をもった期間が存在するため、例えば、出力量が100%の制御が継続して導通の最初と最後が存在しない場合でも、第1状態~第3状態における線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを容易に取得できる。
【0023】
本明細書では、スイッチ素子にトライアックまたはサイリスタを使用するSSRを「トライアック方式のSSR」という。
【0024】
調整部130は、少なくとも2つのSSRを含む場合に限らず、三相電源120から供給される電流を位相制御可能な電力調整器で構成されてもよい。
【0025】
図5に、電力調整器を含む調整部130により三相ヒータ100に供給される電流が調整されるときの各電線の電流波形の一例を示す。
図5において、第1電線111の線電流値Irを実線で示し、第2電線112の線電流値Isを破線で示し、第3電線113の線電流値Itを一点鎖線で示している。
【0026】
図5に示すように、電力調整器による位相制御では、電源周期内に、第1電線111の線電流値のみがゼロになる期間P3、第2電線112の線電流値のみがゼロになる期間P4、および、第3電線113の線電流値のみがゼロになる期間P5が少なくとも1回ずつ存在する。所定期間P3~P5は幅のある期間であるため、サンプリング周期が一定であっても、サンプリング周期を電源周期より十分小さくしておけば、線電流値がゼロになるサンプリング点は豊富に存在する。つまり、調整部130が電力調整器を含む場合も、第1状態~第3状態における線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを容易に取得できる。電力調整器の出力量が100%の場合、各電線の線電流値は、調整部130が3つのSSRを含み、各SSRの出力量が100%の場合と同じ波形になる。
【0027】
調整部130により三相ヒータに供給される電流を調整する場合、以下の2つの理由により、検出される線電流値が完全にゼロにならない場合がある。
・SSRおよび電力調整器は、ノイズ対策用のスナバ回路を有しているため、オフ時(非導通時)でも、10~20mA程度の漏れ電流が発生する。
・計測精度の問題から、電流がゼロでも検出された線電流値がゼロにならない場合がある。
【0028】
本実施形態では、取得部21は、取得された3つの線電流値Ir、Is、Itのうち、1つの線電流値が第1閾値(例えば、10mA)未満であり、残り2つの線電流値が第2閾値(例えば、20mA)よりも大きい場合、第1閾値未満の線電流値に対応する電線にのみ電流が流れていないと判定する。例えば、取得された第1電線111の線電流値Irが第1閾値未満であり、取得された第2電線112および第3電線113の線電流値Is、Itが第2閾値よりも大きかったとする。この場合、取得部21は、第1電線111にのみ電流が流れていないと判定する。
【0029】
第1閾値および第2閾値の適正値は、電流計測レンジ等により異なっている。第1閾値は、例えば、調整部130のオフ時を判断可能であり、かつ、抵抗値の計測精度に大きく影響しない範囲で設定される。第2閾値は、取得された3つの線電流値Ir、Is、Itが全てゼロである場合を除外可能な範囲で設定される。第1閾値および第2閾値は、予め設定されていてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。例えば、第2閾値は、第1閾値と同じ値か、第1閾値よりも少し大きい値(例えば、10mA程度)が設定される。
【0030】
算出部22は、取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに基づいて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出するように構成されている。
【0031】
例えば、第1電線111にのみ電流が流れていない状態を第1状態とし、第2電線112にのみ電流が流れていない状態を第2状態とし、第3電線113にのみ電流が流れていない状態を第3状態とする。この場合、算出部22は、第1状態~第3状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itから、三相ヒータ100の第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3のうち、少なくとも第1合成抵抗値R1および第2合成抵抗値R2を算出する。第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3が算出された場合、算出された第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3から、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rrs、Rst、Rtrが算出される。第1合成抵抗値R1および第2合成抵抗値R2が算出された場合、第1合成抵抗値R1および第2合成抵抗値R2と、三相ヒータ100の各相の抵抗値の比K、Pとから、三相ヒータ100の各相の抵抗値が算出される。
【0032】
第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3は、例えば、以下に示すように算出される。
・第1状態における第2電線112または第3電線113の線電流値Is、Itの絶対値と、第2電線112および第3電線113の線間電圧値Vstの絶対値とから、第1合成抵抗値R1が算出される(
図6参照)。
・第2状態における第1電線111または第3電線113の線電流値Ir、Itの絶対値と、第1電線111および第3電線113の線間電圧値Vtrの絶対値とから、第2合成抵抗値R2が算出される(
図7参照)。
・第3状態における第1電線111または第2電線112の線電流値Ir、Isの絶対値と、第1電線111および第2電線112の線間電圧値Vrsの絶対値とから。第3合成抵抗値R3が算出される(
図8参照)。
【0033】
三相ヒータ100の各相の抵抗値は、例えば、以下に示す連立方程式の解から算出される。下記の連立方程式において、f1、f2およびf3は、三相ヒータ100の結線方法(例えば、デルタ結線およびスター結線)により異なる関数である。
<デルタ結線>
・R1=f1(Rrs,Rst,Rtr)
・R2=f2(Rrs,Rst,Rtr)
・R3=f3(Rrs,Rst,Rtr)
<スター結線>
・R1=f1(Rs,Rt)
・R2=f2(Rt,Rr)
・R3=f3(Rr,Rs)
【0034】
第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3は、取得された第1状態~第3状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itの瞬時値を用いて算出されると、例えば、瞬時値の入力誤差により、算出精度が低下することが考えられる。本実施形態では、算出部22は、取得された第1状態~第3状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itの瞬時値を平滑処理した後に、第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3を算出する。平滑処理には、例えば、RMS(2乗和平均平方根)処理、移動平均処理および一次遅れ処理が含まれる。
【0035】
RMS処理により第1合成抵抗値R1を算出する場合の一例を以下に示す。例えば、第1合成抵抗値R1の算出周期が1秒であり、1秒間に「Ir=0」と判断されたサンプリング点がn回あったとする。サンプリング回数がn回目のIs,Vstの瞬時値が、それぞれ「Is=Isn,Vst=Vstn」であったとすると、1~n回目のIsのRMS値およびVstのRMS値は、下記の数式1および数式2により算出される。第1合成抵抗値R1を「R1=Vst(rms)/Is(rms)」により算出すると、第1合成抵抗値R1の算出精度を高めることができる。
【数1】
【数2】
【0036】
例えば、
図2に示す3つの抵抗器がデルタ結線されている三相ヒータ100では、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rrs、Rst、Rtrが、以下の数式3~5により得られる数式6~8により算出される。つまり、3つの抵抗器がデルタ結線されている場合、算出部22は、各相の電流値を用いることなく、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rrs、Rst、Rtrを算出する。この場合、取得部21は、例えば、三相ヒータ100の各相の電流値を取得しないように構成される。
図9に、デルタ結線されている三相ヒータ100の第1状態を示し、
図10に、デルタ結線されている三相ヒータ100の第2状態を示し、
図11に、デルタ結線されている三相ヒータ100の第3状態を示す。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0037】
例えば、
図12に示す3つの抵抗器101、102、103がスター結線されている三相ヒータ100では、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rr、Rs、Rtが、以下の数式9~11により得られる数式12~14により算出される。つまり、3つの抵抗器101、102、103がスター結線されている場合、算出部22は、各相の電圧値を用いることなく、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rr、Rs、Rtを算出する。この場合、取得部21は、三相ヒータ100の中性点104の電圧値を取得しないように構成される。
図13に、スター結線されている三相ヒータ100の第1状態を示し、
図14に、スター結線されている三相ヒータ100の第2状態を示し、
図15に、スター結線されている三相ヒータ100の第3状態を示す。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【0038】
例えば、
図2において、SSR133が設けられていない場合(つまり、調整部130が、2つのSSR131、132で構成されている場合)、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rrs、Rst、Rtrは、数式3、数式4および数式15により得られる数式17~19により、または、数式3、数式4および数式16により得られる数式20~22により、算出される。Kは、Vtr/Vrsにより算出される比であり、Pは、Vrs/Vstにより算出される比である。この場合も、取得部21は、例えば、三相ヒータ100の各相の電流値を取得しないように構成される。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0039】
例えば、
図12において、SSR133が設けられていない場合(つまり、調整部130が、2つのSSR131、132で構成されている場合)、三相ヒータ100の各相の抵抗値Rr、Rs、Rtは、数式9、数式10および数式23により得られる数式25~27により、または、数式9、数式10および数式24により得られる数式28~30により、算出される。Kは、Vtr/Vrsにより算出される比であり、Pは、Vrs/Vstにより算出される比である。この場合も、取得部21は、三相ヒータ100の中性点104を基準とした電圧値を取得しないように構成される。
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
【0040】
図16を参照して、
図2または
図12の三相ヒータ100の各相の抵抗値の算出処理(本開示の方法の一例)を説明する。
図6に示す処理は、一例として、プロセッサ11が記憶部12に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0041】
図16に示すように、三相ヒータ100の各相の抵抗値の算出処理が開始されると、初期設定が行われる(ステップS1)。初期設定には、例えば、以下の設定が含まれる。
・三相ヒータ100の結線方法(例えば、デルタ結線またはスター結線)
・調整部130を構成するSSRまたは電力調整器の数(例えば、ゼロまたは2または3)
・抵抗値算出周期(例えば、1秒)
【0042】
初期設定が行われると、取得部21は、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを(例えば、同時に)取得する(ステップS2)。線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを取得する周期は、タイマ割り込み等を利用して、一定周期としてもよく、電源周期よりも十分小さいのが好ましい。この場合、後述のステップS2~S5が取得周期内に1回実行され、ステップS6およびS7は、抵抗値算出周期内に1回実行される。
【0043】
線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得されると、算出部22は、第1状態~第3状態のうち、少なくとも2つの状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得されたか否かを判定する(ステップS3)。例えば、算出部22は、取得周期において、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得される毎に、取得された線電流値Ir、Is、Itを第1状態~第3状態に分類する。分類された結果から、少なくとも2つの状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得されたか否かが判定される。少なくとも2つの状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得されたと判定されなかった場合、ステップS2に戻り、次回の取得タイミングにて、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得される。
【0044】
少なくとも2つの状態の線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得されたと判定された場合、算出部22は、取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに対して平滑処理を施す(ステップS4)。例えば、平滑処理は、少なくとも2つの状態における線間電圧値および線電流値のデータを対象とする。平滑処理には、新しくサンプリングして、第1状態~第3状態のいずれかに合致したサンプリング値を1つ前の第1状態~第3状態の平滑値に加算して再平滑することが含まれる。
【0045】
取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに対して平滑処理が施されると、算出部22は、設定された抵抗値算出周期が経過したか否かを判定する(ステップS5)。設定された抵抗値算出周期が経過したと判定された場合、算出部22は、平滑処理された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに基づいて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する(ステップS6)。
【0046】
三相ヒータ100の各相の抵抗値が算出されると、算出された抵抗値は記憶部12に記憶され(ステップS7)、抵抗値の算出処理を終了させる。設定された抵抗値算出周期が経過したと判定されなかった場合、ステップS2に戻り、次回の取得タイミングにて、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得される。
【0047】
本開示の方法によれば、次のような効果を発揮できる。
【0048】
一般に、3つの抵抗器を有する三相ヒータでは、構造的に、各相の相電圧値または相電流値を計測するのが難しい場合がある。例えば、3つの抵抗器がデルタ結線されている三相ヒータでは、相電流値を計測するのが難しく、3つの抵抗器がスター結線されている三相ヒータでは、相電圧値を計測するのが難しい場合がある。これに対して、三相ヒータおよび三相電源を接続する3つの電線の線電流値および線間電圧値は、比較的容易に計測できる。このため、三相ヒータの各相の抵抗値を算出する場合、線間電圧値および線電流値を用いることが考えられる。
【0049】
特許文献1の発明では、三相ヒータの各相の抵抗値を算出するために、線間電圧値および線電流値と、線間電圧値および線電流値から算出される消費電力とが用いられる。このため、三相ヒータの各相の抵抗値の算出するための計算が複雑になり、三相ヒータの各相の抵抗値を容易に算出できない場合がある。
【0050】
本開示の方法は、以下の構成を備える。このような構成により、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itから三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出できるので、三相ヒータ100の各相の抵抗値を容易に算出できる。また、本開示の方法は、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itの瞬時値のみまたは瞬時値を平滑処理した値のみを用いて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出できる。
・第1電線111および第2電線112の線間電圧値Vrsと、第2電線112および第3電線113の線間電圧値Vstと、第3電線113および第1電線111の線間電圧値Vtrとの少なくともいずれか2つの線間電圧値と、第1電線111、第2電線112および第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得する。第1電線111、第2電線112および第3電線113は、3つの抵抗器を含む三相ヒータ100および三相電源120をそれぞれ接続する。
・取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに基づいて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する。
・第1電線111、第2電線112および第3電線113のいずれか1つにのみ電流が流れていない第1状態と、第1電線111、第2電線112および第3電線113のうち、第1状態で電流が流れていなかった電線を除いた2つの電線のいずれか一方にのみ電流が流れていない第2状態とにおける線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itが取得される。
【0051】
本開示の方法は、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成を任意に採用できる。つまり、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成は、前記実施形態に含まれていた場合は任意に削除でき、前記実施形態に含まれていない場合は任意に付加することができる。このような構成を採用することにより、三相ヒータの各相の抵抗値をより容易に算出できる。
【0052】
取得された3つの線電流値Ir、Is、Itのうち、1つの線電流値が第1閾値未満であり、残り2つの線電流値が第2閾値よりも大きい場合、第1閾値未満の線電流値に対応する電線に電流が流れていないと判定する。このような構成により、三相ヒータの各相の抵抗値をより正確に算出できる。
【0053】
3つの抵抗器がデルタ結線されている場合、各相の電流値を取得しない。
【0054】
3つの抵抗器がスター結線されている場合、中性点104を基準とした電圧値を取得しない。
【0055】
第1電線111、第2電線112および第3電線113のうち、第1状態および第2状態で電流が流れていなかった電線を除いた電線にのみ電流が流れていない状態を第3状態とする。第1状態における三相ヒータ100の合成抵抗である第1合成抵抗値R1と、第2状態における三相ヒータ100の合成抵抗である第2合成抵抗値R2と、第3状態における三相ヒータ100の合成抵抗である第3合成抵抗値R3とを算出する。第1合成抵抗値R1、第2合成抵抗値R2および第3合成抵抗値R3から、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する。
【0056】
第1状態における三相ヒータ100の合成抵抗値である第1合成抵抗値R1と、第2状態における三相ヒータ100の合成抵抗値である第2合成抵抗値R2とを算出する。第1合成抵抗値R1および第2合成抵抗値R2と、三相ヒータ100の各相の抵抗値の比とから、三相ヒー100タの各相の抵抗値を算出する。
【0057】
第1電線111、第2電線112および第3電線113の少なくともいずれか2つに、三相ヒータ100に供給される電流を調整可能な調整部130が設けられる。調整部130が、オンオフ制御可能であると共に、オンにすることで三相ヒータ100に電流が供給されるように構成されている。調整部130がオンからオフに切り替わる直前の所定期間における線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを取得する。
【0058】
調整部130が、少なくとも2つのトライアック方式のソリッドステートリレーを含む。
【0059】
取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを平滑処理した後に、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する。
【0060】
本開示の方法は、コンピュータに実行させることができる。つまり、本開示には、本開示の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、および、本開示の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ可読性の記憶媒体が含まれる。
【0061】
装置1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0062】
装置1は、取得部21と、算出部22とを備える。取得部21は、第1電線111および第2電線112の線間電圧値Vrsと、第2電線112および第3電線113の線間電圧値Vstと、第3電線113および第1電線111の線間電圧値Vtrとの少なくともいずれか2つの線間電圧値と、第1電線111、第2電線112および第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得するように構成されている。第1電線111、第2電線112および第3電線113は、3つの抵抗器を含む三相ヒータ100および三相電源120をそれぞれ接続する。算出部22は、取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに基づいて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出するように構成されている。取得部21が、第1電線111、第2電線112および第3電線113のいずれか1つにのみ電流が流れていない第1状態と、第1電線111、第2電線112および第3電線113のうち、第1状態で電流が流れていなかった電線を除いた2つの電線のいずれか一方にのみ電流が流れていない第2状態とにおいて、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを取得するように構成されている。このような構成により、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itから三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出できるので、三相ヒータ100の各相の抵抗値を容易に算出できる。また、装置1は、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itの瞬時値のみまたは瞬時値を平滑処理した値のみを用いて、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出できる。
【0063】
本開示の方法および装置1は、次のように構成することができる。
【0064】
電線に電流が流れていない状態であるか否かは、第1閾値および第2閾値を用いて判定する場合に限らない。例えば、電流計測回路140により検出された線電流値がゼロの場合に、電線に電流が流れていないと判定してもよい。
【0065】
取得部21は、サーバ等の外部装置との間でデータの送受信を行うための通信回路または通信モジュールを介して、線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itを取得するように構成されていてもよい。
【0066】
算出部22は、上記数式に限らず、三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出可能な任意の数式を用いるように構成されてもよい。
【0067】
算出部22は、取得された線間電圧値Vrs、Vst、Vtrおよび線電流値Ir、Is、Itに対して平滑処理を施さずに、三相ヒータの各相の抵抗値を算出するように構成されてもよい。
【0068】
第1状態および第2状態における線間電圧値および線電流値は、調整部130を設けることにより検出される場合に限らず、他の方法により検出されてもよい。
【0069】
線電流値および線間電圧値は、電流計測回路140および電圧計測回路150に限らず、線電流値または線間電圧値を計測可能な任意の構成により計測されてもよい。
【0070】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0071】
本開示の第1態様の方法は、
3つの抵抗器を含む三相ヒータ100および三相電源120をそれぞれ接続する第1電線111、第2電線112および第3電線113の前記第1電線111および前記第2電線112の線間電圧値と、前記第2電線112および前記第3電線113の線間電圧値と、前記第3電線113および前記第1電線111の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線111、前記第2電線112および前記第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線111にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線112にのみ電流が流れていない第2状態とにおける前記線間電圧値および前記線電流値が取得される。
【0072】
本開示の第2態様の方法は、第1態様の方法において、
取得された3つの前記線電流値のうち、1つの前記線電流値が第1閾値未満であり、残り2つの前記線電流値が第2閾値よりも大きい場合、前記第1閾値未満の前記線電流値に対応する電線に電流が流れていないと判定する。
【0073】
本開示の第3態様の方法は、第1態様または第2態様の方法において、
3つの前記抵抗器がデルタ結線されている場合、各相の電流値を取得しない。
【0074】
本開示の第4態様の方法は、第1態様または第2態様の方法において、
3つの前記抵抗器がスター結線されている場合、中性点104を基準とした電圧値を取得しない。
【0075】
本開示の第5態様の方法は、第1態様~第4態様のいずれかの方法において、
前記第3電線113にのみ電流が流れていない状態を第3状態とすると、
前記第1状態における前記三相ヒータ100の合成抵抗値である第1合成抵抗値と、前記第2状態における前記三相ヒータ100の合成抵抗値である第2合成抵抗値と、前記第3状態における前記三相ヒータ100の合成抵抗値である第3合成抵抗値とを算出し、
前記第1合成抵抗値、前記第2合成抵抗値および前記第3合成抵抗値から、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する。
【0076】
本開示の第6態様の方法は、第1態様~第4態様のいずれかの方法において、
前記第1状態における前記三相ヒータ100の合成抵抗値である第1合成抵抗値と、前記第2状態における前記三相ヒータ100の合成抵抗値である第2合成抵抗値とを算出し、
前記第1合成抵抗値および前記第2合成抵抗値と、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値の比とから、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する。
【0077】
本開示の第7態様の方法は、第1態様~第6態様のいずれかの方法において、
前記第1電線111、前記第2電線112および前記第3電線113の少なくともいずれか2つに、前記三相ヒータ100に供給される電流を調整可能な調整部130が設けられ、
前記調整部130が、オンオフ制御可能であると共に、オンにすることで前記三相ヒータ100に電流が供給されるように構成されている。
【0078】
本開示の第8態様の方法は、第7態様の方法において、
前記調整部130が、少なくとも2つのトライアック方式のソリッドステートリレーを含む。
【0079】
本開示の第9態様の方法は、第1態様~第8態様のいずれかの方法において、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値を平滑処理した後に、前記抵抗値を算出する。
【0080】
本開示の第10態様のプログラムは、
コンピュータに、
3つの抵抗器を含む三相ヒータ100および三相電源120をそれぞれ接続する第1電線111、第2電線112および第3電線113の前記第1電線111および前記第2電線112の線間電圧値と、前記第2電線112および前記第3電線113の線間電圧値と、前記第3電線113および前記第1電線111の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線111、前記第2電線112および前記第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得し、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出する、方法であって、
前記第1電線111にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線112にのみ電流が流れていない第2状態とにおいて、前記線間電圧値および前記線電流値が取得される、方法を実行させる。
【0081】
本開示の第11態様の装置1は、
3つの抵抗器を含む三相ヒータ100および三相電源120をそれぞれ接続する第1電線111、第2電線112および第3電線113の前記第1電線111および前記第2電線112の線間電圧値と、前記第2電線112および前記第3電線113の線間電圧値と、前記第3電線113および前記第1電線111の線間電圧値との少なくともいずれか2つの線間電圧値と、前記第1電線111、前記第2電線112および前記第3電線113の少なくともいずれか2つの線電流値とを取得するように構成された取得部21と、
取得された前記線間電圧値および前記線電流値に基づいて、前記三相ヒータ100の各相の抵抗値を算出するように構成された算出部22と
を備え、
前記取得部21が、前記第1電線111にのみ電流が流れていない第1状態と、前記第2電線112にのみ電流が流れていない第2状態とにおいて、前記線間電圧値および前記線電流値を取得するように構成されている。
【0082】
前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0083】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示は、例えば、三相ヒータの異常を判定する装置に適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 装置
11 プロセッサ
12 記憶部
21 取得部
22 算出部
100 三相ヒータ
101 第1抵抗器
102 第2抵抗器
103 第3抵抗器
104 中性点
111 第1電線
112 第2電線
113 第3電線
120 三相電源
130 調整部
140 電流計測回路
150 電圧計測回路