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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130388
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E05F5/02 Z
E05F5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040070
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北尾 貢
(72)【発明者】
【氏名】小林 直也
(57)【要約】
【課題】框の見付け方向に沿った寸法を抑えた場合にも障子が衝突する等の問題を防止する。
【解決手段】枠体10に対して障子20A,20Bがスライド可能に配設され、上枠12に設けられた当接部材40に対して障子20A,20Bに設けられたダンパ部材30を当接させることにより枠体10に対する障子20A,20Bのスライド速度を減少させるブレーキ装置を備えた建具であって、障子20A,20Bを構成する戸先框22A及び召し合わせ框23Bの見込み面22Ab1,23a1にダンパ部材30が取り付けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に対して障子がスライド可能に配設され、前記障子に設けられたダンパ部材を当接部材に当接させることにより前記枠体に対する前記障子のスライド速度を減少させるブレーキ装置を備えた建具であって、
前記障子を構成する框の表面に前記ダンパ部材が取り付けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記障子は、前記枠体に対して左右方向にスライドするものであり、
前記当接部材は、前記枠体を構成する横枠に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子は、前記枠体に対して左右方向にスライドするものであり、
前記障子の戸先となる縦框は、前記障子を閉じ位置に配置した場合に室内に臨む見付け面が前記枠体を構成する縦枠によって覆われるように構成され、
前記ダンパ部材の見付け方向に沿った寸法は、前記縦框の見付け方向に沿った寸法よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記枠体には室外側の外障子のスライドをガイドする外方レール部が設けられているとともに、室内側の内障子のスライドをガイドする内方レール部が設けられ、
前記外障子及び前記内障子のいずれか一方には、前記外方レール部及び前記内方レール部のいずれか他方に対向する位置まで突出部が設けられ、かつ前記他方のレール部に隣接して前記当接部材が設けられ、前記当接部材に当接可能となるように前記ダンパ部材が前記突出部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記障子には、前記ダンパ部材が見込み方向に複数並設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項6】
前記ダンパ部材に対して前記当接部材が個別に設けられ、前記当接部材は前記ダンパ部材との当接開始位置が互いに異なるように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の建具。
【請求項7】
前記ダンパ部材は、周囲がカバー部材によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓等の建具では、縦框等の戸先となる框の中空部内にダンパ部材を配設するとともに、枠体に当接部材を配設し、枠体に対して障子をスライドさせた際にダンパ部材を当接部材に当接させることで障子のスライド速度を減少させるブレーキ装置を備えたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。この種の建具では、例えば障子が閉じる際の速度を減じることで障子が突き合わせの障子や枠体に衝突する事態を防止することができる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-297759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今においては、外観品質の向上を図るため、框の見付け方向に沿った寸法をできるだけ小さく設定し、障子を閉じた際には枠体によって戸先の框が覆われるように構成した、いわゆる隠し框と称されるものも提供されている。しかしながら、こうした建具では、框の中空部内にダンパ部材を設けることが困難となり、障子を勢い良くスライドさせた場合には突き合わせの障子や枠体に衝突する事態が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、框の見付け方向に沿った寸法を抑えた場合にも障子が衝突する等の問題を防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体に対して障子がスライド可能に配設され、前記障子に設けられたダンパ部材を当接部材に当接させることにより前記枠体に対する前記障子のスライド速度を減少させるブレーキ装置を備えた建具であって、前記障子を構成する框の表面に前記ダンパ部材が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、框の表面にダンパ部材を取り付けるようにしているため、框の見付け方向に沿った寸法に制限されることなく取り付けが可能であり、障子を勢い良くスライドさせた場合にも突き合わせの障子や枠体に衝突する事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
図2図1に示した建具の横断面図である。
図3図2におけるX-X線要部断面図である。
図4図3に示す部分を室内側から見た要部斜視図である。
図5図2におけるY-Y線要部断面図である。
図6図5に示す部分を室内側から見た要部斜視図である。
図7図1に示した建具の要部横断面図である。
図8図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は外障子が閉じ位置に配置されて端部用当接部材に当接した状態の横断面図、(b)は外障子が開き方向に移動して中央部用当接部材に当接した状態の横断面図である。
図9図1に示した建具の上枠及び上框の部分を室内側から見た拡大図である。
図10】変形例1である建具の横断面図である。
図11図10におけるZ-Z線要部断面図である。
図12】変形例2である建具の要部縦断面図である。
図13図12に示す部分を室内側から見た斜視図である。
図14図12に示した建具の要部を示すもので、(a)は要部横断面図、(b)は(a)を室内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1図6は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、建築物の躯体に支持させた枠体10と、枠体10に対して左右方向にスライド可能に配設した4枚の障子20A,20Bとを備えている。
【0011】
枠体10は、左右の縦枠11、上枠(横枠)12、下枠13を四周組することによって構成したものである。縦枠11、上枠12、下枠13は、それぞれがアルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。上枠12及び下枠13には、室外側の互いに対向する部分に外方レール部12A,13Aが設けてあり、室内側の互いに対向する部分に内方レール部12B,13Bが設けてある。外方レール部12A,13A及び内方レール部12B,13Bは、上枠12及び下枠13の長手に沿った全長にわたる部分に延在し、障子20A,20Bをスライド可能に支持することが可能である。本実施の形態では、外方レール部12A,13Aに2枚の外障子20Aが配設してあり、内方レール部12B,13Bに2枚の内障子20Bが配設してある。2枚の外障子20Aは互いにほぼ対称形状となるように構成してあり、2枚の内障子20Bは互いにほぼ対称形状となるように構成してある。
【0012】
外障子20Aは、それぞれ複層ガラス等のパネル21Aの四周に左右の縦框22A,23A、上框24A、下框25Aを装着することによって構成したものである。同様に、内障子20Bは、それぞれ複層ガラス等のパネル21Bの四周に左右の縦框22B,23B、上框24B、下框25Bを装着することによって構成したものである。縦框22A,22B,23A,23B、上框24A,24B、下框25A,25Bは、それぞれがアルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。
【0013】
これら外障子20A及び内障子20Bは、それぞれを閉じ位置に配置した場合、つまり、外障子20Aの戸先となる縦框(以下、区別する場合に戸先框22Aという)をそれぞれ縦枠11に当接させるとともに、内障子20Bの互いに対向する縦框(以下、区別する場合に突き合わせ框22Bという)を互いに突き合わせ、さらに外障子20Aの召し合わせとなる縦框(以下、区別する場合に外障子20Aの召し合わせ框23Aという)及び内障子20Bの召し合わせとなる縦框(以下、区別する場合に内障子20Bの召し合わせ框23Bという)を互いに見込み方向に並設した場合に、枠体10の開口部を閉じることのできる大きさに構成してある。
【0014】
以下、枠体10及び障子20A,20Bについて詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。なお、上述したように、2つの外障子20A及び2つの内障子20Bは、それぞれが互いにほぼ対称形状となるように構成してあるため、一方についてのみ説明し、他方については同一の符号を付して説明を省略する。
【0015】
枠体10を構成する上枠12は、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在する上枠基部12aを有している。上枠基部12aの内周側となる見込み面には、外方上見付け壁部12b、内方上見付け壁部12c、上方仕切壁部12dが設けてある。外方上見付け壁部12bは、上枠基部12aにおいて室外側となる縁部から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。内方上見付け壁部12cは、上枠基部12aにおいて室内側となる縁部から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。上方仕切壁部12dは、外方上見付け壁部12b及び内方上見付け壁部12cの相互間においてほぼ中間となる位置から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。上述の外方レール部12Aは、外方上見付け壁部12bと上方仕切壁部12dとの間のほぼ中間となる位置から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。同様に、内方レール部12Bは、内方上見付け壁部12cと上方仕切壁部12dとの間のほぼ中間となる位置から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。
【0016】
枠体10を構成する縦枠11は、互いにほぼ対称形状となるもので、見込み方向に沿ってほぼ鉛直に延在する薄板状の縦枠基板部11aを有している。縦枠基板部11aの内周側となる見込み面には、外方縦見付け壁部11b、内方縦見付け壁部11c、側方仕切壁部11dが設けてある。外方縦見付け壁部11bは、縦枠基板部11aにおいて室外側となる縁部から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。内方縦見付け壁部11cは、縦枠基板部11aにおいて室内側となる縁部から内周に向けて延在した薄板状を成すものである。側方仕切壁部11dは、外方縦見付け壁部11b及び内方縦見付け壁部11cの相互間においてほぼ中間となる位置から内周に向けて延在したものである。側方仕切壁部11dの延在縁部において室外側となる見付け面には、シール部材11eが装着してある。図からも明らかなように、外方縦見付け壁部11b及び内方縦見付け壁部11cは、縦枠基板部11aからの延在寸法が互いにほぼ等しく、かつ側方仕切壁部11dよりも大きな寸法となるように構成してある。
【0017】
外障子20Aを構成する上框24A及び内障子20Bを構成する上框24Bは、互いにほぼ同一の構成を有したものである。本実施の形態では、角筒状を成す上框基部24aを有した上框24A,24Bを適用している。上框基部24aには、内周側となる見込み面に2つの上方パネル支持壁部24bが設けてあるとともに、外周側となる見込み面に2つのガイド壁部24cが設けてある。上方パネル支持壁部24bは、上框基部24aの室外側となる縁部及び室内側となる縁部からそれぞれ内周側に向けて延在したもので、互いの間にシール材24dを介してパネル21A,21Bの縁部を挟持している。ガイド壁部24cは、上框基部24aの室外側となる縁部及び室内側となる縁部からそれぞれ外周側に向けて延在したものである。ガイド壁部24cの相互間には、上枠12に設けた外方レール部12A,13A及び内方レール部12B,13Bが進入可能となるガイド溝24eが構成してある。外障子20Aを構成する下框25A及び内障子20Bを構成する下框25A,25Bは、図には明示していないが、上框24A,24Bとほぼ同じ長手寸法を有し、かつ適宜箇所に戸車を有したものである。
【0018】
外障子20Aの召し合わせ框23A及び内障子20Bの召し合わせ框23Bは、互いにほぼ同一形状となるように構成してあり、さらに内障子20Bの2つの縦框22B,23Bは、互いにほぼ対称形状となるように構成してある。本実施の形態では、縦框基部23a及び縦桟部23bを有して外障子20Aの召し合わせ框23A及び内障子20Bの召し合わせ框23Bが構成してあり、縦框基部22a及び縦桟部22bを有して内障子20Bの突き合わせ框22Bが構成してある。縦框基部22a,23aは、見込み方向に沿った寸法がパネル21A,21Bの板厚よりも大きな角筒状を成すものである。縦框基部22a,23aの内周側となる見込み面には、2つの側方パネル支持壁部22c,23cが設けてある。側方パネル支持壁部22c,23cは、縦框基部22a,23aの室外側となる縁部及び室内側となる縁部からそれぞれ内周側に向けて延在したもので、互いの間にシール材22d,23dを介してパネル21A,21Bの縁部を挟持している。縦桟部22b,23bは、縦框基部22a,23aの一部及び一方の側方パネル支持壁部22c,23cを共用して構成した角筒状を成すもので、見込み方向に沿った寸法及び見付け方向に沿った寸法がそれぞれ縦框基部22a,23aよりも大きく構成してある一方、長手に沿った寸法が縦框基部22a,23aよりも小さく構成してある。縦桟部22b,23bの外周側となる見込み面は、縦框基部22a,23aと同一平面上に位置している。外障子20Aでは、縦框基部23aの室外側となる部分に室外に向けて枠体10から突出するように縦桟部23bが設けてあり、内障子20Bでは、縦框基部22a,23aの室内側となる部分に室内に向けて枠体10から突出するように縦桟部22b,23bが設けてある。なお、外障子20Aの召し合わせ框23A及び内障子20Bの召し合わせ框23Bには、外障子20A及び内障子20Bをそれぞれの閉じ位置に配置した場合に、互いに見込み方向に並設される煙返し23eが設けてある。また、内障子20Bの突き合わせ框22Bには、互いに突き合わせた際に係合可能となる2つの係合壁部22eが外周側に向けて突出するように設けてある。
【0019】
一方、外障子20Aの戸先框22Aは、戸先框基部22Aa及び突出部22Abを有して構成してある。戸先框基部22Aaは、見込み方向に沿った寸法が縦框基部22a,23aとほぼ同じとなるように構成した略角筒状を成すものである。戸先框基部22Aaの内周側となる見込み面には、2つの戸先パネル支持壁部22Acが設けてある。戸先パネル支持壁部22Acは、戸先框基部22Aaの室外側となる縁部及び室内側となる縁部からそれぞれ内周側に向けて延在したもので、互いの間にシール材22Adを介してパネル21Aの縁部を挟持している。突出部22Abは、室内側の戸先パネル支持壁部22Acから室内に向けて突出した異形の中空状を成すものである。より具体的に説明すると、突出部22Abは、戸先パネル支持壁部22Acの延在縁部から室内に向けて見込み方向に延在した内周壁部22b1と、内周壁部22b1の延在縁部から外周に向けて見付け方向に延在した内方壁部22b2と、内方壁部22b2の延在縁部から室外に向けて見込み方向に延在した後、内周側に屈曲し、さらに室外に向けて見込み方向に延在して戸先パネル支持壁部22Acに接続された外周壁部22b3とを有したものである。この突出部22Abは、外障子20Aを枠体10の外方レール部12A,13Aに配設した場合に内方レール部12B,13Bに対向する位置を超えて室内側に突出し、縦枠11の内方縦見付け壁部11cに近接した状態となる。図からも明らかなように、外障子20Aの戸先框22Aは、見付け方向に沿った寸法が、縦枠11の外方縦見付け壁部11b及び内方縦見付け壁部11cの見付け方向に沿った寸法よりも小さく構成してある。これにより、外障子20Aを閉じ位置に配置した場合には、戸先框基部22Aa、戸先パネル支持壁部22Ac、突出部22Abのすべてが外方縦見付け壁部11b及び内方縦見付け壁部11cの相互間に収容され、室内側から見た場合に縦枠11によって戸先框22Aが隠れた状態となる。
【0020】
上述の建具には、図1図9に示すように、ブレーキ装置が設けてある。ブレーキ装置は、枠体10に対する障子20A,20Bのスライドに制動を加えるためのもので、障子20A,20Bに設けたダンパ部材30と、枠体10に設けた当接部材40とを備えて構成してある。
【0021】
ダンパ部材30は、流体シリンダ31と、流体シリンダ31のピストンロッドに設けた転動ローラ32とを備えて構成したものである。本実施の形態では、外障子20Aの戸先框22A及び内障子20Bの召し合わせ框23Bにそれぞれ転動ローラ32が上方となる状態で鉛直方向に沿ってダンパ部材30が配設してある。より具体的に説明すると、転動ローラ32が上枠基部12aの内周側となる見込み面において内方レール部12Bと上方仕切壁部12dとの間となる部分に当接可能となる状態でそれぞれの縦框22A,23Bにダンパ部材30が配設してある。図からも明らかなように、本実施の形態で適用するダンパ部材30は、見付け方向に沿った寸法が、縦框22A,23Bにおいて内方レール部12Bに対向して配置される部分の見付け方向に沿った寸法よりも大きく構成されたものである。すなわち、内障子20Bにおいては、ダンパ部材30が縦框基部23aの見付け方向に沿った寸法よりも大きく構成されており、縦框基部23aの外周側となる見込み面23a1にダンパ部材30が取り付けてある。同様に、外障子20Aにおいては、ダンパ部材30が突出部22Abの見付け方向に沿った最大寸法よりも大きく構成されており、突出部22Abの内周側となる見込み面22Ab1にダンパ部材30が取り付けてある。ダンパ部材30の周囲には、それぞれ外部から視認できないようにカバー部材33が取り付けてある。
【0022】
当接部材40は、角柱状を成す当接基部41と、当接基部41の一端部に設けたスロープ部42とを有したものである。本実施の形態では、上枠基部12aの内周側となる見込み面において内方レール部12Bと上方仕切壁部12dとの間となる部分の長手に沿った4カ所に当接部材40が配設してある。より具体的に説明すると、4枚の障子20A,20Bをそれぞれ閉じ位置に配置した場合に、外障子20Aの戸先框22Aに対応した上枠12の両端部及び内障子20Bの召し合わせ框23Bに対応した2カ所にそれぞれ当接部材40が配設してある。上枠12の両端部に配設した当接部材40(以下、区別する場合に端部用当接部材40Aという)は、外障子20Aが閉じ位置に配置された状態から少し開いた位置までの間においてダンパ部材30の転動ローラ32が当接基部41に当接し、かつスロープ部42が上枠12の中心部側に位置する状態で上枠12の内方レール部12Bに隣接した位置に固定してある。外障子20Aの開く方向とは、戸先框22Aが縦枠11から離れる方向である。内障子20Bの召し合わせ框23Bに対応して配設した当接部材40(以下、中央部用当接部材40Bという)は、内障子20Bが閉じ位置に配置された状態から少し開いた位置までの間においてダンパ部材30の転動ローラ32が当接基部41に当接し、かつスロープ部42が上枠12の端部側に位置する状態で上枠12に固定してある。内障子20Bの開く方向とは、召し合わせ框23Bに対向する縦枠11に近接する方向である。
【0023】
上記のように構成した建具では、外障子20Aを閉じ位置に配置した場合、戸先框22Aの見付け面が縦枠11の内方縦見付け壁部11cによって覆われて室内側から視認することが困難となり、外観品質の点で有利となる。しかも、戸先框22Aの見込み面22Ab1及び召し合わせ框23Bの見込み面23b1にそれぞれダンパ部材30を設けるようにしている。これにより、例えば開いた状態にある外障子20Aを閉じる方向にスライドさせると、ダンパ部材30の転動ローラ32がスロープ部42を介して端部用当接部材40Aの当接基部41に当接した状態となる。このため、流体シリンダ31が縮退する際の抵抗により外障子20Aのスライド速度が減じられ、あるいは停止されることになり、外障子20Aを勢い良く閉じ位置に向けてスライドさせた場合にも、縦枠11に衝突する事態を防止することが可能となる。同様に、開いた状態にある内障子20Bを閉じる方向にスライドさせると、ダンパ部材30の転動ローラ32がスロープ部42を介して中央部用当接部材40Bの当接基部41に当接することにより、内障子20Bのスライド速度が減じられ、あるいは停止されることになり、内障子20Bを閉じ位置に向けて勢い良くスライドさせた場合にも、もう一方の内障子20Bに衝突する事態を防止することが可能となる。従って、戸先框22Aや召し合わせ框23Bの見付け方向に沿った寸法を小さく構成した建具にあっても、障子20A,20Bを勢い良くスライドさせた場合にも衝突する事態を防止することができる。さらに、ダンパ部材30の周囲をカバー部材33によって覆っているため、ダンパ部材30を戸先框22Aの外部に臨む見込み面22Ab1及び召し合わせ框23Bの外部に臨む見込み面23a1に取り付けているものの、建具の外観品質が損なわれるおそれがない。
【0024】
また、上述の建具では、端部用当接部材40Aと中央部用当接部材40Bとが、同じ内方レール部12Bと上方仕切壁部12dとの間に設けてある。従って、例えば、図9に示すように、内障子20Bを開き方向に向けてスライドさせた場合には、ダンパ部材30が端部用当接部材40Aに当接した状態となる。これにより、内障子20Bを勢い良く開き方向にスライドさせた場合にも内障子20Bのダンパ部材30が外障子20Aのダンパ部材30に衝突する事態を防止することができる。同様に、外障子20Aを開き方向に向けてスライドさせた場合には、ダンパ部材30が中央部用当接部材40Bに当接した状態となり、外障子20Aを勢い良く開き方向にスライドさせた場合にも外障子20Aのダンパ部材30が内障子20Bのダンパ部材30に衝突する事態を防止することができる。
【0025】
さらに、外障子20Aについては、ダンパ部材30が当接する端部用当接部材40Aが内方レール部12Bに設けてある。換言すれば外方レール部12Aに対して見込み方向にずれた位置に端部用当接部材40Aが設けてある。このため、枠体10に対して外障子20Aをいかなる位置に配置した場合にも端部用当接部材40Aとダンパ部材30との当接状態を視認することが可能となり、ブレーキ装置の調整作業を容易化することができる等の利点がある。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、障子を4枚備えた建具を例示しているが、障子の数はこれに限定されず、障子を2枚備えた引き違い窓に適用したり、1枚の障子のみがスライド可能となるように設けられた片引き窓に適用することも可能である。また、外障子20Aを閉じ位置に配置した場合に戸先框22Aが縦枠11によって覆われるように構成した、いわゆる隠し框となる建具を例示しているが、必ずしもこれに限定されない。さらに、外障子20Aの召し合わせ框23A及び内障子20Bの縦框22B,23Bとして、枠体10の見付け面を超えて突出する縦桟部22b,23bを備えたものを例示しているが、必ずしもこれに限定されない。
【0027】
また、上述した実施の形態では、上枠12の内方レール部12Bと上方仕切壁部12dとの間に当接部材40を設けるとともに、当接部材40に当接可能となるようにダンパ部材30を縦框22A,23Bの見込み面22Ab1,23a1に取り付けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、外障子20Aの戸先框22Aにおいては、突出部22Abを省略し、戸先框基部22Aaの室内に臨む見付け面にダンパ部材30を取り付けることも可能である。また、外方レール部12Aに当接部材を設けても良い。さらに、図10図11に示す変形例1のように、上枠12よりも室内側となる部分に上額縁15を備えた建具にあっては、上額縁15の内周側となる見込み面15aに当接部材40を配設し、かつこの当接部材40に当接可能となるように、内障子20Bの召し合わせ框23Bに対して縦桟部23bの外周側となる見込み面23b1にダンパ部材30を取り付けても良い。変形例1において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0028】
またさらに、上述した実施の形態では、1枚の障子20A,20Bにそれぞれダンパ部材30を1つずつ取り付けるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12図13に示す変形例2のように、1枚の外障子20Aに2つのダンパ部材30を並設するとともに、これらのダンパ部材30に対応して上枠12に当接部材40を設けることも可能である。この場合、当接部材40としては、2つのダンパ部材30に対して共用となる幅の広い当接部材40を唯一設けるようにしても良いし、ダンパ部材30のそれぞれに対して個別の当接部材40を設けても良い。ダンパ部材30に対して個別の当接部材40を設ける場合には、例えば図14に示すように、互いに当接基部41の長さの異なる当接部材40L,40Sを適用し、かつスロープ部42の先端位置及び終端位置が互いに異なるように上枠12に設けても良い。この建具によれば、一方のダンパ部材30(図示の例では室内側のダンパ部材)のみを先に動作させ、途中から2つのダンパ部材30を共に動作させる等、外障子20Aのスライド速度を途中で変更することができる。従って、例えば外障子20Aが閉じ位置に近づくに従ってスライド速度を大きく減少させることができる等、外障子20Aのスライド速度を任意に調整することが可能となる利点がある。なお、ダンパ部材30を複数設ける障子は外障子である必要はなく、内障子に適用しても良いのはもちろんである。また変形例2において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0029】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体に対して障子がスライド可能に配設され、前記障子に設けられたダンパ部材を当接部材に当接させることにより前記枠体に対する前記障子のスライド速度を減少させるブレーキ装置を備えた建具であって、前記障子を構成する框の表面に前記ダンパ部材が取り付けられていることを特徴としている。框の表面とは、外部に表れる見込み面や見付け面等の面である。中空部を有する框においても外部に現れる面のみが対象となり、中空部に表れる面を含むものではない。
この発明によれば、框の表面にダンパ部材を取り付けるようにしているため、框の見付け方向に沿った寸法に制限されることなく取り付けが可能であり、障子を勢い良くスライドさせた場合にも突き合わせの障子や枠体に衝突する事態を防止することができる。
【0030】
また本発明は、上述した建具において、前記障子は、前記枠体に対して左右方向にスライドするものであり、前記当接部材は、前記枠体を構成する横枠に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、当接部材が枠体に設けられているため、ブレーキ装置を配置するための新たなスペースを要することがなく、建具の設置場所が制限される懸念もない。
【0031】
また本発明は、上述した建具において、前記障子は、前記枠体に対して左右方向にスライドするものであり、前記障子の戸先となる縦框は、前記障子を閉じ位置に配置した場合に室内に臨む見付け面が前記枠体を構成する縦枠によって覆われるように構成され、前記ダンパ部材の見付け方向に沿った寸法は、前記縦框の見付け方向に沿った寸法よりも大きく構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、いわゆる隠し框と称される縦框の見付け方向に沿った寸法を大きく確保が困難な建具においてもブレーキ装置を適用することが可能となる。
【0032】
また本発明は、上述した建具において、前記枠体には室外側の外障子のスライドをガイドする外方レール部が設けられているとともに、室内側の内障子のスライドをガイドする内方レール部が設けられ、前記外障子及び前記内障子のいずれか一方には、前記外方レール部及び前記内方レール部のいずれか他方に対向する位置まで突出部が設けられ、かつ前記他方のレール部に隣接して前記当接部材が設けられ、前記当接部材に当接可能となるように前記ダンパ部材が前記突出部に取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、2つの障子で当接部材を共用することができ、部品点数を削減することができる等の利点がある。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記障子には、前記ダンパ部材が見込み方向に複数並設されていることを特徴としている。
この発明によれば、ダンパ部材を小型化した場合にも障子のスライド速度を確実に減少させることが可能となる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記ダンパ部材に対して前記当接部材が個別に設けられ、前記当接部材は前記ダンパ部材との当接開始位置が互いに異なるように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、障子のスライド速度を途中で変更できる等の利点がある。
【0035】
また本発明は、上述した建具において、前記ダンパ部材は、周囲がカバー部材によって覆われていることを特徴としている。
この発明によれば、カバー部材によってダンパ部材が覆われるため、外観品質の点で有利となる。
【符号の説明】
【0036】
10 枠体、11 縦枠、11c 内方縦見付け壁部、12 上枠、12A 外方レール部、12B 内方レール部、15 上額縁、15a 見込み面、20A 外障子、20B 内障子、22A 戸先框、22Ab 突出部、22Ab1 見込み面、23B 召し合わせ框、23a1 見込み面、23b 縦桟部、30 ダンパ部材、33 カバー部材、40,40A,40B,40L,40S 当接部材、41 当接基部、42 スロープ部
図1
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図14