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特開2024-13039地中構造体、地中構造体の施工方法、及び地中構造体の施工用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013039
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】地中構造体、地中構造体の施工方法、及び地中構造体の施工用治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/48 20060101AFI20240124BHJP
   E02D 5/44 20060101ALI20240124BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E02D5/48
E02D5/44 A
E02D5/80 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114942
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新井 淳
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA12
2D041BA23
2D041CA03
2D041DB02
(57)【要約】
【課題】耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる地中構造体、地中構造体の施工方法、及び地中構造体の施工用治具を提供する。
【解決手段】地中構造体10は、中空筒状の杭11と、杭11の内側に配置され、杭11の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機構を有する補強部材12とを備えている。杭11は、拡張した状態の補強部材12によって、基端部30aを起点にして杭11の外側に向けて押し広げられた一対の突出部30を有している。突出部30の先端部30bは、杭11と切り離されている。補強部材12は、基端部30aよりも鉛直方向上側又は下側に位置している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の杭と、
前記杭の内側に配置され、前記杭の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機構を有する補強部材と、
を備え、
前記杭は、拡張した状態の前記補強部材によって、基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた一対の突出部を有し、
前記突出部の先端部は、前記杭と切り離されており、
前記補強部材は、前記基端部よりも鉛直方向上側又は下側に位置していることを特徴とする地中構造体。
【請求項2】
前記補強部材としての第1補強部材と、前記補強部材としての第2補強部材とを備え、
前記杭は、拡張した状態の前記第1補強部材によって、前記基端部としての第1基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた前記一対の突出部としての一対の第1突出部と、拡張した状態の前記第2補強部材によって、前記基端部としての第2基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた前記一対の突出部としての一対の第2突出部とを有し、
前記一対の第2突出部は、前記杭の延在方向において前記一対の第1突出部とは異なる位置に設けられるとともに、前記杭の周方向において前記一対の第1突出部に対して90度ずれた位置に設けられている請求項1に記載の地中構造体。
【請求項3】
中空筒状の杭を地中に打ち込む打ち込み工程と、
前記地中に打ち込まれた前記杭に対し、鉛直方向の上側又は下側に開口する形状の一対の切り込みを形成する切断工程と、
拡張機構を有する補強部材を前記杭の内側に挿入する挿入工程と、
前記補強部材を前記杭の延在方向と直交する方向に拡張させることによって、前記杭における前記切り込みに囲まれた部分を前記杭の外側に押し広げる拡張工程と、
を有する地中構造体の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の地中構造体の施工方法における前記切断工程に用いられる地中構造体の施工用治具であって、
前記杭を切断可能な切断手段と、
前記杭の内周面に沿う形状の外周面を有する中空筒状のガイド部材と、
前記切断手段を前記ガイド部材の内外で移動させる移動機構と、
を備える地中構造体の施工用治具。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記ガイド部材の延在方向における寸法を示す第1目盛りを有している請求項4に記載の地中構造体の施工用治具。
【請求項6】
前記ガイド部材は、中空円筒状であり、前記ガイド部材の周方向における角度を示す第2目盛りを有している請求項4又は請求項5に記載の地中構造体の施工用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造体、地中構造体の施工方法、及び地中構造体の施工用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電パネルの架台等の地上構造物は、地中に打ち込まれた杭によって支持されている。このような杭には、例えば、地上構造物が風で煽られることによって引抜方向への力が作用したり、地上構造物の重みによって沈降方向への力が作用したりする。したがって、地中に打ち込まれた杭に対し、耐引抜性及び耐沈降性の試験が行われる。しかしながら、杭が打ち込まれた地盤が軟弱な場合には、所望の耐引抜性及び耐沈降性が得られないことがある。この場合、杭の耐引抜性及び耐沈降性を向上させる必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1の基礎杭は、耐引抜性及び耐沈降性を向上するための構成として、杭の外側に張り出した張り出し部を有している。張り出し部は、杭の打ち込み後に形成される。具体的には、作業者は、杭を地中に打ち込んだ後、地中に打ち込まれた杭の先端を地上に向けて上昇させることによって杭を縮める。作業者が杭を縮める際、杭の一部が外側に張り出すことによって張り出し部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5756551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の基礎杭では、張り出し部を形成する際に杭の全長が短くなるため、張り出し部の上部は鉛直方向下側に移動するとともに、張り出し部の下部は鉛直方向上側に移動する。この場合、張り出し部の上下において杭とその周囲の土壌とがずれるため、杭の摩擦が低下することにより、杭の耐引抜性及び耐沈降性が低下するおそれがある。つまり、特許文献1の基礎杭は、張り出し部が設けられていない場合と比較すると耐引抜性及び耐沈降性が向上するものの、杭と杭の周囲の土壌との摩擦による耐引抜性及び耐沈降性には向上の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための地中構造体は、中空筒状の杭と、前記杭の内側に配置され、前記杭の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機構を有する補強部材と、を備え、前記杭は、拡張した状態の前記補強部材によって、基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた一対の突出部を有し、前記突出部の先端部は、前記杭と切り離されており、前記補強部材は、前記基端部よりも鉛直方向上側又は下側に位置している。
【0007】
上記地中構造体において、前記補強部材としての第1補強部材と、前記補強部材としての第2補強部材とを備え、前記杭は、拡張した状態の前記第1補強部材によって、前記基端部としての第1基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた前記一対の突出部としての一対の第1突出部と、拡張した状態の前記第2補強部材によって、前記基端部としての第2基端部を起点にして前記杭の外側に押し広げられた前記一対の突出部としての一対の第2突出部とを有し、前記一対の第2突出部は、前記杭の延在方向において前記一対の第1突出部とは異なる位置に設けられるとともに、前記杭の周方向において前記一対の第1突出部に対して90度ずれた位置に設けられていてもよい。
【0008】
上記問題点を解決するための地中構造体の施工方法は、中空筒状の杭を地中に打ち込む打ち込み工程と、前記地中に打ち込まれた前記杭に対し、鉛直方向の上側又は下側に開口する形状の一対の切り込みを形成する切断工程と、拡張機構を有する補強部材を前記杭の内側に挿入する挿入工程と、前記補強部材を前記杭の延在方向と直交する方向に拡張させることによって、前記杭における前記切り込みに囲まれた部分を前記杭の外側に押し広げる拡張工程と、を有する。
【0009】
上記地中構造体の施工方法における前記切断工程に用いられる地中構造体の施工用治具は、前記杭を切断可能な切断手段と、前記杭の内周面に沿う形状の外周面を有する中空筒状のガイド部材と、前記切断手段を前記ガイド部材の内外で移動させる移動機構と、を備える。
【0010】
上記地中構造体の施工用治具において、前記ガイド部材は、前記ガイド部材の延在方向における寸法を示す第1目盛りを有していてもよい。
上記地中構造体の施工用治具において、前記ガイド部材は、中空円筒状であり、前記ガイド部材の周方向における角度を示す第2目盛りを有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カーポート及び地中構造体を模式的に示す斜視図である。
図2】カーポート及び地中構造体を模式的に示す側面図である。
図3】実施形態における地中構造体を示す断面図である。
図4】実施形態における地中構造体を示す斜視図である。
図5】打ち込み工程後の杭を示す側面図である。
図6】切断工程後の杭を示す側面図である。
図7】切断工程後の杭を示す側面図である。
図8】第1挿入工程を示す断面図である。
図9】第1拡張工程を示す断面図である。
図10】第2挿入工程を示す断面図である。
図11】第2拡張工程を示す断面図である。
図12】実施形態における地中構造体の施工用治具を示す側面図である。
図13】実施形態における地中構造体の施工用治具を示す平面図である。
図14】実施形態における地中構造体の施工用治具の使用方法を示す側面図である。
図15】実施形態における地中構造体の施工用治具の使用方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、地中構造体、地中構造体の施工方法、及び地中構造体の施工用治具を具体化した一実施形態を図1図15にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、カーポート100は、屋根101と、屋根101を支持する複数本の支柱102とを有している。屋根101には、太陽光発電パネル200が載置されている。したがって、本実施形態のカーポート100は、太陽光発電パネル200の架台でもある。屋根101は、水平方向に対して傾斜するように設けられている。これにより、屋根101に載置された太陽光発電パネル200も、水平方向に対して傾斜している。各支柱102の下端部は、地中UGに打ち込まれた地中構造体10に接続されている。カーポート100は、地中構造体10を介して地盤によって支持されている。
【0014】
<地中構造体の構成>
図3及び図4に示すように、地中構造体10は、中空筒状の杭11と、補強部材12としての第1補強部材12aと、補強部材12としての第2補強部材12bと、モルタル13とを備えている。
【0015】
本実施形態の杭11は、中空円筒状である。杭11は、スクリュー部11aと杭頭11bとを有している。スクリュー部11aは、杭11の第1端部に設けられている。スクリュー部11aは、杭11の外周面から突出している。スクリュー部11aは、螺旋状に延びている。杭頭11bは、杭11の第1端部とは反対側の端部である第2端部に設けられている。杭頭11bは、杭11の周縁部から径方向外側に延出する円環状の板である。
【0016】
図3に示すように、杭11は、延在方向が鉛直方向と一致するように地中UGに打ち込まれている。杭11は、スクリュー部11aが鉛直方向下側に位置し、かつ杭頭11bが鉛直方向上側に位置するように設けられている。スクリュー部11aを含む杭11の大部分は、地中UGに埋設されている。杭頭11b及び杭11における杭頭11b側の端部は、地上に位置している。カーポート100の支柱102は、杭11の杭頭11bに接続されている。
【0017】
第1補強部材12a及び第2補強部材12bは、杭11の内側に配置されている。第1補強部材12aと第2補強部材12bは、杭11の延在方向に並んでいる。第2補強部材12bは、杭11の延在方向において第1補強部材12aよりも杭頭11b側、すなわち第1補強部材12aよりも鉛直方向上側に位置している。
【0018】
本実施形態の補強部材12は、パンタグラフジャッキである。補強部材12は、ねじ棒21と、菱形形状のアーム22とを有している。ねじ棒21は、アーム22が有する4つの角部のうち、対角に位置する一対の角部を連結している。ねじ棒21が第1の回転方向に回転すると、ねじ棒21の軸方向におけるアーム22の幅は縮小するとともに、ねじ棒21の軸方向と直交する方向におけるアーム22の幅は拡張する。一方、ねじ棒21が第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向に回転すると、ねじ棒21の軸方向におけるアーム22の幅は拡張するとともに、ねじ棒21の軸方向と直交する方向におけるアーム22の幅は縮小する。
【0019】
補強部材12は、ねじ棒21の軸方向が杭11の延在方向に一致するように杭11の内側に配置されている。したがって、補強部材12は、杭11の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機構を有している。本実施形態では、杭11の延在方向と直交する方向は、杭11の径方向である。したがって、本実施形態の補強部材12は、杭11の径方向に拡張可能な拡張機構を有している。
【0020】
補強部材12が杭11の径方向に拡張していない状態において、杭11の径方向における補強部材12の幅は杭11の内径よりも小さい。このため、補強部材12は、杭11の径方向に拡張していない状態では、杭11の内側を杭11の延在方向に移動可能である。補強部材12が杭11の径方向に拡張すると、杭11の径方向における補強部材12の幅は杭11の内径よりも大きくなる。このため、補強部材12は、杭11の外側に突出する。
【0021】
杭11は、一対の突出部30としての一対の第1突出部31と、一対の突出部30としての一対の第2突出部32とを有している。つまり、杭11は、一対の突出部30を2セット有している。
【0022】
一方の第1突出部31と他方の第1突出部31は、杭11の延在方向において同じ位置に設けられている。一方の第1突出部31と他方の第1突出部31は、杭11の周方向において180度ずれた位置に設けられている。一方の第2突出部32と他方の第2突出部32は、杭11の延在方向において同じ位置に設けられている。一方の第2突出部32と他方の第2突出部32は、杭11の周方向において180度ずれた位置に設けられている。
【0023】
一対の第2突出部32は、杭11の延在方向において一対の第1突出部31とは異なる位置に設けられている。一対の第2突出部32は、杭11の延在方向において一対の第1突出部31よりも杭頭11b側、すなわち一対の第1突出部31よりも鉛直方向上側に位置している。一対の第2突出部32は、杭11の周方向において一対の第1突出部31に対して90度ずれた位置に設けられている。
【0024】
各第1突出部31は、杭11の外周面から杭11の外側に突出している。第1突出部31が延びる方向は、杭11の延在方向に対して傾斜している。第1突出部31は、スクリュー部11a側、すなわち鉛直方向下側に向かって延びている。第1突出部31は、基端部30aとしての第1基端部31aと、先端部30bとしての第1先端部31bとを有している。第1基端部31aは、杭11と繋がっている。第1突出部31における第1基端部31a以外の部分は、杭11から切り離されている。したがって、第1先端部31bは、杭11から切り離されている。
【0025】
一対の第1突出部31は、拡張した状態の第1補強部材12aによって、杭11の一部が第1基端部31aを起点にして杭11の外側に押し広げられることによって形成されている。第1補強部材12aのアーム22の一部は、杭11の外側に突出している。第1補強部材12aは、第1基端部31aよりも鉛直方向下側に位置している。杭11は、杭11の一部が一対の第1突出部31として外側に押し広げられることによって形成された一対の第1貫通孔33を有している。
【0026】
各第2突出部32は、杭11の外周面から杭11の外側に突出している。第2突出部32が延びる方向は、杭11の延在方向に対して傾斜している。第2突出部32は、杭頭11b側、すなわち鉛直方向上側に向かって延びている。第2突出部32は、基端部30aとしての第2基端部32aと、先端部30bとしての第2先端部32bとを有している。第2基端部32aは、杭11と繋がっている。第2突出部32における第2基端部32a以外の部分は、杭11から切り離されている。したがって、第2先端部32bは、杭11から切り離されている。
【0027】
一対の第2突出部32は、拡張した状態の第2補強部材12bによって、杭11の一部が第2基端部32aを起点にして杭11の外側に押し広げられることによって形成されている。第2補強部材12bのアーム22の一部は、杭11の外側に突出している。第2補強部材12bは、第2基端部32aよりも鉛直方向上側に位置している。杭11は、杭11の一部が一対の第2突出部32として外側に押し広げられることによって形成された一対の第2貫通孔34を有している。
【0028】
図3に示すように、第1突出部31及び第2突出部32が杭11の外側に押し広げられた後、モルタル13は、杭11の内側に充填される。杭11の内側に充填されたモルタル13は固化する。このため、杭11の内側には、固化したモルタル13が存在する。杭11と補強部材12とは、モルタル13の固化によって互いに固定される。モルタル13の一部は、第1貫通孔33及び第2貫通孔34から杭11の外側に流れ出すことによって、第1突出部31及び第2突出部32が押し広げられることによって生じた地中UGの空間に充填された後、固化する。
【0029】
<地中構造体の施工方法>
地中構造体の埋設方法は、打ち込み工程と、切断工程と、挿入工程としての第1挿入工程と、拡張工程としての第1拡張工程と、挿入工程としての第2挿入工程と、拡張工程としての第2拡張工程と、充填工程とを有している。
【0030】
図5に示すように、打ち込み工程は、杭11を地中UGに打ち込む工程である。本実施形態の打ち込み工程では、杭11を回転させながら地中UGに打ち込む。杭11は、スクリュー部11a側の端部から順に地中UGに打ち込まれる。なお、打ち込み工程において地中UGに打ち込まれる杭11は、一対の第1突出部31及び一対の第2突出部32を有していない。
【0031】
図6及び図7に示すように、切断工程は、地中UGに打ち込まれた杭11に対し、鉛直方向上側又は下側に開口する形状の一対の切り込み40を形成する工程である。一方の切り込み40と他方の切り込み40は、杭11の延在方向において同じ位置に設けられている。一方の切り込み40と他方の切り込み40は、杭11の周方向において180度ずれた位置に設けられている。
【0032】
本実施形態の切断工程では、地中UGに打ち込まれた杭11に対し、一対の切り込み40としての一対の第1切り込み41と、一対の切り込み40としての一対の第2切り込み42とを形成する。つまり、本実施形態の切断工程では、地中UGに打ち込まれた杭11に対し、一対の切り込み40を2セット形成する。本実施形態の切断工程は、後述する治具50によって行われる。
【0033】
図6に示すように、第1切り込み41は、鉛直方向上側に開口する形状である。第1切り込み41は、一対の第1軸方向切り込み41aと、第1周方向切り込み41bとを有している。各第1軸方向切り込み41aは、杭11の延在方向に沿って直線状に延びている。第1周方向切り込み41bは、一対の第1軸方向切り込み41aの下端を接続している。第1周方向切り込み41bは、杭11の周方向に沿って延びている。本実施形態の第1切り込み41は、コ字型である。
【0034】
図7に示すように、第2切り込み42は、鉛直方向下側に開口する形状である。第2切り込み42は、一対の第2軸方向切り込み42aと、第2周方向切り込み42bとを有している。各第2軸方向切り込み42aは、杭11の延在方向に沿って直線状に延びている。第2周方向切り込み42bは、一対の第2軸方向切り込み42aの上端を接続している。第2周方向切り込み42bは、杭11の周方向に沿って延びている。本実施形態の第2切り込み42は、コ字型である。
【0035】
図8に示すように、第1挿入工程は、杭11の内側に第1補強部材12aを挿入する工程である。第1補強部材12aは、ねじ棒21の軸方向が杭11の延在方向と一致するように杭11の内側に挿入される。第1補強部材12aは、杭11の延在方向と直交する方向において縮小した状態で杭11の内側に挿入される。第1補強部材12aは、アーム22が杭11における第1切り込み41に囲まれた部分と対向する位置まで下降される。
【0036】
図9に示すように、第1拡張工程は、杭11の内側に挿入された第1補強部材12aを杭11の延在方向と直交する方向に拡張する工程である。具体的には、作業者は、第1補強部材12aのねじ棒21に接続された回転ハンドル60を回転させることによってねじ棒21を回転させる。これにより、第1補強部材12aは、杭11の延在方向と直交する方向に拡張する。なお、杭11の内面と第1補強部材12aとの間には、図示しない規制部材が配置されている。規制部材によって、ねじ棒21の回転に伴ってアーム22も回転することが規制されている。そして、杭11の延在方向と直交する方向における第1補強部材12aの幅が杭11の内径よりも大きくなると、杭11における第1切り込み41に囲まれた部分は、第1補強部材12aによって、杭11の外側に押し広げられる。詳しくは、杭11における第1切り込み41に囲まれた部分は、一対の第1軸方向切り込み41aの上端の間に位置する部分を起点にして、杭11の外側に押し広げられる。その結果、杭11における第1切り込み41に囲まれた部分は、杭11の外側に突出する一対の第1突出部31になる。
【0037】
図10に示すように、第2挿入工程は、杭11の内側に第2補強部材12bを挿入する工程である。第2補強部材12bは、ねじ棒21の軸方向が杭11の延在方向と一致するように杭11の内側に挿入される。第2補強部材12bは、杭11の延在方向と直交する方向において縮小した状態で杭11の内側に挿入される。第2補強部材12bは、アーム22が杭11における第2切り込み42に囲まれた部分と対向する位置まで下降される。
【0038】
図11に示すように、第2拡張工程は、杭11の内側に挿入された第2補強部材12bを杭11の延在方向と直交する方向に拡張する工程である。具体的には、作業者は、第2補強部材12bのねじ棒21に接続された回転ハンドル60を回転させることによってねじ棒21を回転させる。これにより、第2補強部材12bは、杭11の延在方向と直交する方向に拡張する。なお、杭11の内面と第2補強部材12bとの間には、図示しない規制部材が配置されている。規制部材によって、ねじ棒21の回転に伴ってアーム22も回転することが規制されている。そして、杭11の延在方向と直交する方向における第2補強部材12bの幅が杭11の内径よりも大きくなると、杭11における第2切り込み42に囲まれた部分は、第2補強部材12bによって、杭11の外側に押し広げられる。詳しくは、杭11における第2切り込み42に囲まれた部分は、一対の第2軸方向切り込み42aの下端の間に位置する部分を起点にして、杭11の外側に押し広げられる。その結果、杭11における第2切り込み42に囲まれた部分は、杭11の外側に突出する一対の第2突出部32になる。
【0039】
図示しないが、充填工程は、杭11の内側にモルタル13を充填する工程である。杭11の内側に充填されたモルタル13が固化することによって、杭11と補強部材12とが固定される。
【0040】
<治具の構成>
図12及び図13に示すように、切断工程に用いられる治具50は、ディスクグラインダ51と、中空筒状のガイド部材52と、ラボジャッキ53とを備えている。
【0041】
ディスクグラインダ51は、筐体51aと、回転軸51bと、切断手段としてのカッタ51cとを有している。筐体51aには、図示しないモータが内蔵されている。モータは、回転軸51bを回転駆動する。カッタ51cは、ディスク状である。カッタ51cは、回転軸51bに連結されている。カッタ51cは、回転軸51bと一体回転する。
【0042】
なお、杭11に対し、延在方向に延びる切り込みを形成する際には、横軸型のディスクグラインダ51が用いられる。横軸型のディスクグラインダ51とは、回転軸51bが筐体51aの長手方向に対して直交するように延びているディスクグラインダ51のことである。杭11に対し、周方向に延びる切り込みを形成する際には、縦軸型のディスクグラインダ51が用いられる。縦軸型のディスクグラインダ51とは、回転軸51bが筐体51aの長手方向に沿って延びているディスクグラインダ51のことである。
【0043】
ガイド部材52は、杭11と同形状である。本実施形態のガイド部材52は、中空円筒状である。ガイド部材52の外径は、杭11の内径よりも僅かに小さい。したがって、ガイド部材52の外周面は、杭11の内周面に沿う形状である。ガイド部材52は、ガイド部材52の内外を連通させる複数の窓部52aを有している。ガイド部材52は、第1目盛りM1を有している。第1目盛りM1は、ガイド部材52の外周面に設けられている。第1目盛りM1は、ガイド部材52の延在方向における寸法を示すための目盛りである。
【0044】
図13に示すように、ガイド部材52は、第2目盛りM2を有している。第2目盛りM2は、ガイド部材52の延在方向における端面に設けられている。第2目盛りM2は、ガイド部材52の周方向における角度を示すための目盛りである。
【0045】
ラボジャッキ53は、ガイド部材52の内側に設けられている。ラボジャッキ53は、ガイド部材52の軸方向と直交する方向に拡張可能に設けられている。ラボジャッキ53の拡張方向における第1端部は、ガイド部材52の内周面に固定されている。ラボジャッキ53の拡張方向における第1端部とは反対側の端部である第2端部には、ディスクグラインダ51の筐体51aが取り付けられている。筐体51aの長手方向は、ガイド部材52の延在方向と一致している。
【0046】
図12及び図13に示すように、ラボジャッキ53がガイド部材52の軸方向と直交する方向に拡張していない状態では、カッタ51cは、ガイド部材52の内側に位置している。
【0047】
一方、図14及び図15に示すように、ラボジャッキ53がガイド部材52の軸方向と直交する方向に拡張している状態では、カッタ51cは、ガイド部材52の窓部52aを通ってガイド部材52の外側に突出している。つまり、ラボジャッキ53は、カッタ51cをガイド部材52の内外で移動させる移動機構を構成している。
【0048】
ラボジャッキ53には、棒状の昇降ハンドル54が連結されている。昇降ハンドル54は、ガイド部材52の延在方向に延びている。昇降ハンドル54は、ガイド部材52の外側に突出している。
【0049】
<治具の使用方法>
治具50の使用方法について、第1切り込み41の形成方法とともに説明する。なお、第2切り込み42の形成方法については、第1切り込み41の形成方法と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
作業者は、まず、ラボジャッキ53に横軸型のディスクグラインダ51を取り付ける。また、作業者は、カッタ51cがガイド部材52の内側に位置するようにラボジャッキ53を拡張前の状態にする。
【0051】
図12に示すように、作業者は、昇降ハンドル54を用いて治具50を杭11の内側に挿入する。治具50は、ガイド部材52の延在方向が杭11の延在方向と一致する状態で杭11の内側に挿入される。上述したように、ガイド部材52の外周面は、杭11の内周面に沿う形状である。このため、治具50は、ガイド部材52の外周面が杭11の内周面に沿う状態で杭11の内側に挿入される。作業者は、ガイド部材52に設けられた第1目盛りM1によって、杭11に対する治具50の挿入量を確認しながら、治具50を下降させる。作業者は、杭11における第1軸方向切り込み41aを形成する位置にカッタ51cが到達するまで治具50を下降させる。
【0052】
図14に示すように、作業者は、ラボジャッキ53を拡張させることによって、カッタ51cをガイド部材52の外側に移動させる。ガイド部材52の外側には杭11が位置しているため、ガイド部材52の外側に移動したカッタ51cは、杭11を切断する。そして、作業者は、カッタ51cをガイド部材52の外側に突出させた状態のまま、治具50を杭11の延在方向に移動させる。これにより、杭11には、1本目の第1軸方向切り込み41aが形成される。
【0053】
次に、作業者は、ラボジャッキ53を拡張前の状態に戻すことによって、カッタ51cをガイド部材52の内側に移動させる。次に、作業者は、治具50を杭11に対して杭11の周方向に回転させる。作業者は、ガイド部材52に設けられた第2目盛りM2によって、杭11に対する治具50の回転量を確認しながら、治具50を回転させる。
【0054】
作業者は、杭11における2本目の第1軸方向切り込み41aを形成する位置までカッタ51cが到達したら、ラボジャッキ53を拡張させることによって、カッタ51cをガイド部材52の外側に移動させる。また、作業者は、カッタ51cをガイド部材52の外側に突出させた状態のまま、治具50を杭11の延在方向に移動させる。これにより、杭11には、2本目の第1軸方向切り込み41aが形成される。
【0055】
作業者は、杭11に一対の第1軸方向切り込み41aを形成した後、ラボジャッキ53を拡張前の状態に戻すことによって、カッタ51cをガイド部材52の内側に移動させる。その後、作業者は、昇降ハンドル54を用いて治具50を上昇させることによって、杭11から治具50を取り出す。そして、作業者は、ラボジャッキ53から横軸型のディスクグラインダ51を取り外す。作業者は、ラボジャッキ53に縦軸型のディスクグラインダ51を取り付ける。作業者は、カッタ51cがガイド部材52の内側に位置するようにラボジャッキ53を拡張前の状態にする。
【0056】
作業者は、昇降ハンドル54を用いて治具50を杭11の内側に挿入する。上述したように、作業者は、ガイド部材52に設けられた第1目盛りM1によって、杭11に対する治具50の挿入量を確認しながら、治具50を下降させる。作業者は、杭11における第1周方向切り込み41bを形成する位置にカッタ51cが到達するまで治具50を下降させる。
【0057】
図15に示すように、ラボジャッキ53を拡張させることによって、カッタ51cをガイド部材52の外側に移動させる。また、作業者は、カッタ51cをガイド部材52の外側に突出させた状態のまま、治具50を杭11に対して杭11の周方向に回転させる。これにより、杭11には、第1周方向切り込み41bが形成される。
【0058】
作業者は、杭11に第1切り込み41を形成した後、ラボジャッキ53を拡張前の状態に戻すことによって、カッタ51cをガイド部材52の内側に移動させる。その後、作業者は、昇降ハンドル54を用いて治具50を上昇させることによって、杭11の内側から治具50を取り出す。
【0059】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)地中構造体10は、中空筒状の杭11と、杭11の内側に配置された補強部材12を備えている。補強部材12は、杭11の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機構を有している。杭11は、拡張した状態の補強部材12によって、基端部30aを起点にして杭11の外側に押し広げられた一対の突出部30を有している。突出部30の先端部30bは、杭11から切り離されている。
【0060】
この構成では、補強部材12が突出部30を介して地中UGの土壌を杭11の延在方向と直交する方向に押し付けるため、杭11は鉛直方向に移動しにくくなる。よって、杭11の耐引抜性及び耐沈降性が向上する。また、この構成では、杭11の全長が変化しないため、杭11と杭11の周囲の土壌とが鉛直方向に沿う方向、すなわち上下方向にずれることなく、一対の突出部30を杭11の外側に突出させることができる。よって、杭11の耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる。
【0061】
(2)杭11は、一対の第1突出部31及び一対の第2突出部32を有している。一対の第2突出部32は、杭11の延在方向において一対の第1突出部31とは異なる位置に設けられている。また、一対の第2突出部32は、杭11の周方向において、一対の第1突出部31に対して90度ずらした位置に設けられている。したがって、一対の第1突出部31と一対の第2突出部32とが、例えば、第1突出部31と第2突出部32が杭11の延在方向に並ぶように、杭11の周方向において同じ位置に設けられている場合と比較して、杭11が傾きにくくなる。
【0062】
(3)地中構造体10は、次のように施工される。まず、杭11が地中UGに打ち込まれる。次に、地中UGに打ち込まれた杭11に対し、鉛直方向上側又は下側に開口する形状の一対の切り込み40が形成される。そして、杭11の内側に挿入された補強部材12が杭11の延在方向と直交する方向に拡張されることによって、杭11における切り込み40に囲まれた部分が杭11の外側に押し広げられる。これにより、杭11における切り込み40に囲まれた部分は、一対の突出部30になる。つまり、杭11には、一対の突出部30が形成される。よって、杭11の耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる。
【0063】
(4)治具50は、地中構造体10の施工における切断工程に用いられる。治具50は、切断手段としてのカッタ51cと、杭11の内周面に沿う形状の外周面を有する中空筒状のガイド部材52と、カッタ51cをガイド部材52の内外で移動させる移動機構としてのラボジャッキ53とを備えている。
【0064】
切断工程において、治具50は、杭11の内側に挿入される。このとき、治具50は、ガイド部材52の外周面が杭11の内周面に沿う状態で杭11の内側に挿入される。したがって、杭11の内側において治具50が動きにくくなるため、作業性が良好になる。また、カッタ51cは、ラボジャッキ53によってガイド部材52の内外を移動可能である。したがって、治具50を杭11の内側で移動させる際には、カッタ51cをガイド部材52の内側に位置させることにより、杭11における意図しない部分がカッタ51cによって切断されることを回避できる。また、杭11に切り込み40を形成する際には、カッタ51cをガイド部材52の外側に移動させることにより、カッタ51cによって杭11を切断できる。つまり、治具50を用いることによって、切断工程を容易に行うことができる。
【0065】
(5)治具50のガイド部材52は、ガイド部材52の延在方向における寸法を示す第1目盛りM1を有している。このため、作業者は、切断工程において、杭11に対する治具50の挿入量を確認することができる。したがって、杭11に対して延在方向における所望の位置に切り込み40を形成しやすくなる。
【0066】
(6)治具50のガイド部材52は、ガイド部材52の周方向における角度を示す第2目盛りM2を有している。このため、作業者は、切断工程において、杭11に対する治具50の回転量を確認することができる。したがって、杭11に対して周方向における所望の位置に切り込み40を形成しやすくなる。
【0067】
(7)本実施形態の杭11は、一対の第1突出部31と一対の第2突出部32とを有している。つまり、本実施形態の杭11は、一対の突出部30を2セット有している。したがって、杭11が一対の突出部30を1セットだけ有している場合と比較して、杭11の耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる。
【0068】
(8)本実施形態の補強部材12は、パンタグラフジャッキである。パンタグラフジャッキは、量産品であるため安価である。よって、地中構造体10のコストを削減できる。また、パンタグラフジャッキの耐荷重は数トンと大きいため、杭11の耐引抜性及び耐沈降性をより向上できる。
【0069】
(9)本実施形態では、杭11の内側に、モルタル13が充填される。したがって、杭11の内側にモルタル13が充填されない場合と比較して、地中構造体10の強度が高くなる。なお、補強部材12が一対の突出部30を介して土壌を押し付けることによって、杭11の耐引抜性及び耐沈降性は確保されている。したがって、杭11の内側にモルタル13を充填した後、モルタル13の固化を待たなくても、杭頭11bに対してカーポート100の支柱102を接続するといった次の工程に進むことができる。
【0070】
(10)本実施形態の杭11は、回転させながら打ち込まれる回転杭である。このため、例えば、杭11に切り込み40を形成した後、杭11を打ち込もうとすると、杭11の回転によって、杭11がねじ切れるおそれがある。これに対し、本実施形態では、杭11を地中UGに打ち込んだ後、杭11に対して切り込み40を形成する。したがって、杭11を打ち込む際に杭11がねじ切れることを回避できる。
【0071】
(11)カーポート100の屋根101は、水平方向に対して傾斜するように設けられている。このため、カーポート100は風に煽られやすい。したがって、杭11の耐引抜性を向上させることが特に効果的である。
【0072】
(12)杭11の耐引抜性及び耐沈降性を向上する方法として、例えば、杭11の周囲を掘り起こしてコンクリートを流し込む方法が考えられる。しかしながら、この場合、コンクリートが固化するまで次の工程に進むことができないため、工期が長くなる。また、杭11の周囲を掘り起こすため、残土の処理が必要になる。これに対し、本実施形態の地中構造体の施工方法は、固化工程を含まないため、工期を短くできる。また、土壌を掘り起こす工程も含まないため、残土の処理も不要である。
【0073】
(13)杭11の耐引抜性及び沈降性を向上する方法として、例えば、杭11の外周面からのスクリュー部11aの突出量を増大させることが考えられる。しかしながら、この場合には、杭11を地中UGに埋め込むために高トルクを出力できる大型の建機が必要になる。したがって、大型の建機が進入できないような狭い土地での杭11の打ち込みが困難になる。これに対し、本実施形態では、大型の建機を用いなくても、杭11の耐引抜性及び耐沈降性を向上できる。よって、大型の建機が進入できないような狭い土地であっても、地中構造体10を施工することができる。
【0074】
(14)杭11の耐沈降性を向上する方法として、例えば、杭11に対し、杭11の外周面から突出する沈降抑制板を設けることが考えられる。しかしながら、沈降抑制板が地上にある場合には邪魔になる。また、沈降抑制板を地中UGに埋設するためには、掘削作業が必要になる。これに対し、本実施形態では、補強部材12は、地中UGに埋設された杭11の内側に位置している。つまり、補強部材12は地中UGにあるため、邪魔になりにくい。また、補強部材12を地中UGに埋設するための掘削作業も不要である。
【0075】
(15)杭11は、杭11と別体の補強部材12によって杭11の外側に押し広げられる。このため、従来技術の基礎杭のような、杭の一部を杭の外側に突出させるための特別な構成を有する杭を用意する必要がなく、既存の杭を利用することができる。よって、地中構造体10のコストを削減できる。また、杭11に形成する一対の突出部30の数や杭11の延在方向における一対の突出部30の形成位置を調整することが容易である。
【0076】
(16)切り込み40が杭11の周方向の一方側又は他方側に開口する形状の場合、杭11の径が小さいと、杭11の周方向において切り込み40が設けられる範囲が大きくなることによって、杭11の強度が低下するおそれがある。これに対し、本実施形態では、切り込み40は、杭11の延在方向の一方側又は他方側に開口する形状である。したがって、杭11に切り込み40を設けたとしても、杭11の強度が低下しにくい。
【0077】
(17)本実施形態の治具50の移動機構は、ラボジャッキ53によって構成されている。ラボジャッキ53は量産品であるため安価である。したがって、治具50のコストを削減できる。
【0078】
(18)本実施形態の治具50のガイド部材52は、複数の窓部52aを有している。したがって、治具50を軽量化できる。
(19)杭11は、中空円筒状である。このため、切断工程において杭11に対し、同じ方向に延びる切り込みを複数形成する際には、杭11に対して治具50を周方向に回転させることによって、治具50を杭11から引き抜かなくても複数の切り込みを形成できる。
【0079】
(20)杭11は、回転させながら地中UGに打ち込まれる回転杭である。このため、狭い場所での杭11の打ち込みが可能である。また、杭11の打ち込み時の静穏性に優れる。また、スクリュー部11aが硬い地盤まで食い込む。また、残土の処理が不要である。
【0080】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0081】
○ 杭11の形状は、円筒状であるのが好ましいが、中空筒状であれば適宜変更されてもよい。例えば、杭11は、四角筒状や三角筒状であってもよい。この場合、切断工程において杭11に対し、同じ方向に延びる切り込みを複数形成する際には、1本の切り込みを形成する毎に治具50を杭11から引き抜く必要がある。
【0082】
○ 杭11は、回転させながら地中UGに打ち込まれる回転杭であるのが望ましいが、回転杭でなくてもよい。
○ 杭11は、スクリュー部11aを有していなくてもよい。
【0083】
○ 杭11は、スクリュー部11aの代わりに、杭11の先端部がねじられることによって形成されたスパイラル部を有していてもよい。
○ 杭11は、一対の第1突出部31を有し、かつ一対の第2突出部32を有していなくてもよい。この場合、第2補強部材12bは省略される。
【0084】
○ 杭11は、一対の第2突出部32を有し、かつ一対の第1突出部31を有していなくてもよい。この場合、第1補強部材12aは省略される。
○ 一対の第2突出部32は、杭11の周方向において一対の第1突出部31に対して90度ずれた位置に設けられていなくてもよい。例えば、一対の第1突出部31と一対の第2突出部32は、第1突出部31と第2突出部32とが杭11の延在方向に並ぶように、杭11の周方向において同じ位置に設けられていてもよい。
【0085】
○ 一対の第2突出部32は、一対の第1突出部31よりも鉛直方向下側に位置していてもよい。この場合、第2補強部材12bも、第1補強部材12aよりも鉛直方向下側に位置する。
【0086】
○ 杭11が一対の突出部30を複数セット有する場合、一対の突出部30の組み合わせは適宜変更されてもよい。例えば、杭11は、一対の第1突出部31を2セット以上有していてもよい。杭11は、一対の第2突出部32を2セット以上有していてもよい。杭11は、一対の第1突出部31を1セット以上有するとともに、一対の第2突出部32を1セット以上有していてもよい。
【0087】
なお、例えば、杭11が一対の突出部30を3セット有している場合には、3セットの一対の突出部30は、杭11の周方向において互いに60度ずれた位置に設けられていてもよい。
【0088】
○ 第1切り込み41の形状は、コ字型でなくてもよい。第1切り込み41の形状は、例えば、U字型、C字型、V字型であってもよい。
○ 第2切り込み42の形状は、コ字型でなくてもよい。第2切り込み42の形状は、例えば、U字型、C字型、V字型であってもよい。
【0089】
○ 補強部材12は、杭11の延在方向と直交する方向に拡張可能な拡張機能を有していれば、パンタグラフジャッキでなくてもよい。
○ 杭11の内側には、モルタル13の代わりにセメントやコンクリートが充填されてもよい。
【0090】
○ 杭11の内側には、モルタル13が充填されなくてもよい。
○ 切断工程は、上記実施形態の治具50以外の手段によって行われてもよい。例えば、レーザによって杭11を切断することによって、杭11に切り込み40を形成してもよい。
【0091】
○ 切断工程において、一対の第1軸方向切り込み41a、第1周方向切り込み41b、一対の第2軸方向切り込み42a、及び第2周方向切り込み42bを形成する順番は適宜変更されてもよい。例えば、一対の第1軸方向切り込み41a及び一対の第2軸方向切り込み42aを形成した後、第1周方向切り込み41b及び第2周方向切り込み42bを形成してもよい。
【0092】
○ 切断手段は、ディスクグラインダ51のカッタ51cに限定されない。切断手段は、杭11を切断可能であれば適宜変更されてもよい。切断手段は、例えば、チェーンソーであってもよい。
【0093】
○ ガイド部材52は、第1目盛りM1を有していなくてもよい。
○ ガイド部材52は、第2目盛りM2を有していなくてもよい。
○ 移動機構は、ラボジャッキ53に限定されない。移動機構は、切断手段をガイド部材52の内外で移動させることができるのであれば適宜変更されてもよい。
【0094】
○ カーポート100の屋根101には、太陽光発電パネル200が載置されていなくてもよい。
○ 地中構造体10は、カーポート100以外の地上構造物に適用されてもよい。地中構造体10は、例えば、バス停に適用されてもよい。なお、バス停の屋根には、太陽光発電パネル200が載置されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…地中構造体、11…杭、12…補強部材、12a…第1補強部材、12b…第2補強部材、30…突出部、30a…基端部、30b…先端部、31…第1突出部、31a…第1基端部、32…第2突出部、32a…第2基端部、40…切り込み、50…治具、51c…切断手段としてのカッタ、52…ガイド部材、53…移動機構としてのラボジャッキ、M1…第1目盛り、M2…第2目盛り、UG…地中。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15