(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130391
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】フラッフパルプ用パルプシート及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
D21B 1/06 20060101AFI20240920BHJP
D21H 11/04 20060101ALI20240920BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240920BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D21B1/06
D21H11/04
A61F13/511 200
A61F13/511 300
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040073
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】森下 徹
【テーマコード(参考)】
3B200
4L055
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA08
3B200BA14
3B200BB05
3B200BB21
3B200DB01
3B200DB02
3B200DC01
3B200DC02
4L055AA03
4L055AA04
4L055AC06
4L055AF09
4L055AG88
4L055AH29
4L055EA01
4L055EA04
4L055EA32
4L055FA04
(57)【要約】
【課題】広葉樹由来の木材パルプを用いた場合でも、製造時における解繊性に優れ、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好であるフラッフパルプ用パルプシートを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るフラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ及び界面活性剤を含有し、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であり、上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下である。上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ及び界面活性剤を含有し、
上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であり、
上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、
上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、
上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下であるフラッフパルプ用パルプシート。
【請求項2】
上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1に記載のフラッフパルプ用パルプシート。
【請求項3】
上記広葉樹晒クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量が10質量%以上100質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のフラッフパルプ用パルプシート。
【請求項4】
密度が0.50g/cm3以上0.65g/cm3以下である請求項1又は請求項2に記載のフラッフパルプ用パルプシート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のフラッフパルプ用パルプシートを用いた吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッフパルプ用パルプシート及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッフパルプは、木材パルプを機械的処理により解繊して製造されるものであり、使い捨て紙おむつ等の吸収性物品の吸収性部材として用いられている。
【0003】
このような吸収性物品に用いられるフラッフパルプ用のパルプとしては、嵩高性、水分吸収性及び解繊性が良好な針葉樹由来の木材パルプが広く用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、広葉樹由来の木材パルプは針葉樹由来のパルプに比べて比較的安価であるが、広葉樹由来の木材パルプは針葉樹由来のパルプに比べて、繊維長が短く繊維が密に詰まることでパルプシートの嵩高性が低くなるため、フラッフパルプ用パルプシートをフラッフパルプに解繊する際に未解繊のパルプが発生するおそれがある。未解繊のパルプの発生を低減するために、解繊強度を高める方法も考えられるが、解繊強度を高めると、通常の解繊強度で解繊可能なパルプ繊維に対しては過解繊となってしまい、微細繊維が発生しやすくなる。これにより、フラッフパルプ用パルプシートから吸収性物品を製造する工程において繊維が抜けやすくなることで、吸収性物品を構成する繊維の一部が欠けたり、部分的に薄くなるおそれがある。
【0006】
そこで、解繊性を向上させるために、例えばパルプ繊維同士の水素結合を阻害する界面活性剤をフラッフパルプ用パルプシートに添加した場合、解繊性は向上するが、パルプ繊維と水との親和性が低下する。そのため、解繊後のフラッフパルプの吸収性能が低下するおそれがある。また、フラッフパルプ用パルプシートに広葉樹由来の木材パルプを使用した場合、繊維長が短いことから、フラッフパルプ用パルプシートの空隙が減少するため、解繊しにくく過解繊となりやすくなり、解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度が低下するが、荷重をかけた状態での保水量は増加する傾向がある。このように、フラッフパルプにおける荷重をかけた状態での保水量が増加すれば、得られる吸収性物品からの液の逆戻りが発生しにくくなり、吸収性物品表面の使用時におけるさらっと感が向上する。一方、フラッフパルプにおける液の吸収速度が低下すると、吸収性物品表面に液が留まりやすくなり、吸収性物品表面の使用時におけるさらっと感も低下しやすくなる。このように、吸収性物品表面の使用時におけるさらっと感の向上の観点からは、フラッフパルプ用パルプシート解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度と荷重をかけた状態での保水量とがトレードオフの関係にあり、両者の良好なバランスが求められる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、広葉樹由来の木材パルプを用いた場合でも、製造時における解繊性に優れ、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好であるフラッフパルプ用パルプシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るフラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ及び界面活性剤を含有し、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であり、上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広葉樹由来の木材パルプを用いた場合でも、製造時における解繊性に優れ、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好であるフラッフパルプ用パルプシートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るフラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ及び界面活性剤を含有し、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であり、上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下である。
【0011】
当該フラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプを特定の質量比でバランスよく配合することで、フラッフパルプに針葉樹晒クラフトパルプによる液体の吸収性を付与するとともに、広葉樹晒クラフトパルプによる表面の緻密さ、肌のかぶれに対する抑制効果を付与できる。また、繊維長が短く繊維が密に詰まるため、フラッフパルプ用パルプシートの嵩高性が低くなりやすい広葉樹由来の木材パルプを含有する当該フラッフパルプ用パルプシートにおいて、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下であることで、吸収性能の低下を抑制しつつ嵩高性をさらに向上できるので、製造工程時における解繊性を向上できる。さらに、フラッフパルプ用パルプシート解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度と荷重をかけた状態での保水量とを良好なバランスに設定することができる。
従って、当該フラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹由来の木材パルプを用いた場合でも、製造時における解繊性に優れ、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好である。これにより、当該フラッフパルプ用パルプシートは得られる吸収性物品表面のさらっと感を向上できる。ここで、「kg/t」は絶乾パルプ1tあたりの質量[kg]を示す。
【0012】
上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることが好ましい。上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることで、広葉樹由来の木材パルプを含有する当該フラッフパルプ用パルプシートにおいても、フラッフパルプ用パルプシート解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量をともに良好としたまま嵩高性をさらに向上できるので、製造工程時における解繊性をさらに向上できる。
【0013】
上記広葉樹晒クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量が10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。上記広葉樹晒クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量が上記範囲であることで、繊維幅の太いアカシア材を一定量または単一で配合されるので、均一なパルプ繊維間の空隙を十分に確保でき、フラッフパルプ製造工程時における解繊性をさらに向上できる。これにより吸収性物品に用いられるフラッフパルプにおいて吸水量及び吸水速度をさらに高めることができる。
【0014】
当該フラッフパルプ用パルプシートは、密度が0.50g/cm3以上0.65g/cm3以下であり、比破裂強度が1.0kPa・m2/g以上1.7kPa・m2/g以下であることが好ましい。当該フラッフパルプ用パルプシートの密度及び比破裂強度が上記範囲であることで、広葉樹由来の木材パルプを含有する当該フラッフパルプ用パルプシートであっても、製造工程時における解繊性をより向上できる。
【0015】
本発明の他の態様に係る吸収性物品は、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いる。当該吸収性物品は当該フラッフパルプ用パルプシートを用いているので、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好である。
【0016】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係るフラッフパルプ用パルプシートについて詳説する。なお、以下で説明する紙基材に配合する各材料の含有量(絶乾内添量)は、特に記載がない場合は、紙基材のパルプの絶乾質量に対する質量割合を指す。
【0017】
<フラッフパルプ用パルプシート>
当該フラッフパルプ用パルプシートは、原料パルプを含有するスラリーを抄紙して得ることができる。
【0018】
(原料パルプ)
原料パルプとしては、例えば、バージンパルプを使用することができる。上記フラッフパルプ用パルプシートに用いる原料パルプとしては、化学パルプが好ましい。上記化学パルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の組み合わせが好ましい。当該フラッフパルプ用パルプシートが針葉樹晒クラフトパルプを含有することで、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプの嵩高性及び液の吸収速度を向上することができる。また、当該フラッフパルプ用パルプシートが広葉樹晒クラフトパルプを含有することで、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量を向上できる。針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプをバランス良く含有することで、製造時における解繊性に優れ、吸水性能のバランスが高いフラッフパルプを製造できるフラッフパルプ用パルプシートを提供することができる。
【0019】
(広葉樹晒クラフトパルプ)
広葉樹晒クラフトパルプとしては、アカシア材又はユーカリ材から製造された広葉樹晒クラフトパルプが好ましい。
【0020】
アカシア材は、乾燥による縮みが少なく、衝撃にも強く、丈夫で硬い特徴を有する材料で、アカシア材から得られるパルプも元来の性状を引き継ぎ、水分の吸収や乾燥性が高く有用な原料パルプである。ユーカリ材は、ユーカリ属に属し、特にユーカリ・グロビュラス、ユーカリ・グランディス、ユーカリ・ユーロフィラ、ユーカリ・ナイテンス、ユーカリ・レグナンス等が古くから紙製造用の原料パルプ材として広く用いられ、得られるパルプは、繊維内腔(ルーメン)がつぶれにくく剛直であり、このパルプ繊維を配合することで嵩高な低密度のフラッフパルプ用パルプシートを得ることができる。広葉樹晒クラフトパルプとしては、アカシア材が好ましい。アカシア材はユーカリ材に比べて繊維幅が太いため嵩高性があるが、つぶれやすく繊維間が密になりやすいことから、針葉樹晒クラフトパルプと組み合わせた際に、荷重をかけた状態での保水量が向上しやすくなる。
【0021】
(広葉樹クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量)
上記広葉樹クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量の下限としては、10質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。上記アカシア材の含有量の上限としては、100質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。当該フラッフパルプ用パルプシートの上記広葉樹クラフトパルプの原料木材におけるアカシア材の含有量が上記範囲であることで、針葉樹晒クラフトパルプに比べて繊維長が短く繊維同士が密に詰まりやすい広葉樹晒クラフトパルプであっても、また、その繊維がどの方向(例えば、当該フラッフパルプ用パルプシートから製造される吸収性物品の長さ方向・幅方向・厚み方向)に配向していたとしても、特に良好に繊維間の空隙を均一に確保できるため、フラッフパルプ用パルプシートに要求される、液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量に基づく吸水性能のバランスを両立することができる。上記範囲を外れる場合、例えば剛直なユーカリ材の割合が多くなると、剛直性に由来する空隙が多くなり、解繊性は向上するものの、荷重下においては液を放出しやすく、保水量が低下するおそれがある。
【0022】
広葉樹クラフトパルプ繊維の重量平均繊維長(以下、平均繊維長ともいう。)の下限としては、0.76mmが好ましく、0.80mmがより好ましい。上記平均繊維長が上記下限未満であると、フラッフパルプ用パルプシートの嵩高性が低下しやすく、製造工程時における解繊性が低下するおそれがある。一方、上記平均繊維長の上限としては、0.92mmが好ましく、0.86mmがより好ましい。上記平均繊維長が上記上限を超えると、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプにおいて繊維がどの方向に配向しているかで空隙にバラツキが生じやすくなり、荷重をかけた状態での保水量が低下するおそれがある。上記重量平均繊維長は、メッツォオートメーション社製、繊維長測定機「FiberLab」を用いて、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙―繊維長試験方法―光学的自動計測」に準じて、繊維長0.1mm以上の繊維について測定した。
【0023】
広葉樹クラフトパルプ繊維の重量平均繊維幅(以下、平均繊維幅ともいう。)の下限としては、16.7μmであり、16.9μmが好ましい。上記平均繊維幅が上記下限未満であると、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプにおいて繊維間の空隙が密になり、液の吸収速度が低下するおそれがある。一方、上記平均繊維幅の上限としては、18.2μmであり、17.7μmがより好ましい。上記平均繊維幅が上記上限を超えると、フラッフパルプ用パルプシートにおいてパルプ繊維同士の接触面積が大きくなりすぎて、繊維同士の結合力が高くなり、製造工程時の解繊性が低下するおそれがある。解繊性が低下しすぎると、当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプの製造工程では過解繊となり微細繊維が発生し、吸水性物品製造工程において繊維が抜けやすく、吸水性物品の一部が欠けたり部分的に繊維が薄くなったりして不良品が発生しやすくなるおそれがある。上記重量平均繊維幅は、メッツォオートメーション社製、繊維長測定機「FiberLab」を用いて、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.52「パルプ及び紙―繊維長試験方法―光学的自動計測」に準じて、繊維長0.1mm以上の繊維について測定した。
【0024】
上記広葉樹晒クラフトパルプのカッパー価としては、0.3以下であることが好ましい。上記カッパー価が上記上限を超えると、繊維中のリグニンが十分に除去できておらず、フラッフパルプの液の吸収速度が低くなるおそれがある。上記カッパー価は、JIS-P8211(2011)に準拠して測定される。
【0025】
広葉樹クラフトパルプを蒸解する白液の硫化度の下限としては、25%が好ましく、28%がより好ましい。上記硫化度が25%未満であると、パルプ繊維が痛みやすく当該フラッフパルプ用パルプシートを用いたフラッフパルプが密になり、液の吸収速度が低下するおそれがある。一方、上記硫化度の上限としては、32%が好ましく、30%がより好ましい。上記硫化度が上記上限を超えると、パルプ繊維が痛みにくく剛直のままとなり、フラッフパルプの空隙にムラが多くなり、荷重をかけた状態での保水量が低下するおそれがある。上記硫化度は次式に従い、硫化ソーダと苛性ソーダの合計に対する、硫化ソーダの割合として計算した。
硫化度(%)=(Na2S/(NaOH+Na2S))×100
【0026】
(広葉樹晒クラフトパルプの未叩解パルプのフリーネス)
広葉樹晒クラフトパルプの未叩解パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)としては、520ml以上580ml以下に調整されていることが好ましい。広葉樹晒クラフトパルプの未叩解パルプのフリーネスが520ml未満の場合、パルプシート製造時に脱水性が悪くなり、例えば抄紙機においてプレス脱水を強化する等、脱水を機械的に強化する必要があり、パルプ繊維同士の結合が強くなるだけでなくパルプシートの嵩高性が低くなることで、製造時における解繊性が低下するおそれがある。一方、上記未叩解パルプのカナダ標準ろ水度が580mlを超えると、パルプシートにおいては繊維間の空隙が多くなりすぎて解繊時に解繊ムラとなりやすくなるおそれがある。
【0027】
フラッフパルプ用パルプシートにおける広葉樹晒クラフトパルプの含有量の下限としては、15質量%が好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がさらに好ましい。上記広葉樹晒クラフトパルプの含有量が上記範囲であり、かつ所定の範囲で非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含有することで、針葉樹晒クラフトパルプと混合した際に、繊維長が短く繊維同士が密に詰まりやすい広葉樹晒クラフトパルプであっても、特に良好に繊維間の空隙を確保できるため、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量のバランスを良好にしたまま、解繊性を向上できる。
【0028】
(針葉樹晒クラフトパルプ)
当該フラッフパルプ用パルプシートにおいては、針葉樹晒クラフトパルプの原料木材としてラジアータパインに代表される松類や、各種杉が好適に用いられる。
【0029】
(パルプ含有率)
当該フラッフパルプ用パルプシートに用いるパルプにおける上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比の下限としては、15/85であり、20/80が好ましい。上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85未満であると、広葉樹晒クラフトパルプの繊維幅が所定の範囲内であったとしても、当該フラッフパルプ用パルプシートの解繊後のフラッフパルプの繊維間の空隙にムラが生じやすく、荷重をかけた状態での保水量が低下し、得られる吸収性物品のさらっと感が低下するおそれがある。一方、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比の上限としては、50/50であり、40/60が好ましい。上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が50/50を超えると、広葉樹晒クラフトパルプの繊維幅が所定の範囲内であったとしても、フラッフパルプ用パルプシートが密になることで、フラッフパルプ用パルプシートの解繊性とフラッフパルプにおける液の吸収速度が低下するおそれがある。
上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が上記範囲であり、かつ所定の範囲で非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含有することで、針葉樹晒クラフトパルプの中に、繊維長が短く繊維同士が密に詰まりやすい広葉樹晒クラフトパルプを混合したとしても、広葉樹晒クラフトパルプ繊維がどの方向に配向しているかによらず、ムラなく均一に繊維間の空隙を確保できる。そのため、当該フラッフパルプ用パルプシートの解繊性を向上するとともに、解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量のバランスを良好にできる。
【0030】
(その他のパルプ)
当該フラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ以外のその他のパルプを含有していてもよい。上記その他のパルプとしては、例えばソーダパルプ、サルファイトパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミリファイナーメカニカルパルプ、サーモケミメカニカルパルプ等が挙げられる。但し、繊維中のリグニンが十分に除去できていない場合、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量が低下しやすくなるため、十分にリグニンを除去した晒パルプが好ましい。上記その他のパルプを含有する場合、上記その他のパルプの含有量としては、パルプ原料全体に対して10質量%以下が好ましい。
【0031】
(界面活性剤)
当該フラッフパルプ用パルプシートは、界面活性剤を含有する。繊維長が短く繊維が密に詰まるため、パルプシートの嵩高性が低くなりやすい広葉樹由来の木材パルプを含有する当該フラッフパルプ用パルプシートにおいて、界面活性剤として非イオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤を含むことで、当該フラッフパルプ用パルプシートの嵩高性を向上し、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量を良好にできる。嵩高性が向上することにより、製造工程時における解繊性をより向上できる。但し、界面活性剤は親水基と親油基(疎水基)を有しており、添加量が多いとパルプ繊維の疎水性が上昇し、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量が低下する可能性がある。このため、広葉樹由来の木材パルプに適した界面活性剤を選定することが好ましい。
【0032】
非イオン界面活性剤としては、例えば高級アルコールのエチレン及び/またはプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば第四級アンモニウム塩、エステルカチオン、メチル硫酸型カチオン、エチレンオキサイド付加型アンモニウムクロライド、酢酸塩、脂肪酸系誘導体、ポリオキシアルキレンアルキルアミン誘導体、脂肪酸・ポリエチレンポリアミン縮合物等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、βアルキルアミノプロピオン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル―N―カルボキシメチル―N―ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、脂肪酸系誘導体等が挙げられる。上記界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアミン誘導体がより好ましい。上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分としては、共にポリオキシアルキレンアルキルであることが好ましい。上記非イオン性界面活性剤及び上記カチオン性界面活性剤の主成分としては、共にポリオキシアルキレンアルキルであることで、広葉樹由来の木材パルプを含有する当該フラッフパルプ用パルプシートの嵩高性をさらに向上できるので、製造工程時における解繊性をさらに向上できる。さらに、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量の低下を抑制できる。
【0033】
また、界面活性剤は、本発明の効果を損なわない限り、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤以外の界面活性剤として、アニオン界面活性剤を含むことができる。アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸、アラニネート及びその塩、エーテルカルボン酸及び塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0034】
上記界面活性剤の含有量の下限としては、固形分換算で0.15kg/tであり、0.30kg/tが好ましく、0.60kg/tがより好ましい。当該フラッフパルプ用パルプシートは、特定の範囲の含有量の界面活性剤を含有することで、嵩高性をさらに向上できるので、製造工程時における解繊性を向上できる。上記界面活性剤の含有量が上記下限未満であると、当該フラッフパルプ用パルプシートの嵩を十分に高めることができなくなるおそれがある。一方、上記界面活性剤の含有量の上限としては、4.50kg/tであり、3.00kg/tが好ましく、2.40kg/tがより好ましい。上記界面活性剤の含有量が上記上限を超えると、当該フラッフパルプ用パルプシートの解繊後のフラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量を低下させるおそれがある。
【0035】
上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比の下限としては、0.25であり、0.67が更に好ましい。上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25未満であると、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であったとしても、フラッフパルプにおける液の吸収速度が低下しやすくなり、当該フラッフパルプ用パルプシートから得られる吸収性物品においては、さらっと感が低下しやすくなるおそれがある。一方、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比の上限としては、4.0であり、1.5が好ましい。上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が4.0を超過すると、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であったとしても、フラッフパルプにおける荷重をかけた状態での保水量が低下しやすくなり、当該フラッフパルプ用パルプシートから得られる吸収性物品においては、さらっと感が低下しやすくなるおそれがある。
上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が上記範囲であり、かつ所定の範囲で非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比を所定の範囲にすることで、針葉樹晒クラフトパルプの中に、繊維長が短く繊維同士が密に詰まりやすい広葉樹晒クラフトパルプを混合したとしても解繊性を向上でき、かつ、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量のバランスを良好にできる。
【0036】
(その他の添加剤)
フラッフパルプ用パルプシートには、必要によりその他の添加剤を内添することができる。添加剤としては、例えば、填料、顔料、サイズ剤、凝結剤、耐油剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0037】
[フラッフパルプ用パルプシートの物性]
(密度)
密度は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定される。当該フラッフパルプ用パルプシートの密度の下限としては、0.52g/cm3が好ましく、0.53g/cm3がより好ましい。上記フラッフパルプ用パルプシートの密度の上限としては、0.62g/cm3が好ましく、0.60g/cm3がより好ましい。当該フラッフパルプ用パルプシートの密度が上記範囲であることで、上記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプを混合し界面活性剤を添加したフラッフパルプ用パルプシートにおいて製造工程時における解繊性を向上できるとともに、ムラなく均一に繊維間の空隙を確保しやすいフラッフパルプを得ることができる。従って、フラッフパルプにおける液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量フを良好にできる。
なお、密度は、JIS-P8111(1998)に記載の「紙、板紙及びパルプ-調湿及び試験のための標準状態」のとおり、23±1℃、50±2%RHの雰囲気下で測定する。
【0038】
(坪量)
坪量は、JIS-P8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定される。当該フラッフパルプ用パルプシートの坪量としては、例えば300.0g/m2以上1500.0g/m2以下とすることができる。
【0039】
(解繊速度)
当該フラッフパルプ用パルプシートの坪量700g/m2における解繊速度の下限としては、30秒/5gが好ましく、25秒/5gがより好ましく、20秒/5gが特に好ましい。解繊速度が上記下限未満の場合、当該フラッフパルプ用パルプシートから作製されるフラッフパルプ及び吸収性物品では、未離解が混入し、フラッフパルプの液の吸収速度及び荷重をかけた状態での保水量が低下するおそれがある。または、解繊を強化し未解繊を防止することもできるが、その場合、正常に解繊できていた繊維は過解繊となり微細繊維が発生し、吸水性物品製造工程において繊維が抜けやすく吸水性物品の一部が欠けたり部分的に繊維が薄くなったりして不良品が発生するおそれがある。
なお、フラッフパルプ用パルプシートの坪量は、例えば300.0g/m2以上1500.0g/m2以下とすることができる。ここで、当該フラッフパルプ用パルプシートが上記700g/m2以外のものであっても、そのまま測定に必要な5gを採取し解繊速度の評価をすることができる。坪量が700g/m2より小さい場合は投入するパルプシートの枚数が増え、坪量が700g/m2より大きい場合は投入するパルプシートの枚数が減ることになるが、解繊速度への影響は無視して良い。
【0040】
解繊速度は、フラッフパルプ用パルプシートをブレンダー(市販のミキサー)に入れて解繊し、未解繊がなくなるまでの所要時間を測定するものである。広葉樹由来の木材パルプは針葉樹由来のパルプに比べて、繊維長が短く繊維が密に詰まるため、パルプシートの嵩高性が低くなることで、フラッフパルプ用パルプシートをフラッフパルプに解繊する際に未解繊が発生するおそれがある。このため、解繊速度をフラッフパルプ用パルプシートの解繊性の尺度とする。
【0041】
解繊速度の測定方法は、以下の通りである。
フラッフパルプ用パルプシートを縦10mm×横10mmに裁断し、5gを測り取り、ブレンダー(WARING社製、型式:HGBSS、SUS製容器:容量2L)に投入し、速度HIGH(高速)で試料を解繊する。5秒毎に解繊を止めて未解繊の有無を確認し、未解繊がなくなった時間[秒]を測定する。なお、解繊を止めた時間は測定時間に含めていない。ここで未解繊とは、縦2mm×横2mmより大きいフラッフパルプ用パルプシートを指す。
【0042】
[フラッフパルプ用パルプシートの製造方法]
当該フラッフパルプ用パルプシートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、原料木材を蒸解して未晒パルプとする蒸解工程と、脱リグニンを行う脱リグニン工程と、漂白して漂白パルプとする漂白工程と、漂白パルプを所望のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、パルプスラリーを調製する工程と、パルプスラリーを抄紙する工程とを有する。なお、上記工程間に適宜、脱水洗浄工程を設けることができる。
【0043】
(蒸解工程)
蒸解工程では、原料木材を蒸解して未晒パルプとする。蒸解釜に白液及び原料木材チップ(広葉樹または針葉樹)を入れて蒸解し、生成された黒液混じりの(未洗浄)パルプスラリーが連続蒸解釜の底部から取り出される。蒸解方法は、市販クラフト改良法であるMCC、EMCC、ITC、Lo-Solids、KobudoMari、Compact法、等から任意に選ぶことができ、蒸解釜としては連続蒸解釜あるいはバッチ釜の方式のどちらでも良く、また蒸解条件(蒸解温度、蒸解温度と蒸解時間の影響度を乗じて一つの因子にまとめたHファクター、活性アルカリ又は有効アルカリの含有割合等)については特に限定されない。
【0044】
(脱リグニン工程)
脱リグニン工程では、未晒パルプを脱リグニンする。未晒パルプにアルカリ性薬品及び酸素を添加し、高温高圧でリグニンを分解、アルカリ性薬品に溶出させる。脱リグニン工程は、低濃度(パルプ濃度:3%~8%)、中濃度(パルプ濃度:8%~15%)、高濃度(パルプ濃度:20%~30%)の方式は特に問わない。
【0045】
(洗浄工程)
洗浄工程では、未晒パルプを置換、希釈または脱水を組み合わせることで洗浄を行う。洗浄方式としては特に限定されず、公知の洗浄機を用いて洗浄することができる。例えば、置換洗浄方式、希釈・脱水方式、プレス洗浄方式、あるいはこれらを組み合わせた洗浄方式が用いられる。置換洗浄方式の洗浄機としては、ディフュージョンウォッシャーや加圧ディフュージョンウォッシャー、ベルトタイプ洗浄機などが用いられる。希釈・脱水方式の洗浄機としては、真空フィルター洗浄機、加圧フィルター洗浄機などが用いられる。プレス洗浄方式としてはスクリュー型プレス洗浄機、ディスク型プレス洗浄機、ロール型プレス洗浄機などが用いられる。
【0046】
本発明においては、リグニンを除去し、カッパー価を低減させることが好ましいため、リグニンを除去しやすいプレス洗浄機を用いることが好ましい。プレス洗浄方式による洗浄後のパルプ濃度としては、30%以上が好ましく、32%以上がより好ましく、35%以上がさらに好ましい。プレス洗浄方式による脱水では、繊維内部の水分も絞り出して除去できるため、他の洗浄方式と比べて、パルプ繊維内部で遊離しているリグニンを十分に除去しやすい。
【0047】
(漂白工程)
漂白工程では、脱リグニンを行った未晒パルプを漂白して漂白パルプとする。漂白方式としては特に限定されず、公知の漂白方法で漂白することができる。例えば、酸処理、オゾン漂白、二酸化塩素漂白、過酸化水素漂白や、さらにこれらとアルカリ抽出、酸素を添加したアルカリ抽出、酸素と過酸化水素を添加したアルカリ抽出等を、単独または複数組み合わせて実施することができる。
【0048】
漂白工程においては、パルプ繊維を痛めることによりパルプ繊維の吸水性を調整することができるオゾン漂白を用いることが好ましい。オゾン漂白の方式としては特に限定されず、高濃度(30~40%),中濃度(8~15%),低濃度(1~3%)のいずれでも実施できるが、より繊維を傷めやすい高濃度法が好ましい。
オゾン発生装置は、公知の装置を用いることができる。発生したオゾンは、そのままパルプと混合、または水中へ溶解してからパルプと混合させても良い。
【0049】
オゾン漂白においては、pHが低いほど脱リグニンは促進される一方、繊維への傷みは少なくなるため、フラッフパルプ用パルプシートの要求品質に応じてpHを調整することが好ましい。フラッフパルプ用パルプシートのオゾン漂白におけるpHとしては、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、2~3がさらに好ましい。フラッフパルプ用パルプシートのオゾン漂白におけるpHが上記範囲であることで、解繊後のフラッフパルプに要求される荷重をかけた状態での保水量を向上できる。
【0050】
(調成工程)
調成工程においては、パルプスラリーを調製する。また、必要があれば、調成工程では、漂白パルプを所望のフリーネスとなるように叩解する。その後、界面活性剤とその他の添加剤とを必要に応じ添加し、紙料を調製する。
【0051】
(抄紙工程)
次に、これらの原料スラリーを用いて、pHが6以上8以下になるように中性域で抄紙機にて抄紙する。上記抄紙工程では、走行するワイヤー上に噴出させたパルプ原料を抄紙する抄紙機を用いて原料パルプを抄紙する。抄紙機は特に限定されるものではなく、公知の抄紙機、例えば長網抄紙機、円網抄紙機、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等の抄紙機を使用することができ、シート状に抄紙される。フラッフパルプ用パルプシートは1層または複数層の抄き合わせにより製造することができるが、1層であれば、層内の密度を均一にしやすいため好ましい。
【0052】
当該フラッフパルプ用パルプシートによれば、製造時における解繊性に優れ、フラッフパルプ用パルプシートを用いた吸収性物品の吸水性能のバランスが良好である。
【0053】
[フラッフパルプ]
フラッフパルプは、当該フラッフパルプ用パルプシートを機械的処理により繊維状に解繊して得ることができる。本発明においてフラッフパルプに用いられる当該フラッフパルプ用パルプシートは、ベール状またはロール状のいずれでも良いが、ロール状であれば、フラッフパルプを用いた吸収性物品の生産性を向上させやすいため好ましい。
【0054】
本発明において、解繊するための機械的処理に用いる装置は特に限定されない。紙おむつ等の吸収性物品の製造時などに使用されている公知の解繊機を使用でき、機械的処理として摩擦力やせん断力を利用する解繊機を好適に使用できる。解繊機の方式としては、例えば、ハンマー式解繊機、衝撃式解繊機、ロール式解繊機及びシェット気流式解繊機などを用いることができる。
【0055】
[フラッフパルプの物性]
(沈降速度)
フラッフパルプにおける液の吸収速度は、沈降速度により評価できる。沈降速度は、上記解繊速度試験でフラッフパルプ用パルプシート解繊して得られたフラッフパルプを使用する。フラッフパルプを円盤状に押し固めた後、水に浮かべ、試料全てが水で濡れるまでの所要時間を測定するものである。広葉樹由来の木材パルプは針葉樹由来のパルプに比べて、繊維長が短く繊維が密に詰まるため、水と接触した際の馴染みが低下するおそれがある。また、界面活性剤を含有するとパルプ繊維の疎水性が上昇し、フラッフパルプの液の吸収速度が更に低下する可能性がある。このため、沈降速度をフラッフパルプの短期間における吸収性の尺度とする。
【0056】
沈降速度の下限としては、1.0秒/0.5gが好ましく、0.9秒/0.5gがより好ましく、0.8秒/0.5gが特に好ましい。上記沈降速度が上記下限未満の場合、当該フラッフパルプ用パルプシートから作製されるフラッフパルプ及び吸収性物品では、短期間における吸収性が悪いため、さらっと感が低下するおそれがある。上記沈降速度が上記範囲であることで、当該フラッフパルプ用パルプシートは、短期間における吸収性が良好なフラッフパルプを得ることができる。
【0057】
沈降速度の測定方法は以下の通りである。
上記フラッフパルプ用パルプシートの解繊速度の測定において、解繊して得られたフラッフパルプ0.5gを、先端を切り落とし円筒内部を露出させたプラスチック製の注射器(TERUMO社製、テルモシリンジ、50ml、型番SS-50ESZ)に入れ、高さが5mmになるまで10秒間圧縮し円盤状の試料を作製する。そして、500mlのビーカーにイオン交換水を入れ、1分間常温で放置した後の上記試料を水面から30mmの高さから落下させ、上記試料が水面に接してから、上記試料全てが水に濡れるまでの時間を測定する。
【0058】
(荷重をかけた状態での保水量)
フラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量は、上記解繊速度の測定時にフラッフパルプ用パルプシート解繊して得られたフラッフパルプを使用する。フラッフパルプを水に溶解した後、荷重を掛けて水を切った後の保水量を測定するものである。広葉樹由来の木材パルプは針葉樹由来のパルプに比べて、繊維長が短く繊維が密に詰まるため、荷重を掛けても保水量は多い。一方で、界面活性剤を含有するとパルプ繊維の疎水性が上昇し、荷重をかけた状態での保水量が低下する可能性がある。このため、荷重をかけた状態での保水量をフラッフパルプの長期間における吸収性の尺度とする。
【0059】
フラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量の下限としては、8.0gが好ましく、8.5gがより好ましく、9.0g以下がさらに好ましい。上記荷重をかけた状態での保水量が上記下限未満の場合、当該フラッフパルプ用パルプシートから作製される吸収性物品において、長期間における吸収性が十分ではなく、荷重により吸水性物品表面に液が浮き出すことがあり、さらっと感が低下するおそれがある。上記荷重をかけた状態での保水量が上記範囲であることで、当該フラッフパルプ用パルプシートは、解繊後のフラッフパルプの長期間における吸収性が良好であるので、得られる吸収性物品のさらっと感を向上できる。
【0060】
フラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量の測定方法は以下の通りである。
上記解繊速度の測定時にフラッフパルプ用パルプシート解繊して得られたフラッフパルプ1.0gをイオン交換水200mlに溶解し30秒間攪拌する。次に、大気下でブフナー漏斗(No.1、規格:AF1)に10秒間で流し込み、錘(円柱状、重量1,450±2g、外径60±1mm)を上に乗せる。そして、1分後、錘を外しパルプの重量を測定し測定値とし、上記測定値からパルプ重量1.0gを引いた荷重下保水量を測定する。
【0061】
当該フラッフパルプ用パルプシートは、解繊後のフラッフパルプの沈降速度と荷重をかけた状態での保水量がともに上記範囲であることで、吸水性能のバランスが良好な吸収性物品を得ることができる。
【0062】
[吸収性物品]
当該吸収性物品は、フラッフパルプ用パルプシートを用いる。当該吸収性物品は、フラッフパルプにおける液の吸収速度と荷重をかけた状態での保水量とを良好なバランスに設定することができる当該フラッフパルプ用パルプシートを用いているので、表面のさらっと感を向上できる。当該吸収性物品としては、特に限定はないが、例えば、紙おむつ、尿とりパッド、軽失禁パッド、生理用ナプキン等が挙げられる。
【0063】
上記吸収性物品の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造することができる。例えば、紙おむつであれば、瑞光社製、東亜機工社製、エアハルトライマー社製の製造機械を用い、例えばパネル式、レッグホール式、縦流れ式、横流れ式等の方式により製造できる。
【0064】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【実施例0065】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1~実施例15、比較例1~比較例10及び参考例1]
実施例1~実施例15、比較例1~比較例10及び参考例1のフラッフパルプ用パルプシートを以下の手順で作製した。
【0067】
(蒸解工程)
(1)広葉樹
アカシア及びユーカリを表1に記載の質量比となるよう混合し、所定の硫化度を有する白液を添加し、液比6.0(L/kg)、最高温度170℃で回転式オートクレーブによる蒸解を行い、カッパー価約16の広葉樹未晒クラフトパルプを得た。なお、表1の「-」は、該当する成分を含まないことを示す。
(2)針葉樹
杉に所定の硫化度を有する白液を添加し、液比6.0(L/kg)、最高温度170℃で回転式オートクレーブによる蒸解を行い、カッパー価約30の針葉樹未晒クラフトパルプを得た。
【0068】
(洗浄工程)
未晒パルプをパルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水した。その後、未晒パルプを角型ろ紙(ADVANTEC社製)で挟み、プレス機で圧力を掛け、パルプ濃度33%まで脱水した。この洗浄工程を2回実施した。
【0069】
(漂白工程)
(1)広葉樹
(1-1)オゾン漂白
未晒クラフトパルプについて、45℃で8.1%濃度のオゾンガスにて約2分間でオゾン漂白した。なお、オゾン漂白には、住友精密工業製PSA Ozonizer SGA-01A-PSA4 のラボオゾン発生器からのオゾンガスを用いた。
(1-2)二酸化塩素漂白
オゾン漂白後のパルプについて、二酸化塩素添加率1.5%、パルプ濃度10質量%、70℃で二酸化塩素漂白を行い、広葉樹晒クラフトパルプを得た。
なお、各漂白工程の間では、パルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水する希釈洗浄工程を2回実施した。
(2)針葉樹
未晒クラフトパルプについて、二酸化塩素添加率1.5%、パルプ濃度10質量%、70℃で30分間二酸化塩素漂白を行った。続いて、アルカリ添加率1%、過酸化水素添加率0.3%、パルプ濃度10質量%、70℃で120分間アルカリ性過酸化水素漂白を行った。続いて、水酸化ナトリウム添加率0.2%、パルプ濃度10質量%、70℃で120分間、アルカリ処理を行った。続いて、二酸化塩素添加率0.3%、パルプ濃度10質量%、70℃で150分間二酸化塩素漂白を行い、針葉樹晒クラフトパルプを得た。
なお、各漂白工程の間では、パルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水する希釈洗浄工程を2回実施した。
【0070】
(抄紙工程)
得られた広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプは、叩解せずに、濃度約2%に希釈して、表2に記載の含有率となるように調整した後、表2に記載の界面活性剤を添加した。そして、調整後のパルプスラリーを用いて、半自動シートマシン(熊谷理機工業社製)を用いて、坪量700g/m2となるよう手抄きシートを作成した。このようにして、実施例1~実施例15、比較例1~比較例10及び参考例1のフラッフパルプ用パルプシートを得た。なお、参考例1は、界面活性剤を含有しない市販品のフラッフパルプ用パルプシートを準備した。
【0071】
用いた界面活性剤の製品名は以下の通りである。
(1)非イオンアニオン界面活性剤
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:明成化学工業社製「メイカサーフPA-100」
(2)カチオン界面活性剤
ポリオキシアルキレンアルキルアミン誘導体:ミヨシ油脂社製「ペレミンB-320」
脂肪族系誘導体:明成化学工業社製「エレガノールNZ-800」
脂肪酸・ポリエチレンポリアミン縮合物:東邦化学工業社製「GFS-1」
(3)アニオン界面活性剤
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:東邦化学工業社製「添加剤S」
(4)両性界面活性剤
脂肪酸系誘導体:星光PMC社製「風合向上剤GT8022」
【0072】
【0073】
【0074】
以上のようにして得られたフラッフパルプ用パルプシートについて、評価を行った。
【0075】
(パルプ繊維の重量平均繊維長及び重量平均繊維幅)
蒸解工程及び洗浄工程後の実施例1~実施例15及び比較例1~比較例10の広葉樹未晒クラフトパルプにおける重量平均繊維長及び重量平均繊維幅を測定した。重量平均繊維長及び重量平均繊維幅は、メッツォオートメーション社製、繊維長測定機「FiberLab」を用いて、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙―繊維長試験方法―光学的自動計測」に準じて、繊維長0.1mm以上の繊維について測定した。繊維分析計「FiberLab」は、希釈したパルプ繊維が繊維分析計内部の測定セルを通過する際の画像分析により高い精度でパルプ繊維の長さ、幅を測定できる。
【0076】
(フラッフパルプ用パルプシートの密度)
各フラッフパルプ用パルプシートの密度は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定した。
【0077】
(フラッフパルプ用パルプシートの解繊速度)
フラッフパルプ用パルプシートを縦10mm×横10mmに裁断し、5gを測り取り、ブレンダー(WARING社製、型式:HGBSS、SUS製容器:容量2L)に投入し、速度HIGH(高速)で試料を解繊した。5秒毎に解繊を止めて未解繊の有無を確認し、未解繊がなくなった時間[秒]を測定した。ここで未解繊とは、縦2mm×横2mmより大きいフラッフパルプ用パルプシートを指す。フラッフパルプ用パルプシートの坪量は、約700g/m2で評価した。
評価基準は、以下の4段階の通りとした。評価がA、B及びCの場合、フラッフパルプ用パルプシートの解繊速度が良好である。
A:解繊速度が20秒/5g以下である。
B:解繊速度が20秒/5gを超え25秒/5g以下である。
C:解繊速度が25秒/5gを超え30秒/5g以下である。
D:解繊速度が30秒/5gを超える。
【0078】
(フラッフパルプの沈降速度)
フラッフパルプにおける液の吸収速度は、沈降速度により評価した。上記解繊速度の評価でフラッフパルプ用パルプシートを解繊して得られたフラッフパルプを使用した。フラッフパルプ0.5gを、先端を切り落とし円筒内部を露出させたプラスチック製の注射器(TERUMO社製、テルモシリンジ、50ml、型番SS-50ESZ)に入れ、高さが5mmになるまで10秒間圧縮し円盤状の試料を作製した。試料を1分間常温で放置した後、500ccのビーカーにイオン交換水を入れ、試料を水面から30mmの高さから落下させた。試料が水面に接してから、試料全てが水に濡れるまでの時間[秒/0.5g]を測定した。
評価基準は、以下の4段階の通りとした。評価がA、B及びCの場合、フラッフパルプの沈降速度が良好である。
A:沈降速度が0.8秒/0.5g以下である。
B:沈降速度が0.8秒/0.5gを超え0.9秒/0.5g以下である。
C:沈降速度が0.9秒/0.5gを超え1.0秒/0.5g以下である。
D:沈降速度が1.0秒/0.5gを超える。
【0079】
(フラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量)
上記解繊速度の評価でフラッフパルプ用パルプシートを解繊して得られたフラッフパルプを使用する。ビーカーにイオン交換水200mlを入れ、フラッフパルプ1.0gを溶解し30秒間、攪拌し、パルプスラリーを調製した。パルプスラリーをブフナー漏斗(No.1、規格:AF1)に10秒間で流し込み、錘(円柱状、重量1,450±2g、外径60±1mm)を上に乗せた。1分後、錘を外しパルプの重量を測定した。測定値からパルプ重量を引き、荷重をかけた状態での保水量[g]とした。
評価基準は、以下の4段階の通りとした。評価がA、B及びCの場合、フラッフパルプの荷重をかけた状態での保水量が良好である。
A:荷重をかけた状態での保水量が9.0g以上である。
B:荷重をかけた状態での保水量が8.5g以上9.0g未満である。
C:荷重をかけた状態での保水量が8.0g以上8.5g未満である。
D:荷重をかけた状態での保水量が8.0g未満である。
【0080】
(吸水性物品の吸水性能のバランス)
吸水性物品表面の吸水性能のバランスは、上記フラッフパルプの沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量の値に基づいて評価した。評価基準は、以下の4段階の通りとした。評価がA、B及びCの場合、フラッフパルプの沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量に基づく吸水性能のバランスが良好であり、短期間における吸収性が高く吸水性物品表面に液が留まり難く、かつ、長期間における吸収性が高く荷重により吸水性物品表面に液が浮き出し難い。
A:沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量の評価が、共にA以上であり、吸水性能のバランスに優れる。
B:沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量の評価が、共にB以上であり、吸水性能のバランスが良い。
C:沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量の評価が、共にC以上であり、吸水性能のバランスがある。
D:沈降速度及び荷重をかけた状態での保水量の評価のいずれかがDであり、吸水性能のバランスに劣る。
【0081】
各実施例及び比較例の評価結果を表3に示す。
【0082】
【0083】
表3に示されるように、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ及び界面活性剤を含有し、上記針葉樹晒クラフトパルプに対する上記広葉樹晒クラフトパルプの質量比が15/85以上50/50以下であり、上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含み、上記界面活性剤の含有量が0.15kg/t以上4.50kg/t以下であり、上記非イオン性界面活性剤に対する上記カチオン性界面活性剤の質量比が0.25以上4.00以下である実施例1~実施例15は、フラッフパルプ用パルプシートにおける解繊性、フラッフパルプにおける沈降速度及び荷重下保水量、並びに吸水性物品における吸水性能のバランスが良好であった。
【0084】
一方、広葉樹晒クラフトパルプの含有量が低い比較例1及び広葉樹晒クラフトパルプの含有量が高い比較例2は、フラッフパルプにおける荷重下保水量が十分でなく、吸水性物品における吸水性能のバランスが劣っていた。
界面活性剤の含有量が低い比較例3及び界面活性剤の含有量が高い比較例4は、フラッフパルプ用パルプシートにおける解繊速度及びフラッフパルプにおける沈降速度が十分でなく、吸水性物品における吸水性能のバランスが劣っていた。
カチオン性界面活性剤を含まない比較例5、比較例7及び比較例8は、フラッフパルプにおける沈降速度が十分でなく、吸水性物品における吸水性能のバランスが劣っていた。
非イオン性界面活性剤を含まない比較例6、比較例9及び比較例10は、フラッフパルプにおける荷重下保水量が十分でなく、吸水性物品における吸水性能のバランスが劣っていた。
【0085】
以上の結果、当該フラッフパルプ用パルプシートは、広葉樹由来の木材パルプを用いた場合でも、製造時における解繊性に優れ、得られる吸収性物品の吸水性能のバランスが良好であることが示された。
【0086】
本発明のフラッフパルプ用パルプシートは、吸収性物品に好適である。