(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130403
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240920BHJP
F24F 3/06 20060101ALI20240920BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20240920BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20240920BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240920BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240920BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240920BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240920BHJP
【FI】
F24F5/00 101Z
F24F5/00 101B
F24F3/06
F24F3/14
F24F11/80
F24F11/70
F24F110:12
F24F110:22
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040091
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229715
【氏名又は名称】日本ピーマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平原 美博
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 智也
(72)【発明者】
【氏名】深山 大輔
【テーマコード(参考)】
3L053
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB03
3L053BB05
3L053BC05
3L054BF02
3L260AB01
3L260AB06
3L260AB14
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB37
3L260EA07
3L260EA13
3L260FA04
3L260FB21
3L260FB48
3L260FB70
(57)【要約】
【課題】冷水と温水の供給を切り換えることなく、熱源水温度を可変することで年間を通して冷暖房の両方の運転が可能な空調機を備えた空調システムを提供する。
【解決手段】空調対象空間の空調を行うための空調システムであって、取り込んだ外気を処理する空調機と、往路及び環路を為す2本の竪管を介して前記空調機と接続され、当該空調機における前記外気との熱交換に供される熱媒を生成するチラーと、を備え、前記空調機は、冷媒の圧縮と膨張を交互に実行して冷凍サイクルを構成するヒートポンプユニットであって、前記チラーとの間で前記熱媒を循環するプレコイルと、前記チラーとの間で前記熱媒を循環する熱交換器と、前記外気との熱交換を行う少なくとも一つの直膨コイルと、を備えるヒートポンプユニットと、を有し、前記チラーで生成される前記熱媒の温度が15℃~35℃である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の空調を行うための空調システムであって、
取り込んだ外気を処理する空調機と、
往路及び環路を為す2本の竪管を介して前記空調機と接続され、当該空調機における前記外気との熱交換に供される熱媒を生成するチラーと、を備え、
前記空調機は、冷媒の圧縮と膨張を交互に実行して冷凍サイクルを構成するヒートポンプユニットであって、
前記チラーとの間で前記熱媒を循環するプレコイルと、
前記チラーとの間で前記熱媒を循環する熱交換器と、
前記外気との熱交換を行う少なくとも一つの直膨コイルと、を備えるヒートポンプユニット、を有し、
前記チラーで生成される前記熱媒の温度が15℃~35℃であることを特徴とする、空調システム。
【請求項2】
前記チラーで生成される前記熱媒の温度を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記外気の温湿度と前記空調対象空間の温湿度とに基づいて、前記熱媒の温度を可変制御することを特徴とする、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記外気の温湿度と前記空調対象空間の温湿度とに基づいて、前記空調機から前記空調対象空間に供給される給気の吹き出し温度を可変制御することを特徴とする、請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記ヒートポンプユニットが水熱源式のヒートポンプであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記ヒートポンプユニットが空気熱源式のヒートポンプであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記空調機が、前記ヒートポンプユニットの後段に加湿器を更に有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記外気を、前記空調対象空間からの還気との混合の後に給気として前記空調対象空間に供給することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項8】
前記外気と前記還気の混合を、前記空調機の内部で行うことを特徴とする、請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記空調対象空間の内部温度を放射熱により調整する放射パネル、を更に有し、
前記放射パネルは、前記竪管を介して前記チラーと接続されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば商業用、工業用の建物に設置される空調システムとして、セントラル空調方式が採用されている。このような建物では、例えば特許文献1にも開示があるように、冷房期間には例えば7℃の低温冷水を、暖房期間には例えば50℃の高温温水を、それぞれシーズンを通して一定の設定温度で製造し、各階(フロア)に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷房期間/暖房期間にあっても、上記した低温冷水や高温温水を必要とする外気負荷がピークとなる期間は極僅かである。このピーク期間を除くと、空調システムでは上記した低温や高温を必要としないばかりか、過度な仕事により余分なエネルギーを消費することとなり、空調システムの効率低下の原因となり得る。
【0005】
また、特に冷房期間と暖房期間との中間期には、日ごとや室(フロア)ごとに冷暖房の切り替えが要求される場合がある。この場合、例えば冷水系統と温水系統とを独立して構成し、年間を通して低温冷水と高温温水の両方を供給することが考えられるが、往路/還路に合計4本の竪管(いわゆる4管式)が必要となり、設備費用が高額になると共に、空調システム全体でのエネルギー効率が低下する。一方、設備費用の削減のために往路/還路を合計2本の竪管(いわゆる2管式)で構成した場合、冷暖房の切り替えごとに低温冷水と高温温水の製造/供給をも切り替える必要があり、凡そ現実的ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてされたものであり、冷水と温水の供給を切り換えることなく、熱源水温度を可変することで年間を通して冷暖房の両方の運転が可能な空調機を備えた空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る技術は、空調対象空間の空調を行うための空調システムであって、取り込んだ外気を処理する空調機と、往路及び環路を為す2本の竪管を介して前記空調機と接続され、当該空調機における前記外気との熱交換に供される熱媒を生成するチラーと、を備え、前記空調機は、冷媒の圧縮と膨張を交互に実行して冷凍サイクルを構成するヒートポンプユニットであって、前記チラーとの間で前記熱媒を循環するプレコイルと、前記チラーとの間で前記熱媒を循環する熱交換器と、前記外気との熱交換を行う少なくとも一つの直膨コイルと、を備えるヒートポンプユニット、を有し、前記チラーで生成される前記熱媒の温度が15℃~35℃であることを特徴としている。
上記構成によれば、建物に取り込まれた外気を、空調機においてヒートポンプユニットに通流させる。この時、チラーからプレコイル及び熱交換器に供給される熱媒の温度は、夏季の冷房運転時には15℃以上、冬期の暖房運転時には35℃以下で制御され、これにより空調システムの全体でエネルギー効率を大幅に向上できる。
【0008】
上記空調システムは、前記チラーで生成される前記熱媒の温度を制御する制御部を有していてもよい。前記制御部は、前記外気の温湿度と前記空調対象空間の温湿度とに基づいて、前記熱媒の温度と、前記空調機から前記空調対象空間に供給される給気の吹き出し温度を可変制御することが望ましい。
上記構成によれば、取り込んだ外気の温湿度及び空調対象空間の温湿度に応じて、換言すれば外気負荷と冷暖房要求に追従して熱媒温度や給気の吹き出し温度を制御するため、空調対象空間の負荷に見合った温湿度環境を作ることができる。従って、空調対象空間の過冷却、過加熱を抑制し、更にエネルギー効率を向上できる。
【0009】
前記ヒートポンプユニットは、水熱源式のヒートポンプ、または空気熱源式のヒートポンプであってもよい。
【0010】
前記空調機が、前記ヒートポンプユニットの後段に加湿器を更に有していてもよい。これにより、空調対象空間に供給する給気の温湿度を更に適切に制御できる。
【0011】
前記外気を、前記空調対象空間からの還気との混合の後に給気として前記空調対象空間に供給してもよい。この場合、前記外気と前記還気の混合は、前記空調機の内部で行なわれてもよい。
このように外気と還気の混合を行うことで、空調対象空間に供給する給気の温湿度を更に適切に制御できる。
【0012】
前記空調対象空間の内部温度を放射熱により調整する放射パネル、を更に有していてもよい。この場合、前記放射パネルは、前記竪管を介して前記チラーと接続される。
このように放射パネルを用いて空調対象空間の内部温度を放射熱で制御することで、空調システムのエネルギー効率を更に向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術によれば、冷水と温水の供給を切り換えることなく、熱源水温度を可変することで年間を通して冷暖房の両方の運転が可能な空調機を備えた空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る空調システムを適用した建物を示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係る空調システムが備える外調機の構成の詳細を示す説明図である。
【
図3】第1の実施形態に係る空調システムの動作を示す空気線図である。
【
図4】第2の実施形態に係る空調システムを適用した建物を示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態に係る空調システムが備える空調機の構成の詳細を示す説明図である。
【
図6】第2の実施形態に係る空調システムの動作を示す空気線図である。
【
図7】第3の実施形態に係る空調システムが備える外調機の構成の詳細を示す説明図である。
【
図8】第3の実施形態に係る空調システムの動作を示す空気線図である。
【
図9】空調システム他の構成例を示す説明図である。
【
図10】空調システム他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る空調システムについて、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本開示の技術にかかる空調システムが備える「空調機」には、いわゆる「外調機」が包含される場合がある。
【0016】
<第1の実施形態に係る空調システム>
図1は、第1の実施形態に係る空調システム2を適用した建物1の全体的な構成の一例を示す説明図である。
図2は、
図1の空調システム2が備える外調機30の構成の詳細を示す説明図である。
【0017】
図1に示すように、建物1の内部には複数、一例において建物1のフロア(階数)と同数の空調対象空間Rが形成されている。本開示の技術に係る空調システム2は、これら複数の空調対象空間Rの各々において、独立して冷暖房を可能に構成される。なお、建物1に設定される空調対象空間Rの数や配置は任意に決定できる。
【0018】
本実施形態において空調システム2は、複数の冷温水チラー10と、二次側空調装置20を備える。また、二次側空調装置20は、複数の外調機30と複数の室内機50を備える。一例において冷温水チラー10は建物1の外部空間、例えば屋上に設けられ、外調機30と室内機50は建物1に設定された空調対象空間Rの各々に対応して各フロアに設けられる。また冷温水チラー10の設置数は、建物1に設定された空調対象空間Rでの冷暖房負荷等に基づいて決定される。
【0019】
熱源機としての冷温水チラー10では、後述の二次側空調装置20において空調対象空間Rに供給する給気SA、処理空気SOAを生成するための熱媒としての熱源水を生成し、往路及び環路を為す2本の熱源水用竪管11を介して、生成した熱源水を建物1の各フロアに配置された外調機30との間で循環させる。熱源水用竪管11は、冷温水チラー10からの熱源水を各フロアに供給するための往路管11aと、各フロアで外調機30での熱交換に供された熱源水を冷温水チラー10に戻すための還路管11bと、を有する。従って、本開示の技術に係る空調システム2は、2管式のシステムとして構成される。
【0020】
熱源水用竪管11には、熱源水を循環させるためのポンプP1と、通流する熱源水の流量を制御するための二方弁V1が設けられている。そして空調システム2では、ポンプP1の回転数の可変により冷温水チラー10を通流する熱源水の流量を制御し、冷温水チラー10において熱源水に与える熱量を調整することで、生成される熱源水の温度を可変制御する。本実施形態において、冷温水チラー10で生成される熱源水(熱媒)の温度は、年間を通して15℃~35℃である。
【0021】
二方弁V1は、熱源水用竪管11において、後述する外調機30及び後述する室内機50の下流(出口)側に配置されている。二方弁V1は、外調機30及び室内機50の各々の負荷処理量に応じて開度が制御される。そして、各二方弁V1の制御量を集積した演算負荷量に応じて、後述する制御部60により冷温水チラー10の負荷容量(熱源水の流量と供給温度)を制御する。
【0022】
なお、冷温水チラー10の構成や配置は特に限定されるものではなく、外調機30に循環させるための15℃~35℃の熱源水を生成できれば、任意の構成とすることができる。
【0023】
外調機30は空調対象空間Rの外部、例えば同フロアに設けられた機械室等に配置される。外調機30は、給気口1aを介して建物1に取り込んだ外気OAを、冷温水チラー10からの熱源水との熱交換により処理して処理空気SOAを生成する。生成された処理空気SOAは、ダクト30aを介して空調対象空間Rへと供給される。
【0024】
図2に示すように外調機30は、一例においてフィルタ31、水熱源ヒートポンプユニット(以下、単に「ヒートポンプユニット」と言う。)40、加湿器32及び送風機33を内部に有する。フィルタ31、ヒートポンプユニット40、加湿器32及び送風機33は、外気OAの通流経路上にこの順で配置されている。
【0025】
フィルタ31は、取り込んだ外気OAに含まれる異物を除去する。
加湿器32は、ヒートポンプユニット40を介して熱処理された外気OAを加湿して湿度を調整する。加湿器32は、例えば気化式加湿器であり、図示しない給水部に接続される。
送風機33は、ヒートポンプユニット40及び加湿器32を介して温湿度が調整された外気OAを処理空気SOAとしてダクト30aを介して空調対象空間Rに向けて送出する。
【0026】
ヒートポンプユニット40は、プレコイル41、水熱交換器42、主コイル43及び再熱コイル44を有する。ヒートポンプユニット40は、水熱交換器42と主コイル43及び/又は再熱コイル44を、冷媒配管40aにより相互に接続した構成を有する。冷媒配管40aには、図示しない膨張弁(図示せず)、圧縮機45及び四方弁46が設けられ、内部に冷媒を循環可能に構成されている。従ってヒートポンプユニット40は、これら圧縮機45、膨張弁、主コイル43及び再熱コイル44の間を冷媒が流通し冷凍サイクルを構成している。
【0027】
プレコイル41は、熱源水用竪管11を介して冷温水チラー10と接続されている。そしてプレコイル41では、取り込んだ外気OAと冷温水チラー10からの熱源水とを熱交換することにより、冷房運転時における外気OAのプレクール、暖房運転時における外気OAのプレヒートを行う。
水熱交換器42は、熱源水用竪管11を介して冷温水チラー10と接続されている。そして水熱交換器42では、冷温水チラー10からの熱源水と、冷媒配管40aを循環する冷媒との熱交換を行い、主コイル43、再熱コイル44において外気OAとの熱交換に供された冷媒の冷却/加熱を行う。
膨張弁は、冷媒配管40aを循環する冷媒を膨張させる。
圧縮機45は、冷媒配管40aに冷媒を循環させると共に、循環する冷媒を圧縮する。
四方弁46は、冷媒配管40aを循環する冷媒の循環方向を切り替えることにより、ヒートポンプユニット40の冷房運転と暖房運転を切り替える。
【0028】
なお、図示の例では水熱交換器42を外調機30の内部においてプレコイル41の後段に配置したが、水熱交換器42の配置はこれに限定されない。例えば水熱交換器42は、外調機30の内部において任意の位置に配置されてもよいし、外調機30の外部、例えば空調対象空間Rと同フロアに設けられた機械室に配置されてもよい。
【0029】
主コイル43は、ヒートポンプユニット40において外気OAの経路におけるプレコイル41の下流側に配置される。主コイル43では、外気OAの顕熱処理及び潜熱処理、具体的には冷媒配管40aを循環する冷媒と外気OAの熱交換を行い、冷房運転時における外気OAの冷却除湿、暖房運転時における外気OAの加熱を行う。
【0030】
再熱コイル44は、ヒートポンプユニット40において外気OAの経路の下流側に配置される。再熱コイル44では、外気OAの顕熱処理、具体的には冷媒配管40aを循環する冷媒と外気OAの熱交換を行い、冷房運転時における外気OAの再熱を行う。
従って、主コイル43と再熱コイル44は、水熱交換器42に対して並列に接続され、ヒートポンプユニット40において独立して外気OAを処理可能に構成されている。従って、特にプレコイル41において外気OAの熱処理が充分に行える条件下では、プレコイル41の後段には、少なくとも1つの直膨コイルが配置されていればよい。
【0031】
なお
図2に示した例では、外調機30の内部に、少なくともヒートポンプユニット40と加湿器32からなる顕熱/潜熱処理モジュールを1つのみ配置したが、外調機30の内部には、この顕熱/潜熱処理モジュールを外気OAの通流経路に対して並列に複数配置してもよい。
【0032】
なお、外調機30により空調対象空間Rに供給された処理空気SOAは、空調対象空間Rの熱負荷を処理した後、排気口1bを介して排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0033】
室内機50は、一例において空調対象空間Rの上部の天井空間に配置される。室内機50には、熱源水用竪管11を介して冷温水チラー10が接続される。また室内機50は、空調対象空間Rからの還気RAを取り込み可能に構成される。そして室内機50では、空調対象空間Rからの還気RAを冷温水チラー10からの熱源水と熱交換することにより温湿度を制御して、給気SAとして空調対象空間Rに供給する。
【0034】
なお室内機50は、
図1に示すように複数、図示の例では各空調対象空間Rに対応してそれぞれ2台が配置される。従って、本実施形態において冷温水チラー10には、複数、本実施形態においては2台の室内機50が並列に接続されている。空調対象空間Rに対応して設けられる室内機50の数や配置は、例えば外調機30と並べて建物1の機械室に配置する等、任意に設定できる。
【0035】
本実施形態に係る空調システム2では、上記したように外調機30及び室内機50が、一の熱源水用竪管11に対して並列に複数接続されている。より具体的には、複数の外調機30及び複数の室内機50が、それぞれ熱源水用竪管11に対して並列に接続されるように、建物1の各フロア(各階)に設けられている。これにより空調システム2では、各フロア(各空調対象空間R)の冷暖房を、それぞれ独立して行うことができる。
【0036】
以上のように構成された空調システム2には制御部60が設けられている。制御部60は、空調システム2を構成する各種要素(冷温水チラー10及び各種二方弁等)の動作を制御する。一例において制御部60では、上記したように各外調機30、室内機50の負荷処理量に応じて二方弁V1の開度を制御して、冷温水チラー10の負荷容量を制御する。制御部60は空調システム2と一体に構成されていてもよいし、外調機30に組み込まれて構成されてもよいし、又は空調システム2を遠隔で制御可能に構成されてもよい。
【0037】
続いて、
図1及び
図2に示した第1の実施形態に係る空調システム2の動作例について説明する。
図3は空調システム2の冷暖房運転、各々に際しての空気線図を示している。なお、以下の説明において用いる温湿度等の数値は例示的なものであり、必ずしも空調システム2の実際の運転における数値と一致するものではない。また、以下の説明で用いる温度はいずれも乾球温度である。
【0038】
<第1実施形態に係る空調システムの冷房運転>
先ず、空調システム2の冷房運転について説明する。
空調システム2の冷房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(35℃、21g/kg´)が外調機30に供給され、プレコイル41での冷温水チラー10からの熱源水(17℃)との熱交換により冷却除湿(19℃、13g/kg´)される(
図3の冷房ステップCS1)。
続いて、プレコイル41で冷却除湿された外気OAは、ヒートポンプユニット40の主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、冷却除湿(10℃、8g/kg´)される(
図3の冷房ステップCS2)。
続いて、主コイル43で冷却除湿された外気OAは、ヒートポンプユニット40の再熱コイル44に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により温湿度が調整され、これにより処理空気SOA(19℃、8g/kg´)が生成される(
図3の冷房ステップCS3)。生成された処理空気SOAは、送風機33により空調対象空間Rに向けて送出される。
【0039】
空調システム2の冷房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された処理空気SOAは、その後、還気RA(26℃、11g/kg´)として室内機50に送られた後に給気SAとして再度空調対象空間Rに供給されるか、排気口1bを介して排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0040】
<第1実施形態に係る空調システムの暖房運転>
続いて、空調システム2の暖房運転について説明する。
空調システム2の暖房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(-2℃、1g/kg´)が外調機30に供給され、プレコイル41での冷温水チラー10からの熱源水(27℃)との熱交換により加熱(25℃、1g/kg´)される(
図3の暖房ステップHS1)。
続いて、プレコイル41で加熱された外気OAは、ヒートポンプユニット40の主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、更に加熱(48℃、1g/kg´)される(
図3の暖房ステップHS2)。
続いて、主コイル43で加熱された外気OAは加湿器32に通流され、当該加湿器32における加湿により温湿度が調整され、これにより処理空気SOA(27℃、9g/kg´)が生成される(
図3の暖房ステップHS3)。生成された処理空気SOAは、送風機33により空調対象空間Rに向けて送出される。
【0041】
空調システム2の暖房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された処理空気SOAは、その後、還気RA(24℃、9g/kg´)として室内機50に送られた後に給気SAとして再度空調対象空間Rに供給されるか、排気口1bを介して排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0042】
以上、本実施形態に係る空調システム2によれば、年間を通して15℃~35℃で可変に温度制御された熱源水を用いると共に、水熱源ヒートポンプ(ヒートポンプユニット40)を有する外調機30を用いて外気OAを処理して給気SAを生成する。
このように、水熱源ヒートポンプ(ヒートポンプユニット40)を採用したハイブリット空調システムとして構成することで、冷暖房のピーク期間でも従来のように低温冷水(例えば7℃)や高温温水(例えば50℃)を必要とせず、15℃~35℃の熱源水での対応が可能となり、エネルギー効率を大幅に向上できる。また、上記したピーク期間を除くと、本実施形態に係る空調システム2では顕熱負荷への対応のみで冷暖房が可能となり、かかる点からもエネルギー効率の向上が見込まれる。
【0043】
具体的に、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、冷房期間における熱源水の供給温度を15℃以上、暖房期間における熱源水の供給温度を35℃以下とすることで、熱源機(冷温水チラー10)の成績係数を2割~3割程度向上させ、1次エネルギーの使用量を大幅に削減できることがわかった。
また、本実施形態に係る空調システム2では、外調機30に組み込むヒートポンプユニット40でも、15℃~35℃の熱源水を利用できる水熱源式を採用したことから、従来のシステムと比較して成績係数を飛躍的に向上でき、ピーク期間においても従来のシステムと同等、若しくは1割程度のエネルギー削減効果を得られる。
【0044】
更に本実施形態に係る空調システム2によれば、制御部60を用いて、外気OAの温湿度と空調対象空間R内の温湿度等を監視しながら熱源機(冷温水チラー10)からの熱源水の温度と、室内機50による給気SAの吹き出し温度を最適な組み合わせで設定、制御することで、各フロア(空調対象空間R)での室内負荷に見合った温湿度環境を作り出すことができる。換言すれば、空調対象空間Rの過冷却/過加熱が抑制でき、この結果、更なるエネルギー効率の向上が図れる。
したがって制御部60は、外気OAの温湿度と空調対象空間Rの温湿度に基づいて、熱源水の温度と、給気SAの吹き出し温度とを可変制御する。
【0045】
また更に、本実施形態に係る空調システム2は、水熱源式のヒートポンプ(主コイル43及び再熱コイル44)と水コイル(プレコイル41)とを組み合わせたシステムであり、冷温水チラー10からの熱源水の供給温度を可変して、外調機30において熱源水が何度でも冷却加熱が可能であるため、年間を通して、冷暖房の切り換えストレスのないシステムを構築できる。
【0046】
<第2の実施形態に係る空調システム>
図4は、第2の実施形態に係る空調システム102を適用した建物1の構成の一部を示す説明図である。
図5は、
図4の空調システム102が備える空調機130の構成の詳細を示す説明図である。
なお、空調システム102を適用する建物1は、第1の実施形態で示した建物1(
図1を参照)と同様の構成を有し、複数の空調対象空間Rが設定されるが、説明の簡略化のため、
図4に示すように一の空調対象空間Rのみを示して説明を行う。また、空調システム102において第1の実施形態で示した空調システム2と実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の付番を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
空調システム102は、複数の冷温水チラー10、二次側空調装置120及び制御部60を有する。また二次側空調装置120は、少なくとも1つの空調機130と給気部150を備える。空調機130と給気部150は、ダクト130aを介して接続されている。空調機130は建物1に設定された空調対象空間Rの各々に対応して設けられ、往路及び環路を為す2本の熱源水用竪管11を介して、冷温水チラー10と接続される。冷温水チラー10で生成される熱源水の温度は、年間を通して15℃~35℃である。
【0048】
空調機130は空調対象空間Rの外部、例えば同フロアに設けられた機械室等に配置される。空調機130は、給気口1aを介して建物1に取り込んだ外気OAを、冷温水チラー10からの熱源水との熱交換、及び空調対象空間Rからの還気RAとの混合により処理して給気SAを生成する。生成された給気SAは、ダクト130aと給気部150を介して空調対象空間Rへと供給される。
【0049】
図5に示すように空調機130は、一例においてフィルタ31、ヒートポンプユニット40、加湿器32及び送風機33を内部に有する。フィルタ31、ヒートポンプユニット40、加湿器32及び送風機33は、外気OAの通流経路上にこの順で配置されている。
【0050】
また空調機130では、還気用接続口を介して空調対象空間Rからの還気RAを内部に取り込み、例えばプレコイル41と主コイル43の間に形成された混合空間MSにおいて、外気OAと混合可能に構成されている。空調機130に取り込まれる還気RAの流量は、例えば図示しないダンパーの開度を制御することで調整可能に構成される。
すなわち第2の実施形態に係る空調システム102は、第1の実施形態に係る空調システム2における外調機30と室内機50が一体に構成された空調機130を備えた形態と言える。従って本開示に係る技術では、空調システムが備える空調機において、外気と還気の混合が行われてもよい。
【0051】
なお、
図5に示した例においては、外気OAと還気RAを混合する混合空間MSがプレコイル41と主コイル43の間に形成される場合を例に図示を行ったが、外気OAと還気RAの混合のタイミングはこれに限られるものではない。例えば、外気OAと還気RAはプレコイル41の前段で混合されてもよい。
【0052】
また空調機130では、取り込んだ外気OAの温湿度や空調対象空間Rで要求される空調負荷に応じて、外気OAと還気RAとの混合、及び/又は、冷温水チラー10からの熱源水との熱交換の少なくともいずれか一方が省略されてもよい。従って、空調機130では還気RAと外気OAの混合のみを行って混合空気MAを給気SAとして空調対象空間Rに供給してもよいし、外気OAを還気RAと混合することなくヒートポンプユニット40での熱源水との熱交換に供し、給気SAを生成して空調対象空間Rに供給してもよい。
【0053】
続いて、
図4及び
図5に示した第2の実施形態に係る空調システム102の動作例について説明する。
図6は空調システム102の冷暖房運転、各々に際しての空気線図を示している。なお、以下の説明において用いる温湿度等の数値は例示的なものであり、必ずしも空調システム102の実際の運転における数値と一致するものではない。また、以下の説明で用いる温度はいずれも乾球温度である。
【0054】
<第2実施形態に係る空調システムの冷房運転>
先ず、空調システム102の冷房運転について説明する。
空調システム102の冷房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(35℃、21g/kg´)が二次側空調装置120の空調機130に供給され、プレコイル41での冷温水チラー10からの熱源水(17℃)との熱交換により冷却除湿(19℃、13g/kg´)される(
図6の冷房ステップCT1)。
続いて、プレコイル41で冷却除湿された外気OAは、混合空間MSにおいて、還気用接続口を介して空調機130に取り込まれた還気RA(26℃、11g/kg´)と混合され、これにより混合空気MA(22℃、12g/kg´)が生成される(
図6の冷房ステップCT2)。
生成された混合空気MAは、次に主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、冷却除湿(10℃、8g/kg´)される(
図6の冷房ステップCT3)。
続いて、主コイル43で冷却除湿された混合空気MAは、再熱コイル44に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により温湿度が調整され、これにより給気SA(19℃、8g/kg´)が生成される(
図6の冷房ステップCT4)。
生成された給気SAは、その後、送風機33によりダクト130aを介して給気部150へと送られ、空調対象空間Rに供給される。
【0055】
空調システム102の冷房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された給気SAは、その後、再度還気RA(26℃、11g/kg´)として空調機130での外気OAとの混合に供されるか、排気口1bを介して排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0056】
<第2実施形態に係る空調システムの暖房運転>
続いて、空調システム102の暖房運転について説明する。
空調システム102の暖房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(-2℃、1g/kg´)が二次側空調装置120の空調機130に供給され、プレコイル41での冷温水チラー10からの熱源水(27℃)との熱交換により加熱(25℃、1g/kg´)される(
図6の暖房ステップHT1)。
続いて、プレコイル41で加熱された外気OAは、混合空間MSにおいて、還気用接続口を介して空調機130に取り込まれた還気RA(24℃、9g/kg´)と混合され、これにより混合空気MA(25℃、5g/kg´)が生成される(
図6の暖房ステップHT2)。
生成された混合空気MAは、次に主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、更に加熱(40℃、5g/kg´)される(
図6の暖房ステップHT3)。
続いて、主コイル43で加熱された外気OAは加湿器32に通流され、当該加湿器32における加湿により温湿度が調整され、これにより給気SA(27℃、9g/kg´)が生成される(
図3の暖房ステップHT4)。
生成された給気SAは、その後、送風機33によりダクト130aを介して給気部150へと送られ、空調対象空間Rに供給される。
【0057】
空調システム102の暖房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された給気SAは、その後、再度還気RA(26℃、11g/kg´)として空調機130での外気OAとの混合に供されるか、排気口1bを介して排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0058】
以上、第2の実施形態に係る空調システム102によれば、空調機130での主コイル43による外気処理に先立って還気RAを混合し、混合空気MAを生成することで、外気OAをそのまま処理する場合と比較して、ヒートポンプユニット40の負荷を軽減できる。従って、ヒートポンプユニット40の成績係数を向上させ、エネルギー効率を更に向上できる。
【0059】
<第3の実施形態に係る空調システム>
図7は、第3の実施形態に係る空調システムが備える外調機230の構成の詳細を示す説明図である。外調機230は、一例において第1の実施形態で示した建物1(
図1を参照)において、上記した外調機30に代えて配置される。
【0060】
図7に示すように外調機230は、一例においてフィルタ31、ヒートポンプユニット40、加湿器32及び送風機33を内部に有する。フィルタ31、ヒートポンプユニット40、加湿器32及び送風機33は、外気OAの通流経路上にこの順で配置されている。
【0061】
また外調機230には、外気OAの通流経路におけるプレコイル41の前段に、還気用接続口を介して外調機230内に取り込んだ還気RAを外気OAと熱交換するための全熱交換器231と、全熱交換器231での外気OAとの熱交換に供された還気RAを排出するための送風機232が設けられている。
外調機230の内部において、外気OAの通流経路と還気RAの通流経路は独立して形成されている。すなわち、外調機230の内部において還気RAと外気OAの混合は行われない。
【0062】
続いて、
図7に示した外調機230を備える空調システムの動作例について説明する。
図8は空調システムの冷暖房運転、各々に際しての空気線図を示している。なお、以下の説明において用いる温湿度等の数値は例示的なものであり、必ずしも空調システムの実際の運転における数値と一致するものではない。また、以下の説明で用いる温度はいずれも乾球温度である。
【0063】
<第3実施形態に係る空調システムの冷房運転>
先ず、外調機230を備える空調システムの冷房運転について説明する。
空調システムの冷房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(35℃、21g/kg´)が外調機230に供給されるとともに、空調対象空間Rからの還気RA(26℃、11g/kg´)が外調機230に供給される。そして、外調機230に取り込まれた外気OAは、全熱交換器231における還気RAとの熱交換により冷却除湿(29℃、14g/kg´)される(
図8の冷房ステップCP1)。
還気RAとの熱交換により冷却除湿された外気OAは、続いてプレコイル41での冷温水チラー10からの熱源水(17℃)との熱交換により更に冷却除湿(18℃、13g/kg´)される(
図8の冷房ステップCP2)。
プレコイル41で冷却除湿された外気OAは、次に主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、冷却除湿(10℃、8g/kg´)される(
図6の冷房ステップCP3)。
続いて、主コイル43で冷却除湿された外気OAは、再熱コイル44及び加湿器32にこの順で通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換、及び加湿器32における加湿により温湿度が調整され、これにより処理空気SOA(19℃、8g/kg´)が生成される(
図8の冷房ステップCP4)。生成された処理空気SOAは、送風機33により空調対象空間Rに向けて送出される。
【0064】
空調システムの冷房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された処理空気SOAは、その後、室内機50に送られた後に給気SAとして空調対象空間Rに再度供給されるか、還気RA(26℃、11g/kg´)として全熱交換器231での外気OAとの熱交換に供された後または排気口1bを介して、排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0065】
<第3実施形態に係る空調システムの暖房運転>
続いて、外調機230を備える空調システムの暖房運転について説明する。
空調システムの暖房運転では、給気口1aを介して建物1に取り込まれた外気OA(-2℃、1g/kg´)が外調機230に供給されるとともに、空調対象空間Rからの還気RA(24℃、9g/kg´)が外調機230に供給される。そして、外調機230に取り込まれた外気OAは、全熱交換器231における還気RAとの熱交換により加熱(15℃、7g/kg´)される(
図8の暖房ステップHP1)。
還気RAとの熱交換により加熱された外気OAは、続いて主コイル43に通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換により、加熱(38℃、7g/kg´)される(
図6の暖房ステップHP2)。
続いて、主コイル43で加熱された外気OAは、再熱コイル44及び加湿器32にこの順で通流され、冷媒配管40aを通流する冷媒との熱交換、及び加湿器32における加湿により温湿度が調整され、これにより処理空気SOA(31℃、9g/kg´)が生成される(
図8の暖房ステップHP3)。生成された処理空気SOAは、送風機33により空調対象空間Rに向けて送出される。
【0066】
空調システムの暖房運転は以上のようにして行われる。
なお、空調対象空間Rに供給された処理空気SOAは、その後、室内機50に送られた後に給気SAとして空調対象空間Rに再度供給されるか、還気RA(24℃、9g/kg´)として全熱交換器231での外気OAとの熱交換に供された後または排気口1bを介して、排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0067】
以上、第3の実施形態に係る空調システムによれば、外調機230でのヒートポンプユニット40による外気処理に先立って、全熱交換器231により外気OAと還気RAの熱交換を行う。これにより、外気OAをそのまま処理する場合と比較して、ヒートポンプユニット40の負荷を軽減できる。従って、ヒートポンプユニット40の成績係数を向上させ、エネルギー効率を更に向上できる。
【0068】
<他の実施形態に係る空調システム>
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0069】
例えば、以上の実施形態においては、生成された給気SAを空調対象空間Rに供給することで、当該空調対象空間R内の温湿度を調整する場合を例に説明を行ったが、空調対象空間R内の温湿度の調整方法はこれに限定されない。
【0070】
具体的に、例えば
図9に示す空調システム302の二次側空調装置320のように、室内機50に代えて放射パネル350を配置することで、放射熱により空調対象空間Rの温度を調整するようにしてもよい。放射パネル350は、冷温水チラー10からの冷温水を内部で循環させることで、給気SAを吹き込むことなく、放射熱により空調対象空間Rの温度を調節する。
この場合、空調対象空間Rからの排気EAの排出することと、外調機30において少なくとも湿度処理が施された外気OAを給気SAとして空調対象空間Rに供給することと、のバランスを制御することで、空調対象空間Rの湿度を調整してもよい。
従って
図9に示す空調システム302の二次側空調装置320は、主として空調対象空間Rの温度制御を行うための放射パネル350と、主として空調対象空間Rの湿度制御を行うための外調機30を有する。
【0071】
この場合であっても、冷温水チラー10からの放射パネル350及び外調機30に供給される冷温水の温度を15℃~35℃に制御することで、従来と比較して空調システム302の全体でエネルギー効率を大幅に向上できる。
【0072】
また具体的に、例えば外調機の内部でドレン水(例えばヒートポンプユニット40での外気OAの除湿により生じた凝縮水)を回収、循環可能に構成し、このドレン水を気化させてミストとして全熱交換器231やヒートポンプユニット40に吹き付けることで、これら全熱交換器231やヒートポンプユニット40における熱交換を促進するようにしてもよい。
【0073】
更に具体的に、上記した例ではプレコイル41に冷温水チラー10で温度制御して生成された冷温水を通流させ、外気OAのプレヒート/プレクールを行ったが、プレコイル41に通流させる冷温水は冷温水チラー10で生成されるものには限定されず、少なくとも温度を安定制御できるものであればよい。従って、外気OAのプレヒート/プレクールを行うためのプレコイル41には、例えば年間を通して温度が安定した地下水や工業用水が通流されてもよい。
【0074】
例えば、以上の実施形態では、外調機(第2の実施形態においては空調機130)の内部には、冷温水チラー10からの熱源水を利用する水熱源式のヒートポンプユニット40を配置したが、ヒートポンプユニット40の種類もこれに限定されるものではない。
【0075】
ヒートポンプユニット40では、温度が15℃~35℃に調整された熱媒であれば、冷温水チラー10からの熱源水に代えて任意の冷媒やブライン、ガスを利用してもよい。換言すれば、空調対象空間Rが形成された建物の屋上に配置されるチラーの種類は冷温水チラーに限られるものではなく、ガスチラーやブラインチラーであってもよい。
従って本開示の技術に係る空調システムは、冷媒の圧縮と膨張を交互に実行して冷凍サイクルを構成して取り込んだ外気の顕熱処理及び潜熱処理を行うヒートポンプユニットを備えた外調機と、外調機において外気との熱交換に供される15℃~35℃の熱媒を生成するチラーと、を備える。この場合、ヒートポンプユニットは水熱源式のヒートポンプであってもよいし、空気熱源式のヒートポンプであってもよい。
【0076】
また具体的に、以上の実施形態ではヒートポンプユニット40において1つの冷凍サイクルのみを構成したが、2つ以上の冷凍サイクルを構成してもよい。
【0077】
図10に、2つの冷凍サイクルを構成するヒートポンプユニット440を備えた空調機430の構成の一例を示す。
図10に示すように、空調機430はフィルタ31、ヒートポンプユニット440及び送風機33を備える。ヒートポンプユニット440は、プレコイル41、冷媒/冷媒熱交換器442、第1の主コイル443a及び第2の主コイル443bを有する。
【0078】
ヒートポンプユニット440は、冷媒/冷媒熱交換器442と第1の主コイル443aを第1の冷媒配管440aにより接続するとともに、冷媒/冷媒熱交換器442と第2の主コイル443bを第2の冷媒配管440bで接続した構成を有する。第1の冷媒配管440aには、第1の圧縮機445a、図示しない膨張弁及び第1の四方弁446aが設けられる。第2の冷媒配管440bには、第2の圧縮機445b、図示しない膨張弁及び第2の四方弁446bが設けられる。ヒートポンプユニット440では、第1の圧縮機445a、図示しない膨張弁及び第1の主コイル443aで第1の冷凍サイクルを構成するとともに、第2の圧縮機445b、図示しない膨張弁及び第2の主コイル443bで第2の冷凍サイクルを構成する、いわば2段圧縮式の構成を有する。
【0079】
冷媒/冷媒熱交換器442では、第1の冷媒配管440aを通流する第1の冷媒と、第2の冷媒配管440bを通流する第2の冷媒の熱交換が行われる。
第1の圧縮機445a及び第2の圧縮機445bは、それぞれ第1の冷媒配管440a、第2の冷媒配管440bに冷媒を循環させると共に、循環する冷媒を圧縮する。
第1の四方弁446a及び第2の四方弁446bは、それぞれ第1の冷媒配管440a、第2の冷媒配管440bを循環する冷媒の循環方向を切り替える。
【0080】
以上のように構成された空調機430では、空調対象空間Rからの還気RAをフィルタ31、プレコイル41及び第1の主コイル443aにこの順に通流させることで、還気RAの顕熱処理及び潜熱処理を行って給気SAを生成する。
この時、第1の主コイル443aにおいて還気RAとの熱交換に供されて加熱/冷却された第1の冷媒は、冷媒/冷媒熱交換器442において、第2の冷媒配管440bを通流する第2の冷媒の熱交換により温度が調整されて、第1の主コイル443aに再度送られる。
また、冷媒/冷媒熱交換器442において第1の冷媒との熱交換に供されて加熱/冷却された第2の冷媒は、第2の主コイル443bにおいて、外気OAとの熱交換により温度が調整されて、冷媒/冷媒熱交換器442に再度送られる。
第2の主コイル443bでの第2の冷媒との熱交換に供された外気OAは
排気EAとして建物1の外部へと排出される。
【0081】
このように空調機430のヒートポンプユニット440では、上記した空調システムにおける水熱交換器42に相当する冷媒/冷媒熱交換器442において、冷温水チラー10からの熱源水を利用することに代えて第2の冷媒を利用する。また、この第2の冷媒は、第2の主コイル443bでの外気OAとの熱交換により温度が調整され、冷媒/冷媒熱交換器442に再度送られる。
すなわちヒートポンプユニット440では、冷温水チラー10に相当する要素として、第2の冷媒の温度を外気OAにより調整する第2の主コイル443bを備えている。
【0082】
従って、空調機430が備えるヒートポンプユニット440は、いわゆる空気熱源式のヒートポンプであると言える。換言すれば、本開示の技術において空調システムに配置されるヒートポンプシステムは、上記したように空気熱源式のヒートポンプユニットであってもよい。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0084】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、複数の空調対象空間を有する建物に導入する空調システムとして有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 建物
2 空調システム
10 冷温水チラー
11 熱源水用竪管
20 二次側空調装置
30 外調機
31 フィルタ
32 加湿器
33 送風機
40 ヒートポンプユニット
41 プレコイル
42 水熱交換器
43 主コイル
44 再熱コイル
50 室内機
60 制御部
MA 混合空気
MS 混合空間
OA 外気
SOA 処理空気
SA 給気
R 空調対象空間
RA 還気