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特開2024-130405多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130405
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240920BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240920BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16C11/04 F
G06F1/16 312F
G06F1/16 312J
H05K5/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040094
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲生
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB02
3J105AB22
3J105AC07
3J105BC13
3J105DA04
3J105DA15
3J105DA41
4E360AA02
4E360BB02
4E360BB12
4E360GB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開閉可能な一対の筐体表面に跨って取り付けたフレキシブルディスプレイシートの湾曲部を収容する収容面積を大きくできる多軸ヒンジを提供する。
【解決手段】一対の筐体に設けた、一対の取付プレート51を開閉可能に軸支するセンターフレームユニット6と、取付プレート51を同期開閉させる同期回転機構と、取付プレート51に自由端側をセンタープレート61側に向けて一方向へ揺動付勢させて揺動可能に支持された一対のサイドプレート52を有し、筐体の開閉動作に連動し動作する取付プレート51の動きに伴い、前記一対の筐体を開いた際にはその各自由端側を前記センターフレームユニット6側へ近づけて、前記フレキシブルディスプレイシートの表面を平坦面とし、閉じた際にはサイドプレート52の自由端側が前記センターフレームユニット6から離れて筐体の折り曲げ部分に前記フレキシブルディスプレイの湾曲部を収容できる収容部を形成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体のそれぞれに設けられた一対の取付プレートと、前記一対の取付プレートを開閉可能に軸支するセンターフレームユニットと、前記一対の取付プレートを同期して開閉させる同期回転機構と、前記一対の取付プレートに各自由端側をセンタープレート側に向けて一方向へ揺動機構を介して揺動付勢させて揺動可能に支持された一対のサイドプレートを有し、前記一対の筐体の開閉動作に連動して動作する前記一対の取付プレートの動きに伴い、前記一対の筐体を開いた際にはその各自由端側を前記センターフレームユニット側へ近づけて、前記フレキシブルディスプレイシートの表面を凹凸のない平坦面とし、前記一対の筐体を閉じた際には前記サイドプレートの自由端側が前記センターフレームユニットから離れて前記一対の筐体の折り曲げ部分に前記フレキシブルディスプレイの湾曲部を収容できる収容部が形成されるように成したことを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記各サイドプレートの各第1端を前記各取付プレートに回転可能に軸支する一対の第1回転支持部と、前記各サイドプレートの各第1端とは異なる各第2端を摺動支持する前記センターフレームユニット側に設けたカム状支持面と、前記各サイドプレートを前記カム状支持面と当接する方向に付勢する第1弾性部材で構成されることを特徴とする請求項1記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項3】
前記揺動機構は、前記センターフレームユニットに設けられ、前記取付プレートを第2回転軸回りに回転可能に軸支する第2回転支持部、及び、前記カム状支持面を第2回転軸とは異なる第3回転軸回りに軸支する第3回転支持部と、前記取付プレートの前記第2回転軸回りの回転動作を前記カム状支持面に伝達する回転動作伝達部とで構成され、前記カム状支持面の傾斜形状は前記第2回転軸と前記第3回転軸の軸間距離と、前記取付プレートの回転角度と前記揺動機構の角度変更量により設定されることを特徴とする請求項2記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項4】
前記回転動作伝達部は、前記同期回転機構の回転と、前記一対の取付プレートの開閉動作を連動させるレバーギアを有し、前記カム状支持面は前記レバーギアに設けられていることを特徴とする請求項3記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項5】
吸込み機構を有し、前記吸込み機構は、前記レバーギアと連動する回転カムと、前記回転カムと対向する固定カムと、前記レバーギアと連動する回転摩擦プレートと、前記回転摩擦プレートと対向する固定摩擦プレートと、前記回転カム及び前記回転摩擦プレートと前記固定カム及び固定摩擦プレートを対向方向に付勢する第2弾性部材とで構成され、前記取付プレートを閉成状態及び開成状態へ吸い込んで回転停止させる事を特徴とする請求項4記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項6】
前記センターフレームユニットは、前記フレキシブルディスプレイシートと対向するセンタープレートを有し、前記一対の取付プレートの閉成時は前記センタープレート平面より前記フレキシブルディスプレイシート側に突出して前記フレキシブルディスプレイシートの移動規制を行うと共に、前記一対の取付けプレート開成時には前記センタープレート平面より前記フレキシブルディスプレイシートと反対側に退避する移動規制部材を有することを特徴とする請求項1記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項7】
前記一対の取付プレートは前記センターフレームユニットに対して前記取付プレート側に設けられた円弧軸及び前記センターフレームユニット側に設けられ、前記円弧軸が挿入される円弧溝により開閉可能に軸支されており、前記移動規制部材は、前記円弧軸に設けられていることを特徴とする請求項6記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に各記載の多軸ヒンジ装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに開閉可能に連結される一対の筐体の両表面に跨って、例えば有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る、携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブック、さらにはノートパソコンなどの各種の電子機器に用いて好適な多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに開閉可能に連結される一対の筐体の両表面に跨って1枚の有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る携帯電話機等の電子機器が開発され、世の中に出回りつつある。このような電子機器の一対の筐体を互いに開閉可能に連結するヒンジ装置として、複数のヒンジピンを用いた多軸ヒンジ装置が下記特許文献1において知られている。この多軸ヒンジ装置は、一対の筐体を開いた際にフレキシブルディスプレイシートの上面に凹凸ができないようにできた上で、フレキシブルディスプレイが折れて故障したりしないように、多軸ヒンジ装置の内部に折れ曲がったフレキシブルディスプレイシートの曲率半径を有する湾曲部分を収容できる収容部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-125841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、従来の収容部が定められた曲率半径を有する湾曲部を収容できるだけでは、永年使用すると湾曲部分に不具合が生じることから、収容部の大きさをさらに大きくすることのできる多軸ヒンジが求められている。
そこで本発明では、フレキシブルディスプレイシートの収容部を十分大きく確保すると共に、一対の筐体を閉じた時は断面が湾曲したフレキシブルディスプレイシートを、一対の筐体を展開した時には凸凹なく平坦にできる多軸ヒンジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体のそれぞれに設けられた一対の取付プレートと、前記一対の取付プレートを開閉可能に軸支するセンターフレームユニットと、前記一対の取付プレートを同期して開閉させる同期回転機構と、前記一対の取付プレートに各自由端側をセンタープレート側に向けて一方向へ揺動機構を介して揺動付勢させて揺動可能に支持された一対のサイドプレートを有し、前記一対の筐体の開閉動作に連動して動作する前記一対の取付プレートの動きに伴い、前記一対の筐体を開いた際にはその各自由端側を前記センターフレームユニット側へ近づけて、前記フレキシブルディスプレイシートの表面を凹凸のない平坦面とし、前記一対の筐体を閉じた際には前記サイドプレートの自由端側が前記センターフレームユニットから離れて前記一対の筐体の折り曲げ部分に前記フレキシブルディスプレイの湾曲部を収容できる収容部が形成されるように成したことを特徴とする。
【0006】
次に、請求項2に記載の発明は、前記揺動機構は前記サイドプレートの第1端を前記各取付プレートに回転可能に軸支する第1回転支持部と、前記サイドプレートの第1端とは異なる第2端を摺動支持するカム状支持面と、前記サイドプレートを前記カム状支持面と当接する方向に付勢する第1弾性部材で構成されることを特徴とする。
【0007】
次に、請求項3に記載の発明は、前記揺動機構は前記センターフレームユニットに設けられ、前記取付プレートを第2回転軸回りに回転可能に軸支する第2回転支持部、及び、前記カム状支持面を第2回転軸とは異なる第3回転軸回りに軸支する第3回転支持部と、前記取付プレートの前記第2回転軸回りの回転動作を前記カム状支持面に伝達する回転動作伝達部とで構成され、前記カム状支持面の傾斜形状は前記第2回転軸と前記第3回転軸の軸間距離と、前記取付プレートの回転角度と前記揺動機構の角度変更量により設定されることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載の発明は、前記回転動作伝達部は前記同期回転機構の回転と、前記一対の取付プレートの開閉動作を連動させるレバーギアを有し、前記カム状支持面は前記レバーギアに設けられていることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項5に記載の発明は、吸込み機構を有し、前記吸込み機構は、前記レバーギアと連動する回転カムと、前記回転カムと対向する固定カムと、前記レバーギアと連動する回転摩擦プレートと、前記回転摩擦プレートと対向する固定摩擦プレートと、前記回転カム及び前記回転摩擦プレートと前記固定カム及び固定摩擦プレートを対向方向に付勢する第2弾性部材とで構成され、前記取付プレートを閉成状態及び開成状態へ吸い込んで回転停止させる事を特徴とする。
【0010】
次に、請求項6に記載の発明は、前記センターフレームユニットに設けられ、前記フレキシブルディスプレイシートと対向するセンタープレートを有し、前記一対の取付プレート閉成時は前記センタープレート平面より前記フレキシブルディスプレイシート側に突出して前記フレキシブルディスプレイシートの移動規制を行うと共に、前記一対の取付けプレート開成時には前記センタープレート平面より前記フレキシブルディスプレイシートと反対側に退避する移動規制部材を有することを特徴とする。
【0011】
次に、請求項7に記載の発明は、前記一対の取付プレートは、前記センターフレームユニットに対して前記取付プレート側に設けられた円弧軸及び前記センターフレームユニット側に設けられ、前記円弧軸が挿入される円弧溝により開閉可能に軸支されており、前記移動規制部材は、前記円弧軸に設けられていることを特徴とする。
【0012】
次に、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に各記載の多軸ヒンジ装置を用いたことを特徴とする電子機器を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のように構成すると、一対の筐体の開成状態においては、フレキシブルディスプレイシートの表面を凹凸のない平坦な面とすることができ、一対の筐体の閉成状態においてフレキシブルディスプレイシートの湾曲部を収容するに十分な収容部を確保することができる。
【0014】
請求項2のように構成すると、少ない部品で揺動機構を構成することができる。
【0015】
請求項3のように構成すると、第2回転軸と第3回転軸の軸間距離を利用して安定した揺動機構を構成することができる。
【0016】
請求項4のように構成すると、レバーギアとカム状支持面が一体化されて、少ない部品で揺動機構を得ることができる。
【0017】
請求項5のように構成すると、少ない部品で高品位な吸込み機構を得ることができる。
【0018】
請求項6のように構成すると、一対の筐体閉成時にフレキシブルディスプレイシートが安定して支持できる。
【0019】
請求項7のように構成すると、円弧軸を移動規制部材と兼用することで、少ない部品点数でフレキシブルディスプレイシートを安定して支持できる。
【0020】
請求項8のように構成すると、電子機器の閉成状態においてフレキシブルディスプレイシートを収容する十分な収容部を確保することができる。
る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る多軸ヒンジ装置を用いたフレキシブルディスプレイシートを有する電子機器を示し、(a)は一対の筐体を0度に閉じた閉成状態の斜視図、(b)は側面図である。
図2】本発明に係る多軸ヒンジ装置を用いたフレキシブルディスプレイシートを有する電子機器の一対の筐体を180度開いた開成状態を示し、(a)はフレキシブルディスプレイシートを外した状態の斜視図、(b)はフレキシブルディスプレイシートを取り付けた状態の斜視図である。
図3】多軸ヒンジ装置の開成状態を示し、(a)は上面の斜視図、(b)は裏面の斜視図である。
図4】多軸ヒンジ装置の閉成状態を示し、(a)は上面の斜視図、(b)は裏面の斜視図である。
図5】フレキシブルディスプレイシートを含む多軸ヒンジ装置の閉成状態における斜視図である。
図6】フレキシブルディスプレイシートを含む多軸ヒンジ装置の閉成状態における正面図である。
図7図6におけるC-C断面図である。
図8】多軸ヒンジ装置の同期回転機構以外の分解斜視図である。
図9】多軸ヒンジ装置におけるバックカバーの斜視図である。
図10】多軸ヒンジ装置における取付プレートを示し、(a)は全体斜視図、(b)は部分拡大斜視図である。
図11】多軸ヒンジ装置におけるサポートアームを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図12】多軸ヒンジ装置におけるガイドベースを示し、(a)は上面から見た斜視図、(b)は下面から見た斜視図である。
図13】多軸ヒンジ装置のガイドサポートを示し、(a)は上面から見た斜視図、(b)は下面から見た斜視図である。
図14】多軸ヒンジ装置におけるセンタープレートの斜視図である。
図15】多軸ヒンジ装置におけるサイドプレートを示し、(a)は上面の斜視図、(b)は裏面の斜視図、(c)は裏面の部分拡大斜視図である。
図16】同期回転機構を示し、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の斜視図である。
図17】多軸ヒンジ装置の側面透視図であり、(a)は閉成状態、(b)は開成状態である。
図18】(a)は図17におけるD-D断面図であり、多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。
図19】(a)は図17におけるE-E断面図であり、多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。
図20】(a)は図17におけるF-F断面図であり、多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。
図21】軸間距離とカム状支持面の形状との関係を説明する図であり、図21(a)はサポートアームとレバーギアの切断位置を説明する斜視図である。図21(b)は多軸ヒンジ装置のレバーギア部における閉成時断面模式図である。図21(c)は多軸ヒンジ装置のサポートアーム部における閉成時断面模式図である。図21(d)は多軸ヒンジ装置のレバーギア部における開成時断面模式図である。図21(e)はレバーギアにおけるカム状支持面を説明する部品単品の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係る多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器の実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。図1図2は、本発明に係る多軸ヒンジ装置を用いた電子機器の一例としての携帯電話機A(スマートフォン)を概略的に示している。
【0023】
図1(a)は一対の筐体1、1を0度に閉じた閉成状態の斜視図である。携帯電話Aの外装は、一対の筐体1、1とバックカバー2で構成され、バックカバー2に設けられる多軸ヒンジ装置B(図1では見えない)により一対の筐体1、1は連結されている。そして、図1(b)の側面図に示すように一対の筐体1、1は矢印1dで示すバックカバー側を回転の根元とし、矢印1eで示す自由端側が開閉の先端となる。
1aは後述する取付プレートに筐体1を螺合させる為に設けられている取付ねじ孔である。
【0024】
図2は一対の筐体1、1を180度に開いた開成状態の斜視図であり、図2(a)はフレキシブルディスプレイシート4が設けられていない状態、図2(b)はフレキシブルディスプレイシート4が設けられた状態を示している。図2(a)においては多軸ヒンジ装置Bの構成要素であるサイドプレート52、センタープレート61が露出している。図1(b)、図2(a)に示すように、一対の筐体1、1はそれぞれ第2回転軸1bを中心にして矢印1c方向に回転する。この回転動作により図2(b)の開成状態から図1(a)の閉成状態に移行する。この時、多軸ヒンジ装置Bにより生まれた収容部にフレキシブルディスプレイシート4は内側にして二つ折りされる。
【0025】
以降の説明において、本発明の多軸ヒンジ装置を構成する殆んどの部品は後述するバックカバー2の長手方向を軸とする軸対称形状である。そこで、以降は軸対称形状の一方の部品のみ説明を行う。
【0026】
多軸ヒンジ装置Bはフレーム機構、回転制御機構、同期回転機構、吸込み機構、揺動機構で構成されており、初めにフレーム機構について説明する。
図3(a)は多軸ヒンジ装置の開成状態における上面斜視図、図3(b)は裏面斜視図である。同ように多軸ヒンジ装置の閉成状態における斜視図を図4(a)、図4(b)に示す。
多軸ヒンジ装置Bの表面には一対のサイドプレート52の間にセンタープレート61が配置されており、図2(a)に図示したように、それらはフレキシブルディスプレイシート4の屈曲部周辺を支持するために設けられている。
【0027】
図4に示した取付プレート51に設けられた位置決め孔51gと、筐体1の裏面(不図示)に設けられた位置決め軸により筐体1と取付プレート51は位置決めされる。そして取付プレート51の取付孔51bと図1(a)で図示した筐体1の取付ねじ孔1aで筐体1と取付プレート51は螺合される。
【0028】
図5図6図7は多軸ヒンジ装置Bにフレキシブルディスプレイシート4を取り付けた閉成状態を図示しており、図5は斜視図、図6は正面図、図7図6におけるC-C断面図である。図7においてサイドプレート52、及び、センタープレート61に囲まれる収容部3には滴型屈曲形状に曲げられた湾曲部41を有するフレキシブルディスプレイシート4が収容されている。後述する回転制御機構および揺動機構により収容部3は十分な大きさを確保できるために湾曲部41の曲率半径は大きくなり、フレキシブルディスプレイシート4の折れ曲がりや、それによる故障が起きることは無い。
【0029】
図8は多軸ヒンジ装置Bの分解斜視図であり、後述する同期回転機構及び吸込み機構は分解されずユニット状態で図示されている。図8の分解斜視図および図9から図15迄の部品図を用いてセンターフレームユニットの詳細を説明する。
【0030】
[センターフレームユニット6]
図9はバックカバー2の斜視図であり、後述する同期回転機構を位置決めする位置決め軸2a、コネクトプレート65を位置決めする位置決め軸2b、センタープレート61と螺合する取付ねじ穴2c、補強リブ2dを有する。バックカバー2の位置決め軸2bとコネクトプレート65の位置決め孔65bによりバックカバー2とコネクトプレート65は位置決めされる。コネクトプレート65の取付孔65aは同期回転機構を構成する内ホルダ74の取付ねじ孔74bと対応して、取付ねじ74cで螺合される。
【0031】
[取付プレートにおける回転制御機構]
次に取付プレート51をセンターフレームユニット6周りに回転させる回転制御機構について説明する。
図10は取付プレート51の斜視図であり、図10(a)は全体斜視図、図10(b)は部分拡大斜視図である。図11はサポートアーム53の斜視図であり、図11(a)は全体斜視図、図11(b)は平面図である。取付プレート51に設けられてた取付孔51aと、サポートアーム53に設けられた取付ねじ孔53eと対応し、ねじ53fで取付プレート51とサポートアーム53は螺合される。
【0032】
サポートアーム53にはサイドプレート52の第1端を押さえるサイドプレート押さえ53aと、サイドプレート52の第2端近傍を受ける閉成時サイドプレート支持面53bが設けられている。また、円弧アーム53c及び、円弧中心軸方向(スラスト方向)の動きを規制する円弧アームガイド53dが設けられている。
【0033】
図12はガイドベース62を示し、図12(a)は上面から見た斜視図、図12(b)は下面から見た斜視図である。ガイドベース62の位置決め軸62bと図14に全体斜視図を示したセンタープレート61の位置決め孔61gとによりガイドベース62とセンタープレート61は位置決めされる。そしてガイドベース62とセンタープレート61は、ガイドベース62の取付ねじ孔62aとセンタープレート61の取付孔61aを対応させて、取付ねじ62kにより螺合される。
【0034】
図13はガイドサポート63を示し、図13(a)は上面から見た斜視図、図13(b)は下面から見た斜視図である。ガイドサポート63の位置決め軸63c、63eとガイドベース62の位置決め穴62f、62hとによりガイドベース62とガイドサポート63は位置決めされる。そしてガイドベース62とガイドサポート63はガイドサポート63の取付孔63b、63dとガイドベース62の取付ねじ孔62e、62gを対応させて、取付ねじ62jにより螺合される。これらセンタープレート61、ガイドベース62、ガイドサポート63および前述したコネクトプレート65によりセンターフレームユニット6を構成している。
【0035】
図14はセンタープレート61の斜視図であり、両端からそれぞれガイドベース62の位置を決める位置決め孔61g、ガイドベース62を取付ける取付孔61a、後述する同期回転機構を取り付ける取付孔61bから61e、同期回転機構を構成するレバーギア78を逃がす切り欠き61h、後述するサイドプレート52の第3端52jと噛み合う段差部61fが設けられている。
【0036】
ガイドベース62には円弧外壁62c及び、円弧アームガイド溝62dが設けられており、ガイドサポート63には円弧内壁63aが設けられている為に、ガイドベース62とガイドサポート63が組み合わされることで図7の断面図に示す円弧溝64が生まれる。この円弧溝64の曲率はサポートアーム53の円弧アーム53cの曲率と等しい為に、円弧溝64内に円弧アーム53cを挿入することでサポートアーム53はセンターフレームユニット6に対して図7に示す回転軌跡53g(第2回転軸1bを中心とする円)に沿った円弧運動を行うことができる。筐体をセンターフレームユニットに対して回動する機構では一対の取付けプレートに挟まれる収容部3近傍に回転中心を有する軸の機構を設ける必要がある。しかしながら円弧アーム53cと円弧溝64で第2回転軸1bをシャフトの無い回転軸(仮想の回転軸)とすることで、収容部3近傍に第2回転中心軸の機構を省くことができ、収容部3の有効利用が可能になる。このように回動を円弧状の溝と軸で行うことで回転中心軸を省く機構を回転制御機構と定義し、サポートアーム53とガイドベース62、ガイドサポート63により回転制御機構である第2回転支持部を構成している。
【0037】
サポートアーム53の円弧アームガイド53dはガイドベース62の円弧アームガイド溝62dと組み合わされることで前述したように円弧の中心軸方向(スラスト方向)の位置規制を行っている。また、一対の取付プレート51が閉成状態の時にはサポートアーム53の円弧アーム53cの根元53hは図7に示すようにガイドベース62の円弧アーム逃げ孔62iより突出し、フレキシブルディスプレイシート4の湾曲部41が収容部3内で動かないように規制する。これにより携帯電話機Aを乱暴に扱ってもフレキシブルディスプレイシート4への損傷を防ぐことができる。このように根元53hは一対の取付プレート51閉成時はセンタープレート61平面よりフレキシブルディスプレイシート4側に突出してフレキシブルディスプレイシート4の移動規制を行い、一対の取付けプレート51開成時にはセンタープレート61平面よりフレキシブルディスプレイシート4と反対側に退避する移動規制部材となっている。この移動規制部材によりフレキシブルディスプレイシート4の湾曲部41は収容部3内で安定して収納される。
【0038】
取付プレート51をセンターフレームユニット6に対して円弧アーム53cと円弧溝64を用いて回転可能に軸支することは、取付けプレート51の開閉品位を向上させることにもつながっている。具体的には円弧アーム53cと円弧溝64は嵌合長が長いためにガタが少なく、且つ円弧アーム53cと円弧溝64の間に充填されるグリスにより回転時に適度な粘性が生まれる為である。
このように回転制御機構である第2回転支持部は回転シャフトを省くことで収容部3を有効に使えるばかりではなく、筐体1に取り付けられる取付プレート51の開閉品位向上の役目を担っている。
【0039】
[サイドフレームユニット5]
図10に戻り、取付プレート51には取付孔51aから51d、半貫形状の位置決め軸51e、切り欠き51f、位置決め孔51g、半貫形状の補強リブ51h、51iが設けられている。図10(b)において、取付プレート51にはブラケット54が取付けられる。具体的には、トーションバネ55のフック55cをブラケット54のトーションバネ押さえ54cと取付プレート51の間に挟み、ブラケット54に設けられた取付ねじ孔54aと取付プレート51の取付孔51cを対応させ、ブラケット54と取付プレート51を取付ねじ54dで螺合させる。又、取付プレート51にはアームプレート57が取付けられる。具体的には、位置決め軸51eをアームプレート57の位置決め孔57bと組み合わせて位置決めし、アームプレート57に設けられた取付ねじ孔57aと取付プレート51の取付孔51dを対応させ、アームプレート57と取付プレート51を取付ねじ57cで螺合させる。
【0040】
図15はサイドプレート52を示し、図15(a)は上面の斜視図。図15(b)は裏面の斜視図、図15(c)は裏面の部分拡大斜視図である。サイドプレート52の裏面には補強板52bが複数個所設けられている。サイドプレート52と補強板52bとはサイドプレート52の裏面に設けられた不図示の位置決め軸と補強板52bに設けられた位置決め孔52gにより位置決めされ、接着、スポット溶接などの手法により互いが固定される。回転支持板52aも同様な手法でサイドプレート52に固定され、サイドプレート52の第1端52h側に設けられたピン受部52eのピン受孔52fに図10(b)に示したピン56が挿入される。ピン56はブラケット54のピン受孔54bに圧入固定される為にサイドプレート52は取付プレート51に対して回転可能に軸支されピン56の中心は第1回転軸56aとなる。ブラケット54とピン56とピン受部52eにより第1回転支持部を構成している。
【0041】
トーションバネ55のフック55bは回転支持板52aのフック押さえ52cとサイドプレート52の間のフック押さえ溝52dに係合される。トーションバネ55のコイルバネ部55aは巻き戻し方向にチャージされてサイドプレート52と取付プレート51の間に組み込まれる。その為、後述するレバーギア78を逃がす為のサイドプレート52上の切り欠きに設けられた第2端(自由端ともいう)52iは常にレバーギア78端部に当接する方向に付勢される。指示記号52jで示されたものは、レバーギア78を逃がす切り欠きの無い範囲におけるサイドプレート52の第3端である。図18図17の多軸ヒンジ装置Bの側面透視図におけるトーションバネ55近傍で切断したD-D断面図であり、図18(a)は多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。図18(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。
図18に示すように取付プレート51とサイドプレート52およびトーションバネ55のフック55cはブラケット54のトーションバネ押さえ54cと取付けプレート51の間に挟まれ、トーションバネ55のフック55bはサイドプレート52のフック押さえ52cとサイドプレート52の間のフック押さえ溝52dに挟まれた関係になっている。そしてフック55bはフック押さえ溝52dに沿って摺動可能となっている。
【0042】
[駆動伝達ユニット7における同期回転機構]
次に、駆動伝達ユニット7における同期回転機構の構成について説明する。尚、説明図面上の部番における10の位の数字は各々駆動伝達ユニット7内の各機構を表しており、70番台は同期回転機構、80番台は後述する吸込み機構を表す。
図16は同期回転機構を示し、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の斜視図である。同期伝達部材である同期ギア71の異形のトルクシャフト孔71aにはカット面を有するトルクシャフト72が貫通し、同期ギア71はトルクシャフト71aに対して回転不能に取り付けられる。一対の同期ギア71は噛合しているために、その回転方向は逆となる。一対の同期ギア71は各々部分的にギアが設けられおり、所定の角度範囲内でのみ噛合して回転することができる。トルクシャフト72はギアシャーシ73のトルクシャフト孔73bに回転可能に軸支されると共に、内ホルダ74のトルクシャフト孔74aおよび外ホルダ75のトルクシャフト孔75aに回転可能に軸支される。内ホルダ74と対応するフィックスブロック76の取付孔76aは内ホルダ74の不図示の取付ねじ孔と対応し、内ホルダ74とフィックスブロック76は取付ねじ74cにより螺合される。外ホルダ75と対応するフィックスブロック76の取付孔76aは外ホルダ75の不図示の取付ねじ孔と対応し、外ホルダ75とフィックスブロック76は取付ねじ74cにより螺合される。トルクシャフト72の両端には止め溝72aが設けられている。そして、内ホルダ74および外ホルダ75にフィックスブロック76を組み込むことで止め溝72aとフィックスブロック76のフック76bが組み合わされる。これにより、トルクシャフト72のスラスト方向の位置規制が行われる。尚、取付ねじ74cはセンタープレート61も共締めしている。外ホルダ75に設けられた位置決め孔75bはバックカバー2の位置決め軸2aと嵌め合い、センタープレート61、外ホルダ75は共にバックカバー2の取付ねじ穴2cに取付ねじ2fで螺合される。また、外ホルダ75の先端突起75cは図13のガイドサポート63における切り欠き63fと嵌め合い、取付孔75dはガイドサポート63に設けられた取付孔63dと共に図12に示したガイドベース62の取付ねじ孔62gに取り付けねじ62jで螺合される。
【0043】
図16においてレバーギア78に設けられたシャフト孔78aにシャフト77が挿入され、シャフト77はギアシャーシ73に設けられたシャフト孔73cに嵌合している。シャフト77の軸中心が第3回転軸77aとなる。レバーギア78のシャフト孔78aと同軸に設けられたギア部78bは同期ギア71と噛合している。ギア部78bも同期ギア71と同様に所定の領域のみギアが設けられている為に第3回転軸77aを中心に所定の角度範囲内のみ回転することができる。レバーギア78の回転先端部にはヒンジシャフト孔78cが設けられ、ヒンジシャフト79が挿入されている。
【0044】
以上の構成により一対のレバーギア78の一方を動かすと一対の同期ギア71と連動して他方のレバーギア78が動くことになる。このように同期ギア71、トルクシャフト72、ギアシャーシ73、内ホルダ74、外ホルダ75、フィックスブロック76、シャフト77、レバーギア78、ヒンジシャフト79により同期回転機構を構成している。レバーギア78のヒンジシャフト79は図10(b)に示したアームプレート57と取付けプレート51の間に挟まれる。図19図17の多軸ヒンジ装置Bの側面透視図におけるレバーギア78中心線で切断したE-E断面図であり、図19(a)は多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。図19(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。
前述したように取付プレート51は第2回転軸1bまわりに回動するが、それに伴うアームプレート57とヒンジシャフト79の移動によりレバーギア78は第3回転軸77aを中心に回転する。この回転が一対の同期ギア71を介して他方のレバーギア78に伝わり、他方の取付プレート51を回動させる。
【0045】
このように同期回転機構により一方の筐体1を開き方向に回動させると、それに同期して同じ角度だけ他方の筐体1が開き方向に回動する。このような同期回転機構を設けるとユーザーが第1筐体1と第2筐体2を開くときに高品位な回動感触を得ることができる。
ここでレバーギア78、ヒンジシャフト79、アームプレート57により回転動作伝達部を構成している。
【0046】
[駆動伝達ユニット7における吸込み機構]
次に吸込み機構について説明する。
一対の筐体を開閉する動作において閉状態に近い角度になると最も閉じた角度に筐体を吸い込み、逆に開状態に近い角度になると最も開いた角度に筐体を吸い込む機構を吸込み機構と定義する。図16において一対のトルクシャフト72の各々には回転カム81が設けられている。回転カム81のトルクシャフト孔81bはトルクシャフト72のカット面と位相を合わせ、互いの回転を規制して嵌合している。また、一対の回転カム81に対向して固定カム82が設けられている。固定カム82のトルクシャフト孔82bはトルクシャフト72に対して回転可能であり、且つ、軸方向に摺動可能となっている。
【0047】
トルクシャフト72は第2弾性手段である圧縮コイルバネ83、固定摩擦板84、回転摩擦板85を貫通している。固定摩擦板84のトルクシャフト孔84aとトルクシャフト72は回転可能であり、回転摩擦板85のトルクシャフト孔85aとトルクシャフト72は回転規制されて軸支されている。
【0048】
前述したように固定カム82はトルクシャフト72上を摺動可能であり、回転カム81と対向する方向に圧縮コイルバネ83に付勢されている。その為に回転カム81のカム面81aは固定カム82のカム面82aと対向し互いに押し付けられている。ここでレバーギア78を回動させる動作が始まると、それに噛合する同期ギア71及びトルクシャフト72を通じて、同軸である回転カム81に回転力が発生する。この回転力により回転カム81のカム面81aは固定カム面82のカム面82aを乗り越えようとして固定カム82と回転カム81を離隔する方向の付勢力が発生する。この付勢力が圧縮コイルバネ83の付勢力より大きくなるとレバーギア78の回転が始まる。
【0049】
図16に図示されるように回転カム81と固定カム82にはカム山、カム谷が設けられている。その為、回転カム81と固定カム82の各々のカム面81a、82aの山と谷が対向する回転位相の近傍になるとカム斜面により互いのカム山と谷が組み合うようにレバーギア78の回転が吸い込まれる。ここで回転カム81と固定カム82の2カ所にカム山とカム谷を設け、各々のカム面81a、82aの山と谷が対向する位相と一対の筐体1、1の開成状態及び閉成状態と揃えると一対の筐体1、1を開く操作と閉じる操作の2カ所に対応して一対の筐体1、1は開成状態、閉成状態に吸い込まれる。
【0050】
回転摩擦板85と固定摩擦板84も圧縮コイルバネ83で対向方向に互いに押し付ける方向に付勢されている。回転摩擦板85には複数のトルクシャフト孔85aが設けられており、この穴の作用で固定摩擦板84との間に摩擦力が発生する。今、回転摩擦板85はトルクシャフト72と一体で回転し、固定摩擦板84は回転しない為に、互いの摩擦力により前述した回転カム81と固定カム82が噛み合っていない状態においても開閉動作に適度な保持力を発生させている。
【0051】
吸込み機構は回転カム81と固定カム82及び第2弾性部材である圧縮コイルバネ83、固定摩擦板84,回転摩擦板85で構成される。そして吸込み機構により、一対の筐体1、1を閉状態に近い角度にすると一対の筐体1、1は最も閉じた角度に吸い込まれ、逆に開状態に近い角度にすると一対の筐体1、1は最も開いた角度である展開状態に吸い込まれる。また、その途中の状態においても一対の筐体1、1を適度な状態に保持できる。これにより開閉操作の品位を高くすることができると共に、開閉状態を維持することが出来るようになる。
【0052】
吸い込み機構と同期回転機構は図16に示したように一体のユニットとなっておりギアシャーシ73に設けられた取付ねじ孔73aとセンタープレート61の取付孔61cを取付ねじ73dで螺合し、同様に内ホルダ74に設けられた取付ねじ孔74bとコネクトプレート65の取付孔65aを取付ねじ74cで螺合し、内ホルダ74に設けられた不図示の取付ねじ孔とフィックスブロック76の取付孔76aとセンタープレート61の取付孔61eを取付ねじ74dで共に螺合し、外ホルダ75に設けられた不図示の取付ねじ孔とフィックスブロック76の取付孔76aとセンタープレート61の取付孔61eを取付ねじ74dで共に螺合し、外ホルダ75の位置決め孔75dをバックカバー2の位置決め軸2aと位置合わせした後にセンタープレート61の取付孔61bと取付ねじ2fで螺合してセンターフレームユニット6に固定される。
【0053】
[揺動機構]
次に揺動機構について説明する。
図20図17の多軸ヒンジ装置Bの側面透視図におけるレバーギア78端部で切断したF-F断面図であり、図20(a)は多軸ヒンジ装置の閉成状態を表した図である。図20(b)は同じ位置から同装置の開成状態を表した図である。図20(b)において取付プレート51の筐体1取付面51jとサイドプレート52のフレキシブルディスプレイシート受面52kは平行状態である。それに対して図20(a)では取付プレート51の筐体1取付面51jとサイドプレート52のフレキシブルディスプレイシート受面52kは平行になっていない。具体的には図20(b)の取付プレート51開成状態から図20(a)の閉成状態までに取付プレート51は第2回転軸1bを中心に90度回転しているのに対してサイドプレート52は取付プレート51に対して第1回転軸56a周りに相対的に17度回転している。その為に一対の取付プレート51に挟まれる収容部3はサイドプレート52が退避した分だけ大きく確保できている。
【0054】
上記サイドプレート52の取付プレート51に対する相対回転の機構を説明する。図21(a)はカム状支持面78eの作用を説明するサポートアーム53及びレバーギア78の斜視図であり、78dは開成時サイドプレート支持面、78eはカム状支持面である。そして図21(a)においてサポートアーム53を切り取り平面Gで切断した断面の模式図、及びレバーギア78を切り取り平面Hで切断した断面の模式図を図21(b)から図21(e)に示す。尚、説明を分かりやすくする為にこれらの図においては断面部のみ図示し、それ以外の形状は省く。
【0055】
図21(b)は図20(a)の一対の筐体1、1の閉成時におけるサイドプレート52及び平面Hで切断したレバーギア78の断面のみを表した模式図であり、図21(b)において、第1回転軸56aに軸支されたサイドプレート52の第2端(自由端ともいう)52iは、第3回転軸77aから距離L3におけるレバーギア78上に位置している。図21(c)は図7の一対の筐体1、1の閉成時におけるサイドプレート52、及び平面Gで切断したサポートアーム53の断面のみを表した模式図である。サイドプレート52が図21(b)の状態の時は、図21(c)に示すようにサポートアーム53の閉成時サイドサポート支持面53bに、前述したトーションバネ55により一方向へ揺動付勢されている。図21(d)は図20(b)の一対の筐体1、1の開成時におけるサイドプレート52及び平面Hで切断したレバーギア78の断面のみを表した模式図である。図21(d)において第1回転軸56aに軸支されたサイドプレート52の第2端52iは第3回転軸77aから距離L4におけるレバーギア78上の開成時サポートアーム支持面78dにトーションバネ55により揺動付勢されている。
【0056】
図21(c)と図21(d)でサイドプレート52の第2端52iの当接面が閉成時サイドプレート支持面53bから開成時サイドプレート支持面78dに変化するのはサイドプレート52を支持する取付プレート51上の第2回転軸1bとカム状支持面78eを有するレバーギア78の回転軸である第3回転軸77aの軸が異なる為である。より詳細に説明する。サイドプレート52を回転可能に支持する第1回転軸56aと第2回転軸1bの距離L1は図21(b)及び図21(d)でも変化はない。それに対して図21(b)における第1回転軸56aと第3回転軸77aの距離L2と図21(d)における第1回転軸56aと第3回転軸77aの距離L2’を比較するとL2よりL2’は短くなる。これは図21(b)におけるY方向の軸間距離L5と図21(d)におけるX方向の軸間距離L6の関係で生ずる。その為に図21(b)においてレバーギア78に当接するサイドプレート52の第2端52iと第3回転軸77a迄の距離L3よりも、図21(d)においてレバーギア78に当接するサイドプレート52の第2端52iと第3回転軸77a迄の距離L4は短くなる。この2点におけるレバーギア78の高低差を調節すれば一対の筐体1、1を開閉する時にサイドプレート52の取付プレート51に対する角度を変更することが出来る。
【0057】
図21(e)はレバーギア78の断面のみを表した模式図であり、第3回転軸77aからL4の距離にある開成時サイドプレート支持面78dの第3回転軸77aとの高さをL7、同様に第3回転軸77aからL3の距離にある閉成時におけるサイドプレート52の第2端52iとレバーギア78の当接点である閉成時サイドプレート位置点78fの第2回転軸77aとの高さをL8とすると、その和L9がサイドプレート52の第1回転軸56a周りの変更角度となる。更にはサイドプレート52を第1回転軸回りに設定変更角度(例えば17度)回転させた時のサイドプレート52の第2端52iの移動距離以上に高さの和L9に設定すれば、一対の筐体1、1の閉成時にはサイドプレート52はサポートアーム53の閉成時サイドプレート支持面53bと当接し、開成時にはレバーギア78上の開成時サイドプレート支持面78dと当接する。開成時サイドプレート支持面78dの高さL7は図20(b)に示すようにサイドプレート52およびセンタープレート61が同一面となるように設定すれば筐体1開成状態において、フレキシブルディスプレイシート4を平坦に支持することができる。そして、この時センタープレート61の段差部61f上にサイドプレート52の第3端52jが乗り上げて、即ち、各サイドプレーと52の自由端部側が、図18、19、20の各(b)図に示したように、センタープレート61側へ近づいて凹凸のない同一平面となる。また、各一対の筐体1、1を閉じると、図18、19、20の各(a)図に示したように、各サイドプレーと52の自由端部側が、揺動してセンタープレート61の両端部側から離れて各筐体1、1の折り曲げ部にフレキシブルディスプレオシート4の彎曲部を収容する収容部3が形成される。
【0058】
[カム状支持面]
図21(e)で説明したようにレバーギア78上に開成時サイドプレート支持面の高さL7と閉成時サイドプレート位置点78fの高さL8を設定し、その間を直線、或は緩やかな曲線で結ぶことでカム状支持面78eを形成することができる。即ち、カム状支持面の傾斜形状を第2回転軸1bと第3回転軸77aの軸間距離L5、L6と、取付プレート51の回転角度と揺動機構の角度変更量により設定できる。今、一対の筐体1、1を開くと、それに伴う取付プレート51の動きが回転動作伝達部であるレバーギア78に伝わる。そして取付プレート51の第2回転軸1b周りの回転と、第3回転軸77a周りのレバーギア78の回転により、取付プレート51に第1回転軸56aを有するサイドプレート52の第2端52iは図21(b)に示す矢印78gに沿って移動することが出来る。このように第2、第3回転軸の軸間距離を利用したカム状支持面78eを設けた簡単な構成で揺動機構を実現することが出来た。
【0059】
以上説明したように本発明の多軸ヒンジ装置においては揺動機構、回転制御機構により湾曲部41のフレキシブルディスプレイシート4を収容する十分な収容部3を確保することができた。また、開成時サイドプレート支持面78dにより一対の筐体1、1の開成状態においてフレキシブルディスプレイシート4を平坦に支持することができた。
また、移動規制部53gによりフレキシブルディスプレイシート4の安全性を高めることができた。
また回転同期機構と吸込み機構を有する駆動伝達ユニット7により筐体1を開閉する時の品位を高くすることができた。
【0060】
尚、本実施例において揺動機構は一対の取付プレート51の両者に設けられているが、いずれか一方に設けることでも良い。また、回転制御機構など回転動作に設けられるカム溝やガイド溝をカム軸に変更し、対応するカム軸、軸支ピンをカム溝、ガイド溝に変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の多軸ヒンジ装置は、以上のように構成したので、一対の筐体の閉成状態においてフレキシブルディスプレイシートを収容する十分な収容部を確保出来、フレキシブルディスプレイシートの折れや故障を防ぐことができた。
【0062】
本発明は、一対の筐体に跨らせてフレキシブルディスプレイシートが掛け渡される構成の折り畳み式の電子機器、例えば携帯電話機、スマートフォン、電子手帳、PDA、ネットブック、映像ディスプレイ装置、携帯用ゲーム機、ノートパソコンなどに用いて好適な多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた折り畳み式の電子機器として好適に用いられるものである。本発明に係る多軸ヒンジ装置は、携帯電話機だけに用いられるものではなく、上記したように、表面に1枚のフレキシブルディスプレイシートを取り付けた一対の筐体を互いに開閉可能に連結する構成の折り畳み式の電子機器において広く用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
1b 第2回転軸
2 バックカバー
3 収容部
4 フレキシブルディスプレイシート
5 サイドフレームユニット
6 センターフレームユニット
7 駆動伝達ユニット
51 取付プレート
52 サイドプレート
52a 回転支持板(第1回転支持面)
53 サポートアーム
53c 円弧アーム(第2回転支持面)
54 ブラケット(第1回転支持面)
55 トーションバネ(第1弾性部材)
56a 第1回転軸
57 アームプレート(回転動作伝達部)
61 センタープレート
62c 円弧外壁(第2回転支持面)
63a 円弧外壁(第2回転支持面)
71 同期ギア
78 レバーギア(回転動作伝達部)
78e カム状支持面
79 ヒンジシャフト(回転動作伝達部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
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