(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130406
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電源バスの管理方法及びサーボシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02P5/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040095
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 郷
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572DD02
5H572EE04
5H572HA10
5H572HC01
5H572HC04
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ17
5H572LL22
5H572LL24
5H572LL34
5H572LL45
5H572MM02
5H572MM09
(57)【要約】
【課題】複数のモータで共有する電源バスの安全な運用を支援する。
【解決手段】本電源バスの管理方法は、複数のモータを駆動する一つ以上のサーボドライバが接続される電源バスの管理方法である。本電源バスの管理方法は、上記一つ以上のサーボドライバの夫々が上記電源バスから供給される電流値を取得する処理と、上記電流値を合計した合計電流値を算出する処理と、予め記憶部に記憶された上記電源バスの許容電流値を上記合計電流値が超える場合に警報を発報する処理と、含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータを駆動する一つ以上のサーボドライバが接続される電源バスの管理方法であって、
前記一つ以上のサーボドライバの夫々が前記電源バスから供給される電流値を取得する処理と、
前記電流値を合計した合計電流値を算出する処理と、
予め記憶部に記憶された前記電源バスの許容電流値を前記合計電流値が超える場合に警報を発報する処理と、含む、
電源バスの管理方法。
【請求項2】
前記電源バスの敷設環境を基に前記許容電流値を補正した補正後許容値を算出する処理をさらに含み、
前記警報を発報する処理は、前記合計電流値が前記補正後許容値を超える場合に、前記警報を発報する、
請求項1に記載の電源バスの管理方法。
【請求項3】
前記補正後許容値を算出する処理は、前記電源バスの前記敷設環境の指定を受け付ける処理をさらに含む、
請求項2に記載の電源バスの管理方法。
【請求項4】
前記一つ以上のサーボドライバの夫々は、前記モータに供給する駆動電流を基に前記電流値を算出する、
請求項1に記載の電源バスの管理方法。
【請求項5】
前記許容電流値は、電流値と許容時間とを前記敷設環境に応じて対応付ける複数の対応関係を含み、
前記補正後許容値を算出する処理は、前記敷設環境に応じて、前記複数の対応関係から第1の対応関係を選択する処理を含み、
前記警報を発報する処理は、
前記合計電流値に対応付けられた第1の許容時間を前記第1の対応関係から取得し、
前記第1の許容時間を超えて前記合計電流値の電流が前記電源バスを流れる場合に、前記警報を発報する、処理を含む、
請求項2に記載の電源バスの管理方法。
【請求項6】
前記警報を発報する処理は、前記モータを停止する指令信号を前記一つ以上のサーボドライバの夫々に対して出力する処理をさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電源バスの管理方法。
【請求項7】
複数のモータを駆動する一つ以上のサーボドライバが接続される電源バスと、
前記一つ以上のサーボドライバの夫々に前記モータの駆動に係る指令信号を出力する上位装置と、を備え、
前記上位装置は、
前記一つ以上のサーボドライバの夫々が前記電源バスから供給される電流値を取得する取得部と、
前記電流値を合計した合計電流値を算出する算出部と、
前記電源バスの許容電流値を記憶する記憶部と、
前記合計電流値が前記許容電流値を超える場合に警報を発報する警報部と、含む、
サーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源バスの管理方法及びサーボシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボシステムにおいて、電源バスを複数のモータで共有するシステム(特許文献1参照)や、電源ケーブルの長さに応じて出力電圧を切り替える技術(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-200406号公報
【特許文献2】特開平8-263151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源バスを複数のモータで共有する場合、モータの数を増加させているうちに意図せずに電源バスを流れる電流が電源バスの許容電流値を超えてしまうことが生じ得る。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、複数のモータで共有する電源バスの安全な運用を支援できる電源バスの管理方法及びサーボシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような電源バスの管理方法によって例示される。本電源バスの管理方法は、複数のモータを駆動する一つ以上のサーボドライバが接続される電源バスの管理方法である。本電源バスの管理方法は、上記一つ以上のサーボドライバの夫々が上記電源バスから供給される電流値を取得する処理と、上記電流値を合計した合計電流値を算出する処理と、予め記憶部に記憶された上記電源バスの許容電流値を上記合計電流値が超える場合に警報を発報する処理と、含む。
【0007】
上記電源バスの管理方法において、複数のモータを駆動する一つのサーボドライバが存在してもよい。また、夫々一つのモータを駆動するサーボドライバが複数存在してもよい。さらに、夫々複数のモータを駆動するサーボドライバが複数存在してもよい。一つの電源バスから供給される電流を基に複数のモータを駆動する場合、モータの数が増加するうちに電源バスの許容電流値を意図せず超える虞がある。上記電源バスの管理方法によれば、上記一つ以上のサーボドライバの夫々が上記電源バスから供給される電流値の上記合計電流値が上記許容電流値を超える場合に、警報が発報される。そのため、本電源バスの管理方法によれば、電源バスの許容電流値を超えた状態でサーボシステムの運用を継続することが抑制される。ひいては、上記電源バスの管理方法によれば、複数のモータで共有する電源バスの運用をより安全に行うことができる。なお、上記警報を発報する処理は、上記モータを停止する指令信号を上記一つ以上のサーボドライバの夫々に対して出力する処理をさらに含んでもよい。
【0008】
ここで、本電源バスの管理方法は、上記電源バスの敷設環境を基に上記許容電流値を補正した補正後許容値を算出する処理をさらに含み、上記警報を発報する処理は、上記合計電流値が上記補正後許容値を超える場合に、上記警報を発報する特徴を備えてもよい。電源バスの許容電流値は、電源バスの敷設環境に応じて変動することが考えられる。本電源バスの管理方法は、このような特徴を備えることで、電源バスの敷設環境に応じた上記補
正後許容値を基に警報の発報を行うことができる。
【0009】
ここで、上記補正後許容値を算出する処理は、上記電源バスの上記敷設環境の指定を受け付ける処理をさらに含んでもよい。また、上記一つ以上のサーボドライバの夫々は、上記モータに供給する駆動電流を基に上記電流値を算出してもよい。
【0010】
本電源バスの管理方法は、さらに次の特徴を備えてもよい。上記許容電流値は、電流値と許容時間とを上記敷設環境に応じて対応付ける複数の対応関係を含む。また、上記補正後許容値を算出する処理は、上記敷設環境に応じて、上記複数の対応関係から第1の対応関係を選択する処理を含む。そして、上記警報を発報する処理は、上記合計電流値に対応付けられた第1の許容時間を上記第1の対応関係から取得し、上記第1の許容時間を超えて上記合計電流値の電流が上記電源バスを流れる場合に、上記警報を発報する、処理を含む。本電源バスの管理方法は、このような特徴を備えることで、上記合計電流値が大きい場合でも短い時間であれば上記電源バスの運用を可能にするとともに、上記合計電流値が小さい場合にはより長く上記電源バスの運用を可能にすることができる。
【0011】
開示の技術は、上記電源バスの管理方法を実行するサーボシステムとして把握することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、複数のモータで共有する電源バスの安全な運用を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係るサーボシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るPLCが有する処理ブロックの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、記憶部に記憶される配置補正テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、記憶部に記憶される温度補正テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、受付部によって出力される受付画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るサーボドライバが有する処理ブロックの概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るサーボドライバの電流計測に関連する回路図の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るPLCの処理フローの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係るPLCが有する処理ブロックの概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第1変形例において、記憶部に記憶される電源バスを流れる電流値と許容時間との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。本適用例に係るサーボシステム100は、
図1に例示するように、Programmable Logic Controller(PLC)1、サーボドライバ2A、2B、2C、サーボモータ3A、3B、3C、産業用ネットワークN1及び電源バスP1を備える。サーボドライバ2A、2B、2Cを区別しないときは、サーボドライバ2とも称する。サーボモータ3A、3B、3Cを区別しないときはサーボモータ3とも称する。
【0015】
サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々は、電源バスP1から電流の供給を受ける。すなわち、サーボドライバ2A、2B、2Cは、電源バスP1を共有する。
【0016】
PLC1は、産業用ネットワークN1を介して指令信号をサーボドライバ2に送信する。サーボドライバ2は、指令信号にしたがってサーボモータ3が駆動するように、電源バスP1から供給される電流を基にサーボモータ3に駆動電流を供給する。サーボドライバ2は、電源バスP1から供給される電流を計測し、計測した電流を示す電流値を産業用ネットワークN1を介してPLC1に送信する。
【0017】
PLC1は、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々から受信した電流値を合計した合計電流値を算出する。PLC1は、算出した合計電流値が許容電流値を超える場合には、警報を発報する。
【0018】
一つの電源バスP1から供給される電流を基に複数のサーボモータ3を駆動する場合、サーボモータ3の数が増加するうちに電源バスP1の許容電流値を意図せず超える虞がある。本適用例によれば、サーボドライバ2から受信した電流値の合計電流値が電源バスP1の許容電流値を超えると警報が発報されるため、複数のサーボモータ3で共有する電源バスP1の安全な運用を支援できる。
【0019】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るサーボシステム100の一例を示す図である。サーボシステム100は、上記の通り、PLC1、サーボドライバ2A、2B、2C、サーボモータ3A、3B、3C、産業用ネットワークN1及び電源バスP1を備える。
【0020】
産業用ネットワークN1は、PLC1及びサーボドライバ2を接続する産業用ネットワークである。産業用ネットワークN1は、例えば、EtherCAT(登録商標)である。
【0021】
電源バスP1は、サーボドライバ2A、2B、2Cに電源からの電流を供給する電力線である。サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々は、電源バスP1に接続される。サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々は、電源バスP1から電流を供給される。すなわち、サーボドライバ2A、2B、2Cは、電源バスP1を共有する。
【0022】
PLC1は、サーボドライバ2に指令信号を産業用ネットワークN1を介して送信する。PLC1は、予め準備されたプログラムにしたがう処理を実行することによって、例えば、サーボドライバ2の監視装置として機能する。また、PLC1は、サーボドライバ2からサーボモータ3の動作状態を示すフィードバック信号を受信する。
【0023】
サーボドライバ2は、PLC1から産業用ネットワークN1を介して指令信号を受ける。サーボドライバ2は、指令信号にしたがった動作をするようにサーボモータ3に対して電源バスP1から供給された電流を基に駆動電流を供給する。さらにサーボドライバ2は、サーボモータ3からフィードバック信号を受ける。サーボドライバ2においては、位置制御器、速度制御器、電流制御器等を利用したフィードバック制御を行うサーボ系が形成されており、これらの信号を利用して、サーボモータ3をサーボ制御し駆動する。また、サーボドライバ2は、サーボモータ3から受けたフィードバック信号をPLC1に送信する。
【0024】
サーボモータ3は、例えば、ACサーボモータである。サーボモータ3には、サーボドライバ2から駆動電流が給電される。サーボモータ3は、サーボモータ3の動作を示すフィードバック信号をサーボドライバ2に出力する。
【0025】
図2は、実施形態に係るPLC1が有する処理ブロックの概略構成を示す図である。PLC1は、演算装置、記憶装置等を有するコンピュータとみなすことができる。
図2に示す処理ブロックは、PLC1において所定のプログラム等が実行されることで実現される。PLC1は、受付部11、補正部12、指令部13、受信部14、警報部15及び記憶部16を有するが、これら以外の処理ブロックを有していても構わない。
【0026】
記憶部16は、電源バスP1の許容電流値を記憶する。許容電流値は、例えば、電源バスP1を標準的な気温(例えば、20度)の環境下で、かつ、電源バスP1を1本単独で使用した場合において電源バスP1が許容できる電流値である。
【0027】
また、記憶部16は、電源バスP1の敷設環境に応じて電源バスP1の許容電流値を補正する補正係数も記憶する。敷設環境には、例えば、サーボシステム100が設置された場所の気温及び電源バスP1の敷設状態が含まれる。電源バスP1の敷設状態には、例えば、電源バスP1を複数並べる場合の並べ方、及び、電源バスP1間の距離が含まれる。
【0028】
図3は、記憶部16に記憶される配置補正テーブル161の一例を示す図である。配置補正テーブル161は、「段数」、「列数」、「距離」及び「係数」の各項目を含む。「段数」には、電源バスP1が縦方向(高さ方向)に並べられる(積み上げられる)数が配置される。「列数」には、電源バスP1が横方向に並べられる数が配置される。「距離」には、並んで配置された電源バスP1の中心間の距離が格納される。
図3の例では、「距離」には、電源バスP1の直径を「D」とし、直径Dの何倍の距離であるかが格納される。「係数」には、「段数」、「列数」、「距離」に応じた許容電流値の補正係数(配置補正係数とも称する)が格納される。配置補正係数は0より大きい値であり、かつ、1以下の値である。例えば、電源バスP1が1本単独で使用される場合には、配置補正係数は「1」となる。
【0029】
図4は、記憶部16に記憶される温度補正テーブル162の一例を示す図である。温度補正テーブル162は、「温度」及び「係数」の各項目を含む。「温度」には、電源バスP1が敷設される環境の気温が格納される。「係数」には、「温度」に応じた許容電流値の補正係数(温度補正係数とも称する)が格納される。
図4の例では、温度が25度以下の範囲では、「1」より大きい温度補正係数が用いられることが理解できる。すなわち、25度以下の環境では、電源バスP1の許容電流値を温度補正係数で補正すると、規定された許容電流値より大きい値となり得る。
【0030】
図2に戻り、受付部11は、電源バスP1の敷設環境の指定を受け付ける。受付部11は、例えば、PLC1に接続されたディスプレイに電源バスP1の敷設環境の指定を受け付ける受付画面を出力する。
図5は、受付部11によって出力される受付画面111の一例を示す図である。受付画面111は、段数入力欄111A、列数入力欄111B、距離入力欄111C及び気温入力欄111Dの各入力欄を含む。
【0031】
段数入力欄111Aには、電源バスP1を高さ方向に並べる数が入力される。列数入力欄111Bには、電源バスP1を横方向に並べる数が入力される。距離入力欄111Cには、並んで配置された電源バスP1の中心間の距離が入力される。距離入力欄111Cには、例えば、電源バスP1間の距離が電源バスP1の直径の何倍であるかを示す数値が入力されればよい。気温入力欄111Dには、電源バスP1が敷設される工場等の場所の気温が入力される。
【0032】
図2に戻り、補正部12は、受付部11によって受け付けられた電源バスP1の敷設環境に応じて、記憶部16に記憶された許容電流値を補正した補正後許容値を算出する。補正部12は、受付部11によって受け付けられた敷設環境に基づいて、配置補正テーブル
161及び温度補正テーブル162の夫々から配置補正係数及び温度補正係数を取得する。補正部12は、取得した配置補正係数及び温度補正係数を記憶部16に記憶された許容電流値に乗算することで、補正後許容値を算出する。
【0033】
指令部13は、サーボドライバ2に対してサーボモータ3の駆動に係る指令信号を産業用ネットワークN1を介して送信する。指令部13は、例えば、サーボモータ3の目標速度や目標位置を示す情報を含む指令信号をサーボドライバ2に対して送信する。
【0034】
受信部14は、電源バスP1からサーボドライバ2が供給される電流を示す電流値を、産業用ネットワークN1を介してサーボドライバ2から受信する。受信部14は、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々から受信した電流値を合計した合計電流値を算出する。
【0035】
警報部15は、受信部14によって算出された合計電流値が補正部12による補正後の補正後許容値を超える場合に、警報を発報する。警報の発報は、例えば、ディスプレイへの表示、スピーカーからの音の出力等によって行われる。
【0036】
図6は、実施形態に係るサーボドライバ2が有する処理ブロックの概略構成を示す図である。サーボドライバ2は、演算装置、記憶装置等を有するコンピュータとみなすことができる。
図6に示す処理ブロックは、サーボドライバ2において所定のプログラム等が実行されることで実現される。サーボドライバ2は、駆動部21、計測部22及び通知部23を有するが、これら以外の処理ブロックを有していても構わない。
【0037】
駆動部21は、PLC1から受信した指令信号にしたがってサーボモータ3が動作するように、電源バスP1から供給される電流を基にした駆動電流をサーボモータ3に供給する。
【0038】
計測部22は、電源バスP1からサーボドライバ2に供給される電流を計測する。計測部22は、例えば、電源バスP1から電流の供給を受ける回路に配置された電流計であってもよい。また、計測部22は、駆動部21によってサーボモータ3に供給された駆動電流を基に電源バスP1からサーボドライバ2に供給される電流を算出してもよい。
【0039】
図7は、実施形態に係るサーボドライバ2の電流計測に関連する回路図の一例を示す図である。
図7を参照して、計測部22が、サーボモータ3に供給された駆動電流を基に、電源バスP1からサーボドライバ2に供給される電流を算出する方法について説明する。
【0040】
サーボドライバ2では、電源バスP1から入力されるL1相、L2相、L3相の三相交流電流を直流電流に変換した後、U相、V相、W相の三相交流電流に変換して、サーボモータ3に供給する。計測部22は、サーボモータ3に供給されるU相、V相を流れる電流が電流検出回路203によって検出される。計測部22は、電流検出回路203の検出結果に基づいて相電流を取得する。
【0041】
サーボドライバ2では、P母線204とN母線205との間の電圧(PN間電圧)が電圧検出回路202によって検出される。計測部22は、電圧検出回路202の検出結果に基づいて、相電圧のピーク電圧を取得する。計測部22は、PLC1からの指令値を基に、相電圧の可変デューティを算出する。計測部22は、相電圧の差分をとることで、相電圧を線間電圧に変換する。計測部22は、線間電圧に変化した電圧の時系列変化を正弦波に近似する。
【0042】
計測部22は、相電流と線間電圧のピーク値の時間差を基に、位相差(cosθ)を取得する。計測部22は、位相差、線間電圧、相電流を基に、例えば、以下の式(1)を用
いてサーボモータ3への出力電力を算出する。
【数1】
【0043】
式(1)において、Pはサーボモータ3への出力電力であり、Vは線間電圧であり、Iは相電流である。また、式(1)において、cosθは、相電流と線間電圧の位相差である。
【0044】
図6に戻り、通知部23は、計測部22によって計測された電流値を産業用ネットワークN1を介してPLC1に通知する。通知部23は、例えば、サーボドライバ2の起動時に電流値のPLC1への通知を行ってもよいし、所定間隔で繰り返しPLC1への通知を行ってもよい。
【0045】
<処理フロー>
図8は、実施形態に係るPLC1の処理フローの一例を示す図である。以下、
図8を参照して、PLC1の処理フローの一例について説明する。
【0046】
ステップS1では、受付部11は、受付画面111をディスプレイ等に表示して、電源バスP1の敷設環境の入力を受け付ける。
【0047】
ステップS2では、補正部12は、ステップS1で受け付けられた電源バスP1の敷設環境を基に、記憶部16に記憶された電源バスP1の許容電流値を補正した補正後許容値を算出する。
【0048】
ステップS3では、受信部14は、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々が電源バスP1から供給される電流値を、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々から取得する。受信部14は、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々から取得した電流値を合計した合計電流値を算出する。
【0049】
ステップS4では、警報部15は、ステップS3で算出した合計電流値がステップS2で算出された補正後許容値より大きいか否かを判定する。補正後許容値より大きい場合(ステップS4でYES)、処理はステップS5に進められる。補正後許容値以下である場合(ステップS4でNO)、処理は終了される。
【0050】
ステップS5では、警報部15は、警報を発報する。
【0051】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、受付部11によって受け付けられた電源バスP1の敷設環境に基づいて、電源バスP1の許容電流値を補正した補正後許容値が補正部12によって算出される。そして、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々から取得した、サーボドライバ2A、2B、2Cの夫々が電源バスP1から供給される電流値の合計が補正後許容値を超える場合に、警報部15によって警報が発報される。そのため、本実施形態によれば、電源バスP1の許容電流値を超えた状態でサーボシステム100の運用を継続することが抑制される。ひいては、本実施形態によれば、電源バスP1に複数のサーボドライバ2を接続した運用をより安全に行うことができる。
【0052】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、電源バスP1の許容電流値が記憶部16に記憶された。第1変形例では、電源バスP1の許容電流値と時間との関係が記憶部16に記憶される構成
について説明する。
【0053】
図9は、第1変形例に係るPLC1Aが有する処理ブロックの概略構成を示す図である。PLC1Aは、補正部12に代えて補正部12Aを有し、警報部15に代えて警報部15Aを有し、記憶部16に代えて記憶部16Aを有する点で、実施形態に係るPLC1とは異なる。
【0054】
記憶部16Aには、電源バスP1の電流値(サーボドライバ2A、2B、2Cの合計電流値)と許容時間との関係が記憶される。
図10は、第1変形例において、記憶部16Aに記憶される電源バスP1を流れる電流値と許容時間との関係の一例を示す図である。電源バスP1の許容電流値は、例えば、電流値と許容時間との組み合わせで示されてもよい。電源バスP1は、大きな電流が流れるほど、安全に使用できる時間は短くなる。
図10において縦軸は許容時間を示し、横軸は合計電流を示す。
【0055】
図10では、電流値と許容時間との対応関係を示す3種類のグラフ(グラフG1、G2、G3)が例示される。
図10において、例えば、グラフG1が、補正係数が大きい場合における電流値と許容時間との対応関係を示すものとする。そして、グラフG2、G3の順に、補正係数がより小さくなった場合における電流値と許容時間との対応関係を示すものとする。
【0056】
例えば、グラフG1の場合、電源バスP1を流れる電流の電流値がC1の場合には、許容時間はT1であるものとする。すなわち、電源バスP1を流れる電流の電流値がC1の場合に電源バスP1を安全に運用できるのは、時間T1までとなる。記憶部16Aには、電流値と許容時間との対応を示す許容時間情報が、
図10のグラフG1、G2、G3に例示するように、複数組記憶される。
【0057】
さらに、記憶部16Aには、温度補正係数と配置補正係数を乗算した結果(環境補正係数とも称する)とグラフG1、G2、G3のような許容時間情報との第1対応関係が記憶される。
【0058】
補正部12Aは、受付部11によって受け付けられた電源バスP1の敷設環境に応じて、配置補正テーブル161及び配置補正テーブル161から、配置補正係数及び温度補正係数を取得する。補正部12Aは、取得した配置補正係数及び温度補正係数を乗算し、環境補正係数を算出する。補正部12Aは、算出した環境補正係数に対応する許容時間情報を記憶部16Aに記憶された第1対応関係を参照して特定する。
【0059】
警報部15Aは、受信部14Aによって算出された合計電流値を取得する。警報部15Aは、補正部12Aによって選択された許容時間情報を参照して、合計電流値に対応する許容時間を取得する。警報部15Aは、合計電流値の電流が流れる時間が許容時間を超える場合に、警報を発報する。
【0060】
第1変形例によれば、合計電流値に応じて電源バスP1を安全に使用できる時間を特定できる。そのため、合計電流値が低い場合にはより長く電源バスP1を運用できる。また、合計電流値が大きい場合には、短時間であれば電源バスP1を運用できるようになる。
【0061】
<その他の変形>
以上説明した実施形態では、許容電流値を超える場合に警報が警報部15によって発報されたが、許容電流値より小さい第2の閾値を設定してもよい。そして、第2の閾値を超える場合に警報部15がエラーを通知し、許容電流値を超える場合に警報部15が警報を発報してもよい。さらに、指令部13は、警報部15によって警報が発報されると、サー
ボドライバ2A、2B、2Cに対してサーボモータ3A、3B、3Cを停止させる指令信号を送信してもよい。
【0062】
以上説明した実施形態では、サーボシステム100は、一つのサーボモータ3が接続された複数のサーボドライバ2を備えたが、サーボシステム100はこのような構成に限定されない。サーボシステム100は、例えば、複数のサーボモータ3が接続された一つのサーボドライバ2を備えてもよい。また、サーボシステム100は、複数のサーボモータ3が接続されたサーボドライバ2を複数備えてもよい。また、本実施形態では、敷設環境に応じて電源バスP1の許容電流値が補正されたが、許容電流値の補正は省略されてもよい。
【0063】
以上説明した実施形態では、PLC1が
図8に例示する各ステップの処理を実行したが、
図8に例示する各ステップの処理は、PLC1に代わってサーボドライバ2A、2B、2Cのいずれかのサーボドライバ2が実行してもよい。
【0064】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0065】
(付記1)
複数のモータ(3)を駆動する一つ以上のサーボドライバ(2)が接続される電源バスの管理方法(
図8)であって、
前記一つ以上のサーボドライバ(2)の夫々が前記電源バス(P1)から供給される電流値を取得する処理と、
前記電流値を合計した合計電流値を算出する処理と、
予め記憶部(16)に記憶された前記電源バスの許容電流値を前記合計電流値が超える場合に警報を発報する処理と、含む、
電源バスの管理方法。
(付記2)
前記電源バス(P1)の敷設環境を基に前記許容電流値を補正した補正後許容値を算出する処理をさらに含み、
前記警報を発報する処理は、前記合計電流値が前記補正後許容値を超える場合に、前記警報を発報する、
付記1に記載の電源バスの管理方法。
(付記3)
前記補正後許容値を算出する処理は、前記電源バス(P1)の前記敷設環境の指定を受け付ける処理をさらに含む、
付記2に記載の電源バスの管理方法。
(付記4)
前記一つ以上のサーボドライバ(2)の夫々は、前記モータ(3)に供給する駆動電流を基に前記電流値を算出する、
付記1から3のいずれかひとつに記載の電源バスの管理方法。
(付記5)
前記許容電流値は、電流値と許容時間とを前記敷設環境に応じて対応付ける複数の対応関係(グラフG1、G2、G3)を含み、
前記補正後許容値を算出する処理は、前記敷設環境に応じて、前記複数の対応関係(グラフG1、G2、G3)から第1の対応関係を選択する処理を含み、
前記警報を発報する処理は、
前記合計電流値に対応付けられた第1の許容時間を前記第1の対応関係から取得し、
前記第1の許容時間を超えて前記合計電流値の電流が前記電源バス(P1)を流れる場合に前記警報を発報する、処理を含む、
付記2に記載の電源バスの管理方法。
(付記6)
前記警報を発報する処理は、前記モータ(3)を停止する指令信号を前記一つ以上のサーボドライバ(2)の夫々に対して出力する処理をさらに含む、
付記1から5のいずれか一項に記載の電源バスの管理方法。
(付記7)
複数のモータ(3)を駆動する一つ以上のサーボドライバ(2)が接続される電源バス(P1)と、
前記一つ以上のサーボドライバ(2)の夫々に前記モータ(3)の駆動に係る指令信号を出力する上位装置(1)と、を備え、
前記上位装置(1)は、
前記一つ以上のサーボドライバ(2)の夫々が前記電源バス(P1)から供給される電流値を取得する取得部(14)と、
前記電流値を合計した合計電流値を算出する算出部(14)と、
前記電源バスの許容電流値を記憶する記憶部(16)と
前記合計電流値が前記許容電流値を超える場合に警報を発報する警報部(15)と、含む、
サーボシステム(100)。
【符号の説明】
【0066】
1・・PLC
1A・・PLC
2・・サーボドライバ
2A・・サーボドライバ
2B・・サーボドライバ
2C・・サーボドライバ
3・・サーボモータ
3A・・サーボモータ
3B・・サーボモータ
3C・・サーボモータ
11・・受付部
12・・補正部
12A・・補正部
13・・指令部
14・・受信部
15・・警報部
15A・・警報部
16・・記憶部
16A・・記憶部
21・・駆動部
22・・計測部
23・・通知部
N1・・産業用ネットワーク
P1・・電源バス
100・・サーボシステム
111・・受付画面
111A・・段数入力欄
111B・・列数入力欄
111C・・距離入力欄
111D・・気温入力欄
161・・配置補正テーブル
162・・温度補正テーブル
202・・電圧検出回路
203・・電流検出回路
204・・P母線
205・・N母線