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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130407
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040096
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英史
(72)【発明者】
【氏名】唐崎 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】高崎 俊行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA07
5F063BA43
5F063BA45
5F063CB06
5F063CB07
5F063CB22
5F063CB27
5F063CC33
5F063DD43
5F063DD48
5F063DF01
5F063DF19
(57)【要約】
【課題】配線層の剥がれを抑制する。
【解決手段】開示される素子チップの製造方法は、半導体層2および配線層3を有する基板1であって、複数の素子領域EAと、分割領域DAと、を有する基板1を準備する準備工程と、配線層3を覆う樹脂層4を形成する樹脂層形成工程と、分割領域DAにおける樹脂層4および配線層3にレーザ光を照射して、分割領域DAに半導体層2が露出する開口5を形成する開口形成工程と、樹脂層4をリフローさせることにより開口5を狭めるリフロー工程と、リフロー工程により狭められた開口5に沿って、樹脂層4をマスクとしてプラズマによる基板1のエッチングを行うことにより、基板1を、素子領域EAを含む複数の素子チップ10に分割する個片化工程と、を備える。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を含む半導体層と、前記半導体層の前記第1主面側に形成された配線層と、を有する基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を有する基板を準備する準備工程と、
前記配線層を覆う樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記分割領域における前記樹脂層および前記配線層に、前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域に前記半導体層が露出する開口を形成する開口形成工程と、
前記樹脂層をリフローさせることにより前記開口を狭めるリフロー工程と、
前記リフロー工程により狭められた前記開口に沿って、前記樹脂層をマスクとしてプラズマによる前記基板のエッチングを行うことにより、前記基板を、前記素子領域を含む複数の素子チップに分割する個片化工程と、
を備える、素子チップの製造方法。
【請求項2】
前記リフロー工程は、前記樹脂層を加熱することにより実行される、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項3】
前記リフロー工程は、前記基板を保持テープで保持した状態で実行され、
前記樹脂層の融点は、前記保持テープの融点よりも低い、請求項2に記載の素子チップの製造方法。
【請求項4】
前記リフロー工程は、前記樹脂層を水蒸気に晒すことにより実行される、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層は、水溶性樹脂を含む、請求項4に記載の素子チップの製造方法。
【請求項6】
前記リフロー工程では、リフローされた前記樹脂層を前記開口における前記配線層の側面まで到達させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の素子チップの製造方法。
【請求項7】
前記リフロー工程では、リフローされた前記樹脂層を前記半導体層の前記第1主面まで到達させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の素子チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマエッチングにより基板を個片化することで複数の素子チップを得る、素子チップの製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。基板は、半導体層と、半導体層の上に形成された配線層とを備えると共に、複数の素子領域と、素子領域を画定する分割領域とを備え、分割領域に沿ってプラズマエッチングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-6677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマエッチングにより複数の素子チップを得る場合、各素子チップにおいて、側面の状態が乱れたり、配線層の縁部が半導体層の縁部よりも外側に突き出た状態になったりすることがある。この現象は、エッチングにボッシュプロセスを適用する場合に特に生じやすい。配線層の縁部が半導体層の縁部よりも外側に突き出ていると、当該突出部分を起点として配線層の剥がれが生じ得る。このような状況において、本開示は、配線層の剥がれを抑制することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、素子チップの製造方法に関する。当該製造方法は、第1主面および第2主面を含む半導体層と、前記半導体層の前記第1主面側に形成された配線層と、を有する基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を有する基板を準備する準備工程と、前記配線層を覆う樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記分割領域における前記樹脂層および前記配線層に、前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域に前記半導体層が露出する開口を形成する開口形成工程と、前記樹脂層をリフローさせることにより前記開口を狭めるリフロー工程と、前記リフロー工程により狭められた前記開口に沿って、前記樹脂層をマスクとしてプラズマによる前記基板のエッチングを行うことにより、前記基板を、前記素子領域を含む複数の素子チップに分割する個片化工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、配線層の剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】保持テープで保持された基板の一例を示す断面図である。
図1B】保持テープで保持された基板の一例を示す上面図である。
図2A】樹脂層が形成された基板を示す断面図である。
図2B】樹脂層が形成された基板を示す上面図である。
図3A】開口が形成されている途中の基板を示す断面図である。
図3B】開口が形成されている途中の基板を示す上面図である。
図4A】開口が形成されている途中の基板を示す断面図である。
図4B】開口が形成されている途中の基板を示す上面図である。
図5A】開口が形成された基板を示す断面図である。
図5B】開口が形成された基板を示す上面図である。
図6A】樹脂層をリフローさせた後の基板を示す断面図である。
図6B】樹脂層をリフローさせた後の基板を示す上面図である。
図7A】デブリクリーニング後の基板を示す断面図である。
図7B】デブリクリーニング後の基板を示す上面図である。
図8A】個片化後の基板を示す断面図である。
図8B】個片化後の基板を示す上面図である。
図9A】基板を個片化して得られる複数の素子チップを示す断面図である。
図9B】基板を個片化して得られる複数の素子チップを示す上面図である。
図10】プラズマエッチング装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示に係る素子チップの製造方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0009】
本開示に係る素子チップの製造方法は、プラズマエッチングにより基板を個片化することで複数の素子チップを得る方法である。本開示に係る素子チップの製造方法は、準備工程と、樹脂層形成工程と、開口形成工程と、リフロー工程と、個片化工程とを備える。
【0010】
準備工程では、第1主面および第2主面を含む半導体層と、半導体層の第1主面側に形成された配線層とを有する基板を準備する。基板は、複数の素子領域と、素子領域を画定する分割領域とを有する。半導体層と配線層とは、互いに隣接していてもよい。半導体層が含む半導体材料は、特に限定されず、例えば、Si、SiC、GaN、またはGaAsであってもよい。配線層には、例えば、SiO2、SiN、SiCNなどの絶縁膜およびCu、Alなどの金属が含まれてもよい。各素子領域の形状は、特に限定されず、例えば、矩形、多角形、または円形であってもよい。分割領域の幅も特に限定されず、目的に応じて適宜設定され得る。
【0011】
樹脂層形成工程では、配線層を覆う樹脂層を形成する。樹脂層が含む樹脂材料は、水溶性であってもよいし、非水溶性であってもよい。樹脂層は、プラズマ耐性を有する樹脂材料を含んでもよい。樹脂層の厚さは、特に限定されず、個片化工程において完全には除去されない程度であればよい。非水溶性の樹脂材料としては、例えば、フォトレジスト材料を例示することができる。フォトレジスト材料などの非水溶性の樹脂材料を用いる場合、後で行われるリフロー工程で樹脂層が流動しやすいように、樹脂材料塗布後のポストベーク処理を行わない方が好ましい。
【0012】
開口形成工程では、分割領域における樹脂層および配線層に、第1主面側からレーザ光を照射して、分割領域に半導体層が露出する開口を形成する。レーザ光は、ピコ秒オーダやフェムト秒オーダの超短パルスレーザ光であってもよいが、製造コストの観点から、ナノ秒オーダの短パルスレーザ光であることが好ましい。レーザ光は、樹脂層および配線層に吸収される一方、半導体層には吸収されなくてもよい。開口形成工程で形成される開口の底部には、半導体層の第1主面が露出する。半導体層の露出幅は、開口を挟んで対向する配線層の間の距離に実質的に等しい。なお、レーザ光の照射により、配線層の側面にある程度の凹凸が生じる(あるいは、側面の状態がある程度乱れる)。
【0013】
リフロー工程では、樹脂層をリフローさせることにより開口を狭める。樹脂層をリフローさせるとは、樹脂層の少なくとも一部に流動性をもたせた後、再び固化させることをいう。リフローの手段は特に限定されず、半導体層などにダメージを与える手段でなければ、任意の手段を採用することができる。また、開口を狭めるとは、開口の少なくとも一部の幅を狭めることをいい、開口の深さ方向の全体(開口端から底部までにわたる全体)の幅を狭めることも含まれる。リフロー工程によると、第1主面側から見て(開口の開口端側から見て)、半導体層の露出幅が、開口を挟んで対向する配線層の間の距離よりも小さくなる。さらに、リフロー工程によると、樹脂層が再び固化する過程において、開口の側壁部の凹凸が低減される。例えば、レーザ光でスクライブされた配線層の縁が上面からリフローした樹脂層で覆われ、開口の状態の乱れが改善し得る。
【0014】
個片化工程では、リフロー工程により狭められた開口に沿って、樹脂層をマスクとしてプラズマによる基板のエッチングを行うことにより、基板を、素子領域を含む複数の素子チップに分割する。上でも簡単に触れたように、第1主面側から見て、開口の底部において露出する半導体層の幅は、当該開口を挟んで対向する配線層の間の距離よりも小さい。よって、任意の開口においてプラズマエッチングされる半導体層の幅は、当該開口を挟んで対向する配線層の間の距離よりも小さくなる。よって、個片化工程で得られる素子チップでは、配線層の縁部が半導体層の縁部よりも外側に突き出た状態になりにくい。つまり、配線層の剥がれの起点が生じにくいので、配線層の剥がれを抑制することができる。また、開口の側壁部の凹凸がリフロー工程で低減されるため、プラズマエッチングにより得られる素子チップの側面の凹凸(あるいは、Line Edge Roughness)が小さくなる。
【0015】
リフロー工程は、樹脂層を加熱することにより実行されてもよい。加熱は、樹脂層が、樹脂層に含まれる樹脂材料の融点以上の温度に達するようになされてもよい。加熱により樹脂層が流動性をもち、加熱を止めることにより樹脂層の温度が低下して再び固化し得る。
【0016】
リフロー工程は、基板を保持テープで保持した状態で実行されてもよい。樹脂層の融点は、保持テープの融点よりも低くてもよい。保持テープは、基板が貼着される粘着層を有する樹脂テープであってもよい。この構成によると、加熱によって樹脂層をリフローさせることができる一方、当該加熱によって保持テープが溶けるのを回避することができる。
【0017】
リフロー工程は、樹脂層を水蒸気に晒すことにより実行されてもよい。水蒸気の温度は、樹脂層に含まれる樹脂材料の融点よりも高くてもよい。この場合、樹脂層が非水溶性の樹脂材料を含む場合でも、水蒸気により樹脂層をリフローさせることができる。非水溶性樹脂の例としては、ポリオレフィンなどが挙げられる。一方、樹脂層に含まれる樹脂材料は、水溶性を有してもよい。この場合、水蒸気の温度が当該樹脂材料の融点よりも高いか低いかに関わらず樹脂層をリフローさせることができる。
【0018】
樹脂層は、水溶性樹脂を含んでもよい。リフロー工程は、樹脂層を霧化させた水に晒すことにより実行されてもよい。あるいは、リフロー工程は、樹脂層を水蒸気に晒すことにより実行されてもよい。これにより、水溶性樹脂が水分を付与されて流動性をもち得る。水溶性樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、水溶性ポリエステル、ポリビニルアルコール、またはエチレンオキサイド重合体であってもよい。
【0019】
リフロー工程では、リフローされた樹脂層を開口における配線層の側面まで到達させてもよい。換言すると、再び固化した樹脂層と開口の底部(半導体層の第1主面)との間に隙間が存在してもよい。
【0020】
リフロー工程では、リフローされた樹脂層を半導体層の第1主面まで到達させてもよい。換言すると、再び固化した樹脂層が開口の底部に接触するようにしてもよい。この構成によると、半導体層の縁部をプラズマからより一層的確に保護することが可能となる。
【0021】
以上のように、本開示によれば、プラズマエッチングされる半導体層の幅を狭めることにより、半導体層から配線層が剥がれるのを抑制することができる。さらに、本開示によれば、得られる素子チップの側面の凹凸を小さくすることができる。
【0022】
以下では、本開示に係る素子チップの製造方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程には、上述した工程を適用できる。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の素子チップの製造方法の工程のうち、本開示に係る素子チップの製造方法に必須ではない工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0023】
本実施形態の素子チップの製造方法は、プラズマエッチングにより基板を個片化することで複数の素子チップを得る方法である。素子チップの製造方法は、準備工程と、樹脂層形成工程と、開口形成工程と、リフロー工程と、個片化工程とを備える。
【0024】
準備工程では、図1A(断面図)および図1B(上面図)に示すように、第1主面2aおよび第2主面2bを含む半導体層2と、半導体層2の第1主面2a側(図1Aにおける上側)に形成された配線層3とを有する基板1を準備する。基板1は、複数の素子領域EAと、素子領域EAを画定する分割領域DAとを有する。基板1は、樹脂製の保持テープ20で第2主面2b側から保持されている。素子領域EAに対応する配線層3には、少なくとも1つの金属電極3aが配置されていてもよい。また、分割領域DAに対応する配線層3には、少なくとも1つの金属電極3bが配置されていてもよい。
【0025】
樹脂層形成工程では、図2A(断面図)および図2B(上面図)に示すように、配線層3を覆う樹脂層4を形成する。樹脂層4は、水溶性樹脂(例えば、水溶性ポリエステル、ポリビニルアルコール、またはエチレンオキサイド重合体)を含む。
【0026】
開口形成工程では、分割領域DAにおける樹脂層4および配線層3に、第1主面2a側からレーザ光を照射して、図5A(断面図)および図5B(上面図)に示すように、分割領域DAに半導体層2が露出する幅W1の開口5を形成する。開口形成工程で形成される開口5の底部には半導体層2が露出する。露出した半導体層2の最表面は、レーザ光が照射されたことによる熱影響などにより変質した変質層Hとなっている場合もある。また、基板1の表面には、レーザ光により除去された基板1や樹脂層4の成分などからなるデブリDが付着する場合もある。なお、図5Bに示すように、開口5の側面には凹凸が生じる場合がある。本実施形態で用いるレーザ光は、ナノ秒オーダの短パルスレーザ光であるが、これに限られるものではない。
【0027】
また、開口形成工程においては、レーザ光の照射が、第1照射と第2照射を含む複数回のレーザ光の照射を含んでもよい。例えば、第1照射として、図3A(断面図)および図3B(上面図)に示すように、分割領域DAと素子領域EAとの境界付近の分割領域DAの両端部における樹脂層4および配線層3に、第1主面2a側から第1レーザ光の照射を行い、分割領域DAの両端部に半導体層2が露出する一対の溝T1,T2を形成する。例えば、照射スポット形状S1が円形のパルスレーザを第1レーザ光として用い、このパルスレーザを、予め分割領域DAの両端部に設定される照射予定線L1,L2に沿って、レーザ光のスポットが互いに重なるように照射する。第1レーザ光が照射されたことにより露出した半導体層2の最表面は、レーザ光の照射による熱影響などにより変質した変質層Hとなっている場合もある。次に、第2照射として、図4A(断面図)および図4B(上面図)に示すように、分割領域DAのうち溝T1と溝T2に挟まれた領域における樹脂層4および配線層3に、第1主面2a側から第2レーザ光を照射して、分割領域DAのうち溝T1と溝T2に挟まれた領域の樹脂層4および配線層3を除去することで開口5を形成する。例えば、照射スポット形状S2が矩形のパルスレーザを第2レーザ光として用い、このパルスレーザを予め分割領域DAのうち溝T1と溝T2に挟まれた領域に設定される照射予定線L3に沿って、照射スポットが互いに重なるように照射する。第2レーザ光が照射されたことにより露出した半導体層2の最表面は、レーザ光が照射されたことによる熱影響などにより変質した変質層Hとなっている場合もある。
【0028】
リフロー工程では、図6A(断面図)および図6B(上面図)に示すように、基板1を保持テープ20で保持した状態で、樹脂層4をリフローさせることにより開口5を(具体的には、図6Aにおける開口5の左右方向幅を)狭める。これにより、開口5の幅はW2(W2<W1)となる。本実施形態では、樹脂層4を水蒸気に晒すことで樹脂層4をリフローさせるが、これに限られるものではない。例えば、樹脂層4を霧化させた水にさらすことにより樹脂層4をリフローさせてもよいし、あるいは樹脂層4を加熱することで樹脂層4をリフローさせてもよい。後者の場合、樹脂層4の融点は、保持テープ20の融点よりも低いことが好ましい。なお、図5B(上面図)と図6B(上面図)とを比較するとわかるように、リフロー工程により、開口形成工程で形成された開口5の側面の凹凸が平滑化される。
【0029】
また、本実施形態のリフロー工程では、リフローされた樹脂層4を半導体層2の第1主面2aまで(すなわち、開口5の底部まで)到達させる。ただし、リフローされた樹脂層4を第1主面2aまで到達させなくてもよい。例えば、リフローされた樹脂層4を、開口5における配線層3の側面まで到達させることが考えられる。
【0030】
次に、デブリクリーニング工程を行う。デブリクリーニング工程では、基板1の表面を酸素やフッ素を含むプラズマに晒してエッチングすることにより、図7A(断面図)および図7B(上面図)に示すように、開口5の内面や樹脂層4の上面に付着したデブリDの量を低減する。なお、デブリクリーニング工程では、樹脂層4および開口5の底部に露出する変質層Hがプラズマによりエッチングされてもよい。この場合、開口5の幅がW3(W2<W3<W1)になると共に、開口5の側面の凹凸がさらに平滑化される。
【0031】
個片化工程では、図8A(断面図)および図8B(上面図)に示すように、リフロー工程により狭められた開口5に沿って、樹脂層4をマスクとしてプラズマによる基板1のエッチングを行うことにより、基板1を、素子領域EAを含む複数の素子チップ10に分割する。その後、図9A(断面図)および図9B(上面図)に示すように、樹脂層4を除去する樹脂層除去工程を実行する。樹脂層除去工程は、樹脂層4をプラズマに晒すことにより行われてもよく、樹脂層4を溶解させる液体に樹脂層4を接触させることにより行われてもよく、樹脂層4が水溶性である場合には樹脂層4を水に接触させることにより行われてもよい。ここまでの各工程により得られる素子チップ10では、図9A(断面図)および図9B(上面図)からわかるように、配線層3の縁部が、半導体層2の縁部よりも外側に突き出た状態にならない(あるいは、半導体層2の縁部よりも内側に引っ込んだ状態になる)。よって、本実施形態の素子チップの製造方法によって得られる素子チップ10では、配線層3の剥がれを抑制することができる。特に、ボッシュプロセスにより基板1のエッチングを行う場合、スキャロップと呼ばれる凹凸が半導体層2の側面に形成されるため、配線層3の縁部がわずかに外側に突き出た状態になりやすい。しかしながら、本実施形態によれば、リフロー工程を行うことで、配線層3の縁部が外側に突き出た状態になりにくく、配線層3の剥がれを抑制できる。また、本実施形態によれば、素子チップ10の側面の凹凸を、リフロー工程を行わない場合に比べて平滑にすることができ、素子チップ10の抗折強度が向上する。
【0032】
個片化工程、デブリクリーニング工程、および樹脂層除去工程では、図10に示すプラズマエッチング装置30を用いてもよい。プラズマエッチング装置30は、頂部に誘電体窓が設けられ、処理室34を画定するチャンバ31と、チャンバ31の上側に設けられた上部電極としてのアンテナ32と、アンテナ32に電気的に接続された第1高周波電源33と、処理室34の底部側に設けられ、基板1が載置される下部電極としてのステージ35と、ステージ35に電気的に接続された第2高周波電源36とを備える。チャンバ31に設けられたガス導入口37は、エッチングガス源38に流体的に接続される。チャンバ31に設けられた排気口39は、真空ポンプを含む真空排気部40に流体的に接続される。
【0033】
図10に示すプラズマエッチング装置30では、基板1をステージ35に載置した後、処理室34を真空排気部40によって減圧すると共に、エッチングガス源38から処理室34にエッチングガスを供給する。その後、アンテナ32に対して第1高周波電源33から高周波電力を供給し、処理室34にプラズマを発生させて基板1に照射する。プラズマ中のラジカルやイオンの物理化学的作用により、開口5に露出している半導体層2が除去され得る。なお、ステージ35に対して第2高周波電源36から高周波電力を供給することで、基板1に対するラジカルやイオンの衝突速度を制御することが可能である。
【0034】
本開示の好ましい実施形態について記述したが、この記述によって本開示の範囲が限定されるべきではない。例えば、技術的な矛盾が生じない限り、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
【0035】
《付記》
以上の実施形態の記載により、下記の技術が開示される。
(技術1)
第1主面および第2主面を含む半導体層と、前記半導体層の前記第1主面側に形成された配線層と、を有する基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を有する基板を準備する準備工程と、
前記配線層を覆う樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記分割領域における前記樹脂層および前記配線層に、前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域に前記半導体層が露出する開口を形成する開口形成工程と、
前記樹脂層をリフローさせることにより前記開口を狭めるリフロー工程と、
前記リフロー工程により狭められた前記開口に沿って、前記樹脂層をマスクとしてプラズマによる前記基板のエッチングを行うことにより、前記基板を、前記素子領域を含む複数の素子チップに分割する個片化工程と、
を備える、素子チップの製造方法。
(技術2)
前記リフロー工程は、前記樹脂層を加熱することにより実行される、技術1に記載の素子チップの製造方法。
(技術3)
前記リフロー工程は、前記基板を保持テープで保持した状態で実行され、
前記樹脂層の融点は、前記保持テープの融点よりも低い、技術2に記載の素子チップの製造方法。
(技術4)
前記リフロー工程は、前記樹脂層を水蒸気に晒すことにより実行される、技術1に記載の素子チップの製造方法。
(技術5)
前記樹脂層は、水溶性樹脂を含む、技術4に記載の素子チップの製造方法。
(技術6)
前記リフロー工程では、リフローされた前記樹脂層を前記開口における前記配線層の側面まで到達させる、技術1~5のいずれか1つに記載の素子チップの製造方法。
(技術7)
前記リフロー工程では、リフローされた前記樹脂層を前記半導体層の前記第1主面まで到達させる、技術1~5のいずれか1つに記載の素子チップの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示は、素子チップの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1:基板
2:半導体層
2a:第1主面
2b:第2主面
3:配線層
3a:金属電極
3b:金属電極
4:樹脂層
5:開口
10:素子チップ
20:保持テープ
30:プラズマエッチング装置
31:チャンバ
32:アンテナ
33:第1高周波電源
34:処理室
35:ステージ
36:第2高周波電源
37:ガス導入口
38:エッチングガス源
39:排気口
40:真空排気部
EA:素子領域
DA:分割領域
D:デブリ
H:変質層
L1,L2,L3:照射予定線
S1,S2:照射スポット形状
T1,T2:溝
W1,W2,W3:開口の幅
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10