(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130417
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】座席用表皮材及び座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20240920BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240920BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C27/14 A
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040107
(22)【出願日】2023-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】國本 健太郎
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材を提供することを目的とする。また、かかる座席用表皮材を用いた、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席を提供することを目的とする。
【解決手段】表地層2と、樹脂発泡体層3と、裏地層4と、を少なくとも備え、前記裏地層4及び前記樹脂発泡体層3の少なくとも一方に切断加工5が施されている、座席用表皮材1である。また、表地層2と、樹脂発泡体層3と、裏地層4と、を少なくとも備え、前記裏地層4に切断加工5が形成されている座席用表皮材1を用いた座席である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地層と、樹脂発泡体層と、裏地層と、を少なくとも備え、
前記裏地層及び前記樹脂発泡体層の少なくとも一方に切断加工が施されている、座席用表皮材。
【請求項2】
前記表地層と、前記樹脂発泡体層と、前記裏地層と、をこの順に備える、請求項1に記載の座席用表皮材。
【請求項3】
前記裏地層として、第一の裏地層と、第二の裏地層と、を備え、
前記表地層と、前記第一の裏地層と、前記樹脂発泡体層と、前記第二の裏地層と、をこの順に備え、
前記第一の裏地層及び前記第二の裏地層の少なくとも一方に切断加工が施されている、請求項1に記載の座席用表皮材。
【請求項4】
前記裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、請求項2に記載の座席用表皮材。
【請求項5】
前記裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通するが、前記表地層に達しない深さである、請求項2に記載の座席用表皮材。
【請求項6】
前記第一の裏地層に切断加工が施されており、
該第一の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、請求項3に記載の座席用表皮材。
【請求項7】
前記第一の裏地層に切断加工が施されており、
該第一の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通して、前記第二の裏地層に達する深さである、請求項3に記載の座席用表皮材。
【請求項8】
前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、請求項3に記載の座席用表皮材。
【請求項9】
前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通して、前記第一の裏地層に達する深さである、請求項3に記載の座席用表皮材。
【請求項10】
前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層及び前記第一の裏地層を貫通するが、前記表地層に達しない深さである、請求項3に記載の座席用表皮材。
【請求項11】
請求項1に記載の表皮材を備える、座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席用表皮材及び座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席としては、例えばシートパッドの着座者側が表皮材によって覆われた車両用シートが開発されている(下記特許文献1参照)。そして、このようなシートに使用される表皮材としては、表地層、樹脂発泡体層、裏地層等を備えたものが知られている。しかし、このような表皮材では、表皮材表面に皺が発生してしまい、製品として使用できない場合があるという問題があった。
上記問題を解決するために、裏地層に加工を施すことで、表皮材表面の皺の発生を抑制する開発が進められている。例えば、下記特許文献2では、裏地層にパンチング加工やスリット加工を施すことで、皺の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-081171号公報
【特許文献2】特開2022-161550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2のような裏地層にパンチング加工やスリット加工を施した表皮材では、表皮材表面の皺の発生は抑制されるが、スリット加工やパンチング加工等によって裏地層の一部を除去するため、加工跡が表皮材表面に影響し、表皮材の意匠性を損ねてしまうという問題が新たに生じた。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる表皮材を用いた、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席を提供することをさらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の座席用表皮材及び座席の要旨構成は、以下のとおりである。
【0007】
[1] 表地層と、樹脂発泡体層と、裏地層と、を少なくとも備え、
前記裏地層及び前記樹脂発泡体層の少なくとも一方に切断加工が施されている、座席用表皮材。
この場合、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0008】
[2] 前記表地層と、前記樹脂発泡体層と、前記裏地層と、をこの順に備える、[1]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0009】
[3] 前記裏地層として、第一の裏地層と、第二の裏地層と、を備え、
前記表地層と、前記第一の裏地層と、前記樹脂発泡体層と、前記第二の裏地層と、をこの順に備え、
前記第一の裏地層及び前記第二の裏地層の少なくとも一方に切断加工が施されている、[1]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0010】
[4] 前記裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、[2]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0011】
[5] 前記裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通するが、前記表地層に達しない深さである、[2]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0012】
[6] 前記第一の裏地層に切断加工が施されており、
該第一の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、[3]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0013】
[7] 前記第一の裏地層に切断加工が施されており、
該第一の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通して、前記第二の裏地層に達する深さである、[3]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れた座席用表皮材となる。
【0014】
[8] 前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通しない深さである、[3]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0015】
[9] 前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層を貫通して、前記第一の裏地層に達する深さである、[3]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0016】
[10] 前記第二の裏地層に切断加工が施されており、
該第二の裏地層に施された切断加工の深さが、前記樹脂発泡体層及び前記第一の裏地層を貫通するが、前記表地層に達しない深さである、[3]に記載の座席用表皮材。
この場合も、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材となる。
【0017】
[11] [1]~[10]のいずれか一つに記載の表皮材を備える、座席。
この場合、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席用表皮材を提供することができる。
また、本発明は、かかる表皮材を用いた、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る座席を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表皮材を、当該表皮材の表地層の側から概略的に示す平面図である。
【
図4】
図3の表皮材を、当該表皮材の裏地層の側から概略的に示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る表皮材の、裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表皮材の、第二の裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る表皮材の、第一の裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
【
図8】丸穴パンチング加工を施した表皮材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の表皮材、該表皮材を用いた座席をその実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0021】
<定義>
本明細書において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」とは、座席に着座した着座者から見たときの方向をいう。
本明細書において、「意匠性に優れる」とは、裏地層に施した加工の跡が表皮材表面で確認できない、あるいは確認し難いことをいう。
【0022】
<座席>
図1は、本発明の一実施形態に係る座席を概略的に示す斜視図である。
図1中、符号10は、本発明の一実施形態に係る座席である。座席10は、天然皮革や合成皮革、ファブリック等が用いられた任意の種類の座席とすることができる。本実施形態では、座席10は、車両用シート(乗り物用シート)として構成されている。
【0023】
図1を参照すると、座席10は、表皮材1と、シートパッド20と、を備えている。シートパッド20は、樹脂発泡体によって形成されている。前記樹脂発泡体を得るための成形材料としては、例えば、軟質ポリウレタン樹脂に発泡剤を混合させた軟質発泡ポリウレタンが挙げられる。ただし、本発明によれば、成形材料として、様々な発泡樹脂を使用することができる。本実施形態において、シートパッド20の着座者側は、表皮材1によって覆われている。また、座席10は、シートパッド20の裏側に設置されるフレーム(図示せず)を備えることができる。
【0024】
座席10は、シートクッション11と、シートバック12と、を含んでいる。さらに、本実施形態では、座席10は、
図1に示すように、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト13をさらに含むことができる。
【0025】
同様に、シートパッド20は、クッションパッド21と、バックパッド22とを含んでいる。さらに、本実施形態では、シートパッド20は、
図1に示すように、ヘッドパッド23を含むことができる。
【0026】
シートクッション11において、クッションパッド21の着座者側は、表皮材1によって覆われている。本実施形態では、クッションパッド21は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されたメインパッド部211と、メインパッド部211の左右両側に位置し、メインパッド部211よりも上側へ盛り上がるとともに、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部212と、を有している。さらに、本実施形態では、メインパッド部211は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部211aと、腿下部211aに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部211bと、からなる。
図2には、
図1のA-A断面を示す。
【0027】
また、
図1を参照すると、シートバック12において、バックパッド22の着座者側は、表皮材1によって覆われている。バックパッド22は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部221と、メインパッド部221の左右両側に位置し、メインパッド部221よりも前側へ盛り上がるとともに、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部222と、を有している。さらに、本実施形態では、メインパッド部221は、着座者の腰部を後側から支持するように構成された、腰部221aと、腰部221aに対し上側に位置し、着座者の肩部を後側から支持するように構成された肩部221bと、からなる。
【0028】
さらに、本実施形態では、ヘッドレスト13において、ヘッドパッド23の着座者側もまた、表皮材1によって覆われている。
【0029】
<表皮材>
本発明の一実施形態において、表皮材1は、表地層と、樹脂発泡体層と、裏地層と、を少なくとも備えており、前記裏地層及び前記樹脂発泡体層の少なくとも一方には、切断加工が施されている。
前記少なくとも一方の層に切断加工が施されていることにより、表皮材表面の皺の発生を抑制できる。また、加工が切断加工であることで、パンチング加工やスリット加工と異なり、裏地層の一部を除去しないため、加工跡が残り難く、意匠性に優れる表皮材となる。
【0030】
本実施形態においては、表皮材1が、表地層と、樹脂発泡体層と、裏地層と、をこの順で備えていることが好ましい。
【0031】
また、本発明の一実施形態において、前記裏地層は、第一の裏地層と、第二の裏地層と、を備えていてもよい。この場合、第一の裏地層又は第二の裏地層の少なくとも一方に切断加工が施されていることが好ましい。
この場合も、裏地層に切断加工が施されていることにより、表皮材表面の皺の発生を抑制できる。また、裏地層への加工が切断加工であることで、パンチング加工やスリット加工と異なり、裏地層の一部を除去しないため、加工跡が残り難く、意匠性に優れる表皮材となる。
前記裏地層が第一の裏地層及び第二の裏地層を備えているとき、表皮材が、表地層と、第一の裏地層と、樹脂発泡体層と、第二の裏地層と、をこの順で備えていることが好ましい。
【0032】
(表地層)
本実施形態において、表地層は、天然皮革(本革)、合成皮革、ファブリック等によって形成されている。天然皮革としては、例えば、牛革、馬革、羊革、鹿革、ダチョウ革、豚革、ヤギ革が挙げられる。合成皮革としては、ナイロンやポリエステルなどからなる生地上にポリウレタンなどの樹脂を積層してなる樹脂層を備えるシートが挙げられる。また、ファブリックとしては、例えば、編み物や織物、布帛、不織布などが挙げられる。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係る表皮材1を表地層2から概略的に示す平面図である。
図3中、符号2は、表地層である。表地層2は、表皮材1が座席10の一部として構成されたとき、着座者側と向かい合う表面の層である。
【0034】
(樹脂発泡体層)
本実施形態において、樹脂発泡体層は、樹脂発泡体によって形成されている。樹脂発泡体を得るための成形材料としては、例えば、軟質ポリウレタン樹脂に発泡剤を混合させた軟質発泡ポリウレタン(「軟質ポリウレタンフォーム」とも呼ぶ。)が挙げられる。ただし、本発明によれば、成形材料として、様々な発泡樹脂を使用することができる。
また、前述の通り、本発明において、樹脂発泡体層には、切断加工が施されていてもよい。該切断加工は、樹脂発泡体層を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。
【0035】
また、本発明において、樹脂発泡体層は、表皮材に二層以上あってもよい。
【0036】
(裏地層)
本実施形態において、裏地層4は、裏基布によって形成されている。裏基布としては、例えば、ナイロンなどの樹脂によって形成された織物又は不織物が挙げられる。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る表皮材1を裏地層4から概略的に示す平面図である。
図4中、符号4は、裏地層である。裏地層4は、表皮材1が座席10の一部として構成されたとき、座席本体側(本実施形態では、シートパッド20側)と向かい合う裏面層である。
【0038】
図4を参照すると、本実施形態において、裏地層4(第一の裏地層及び/又は第二の裏地層)には、切断加工5が施されている。なお、
図4における実線の切断加工5は、第二の裏地層の切断を表しており、点線の切断加工5は、第一の裏地層の切断を表している。
【0039】
(切断加工)
表皮材の表面に皺が発生する原因の一つとしては、表皮材が、表地層と、樹脂発泡体層と、裏地層と、で異なる素材を備えることにより、各層の剛性が異なることによる。そのため、表地層と裏地層との剛性の異なりを軽減するために、裏地層等に切断等の加工をし、応力を逃がすことが有効であると考えられる。
【0040】
裏地層等に施す加工としては、切断加工の他に、スリット加工やパンチング加工等があるが、スリット加工やパンチング加工等によって裏地層等の一部を除去すると、裏地層の除去部に対応する位置の表地層が落ち込むため、加工跡が表皮材表面に残り、表皮材の意匠性を損ねてしまう。これに対して、裏地層等に施す加工を、切断加工とすると、加工跡が残り難く、切断加工を施した表皮材が意匠性に優れる。また、スリット加工やパンチング加工等と異なり、裏地層等の一部を除去しないため、除去した裏地層等の廃棄物が少なくなるという利点もある。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る表皮材の、裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
図5を参照すれば、表皮材1は、表地層2と、樹脂発泡体層3と、裏地層4と、をこの順に備えている。また、
図5において、表皮材1には、深さD5の切断加工5が施されている。
【0042】
図5を参照すると、切断加工5の深さD5は、表皮材1の裏面(表皮材1の裏地層4側の面)1bから表皮材1の表面(表皮材1の表地層2側の面)1aに向かう深さである。本実施形態では、切断加工5の深さD5は、表皮材1の裏面1bから表地層2の裏面(表地層2の樹脂発泡体層3側の面(即ち、樹脂発泡体層3と接する面))2bまでの深さと同じか、それよりも浅い。言い換えれば、切断加工5の深さD5の寸法は、樹脂発泡体層3及び裏地層4の厚さT34の寸法と同じか、それよりも短い。ここで、厚さT34は、表皮材1の裏面1bと、表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
【0043】
なお、
図5において、切断加工の深さD5は、樹脂発泡体層3を貫通しない深さであるが、本発明においては、切断加工5の深さD5は、樹脂発泡体層3を貫通するが、表地層2に達しない深さであってもよい。いずれの深さであっても、表皮材の表面の皺の発生を抑制することができる。
【0044】
図5を参照すると、T2は表地層2の厚さであり、T3は樹脂発泡体層3の厚さであり、T4は裏地層4の厚さである。各層の厚さは、適宜設定することができる。表地層2の厚さT2は、例えば、0.6mm~1.1mmとすることができる。また、樹脂発泡体層3の厚さT3は、例えば、5mm~10mmとすることができる。また、裏地層4の厚さT4は、例えば、0.2mmとすることができる。
【0045】
また、切断加工5の深さD5は、適宜設定することができる。切断加工5の深さD5は、例えば、0.1mm~1.2mmとすることができる。例えば、T2=1.1mm、T3=5mm、T4=0.2mmの場合、切断加工5の深さD5は、1.2mmとすることができる。
切断加工5の深さD5は、例えば、厚さT34との関係で設定することができる。以下の説明では、簡略化のために例示的に、厚さT34は、樹脂発泡体層3の厚さT3と、裏地層4の厚さT4との和であるとする。例えば、切断加工5の深さD5が0.3mm、樹脂発泡体層3及び裏地層4の厚さT34が5.2mm(T3=5mm、T4=0.2mm)の場合、D5:T34=0.3:5.2≒1:17.3である。また、切断加工5の深さD5を1.2mmとすると、D5:T34=1.2:5.2≒1:4.3である。切断加工5の深さD5が0.3mmで、樹脂発泡体層3及び裏地層4の厚さT34を10.2mm(T3=10mm,T4=0.2mm)とした場合、D5:T34=0.3:10.2≒1:34である。また、切断加工5の深さD5を1.2mmとすると、D5:T34=1.2:10.2≒1:8.5である。
同様に、深さD5は、表地層2の厚さT2との関係で設定することができる。例えば、切断加工5の深さD5が0.3mm、表地層2の厚さT2が1.1mmの場合、D5:T2=0.3:1.1≒1:3.6である。また、切断加工5の深さD5が0.3mm、表地層2の厚さT2が0.6mmの場合、D5:T2=0.3:0.6≒1:2である。切断加工5の深さDを1.2とすると、D5:T2=1.2:0.6≒2:1である。ここで、表地層2の厚さT2は、表皮材1の表面1aと表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
また、深さD5は、表皮材1の厚さT1との関係でも設定することができる。ここで、表皮材1の厚さT1は、表皮材1の裏面1bと表皮材1の表面1aとの間の厚さである。
【0046】
本発明の一実施形態においては、裏地層が、第一の裏地層と、第二の裏地層と、を備えていてもよい。この場合、第一の裏地層のみに切断加工が施されていてもよいし、第二の裏地層のみに切断加工が施されていてもよいし、第一の裏地層及び第二の裏地層の両方に切断加工が施されていてもよい。いずれの場合であっても、表皮材の表面の皺の発生を抑制することができる。これらの中でも、応力をより減少させる観点から、第一の裏地層及び第二の裏地層の両方に切断加工が施されていることが好ましい。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態に係る表皮材の、第二の裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
図6を参照すると、表皮材1は、表地層2と、第一の裏地層4Aと、樹脂発泡体層3と、第二の裏地層4Bと、をこの順に備えている。また、
図6において、表皮材1には、深さH5の切断加工5が施されている。
【0048】
図6を参照すると、
図6における切断加工5の深さH5は、表皮材1の裏面(表皮材1の第二の裏地層4B側の面)1bから表皮材1の表面(表皮材1の表地層2側の面)1aに向かう深さである。本実施形態では、切断加工5の深さH5は、表皮材1の裏面1bから表地層2の裏面(表地層2の第一の裏地層4A側の面(即ち、第一の裏地層4Aと接する面))2bまでの深さ(厚さ)と同じか、それよりも浅い。言い換えれば、切断加工5の深さH5の寸法は、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434の寸法と同じか、それよりも短い。ここで、厚さT434は、表皮材1の裏面1bと、表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
【0049】
なお、
図6において、切断加工の深さH5は、樹脂発泡体層3を貫通しない深さであるが、本発明において、切断加工5の深さH5は、樹脂発泡体層3を貫通するが、第一の裏地層4Aに達しない深さであってもよいし、樹脂発泡体層3及び第一の裏地層4Aを貫通するが、表地層2に達しない深さであってもよい。いずれの深さであっても、表皮材の表面の皺の発生を抑制することができる。
【0050】
図6を参照すると、T2は表地層2の厚さであり、T3は樹脂発泡体層3の厚さであり、T4Aは第一の裏地層4Aの厚さであり、T4Bは第二の裏地層4Bの厚さである。各層の厚さは、適宜設定できる。表地層2の厚さT2は、例えば、0.6mm~1.1mmとすることができる。また、樹脂発泡体層3の厚さT3は、例えば、5mm~10mmとすることができる。また、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT4A及びT4Bは、例えば、それぞれ0.2mmとすることができる。
【0051】
本実施形態において、切断加工5の深さH5は、適宜設定することができる。切断加工5の深さH5は、例えば、0.1mm~1.2mmとすることができる。例えば、T2=1.1mm、T3=5mm、T4A=0.2mm、T4B=0.2mmの場合、切断加工5の深さH5は、1.2mmとすることができる。
【0052】
また、例えば、深さH5は、厚さT434との関係で設定することができる。以下の説明では、簡略化のために例示的に、厚さT434は、樹脂発泡体層3の厚さT3と、第一の裏地層4Aの厚さT4Aと、第二の裏地層4Bの厚さT4Bとの和であるとする。例えば、切断加工5の深さH5が0.3mm、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434が5.2mm(T3=5mm、T4A=T4B=0.1mm)の場合、H5:T434=0.3:5.2≒1:17.3である。また、切断加工5の深さH5を1.2mmとすると、H5:T434=1.2:5.2≒1:4.3である。切断加工5の深さH5が0.3mmで、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434を10.2mm(T3=10mm,T4A=T4B=0.1mm)とした場合、H5:T434=0.3:10.2≒1:34である。また、切断加工5の深さH5を1.2mmとすると、H5:T434=1.2:10.2≒1:8.5である。
同様に、深さH5は、表地層2の厚さT2との関係で設定することができる。例えば、切断加工5の深さH5が0.3mm、表地層2の厚さT2が1.1mmの場合、H5:T2=0.3:1.1≒1:3.6である。また、切断加工5の深さH5が0.3mm、表地層2の厚さT2が0.6mmの場合、H5:T2=0.3:0.6≒1:2である。切断加工5の深さH5を1.2とすると、H5:T2=1.2:0.6≒2:1である。ここで、表地層2の厚さT2は、表皮材1の表面1aと表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
また、深さH5は、表皮材1の厚さT1との関係でも設定することができる。ここで、表皮材1の厚さT1は、表皮材1の裏面1bと表皮材1の表面1aとの間の厚さである。
【0053】
図7は、本発明の一実施形態に係る表皮材の、第一の裏地層に切断加工を施したときの
図4のB-B断面図である。
図7を参照すると、表皮材1は、表地層2と、第一の裏地層4Aと、樹脂発泡体層3と、第二の裏地層4Bと、をこの順に備えている。また、
図7において、表皮材1には、深さW5の切断加工5が施されている。
【0054】
図7を参照すると、
図7における切断加工5の深さW5は、表地層2の裏面(表地層2の第一の裏地層4A側の面(即ち、第一の裏地層4Aと接する面))2bから表皮材1の裏面(表皮材1の第二の裏地層4B側の面)1bに向かう深さである。本実施形態では、切断加工5の深さW5は、表地層2の裏面2bから表皮材1の裏面1bまでの厚さと同じか、それよりも浅い。言い換えれば、切断加工5の深さW5の寸法は、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434の寸法と同じか、それよりも短い。ここで、厚さT434は、表皮材1の裏面1bと、表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
【0055】
なお、
図7において、切断加工の深さW5は、樹脂発泡体層3を貫通しない深さであるが、本発明において、本発明において、切断加工5の深さW5は、樹脂発泡体層3を貫通するが、第二の裏地層4Bに達しない深さであってもよいし、樹脂発泡体層3及び第一の裏地層4Aを貫通し、第二の裏地層4Bを貫通する深さであってもよい。いずれの深さであっても、表皮材の表面の皺の発生を抑制することができる。
【0056】
図7を参照すると、T2は表地層2の厚さであり、T3は樹脂発泡体層3の厚さであり、T4Aは第一の裏地層4Aの厚さであり、T4Bは第二の裏地層4Bの厚さである。各層の厚さは、適宜設定できる。表地層2の厚さT2は、例えば、0.6mm~1.1mmとすることができる。また、樹脂発泡体層3の厚さT3は、例えば、5mm~10mmとすることができる。また、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT4A及びT4Bは、例えば、それぞれ0.2mmとすることができる。
【0057】
本実施形態において、切断加工5の深さW5は、適宜設定することができる。切断加工5の深さW5は、例えば、0.1mm~1.2mmとすることができる。例えば、T2=1.1mm、T3=5mm、T4A=0.2mm、T4B=0.2mmの場合、切断加工5の深さW5は、1.2mmとすることができる。
【0058】
また、例えば、深さW5は、厚さT434との関係で設定することができる。以下の説明では、簡略化のために例示的に、厚さT434は、樹脂発泡体層3の厚さT3と、第一の裏地層4Aの厚さT4Aと、第二の裏地層4Bの厚さT4Bとの和であるとする。例えば、切断加工5の深さW5が0.3mm、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434が5.2mm(T3=5mm、T4A=T4B=0.1mm)の場合、W5:T434=0.3:5.2≒1:17.3である。切断加工5の深さW5を1.2mmとすると、W5:T434=1.2:5.2≒1:4.3である。また、切断加工5の深さW5が0.3mmで、樹脂発泡体層3、第一の裏地層4A及び第二の裏地層4Bの厚さT434を10.2mm(T3=10mm,T4A=T4B=0.1mm)とした場合、W5:T434=0.3:10.2≒1:34である。切断加工5の深さW5を1.2mmとすると、W5:T434=1.2:10.2≒1:8.5である。
同様に、深さW5は、表地層2の厚さT2との関係で設定することができる。例えば、切断加工5の深さW5が0.3mm、表地層2の厚さT2が1.1mmの場合、W5:T2=0.3:1.1≒1:3.6である。また、切断加工5の深さW5が0.3mm、表地層2の厚さT2が0.6mmの場合、W5:T2=0.3:0.6≒1:2である。切断加工5の深さW5を1.2とすると、W5:T2=1.2:0.6≒2:1である。ここで、表地層2の厚さT2は、表皮材1の表面1aと表地層2の裏面2bとの間の厚さである。
また、深さW5は、表皮材1の厚さT1との関係でも設定することができる。ここで、表皮材1の厚さT1は、表皮材1の裏面1bと表皮材1の表面(表皮材1の表地層2側の面)1aとの間の厚さである。
【0059】
本発明において、切断加工5の間の間隔I5は、特に限定されず、例えば、I5=1cmとすることができる。ここで、間隔I5は、表皮材1の平面視において、切断加工5の延びる方向(切断加工5の延在方向)に対して直交する方向の、切断加工5の間隔である。
【0060】
本発明において、切断加工の形状は、特に限定されず、任意の形状とすることができる。切断加工の形状としては、例えば、十字状、直線状、コの字状、波状、格子状などが挙げられる。これらの形状を、一種単独で用いてもよいし、或いは二種以上を組み合わせてもよい。
【0061】
本発明において、切断加工5の位置、密度、数などは、特に限定されず、適宜、設定することができる。切断加工5の位置としては、限定されるものではないが、例えば、表皮材の湾曲部とすることができる。また、切断加工5の数としては、限定されるものではないが、例えば、一つの表皮材につき、1~50個とすることができる。
【0062】
本発明において、切断加工5の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。切断加工5の形成方法としては、例えば、打ち抜き加工等を用いることができる。
【0063】
(その他)
本発明の表皮材1は、表地層2、樹脂発泡体層3、及び裏地層4(第一の裏地層4A及び/又は第二の裏地層4B)に加えて、さらなる層を備えていてもよい。例えば、裏地層4と樹脂発泡体層3の間、樹脂発泡体層3と表地層2の間、及び/又は裏地層4と表地層2の間に、さらなる裏地層4や樹脂発泡体層3を備えることができる。また、接着層などの他の層を介在させることもできる。
【0064】
<表皮材及び座席の作製方法>
以下で、本発明の表皮材及び座席の作製方法について説明する。
【0065】
(表皮材の作製方法)
表皮材の作製方法として、表皮材1が、表地層2と、樹脂発泡体層3と、裏地層4と、を備える場合について説明する。
まず、樹脂発泡体層3及び裏地層4を用意し、樹脂発泡体層3と裏地層4とを接着して複合体とする。次いで、樹脂発泡体層3と裏地層4の複合体に所定の形状の打ち抜き型で、打ち抜き加工を施す。その後、表地層2を、打ち抜き加工を施した複合体の樹脂発泡体層3側に接着する。
これによって、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる表皮材1を得ることができる。
なお、表地層2、樹脂発泡体層3、及び裏地層4の接着方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。接着方法としては、例えば、フレームラミネート工法、湿気型接着剤工法、水性型接着剤工法、及びスパンボンドの接着工法などが挙げられる。
【0066】
(座席の作製方法)
まず、前記座席本体としてシートパッド20を用意する。次いで、従来と同様の方法を用いることによって、シートパッド20を表皮材1で覆う。
これによって、皺の発生が抑制され、意匠性に優れる座席10を容易に得ることができる。
【0067】
上述したところは、本発明の一実施形態の例示にすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。さらに、各実施形態に採用された様々な構成を、適宜、選択的に変更、省略することができる。
【実施例0068】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
<表皮材の作製>
以下のように、実施例1及び比較例1~比較例3の表皮材を作製した。
【0070】
(実施例1:切断加工)
まず、ウレタンフォーム(樹脂発泡体層)と裏基布(裏地層)とを接着し、接着したウレタンフォーム(アーケム社製、商品名「GFGM」)と裏基布(桐生トリコット社製、商品名「Nylon tricothalf 17dtex(25C/28W)」)の複合体とした。次いで、前記複合体に、十字状の打ち抜き型で打ち抜き加工を施した。その後、複合体のポリウレタンフォーム側に革(PANGEA社製、商品名「LUXOR CH」、表地層)を接着して表皮材を作製した。
【0071】
(比較例1:加工なし)
裏地層に切断加工を施さない点以外は、実施例1と同様にして表皮材を作製した。
【0072】
(比較例2:丸穴パンチング加工)
裏地層に切断加工ではなく、丸穴パンチング加工を施した点以外は、実施例1と同様にして表皮材を作製した。
【0073】
(比較例2:菱形パンチング加工)
裏地層に切断加工ではなく、菱形パンチング加工を施した点以外は、実施例1と同様にして表皮材を作製した。
【0074】
(比較例3:スリット加工)
裏地層に切断加工ではなく、スリット加工を施した点以外は、実施例1と同様にして表皮材を作製した。
【0075】
<表皮材表面の皺の発生評価>
各実施例及び比較例の加工の種類ごとに、検査試料を10個ずつ用意して銀面検査を行い、検査後の表皮材の表面に皺が発生した数を評価した。試験方法はBSDL7102に準拠した。
評価結果を、表1に示す。
【0076】
<加工跡の評価>
作製した表皮材の表面を目視で確認し、表皮材表面に加工跡が見えるかを確認した。
評価結果を、表1に示す。
【0077】
加工跡については、
図8及び9から分かるように、裏地層に施した丸穴パンチング加工及びスリット加工の跡が表皮材表面に現れていることが分かる。
【0078】
【0079】
表1より、裏地層に切断加工を施した表皮材は、皺の発生が抑えられており、また、加工跡が見られず、意匠性に優れていることが分かる。