(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130426
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プリント基板用ケースの基板固定用構造、プリント基板用ケース、ケース固定済みプリント基板、ケースへのプリント基板固定方法、および慣性装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H05K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040117
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
【テーマコード(参考)】
5E348
【Fターム(参考)】
5E348AA11
5E348AA16
5E348AA17
5E348AA32
5E348AA40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固定するプリント基板に与えるモーメントの増大を抑制でき、耐衝撃性、耐振動性を確保可能なプリント基板固定方式を提供すること。
【解決手段】ケース固定済みプリント基板10において、プリント基板用ケース2の基板固定用構造5は、プリント基板1等を固定するためのプリント基板用ケース2におけるプリント基板固定用の構造である。該構造は、ケース2内壁に設けられていて内側へ突出する一または複数の凸部3からなり、凸部3にはその上方または下方の少なくともいずれか一方からプリント基板1等を固定するための固定部位4が備えられている構成とする。固定部位4における固定はねじ止めによって行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板を固定するためのプリント基板用ケースにおける、プリント基板固定用の構造であって、
ケース内壁に設けられていて内側へ突出する一または複数の凸部からなり、
該凸部にはその上方または下方の少なくともいずれか一方からプリント基板を固定するための固定部位が備えられていることを特徴とする、
プリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項2】
前記凸部は、プリント基板面に直交する方向すなわち縦方向に一層または複数層設けられ、プリント基板面と平行な方向すなわち横方向に一個または複数個設けられることを特徴とする、請求項1に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項3】
前記凸部は、横方向に一個設けられた、前記ケース内壁内周の全周に亘る凸部であることを特徴とする、請求項2に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項4】
前記凸部は横方向に複数個設けられることを特徴とする、請求項2に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項5】
前記固定部位の少なくとも一部は前記ケースの角部に設けられていることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項6】
前記固定部位は、ねじ止め用のねじ止め部であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【請求項7】
請求項1、2、3、4のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造を備えていることを特徴とする、プリント基板用ケース。
【請求項8】
前記基板固定用構造を構成する凸部にプリント基板を載置した場合に、該プリント基板の側面とこれに対向する前記ケース内壁面とが少なくとも一部において当接するよう形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のプリント基板用ケース。
【請求項9】
前記基板固定用構造を構成する凸部にプリント基板を載置した場合に、該プリント基板の側面とこれに対向する前記ケース内壁面との間の少なくとも一部に接着剤を塗布可能なスペースが確保されるよう形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のプリント基板用ケース。
【請求項10】
請求項7に記載のプリント基板用ケースにプリント基板が固定されてなり、該プリント基板の側面の一部または全部が該プリント基板用ケースの内壁に当接または接続していることを特徴とする、ケース固定済みプリント基板。
【請求項11】
前記プリント基板の側面の一部または全部が接着剤により該プリント基板用ケースの内壁に接続されていることを特徴とする、請求項10に記載のケース固定済みプリント基板。
【請求項12】
請求項7に記載のプリント基板用ケースにプリント基板を固定する方法であって、
前記基板固定用構造をなす凸部の上面または下面の少なくともいずれかにプリント基板を載置し、
所定の固定手段を用い前記固定部位にてプリント基板を該凸部に固定することを特徴とする、
ケースへのプリント基板固定方法。
【請求項13】
固定したプリント基板と前記プリント基板用ケースの内壁との間に接着剤を塗布することを特徴とする、請求項12に記載のケースへのプリント基板固定方法。
【請求項14】
請求項10に記載のケース固定済みプリント基板を備えていることを特徴とする、慣性装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント基板用ケースの基板固定用構造、プリント基板用ケース、ケース固定済みプリント基板、ケースへのプリント基板固定方法、および慣性装置に係り、特に耐衝撃性、耐振動性を確保可能なプリント基板用ケース、慣性装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、プリント基板をケースに固定する従来の段積み方式のうち片持ち方式の例を示す側断面視の説明図である。図示するように本従来方式は片持ち式、すなわち上方が開放しているケース22を用いて基板91a等の固定が下方からのみによりなされる方式であり、複数のプリント基板91a、91b、・・・をケース92へ固定する際に、スペーサ98、98、・・・を支柱として、基板91a等-ケース92の間、および基板間91a-91b、91b-91c、・・・を固定する。この片持ち方式では、固定点(ケース底面)は1か所である。また、片持ち式では、用いるスペーサ98の段数は後述する両持ち式よりも少なくて済むが、上部固定手段99を要する。
【0003】
図10は、プリント基板をケースに固定する従来の段積み方式のうち両持ち方式の例を示す側断面視の説明図である。図示するように本方式は、両持ち式、すなわち上下方向ともに塞ぐ構造となっているケース22Bを用いて基板91a等の固定が上下両方からなされる方式であり、複数のプリント基板91a、91b、・・・をケース92Bへ固定する際に、スペーサ98、98、・・・を支柱として、基板91a等-ケース92の間、および基板間91a-91b、91b-91c、・・・を固定する。この両持ち方式では、固定点(ケース底面)は2か所である。また、両持ち式では、用いるスペーサ98の段数は片持ち式よりも多くなるが、上部はケース92の底面に固定されるため、片持ち式での上部固定手段99は不要である。
【0004】
プリント基板やデバイスを収容するケースの耐衝撃性付与技術については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、振れ補正機能付き光学ユニットの耐衝撃性向上を目的として、光学モジュールならびにホルダを備えた可動体と固定体からなる振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、ホルダの内周縁に設けられた第1凹部の底面に、光学モジュールが備える外周側への突出部が当接することで光軸方向に位置決めされ、固定体は-Z方向の端部に内周側へ張り出す張り出し部が形成されたケースと、これに-Z方向から固定されて張り出し部の内周側に設けられた開口部を塞ぐ第2カバーを備えた構成とし、張り出し部は光軸方向から見て可動体と重なるストッパ部を備え、その領域が第2カバーに接着される、という方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-63971号公報「振れ補正機能付き光学ユニット」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9、10で示した従来方式、すなわち複数のプリント基板をスペーサで固定する段積み構造の場合、固定点(ケース底面)からの高さは段積みによって高くなる。そのため、振動や衝撃により段積み構造部へのモーメントが大きくなり、耐振動性、耐衝撃性の低下が懸念される。また、装置の薄型化が要求される観点からは、ケースを薄型化して各プリント基板(回路)を統合し段積み枚数を減らす必要がある。そうすると、必然的に1枚当たりのプリント基板の面積が広がることとなるが、その際の耐振動性、耐衝撃性の確保が課題となり、耐振動、耐衝撃を考慮した固定方法が必要である。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、固定するプリント基板に与えるモーメントの増大を抑制でき、耐衝撃性、耐振動性を確保可能なプリント基板固定方式を提供することである。そして、プリント基板が搭載される慣性装置など、適用対象装置の薄型化に伴うケース薄型化の要求に対しても、かかる耐衝撃性、耐振動性を確保可能なプリント基板固定方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、プリント基板を収納するケースの内側外周に凸部すなわち段差を設け、プリント基板をねじ固定することにより、基板外周が凸部に当接可能となり、基板共振時の節を抑え込み、耐衝撃、耐振動性を確保できることに想到した。また、凸部の上下からプリント基板を固定することにより、各プリント基板がケースに対してリジッドに固定可能となること、さらに、振動や衝撃に対する追加の対策として、プリント基板の外周とケース凸部とが当接する部位に接着剤を塗布可能な構造とすることにも想到した。そして、これらの対策によって上記課題を解決できることを確認し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 プリント基板を固定するためのプリント基板用ケースにおける、プリント基板固定用の構造であって、ケース内壁に設けられていて内側へ突出する一または複数の凸部からなり、該凸部にはその上方または下方の少なくともいずれか一方からプリント基板を固定するための固定部位が備えられていることを特徴とする、プリント基板用ケースの基板固定用構造。
〔2〕 前記凸部は、プリント基板面に直交する方向すなわち縦方向に一層または複数層設けられ、プリント基板面と平行な方向すなわち横方向に一個または複数個設けられることを特徴とする、〔1〕に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
〔3〕 前記凸部は、横方向に一個設けられた、前記ケース内壁内周の全周に亘る凸部であることを特徴とする、〔2〕に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
〔4〕 前記凸部は横方向に複数個設けられることを特徴とする、〔2〕に記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
〔5〕 前記固定部位の少なくとも一部は前記ケースの角部に設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
【0010】
〔6〕 前記固定部位は、ねじ止め用のねじ止め部であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造。
〔7〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載のプリント基板用ケースの基板固定用構造を備えていることを特徴とする、プリント基板用ケース。
〔8〕 前記基板固定用構造を構成する凸部にプリント基板を載置した場合に、該プリント基板の側面とこれに対向する前記ケース内壁面とが少なくとも一部において当接するよう形成されていることを特徴とする、〔7〕に記載のプリント基板用ケース。
〔9〕 前記基板固定用構造を構成する凸部にプリント基板を載置した場合に、該プリント基板の側面とこれに対向する前記ケース内壁面との間の少なくとも一部に接着剤を塗布可能なスペースが確保されるよう形成されていることを特徴とする、〔7〕に記載のプリント基板用ケース。
【0011】
〔10〕 〔7〕に記載のプリント基板用ケースにプリント基板が固定されてなり、該プリント基板の側面の一部または全部が該プリント基板用ケースの内壁に当接または接続していることを特徴とする、ケース固定済みプリント基板。
〔11〕 前記プリント基板の側面の一部または全部が接着剤により該プリント基板用ケースの内壁に接続されていることを特徴とする、〔10〕に記載のケース固定済みプリント基板。
〔12〕 〔7〕に記載のプリント基板用ケースにプリント基板を固定する方法であって、前記基板固定用構造をなす凸部の上面または下面の少なくともいずれかにプリント基板を載置し、所定の固定手段を用い前記固定部位にてプリント基板を該凸部に固定することを特徴とする、ケースへのプリント基板固定方法。
〔13〕 固定したプリント基板と前記プリント基板用ケースの内壁との間に接着剤を塗布することを特徴とする、〔12〕に記載のケースへのプリント基板固定方法。
〔14〕 〔10〕に記載のケース固定済みプリント基板を備えていることを特徴とする、慣性装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリント基板用ケースの基板固定用構造、プリント基板用ケース、ケース固定済みプリント基板、ケースへのプリント基板固定方法、および慣性装置は上述のように構成されるため、これらによれば、プリント基板の固定において、固定するプリント基板に与えるモーメントの増大を抑制でき、耐衝撃性、耐振動性を確保することができる。そして、プリント基板が搭載される慣性装置など、適用対象装置の薄型化に伴うケース薄型化の要求に対しても、かかる耐衝撃性、耐振動性を確保できる。すなわち耐振動性、耐衝撃性を確保しつつ、複数のプリント基板(回路)の統合によってケースを薄型化し、その結果、装置全体を薄型化することができる。
【0013】
なお、上記特許文献1開示技術は可動体のストッパ構造である。その他にも、プリント基板を金属板で補強する方式、バネ材で固定する方式等も従来技術として存在するが、ケース形状を利用してプリント板外周を全体的に固定可能である本発明は、これらとは相違する方式である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の基本構成を、その使用方法とともに示す斜視説明図である。
【
図1-2】
図1に示す基板固定用構造の要部断面図である((a)は凸部、(b)は固定部位)。
【
図2】
図1に示す基板固定用構造の平面図である((a)は平面図、(b)はプリント基板固定状態の平面図)。
【
図3】本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の別の構成例を、その使用方法とともに示す斜視説明図である。
【
図4】凸部が横方向に複数設けられている本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の構成例を示す平面図である。
【
図5】凸部が横方向に複数設けられている本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の別の構成例を示す平面図である。
【
図6】本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の固定部位配置例について示す説明図である((a)は平面図、(b)はプリント基板固定状態の平面図)。
【
図7】本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造へのプリント基板固定例を示す側面視要部断面図である。
【
図8】本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造へのプリント基板固定例として接着剤を用いた例を示す側面視要部断面図である。
【
図9】プリント基板をケースに固定する従来の段積み方式のうち片持ち方式の例を示す側断面視の説明図である。
【
図10】プリント基板をケースに固定する従来の段積み方式のうち両持ち方式の例を示す側断面視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の基本構成を、その使用方法とともに示す斜視説明図である。また、
図1-2は、
図1に示す基板固定用構造の要部断面図である((a)は凸部、(b)は固定部位)、
図2は、
図1に示す基板固定用構造の平面図である((a)は平面図、(b)はプリント基板固定状態の平面図)。これらに示すように本プリント基板用ケースの基板固定用構造5は、プリント基板1等を固定するためのプリント基板用ケース2における、プリント基板固定用の構造であって、ケース2内壁に設けられていて内側へ突出する一または複数の凸部3からなり、凸部3にはその上方または下方の少なくともいずれか一方からプリント基板1等を固定するための固定部位4が備えられていることを、主たる構成とする。図示するように凸部3は、横方向の厚さおよび縦方向の高さがそれぞれ一定の、帯状の突出構造とすることができる。
【0016】
かかる構成の本発明基板固定用構造5を備えることにより、プリント基板用ケース2に対するプリント基板1等の固定は、
図9等で示した従来の段積み方式とは異なり、プリント基板1等をプリント基板用ケース2の上方もしくは下方、または上下両方から接近させ、プリント基板1等の縁部を凸部3の上に載置し、固定部位4においてなされる所定の固定方法を施すことによって行われる。凸部3は厚さおよび高さがそれぞれ一定の帯状の突出構造であり、プリント基板1等は安定的に載置、固定される。このようにして、ケース固定済みプリント基板10が形成される。
【0017】
また、図示するように、凸部3の上下方向から計2枚のプリント基板1、1bを固定することができる。凸部3は、プリント基板1、1bの固定手段になるとともに、これらの間のスペーサの機能も果たす。したがって、本基板固定用構造5たる凸部3において上下方向からのプリント基板固定を想定する場合は、凸部3がスペーサとしても機能するべくその厚さを規定すればよい。なお、図示するように凸部3は、高さ方向に一つのみ、つまり1段とすることができるが、本発明はこれに限定されず、2段以上設けることとしてもよい。もっとも、ケース2自体の薄型化を重視する観点からは、凸部3の設置段数は少ない方がより望ましい。
【0018】
本発明の基板固定用構造5により、凸部3上に載置された状態のプリント基板1等の底面が凸部3の載置面に当接した状態となるのはもちろんだが、その側面も、少なくとも一部において、プリント基板用ケース2の内壁に当接した状態となること、ないしは接続した状態となることが望ましい。これについては追って説明を加える。
【0019】
なお、図示するように本発明に係るプリント基板用ケース2は、前出
図10で示した従来の両持ち方式のケースとは異なって、上下方向の少なくとも一方が開放されている構造となる。図では、上下両方向とも開放されている構造、すなわち底部が無くて側面部のみからなる枠構造である。かかる枠構造であることにより、上下双方向から計2枚のプリント基板1、1bをプリント基板固定ケース2に固定することができる。
【0020】
上述したように本発明基板固定用構造における凸部は、プリント基板面に直交する方向すなわち縦方向に一層(一段)、または複数層(複数段)設けるものとすることができる。しかしながら、凸部3が上下両方向から計2枚のプリント基板1、1bを固定できる構造であるところ、二層(二段)以上の凸部が設けられても結局固定できる枚数を増やせるわけではない。したがって、実際には一層(一段)設けることで十分であり、薄型化にも寄与できる。
【0021】
また、本発明基板固定用構造における凸部は、プリント基板面と平行な方向、すなわち横方向に一個または複数個設けられるものとすることができる。
図1等では、凸部3は横方向に一個、ケース2内壁内周の全周に亘る凸部である。凸部3が全周に亘る構造であることにより、プリント基板1等の載置や固定を安定的に行うことができ、また、耐衝撃性、耐振動性の点でも良好な効果を得ることができる。
【0022】
図3は、本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の別の構成例を、その使用方法とともに示す斜視説明図である。図示するプリント基板用ケース32のように、本発明に係るプリント基板用ケースの形状は、
図1に示したような矩形には限定されず、本図のようなL字型であっても、またその他の形状であってもよい。ケース32へのプリント基板31等の固定により、ケース固定済みプリント基板310が形成される。ケースがどのような形態であるにせよ、凸部33、固定部位34A、34Bのように凸部、固定部位が設けられ、上下両方向からプリント基板31、31bを固定可能であって、固定部位34A等による固定がなされる基板固定用構造35等であることは同じである。
【0023】
図4は、凸部が横方向に複数設けられている本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の構成例を示す平面図である。図示する基板固定用構造45における凸部43A、43B、43C、43Dのように、凸部は横方向に複数個設けられる構成とすることができる。つまり、
図1や
図3に示した凸部のようなケース内壁全集に亘る構造ではなく、その一部に設けられる凸部である。この場合、各凸部43A、43B等の縦方向の高さ位置および厚さは統一仕様とする。
【0024】
本構成例では、図示しない矩形のプリント基板は、その要所である四隅において本基板固定用構造45に係る凸部43A、43B、43C、43D上に載置され、固定部位44A、44B、44C、44Dにて所定方法による固定が施され、固定される。各凸部43A、43B等の縦方向の高さ位置および厚さの仕様は統一されているため、プリント基板が傾斜して固定されるような不具合はなく、反対方向から固定されるプリント基板との間のスペーサとしての機能も問題ない。本構成例のように複数の凸部43A等からなる構造は、プリント基板をその全縁部において支持固定するのではなく、要所にて支持固定する方式である。なお、図はあくまでも一例であり、複数の凸部の配置や長さ等の仕様は任意に設計可能である。
【0025】
図5は、凸部が横方向に複数設けられている本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の別の構成例を示す平面図である。本基板固定用構造55のように、凸部53A等が、固定部位54A等のみによってなり、それ以外の部分が無い構成であっても、本発明の範囲内である。図示しないL字型のプリント基板は、凸部53A(固定部位54A)、同53B(同54B)、同53C(同54C)、同53D(同54D)、同53E(同54E)、同53F(同54F)、同53G(同54G)、および同53H(同54H)によってその要所を支持されるように載置、固定される。
【0026】
図6は、本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造の固定部位配置例について示す説明図である((a)は平面図、(b)はプリント基板固定状態の平面図)。上述の各図においても示されていたことではあるが、本基板固定用構造65の固定部位64A、64B、・・・の少なくとも一部はケース62の角部に設けられている構成とすることが望ましい。角部に固定部位64A等が設けらていることによって、プリント基板61をその二辺において支持し固定することができ、固定の安定性を高め、耐衝撃性、耐振動性の点で好ましいからである。
【0027】
なお、本図の配置例における固定部位64B、64Dのようにケース62の角部以外の箇所や、固定部位64Gのようにケース62の二辺間ではない箇所に、固定部位を設けてもよい。これらによって、プリント基板の固定の安定性をより高めることができる。
【0028】
図7は、本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造へのプリント基板固定例を示す側面視要部断面図である。本発明に係る固定部位における固定方法としては、ねじによるねじ止めを好適に用いることができる。この場合、固定部位74は、ねじ止め用のねじ止め部である。なおねじ止め部は、貫通孔であっても非貫通の構造であってもよい。また、本図に示すように凸部73に載置、固定されるプリント基板71、71bの側面がケース73内壁に当接しないような構成の基板固定用構造75も本発明の範囲内であるが、当接、ないしは内壁に接続する構成が望ましい(後述)。
【0029】
以上説明したいずれかの構成のプリント基板用ケースの基板固定用構造5等を備えているプリント基板用ケース2等もまた、本発明の範囲内である。特に、基板固定用構造5等を構成する凸部3等にプリント基板1等を載置した場合に、プリント基板1等の側面とこれに対向するケース2内壁面とが一部または全部において当接するよう形成されている構成であることが望ましい。それによって、本発明所期の目的である耐衝撃性、耐振動性をより高めることができる。
【0030】
ところで、
図7に示したプリント基板固定例においては、基板固定用構造75を構成する凸部73にプリント基板71等を載置した場合に、プリント基板71等の側面とこれに対向するケース72内壁面との間にスペース76が形成されているが、これを接着剤塗布用スペースとして用いることができる。かかるスペース76は一部に、または全周に亘って確保される構成とすることができるが、プリント基板の固定の確実、および耐衝撃性・耐振動性を高めるには、全周に亘るスペースの確保がより望ましい。
【0031】
図8は、本発明プリント基板用ケースの基板固定用構造へのプリント基板固定例として接着剤を用いた例を示す側面視要部断面図である。スペース86に接着剤が塗布されて接着剤部87が形成されている。接着剤部87によってプリント基板81等とケース82内壁とは接続しており、これにより、耐衝撃性、耐振動性において、両者の当接と同等の効果を得ることができる。
【0032】
以上説明した各構成のプリント基板用ケース2等に、プリント基板1等が固定されてなり、プリント基板1等の側面の一部または全部がプリント基板用ケース2等の内壁に当接または接続している状態のケース固定済みプリント基板10等もまた、本発明の範囲内である。また、プリント基板81等の側面の一部または全部が接着剤部87によりプリント基板用ケース82の内壁に接続されている状態が形成されているケース固定済みプリント基板810も、本発明の範囲内である。
【0033】
また、以上説明したプリント基板用ケース2等にプリント基板1等を固定する方法であって、基板固定用構造5等をなす凸部3等の上面または下面の少なくともいずれかにプリント基板1等を載置し、所定の固定手段を用い固定部位4等にてプリント基板1等を凸部3等に固定する、ケースへのプリント基板固定方法も本発明の範囲内である。この場合、固定したプリント基板1等とプリント基板用ケース2等の内壁との間に接着剤を塗布する工程を備えてもよい。
【0034】
なおまた、慣性センサおよび通信処理用回路からなる慣性装置であって、以上説明したいずれかの構成のケース固定済みプリント基板10等を備えている慣性装置も、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のプリント基板用ケースの基板固定用構造、プリント基板用ケース、ケース固定済みプリント基板、ケースへのプリント基板固定方法、および慣性装置によれば、プリント基板の固定において、固定するプリント基板に与えるモーメントの増大を抑制して耐衝撃性、耐振動性を確保することができ、プリント基板が搭載される慣性装置など適用対象装置の薄型化に伴うケース薄型化の要求に対しても、かかる耐衝撃性、耐振動性を確保することができる。したがって、慣性装置製造、使用分野、プリント基板を備える装置の製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0036】
1、1b、31、31b、61、71、71b、81、81b…プリント基板
2、32、42、52、62、72、82…プリント基板用ケース
3、33、43A、43B、43C、43D、53A、53B、53C、53D、53E、53F、53G、53H、63、73、83…凸部
4、34A、34B、44A、44B、44C、44D、54A、54B、54C、54D、54E、54F、54G、54H、64A、64B、64C、64D、64E、64F、64G、64H、74、84…固定部位
5、35、45、55、65、75、85…プリント基板用ケースの基板固定用構造
10、310、610、710、810…ケース固定済みプリント基板
76、86…プリント基板の側面とこれに対向するケース内壁面との間のスペース
87…接着剤部
91a、91b、91c、91d、91e…プリント基板
92、92B…ケース
98…スペーサ
99…上部固定手段