(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130451
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20240920BHJP
【FI】
C02F3/28 A
C02F3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040179
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】長田 啓司
【テーマコード(参考)】
4D040
【Fターム(参考)】
4D040AA04
4D040AA34
4D040AA42
4D040AA53
4D040AA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、担体を充填した嫌気処理槽を用いる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法において、嫌気処理槽内において安定した処理継続のために必要な流速を維持・確保しつつ、担体等の系外流出を抑制できる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法の提供である。
【解決手段】上記課題を解決するために、担体を充填した嫌気処理槽と、嫌気処理槽内に配置される三相分離部と、三相分離部で分離された分離液を排出する排出部と、排出部からの分離液排出をON/OFF制御する制御部と、を備える排水処理装置及び排水処理装置の運転方法を提供する。この発明によれば、分離液の間欠的な排出を行い、三相分離部における流速上昇の抑制及び分離液に混在する固体分が沈降する環境の形成により、担体等の流出抑制が可能となる。特に、安定した処理継続のために要求される流速が大きくなるほど、本発明の効果がより一層発揮される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を充填した嫌気処理槽と、
前記嫌気処理槽内に配置される三相分離部と、
前記三相分離部で分離された分離液を排出する排出部と、
前記排出部からの分離液排出をON/OFF制御する制御部と、を備えることを特徴とする、排水処理装置。
【請求項2】
前記分離液を前記嫌気処理槽に循環させる循環部を備え、
前記制御部は、前記排出部の制御と併せて、前記循環部における前記分離液の循環量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記三相分離部上方の水位に基づく制御を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
担体を充填した嫌気処理槽を備える排水処理装置の運転方法であって、
前記嫌気処理槽における処理工程と、
前記嫌気処理槽内に配置される三相分離部による三相分離工程と、
前記三相分離工程で分離された分離液を排出する排出工程と、
前記排出工程からの分離液排出をON/OFF制御する制御工程と、を備えることを特徴とする、排水処理装置の運転方法。
【請求項5】
前記分離液を前記嫌気処理槽に循環させる循環工程を備え、
前記制御工程は、前記排出工程に係る制御と併せて、前記循環工程における前記分離液の循環量を制御することを特徴とする、請求項4に記載の排水処理装置の運転方法。
【請求項6】
前記制御工程は、前記三相分離部上方の水位に基づく制御を行うことを特徴とする、請求項4又は5に記載の排水処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及び排水処理装置の運転方法に関するものである。特に、担体が充填された嫌気処理槽を用いて嫌気処理を行う排水処理装置及び排水処理装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機物を含む排水を処理する方法として、種々の微生物を利用した生物処理が知られている。特に、嫌気的な環境下での生物処理(以下、「嫌気処理」と呼ぶ)は、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入に係るメリットが高いことが挙げられる。
【0003】
このような嫌気処理としては、汚泥やグラニュールを充填した嫌気処理槽を用いる上向流嫌気性汚泥床法(UASB)が知られている。さらに、嫌気処理槽内の嫌気性微生物濃度を高めるために、担体を充填した嫌気処理槽を用いることも知られている。
【0004】
嫌気処理では処理経過に伴いバイオガスが発生するため、嫌気処理を行う嫌気処理槽内には固体(担体や微生物等)、気体(バイオガス)、液体が存在するものとなる。そして、嫌気処理槽内にはこれら固体・気体・液体を分離する手段が設けられる。
例えば、特許文献1には、上向流嫌気性処理装置において、ガスコレクタを二段で構成し、ガス、液及び汚泥を分離する三相分離手段を設け、下段ガスコレクタのガス回収フードに、三又状のガス抜き管を設け、このガス抜き管を介して上段ガスコレクタにガスが導入されるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、嫌気処理槽内に三相分離手段を設け、この三相分離手段の構造特性により、ガス分離及び固体(汚泥等)の沈降分離の効率化を図ることは知られている。
【0007】
ここで、担体を充填した嫌気処理槽を用いる場合においては、処理継続によって、嫌気処理槽内に導入される排水中に含まれる固体分(以下、「SS」とも呼ぶ)や、時間経過に伴い増殖する微生物が、担体に蓄積する。これによって、担体間の空隙が減少し、担体層の閉塞が生じてしまい、処理性能が著しく低下するという問題がある。併せて、担体層としての嵩が増すことにつながるため、担体流出が起こりやすくなるという問題もある。したがって、嫌気処理槽内において、担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速を確保することが求められる。
一方で、この流速を確保するに当たり、担体や微生物のように処理継続に必要な固体分(以下、「担体等」とも呼ぶ)の流出が生じるおそれがある。特に、三相分離手段を通過させて処理した後の水を循環利用する場合においては、この処理後の水を取水することに伴い三相分離手段内の流速が大きくなり、担体等の系外流出のおそれがより一層高くなる。
【0008】
本発明の課題は、担体を充填した嫌気処理槽を用いる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法において、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために必要な流速を維持・確保しつつ、担体等の系外流出を抑制することができる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、担体を充填した嫌気処理槽を用いる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法において、三相分離手段による分離後の液体(分離液)を間欠的に排出することで、安定した処理を継続して行うために要求される嫌気処理槽内の流速を維持・確保しつつ、担体等の系外流出抑制が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置は、担体を充填した嫌気処理槽と、嫌気処理槽内に配置される三相分離部と、三相分離部で分離された分離液を排出する排出部と、排出部からの分離液排出をON/OFF制御する制御部と、を備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理装置によれば、嫌気処理槽内に設けられた三相分離部で分離した分離液を排出するに当たり、排出自体に係る操作をON/OFF制御することで、間欠的な排出を行うことが可能となる。これにより、三相分離部における流速上昇を抑制するとともに、分離液に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)を形成することができ、担体等の流出を抑制することが可能となる。特に、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)が大きくなるほど、本発明の効果がより一層発揮される。
【0011】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、分離液を嫌気処理槽に循環させる循環部を備え、制御部は、排出部の制御と併せて、循環部における分離液の循環量を制御するという特徴を有する。
一般に、担体を充填した嫌気処理槽を用いる排水処理装置においては、嫌気処理槽外から嫌気処理槽内に供給される排水の流量(供給水量)を制御することで、嫌気処理槽内における担体層の流動などに係る嫌気処理槽内の流速制御を行っている。また、この場合、嫌気処理槽外から嫌気処理槽内に排水を供給(移送)するには、駆動部を備える移送機構(ポンプ等)が一般的に用いられる。このとき、移送機構の駆動に必要とする力(エネルギー)は、移送機構にかかる圧力差(移送機構の上流側・下流側における水圧差)に依存する。すなわち、一定程度の水(排水)が貯留される嫌気処理槽に対し、嫌気処理槽外から移送機構を用いて排水の供給を行う場合、嫌気処理槽内で必要となる流速が増加することに伴い、嫌気処理槽外から嫌気処理槽内に排水を供給する動力(移送機構の駆動エネルギー)も増大することになる。
一方、この特徴によれば、嫌気処理槽内に導入された排水が担体層及び三相分離部を通過して処理された後、系外に排出される分離液を、再度嫌気処理槽に返送して循環させることで、移送機構の上流側・下流側が同一の槽(処理槽)となるため、分離液の移送(循環移動)を行う移送機構にかかる圧力差を小さくすることができる。すなわち、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)が増加しても、分離液の移送に必要となる動力(移送機構の駆動エネルギー)の増大を抑制し、ランニングコストを低減することが可能となる。
また、この特徴によれば、排出部における分離液排出に係る操作制御と、循環部における分離液の循環量制御を併せて行うことができ、安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)の維持と、分離液に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成を両立させることがより一層容易となる。
【0012】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、制御部は、三相分離部上方の水位に基づく制御を行うという特徴を有する。
この特徴によれば、三相分離部の上方部分、あるいは三相分離部よりも上方における水位を基に、分離液に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成度合いを判断することができ、より適切なタイミングで分離液排出に係る操作制御(ON/OFF制御)を行うことが可能となる。これにより、嫌気処理槽からの担体等の流出をより一層適切に抑制することが可能となる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置の運転方法は、担体を充填した嫌気処理槽を備える排水処理装置の運転方法であって、嫌気処理槽における処理工程と、嫌気処理槽内に配置される三相分離部による三相分離工程と、三相分離工程で分離された分離液を排出する排出工程と、排出工程からの分離液排出をON/OFF制御する制御工程と、を備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理装置の運転方法によれば、嫌気処理槽内に設けられた三相分離部で分離した分離液を排出するに当たり、排出自体に係る操作をON/OFF制御することで、間欠的な排出を行うことが可能となる。これにより、三相分離部における流速上昇を抑制するとともに、分離液に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)を形成することができ、担体等の流出を抑制することが可能となる。特に、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)が大きくなるほど、本発明の効果がより一層発揮される。
【0014】
また、本発明の排水処理装置の運転方法の一実施態様としては、分離液を嫌気処理槽に循環させる循環工程を備え、制御工程は、排出工程に係る制御と併せて、循環工程に係る分離液の循環量を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)が増加しても、分離液の移送に必要となる動力(移送機構の駆動エネルギー)の増大を抑制し、ランニングコストを低減することが可能となる。
また、この特徴によれば、安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽外に排出可能とする流速)を維持と、分離液W2に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成を両立させることがより一層容易となる。
【0015】
また、本発明の排水処理装置の運転方法の一実施態様としては、制御工程は、三相分離部上方の水位に基づく制御を行うという特徴を有する。
この特徴によれば、三相分離部の上方部分、あるいは三相分離部よりも上方における水位を基に、分離液に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成度合いを判断することができ、より適切なタイミングで分離液排出に係る操作(ON/OFF制御)を行うことが可能となる。これにより、嫌気処理槽からの担体等の流出をより一層適切に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、担体を充填した嫌気処理槽を用いる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法において、嫌気処理槽内において安定した処理を継続して行うために必要な流速を維持・確保しつつ、担体等の系外流出を抑制することができる排水処理装置及び排水処理装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る排水処理装置の概略説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施態様に係る排水処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法は、担体を充填した嫌気処理槽を用いて各種排水処理を行うものに適用される。より詳しくは、担体を充填し、固体・気体・液体の三相を分離する手段を備える嫌気処理槽を用いた排水処理を行うものに適用される。
また、本発明の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法は、有機物を含む排水の嫌気処理において特に好適に利用されるものである。
【0019】
本発明の処理対象となる排水については特に限定されないが、嫌気処理槽内で行う処理(嫌気処理)による排水処理が可能なものであればよく、具体的な処理対象としては有機物を含む排水が挙げられる。
本発明の処理対象である有機物を含む排水とは、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や下水などの生活排水が挙げられる。なお、有機物を含む排水はこれに限定されるものではなく、嫌気性下で生物処理が可能な有機物を含む排水であれば、本発明の処理対象となる。このような排水としては、例えば、家畜糞尿、汚泥(余剰汚泥)を含む有機性排水などが挙げられる。
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る排水処理装置及び排水処理装置の運転方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における排水処理装置の運転方法については、本発明に係る排水処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する排水処理装置及び排水処理装置の運転方法については、本発明に係る排水処理装置及び排水処理装置の運転方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、実施態様として、主に有機物を含む排水の嫌気処理を行うものについて説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の排水処理装置の概略説明図である。
本実施態様における排水処理装置1Aは、
図1に示すように、排水W0を導入して処理を行う嫌気処理槽2を備え、嫌気処理槽2内には担体Pが充填されている。また、嫌気処理槽2内には、処理を経た処理水W1を、三相(固体・気体・液体)に分離する三相分離部3が設けられている。さらに、三相分離部3で分離された分離液W2を嫌気処理槽2外に排出する排出部4と、排出部4からの分離液W2の排出に係る操作をON/OFF制御する制御部5Aとを備えるものである。
なお、
図1中の矢印は水の流れを示すものであり、一点鎖線は制御可能に接続されていることを示すものである。
【0022】
嫌気処理槽2は、排水W0を処理するための反応槽である。
図1に示すように、嫌気処理槽2の下部に設けられたラインL1を介して排水W0が嫌気処理槽2に供給される。
本実施態様における嫌気処理槽2は、排水W0の性状(処理対象物の種類等)に応じた処理を行うことができるものであればよく、具体的には、嫌気処理槽2内部に存在する嫌気性微生物により、排水W0中に含まれる成分の分解(嫌気処理)を行うことが挙げられる。
さらに具体的には、
図1に示すように、嫌気処理槽2に供給された排水W0が、嫌気処理槽2内に充填された担体Pからなる担体層を通過すると、担体Pに保持された嫌気性微生物による排水W0中の成分分解とともに、バイオガスが発生し、排水W0は処理水W1として嫌気処理槽2の上方向に移動する。このとき処理水W1は、バイオガスのほかに、担体Pの一部や嫌気性微生物の一部のように処理継続に必要となる固体分(担体等)が浮上粒子として含まれており、固体・気体・液体の混合物となっている。この処理水W1を、後述する三相分離部3により分離する。
【0023】
なお、本実施態様における嫌気処理槽2は、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、嫌気処理槽2に、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、微生物が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい。特に、嫌気処理として酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵を行う場合、嫌気処理槽2に付帯する設備として、メタンガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備えるものとすることが好ましい。また、嫌気処理槽2を密閉系とし、嫌気的環境を維持することが好ましい。
【0024】
嫌気処理槽2には、担体Pが充填されており、嫌気処理に関与する微生物(嫌気性微生物)を嫌気処理槽2内に保持することが可能となる。これにより、嫌気処理槽2内の微生物濃度を高め、処理効率を向上させることが可能となる。
【0025】
嫌気処理槽2に排水W0を導入するラインL1は、嫌気処理槽2底部に設けられたディストリビュータ(分散管、分散板等)と接続し、嫌気処理槽2内に排水W0を導入するものとしてもよい。これにより、嫌気処理槽2に導入される排水W0に係る流速の制御が容易となる。
なお、排水W0が嫌気処理槽2内で安定した上向流を形成するように、ラインL1にポンプを設けるものとしてもよい(不図示)。
【0026】
本実施態様における微生物としては、処理対象となる成分(例えば、有機物等)を嫌気的環境下で生物処理することができる微生物であればよく、微生物の具体的な種類については特に限定されない。
例えば、嫌気処理としてメタン発酵処理を行う場合、嫌気性微生物としては酸生成菌及びメタン生成菌を用いるものとする。その他の嫌気性微生物としては、硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理に用いられる脱窒菌や、硫酸の還元を行う硫酸還元処理に用いられる硫酸還元菌等が挙げられる。なお、本実施態様の嫌気性微生物としては、単離された微生物を用いるものであってもよく、他の排水処理設備等からの種汚泥を用いるものであってもよい。また、排水W0中に含まれる嫌気性微生物を活用するものであってもよい。
【0027】
本実施態様の担体Pは、排水W0の処理に関与する微生物を保持することができるものであればよく、例えば、樹脂製担体のほか、炭素質担体が挙げられる。
ここで、炭素質担体とは、主成分が炭素である無機材料からなるものを指し、具体的には、カーボンブラック、グラファイト、コークス、活性炭などが挙げられる。炭素質担体は、担体としての成型が容易であることに加え、一般的に樹脂製担体よりも比重が大きく、嫌気処理槽2に充填し流動させた際に、槽外への流出が抑えられるという利点がある。
また、本実施態様の担体Pとしては、細孔の有無は特に限定されないが、微生物の保持以外にも、微生物による生物処理を阻害する成分を吸着可能であるという観点から、細孔を有することが好ましく、具体的には活性炭を用いることが好ましい。
【0028】
三相分離部3は、処理水W1を三相に分離するためのものであり、より具体的には、担体等からなる浮上粒子と、バイオガスと、分離液W2と、に分離するためのものである。
三相分離部3としては、処理水W1を三相に分離することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、
図1に示すように、嫌気処理槽2の側壁から中心部に向かって斜め下方向に傾斜する板状部材や、嫌気処理槽2の中心部に設けられ、上向流を整流する傘状部材等の構造体を組み合わせるものが挙げられる。
【0029】
なお、三相分離部3の構造については
図1に示すものに限定されない。
三相分離部3の他の例としては、例えば、左右対称の構造を有するものでなくともよい。より具体的には、分離液W2を排出(取水)する箇所(ラインL2)が設けられた嫌気処理槽2側壁と、その反対側の嫌気処理槽2側壁間を、一方向に向かって傾斜する板状部材(単数又は複数)を設けることが挙げられる。
また、三相分離部3の他の例としては、例えば、三相分離部3の上部に、分離液W2の一時的な貯留を可能とする空間を設けることが挙げられる。これにより、排出部4からの排出をOFF制御した場合に、三相分離部3内の空間に分離液W2が一時貯留されるとともに、この空間内において担体等からなる浮上粒子の沈降に係る環境が形成されることになる。これにより、浮上粒子を沈降させるための時間の確保などが容易となるため、より一層担体等の流出を抑制することが可能となる。
さらに、三相分離部3の他の例としては、例えば、三相分離部3の上部に、分離液W2の回収を行う越流堰を設けることが挙げられる。これにより、分離液W2中における固体分(担体等からなる浮上粒子)が越流堰を越える必要が生じることで、分離液W2中の固体分の含有量を低減させることが可能となる。また、越流堰内で固体分の沈降が生じることで、越流堰を介した分離液W2の排出において、担体等の固体分が流出することをより一層抑制することが可能となる。
【0030】
三相分離部3により処理水W1から分離された分離液W2は、排出部4を介して嫌気処理槽2外に排出される。
なお、処理水W1から分離されたバイオガスについては、ガス回収ライン(不図示)等、ガス回収機構によって槽外に排出した後、回収・利用することが好ましい。
また、処理水W1から分離された浮上粒子は、嫌気処理槽2内を沈降させ、再度担体Pからなる担体層の一部として機能させる。
【0031】
排出部4は、分離液W2を嫌気処理槽2外に排出するためのものである。また、排出部4は、後述する制御部5Aによって、排出部4からの分離液排出に係る操作が制御されるものである。
本実施態様における排出部4としては、
図1に示すように、三相分離部3の上方側から分離液W2を取水するためのラインL2と、ラインL2上に設けた開閉弁41を備えるものが挙げられる。このとき、ラインL2と嫌気処理槽2の接続箇所(取水箇所)において、担体等の流出を抑制するための部材(スクリーン等)を設けるものとしてもよい。また、開閉弁41としては、その開閉操作が制御部5Aによって制御可能であるものを設けることで、分離液排出に係る制御を可能とする。
【0032】
本実施態様における排出部4は、後述するように、分離液排出のON/OFFが制御されるものであるため、開閉弁41のように、分離液W2の排出/停止を速やかに切り換えることができるものを設ける。このとき、分離液W2の排出は、嫌気処理槽2内の水位がラインL2による取水箇所よりも高位置にあるため、水頭差により進行するものとなる。
なお、排出部4による分離液W2の排出を効率的に行うため、ラインL2上に送水ポンプを設けるものとしてもよい(不図示)。
【0033】
制御部5Aは、排出部4からの分離液排出をON/OFF制御するためのものである。より具体的には、制御部5Aは、排出部4における分離液排出に係る操作をON/OFF制御するためのものである。
本実施態様における制御部5Aとしては、
図1に示すように、開閉弁41の開閉操作を制御する(切り換える)ものが挙げられる。これにより、開閉弁41が開のときは、分離液W2が嫌気処理槽2外に排出される。一方、開閉弁41が閉のときは、分離液W2の排出が停止し、嫌気処理槽2内に一時的に貯留されることになる。
【0034】
通常運転時(開放弁41が開)では、分離液W2がラインL2を介して嫌気処理槽2外に排出される。このとき嫌気処理槽2内の三相分離部3では、見かけ上、嫌気処理槽2の断面積(処理水W1又は分離液W2の流路幅)が他と比べて小さくなるため、三相分離部3内の流速は他の箇所よりも速く(大きく)なる。したがって、通常運転を継続することで、処理水W1の分離が不十分なまま、ラインL2を介して嫌気処理槽2外に排出され、担体等の流出が生じるおそれがある。
【0035】
一方、分離液W2の排出停止時(開放弁41が閉)では、三相分離部3内の流速増加は生じない。また、嫌気処理槽2内の水位が上昇し、分離液W2が一時的に貯留される。このとき貯留された分離液W2に含有される担体等からなる浮上粒子は、時間経過とともに沈降してくることになる。
したがって、制御部5Aによって、開放弁41の開閉操作、すなわち通常運転時と分離液W2の排出停止時とを切り換える間欠的な運転を行うことで、担体等の流出を抑制することが可能となる。
【0036】
制御部5Aにより、開閉弁41の開閉操作を切り換えるタイミングは、タイマーなどの時間計測器を用い、所定時間ごとに行うことのほか、三相分離部3上方の水位に基づく制御を行うことが挙げられる。ここで、三相分離部3上方とは、三相分離部3内の上方部分、あるいは三相分離部3よりも上方にある領域のいずれかを指すものである。
具体的には、
図1に示すように、嫌気処理槽2内に水位計S1及びS2を設け、水位計S1では、嫌気処理槽2内における水位上限を、水位計S2では、嫌気処理槽2内における水位下限を検知することが挙げられる。なお、
図1では、このときの水位上限及び水位下限がいずれも三相分離部3よりも上方の領域内に設定されるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、制御部5Aの制御に係る水位上限及び/又は水位下限について、三相分離部3内の上方部分に設定されるものとしてもよい。
また、制御部5Aにおいて三相分離部3上方の水位に基づく制御を行うに当たり、嫌気処理槽2内の水位検出に係る手段(水位検出手段)は特に限定されない。例えば、
図1に示した水位計S1及びS2のほか、圧力計を用いた水頭圧検知による水位検出を行うことなどが挙げられる。
【0037】
制御部5Aにおいて、水位検出手段として水位計S1及びS2を用いた制御の一例について説明する。
まず、通常運転時(開閉弁41が開)では、分離液W2の排出が進行するため、嫌気処理槽2内の水位は減少する。そして、水位計S2により水位下限に達したことが検知された段階で、制御部5Aにより開閉弁41を閉とし、分離液W2の排出を停止する。その後、嫌気処理槽2内の水位は上昇し、それとともに分離液W2に含有される浮上粒子の沈降が進行する。そして、水位計S1により水位上限に達したことが検知された段階で、制御部5Aにより開閉弁41を開とし、沈降により浮上粒子の含有量が低減した分離液W2の排出を行う。
すなわち、三相分離部3上方の水位を基に、分離液W2に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成度合いを判断することができ、より適切なタイミングで分離液排出に係る操作制御(ON/OFF制御)を行うことが可能となる。これにより、嫌気処理槽2からの担体等の流出をより一層適切に抑制することが可能となる。
【0038】
また、制御部5Aによる開閉弁41の開閉操作を切り換えるタイミングについては、水位検出手段(水位計S1及びS2など)による検知と、タイマー等の時間計測器を組み合わせるものとしてもよい。例えば、水位計S1により、水位上限を検知した後、タイマー等により所定時間の計測を開始し、所定時間経過後に開閉弁41を開にするという操作を行うことが挙げられる。これにより、分離液W2中の浮上粒子をより確実に沈降させることができ、担体等の流出をより一層抑制することが可能となる。
なお、水位計の本数については特に限定されない。例えば、水位計S1及びS2を一体化したものを用い、水位上限及び水位下限を検知するものとしてもよく、水位計S1又はS2のいずれか一方を備え、タイマー等の時間計測器との組み合わせにより、浮上粒子の沈降環境の形成度合いを推定するものとしてもよい。
【0039】
本実施態様における排水処理装置1Aでは、担体Pを充填した嫌気処理槽2を用いるため、処理継続によって、排水W0中に含まれるSSや、時間経過に伴い増殖する微生物が、担体Pに蓄積する。これによって、担体P間の空隙が減少し、担体層の閉塞が生じてしまい、処理性能が著しく低下するという問題がある。そして、担体層の閉塞は、担体層としての嵩が増すことにつながるため、担体流出や三相分離部3における分離不良が起こりやすくなるという問題もある。
【0040】
担体層の閉塞を抑制し、安定した処理を継続させる手段の一つとしては、嫌気処理槽2に充填する担体Pの選択が挙げられる。上述したように、担体Pとして樹脂製担体に比べて比重が比較的大きい炭素質担体を用いた場合、炭素質担体のほうが排水W0に含まれるSSよりも比重が大きい傾向にあるため、排水W0が処理水W1として嫌気処理槽2内の担体層を通過することに伴い、SSも同時に担体層を通過していくこととなる。すなわち、排水W0中のSSが担体P間に蓄積することが抑制される。これにより、担体Pの機能低下及び担体層の閉塞が抑制される。
【0041】
また、このとき、担体層の流動性を維持することで、担体P間の空隙形成が容易になるため、担体層の閉塞要因となる物質であるSSは、一部は担体Pに捕捉されるが、大部分は担体層を通過していくことになる。すなわち、担体Pは嫌気処理槽2内に維持される一方で、担体層の閉塞要因となる物質(SS)は効率的に槽外(系外)へ排出させることが可能となり、担体流出及び担体層の閉塞をより一層抑制し、安定した処理を継続して行うことが可能となる。
【0042】
したがって、嫌気処理槽2内においては、担体Pの流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽2外に排出可能とする流速を確保することが求められる。
このときの流速については、実際の排水処理に係る試験・実施例等から直接求めることや、対象となる粒子(担体P)の粒径、粒子形状や比重(密度)に依存する値であり、担体層が流動状態を形成する基準となる最小流動化速度(Umf)に基づき設定することなどが挙げられる。
【0043】
そして、炭素質担体のように比較的比重が大きい担体を用いる場合、安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽2外に排出可能とする流速)は、樹脂製担体のように比較的比重が小さい担体と比べ、速く(大きく)なる。
【0044】
一般に、固体・気体・液体を分離する三相分離部を設けた処理槽においては、処理槽内の流速を速めることで、三相分離部のような分離手段による分離効率が低下し、安定した処理を継続することが困難になることがある。
一方、本実施態様の排水処理装置1Aにおいては、三相分離部3からの分離液W2の排出を間欠的に行うことで、分離液W2に混在する固体分(主に担体等からなる浮遊粒子)が沈降する環境(状態)を形成することができ、嫌気処理槽2内の流速を速めても、安定した処理を継続して行うことが可能である。
【0045】
[第2の実施態様]
図2は、本発明の第2の実施態様の排水処理装置1Bの概略説明図である。
本実施態様に係る排水処理装置1Bは、
図2に示すように、第1の実施態様における排水処理装置1Aにおいて、分離液W2を嫌気処理槽2に循環させる循環部6を備え、制御部5Bによって、排出部4と循環部6とを併せて制御するものである。
なお、本実施態様における排水処理装置1Bの構成のうち、第1の実施態様の排水処理装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0046】
本実施態様における排水処理装置1Bは、嫌気処理槽2から取水した分離液W2を再度嫌気処理槽2に返送する循環部6を設けるものである。
また、循環部6は、本実施態様の排水処理装置1Bにおける嫌気処理槽2内の流速を制御する手段として機能するものである。
【0047】
担体を充填した嫌気処理槽を用いる従来の排水処理装置では、一般に、嫌気処理槽外から嫌気処理槽内に供給される排水の流量(供給水量)を制御することで、嫌気処理槽内における担体層の流動などに係る嫌気処理槽内の流速制御を行っている。また、嫌気処理槽外から嫌気処理槽内に排水を供給(移送)するには、駆動部を備える移送機構(ポンプ等)を用いることも行われている。このとき、移送機構の駆動に必要とする力(エネルギー)は、移送機構にかかる圧力差(移送機構の上流側・下流側における水圧差)に依存する。すなわち、本実施態様における嫌気処理槽2のように、一定程度の水(排水W0)が貯留される嫌気処理槽2に対し、嫌気処理槽2外から移送機構を用いて排水W0の供給を行う場合、嫌気処理槽2内で必要となる流速が増加することに伴い、嫌気処理槽2外から嫌気処理槽2内に排水W0を供給する動力(移送機構の駆動エネルギー)も増大することになる。特に、本実施態様で用いる担体Pとして比較的比重の大きい担体(炭素質担体)を用いる場合、担体層を流動させるために必要な流速の絶対値が大きくなる傾向にあり、排水処理装置1Bのランニングコストの増加につながることになる。
【0048】
したがって、本実施態様の排水処理装置1Bにおいては、例えば、
図2に示すように、三相分離部3を通過した分離液W2を、嫌気処理槽2に返送して循環させる循環部6を設け、これにより、嫌気処理槽2内の流速を制御することが挙げられる。より具体的には、嫌気処理槽2内に導入された排水W0が担体層を通過し、三相分離部3による分離を経た後、分離液W2として槽外(系外)に排出される際に、分離液W2の一部を再度嫌気処理槽2に返送して循環させる。これにより、移送機構(ポンプ61)の上流側・下流側が同一の槽(嫌気処理槽2)となるため、分離液W2の移送(循環移動)を行う移送機構にかかる圧力差を小さくすることができる。すなわち、嫌気処理槽2内で必要となる流速が増加しても、分離液W2の移送に必要となる動力(移送機構の駆動エネルギー)の増大を抑制し、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0049】
循環部6の具体的な構造については特に限定されない。
循環部6の一例としては、例えば、
図2に示すように、排出部4のラインL2から分岐するラインL3を設け、このラインL3をラインL1に接続することで、循環経路を形成し、嫌気処理槽2に対する分離液W2の内部循環を行うことが挙げられる。また、循環経路内における分離液W2を効率的に移送させ、流速(循環量)制御を容易とするために、ライン3上に駆動部を備える移送機構(ポンプ61)を設ける。また、このポンプ61としては、駆動部の駆動に係る制御が制御部5Bによって制御可能であるものを設けることで、流速(循環量)制御を可能とする。
【0050】
本実施態様における制御部5Bは、排出部4における分離液W2の排出に係る操作を制御するとともに、循環部6における流速制御として分離液W2の循環量を制御する。なお、循環部6における分離液W2の循環量制御については、例えば、ポンプ61の駆動部の出力を制御することのほか、ラインL3上に流量調整弁を設け、この流量調整弁の開度を制御することなどが挙げられる。
【0051】
制御部5Bによる制御の一例について以下説明する。
通常運転時(開閉弁41が開)においては、排出部4においては上述した制御部5Aと同様に、分離液排出が行われるとともに、循環部6における流速制御(循環量制御)として、安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽2外に排出可能とする流速)を満たすようにポンプ61における駆動部の出力を制御する。
一方、分離液W2の排出停止時(開閉弁41が閉)においては、排出部4においては上述した制御部5Aと同様に、分離液W2の排出停止が行われるとともに、循環部6における流速制御(循環量制御)として、嫌気処理槽2内の流速を低下させ、浮上粒子の沈降が促進されるようにポンプ61における駆動部の出力を制御する。
【0052】
本実施態様における排水処理装置1Bは、循環部6を設けることで、嫌気処理槽2内において安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽2外に排出可能とする流速)が増加しても、分離液W2の移送に必要となる動力(移送機構の駆動エネルギー)の増大を抑制し、ランニングコストを低減することが可能となる。
また、本実施態様における排水処理装置1Bは、排出部4における分離液排出に係る操作制御と、循環部6における分離液W2の循環量制御を併せて行うことができ、安定した処理を継続して行うために要求される流速(担体の流動性を維持し、かつSSを嫌気処理槽2外に排出可能とする流速)の維持と、分離液W2に混在する固体分(担体等からなる浮上粒子)が沈降する環境(状態)の形成を両立させることがより一層容易となる。
【0053】
なお、上述した実施態様は排水処理装置及び排水処理装置の運転方法の一例を示すものである。本発明に係る排水処理装置及び排水処理装置の運転方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る排水処理装置及び排水処理装置の運転方法を変形してもよい。
【0054】
例えば、本実施態様の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法においては、安定した処理を継続して行うため、嫌気処理槽の腐食防止(電蝕防止)を行うことが好ましい。より具体的には、嫌気処理槽の材質としてコンクリートあるいは樹脂(FRP)を用いることや、嫌気処理槽の内面加工(ライニング、コーティング、塗装など)を行うことなどが挙げられる。
【0055】
また、本実施態様の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法においては、嫌気処理槽に充填する担体は1種類に限定されない。例えば、比重の異なる担体を複数充填し、嫌気処理槽内で複数の担体層を形成するものとしてもよい。このとき、比重の大きい担体に合わせて安定した処理が可能となる嫌気処理槽内の流速を設定した場合、比重の小さい担体が槽外に流出するおそれが高まることになるが、本実施態様の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法においては、上述のとおり、分離液の排出を間欠的に実施することにより、比重の小さい担体及び比重の大きい担体のいずれについても槽外への流出を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法は、担体を充填した嫌気処理槽を用いて各種排水処理を行うものに適用される。また、本発明の排水処理装置及び排水処理装置の運転方法は、有機物を含む排水の嫌気処理に対し、特に好適に利用される。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B 排水処理装置、2 嫌気処理槽、3 三相分離部、4 排出部、41 開閉弁、5A,5B 制御部、6 循環部、61 ポンプ、L1~L3 ライン、P 担体、S1,S2 水位計、W0 排水、W1 処理水、W2 分離液