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特開2024-130457乗客コンベアのステップ監視装置、及び乗客コンベア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130457
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】乗客コンベアのステップ監視装置、及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20240920BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B66B29/00 D
B66B31/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040194
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 英揮
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321CB11
3F321EA15
3F321EB07
3F321HA04
(57)【要約】
【課題】乗客コンベアの移動する各ステップについての破損の有無をより確実に判定するすることができる乗客コンベアのステップ監視装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示よる乗客コンベアのステップ監視装置100は、エスカレーターの機械室20内に設置され、撮像装置110と、撮像範囲を照らす照明装置111と、処理装置120と、を備え、処理装置120は、撮像装置110によって撮像された撮像データから取得された各ステップ4の画像データに基づいて各ステップ4の破損の有無を判定することができる処理部を有し、処理部は、画像データに2値化処理をして検査データを生成し、検査データに基づいて各ステップの破損の有無を判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの機械室内に設置され、無端状に連結された複数のステップの移動経路の一部が収まる範囲を撮像範囲として撮像する撮像装置と、
前記撮像範囲を照らす照明装置と、
処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記撮像装置によって撮像された撮像データから取得された各前記ステップの画像データに基づいて各前記ステップの破損の有無を判定することができる処理部を有し、
前記処理部は、前記画像データに2値化処理をして検査データを生成し、前記検査データに基づいて各前記ステップの破損の有無を判定する、
乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項2】
前記処理部は、グレースケール処理が施された前記画像データを複製して複数の一次画像データを作成し、前記複数の一次画像データのそれぞれを互いに位置をずらせて重ねあわて1つの二次画像データを作成し、
前記処理部は、前記二次画像データを前記画像データとして2値化処理をして前記検査データを生成する、
請求項1に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記ステップの正常な状態を撮像した静止画のデータを2値化処理をした標準データを記憶することができる記憶部を更に有し、
前記処理部は、前記検査データと、前記標準データと、を比較することで前記ステップの破損の有無を判定する、
請求項1に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項4】
前記記憶部には、2つ以上の前記標準データが予め記憶されており、
各前記標準データのそれぞれには、異なる姿勢の前記ステップが示されており、
前記処理部は、各前記標準データに対応する前記検査データを生成し、各前記標準データと対応する前記検査データを比較することで前記ステップの破損の有無を判定する、
請求項3に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項5】
各前記ステップが特定の位置を通過したことを検知する検出器を、更に備え、
前記処理部は、前記検出器から出力された信号に基づいた静止画である前記画像データを取得し、取得した前記画像データに2値化処理をすることで静止画である前記検査データを生成する、
請求項3に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記検出器から出力された信号と前記ステップの移動速度とに基づいて前記画像データを取得する、
請求項5に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項7】
前記画像データは、前記撮像装置によって撮像された動画であって、
前記処理部は、前記画像データを2値化処理することで動画である前記検査データを生成し、
前記処理部は、前記検査データと、前記標準データとが一致する割合である一致率を動画である前記検査データに基づいて逐次算出し、前記一致率が周期的に変化する毎に得られる最高一致率の変化に基づいて前記ステップの破損を検出することができる、
請求項3に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項8】
前記記憶部には、2つ以上の前記標準データが予め記憶されており、
各前記標準データのそれぞれには、異なる姿勢の前記ステップが示されており、
前記処理部は、各前記標準データと前記検査データとの前記一致率を動画である前記検査データに基づいて逐次算出する、
請求項7に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記撮像装置によって撮像された前記撮像データから取得された各前記ステップの識別部画像データに基づいて、少なくとも1つの前記ステップに付された識別部を認識することで前記識別部が設けられた前記ステップを特定ステップとして特定することができ、
前記処理部は、前記特定ステップの位置を基準として前記破損が検出された前記ステップの位置を把握することができる、
請求項1に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のステップ監視装置を備えた乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアのステップ監視装置、及び乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアのくし板を乗客コンベアの乗降口付近に設けられたカメラにより撮影し、くし板の状態を遠隔で確認するくし板監視装置が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-27790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、乗客の有無、及び光の乱反射によって移動する各ステップの破損の有無を正確に把握することができないといった課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、乗客コンベアの移動する各ステップについての破損の有無をより確実に判定することができる乗客コンベアのステップ監視装置、及び乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による乗客コンベアのステップ監視装置は、乗客コンベアの機械室内に設置され、無端状に連結された複数のステップの移動経路の一部が収まる範囲を撮像範囲として撮像する撮像装置と、撮像範囲を照らす照明装置と、処理装置と、を備え、処理装置は、撮像装置によって撮像された撮像データから取得された各ステップの画像データに基づいて各ステップの破損の有無を判定することができる処理部を有し、処理部は、画像データに2値化処理をして検査データを生成し、検査データに基づいて各ステップの破損の有無を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示による乗客コンベアのステップ監視装置、及び乗客コンベアによれば、乗客コンベアの移動する各ステップについての破損の有無をより確実に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による乗客コンベアの全体を示す側面図である。
図2図1におけるステップの斜視図である。
図3図1の上階に設けられた機械室を示す斜視図である。
図4図1の上階に設けられた機械室を示す側面図である。
図5図4の処理装置を示す概略図である。
図6】撮像データの2値化処理を示す概略図である。
図7図3の処理装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。
図8図3の処理装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による乗客コンベアの全体を示す側面図である。実施の形態1における乗客コンベアは、エスカレーター1である。
【0010】
エスカレーター1は、トラス2と、複数のステップ4と、一対の欄干5と、エスカレーター制御装置7と、図示しない駆動機と、を備えている。
【0011】
エスカレーター1は、下階LFと、下階LFよりも高い位置に位置する上階UFと、に渡って配置されている。トラス2の上端部は、上階UFとの建築部に支持され、トラス2の下端部は、下階LFとの建築部に支持されている。
【0012】
トラス2には、無端状に連結された複数のステップ4が支持されている。複数のステップ4は、駆動機の駆動力によってトラス2の下端部とトラス2の上端部との間に設定された無端状の移動経路を循環移動する。
【0013】
各ステップ4の移動経路は、トラス2の下端部と上端部との間にある往路部と、トラス2内において往路部の下方に位置する帰路部と、トラス2の下端部、及び上端部において往路部と帰路部とを互いに繋ぐ一対の反転部とを有している。
【0014】
トラス2の上部には、一対の欄干5が設けられている。一対の欄干5は、往路部に沿って配置されており、往路部にある複数のステップ4を挟むように互いに対向して配置されている。各欄干5は、往路部を移動するステップ4の側面に対向している。
【0015】
エスカレーター1には、一対の乗降口10が設けられている。乗降口10は、エスカレーター1の長手方向両端部のそれぞれに位置している。各乗降口10の床は、床板11で構成されている。即ち、乗客は、床板11の上を通り、エスカレーター1に乗り降りする。床板11は、トラス2の上端部の上部及び下端部の上部に配置されている。
【0016】
一対の乗降口10のそれぞれの下部、即ち床板11の下には、機械室20が設けられている。上階UFの乗降口10の下部に設けられた機械室20には、エスカレーター1の運転を制御するエスカレーター制御装置7が配置されている。
【0017】
図2は、図1におけるステップ4の斜視図である。ステップ4は、踏板41と、ブラケット42と、ライザ43と、を有している。踏板41の乗客が乗る搭乗面を表面とし、搭乗面の裏側の面を裏面とする。
【0018】
図3は、図1の上階UFに設けられた機械室20を示す斜視図である。図4は、図1の上階UFに設けられた機械室20を示す側面図である。エスカレーター1は、ステップ監視装置100を更に備えている。上階UFの乗降口10の下部に設けられた機械室20には、ステップ監視装置100が設けられている。機械室20からは、反転部を臨むことができる。
【0019】
ステップ監視装置100は、踏板41の表面にできた破損の有無を判定する装置である。踏板41の表面にできた破損とは、例えば、貫通孔、割れ、変形といったものである。
【0020】
複数のステップ4のうちの1つは、特定ステップ4Aであり、複数のステップ4のうちの特定ステップ4A以外のステップ4は、通常ステップ4Bである。通常ステップ4Bは、図2において前述したステップ4の構成と同一である。
【0021】
特定ステップ4Aには、図4に示される通り、識別部4aが設けられている。通常ステップ4Bには、識別部4aは設けられていない。また、特定ステップ4Aの識別部4a以外の構成は、通常ステップ4Bと同一である。従って、特定ステップ4Aの識別部4a以外の構成についての説明を省略する。
【0022】
識別部4aは、特定ステップ4Aの踏板41の裏面に設けられており、エスカレーター1に搭乗した乗客からは、目視で確認できない位置に設けられている。特定ステップ4Aは、識別部4aが設けられていることにより、通常ステップ4Bと区別することができる。
【0023】
本実施の形態では、複数のステップ4のうちの1つが特定ステップ4Aであるが、特定ステップ4Aが複数あってもよい。その場合には、各特定ステップ4Aの識別部4aの外観を異ならせ、各特定ステップ4Aが互いに区別できるようにしてもよい。
【0024】
ステップ監視装置100は、エスカレーター制御装置7と有線、又は無線にて情報通信可能に接続されている。ステップ監視装置100が収集した情報は、エスカレーター制御装置7に送信される。
【0025】
ステップ監視装置100は、撮像装置110と、照明装置111と、ステップ4が特定の位置を通過したことを検知する検出器112と、処理装置120と、を備えている。撮像装置110は、動画としての撮像が可能なカメラである。
【0026】
撮像装置110は、機械室20の内部に設置されている。撮像装置110は、無端状に連結された複数のステップ4の移動経路の一部が収まる範囲を撮像範囲として撮像する。撮像範囲には、特定のタイミングにおいて反転部を通過するステップ4の踏板41全体が収まる。
【0027】
照明装置111は、機械室20の内部に設置されている。照明装置111は、撮像範囲を照らす。照明装置111で撮像範囲を照らす。具体的には、撮像装置110は、撮像範囲内を移動するステップ4の踏板41、及び識別部4aを撮像することができる。
【0028】
即ち、照明装置111は、撮像装置110で撮像される移動する各ステップ4の踏板41、及び識別部4aを照らすように配置されている。本実施の形態では、撮像装置110と照明装置111とは、同一の筐体に収められている。しかし、撮像装置110と照明装置111とは、機械室20内の互いに異なる場所に個別に設置されてもよい。
【0029】
照明装置111は、撮像装置110と電気的に接続されており、撮像装置110が撮像する際に撮像範囲を照らす。なお、照明装置111は、複数のステップ4が移動している間、常時点灯して撮像範囲を照らしてもよく、また、撮像装置110の発するタイミング信号に基づいて、一定の時間、撮像範囲を照らしてもよい。
【0030】
検出器112は、機械室20の内部に設置されている。検出器112は、各ステップ4が特定の場所を通過したことを検出することができる。検出器112は、例えば、接触センサである。接触センサのプローブは、各ステップ4の移動経路上であって、移動する各ステップ4が順次接触するような位置に設置されている。
【0031】
移動する各ステップ4がプローブに接触することで、検出器112は、各ステップ4が特定の場所を通過したことを検出することができる。
【0032】
なお、検出器112には、他のセンサを用いてもよい。例えば、光電管を検出器112に用いてもよい。この場合には、光電管は、移動する各ステップ4が光電管の発する光を遮るように設置される。検出器112は、光電管の光が遮られることで各ステップ4が特定の場所を通過したことを検出することができる。
【0033】
処理装置120は、機械室20の内部に設置されている。図5は、図4の処理装置120を示す概略図である。処理装置120は、撮像装置110が撮像した撮像データに基づいて各ステップ4の踏板41の破損の有無を判定することができる。
【0034】
処理装置120は、処理部121と、記憶部122と、入出力部123と、を有している。処理装置120は、エスカレーター制御装置7と情報通信可能に有線、又は無線で接続されている。
【0035】
処理部121は、入出力部123に入力された信号、及び記憶部122に記憶されている情報を用いて演算を実施し、演算により得られた新たな情報を記憶部122に記憶し、入出力部123から出力することができる。
【0036】
入出力部123には、撮像装置110、検出器112、及びエスカレーター制御装置7に接続されている。撮像装置110が撮像した撮像データ、検出器112の出力信号、及びエスカレーター制御装置7から送信される情報は、入出力部123に入力され、必要に応じて記憶部122に記憶される。
【0037】
処理部121は、検出器112の出力信号に基づいて、画像処理タイミングを算出することができる。画像処理タイミングは、移動する各ステップ4の踏板41の状態が画像データとして明確に捉えられる瞬間を示すものである。
【0038】
処理部121は、画像処理タイミングに基づいて撮像データから画像データを抽出して取得することができる。即ち、画像処理タイミングに基づいて取得された画像データは、静止画であって、踏板41の状態が明確に示されている。画像処理タイミングに基づいて取得された画像データは、静止画である標準データと比較される。標準データについては後に説明をする。
【0039】
画像処理タイミングは、検出器112の出力信号に基づいて決定される。例えば、処理部121は、ステップ4が特定の場所を通過したことを伝える検出器112の出力信号を受信した後、N秒後を画像処理タイミングとしてもよい。この場合、記憶部122には、作業者により入力されたN秒後という情報が予め記憶されていてもよい。
【0040】
或いは、検出器112の出力信号、ステップ4が通過する特定の場所の位置情報、ステップ4の移動速度、撮像範囲の位置情報といった情報から処理部121が画像処理タイミングを適宜算出してもよい。この場合では、画像処理タイミングの算出に必要な情報は、記憶部122に予め記憶されている。また、ステップ4の移動速度は、エスカレーター制御装置7から送信されてきてもよい。
【0041】
処理部121は、画像処理タイミングに基づいて取得した静止画である画像データに対して画像処理を実施することができる。処理部121が実施する画像処理は、画像データの2値化処理である。画像データの2値化処理とは、カラーの色調、或いは白から黒までの3段階以上の色調で示される画像データを、白い部分と黒い部分とで示される画像データに変換することである。
【0042】
図6は、撮像データの2値化処理を示す概略図である。図6の左側の列には、破損41Xがない踏板41の画像データに対しての2値化処理の概略が示されている。図6の右側の列には、破損41Xがある踏板41の画像データに対しての2値化処理の概略が示されている。
【0043】
2値化処理においては、画像処理タイミングに基づいて取得した画像データが用いられる。図6の上段には、画像処理タイミングに基づいて取得した画像データが示されている。
【0044】
2値化処理では、処理部121は、取得した画像データを白から黒までの3段階以上の色調で示される画像データであるグレースケール変換した画像データを生成する。図6の中段には、グレースケール変換された画像データが示されている。
【0045】
最後に、処理部121は、グレースケール変換された画像データに対して、特定の閾値を境に、薄いグレーから白で示された領域を白、濃いグレーから黒で示された領域を黒とする2値化処理を実施する。2値化処理における閾値は、予め設定され、記憶部122に記憶されていてもよい。図6の下段には、2値化処理された画像データが示されている。
【0046】
なお、2値化処理における閾値は、被写体の照らされ方、ステップ4上のゴミ、雨水等の異物の存在、経年劣化の度合いなどを考慮して設定される。
【0047】
これにより、処理部121は、2値化処理された画像データである検査データを生成することができる。図6の下段の右側の画像データでは、破損41Xの部分が白となって示されており、同じく下段の左側の画像データと比較するとその差異は明確に示されている。
【0048】
図3、及び図4に戻り説明を続ける。記憶部122には、正常な状態の踏板41を示す静止画であって、2値化処理された画像のデータである標準データが予め記憶されている。処理部121は、記憶部122に記憶されている標準データと、生成された検査データとを比較することができる。
【0049】
標準データと検査データとの比較では、例えば、標準データと検査データとの白い部分と黒い部分との面積比の違いに基づいて、標準データと検査データとの間の差異の有無を把握することができる。標準データと検査データとの間の差異があった場合には、処理部121は、検査データに対応する踏板41に異変、即ち、対応するステップ4に破損が発生していると認識する。
【0050】
このように、処理部121は、比較の結果、標準データと検査データとに差異が認められた場合、処理部121は、エスカレーター1のステップ4に破損が発生していると判断することができる。
【0051】
処理部121は、検出器112の出力信号に基づいて、識別タイミングを算出することができる。識別タイミングは、移動する各ステップ4において特定ステップ4Aの識別部4aを画像データとして明確に捉えられる瞬間を示すものである。
【0052】
処理部121は、識別タイミングに基づいて撮像データから画像データを抽出して取得することができる。即ち、識別タイミングに基づいて取得された識別部画像データは静止画であって、特定ステップ4Aの識別部4aが明確に示されている。識別タイミングに基づいて取得された識別部画像データは、静止画である識別部標準データと比較される。識別部標準データについては後に説明をする
【0053】
識別タイミングは、検出器112の出力信号に基づいて決定される。例えば、処理部121は、ステップ4が特定の場所を通過したことを伝える検出器112の出力信号を受信した後、M秒後を識別タイミングとしてもよい。この場合、記憶部122には、作業者により入力されたM秒後という情報が予め記憶されていてもよい。
【0054】
或いは、検出器112の出力信号、ステップ4が通過する特定の場所の位置情報、ステップ4の移動速度、撮像範囲の位置情報といった情報から処理部121が識別タイミングを適宜算出してもよい。この場合では、識別タイミングの算出に必要な情報は、記憶部122に予め記憶されている。また、ステップ4の移動速度は、エスカレーター制御装置7から送信されてきてもよい。
【0055】
処理部121は、識別タイミングに基づいて取得した静止画である識別部画像データに対して2値化処理である画像処理を実施することができる。これにより、処理部121は、識別部画像データを2値化処理した識別部検査データを生成することができる。識別部画像データの2値化処理は前述した画像データの2値化処理と同様であるので説明を省略する。
【0056】
記憶部122には、正常な状態の特定ステップ4Aの識別部4aを示す静止画であって、2値化処理された画像のデータである識別部標準データが予め記憶されている。処理部121は、記憶部122に記憶されている識別部標準データと、生成された識別部検査データとを比較することができる。
【0057】
識別部標準データと識別部検査データとの比較では、例えば、識別部標準データと識別部検査データとの白い部分と黒い部分との面積比の違いに基づいて、識別部標準データと識別部検査データとの差異の有無を把握することができる。識別部標準データと識別部検査データとで差異がなかった場合には、識別部検査データに対応するステップ4が特定ステップ4Aであると判断することができる。
【0058】
このように、処理部121は、比較の結果、識別部標準データと識別部検査データとが一致すると認められた場合、処理部121は、特定ステップ4Aの位置を把握することができる。
【0059】
処理部121は、把握した特定ステップ4Aの位置を基準として、破損が発生していると判断したステップ4の位置を把握し、その位置を外部に出力することができる。例えば、特定ステップ4Aから4番目のステップ4に破損が発生している旨の情報をエスカレーター制御装置7に出力することができる。
【0060】
図7は、図3の処理装置120の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。ステップ監視装置100の処理装置120の機能は、好適な処理回路によって実現される。第1の例の処理回路300は、専用のハードウエアである。
【0061】
また、処理回路300は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0062】
図8は、図3の処理装置120の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路310は、プロセッサ311及びメモリ312を備えている。
【0063】
処理回路310では、処理装置120の機能は、ソフトウエア、ファームウエア、又はソフトウエアとファームウエアとの組み合わせにより実現される。ソフトウエア及びファームウエアは、プログラムとして記述され、メモリ312に格納される。プロセッサ311は、メモリ312に記録されたプログラムを読み出して実行することにより、機能を実現する。
【0064】
メモリ312に格納されたプログラムは、上述した各部の手順、又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ312とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性、又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ312に該当する。
【0065】
なお、上述した処理装置120の機能について、一部の専用のハードウエアで実現し、一部をソフトウエア、又はファームウエアで実現するようにしてもよい。
【0066】
このように、処理回路は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はこれらの組み合わせによって、上述した処理装置120の機能を実現することができる。
【0067】
実施の形態1のエスカレーター1のステップ監視装置100は、撮像装置110と、照明装置111と、処理装置120と、を備えている。また、撮像装置110は、エスカレーター1の機械室20内に設置され、無端状に連結された複数のステップ4の移動経路の一部が収まる範囲を撮像範囲として撮像する。また、照明装置111は、撮像範囲を照らす。また、処理装置120は、撮像装置110によって撮像された撮像データから取得された各ステップ4の画像データに基づいて各ステップ4の破損の有無を判定することができる処理部121を有している。また、処理部121は、画像データに2値化処理をして検査データを生成し、検査データに基づいて各ステップ4の破損の有無を判定する。これにより、照明装置111で照らされたステップ4を撮像するためステップ4の破損をより明確に画像データに映し出すことができる。従って、各ステップ4の破損の有無をより確実に判定することができる。また、照明装置111で照らされた状態のステップ4の画像データでは、照明装置111の光に対して反射している部分と、反射してない部分がより強調されているため、2値化処理した検査データがより鮮明になる。従って、各ステップ4の破損の有無をより確実に判定することができる。また、機械室20内あって、光源が照明装置111のみであるという一定の条件に基づいた画像データを得ることができる。従って、乗客の有無による影響、及び自然光、屋内照明、屋外照明等の乱反射の影響を受けることが少ない。よって、各ステップ4の破損の有無をより確実に判定することができる。
【0068】
実施の形態1のエスカレーター1のステップ監視装置100は、処理装置120は、ステップ4の正常な状態を撮像した静止画の画像のデータを2値化処理をした標準データを記憶することができる記憶部122を更に有している。また、処理部121は、検査データと、標準データと、を比較することでステップ4の破損の有無を判定する。これにより、正常な状態のステップと比較することができ、各ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。
【0069】
実施の形態1の乗客コンベアのステップ監視装置100は、各ステップ4が特定の位置を通過したことを検知する検出器112を、更に備え、処理部121は、検出器112から出力された信号に基づいた静止画である画像データを取得する。また、処理部121は、取得した画像データに2値化処理をすることで静止画である検査データを生成する。これにより、標準データと静止画である検査データとを比較することで、より精密な比較が可能である。従って、各ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。
【0070】
実施の形態1の乗客コンベアのステップ監視装置100は、処理部121は、検出器112から出力された信号とステップ4の移動速度とに基づいて画像データを取得する。これにより、ステップ4の移動速度が可変な場合にも、静止画である検査データを生成することができる。従って、各ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。
【0071】
実施の形態1の乗客コンベアのステップ監視装置100における処理部121は、撮像装置110によって撮像された撮像データから取得された各ステップ4の識別部画像データに基づいて、少なくとも1つのステップ4に付された識別部4aを認識する。また、処理部121は、識別部4aが設けられたステップを特定ステップ4Aとして特定することができる。処理部121は、特定ステップ4Aの位置を基準として破損が検出されたステップ4の位置を把握することができる。これにより、破損したステップ4の位置が容易に把握することができる。従って、破損しているステップ4に対する調査、修理、及び交換といった作業を迅速に実施することができる。
【0072】
実施の形態1の乗客コンベアは、ステップ監視装置100を備えている。これにより、各ステップ4の破損の有無を確実に判定することができる。
【0073】
なお、実施の形態1におけるステップ監視装置100では、踏板41の破損の発生を標準データと検査データとの白い部分と黒い部分との面積比の違いに基づいて判断している。しかし、これに限られたものではない。破損の発生は、標準データと検査データとの適宜な違いに基づいて判断することができる。例えば、破損の発生は、標準データと検査データとの黒い部分の面積の違い、又は白い部分面積の違いに基づいて判断することができる。
【0074】
また、実施の形態1におけるステップ監視装置100では、画像処理タイミング、及び識別タイミングにおいて動画データである撮像データから静止画データである画像データを抽出して取得している。しかし、これに限られたものではない。例えば、撮像装置110で撮像する画像データを静止画データとしてもよい。この場合、例えば、撮像装置110は、画像処理タイミング、及び識別タイミングに基づいて撮像した静止画を撮像データとしてもよい。
【0075】
また、実施の形態1におけるステップ監視装置100では、1つの標準データ、及び1つの識別部標準データが記憶部122に記憶されている。しかし、これに限られたものではない。例えば、複数の標準データ、及び複数の識別部標準データが記憶部122に記憶されていてもよい。この場合、各標準データ、及び各識別部標準データに示されたステップ4の姿勢は互いに異なるものである。
【0076】
実施の形態1のエスカレーター1のステップ監視装置100では、記憶部122には、2つ以上の標準データが予め記憶されており、各標準データのそれぞれには、異なる姿勢のステップ4が示されている。また、処理部121は、各標準データに対応する検査データを生成し、各前記標準データと対応する検査データとを比較することでステップ4の破損の有無を判定する。これにより、より多くの検査データに基づいてステップ4の破損の有無を判定することができる。従って、特定の姿勢をとったステップ4では発見できなかったステップ4の破損が発見できる可能性が高まる。従って、各ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。
【0077】
実施の形態2.
実施の形態2におけるステップ監視装置100では、処理部121が動画データである検査データを生成する点で、実施の形態1におけるステップ監視装置100と異なる。これ以外の構成では、実施の形態2におけるステップ監視装置100と実施の形態1におけるステップ監視装置100とは同一の構成であるため、説明を省略する。
【0078】
撮像装置110では、複数のステップ4の移動経路上の移動を動画である撮像データとして撮像することができる。撮像装置110から入力された撮像データを画像データとして、順次2値化処理を実施し、動画データである検査データを生成する。
【0079】
記憶部122には、実施の形態1と同様に、正常な状態の踏板41を示す静止画であって、2値化処理された画像のデータである標準データが予め記憶されている。処理部121は、記憶部122に記憶されている標準データと、生成された動画である検査データとを比較することができる。
【0080】
このとき、動画データである検査データには、移動によって姿勢が変化する各ステップ4が示されている。即ち、検査データでは、反転部を通過する各ステップ4の姿勢は、刻一刻と変化している。一方、標準データは、静止画であるため、標準データでは、特定の姿勢でのステップ4が示されている。このため、検査データで示される各ステップ4は、ある一瞬において標準データに示されたステップ4の姿勢と一致し、次の瞬間には、異なる姿勢となり、移動していく。
【0081】
ここで、処理部121は、検査データと標準データとの一致率を常に算出することができる。一致率とは、その時点における検査データと標準データとが一致する割合である。
【0082】
前述の通り、検査データは移動する各ステップ4を撮像した撮像データに基づくものであるから、検査データと、標準データとの一致率を逐次算出すると、一致率は、周期的に変化するものとなる。即ち、検査データに示されたあるステップ4の姿勢が標準データに示されたステップ4の姿勢と等しくなった時点で一致率は、頂点となり、その後、当該ステップ4が移動して姿勢が変化していくことで一致率は、下降していく。検査データ上で次のステップ4が示され移動していくと、一致率は、再び頂点となり、その後下降していく。検査データにおいて各ステップ4が移動していくことで、一致率は、このように周期的に繰り返し変化する。
【0083】
周期的に変化する一致率において周期的な変化毎の最も高い一致率を最高一致率とする。処理部121は、順次計測される複数の最高一致率の変化を観察することで、ステップ4の破損の有無を判定することができる。
【0084】
破損が発生しているステップ4では、標準データと姿勢が同じであっても破損が発生しているために最高一致率が低下する。破損が発生しているステップ4の最高一致率は、破損が発生していないステップ4の最高一致率よりも低くなる。このことから、処理部121は、最高一致率の変化を観察することで破損の発生しているステップ4を検出することができる。即ち、処理部121は、ステップ4における破損の有無を判定することができる。
【0085】
処理部121は、破損が発生しているステップ4の検出と同様の構成を用いて、特定ステップ4Aの識別部4aを検出し、特定ステップ4Aの位置を特定することができる。即ち、処理部121は、識別部標準データと、動画である識別部検査データとの一致率を逐次算出する。
【0086】
識別部4aの検出においても、一致率は、周期的に繰り返し変化する。処理部121は、最高一致率を観察し、最も高い最高一致率に対応するステップ4を特定ステップ4Aとして把握することができる。
【0087】
これにより、処理部121は、ステップ4の破損の有無を判定するとともに、特定ステップ4Aの位置を基準として、破損が発生したステップ4の位置を把握することができる。
【0088】
実施の形態2のエスカレーター1のステップ監視装置100は、画像データは、撮像装置110によって撮像された動画であって、処理部121は、画像データを2値化処理することで動画である検査データを生成する。また、処理部121は、検査データと、標準データとが一致する割合である一致率を動画である前記検査データに基づいて逐次算出し、一致率が周期的に変化する毎に得られる最高一致率の変化に基づいてステップ4の破損を検出することができる。これにより、動画に基づいた画像データを扱えることで、移動するステップ4について画像データとするタイミングを考慮する必要がない。従って、移動する各ステップ4において画像処理タイミングを算出することが難しい場合に、動画データを用いて的確に各ステップ4の破損の有無を判定することができ、各ステップ4の破損の有無をより確実に判定することができる。また、従って、移動するステップ4について画像データとするタイミングを計る機器を不要とし、機器の簡略化が図れる。
【0089】
なお、実施の形態2におけるステップ監視装置100では、検出器112を備えなくてもよい。
【0090】
また、実施の形態2におけるステップ監視装置100では、1つの標準データ、及び1つの識別部標準データが記憶部122に記憶されている。しかし、これに限られたものではない。例えば、複数の標準データ、及び複数の識別部標準データが記憶部122に記憶されていてもよい。この場合、各標準データ、及び各識別部標準データに示されたステップ4の姿勢は互いに異なるものである。
【0091】
実施の形態2におけるステップ監視装置100では、記憶部122には、2つ以上の標準データが予め記憶されており、各標準データのそれぞれには、異なる姿勢のステップ4が示されている。また、処理部121は、各標準データと検査データとの一致率を動画である検査データに基づいて逐次算出する。これにより、より多くの姿勢をとったステップ4に対してステップ4の破損の有無を判定することができる。従って、特定の姿勢をとったステップ4では発見できなかったステップ4の破損が発見できる可能性が高まる。従って、各ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。
【0092】
実施の形態3.
実施の形態3におけるステップ監視装置100では、2値化処理の方法が実施の形態1における2値化処理の方法と異なる。実施の形態3におけるステップ監視装置100のそれ以外の構成は、実施の形態1におけるステップ監視装置100と等しいため説明を省略する。
【0093】
本実施の形態においても、図6に示されるように、実施の形態1と同様に、処理部121は、画像データに対してグレースケール処理を実施した後、画像データを2値化処理する。しかし、本実施の形態では、処理部121は、グレースケール処理された画像データに対して特定の加工を施す。
【0094】
処理部121は、グレースケール処理された画像データについて、まず、当該画像データを複製し、複数の一次画像データを生成する。次いで、複数の一次画像データのそれぞれを互いに位置をずらせて重ね合わせて1つの二次画像データを作成する。
【0095】
例えば、踏板41の表面に形成された櫛歯における溝の方向と直交する方向に一次画像データを位置をずらせて重ねる。これにより、複数の一次画像データを重ね合わせて生成された二次画像データでは、踏板41の表面は、櫛歯の溝と突出部とが重なり、濃淡のあるグレー、又は黒で示される。
【0096】
破損の部分については、一次画像データでは、白で示されていた。上記の通りずらせて複数の一次画像データを重ね合わせることで、白で示されている部分が、踏板41の表面のグレー、又は黒で示される部分と重なれば、その部分は、二次画像データでは、グレー、又は黒で示される。一方、破損の部分である白で示された部分が、他の踏板41の表面のグレー、又は黒で示される部分と重ならなければ、一次画像データで白で示されていた部分は、データ二次画像データでもそのまま白で示される。
【0097】
処理部121によって、上記のように二次画像データが生成される。その後、二次画像データは、処理部121によって2値化処理が施され、検査データが生成される。
【0098】
本実施の形態において、2値化処理において特定の閾値を設定することで、二次画像データから生成された検査データでは、踏板41のグレー、及び黒で示された部分は、黒で示され、破損の一部である白い部分は白で示されるように処理される。
【0099】
従って、破損の発生していないステップ4における検査データは、黒一色となり、破損の発生しているステップ4における検査データは、白い部分が存在することとなる。このように、処理装置120は、検査データに白い部分が存在していることからステップ4に破損が発生していることを検出することができる。従って、処理装置120は、ステップ4の破損の有無を判定することができる。
【0100】
ステップ4の破損の有無を判定した構成を、識別部4aの把握に適用することができる。その場合には、2値化処理においても黒に変換されないような識別部4aの外形、及び模様を採用することができる。
【0101】
実施の形態3のエスカレーター1のステップ監視装置100では、処理部121は、グレースケール処理した画像データを複製して複数の一次画像データを作成する。また、処理部121は、複数の一次画像データのそれぞれを互いに位置をずらせて重ねあわて1つの二次画像データを作成する。また、処理部121は、二次画像データを画像データとして2値化処理を施すことで検査データを生成する。これにより、検査データのみでステップ4の破損の有無を判定することができ、標準データ、及び標準データと検査データとの比較が不要となる。従って、標準データの記憶領域を省略することができ、標準データと検査データとの比較に対する演算負荷を低減することができる。従って、処理装置120において高い性能を必要としなくてもよい。
【0102】
なお、実施の形態1、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100では、画像処理タイミング、及び識別タイミングのそれぞれは、ステップ4毎に1回算出されている。このため、ステップ4毎の画像処理タイミング、及び識別タイミングの算出ための処理部121の演算負荷を低くすることができ、安定的な制御を行うことができる。また、処理部121の演算負荷を低く抑えることができていることから処理部121に高性能演算素子を用いる必要がなく、ステップ監視装置100の新規設置、及び保守作業における交換に有利となる。
【0103】
また、実施の形態1、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100では、画像処理タイミング、及び識別タイミングのそれぞれは、ステップ4毎に1回算出されている。しかし、これに限られたものではない。画像処理タイミング、及び識別タイミングのそれぞれをステップ4毎に複数回算出してもよい。例えば、ステップ4毎に画像処理タイミングを2回算出することで、ステップ4の踏板41について互いに異なる画角の2枚の画像データを取得することができる。従って、ステップ4の破損の有無を異なる角度から判定することができる。従って、ステップ4の破損の有無を更に確実に更に確実に判定することができる。また、例えば、1つのステップ4に対して識別タイミングを2回算出とすることで、識別部4aについて互いに異なる画角の2枚の識別部画像データを取得することができ、識別部4aをより高精度で把握することができる。
【0104】
また、本実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100では、1つの撮像装置110、及び一つの照明装置111を有している。しかし、これに限られたものではない。例えば、複数の撮像装置110、及び複数の照明装置111を有していてもよい。これにより、踏板41について互いに異なる画角の2枚の画像データを取得することができ、ステップ4の破損の有無を異なる角度から判定することができる。従って、ステップ4の破損の有無を更に確実に判定することができる。同様に、識別部4aについて互いに異なる画角の2枚の識別部画像データを取得することができ、識別部4aをより高精度で把握することができる。
【0105】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100において、2値化処理後の破損した部分が白で表現されるか、黒で表現されるかは、当業者が適宜選択することができる。画像データを2値化処理した結果に基づいて、処理部121が破損を検出しやすいものであればよい。
【0106】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100では、踏板41の破損の発生を踏板41の全面について判断している。しかし、これに限られたものではない。例えば、踏板41の表面を複数の区画に分けた上で、当該個々の区画毎に破損の発生を判断してもよい。これにより、踏板41の破損がどの区画に発生しているかという情報を得ることができる。従って、事前に破損した区画の情報が得られ、破損したステップ4の修理、及び交換に適切、かつ迅速に対応することができる。
【0107】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100は、特定ステップ4Aの位置を把握している。しかし、これに限られたものではない。ステップ監視装置100は、特定ステップ4Aの位置を把握しなくともよい。例えば、特定ステップ4Aを備えていないエスカレーター1に適用するステップ監視装置100においては、特定ステップ4Aを特定する構成を省略してもよい。即ち、ステップ監視装置100は、ステップ4の破損の有無を判定し、破損があると判定した場合には、その情報だけを外部に出力してもよい。これにより、ステップ監視装置100の簡略化が可能であり、設置コストを下げることができる。また、特定ステップ4Aを備えていないエスカレーター1に対してもステップ監視装置100を適用することができる。
【0108】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100では、ステップ監視装置100で収集した情報をエスカレーター制御装置7に送信している。しかし、これに限られたものではない。ステップ監視装置100は、ステップ監視装置100で収集した情報をエスカレーター制御装置7以外の機器に出力してもよい。例えば、入出力部123にインターネット回線を接続し、インターネット回線を介して、当該エスカレーターを管理している機器に直接送信してもよい。これにより、所望の装置にステップ監視装置100で収集した情報を送信することができ、ステップ4の破損の発生に対してより迅速に対応することができる。
【0109】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるステップ監視装置100は、上階UFの機械室20に設置されている。しかし、これに限られたものではない。ステップ監視装置100は、下階LFの機械室20に設置されてもよい。
【0110】
また、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3におけるエスカレーター1は、動く歩道であってもよい。即ち、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3における技術思想は、乗客コンベア全般に用いることができる。
【0111】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0112】
(付記1)
乗客コンベアの機械室内に設置され、無端状に連結された複数のステップの移動経路の一部が収まる範囲を撮像範囲として撮像する撮像装置と、
前記撮像範囲を照らす照明装置と、
処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記撮像装置によって撮像された撮像データから取得された各前記ステップの画像データに基づいて各前記ステップの破損の有無を判定することができる処理部を有し、
前記処理部は、前記画像データに2値化処理をして検査データを生成し、前記検査データに基づいて各前記ステップの破損の有無を判定する、
乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記2)
前記処理部は、グレースケール処理が施された前記画像データを複製して複数の一次画像データを作成し、前記複数の一次画像データのそれぞれを互いに位置をずらせて重ねあわて1つの二次画像データを作成し、
前記処理部は、前記二次画像データを前記画像データとして2値化処理をして前記検査データを生成する、
付記1に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記3)
前記処理装置は、前記ステップの正常な状態を撮像した静止画のデータを2値化処理をした標準データを記憶することができる記憶部を更に有し、
前記処理部は、前記検査データと、前記標準データと、を比較することで前記ステップの破損の有無を判定する、
付記1に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記4)
前記記憶部には、2つ以上の前記標準データが予め記憶されており、
各前記標準データのそれぞれには、異なる姿勢の前記ステップが示されており、
前記処理部は、各前記標準データに対応する前記検査データを生成し、各前記標準データと対応する前記検査データを比較することで前記ステップの破損の有無を判定する、
付記3に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記5)
各前記ステップが特定の位置を通過したことを検知する検出器を、更に備え、
前記処理部は、前記検出器から出力された信号に基づいた静止画である前記画像データを取得し、取得した前記画像データに2値化処理をすることで静止画である前記検査データを生成する、
付記3または付記4に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記6)
前記処理部は、前記検出器から出力された信号と前記ステップの移動速度とに基づいて前記画像データを取得する、
付記5に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記7)
前記画像データは、前記撮像装置によって撮像された動画であって、
前記処理部は、前記画像データを2値化処理することで動画である前記検査データを生成し、
前記処理部は、前記検査データと、前記標準データとが一致する割合である一致率を動画である前記検査データに基づいて逐次算出し、前記一致率が周期的に変化する毎に得られる最高一致率の変化に基づいて前記ステップの破損を検出することができる、
付記3に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記8)
前記記憶部には、2つ以上の前記標準データが予め記憶されており、
各前記標準データのそれぞれには、異なる姿勢の前記ステップが示されており、
前記処理部は、各前記標準データと前記検査データとの前記一致率を動画である前記検査データに基づいて逐次算出する、
付記7に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記9)
前記処理部は、前記撮像装置によって撮像された前記撮像データから取得された各前記ステップの識別部画像データに基づいて、少なくとも1つの前記ステップに付された識別部を認識することで前記識別部が設けられた前記ステップを特定ステップとして特定することができ、
前記処理部は、前記特定ステップの位置を基準として前記破損が検出された前記ステップの位置を把握することができる、
付記1から付記9のいずれか一項に記載の乗客コンベアのステップ監視装置。
(付記10)
付記1から付記9のいずれか一項に記載のステップ監視装置を備えた乗客コンベア。
【符号の説明】
【0113】
1 エスカレーター、2 トラス、4 ステップ、4A 特定ステップ、4B 通常ステップ、4a 識別部、5 欄干、7 エスカレーター制御装置、8 検出器、10 乗降口、11 床板、20 機械室、41 踏板、41X 破損、42 ブラケット、43 ライザ、100 ステップ監視装置、110 撮像装置、111 照明装置、112 検出器、120 処理装置、121 処理部、122 記憶部、123 入出力部、300 処理回路、310 処理回路、311 プロセッサ、312 メモリ、LF 下階、UF 上階。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8