(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130474
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法および予測方法、鋼管接合部のダイアフラム板厚設計方法ならびに鋼管-ダイアフラム仕口
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20240920BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/24 P
E04B1/24 M
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040231
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 光
(72)【発明者】
【氏名】金城 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大庭 諒介
(72)【発明者】
【氏名】森岡 宙光
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB16
2E125BB01
2E125BD01
2E125CA90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】寸法の異なる鋼管を通しダイアフラムを介して接合する際に簡易にかつ精度よく予測できるダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法および予測方法を提供する。
【解決手段】寸法の異なる鋼管を、無偏心配置、一方向偏心配置または二方向偏心配置で、通しダイアフラムを介して接合した接合部につき、あらかじめ、平面視で、ダイアフラムの板厚中央面上であって、ダイアフラムの縁部の線上または頂点、上側部材の平板部の内周面上、上側部材の角部の内周面上、下側部材の平板部の板厚中央線上、下側部材の角部の板厚中央線上、および、上側部材の内部に設けられた節点の4点以上を選択し、選択した節点を結ぶ複数の直辺からなる降伏線を有する接合部の解析モデルを設定し、上側部材にモーメントと軸力を付加した場合について、その際に生じる変位に伴う降伏線の歪エネルギーの総和と外力による仕事とに基づきダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管または円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺または径の長さが短い角形鋼管または円形鋼管からなる上側部材とを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、
あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上に複数の節点を設け、該節点の4点以上を選択し、前記接合部の解析モデルを設定し、
前記上側部材の対向する一対の箇所のうち一方の箇所に対して下向き荷重を付加し、他方の箇所に対して同等の上向き荷重を付加し、
その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、ダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項2】
角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材の径より対角線の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、または、角形鋼管からなる下側部材と該下側部材の辺より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、
前記下側部材のすべての外周が前記上側部材のすべての外周より外側になるように配置し、
前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁部を通る線上、前記下側部材の平板部の板厚中央線上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の平板部の内周面上、前記上側部材の角部の内周面上、および、前記上側部材の内部にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択し、
a)前記上側部材が前記角形鋼管の場合は前記上側部材の対向する一対の平板部のうち一方の平板部に対して下向き荷重を付加し、他方の平板部に対して同等の上向き荷重を付加し、または、
b)前記上側部材が前記円形鋼管の場合は前記上側部材の円周の直径の一端に下向き荷重を付加し、他端に同等の上向き荷重を付加して、
前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、
その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、請求項1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項3】
前記解析モデルとして、前記下側部材および前記上側部材を角形鋼管とし、
前記ダイアフラムの縁の一辺上の点をA、
前記下側部材の角部であってAに近い2つのうちの一の角部の板厚中央線上の点をB、
Aに最も近い前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をC、
Aに近い前記下側部材の角部のうちのBを含まない角部の板厚中央線上の点をD、
Bに最も近い前記上側部材の角部の内周面上の点をE、
Aに最も近い前記上側部材の平板部の内周面上の点をF、
Dに最も近い前記上側部材の角部の内周面上の点をG、
Aを含むダイアフラム縁に直交するダイアフラム縁のうち、Bに最も近いダイアフラム縁上の点をH、
Aを含むダイアフラム縁に直交する前記下側部材の平板部のうち、Bに最も近い平板部の板厚中央線上の点をI、
Aを含むダイアフラム縁に直交する前記上側部材の平板部のうち、Bに最も近い平板部の内周面上の点をJ、
前記上側部材の内部の点をK、
Jを含む平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をL、
Iを含む平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をM、
Hを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラム縁上の点をN、
Jに近い前記上側部材の角部のうちのEを含まない角部の内周面上の点をO、
Fを含む平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をP、
Lに近い前記上側部材の角部のうちのGを含まない角部の内周面上の点をQ、
Iに近い前記下側部材の角部のうちのBを含まない角部の板厚中央線上の点をR、
Cを含む平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をS、
Mに近い前記下側部材の角部のうちのDを含まない角部の板厚中央線上の点をT、
Aを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラムの縁上の点をU
としたとき、
前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、
BC、BE、BI、EC、EF、EJ、DC、DG、DM、GC、GF、GL、QL、QP、QS、TM、TQ、TS、OJ、OP、OS、RI、RO、RSの計24本の降伏線が生じたとする、請求項2に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項4】
角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材の径より対角線の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、または、角形鋼管からなる下側部材と該下側部材の辺より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、
前記下側部材の外面の一部と前記上側部材の外面の一部とが共通に外接する一平面を有するように配置し、
前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁部を通る線上、前記下側部材の平板部の板厚中央線上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の平板部の内周面上、および、前記上側部材の角部の内周面上にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択し、
a)前記角形鋼管では前記一平面に対向する前記上側部材の一の平板部に対して下向き荷重を付加し、前記上側部材の他の平板部に対して同等の上向き荷重を付加し、または、
b)円形鋼管では前記一平面に接する前記上側部材の円周上の点を一端とする直径の他端に下向き荷重を付加し、前記一端に同等の上向き荷重を付加して、
前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、
その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、請求項1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項5】
前記解析モデルとして、前記下側部材および前記上側部材を角形鋼管とし、
前記一平面上に揃えた上下部材の平板部に直交する一のダイアフラム縁上の点をA、
Aに近い前記下側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に近い角部の板厚中央線上の点をB、
Aに最も近い下側部材の平板部の板厚中央線上の点をC、
Aに近い前記下側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部から遠い角部の板厚中央線上の点をD、
前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上でAに近い位置の点をE、
Aに近い前記上側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に遠い角部の内周面上の点をF、
前記一平面上に揃えた上下部材の平板部に最も近いダイアフラム縁上の点をG、
前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上で、EよりAから遠い位置の点をH、
前記一平面上に揃えた前記上側部材の平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をI、
前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をJ、
Aを含むダイアフラム縁に直交するダイアフラム縁のうち、Gを含まないダイアフラム縁上の点をK、
前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上で、HよりAから遠い位置の点をL、
Jに近い前記上側部材の角部のうち、Fを含まない角部の内周面上の点をM、
前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に近い角部のうち、Bを含まない角部の板厚中央線上の点をN、
Cを含む前記下側部材の平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をO、
Kに近い前記下側部材の角部のうち、Dを含まない角部の板厚中央線上の点をP、
Aを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラム縁上の点をQ
としたとき、前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、
BC、BE、BF、CD、CF、DF、DJ、EF、EH、FI、MI、LM、LH、PM、PJ、ON、OM、NO、NL、NMの計20本の降伏線が生じたとする、請求項4に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項6】
角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材とを用い、前記下側部材の隣り合う平板部の外面と対応する前記上側部材の隣り合う平板部の外面とをそれぞれ同一の平面上に揃えて、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するにあたり、
前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁の縁上および頂点上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の角部の板厚中央線上、および、前記上側部材の角部の円弧の中心上にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択して、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部と対角位置にある前記上側部材の角部の板厚中央線をなす円弧の中心点に対して下向き荷重を付加し上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部に対して同等の上向き荷重を付加して前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、
その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、請求項1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項7】
前記解析モデルとして、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部の一方に接続し、前記2つの平板部に挟まれていない前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をA、
Aに近いダイアフラム縁のうち、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた平板部に近いダイアフラム縁上の点をB、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記下側部材の平板部のうち、Bに近い方の平板部の板厚中央線上の点をC、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部の板厚中央線上の点をD、
前記下側部材内部に張り出した前記上側部材の角部の板厚中央線をなす円弧の中心点をE、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた角部の対角位置にある前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をF、
Fに最も近いダイアフラム縁の頂点をG、
上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記下側部材の平板部のうち、Cを含まない平板部の板厚中央線上の点をH、
Hに近いダイアフラム縁上の点をI、
Aを含む角部と対角位置にある前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をJ
としたとき、
前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、AC、AE、AF、CD、CE、DE、EF、HE、HD、JF、JE、JHの計12本の降伏線が生じたとする、請求項6に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
【請求項8】
請求項1に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、所定の関係式に基づき、前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、ダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【請求項9】
請求項2に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式1の(1)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、
請求項8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【数1】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【請求項10】
請求項3に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、前記(1)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、請求項9に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【請求項11】
請求項4に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式2の(2)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、請求項8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【数2】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
U
l:下側部材の軸歪エネルギー、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【請求項12】
請求項5に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、前記(2)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、請求項11に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【請求項13】
請求項6に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式3の(3)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、請求項8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【数3】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
U
l:下側部材の軸歪エネルギー、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【請求項14】
請求項7に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、前記(3)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、請求項13に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法を用いて、前記ダイアフラム面外曲げ耐力を求め、上側部材に設計モーメントと設計軸力を与えた際に必要とされるダイアフラム面外曲げ耐力に対して、規格化された複数種類の板厚の鋼板から、必要とされる前記耐力を満たすのに十分な板厚の鋼板を前記ダイアフラム材料として選定する、鋼管接合部のダイアフラム板厚設計方法。
【請求項16】
請求項15に記載のダイアフラム板厚設計方法で設計したダイアフラムを用いて、角形鋼管または円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺または径の長さが短い角形鋼管または円形鋼管からなる上側部材とを接合した、鋼管-ダイアフラム仕口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法が異なる鋼管を通しダイアフラムを介して接合する際のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法および予測方法、鋼管接合部のダイアフラム板厚設計方法ならびに鋼管-ダイアフラム仕口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下柱で寸法の異なる角形鋼管の柱梁接合部においては、
図3に示すように、截頭角錐状のテーパー管8で接合部パネルを構成することが多い。
図3に示すようなテーパー管を用いる柱梁接合部は、柱-ダイアフラム仕口の耐力および剛性を確保しやすいという特徴がある。
【0003】
このテーパー管8については、接合部の剛性を確保することが容易である一方、高価かつ少量生産で流通に難がある。また、これを利用した接合部の溶接施工の自動化が困難である。近年、施工の省力化が求められるようになり、テーパー管8の使用が問題になりつつある。
【0004】
テーパー管8を用いずに上下で寸法の異なる柱を接合する方法として、
図2のように、下柱4と同寸法の角形鋼管を接合パネル3に用い、上下で寸法の異なる柱1、4を、ダイアフラム2、5を介して接合する工法がある。上ダイアフラム2の板厚が薄いと、上柱1が曲げを受けることにより上ダイアフラム2に大きな面外変形が生じる場合がある。その場合、上ダイアフラム2の剛性および耐力が落ちるため、ダイアフラム面外曲げ剛性および耐力の評価が必要である。
【0005】
特許文献1では、径の異なる上下柱を増厚ダイアフラムで接合する仕口のダイアフラム面外曲げ耐力を予測するにあたり、上柱に軸力Nが作用する場合の、上部通しダイアフラム5の面外曲げ降伏曲げ耐力fMyを、降伏線理論を用い、上柱の軸力Nを反映させて求める方法を開示している。
【0006】
特許文献2では、径の異なる上下柱を増厚ダイアフラムで接合する仕口のダイアフラム面外曲げ剛性を予測するにあたり、ダイアフラムを複数の多角形要素で分割し、各多角形要素は各境界となる辺で弾性的に折れ曲がり可能に回転バネで連結されているとした解析モデルを用いて、与えた荷重に対する回転バネにおける曲げ変形とせん断変形を加算し、釣り合い条件からダイアフラムの剛性を求める方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-28997号公報
【特許文献2】特開2015-45211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
寸法の異なる上下柱を増厚ダイアフラムで接合する仕口について、特許文献1に記載するような設計式を用いることでダイアフラム面外曲げ耐力を計算し、耐力の面から必要ダイアフラム厚を求めることが可能である。しかし、角形鋼管の角部寸法(半径)を考慮せず、角部が正角の長方形として仮定しているため、角部寸法が大きい鋼管については精度が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、寸法の異なる角形鋼管を通しダイアフラムを介して接合する際に簡易にかつ精度よく予測できるダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法、鋼管接合部のダイアフラム板厚設計方法および鋼管-ダイアフラム仕口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]角形鋼管または円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺または径の長さが短い角形鋼管または円形鋼管からなる上側部材とを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上に複数の節点を設け、該節点の4点以上を選択し、前記接合部の解析モデルを設定し、前記上側部材の対向する一対の箇所のうち一方の箇所に対して下向き荷重を付加し、他方の箇所に対して同等の上向き荷重を付加し、その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、ダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[2]角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材の径より対角線の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、または、角形鋼管からなる下側部材と該下側部材の辺より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、前記下側部材のすべての外周が前記上側部材のすべての外周より外側になるように配置し、前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁部を通る線上、前記下側部材の平板部の板厚中央線上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の平板部の内周面上、前記上側部材の角部の内周面上、および、前記上側部材の内部にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択し、a)前記上側部材が前記角形鋼管の場合は前記上側部材の対向する一対の平板部のうち一方の平板部に対して下向き荷重を付加し、他方の平板部に対して同等の上向き荷重を付加し、または、b)前記上側部材が前記円形鋼管の場合は前記上側部材の円周の直径の一端に下向き荷重を付加し、他端に同等の上向き荷重を付加して、前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、上記1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[3]前記解析モデルとして、前記下側部材および前記上側部材を角形鋼管とし、前記ダイアフラムの縁の一辺上の点をA、前記下側部材の角部であってAに近い2つのうちの一の角部の板厚中央線上の点をB、Aに最も近い前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をC、Aに近い前記下側部材の角部のうちのBを含まない角部の板厚中央線上の点をD、Bに最も近い前記上側部材の角部の内周面上の点をE、Aに最も近い前記上側部材の平板部の内周面上の点をF、Dに最も近い前記上側部材の角部の内周面上の点をG、Aを含むダイアフラム縁に直交するダイアフラム縁のうち、Bに最も近いダイアフラム縁上の点をH、Aを含むダイアフラム縁に直交する前記下側部材の平板部のうち、Bに最も近い平板部の板厚中央線上の点をI、Aを含むダイアフラム縁に直交する前記上側部材の平板部のうち、Bに最も近い平板部の内周面上の点をJ、前記上側部材の内部の点をK、Jを含む平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をL、Iを含む平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をM、Hを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラム縁上の点をN、Jに近い前記上側部材の角部のうちのEを含まない角部の内周面上の点をO、Fを含む平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をP、Lに近い前記上側部材の角部のうちのGを含まない角部の内周面上の点をQ、Iに近い前記下側部材の角部のうちのBを含まない角部の板厚中央線上の点をR、Cを含む平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をS、Mに近い前記下側部材の角部のうちのDを含まない角部の板厚中央線上の点をT、Aを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラムの縁上の点をUとしたとき、前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、BC、BE、BI、EC、EF、EJ、DC、DG、DM、GC、GF、GL、QL、QP、QS、TM、TQ、TS、OJ、OP、OS、RI、RO、RSの計24本の降伏線が生じたとする、上記2に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[4]角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、円形鋼管からなる下側部材と該下側部材の径より対角線の長さが短い角形鋼管からなる上側部材との組み合わせ、または、角形鋼管からなる下側部材と該下側部材の辺より径の長さが短い円形鋼管からなる上側部材との組み合わせを用い、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するための解析モデルを作成する方法であって、前記下側部材の外面の一部と前記上側部材の外面の一部とが共通に外接する一平面を有するように配置し、前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁部を通る線上、前記下側部材の平板部の板厚中央線上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の平板部の内周面上、および、前記上側部材の角部の内周面上にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択し、a)前記角形鋼管では前記一平面に対向する前記上側部材の一の平板部に対して下向き荷重を付加し、前記上側部材の他の平板部に対して同等の上向き荷重を付加し、または、b)円形鋼管では前記一平面に接する前記上側部材の円周上の点を一端とする直径の他端に下向き荷重を付加し、前記一端に同等の上向き荷重を付加して、前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、上記1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[5]前記解析モデルとして、前記下側部材および前記上側部材を角形鋼管とし、前記一平面上に揃えた上下部材の平板部に直交する一のダイアフラム縁上の点をA、Aに近い前記下側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に近い角部の板厚中央線上の点をB、Aに最も近い下側部材の平板部の板厚中央線上の点をC、Aに近い前記下側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部から遠い角部の板厚中央線上の点をD、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上でAに近い位置の点をE、Aに近い前記上側部材の角部のうち、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に遠い角部の内周面上の点をF、前記一平面上に揃えた上下部材の平板部に最も近いダイアフラム縁上の点をG、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上で、EよりAから遠い位置の点をH、前記一平面上に揃えた前記上側部材の平板部に対向する前記上側部材の平板部の内周面上の点をI、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をJ、Aを含むダイアフラム縁に直交するダイアフラム縁のうち、Gを含まないダイアフラム縁上の点をK、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部の板厚中央線上で、HよりAから遠い位置の点をL、Jに近い前記上側部材の角部のうち、Fを含まない角部の内周面上の点をM、前記一平面上に揃えた前記下側部材の平板部に近い角部のうち、Bを含まない角部の板厚中央線上の点をN、Cを含む前記下側部材の平板部に対向する前記下側部材の平板部の板厚中央線上の点をO、Kに近い前記下側部材の角部のうち、Dを含まない角部の板厚中央線上の点をP、Aを含むダイアフラム縁に対向するダイアフラム縁上の点をQとしたとき、前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、BC、BE、BF、CD、CF、DF、DJ、EF、EH、FI、MI、LM、LH、PM、PJ、ON、OM、NO、NL、NMの計20本の降伏線が生じたとする、上記4に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[6]角形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材とを用い、前記下側部材の隣り合う平板部の外面と対応する前記上側部材の隣り合う平板部の外面とをそれぞれ同一の平面上に揃えて、通しダイアフラムを介して前記下側部材の上端全周および前記上側部材の下端全周を接合した接合部につき、前記通しダイアフラムの曲げ耐力を予測するにあたり、前記解析モデルとして、あらかじめ、平面視で、前記通しダイアフラムの板厚中央面上であって、前記通しダイアフラムの縁の縁上および頂点上、前記下側部材の角部の板厚中央線上、前記上側部材の角部の板厚中央線上、および、前記上側部材の角部の円弧の中心上にそれぞれ節点を設け、設けられた節点の4点以上を選択して、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部と対角位置にある前記上側部材の角部の板厚中央線をなす円弧の中心点に対して下向き荷重を付加し上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部に対して同等の上向き荷重を付加して前記上側部材にモーメントを与え、かつ、前記上側部材の軸に対して下向きに荷重を加算して付加して軸力を与えた場合について、その際に生じる各節点の変位に伴い、節点間を結ぶ線分上に降伏線を置く、上記1に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[7]前記解析モデルとして、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部の一方に接続し、前記2つの平板部に挟まれていない前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をA、Aに近いダイアフラム縁のうち、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた平板部に近いダイアフラム縁上の点をB、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記下側部材の平板部のうち、Bに近い方の平板部の板厚中央線上の点をC、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた前記上側部材の角部の板厚中央線上の点をD、前記下側部材内部に張り出した前記上側部材の角部の板厚中央線をなす円弧の中心点をE、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記2つの平板部に挟まれた角部の対角位置にある前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をF、Fに最も近いダイアフラム縁の頂点をG、上下部材の外面が同一平面上に揃えられた前記下側部材の平板部のうち、Cを含まない平板部の板厚中央線上の点をH、Hに近いダイアフラム縁上の点をI、Aを含む角部と対角位置にある前記下側部材の角部の板厚中央線上の点をJとしたとき、前記解析モデルの上側部材に作用する前記モーメントおよび前記軸力を与え、これによって各節点に変位が生じ、AC、AE、AF、CD、CE、DE、EF、HE、HD、JF、JE、JHの計12本の降伏線が生じたとする、上記6に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法。
[8]上記1に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、所定の関係式に基づき、前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、ダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[9]上記2に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式1の(1)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[10]上記3に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、
前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、下記(1)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記9に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[11]上記4に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式2の(2)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[12]上記5に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、下記(2)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記11に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[13]上記6に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび軸力による仕事との関係から、下記数式3の(3)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記8に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[14]上記7に記載の解析モデル化方法で設定した解析モデルを用いて、ダイアフラムの面外曲げ耐力を予測するにあたり、前記降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和を求め、前記歪エネルギーの総和と前記モーメントおよび前記軸力による仕事との関係から、下記(3)式に基づき前記通しダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する、上記13に記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法。
[15]上記8~14のいずれか1つに記載のダイアフラムの面外曲げ耐力の予測方法を用いて、前記ダイアフラム面外曲げ耐力を求め、上側部材に設計モーメントと設計軸力を与えた際に必要とされるダイアフラム面外曲げ耐力に対して、規格化された複数種類の板厚の鋼板から、必要とされる前記耐力を満たすのに十分な板厚の鋼板を前記ダイアフラム材料として選定する、鋼管接合部のダイアフラム板厚設計方法。
[16]上記15に記載のダイアフラム板厚設計方法で設計したダイアフラムを用いて、角形鋼管または円形鋼管からなる下側部材と該下側部材より辺または径の長さが短い角形鋼管または円形鋼管からなる上側部材とを接合した、鋼管-ダイアフラム仕口。
【0011】
【数1】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【0012】
【数2】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
U
l:下側部材の軸歪エネルギー、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【0013】
【数3】
ここで、M
y:通しダイアフラム面外曲げ耐力、
U
sum:降伏線に蓄えられる歪エネルギーの総和、
U
l:下側部材の軸歪エネルギー、
N
d:ダイアフラムに作用する軸力、
δ
N:軸力によるダイアフラムの変位、
θ
d:節点の変位により生じたダイアフラム回転角
を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法および予測方法によれば、通しダイアフラムで寸法の異なる角形鋼管や円形鋼管からなる上下部材を接合するにあたり、接合した仕口のダイアフラムの面外曲げ耐力を、上下部材の角部寸法などを考慮して簡便に精度良く評価することができる。特に、下側部材の外周を上側部材の外側に配置した場合、上下の部材の外面を一平面上に揃えた場合、および、上下の部材の隣り合う平板部の外面をそれぞれ同一の平面上に揃えた場合に、それぞれ適した解析モデルを設定することで簡便に精度よくダイアフラムの面外曲げ耐力を予測することができる。また、その予測方法により、必要な耐力を満たすのに十分な板厚の鋼板を選定することができる。また、その板厚のダイアフラムを用いて、鋼管-ダイアフラム仕口を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる寸法の異なる角形鋼管を同軸配置で通しダイアフラムに接合した接合構造のダイアフラム面外曲げ耐力評価のための解析モデルの構成を示す模式図であり、(a)は平面図を表し、(b)はX-X視断面図を表す。
【
図2】上記実施形態にかかるダイアフラムを上ダイアフラムとした柱梁接合構造を模式的に表す斜視図である。
【
図3】テーパー管を接合パネルに用いた従来の柱梁接合構造を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施形態にかかる、寸法の異なる角形鋼管を一方向偏心配置で通しダイアフラムに接合した接合構造のダイアフラム面外曲げ耐力評価のための解析モデルの構成を示す模式図であり、(a)は平面図を表し、(b)はX-X視断面図を表す。
【
図5】本発明の別の実施形態にかかる、寸法の異なる角形鋼管を二方向偏心配置で通しダイアフラムに接合した接合構造のダイアフラム面外曲げ耐力評価のための解析モデルの構成を示す模式図であり、(a)は平面図を表し、(b)はY-Y視断面図を表す。
【
図6】有限要素法(FEM)解析モデルの接合要素を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
本実施形態では、降伏線理論を用いて、通しダイアフラムで寸法の異なる角形鋼管からなる上下部材を接合するにあたり、接合した仕口のダイアフラムの面外曲げ耐力を予測する。通しダイアフラムは下側部材の板厚より大きい板厚の鋼板からなり、通しダイアフラムの縁の辺長は下側部材の辺長と同じか、または、より長いものを用いる。降伏線理論において、降伏線XYに蓄えられるエネルギーUXYは、降伏線の単位長さ当たりのモーメントをdM、降伏線長さをl、降伏線の回転角をθとすると、下記数式4の(4)式で表せる。
【0018】
【0019】
降伏線の単位長さ当たりのモーメントをdMは、降伏線の生じる材料の降伏応力度をσy、板厚をtとすると、最外縁降伏状態ではdM=(σy・t2)/6、前断面降伏状態ではdM=(σy・t2)/4である。
【0020】
上下で寸法の異なる部材を接合した接合部について、外力による仕事Eを求めると、外力による仕事は曲げ(モーメント)成分と軸力成分に分けられるので、曲げ成分をEM、軸力成分をENとすると、下記数式5の(5)式で表せる。
【0021】
【0022】
ここで、曲げについては、降伏モーメントをMy、ダイアフラム回転角をθdとして、下記数式6の(6)式で表せる。
【0023】
【0024】
軸力については、軸力をNd、ダイアフラム軸力変位をδNとして、下記数式7の(7)式で表せる。
【0025】
【0026】
<第一実施形態>
第一の実施形態として、
図1に示す、角形鋼管からなる下側部材3と下側部材3より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材1とを用い、下側部材3のすべての平板部の外面が上側部材1のすべての平板部の外面より外側になるように配置(無偏心配置)し、通しダイアフラム2を介して下側部材3の上端全周および上側部材1の下端全周を接合した接合部につき、通しダイアフラム2の曲げ耐力を予測することを検討する。ここで、「辺の長さが短い」とは、角形鋼管の断面が略正方形であれば一辺の長さで比較し、略長方形であれば長辺どうしおよび短辺どうしの長さで比較する。以下に同じ。
図1の例では、下側部材3と上側部材1との軸心を相互に一致させて、いわゆる同軸配置とした。
解析モデルを設定するにあたり、平面視で、通しダイアフラム2の板厚中央面上に、節点A~Uの直交座標(x、y、z)を下記数式8のように定める。ここで、軸心位置を原点(0、0、0)と置く。
【0027】
【0028】
ここで、Bcu:上側部材1の辺長、tcu:上側部材1の板厚、Bcl:下側部材3の辺長、tcl:下側部材3の板厚、x:上側部材1の曲げ軸-軸芯間距離、ru_out:上側部材1の角部外周半径、ru_in:上側部材1の角部内周半径、rl_out:下側部材3の角部外周半径、rl_mid:下側部材3の角部板厚中央線の半径、δ1:上側部材1の引張側節点変位、δ2:上側部材1の圧縮側節点変位、ld:通しダイアフラム2の突出長さであり、δ1とδ2の関係およびB2は、下記数式9の(8)式および(9)式で表される。
【0029】
【0030】
本実施形態の内力による歪エネルギーUを求めると、Uは降伏線9である線分BC、BE、BI、EC、EF、EJ、DC、DG、DM、GC、GF、GL、QL、QP、QS、TM、TQ、TS、OJ、OP、OS、RI、RO、RSに蓄えられる歪エネルギーの合計Usumであり、下記数式10の(10)式となる。なお、各降伏線9に蓄えられる歪エネルギーの計算にあたっては要素境界10を考慮する。
【0031】
【0032】
外力による仕事Eは、上記(5)式、(6)式および(7)式で求めることができる。ただし、ダイアフラム回転角θd、ダイアフラム軸力変位δNおよび軸力Ndは下記数式11のそれぞれ(11)式、(12)式および(13)式である。式中の、n:軸力比、σyc:上側部材1の降伏応力度、Acu:上側部材1の断面積とする。
【0033】
【0034】
<第二実施形態>
第二の実施形態として、
図4に示す、角形鋼管からなる下側部材3と下側部材3より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材1とを用い、下側部材3の一の平板部の外面と上側部材1の一の平板部の外面とを一平面上に揃えて、いわゆる一方向偏心配置とし、通しダイアフラム2を介して下側部材3の上端全周および上側部材1の下端全周を接合した接合部につき、通しダイアフラム2の曲げ耐力を予測することを検討する。
解析モデルを設定するにあたり、平面視で、通しダイアフラム2の板厚中央面上に、節点A~Qの直交座標(x、y、z)を下記数式12のように定める。ここで、下側部材3の軸心位置を原点(0、0、0)と置く。
【0035】
【0036】
ここで、Bcu:上側部材1の辺長、tcu:上側部材1の板厚、Bcl:下側部材3の辺長、tcl:下側部材3の板厚、x:上側部材1の曲げ軸-軸芯間距離、ru_out:上側部材1の角部外周半径、ru_in:上側部材1の角部内周半径、rl_out:下側部材3の角部外周半径、rl_mid:下側部材3の角部板厚中央線の半径、δ1:上側部材1の引張側節点変位、δ2:上側部材1の圧縮側節点変位、ld:通しダイアフラム2の突出長さであり、B2は上記(9)式で、δ1とδ2の関係は下記数式13の(14)式で表される。
【0037】
【0038】
本実施形態の内力による歪エネルギーUを求めると、Uは降伏線9である線分BC、BE、BF、CD、CF、DF、DJ、EF、EH、FI、MI、LM、LH、PM、PJ、ON、OM、NO、NL、NMに蓄えられる歪エネルギーおよび下側部材3の軸歪エネルギーの合計となる。まず、降伏線9に蓄えられる歪エネルギーの総和Usumは、下記数式14の(15)式となる。なお、各降伏線9に蓄えられる歪エネルギーの計算にあたっては要素境界10を考慮する。
【0039】
【0040】
一方、
図4の軸歪領域11に示すように、下側部材3の軸歪エネルギーU
lは下記数式15の(16)式となる。
【0041】
【0042】
したがって、内力Uの合計は下記数式16の(17)式となる。
【0043】
【0044】
外力による仕事Eは、上記(5)式、(6)式および(7)式で求めることができる。ただし、ダイアフラム回転角θdは上記(11)式とし、軸力Ndは上記(13)式とし、ダイアフラム軸力変位δNは下記数式17の(18)式である。
【0045】
【0046】
<第三実施形態>
第三の実施形態として、
図5に示す、角形鋼管からなる下側部材3と下側部材3より辺の長さが短い角形鋼管からなる上側部材1とを用い、下側部材3の隣り合う平板部の外面と対応する上側部材1の隣り合う平板部の外面とをそれぞれ同一の平面上に揃えて、いわゆる二方向偏心配置とし、通しダイアフラム2を介して下側部材3の上端全周および上側部材1の下端全周を接合した接合部につき、通しダイアフラム2の曲げ耐力を予測することを検討する。
解析モデルを設定するにあたり、平面視で、通しダイアフラム2の板厚中央面上に、節点A~Gの直交座標(x、y、z)を下記数式18のように定める。ここで、下側部材の軸心位置を原点(0、0、0)と置く。
【0047】
【0048】
ここで、Bcu:上側部材1の辺長、tcu:上側部材1の板厚、Bcl:下側部材3の辺長、tcl:下側部材3の板厚、x:上側部材1の曲げ軸-軸芯間距離、ru_out:上側部材1の角部外周半径、rl_out:下側部材3の角部外周半径、rl_mid:下側部材3の角部板厚中央線の半径、δ1:上側部材1の引張側節点変位、δ2:上側部材1の圧縮側節点変位、ld:通しダイアフラム2の突出長さであり、Lcd、Lcd1、Lcd2およびδ2は下記数式19のそれぞれ(19)式、(20)式、(21)式および(22)式で表される。
【0049】
【0050】
本実施形態の内力による歪エネルギーUを求めると、Uは降伏線9である線分AC、AE、AF、CD、CE、DE、EF、HE、HD、JF、JE、JHに蓄えられる歪エネルギーおよび下側部材の軸歪エネルギーの合計となる。まず、降伏線に蓄えられるエネルギーUsumは、下記数式20の(23)式となる。なお、各降伏線9に蓄えられる歪エネルギーの計算にあたっては要素境界10を考慮する。
【0051】
【0052】
一方、
図5の軸歪領域11に示すように、下側部材3の軸歪エネルギーU
lは下記数式21の(24)式となる。
【0053】
【0054】
したがって、内力による歪エネルギーUの合計は上記(17)式となる。
【0055】
外力による仕事Eは、上記(5)式、(6)式および(7)式で求めることができる。ただし、ダイアフラム回転角θd、ダイアフラム軸力変位δNおよび軸力Ndは下記数式22のそれぞれ(25)式、(26)式および(27)式である。式中の、n:軸力比、σyc:上側部材1の降伏応力度、Acu:上側部材1の断面積とする。
【0056】
【0057】
<ダイアフラムの面外曲げ耐力の予測>
外力仕事Eと、上記第一~第三の各実施形態それぞれの軸配置形式について計算した内力による歪エネルギーUから降伏モーメントを求めると、E=Uであることから、下記数式23の(28)式が導かれる。
【0058】
【0059】
ただし、上側部材1の曲げ軸-軸芯間距離xについては、下記数式24の(29)式の関係を満たすものとする。
【0060】
【0061】
上記実施例では、角形鋼管を上下部材とする例を示したが、円形鋼管を上下部材として、または角形鋼管と円形鋼管を上下部材として組み合わせて用いることもできる。上下部材に円形鋼管を用いる場合は,円形鋼管板厚中央面上または内周面上の節点を例えば円周方向中心角で45°ごとに取る等の対応により適用できる。
【実施例0062】
図6に示すように、寸法の異なる上下部材1、3を通しダイアフラム2を介して接合した接合部を対象として、上側部材1頂部に強制変位を与えることで単調載荷する有限要素法(FEM)を用いた解析を実施した。解析モデルリストを表1に示す。同軸配置、一方向偏心配置および二方向偏心配置のそれぞれについて、上側部材1は□-350×350×25(JBCR385)、□-450×450×25(JBCR385)および□-850×850×50(BCP325)の角形鋼管を用い、下側部材3は□-500×500×25(JBCR385)および□-1000×1000×50(BCP325)の角形鋼管を用いた。ここで、角形鋼管の規格値は、□-辺長×辺長×板厚を表し、JBCR385は強度385N/mm
2の冷間ロール成形角形鋼管を表し、BCP325は強度325N/mm
2の冷間プレス成形角形鋼管を表す。上側部材1と下側部材3の辺長差は50mmまたは150mmとした。ダイアフラム2の板厚はそれぞれ32mm~90mmとした。ダイアフラムの鋼材規格は、上側部材1および下側部材3がJBCR385の場合はTMCP385Cを、BCP325の場合はTMCP325Cを用い、ダイアフラム2は、下側部材の辺長に60mm加算した辺長の正方形とした。軸力比は、0および0.3を用いた。
【0063】
【0064】
表2に、表1の条件での上記各実施形態の評価式による計算結果と有限要素法(FEM)による構造解析結果を示す。いずれの場合でも上記実施形態のダイアフラム面外曲げ耐力評価式を使用することで、FEM解析結果から求められたダイアフラム面外曲げ耐力を精度良く評価できていることが分かる。
【0065】
本発明のダイアフラムの面外曲げ耐力の解析モデル化方法および予測方法によれば、通しダイアフラムを介して寸法の異なる角形鋼管からなる上下部材を接合するにあたり、接合した仕口のダイアフラムの面外曲げ耐力を、上下部材の角部寸法を考慮して簡便に精度良く評価することができる。また、その予測方法により得られた耐力を満たすのに十分な板厚の鋼板を選定することができる。また、その板厚のダイアフラムを用いて、鋼管-ダイアフラム仕口を得ることができるので産業上有用である。