(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013052
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】インキリボンおよび発行機
(51)【国際特許分類】
B41J 31/00 20060101AFI20240124BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B41J31/00 C
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114962
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】柳本 聖月
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AF02
2C065DA22
2C065DA38
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068AA22
2C068BD04
2C068BD17
2C068BD23
2C068BD45
(57)【要約】
【課題】 インキパネルの使用率を高めることによって、交換頻度が少なく、廃棄物の発生量も少ないインキリボンを提供すること。
【解決手段】 インキリボンは、媒体への転写のために使用される複数種類のインキパネルを1セットとして、フィルム基材に、フィルム基材の長手方向に沿って繰り返し配置してなり、各種類のインキパネルのサイズを、各種類のインキパネルが媒体へ転写されるサイズに応じて決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体への転写のために使用される複数種類のインキパネルを1セットとして、フィルム基材に、前記フィルム基材の長手方向に沿って繰り返し配置してなるインキリボンであって、
前記各種類のインキパネルのサイズを、前記各種類のインキパネルが前記媒体へ転写されるサイズに応じて決定する、インキリボン。
【請求項2】
前記各種類のインキパネルのサイズは、前記1セットのインキパネルを前記媒体へ転写することによって形成される印刷物のサイズ以下である、請求項1に記載のインキリボン。
【請求項3】
前記印刷物に、文字が印字される印字領域が含まれる場合、前記1セットのインキパネルのうち、前記印字領域に使用されるインキパネルの形状を、前記印字領域に印字される文字列をカバーするように決定する、請求項2に記載のインキリボン。
【請求項4】
前記1セットのインキパネルは、少なくとも機能性インキパネルを含み、
前記機能性インキパネルを、前記長手方向に直交する高さ方向における前記フィルム基材の上端および下端と接触しないように、前記フィルム基材に配置した、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のインキリボン。
【請求項5】
前記機能性インキパネルを、隣接するインキパネルと接触しないように、前記フィルム基材に配置した、請求項4に記載のインキリボン。
【請求項6】
前記フィルム基材の両端部には、前記インキパネルが配置されていない、請求項1に記載のインキリボン。
【請求項7】
単一の熱可塑材料からなるコアにロールされた、請求項1に記載のインキリボン。
【請求項8】
前記フィルム基材に、隣接するインキパネルが直接接触しないように、前記インキパネルの両端に、レジマークを配置した、請求項1に記載のインキリボン。
【請求項9】
前記レジマークの前記長手方向の幅は、後続するインキパネルの種類毎に異なる、請求項8に記載のインキリボン。
【請求項10】
前記レジマークの長手方向の幅は、後続するインキパネルの種類に関わらず全て同じである、請求項8に記載のインキリボン。
【請求項11】
前記レジマークのパターンは、後続するインキパネルの種類毎に異なる、請求項8に記載のインキリボン。
【請求項12】
請求項9に記載の前記インキリボンを、所定の経路に沿って、移動させる移動部と、
前記移動部によって移動されている前記インキリボンの前記レジマークを検出し、検出信号を出力するセンサと、
前記検出信号が出力された場合、前記移動部によって移動された前記インキリボンの長さ、前記長さ内に検出された前記レジマークの数、前記検出された各レジマークの幅、および、2つの連続するレジマーク間の距離に基づいて、前記インキリボンの種類を識別する制御部とを備えた、発行機。
【請求項13】
前記媒体に印画される印画画像に対して色分解を行う画像作成部をさらに備えた、請求項12に記載の発行機。
【請求項14】
前記画像作成部は、前記色分解によって得られた各色成分の画像の輪郭を検出し、前記輪郭に基づいて、前記各色成分のインキパネルの必要サイズを決定する、請求項13に記載の発行機。
【請求項15】
前記制御部は、前記画像作成部によって前記各色成分のインキパネルの必要サイズが決定された印画画像を、前記識別した種類のインキリボンで印画可能であるか否かを判定する、請求項14に記載の発行機。
【請求項16】
前記制御部によって、印画可能ではないと判定された場合、前記印画可能ではないことを示すアラートを表示するアラート表示部を備えた、請求項15に記載の発行機。
【請求項17】
前記画像作成部は、前記色分解によって得られた各色成分の画像から、前記各色成分のインキパネル別の印画開始位置を決定する、請求項13に記載の発行機。
【請求項18】
前記制御部は、前記画像作成部によって決定された前記各色成分のインキパネル別の印画開始位置に基づいて、前記各色成分のインキパネルの停止位置および移動量を設定する、請求項17に記載の発行機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカードや冊子ページのように、情報が記録された表示体を発行する発行機、およびそれに適用されるインキリボンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードプリンタなどの発行機に使用されるインキリボンが知られている。
【0003】
図11は、従来のインキリボンと、それによって作成される印刷物Wとを説明するための図である。
【0004】
この種のインキリボン100は、印刷物Wを発行するために、カード等の媒体Aへの転写のために使用される複数種類のインキパネルPを1セットとして、フィルム基材11に、フィルム基材11の長手方向(図中左右方向)に沿って繰り返し配置されてなる。
【0005】
インキパネルPとしては、通常インキパネルと機能性インキパネルとがある。
【0006】
通常インキパネルとしてはさらに、CMYKのような複数種類の有色インキパネル、プライマーや保護層などの役割を有するクリアインキパネルがあり、材料としては樹脂系を溶媒として、染料、もしくは顔料が用いられる。
【0007】
一方、機能性インキパネルには、蛍光やパールのような可視効果(オバート)パネル、赤外線透過(IR)や紫外線吸収(IV)のような不可視効果(コバート)パネル、磁気や導電性などの電気特性を有した特殊インキパネルなどがあり、材料としては樹脂系を溶媒として、顔料が用いられることが多い。
【0008】
図11に示す例では、1セットを構成する複数種類のインキパネルPとして、CMYKの4色のための有色インキパネル(シアンのためのPc、マゼンダのためのPm、イエローのためのPy、ブラックのためのPk)が示されている。
【0009】
インキリボン100では、インキパネルPの種類の切り替わり部分、つまり、連続する2つのインキパネルPの間には、スリット状のレジマークRが設けられている。
【0010】
インキパネルPはすべて、発行する印刷物Wのサイズ(幅×高さ)、すなわち媒体Aのサイズ(幅×高さ)に一致するように合わせられている。
【0011】
これによって、いずれのインキパネルPも、印刷時に、媒体Aの全面をカバーできる。
【0012】
したがって、このようなインキパネルPを備えたインキリボン100を用いた発行機は、印刷物Wを、そのレイアウトに関わらず発行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5-131730号公報
【特許文献2】特開2017-007298号公報
【特許文献3】特開2020-169906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、印刷物Wを発行するために、インキパネルPを使って媒体Aに転写する場合、必ずしも各インキパネルPの全面が使用されている訳ではない。
【0015】
例えば、運転免許証や社員証の印刷物Wには、カラーの顔写真B、顔写真Bのためのカラーの背景部D、モノクロのID情報が印字される印字領域Cといった要素が含まれているが、背景部Dは、印刷物Wの全面ではなく、
図11に示す例では印刷物Wの左側の一部に配置され、顔写真Bは背景部Dの中に配置される。印字領域Cは、背景部Dとは重ならないように、印刷物Wの右側に配置されるので、やはり印刷物Wの全面に配置されている訳ではない。
【0016】
したがって、印刷物Wを発行する際に、各インキパネルPは、サイズの半分程度、もしくはそれ以下の領域しか使用されず、実際に転写に使用される割合である使用率は低い。
【0017】
図12は、
図11に示すインキリボンにおける各インキパネルの使用率を説明するための図である。
【0018】
図12に例示するように、インキパネルPcは、背景部Dのサイズしか使用されず、インキパネルPmおよびインキパネルPyは、顔写真Bのサイズしか使用されず、インキパネルPkは、印字領域Cのサイズしか使用されていない。
【0019】
このようにインキリボン100は、各インキパネルPに多くの未使用領域を残したまま、すなわちインキパネルPの使用率が低いまま、廃棄されている。
【0020】
ところで、未使用の、つまり新規のインキリボン100は、リボン巻出コア12にロールされた状態で、リボン巻取コア14とともに発行機にセットされる。これはオペレータによってマニュアルで行われる。その後、発行機では、イニシャライズ動作が行われた後、インキリボン100を使って印刷のための運転が開始される。
【0021】
これによって、発行機では、インキリボン100のインキパネルPが媒体Aに転写され、印刷物Wが発行される。リボン巻出コア12にロールされたインキリボン100が、最後まで使用され、すべてリボン巻取コア14に巻き取られると、運転が停止される。そして、オペレータによって、リボン巻出コア12と、使用済みのインキリボン100が巻き取られたリボン巻取コア14とが取り出され、新たなインキリボン100のリボン巻出コア12およびリボン巻取コア14がセットされる。その後、発行機は、前述したようなイニシャライズ動作が行われた後に、印刷のための運転が、再び開始される。
【0022】
このようなリボン巻出コア12/リボン巻取コア14の交換およびイニシャライズ動作には、相応の時間を要する。この間、印刷物Wは発行されないので、発行機の稼働率が低下する。また、リボン巻出コア12/リボン巻取コア14の交換は、オペレータの手間を要する。さらには、交換によって取り出されたリボン巻出コア12/リボン巻取コア14は、廃棄物となる。したがって、オペレータの負荷低減の観点から、および廃棄物の発生量低減の観点からも、リボン巻出コア12/リボン巻取コア14の交換頻度は、可能な限り少ないことが望ましい。
【0023】
しかしながら、発行機にセットできるインキリボン100のロールのサイズ、すなわち、リボン巻出コア12に巻かれたインキリボン100の外径の上限値は、発行機によって制限されている。このため、発行機に一度にセットできるインキリボン100の量を増やすことはできない。
【0024】
また、特許文献3の
図2に示されているように、印字領域が重ならない時に、一部分を印字に使用したリボンの未使用領域を再度印字に使用することは、リボンの節約にはなるが、一部熱影響によるシワ等の変形のあるリボンを使用することになるので、未使用部の再利用でも、リボンのシワ等による印字不具合の可能性が懸念される。
【0025】
そこで、本発明の第1の目的は、インキパネルの使用率を高めることによって、交換頻度が少なく、廃棄物の発生量も少ないインキリボンを提供することにある。
【0026】
また、本発明の第2の目的は、このようなインキリボンを使用することによって、オペレータの作業負担を軽減し、稼働率の向上を図ることが可能な発行機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の第1の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0028】
本発明の第1の態様は、媒体への転写のために使用される複数種類のインキパネルを1セットとして、フィルム基材に、フィルム基材の長手方向に沿って繰り返し配置してなるインキリボンであって、各種類のインキパネルのサイズを、各種類のインキパネルが媒体へ転写されるサイズに応じて決定する。
【0029】
本発明の第2の態様のインキリボンは、各種類のインキパネルのサイズが、1セットのインキパネルを媒体へ転写することによって形成される印刷物のサイズ以下である。
【0030】
本発明の第3の態様のインキリボンは、印刷物に、文字が印字される印字領域が含まれる場合、1セットのインキパネルのうち、印字領域に使用されるインキパネルの形状を、印字領域に印字される文字列をカバーするように決定する。
【0031】
本発明の第4の態様のインキリボンは、1セットのインキパネルは、少なくとも機能性インキパネルを含み、機能性インキパネルを、長手方向に直交する高さ方向におけるフィルム基材の上端および下端と接触しないように、フィルム基材に配置する。
【0032】
本発明の第5の態様のインキリボンは、機能性インキパネルを、隣接するインキパネルと接触しないように、フィルム基材に配置する。
【0033】
本発明の第6の態様のインキリボンは、フィルム基材の両端部には、インキパネルが配置されていない。
【0034】
本発明の第7の態様のインキリボンは、単一の熱可塑材料からなるコアにロールされている。
【0035】
本発明の第8の態様のインキリボンは、フィルム基材に、隣接するインキパネルが直接接触しないように、インキパネルの両端に、レジマークを配置する。
【0036】
本発明の第9の態様のインキリボンは、レジマークの長手方向の幅は、後続するインキパネルの種類毎に異なる。
【0037】
本発明の第10の態様のインキリボンは、レジマークの長手方向の幅は、後続するインキパネルの種類に関わらず全て同じである。
【0038】
本発明の第11の態様のインキリボンは、レジマークのパターンは、後続するインキパネルの種類毎に異なる。 また、上記の第2の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0039】
本発明の第12の態様の発行機は、インキリボンを、所定の経路に沿って、移動させる移動部と、移動部によって移動されているインキリボンのレジマークを検出し、検出信号を出力するセンサと、検出信号が出力された場合、移動部によって移動されたインキリボンの長さ、長さ内に検出されたレジマークの数、検出された各レジマークの幅、および、2つの連続するレジマーク間の距離に基づいて、インキリボンの種類を識別する制御部とを備える。
【0040】
本発明の第13の態様の発行機は、媒体に印画される印画画像に対して色分解を行う画像作成部をさらに備える。
【0041】
本発明の第14の態様の発行機は、画像作成部は、色分解によって得られた各色成分の画像の輪郭を検出し、輪郭に基づいて、各色成分のインキパネルの必要サイズを決定する。
【0042】
本発明の第15の態様の発行機は、制御部は、画像作成部によって各色成分のインキパネルの必要サイズが決定された印画画像を、識別した種類のインキリボンで印画可能であるか否かを判定する。
【0043】
本発明の第16の態様の発行機は、制御部によって、印画可能ではないと判定された場合、印画可能ではないことを示すアラートを表示するアラート表示部を備える。
【0044】
本発明の第17の態様の発行機は、画像作成部は、色分解によって得られた各色成分の画像から、各色成分のインキパネル別の印画開始位置を決定する。
【0045】
本発明の第18の態様の発行機は、制御部は、画像作成部によって決定された各色成分のインキパネル別の印画開始位置に基づいて、各色成分のインキパネルの停止位置および移動量を設定する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、インキパネルの使用率を高めることによって、交換頻度が少なく、廃棄物の発生量も少ないインキリボンを提供することができる。
【0047】
また、このようなインキリボンを使用することによって、オペレータの作業負担を軽減し、稼働率の向上を図ることが可能な発行機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るインキリボンにおける各インキパネルの使用状態を説明する図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る発行機の一例を示す外形図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る発行機の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、センサとインキリボンとの位置関係を示す図である。
【
図6】
図6は、PCによる印画画像の作成を説明するための図である。
【
図7A】
図7Aは、CMYKへの色分解処理の例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、CMYKへの色分解処理の例を示す図である。
【
図8】
図8は、インキパネル別の停止位置および送り量を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【
図11】
図11は、従来のインキリボンと、それによって作成される印刷物とを説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すインキリボンにおける各インキパネルの使用率を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。
【0050】
以下の説明では、既に説明した部位と同一部位については、同じ参照番号で示すことによって重複説明を避け、異なる点について説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るインキリボンおよび発行機について説明する。
【0052】
先ず、第1の実施形態に係るインキリボンについて説明する。
【0053】
図1は、第1の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【0054】
第1の実施形態に係るインキリボン10でも、インキリボン100と同様、カード等の媒体Aへの転写のために使用される複数種類のインキパネルPを1セットとして、フィルム基材11に、フィルム基材11の長手方向(図中左右方向)に沿って繰り返し配置されてなる。インキリボン10ではさらに、各種類のインキパネルPのサイズを、各種類のインキパネルPが媒体Aへ転写されるサイズに応じて決定する。
【0055】
図2は、第1の実施形態に係るインキリボンにおける各インキパネルの使用状態を説明するための図である。
【0056】
図2に例示されるように、インキパネルPcは、顔写真Bの背景部Dにしか使用されないので、背景部Dの幅よりも、若干大きいだけの幅とする。例えば、背景部Dの幅に、発行機の性能から決定されるずれ分を加えた幅とする。インキパネルPmおよびインキパネルPyは、顔写真Bの印刷に使用され、顔写真Bは、背景部D内に収まることから、インキパネルPcと同じ幅とする。インキパネルPkは、印字領域Cにしか使用されないので、印字領域Cの幅よりも、若干大きいだけの幅とする。例えば、印字領域Cの幅に、前述したずれ分を加えた幅とする。
【0057】
このように、インキリボン10では、各インキパネルPの幅は、媒体Aの幅以下となる。
図11と
図1とを比較して分かるように、インキリボン10における各インキパネルPの幅は、従来技術のインキリボン100における各インキパネルPの幅よりも小さい。
【0058】
インキリボン10は、インキリボン100と同様に、インキパネルPの両端にレジマークRを配置している。レジマークRによって、隣接するインキパネルP同士は、直接接触しないようになる。レジマークRの幅(フィルム基材11の長手方向の長さ)は、後続するインキパネルPの種類毎に異なっている。この場合、例えば、インキパネルPcに先行するレジマークRc、インキパネルPmに先行するレジマークRm、インキパネルPyに先行するレジマークRy、およびインキパネルPkに先行するレジマークRkは、幅がそれぞれ異なっている。
【0059】
また、レジマークRの幅を、後続するインキパネルPの種類に関わらず全て同じとしてもよい。
【0060】
レジマークRの幅は、レジマークRの読み取りの距離で判定することができる。例えば、黒以外はあまり遮光しないので、遮光し出してから一定区間以上遮光が続いた場合には、ブラックのインキパネルPkと判定することができる。
【0061】
また、プリンタに、UVインキパネルありとの設定を手動でしておいて、レジマーク読み取りで7パネルとの結果が得られた場合、プリンタインプット情報×読み取り結果で「UVインキありの7パネルリボン」と判定することもできる。
【0062】
さらには、レジマークRのパターンを、後続するインキパネルの種類毎に異なるようにしてもよい。これは、例えば、レジマークの本数が、あるインキパネルでは、1本線であるのに対して、別のインキパネルでは、2本線としたり、あるいは、本数が同じであっても、線の間の間隔を変えることによって実現することができる。
【0063】
いずれのレジマークRも、例えば墨のような黒色で形成することが好適である。ただし、ブラックのインキパネルPkの両側のレジマークRも黒色としてしまうと、インキパネルPkとの区別ができなくなるので、ブラックのインキパネルPkの両側のレジマークRは着色せず、フィルム基材11自体を利用する。
【0064】
したがって、
図1に示す例では、インキパネルPkの両端のレジマークRk、Rcの部分は、フィルム基材11が露出され、フィルム基材11自体でレジマークRk、Rcを実現している一方、他のレジマークRは、黒色となっている。
【0065】
インキリボン10の先端を含む部位も、インキパネルPが配置されておらず、フィルム基材11が露出されている。この部分をリードフレームLfと称する。リードフレームLfの先端は、リボン巻取コア14に接着されている。同様に、インキリボン10の後端を含む部位も、インキパネルPが配置されておらず、フィルム基材11が露出されている。この部分をテールフレームTf(図示せず)と称する。テールフレームTfの後端は、リボン巻出コア12に接着されている。
【0066】
後述するが、新規のインキリボン10を、発行機にセットした場合には、発行機のイニシャライズ動作が行なわれる。イニシャライズ動作中、インキリボン10の先端から一定量が巻き出されるが、媒体Aへの転写はなされない。したがって、インキリボン10の先端からインキパネルPを配置しても、イニシャライズ動作時に巻き出される一定量に相当する部位に配置されたインキパネルPは使用されず無駄になってしまう。この無駄を回避するために、インキリボン10は、先端から、イニシャライズ動作で使用される一定量に相当する部位には、インキパネルPを配置せず、フィルム基材11が露出しているリードフレームLfとしている。
【0067】
インキリボン10では、リードフレームLfは、発行機のイニシャライズ動作に使用されることを考慮して、リードフレームLfを、テールフレームTfよりも長くしている。
【0068】
インキリボン10は、使用前の状態では、リボン巻出コア12にすべてロールされており、後述するように、発行機で転写に使用されると、使用済みのインキパネルPが順次、リボン巻取コア14に巻き取られロールされる。
【0069】
リボン巻出コア12およびリボン巻取コア14ともに、例えばPE、PP、PS、PET等の単一の熱可塑材料からなる。
【0070】
次に、本発明の第1の実施形態に係る発行機について説明する。
【0071】
図3Aは、第1の実施形態に係る発行機の一例を示す外形図である。
【0072】
発行機20は、前述したインキリボン10を使って、媒体Aへの転写を行い、印刷物Wを発行する装置であり、例えばプリンタで実現できる。
【0073】
発行機20は、操作パネル21、制御部22、画像作成部23、アラート表示部24、および転写機構30を備えている。
【0074】
操作パネル21は、オペレータからの操作要求を受け付けるためのインターフェースである。
【0075】
アラート表示部24は、LEDランプによって実現でき、転写機構30でエラーが発生した場合に点灯し、オペレータにエラーの発生を通知する。
【0076】
【0077】
図3Bに例示する転写機構30は、直接転写タイプと呼ばれるものである。転写機構には、直接転写タイプのみならず、間接転写タイプもある。以下では、転写機構30が直接転写タイプであるとして説明するが、転写機構30のタイプは、直接転写タイプに限定されず、間接転写タイプとすることもできる。
【0078】
転写機構30は、リボン巻出部32、センサ34、例えばサーマルヘッドである転写部36(したがって、以下、「サーマルヘッド36」とも称する)、リボン巻取部38、および搬送ローラ40a~40d、42を備えている。
【0079】
図4は、第1の実施形態に係る発行機の動作例を示すフローチャートである。
【0080】
転写機構30の構成を、
図4のフローチャートも参照しながら、以下に説明する。
【0081】
リボン巻出部32はリボン巻出コア12を、リボン巻取部38はリボン巻取コア14をそれぞれセットするための部位である。リボン巻出部32へのリボン巻出コア12のセット、およびリボン巻取部38へのリボン巻取コア14のセットは、発行機20の電源が停止された状態で、オペレータによって行われる。
【0082】
搬送ローラ40a~40dは、インキリボン10の経路を画定させるために設けられている。オペレータは、これら搬送ローラ40a~40dを使って、リボン巻出コア12から巻き出されたインキリボン10が、センサ34の近傍を通過し、さらに、転写部36と媒体Aとの間を通過した後に、リボン巻取コア14によって巻き取られるように、インキリボン10の経路を画定させる(ST1)。
【0083】
これによってインキリボン10の発行機20へのセットが完了し、その後、オペレータは、発行機20の電源をオンにする(ST2)。これに応じて、制御部22は、発行機20のイニシャライズ動作を開始させる(ST3)。
【0084】
イニシャライズ動作が開始されると先ず、リボン巻取部38が駆動する。リボン巻取部38の駆動により、リボン巻取コア14が回転し、これによって、リボン巻出部32にセットされたリボン巻出コア12から、インキリボン10が一定量巻き出され、巻き出されたインキリボン10は、経路上を、リボン巻取部38側に移動する。インキリボン10は、この一定量に相当する長さの、インキパネルPが配置されていないリードフレームLfを設けている。イニシャライズ動作時に巻き出される部分は、転写に使用されないので、この部分にインキパネルPを配置することは無駄になる。本実施形態に係るインキリボン10は、イニシャライズ動作時に巻き出される部分は、リードフレームLfとなっており、インキパネルPは配置されていなので、イニシャライズ動作時のインキパネルPのロスは発生しない。
【0085】
インキリボン10には、リードフレームLfに後続して、レジマークRが先行するインキパネルPが配置されている。
【0086】
このレジマークRを検出するために、転写機構30は、インキリボン10の経路の近傍であって、転写部36よりも上流側に、センサ34を配置している。
【0087】
図5は、センサとインキリボンとの位置関係を示す図である。
【0088】
前述したように、ブラックのインキパネルPkの両端以外のレジマークRは、例えば墨のように、黒色で形成できる。黒は光を透過しないので、センサ34は、透過センサで実現できる。
【0089】
センサ34を透過センサで実現した場合、
図5に示すように、黒色で形成されているレジマークRが、センサ34を通過するとき、センサ34が受光する光の強度(受光光度)はほぼゼロとなる。センサ34は、受光強度がほぼゼロになった場合、検出信号を制御部22へ出力する。また、フィルム基材11自体で形成されているレジマークRが、センサ34を通過するとき、センサ34の受光強度が有意に高くなる。センサ34は、受光強度が有意に高くなった場合も、検出信号を制御部22へ出力する(ST3a)。
【0090】
制御部22は、センサ34から検出信号が出力された場合、リボン巻取部38による巻取りによるインキリボン10の移動長さ(以降、「区間」と称する)、区間内に検出されたレジマークRの数、検出された各レジマークRの幅、2つの連続するレジマークR間の間隔等に基づいて、インキリボン10の種類を識別する(ST3b)。
【0091】
その後、制御部22は、この識別結果を、画像作成部23で検出されたインキパネル別輪郭サイズ(ST14)と比較し、識別された種類のインキリボン10で、画像作成部23によって分析された印画画像の印画が可能であると判定した場合(ST3c:Yes)、画像作成部23で検出されたインキパネル別印字開始位置(ST15)に基づいて、インキパネル別の停止位置および送り量の設定を行う(ST3d)。なお、ステップST14およびステップST15の処理の詳細については、後述する。
【0092】
一方、ステップST3cにおいて、可能ではないと判定した場合(ST3c:No)、制御部22は、アラート表示部24から、インキリボン不適合アラートを表示または点灯する(ST6)。その後、動作は、ステップST2へ戻る。
【0093】
次に、画像作成部23の構成を、
図4のフローチャートも参照しながら、以下に説明する。
【0094】
画像作成部23は、画像処理機能を備えており、オペレータは、この画像処理機能を使って、印刷物Wのための印画画像を作成し(ST11)、画像作成部23に入力することができる(ST12)。
【0095】
図6は、PCによる印画画像の作成を説明するための図である。
【0096】
印画画像は、身分証であれば、「身分証」という文字が予め印刷された媒体Aに、指定されたレイアウトに従って背景部D、顔写真B、印字領域Cを配置することで作成できる。したがって、
図6に示すように、市販の画像処理ソフトがインストールされたパソコンPCを使って作成してもよい。パソコンPCによって作成された印画画像を、画像作成部23に入力する。
【0097】
画像作成部23は、入力された印画画像に基づいて、インキパネル識別処理を行う(ST13)。インキパネル識別処理は、印画画像の(例えば、CMYKへの)色分解処理を含む。
【0098】
図7Aおよび
図7Bは、一例として、CMYKへの色分解処理の例を示す図である。
【0099】
色分解処理では、画像作成部23は、
図7Aおよび
図7Bに例示するように、ステップST12において入力された印画画像IGを、C成分→M成分→Y成分→K成分の順に色分解する。
【0100】
画像作成部23はさらに、色分解処理の結果に基づいて、前述したインキパネル別輪郭サイズ検出(ST14)およびインキパネル別印字開始位置検出(ST15)を行う。
【0101】
インキパネル別輪郭サイズ検出(ST14)では、画像作成部23は、
図7Aおよび
図7Bに例示されるように、C成分、M成分、Y成分、およびK成分に色分解された各画像の輪郭(アウトライン)を検出する。検出された輪郭は、
図7Aおよび
図7Bにおいて、点線で示す通りである。
【0102】
画像作成部23は、このように色成分毎に検出された輪郭から、各色成分のインキパネルPの必要な幅(図中左右方向における幅)を決定する。
【0103】
例えば、
図7Aに示す例の場合、インキパネルPcの幅Hcは、印画画像IGの半幅よりも若干小さい程度であり、インキパネルPmの幅Hmは、インキパネルPcの幅Hcよりも小さく、インキパネルPyの幅Hyは、インキパネルPmの幅Hmと同じであり、インキパネルPkの幅Hkは、印画画像IGの半幅となる。
【0104】
一方、
図7Bに示す例の場合、インキパネルPc、Pm、Pyともに、
図7Aに示す例と同じ幅Hc、Hm、Hyとすることができるが、インキパネルPkの幅Hkは、印画画像IGのほぼ全幅となり、
図7Aに示す例よりも広い。
【0105】
このように、画像作成部23は、インキパネル別輪郭サイズ検出(ST14)において、印画画像IG毎に、CMYKの各色成分のインキパネルPc、Pm、Py、Pkの幅Hc、Hm、Hy、Hkを決定し、結果を、制御部22へ出力する。
【0106】
画像作成部23から、CMYKの各色成分のインキパネルPc、Pm、Py、Pkの幅Hc、Hm、Hy、Hkが出力されると、制御部22は、出力された幅Hc、Hm、Hy、Hkに基づいて、前述したステップST3cの処理を行う。例えば、ステップST3bにおいて、
図1に例示するように、インキパネルPc、Pm、Py、Pkの幅Hc、Hm、Hy、Hkがいずれも媒体Aの半幅であるインキリボン10が識別されている場合、
図7Aに示す印画画像IGに対しては印画可能である(ST3c:Yes)と判定し、
図7Bに示す印画画像IGに対しては、インキパネルPkの幅Hkが足りないので印画可能ではない(ST3c:No)と判定する。
【0107】
次に、インキパネル別印字開始位置検出(ST15)では、画像作成部23は、
図7Aおよび
図7Bに例示されるように、C成分、M成分、Y成分、およびK成分に色分解された各画像から、インキパネルP別の印画開始位置を決定する。インキパネルPc、Pm、Py、Pk別の印画開始位置は、
図7Aおよび
図7Bにおいて、縦実線Tc、Tm、Ty、Tkで示す通りである。画像作成部23は、インキパネルPc、Pm、Py、Pk別の印画開始位置、すなわち、縦実線Tc、Tm、Ty、Tkの位置を、印画画像IGの左端からのシフト量として、制御部22へ出力する。例えば、
図7Bのような場合、縦実線Tc、Tm、Ty、Tkの印画開始位置は、すべて印画画像IGの左端であるので、シフト量はゼロである。一方、
図7Aのような場合、縦実線Tc、Tm、Tyは、印画画像IGの左端からのシフト量はゼロであるが、縦実線Tkは、印画画像IGの左端から、媒体Aの半幅シフトしている。
【0108】
画像作成部23から、インキパネルPc、Pm、Py、Pk別の印画開始位置(シフト量)が出力されると、制御部22は、インキパネルPc、Pm、Py、Pk別の印画開始位置(シフト量)に基づいて、インキパネルPc、Pm、Py、Pk別の停止位置および送り量を設定する(ST3d)。
【0109】
ステップST3dで設定されるインキパネルPc、Pm、Py、Pk別の停止位置および送り量の具体例を、
図8(a)~(e)を用いて説明する。
【0110】
図8は、インキパネル別の停止位置および送り量を説明するための図である。
【0111】
ここでは、画像作成部23から出力されたインキパネルPc、Pm、Py、Pk別の印画開始位置(シフト量)は、
図7Aに例示するように(ゼロ、ゼロ、ゼロ、媒体の半幅)であるとする。
【0112】
制御部22は、画像作成部23から出力されたインキパネル別印字開始位置(シフト量)=(ゼロ、ゼロ、ゼロ、媒体の半幅)に基づいて、先ず、
図8(a)に示すように、1セットのインキパネルPのうちの先頭のインキパネルPcの印画開始位置と、媒体Aの先頭位置とを、サーマルヘッド36の位置に合わせる。
【0113】
次に、
図8(b)に示すように、インキリボン10をリボン巻取部38による巻取りによって、媒体Aを搬送ローラ42によって、同時に移動させながら、サーマルヘッド36で、インキパネルPcから媒体Aへの転写を行う。これによって、媒体Aには、背景部Dが印画される。この印画終了時には、インキパネルPcの次のインキパネルPmの印画開始位置が、サーマルヘッド36の位置に来ている。
【0114】
次に、
図8(c)に示すように、搬送ローラ42によって媒体Aだけを元の位置、すなわち、インキパネルPcによる転写がなされる前の位置に戻し、その後、前述したようにインキリボン10と媒体Aとを同時に移動させながら、サーマルヘッド36で、インキパネルPmから媒体Aへの転写を行う。これによって、媒体Aには、顔写真BのM成分が印画される。この印画終了時には、インキパネルPmの次のインキパネルPyの印画開始位置が、サーマルヘッド36の位置に来ている。
【0115】
次に、搬送ローラ42によって媒体Aだけを元の位置、すなわち、インキパネルPc、Pmによる転写がなされる前の位置に戻し、その後、前述したようにインキリボン10と媒体Aとを同時に移動させながら、サーマルヘッド36で、インキパネルPyから媒体Aへの転写を行う。これによって、
図8(d)に示すように、媒体Aに、顔写真BのY成分が印画される。この印画終了時には、インキパネルPyの次のインキパネルPkの印画開始位置が、サーマルヘッド36の位置に来ている。
【0116】
次に、
図8(d)に示す状態から、前述したようにインキリボン10と媒体Aとを同時に移動させながら、サーマルヘッド36で、インキパネルPkから媒体Aへの転写を行う。これによって、
図8(e)に示すように、媒体Aに、印字領域Cへ印字がなされる。この印字終了時には、インキパネルPkの次のセットのインキパネルPcの印画開始位置が、サーマルヘッド36の位置に来ている。
【0117】
このように、
図7Aに示すような印画開始位置(シフト量)=(ゼロ、ゼロ、ゼロ、媒体の半幅)である場合、
図8(d)および
図8(e)に示すように、インキパネルPyによる印画後、インキパネルPkによる印字のために媒体Aの先頭をサーマルヘッド36の位置に戻す必要はなく、連続して行うことができる。仮に、
図7Bに示すような印画開始位置(シフト量)=(ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ)である場合、
図8(d)の後、インキパネルPyによる印画後、インキパネルPkによる印字のために媒体Aの先頭を、搬送ローラ42によってサーマルヘッド36の位置に戻す必要がある。
【0118】
このように、制御部22は、画像作成部23からのインキパネル別印字開始位置(ST15)に応じて、ステップST3dにおいて、インキパネル別の停止位置および送り量を、印画画像毎に最適に設定する。その後は、発行スタンバイ(ST4)の後、ステップST3dにおいてなされた設定に従って、転写機構30を動作させて、印刷物Wを発行する(ST5)。
【0119】
これによって、印刷物Wが発行されるとともに、使用済みのインキパネルPが、順次リボン巻取コア14に巻き取られて行く。ステップST5の後は、ステップST11に戻り、前述したようにステップST11、ST12、ST13、ST14、ST15,ST3c、ST4、ST5の各処理が繰り返され、印刷物Wが連続的に発行される。そして、最終的に、すべてのインキパネルPが、リボン巻取コア14に巻き取られると、制御部22は、転写機構30動作を停止させる。動作停止後、オペレータは、発行機20の電源をオフにし、リボン巻出コア12と、使用済みのインキリボン10が巻き取られたリボン巻取コア14とを発行機20から取り出し、新たなインキリボン10を、リボン巻出コア12およびリボン巻取コア14をセットする(ST1)。オペレータは、その後、発行機20の電源をオンにし(ST2)、制御部22は、イニシャライズ動作(ST3)を行い、前述した動作を繰り返すことができる。
【0120】
取り出されたリボン巻出コア12、使用済みのインキリボン10、およびリボン巻取コア14は、廃棄物として処分される。なお、前述したように、リボン巻出コア12およびリボン巻取コア14は、単一の熱可塑材料(モノマテリアル)からなるエコロジー製品であるので、環境に負荷を与えずに廃棄できる。
【0121】
以上説明したように、本実施形態では、インキリボン10は、各種類のインキパネルPの幅が、媒体Aへ転写される幅に応じて決定される。これによって、
図1に例示されるように、各インキパネルPの幅を、媒体Aの幅よりも小さくして、各インキパネルPの転写時の使用率を高めることができる。
【0122】
具体的には、各種類のインキパネルPの幅は、印刷物Wのレイアウトの輪郭に沿って決定できる。しかしながら、特定の輪郭に限定されず、類似したレイアウトを有する他の印刷物に対しても使用できるように、例えばインキパネルPの幅を媒体Aの半幅に固定した汎用的なインキリボンを使用することもできる。
【0123】
また、図示していないが、インキパネルPの幅のみならず、インキパネルPの高さも同様に、媒体Aへ転写される高さに応じて変えることもできる。
【0124】
このようにインキパネルPの幅や高さといったサイズを、媒体Aへ転写されるサイズに応じて変えることによって、インキパネルPの使用率を高めることができる。例えば、
図2と
図12とを比較して説明すると、
図12の場合、各インキパネルPがすべて、媒体Aと同じ幅を有しているので、転写に使用されない領域が多く、使用率が低いのに対して、本実施形態では、
図2に示すように、各インキパネルPは、転写に必要な幅しか有していないので、転写に使用されない領域は少なく、使用率は高い。
【0125】
また、インキリボン10は、リードフレームLfを設けているので、イニシャライズ動作のために未使用のまま廃棄されるインキパネルPは発生しない。
【0126】
このように、各インキパネルPの使用率を高めることによって、1つのインキリボン10のロールから発行される印刷物Wの枚数が増えるので、発行機20におけるインキリボン10の交換頻度は低下する。これによって、発行機20のオペレータの作業負担も低減でき、発行機20の稼働率も向上し、廃棄物の発生量も減少する。
【0127】
なお、インキリボン10は、各インキパネルPのサイズがすべて同じである場合とは異なり、インキパネルPの種類毎に媒体A上の印字開始位置が異なる。
【0128】
これに対して、本実施形態に係る発行機20は、センサ34からの検出信号に基づいて得られるレジマークRの幅や、2つの連続するレジマークR間の距離等に基づいて、インキリボン10の種類を識別できる。さらに、印画画像に基づいて、必要なインキパネルPの幅を色成分毎に決定し、識別されたインキリボン10で印画可能であるか否かを判定できる。さらに、印画可能であると判定したインキリボン10に対しては、インキパネルPの種類毎に、媒体A上の印字開始位置を制御しながら、印刷物Wの発行のために使用できる。
【0129】
したがって、発行機20によれば、転写時に各種類のインキパネルPが、それぞれ正しい印字開始位置で自動的に停止し、印字を開始できるので、発行スタンバイ後は、オペレータの操作等を要することなく、印刷物Wを連続的に誤りなく発行できる。
【0130】
一方、印画可能ではないと判定した場合には、インキリボン不適合アラートによってオペレータにその旨を伝えるので、不適合なインキリボンの誤使用を避けることができる。
【0131】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るインキリボンについて説明する。
【0132】
第2の実施形態に係るインキリボンは、第1の実施形態に係るインキリボンの変形例であるので、以下では、第1の実施形態に係るインキリボンと異なる点について説明し、重複説明を避ける。
【0133】
図9は、第2の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【0134】
第2の実施形態に係るインキリボン10Aは、特に、印字領域CのためのインキパネルPが、第1の実施形態に係るインキリボン10とは異なっている。インキリボン10Aは、印字領域Cのために、印字領域Cの全面にインキパネルPkを設けるのではなく、印字領域Cに印字される各文字列c1~c4をカバーするように、部分インキパネルk1~k4を設ける。
【0135】
図9の例では、印字領域CのためのインキパネルPは、ブラックのインキパネルPkとなっているが、印字領域Cのためのインキパネルは、ブラックのインキパネルPkに限定されない。また、
図9の例では、印刷物Wに、4つの文字列c1~c4が示され、それに応じて、4つの部分インキパネルk1~k4が示されているが、文字列の数は4つに限定されず、文字例の数が4以外であっても、同数の部分インキパネルが設けられる。
【0136】
なお、インキパネルPの塗工が、画像の下半分など一部に偏っている場合、製品加工時や印画後の巻取り時に、巻き締まりや巻取りの寄れが起こってしまう可能性がある。そこで、インキパネルPの塗工に偏りがある場合、未塗工部分に、印字には用いられないが、アクセサリーとして一部パターン塗工することで、不具合を防止できる。
【0137】
以上説明したように、第2の実施形態に係るインキリボン10Aによれば、印字領域Cのためのインキパネルとして、各文字列c1~c4をカバーする部分インキパネルk1~k4を設ける。これによって、印字領域Cの全面をカバーするインキパネルPkを設けることは不要となり、印字領域CのためのインキパネルPkの製造に使用される材料を節約でき、第1の実施形態に係るインキリボン10によって奏される作用効果に加えて、資源の無駄を少なくすることができるという作用効果を奏する。
【0138】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るインキリボンについて説明する。
【0139】
第3の実施形態に係るインキリボンもまた、第1の実施形態に係るインキリボンの変形例であるので、以下では、第1の実施形態に係るインキリボンと異なる点について説明し、重複説明を避ける。
【0140】
図10は、第3の実施形態に係るインキリボンの一例を示す概念図である。
【0141】
第3の実施形態に係るインキリボン10Bは、1セットのインキパネルが、機能性インキパネルPfを含む場合に関する。
【0142】
機能性インキパネルPfには、蛍光やパールのような可視効果(オバート)パネル、赤外線透過(IR)や紫外線吸収(IV)のような不可視効果(コバート)パネル、磁気や導電性などの電気特性を有した特殊インキパネルなどがあり、材料としては樹脂系を溶媒として、顔料が用いられることが多い。
【0143】
機能性インキパネルPfは、材料構成、層構成によっては、インキリボンのスリット加工時に、スリット端面で層材料の破壊やクラック発生による粉塵が発生する恐れがあり、この粉塵がインキリボンに付着すると、品質上、製品として利用できなくなる。粉塵は極微細であっても、スリット加工機の清掃やメンテナンスに影響を及ぼすため、製造ラインの停止時間にも悪影響をもたらす可能性がある。
【0144】
したがって、本実施形態に係るインキリボン10Bは、粉塵の発生を回避するために、機能性インキパネルPfを、隣接するインキパネルPと接触しないように、かつ、長手方向に直交する高さ方向Jにおけるフィルム基材11の上端tpおよび下端btと接触しないように、フィルム基材11に配置している。
【0145】
このような構成のインキリボン10Bによれば、スリットエッジに塗工膜がかからないように機能性インキパネルPfが配置されているので、スリット加工時の粉塵発生を防止できる。
【0146】
これによって、従来、顔料の配合費が高く、層構成が脆いために、スリット加工時に粉塵が発生し、製品化できなかったような材料や、塗工層の構成を有する機能性インキパネルPfが配置されたインキリボンも利用できるようになる。
【0147】
なお、本実施形態に係るインキリボン10Bは、第1の実施形態に係るインキリボン10のみならず、第2の実施形態に係るインキリボン10Aと組み合わせて適用することも可能である。
【0148】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0149】
10、10A、10B、100・・インキリボン
11・・フィルム基材
12・・リボン巻出コア
14・・リボン巻取コア
20・・発行機
21・・操作パネル
22・・制御部
23・・画像作成部
24・・アラート表示部
30・・転写機構
32・・リボン巻出部
34・・センサ
36・・転写部、サーマルヘッド
38・・リボン巻取部
40a、40b、40c、40d、42・・搬送ローラ
A・・媒体
B・・顔写真
bt・・下端
C・・印字領域
c1、c2、c3、c4・・文字列
D・・背景部
Hc、Hm、Hy、Hk・・幅
IG・・印画画像
J・・高さ方向
Lf・・リードフレーム
k1、k2、k3、k4・・部分インキパネル
P、Pc、Pm、Py、Pk・・インキパネル
Pf・・機能性インキパネル
PC・・パソコン
R、Rc、Rm、Ry、Rk、・・レジマーク
Tc、Tm、Ty、Tk・・縦実線
Tf・・テールフレーム
tp・・上端
W・・印刷物