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特開2024-130520弾性波デバイス、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130520
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240920BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040301
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 康之
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097AA25
5J097BB02
5J097BB11
5J097FF04
5J097HA04
5J097JJ04
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097JJ10
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】デバイスチップとパッケージ基板との間の封止性、および、両者の機械的一体性を高く確保しつつ、熱を効率的に外部に逃がす。
【解決手段】第一封止部10は、デバイスチップ3の一面3aと側面3cとが接する隅部3dの近傍においてデバイスチップ3とパッケージ基板2との間を封止する周回状をなすと共に、側面3cの一部を覆う外側部分10aを有している。外側部分10aと側面3cとの間には、一方溝壁12aを外側部分10aとし且つ他方溝壁12bを側面3cとした第一周回溝12が形成されている。第二封止部11を、デバイスチップ3の一面3aに対向する他面3bの全体、側面3cのうち第一封止部10の外側部分10aで覆われている部分以外の全体、及び、第一封止部10の外側部分10aの表面の全体を被覆するように形成させている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を実装面としたパッケージ基板と、
一面にIDT電極を含む機能素子が形成されたデバイスチップとを、
前記パッケージ基板の前記実装面と前記デバイスチップの前記一面とを向き合わせた状態でバンプを介して接続させてなる弾性波デバイスであって、
樹脂製の第一封止部と、熱伝導率の高い材料よりなる第二封止部とを備えており、
前記第一封止部は、前記デバイスチップの前記一面と前記デバイスチップの厚さ方向に沿った側面とが接する隅部の近傍において前記デバイスチップと前記パッケージ基板との間を前記デバイスチップの全周に亘って封止する周回状をなすと共に、前記デバイスチップの前記側面の一部を覆う外側部分を有しており、
前記外側部分と前記デバイスチップの前記側面との間には、一方溝壁を前記外側部分とし且つ他方溝壁を前記側面として前記パッケージ基板の前記実装面側に向けて凹む第一周回溝が形成されていると共に、
前記第二封止部を、前記デバイスチップの前記一面に対向する他面の全体、前記デバイスチップの前記側面のうち前記第一封止部の前記外側部分で覆われている部分以外の全体、及び、前記第一封止部の前記外側部分の表面の全体を被覆するように形成させてなる、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第一封止部に、前記デバイスチップの前記一面と前記パッケージ基板の前記実装面との間に位置された内側部分を備えさせてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第一封止部の前記外側部分における前記第一周回溝外の外壁部に、前記デバイスチップの前記側面側に向けて凹む第二周回溝を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記第一封止部の前記外側部分の前記外壁部に、前記パッケージ基板の前記実装面に直交する向きにおいて隣り合う前記第二周回溝との間に間隔を開けて二以上の前記第二周回溝を形成させてなる、請求項3に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記デバイスチップは、前記デバイスチップの前記一面に面一となる面であって前記一面の一部となる鍔一面と、この鍔一面に直交する面であって前記デバイスチップの前記側面の一部となる突き出し端面と、前記鍔一面に対向する鍔他面とを備えた周回鍔部を備えており、
この周回鍔部を前記第一封止部内に食い込ませるようにして前記第一封止部を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法であって、
前記パッケージ基板となる集合基板上に前記デバイスチップをフリップチップボンディングするステップと、
前記第一封止部を形成するステップと、
前記第二封止部を形成するステップとを含み、
前記第一封止部を形成するステップにおいては、前記第一封止部となる材料を粒子状にして所定の流動性を備えたものとし、これを前記第一封止部の形成予定領域に噴き付けて前記第一封止部を形成するようにしてなる、弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用されるのに適した弾性波デバイス、および、その製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
CSP(Chip Size Package)構造を有する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/SAW)装置において、チップとフレーム構造体との間をジェットプリント構造体によってシーリングしたものとして、特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-533475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、CSP構造を有する弾性波デバイスにおいて、デバイスチップとパッケージ基板との間の封止性、および、両者の機械的一体性を高く確保しつつ、弾性波デバイスへの信号の入力によりデバイスチップに生じる熱を効率的に外部に逃がすことが可能な新たな構造と、その製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、弾性波デバイスを、一面を実装面としたパッケージ基板と、
一面にIDT電極を含む機能素子が形成されたデバイスチップとを、
前記パッケージ基板の前記実装面と前記デバイスチップの前記一面とを向き合わせた状態でバンプを介して接続させてなる弾性波デバイスであって、
樹脂製の第一封止部と、熱伝導率の高い材料よりなる第二封止部とを備えており、
前記第一封止部は、前記デバイスチップの前記一面と前記デバイスチップの厚さ方向に沿った側面とが接する隅部の近傍において前記デバイスチップと前記パッケージ基板との間を前記デバイスチップの全周に亘って封止する周回状をなすと共に、前記デバイスチップの前記側面の一部を覆う外側部分を有しており、
前記外側部分と前記デバイスチップの前記側面との間には、一方溝壁を前記外側部分とし且つ他方溝壁を前記側面として前記パッケージ基板の前記実装面側に向けて凹む第一周回溝が形成されていると共に、
前記第二封止部を、前記デバイスチップの前記一面に対向する他面の全体、前記デバイスチップの前記側面のうち前記第一封止部の前記外側部分で覆われている部分以外の全体、及び、前記第一封止部の前記外側部分の表面の全体を被覆するように形成させてなる、ものとした。
【0006】
前記第一封止部に、前記デバイスチップの前記一面と前記パッケージ基板の前記実装面との間に位置された内側部分を備えさせるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0007】
また、前記第一封止部の前記外側部分における前記第一周回溝外の外壁部に、前記デバイスチップの前記側面側に向けて凹む第二周回溝を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
この場合さらに、前記第一封止部の前記外側部分の前記外壁部に、前記パッケージ基板の前記実装面に直交する向きにおいて隣り合う前記第二周回溝との間に間隔を開けて二以上の前記第二周回溝を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記デバイスチップは、前記デバイスチップの前記一面に面一となる面であって前記一面の一部となる鍔一面と、この鍔一面に直交する面であって前記デバイスチップの前記側面の一部となる突き出し端面と、前記鍔一面に対向する鍔他面とを備えた周回鍔部を備えており、この周回鍔部を前記第一封止部内に食い込ませるようにして前記第一封止部を形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、弾性波デバイスの製造方法を、前記弾性波デバイスの製造方法であって、
前記パッケージ基板上に前記デバイスチップをフリップチップボンディングするステップと、
前記第一封止部を形成するステップと、
前記第二封止部を形成するステップとを含み、
前記第一封止部を形成するステップにおいては、前記第一封止部となる材料を粒子状にして所定の流動性を備えたものとし、これを前記第一封止部の形成予定領域に噴き付けて前記第一封止部を形成するようにしてなる、ものとした。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる弾性波デバイスによれば、第一に、前記第一封止部及び前記第二封止部によってデバイスチップとパッケージ基板との間の封止性を高く確保させることができる。また、第二に、デバイスチップの側面の一部を前記第一封止部の外側部分によって覆うことでデバイスチップとパッケージ基板との機械的一体性を高く確保させることができる。また、第三に、前記第二封止部が前記第一周回溝を利用して前記デバイスチップの側面の可及的に広い範囲を被覆するようにできると共に、この第一周回溝によって表面積を拡大させた第一封止部の表面を第二封止部によって被覆させることで、弾性波デバイスへの信号の入力によりデバイスチップに生じる熱を、第二封止部を通じて効率的に外部に逃がすことができる。
また、この発明のかかる弾性波デバイスの製造方法によれば、前記弾性波デバイスを適切且つ合理的に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第一例)の斜視構成図である。
図2図2は、前記第一例の断面構成図である。
図3図3は、前記第一例の断面構成図であり、図2のA-A線位置で前記弾性波デバイスを断面にして示している。
図4図4は、前記第一例を構成するデバイスチップ上に形成される機能素子の一例を示した構成図である。
図5図5は、前記第一例のデバイスチップ上に形成される回路の一例を示した構成図である。
図6図6は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図7図7は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図8図8は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図9図9は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図10図10は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図11図11は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図12図12は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第二例)の断面構成図である。
図13図13は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第三例)の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図13に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0013】
かかる弾性波デバイス1は、パッケージ基板2の一面としての実装面2aに、IDT電極を含む機能素子5、典型的には共振器5aの形成された一面3aを向き合わせて前記パッケージ基板2に実装されたデバイスチップ3を備えている。
【0014】
典型的には、前記デバイスチップ3は、一辺を0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形の板状をなすように構成される。また、前記パッケージ基板2は、一辺を0.7ないし3mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形の板状をなすように構成される。弾性波デバイス1は厚さを0.4ないし0.6mm程度とする。
【0015】
その断面構造を図2に示す。図中符号3はデバイスチップ、符号3aはその一面、符号3bは前記一面3aに対向する他面、符号5は機能素子、符号4は金などの導電性金属からなるバンプである。デバイスチップ3とパッケージ基板2とはデバイスチップ3側の配線8に接続されたバンプパッド(図示は省略している。)とパッケージ基板2側の基板側配線2dに接続されたバンプパッド2bとの間に介在されて両者にそれぞれ固着されたる前記バンプ4によって電気的に接続されている。
前記バンプパッド2b、3cとバンプ4はなじみの良い金属同士、典型的には金やアルミニウムから構成されて接合される。
【0016】
デバイスチップ3の一面3aとパッケージ基板2の実装面2aとの間には、前記バンプ4の厚さ(バンプ4の前記デバイスチップ3の一面3a及び実装面2aに直交する向きの寸法)相当分のギャップ(間隔)が形成される。このようにパッケージ基板2にデバイスチップ3を実装させた後に形成される後述の第一封止部10によってデバイスチップ3の縁側とパッケージ基板2の実装面2aとの間はデバイスチップ3の全周に亘って塞がれており、これにより、弾性波デバイス1はキャビティ6(内部空間)を有し、デバイスチップ3の一面3aにおける前記機能素子5の形成領域はこのキャビティ6に臨んでいる。
【0017】
パッケージ基板2における前記デバイスチップ3の実装側の実装面2aと反対の他面には弾性波デバイス1を図示しないモジュール基板などに接続するための外部接続端子2cが形成される。
【0018】
デバイスチップ3は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ3には、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの圧電体が用いられる。また、デバイスチップ3は、これら圧電体を、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどの支持体に積層させて、構成される場合もある。
【0019】
デバイスチップ3の一面3aには、導電性金属膜からなる前記機能素子5が形成されている。機能素子5は典型的にはデバイスチップ3上に複数個形成される。
機能素子5を構成する導電性金属膜の厚さ、すなわち、デバイスチップ3の一面3aに直交する向きでの機能素子5を構成する導電性金属膜の厚さは、典型的には、0.1ないし0.5μmの範囲とされる。
かかる導電性金属膜は、典型的には、フォトリソグラフィー法により形成される。
【0020】
図4にSAWフィルタとなる共振器5aの一例を示す。共振器5aはIDT電極5bと、IDT電極5bを挟むようにして形成される反射器5eとを有する。IDT電極5aは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指5c同士をこれらの一端側においてバスバー5dで接続させてなる。IDT電極5aに交流電圧を印加することにより弾性表面波が励振される。反射器5eは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指5fの端部間をバスバー5gで接続させてなる。
また、かかる共振器5aは、一つのデバイスチップ3上に、複数形成される場合もある。
【0021】
図5に一つのデバイスチップ3上に備えられる回路7の一例の概念を示す。符号5aaは入出力ポート間に直列に接続された共振器5a、符号5abは入出力ポート間に並列に接続された共振器5a、符号8は配線、符号9はグランドを示す。共振器5aの数や配置は必要に応じて変更される。すなわち、図5の回路7によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。
【0022】
この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、樹脂製の第一封止部10と、金属やアルミナイトライドなどの熱伝導率の高い材料よりなる第二封止部11とを備えている。
【0023】
前記第一封止部10は、前記デバイスチップ3の前記一面3aと前記デバイスチップ3の厚さ方向に沿った側面3cとが接する隅部3dの近傍において前記デバイスチップ3と前記パッケージ基板2との間を前記デバイスチップ3の全周に亘って封止する周回状をなすと共に、前記デバイスチップ3の前記側面3cの一部を覆う外側部分10aを有している。
【0024】
具体的には、第一封止部10は、前記隅部3d近傍において、前記デバイスチップ3の前記一面3aと前記パッケージ基板2の前記実装面2aとの間に位置された内側部分10bと、この内側部分10bの外側にあって、前記デバイスチップ3の前記側面3cのうち前記隅部3d側に位置される箇所を覆う外側部分10aとを有している。
そして、第一封止部10は、デバイスチップ3及びパッケージ基板2の中央を巡るように形成されており、デバイスチップ3をその一面3aに直交する向きに見た状態において、機能素子5の形成領域を囲繞する四角形の枠状を呈している(図3参照)。
【0025】
また、前記外側部分10aと前記デバイスチップ3の前記側面3cとの間には、一方溝壁12aを前記外側部分10aとし且つ他方溝壁12bを前記側面3cとして前記パッケージ基板2の前記実装面2a側に向けて凹む第一周回溝12が形成されている。
具体的には、前記外側部分10aは、前記デバイスチップ3の前記一面3aに直交する向きに断面にした状態において、前記デバイスチップ3の側面3cとの間に前記第一周回溝12の溝幅相当分の間隔を開けた位置に頂部10cを備えた山状の断面形状を持つように形成されている。そして、この断面形状によって、デバイスチップ3の側面3cとの間に前記第一周回溝12を形成させるようになっている。
第一封止部10は、前記デバイスチップ3の前記一面3aに直交する向きの断面輪郭形状を、デバイスチップ3及びパッケージ基板2の中央を巡るいずれの位置においても、実質的に同一の形態とするように構成されている。
【0026】
前記第一封止部10は、典型的には、エポキシ樹脂によって構成することができる。
【0027】
一方、前記第二封止部11は、前記デバイスチップ3の前記一面3aに対向する他面3bの全体、前記デバイスチップ3の前記側面3cのうち前記第一封止部10の前記外側部分10aで覆われている部分以外の全体、及び、前記第一封止部10の前記外側部分10aの表面の全体(実装面2aと接する外側部分10aの基部以外の表面)を被覆するように形成されている。第二封止部11は、前記の箇所を被覆する膜ないし層状をなす。
【0028】
すなわち、第二封止部11は、前記第一周回溝12内においても、外側部分10aによって構成される前記一方溝壁12aを被覆し、デバイスチップ3の側面3cによって構成される他方溝壁12bを被覆し、さらに、外側部分10aによって構成される溝底12cを被覆している。
【0029】
この実施の形態にかかる弾性波デバイスにあっては、第一に、前記第一封止部10及び前記第二封止部11によってデバイスチップ3とパッケージ基板2との間の封止性を高く確保させることができる。また、第二に、デバイスチップ3の側面3cの一部を前記第一封止部10の外側部分10aによって覆うことでデバイスチップ3とパッケージ基板2との機械的一体性を高く確保させることができる。また、第三に、前記第二封止部11が前記第一周回溝12を利用して前記デバイスチップ3の側面3cの可及的に広い範囲を被覆するようにできると共に、この第一周回溝12によって表面積を拡大させた第一封止部10の表面を第二封止部11によって被覆させることで、弾性波デバイスへの信号の入力によりデバイスチップ3に生じる熱を、第二封止部11を通じて効率的に外部に逃がすことができる。
【0030】
また、この実施の形態にあっては、前記第一封止部10の前記外側部分10aにおける前記第一周回溝12外の外壁部10eに、前記デバイスチップ3の前記側面3c側に向けて凹む第二周回溝13を形成させている。
図示の例では、前記第一封止部10の前記外側部分10aの前記外壁部10eに、前記パッケージ基板2の前記実装面2aに直交する向きにおいて隣り合う前記第二周回溝13との間に間隔を開けて二以上の前記第二周回溝13を形成させている。
これにより、第二封止部11によって被覆される第一封止部10の表面積を拡大して前記熱を第二封止部11を通じて一層外部に逃がしやすくしている。
【0031】
また、図示の例では、第一封止部10は絶縁性を有すると共に、その第一封止部10の外側を覆う第二封止部11が第一封止部10とパッケージ基板2の縁部との間でパッケージ基板2側に形成された基板側配線2dに接続されている。これにより、図示の例では、第二封止部11と基板側配線2dとを通じた前記熱の放出経路も形成されようになっている。この基板側配線2dをグランドパターンとしてあっても良い。
【0032】
以上に説明した弾性波デバイス1は、以下の各ステップを含む製造方法によって、適切且つ合理的に製造することができる。
【0033】
先ず、パッケージ基板2となる集合基板14上に設定される一つの弾性波デバイスを構成する領域ごとにそれぞれ、前記デバイスチップ3をフリップチップボンディングする(ステップ1、図6から図7)。より具体的には、前記領域ごとにそれぞれ形成されたパッケージ基板2側のバンプパッド2bにデバイスチップ3のバンプ4を固着させる。
【0034】
次いで、前記各領域毎に、前記第一封止部10を形成する(ステップ2、図8ないし図10)。
この前記第一封止部10を形成するステップにおいては、前記第一封止部10となる材料を粒子状にして所定の流動性を備えたものとし、これを前記第一封止部10の形成予定領域に噴き付けて前記第一封止部10を形成するようにする。
図示の例では、第一封止部10となる材料は、インクジェット技術により噴き付け可能で、かつ、光、典型的には紫外線の照射により流動性を低下させ、さらに、一定の温度に加熱することで硬化する性質を備えたものを用いるようにしている。
そして、第一封止部10を、第一封止部10となる材料の三回に分けた前記噴き付けと、各噴き付け後の光の照射により、形成させるようにしている。
すなわち、先ず、図8に示されるように内側部分10bと外側部分10aの一段目10fを実装面2a上に形成させた後、光を照射してこの一段目10fの流動性を低下させる。
次いで、図9に示されるように硬化した前記一段目10f上に、この一段目10fとの間に前記第二周回溝13を形成させるように外側部分10aの二段目10gを形成させた後、光を照射してこの二段目10gの流動性を低下させる。
次いで、図10に示されるように硬化した前記二段目10g上に、この二段目10gとの間に前記第二周回溝13を形成し、かつ、デバイスチップ3の側面3cとの間に前記第一周回溝12を形成させるように外側部分10aの三段目10hを形成させた後、光を照射してこの三段目10hの流動性を低下させる。
そして、この後、このように形成された第一封止部10を一定の温度に加熱することで、第一封止部10を硬化させるようにしている。
このように、第一封止部10を多段階の前記噴き付けと光の照射とにより積み重ね状に形成すると共に、各段階での噴き付け量と噴き付け位置とを制御することで、前記第一封止部10の前記外側部分10aにおける前記外壁部10eに、一又は二以上の第二周回溝13を容易に形成させることができる。
【0035】
次いで、前記第二封止部11を形成する(ステップ3、図11)。
第二封止部11をニッケルなどの金属により構成する場合は、第二封止部11は無電解メッキやスパッタによって形成できる。
第二封止部11をアルミナイトライドにより構成する場合は、第二封止部11はスパッタによって形成できる。
【0036】
この後、集合基板14にダイシングを施して前記領域の数分の弾性波デバイス1を前記集合基板14から生成する(ステップ4)。
【0037】
図12は、以上に説明した弾性波デバイス1(第一例)の構成の一部を変更した第二例を示している。
この第二例では、前記デバイスチップ3は、前記デバイスチップ3は、前記一面3aに面一となる面であって前記一面3aの一部となる鍔一面3fと、この鍔一面3fに直交する面であって前記デバイスチップ3の前記側面3cの一部となる突き出し端面3gと、前記鍔一面3fに対向する鍔他面3hとを備えた周回鍔部3eを備えている。そして、この周回鍔部3eを前記第一封止部10内に食い込ませるようにして前記第一封止部10を形成させている。
図示の例では、周回鍔部3eの突き出し端面3g側を第一封止部10に食い込ませるようにして、周回鍔部3e上に前記第一封止部10を形成させており、第一周回溝12の溝底12cが周回鍔部3eの鍔他面3hによって形成されている。
このようにした場合、デバイスチップ3と第二封止部11とを前記周回鍔部3eにおいても接触させることができ放熱性の向上に資すると共に、周回鍔部3eがいわばアンカーとして機能することからデバイスチップ3とパッケージ基板2との機械的一体性の向上も期待できる。
かかる周回鍔部3eは、デバイスチップ3となるウエハにハーフカットを施した後、このハーフカットにより形成された溝内においてウエハをダイシングすることで、形成可能である。
【0038】
図13は、前記第二例における前記第一封止部10の前記外側部分10aにおける前記外壁部10eに、二以上の第二周回溝13を形成させた第三例を示している。
【0039】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0040】
1 弾性波デバイス
2 パッケージ基板
2a 実装面
2b バンプパッド
2c 外部接続端子
2d 基板側配線
3 デバイスチップ
3a 一面
3b 他面
3c 側面
3d 隅部
3e 周回鍔部
3f 鍔一面
3g 突き出し端面
3h 鍔他面
4 バンプ
5 機能素子
5a、5aa、5ab 共振器
5b IDT電極
5c 電極指
5d バスバー
5e 反射器
5f 電極指
5g バスバー
6 キャビティ
7 回路
8 配線
9 グランド
10 第一封止部
10a 外側部分
10b 内側部分
10c 頂部
10d 基部
10e 外壁部
10f 一段目
10g 二段目
10h 三段目
11 第二封止部
12 第一周回溝
12a 一方溝壁
12b 他方溝壁
12c 溝底
13 第二周回溝
14 集合基板
x 伝搬方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13