(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130524
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A45D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040308
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知幸
(57)【要約】
【課題】印刷品位の低下を抑制する。
【解決手段】印刷制御装置である制御装置10が、印刷対象である爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得手段として機能し、取得された爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報に基づいて、印刷対象である爪Tのうち一部の領域である「印刷適合領域Ars」を特定する特定手段として機能し、特定手段により特定された「印刷適合領域Ars」を、「印刷を行う領域」とした印刷動作を提案する印刷領域提案手段として機能する制御部11を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づいて、前記印刷対象のうち一部の領域である印刷適合領域を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記印刷適合領域を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する印刷提案手段と、
を備えることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記印刷適合領域は、湾曲度合いが所定の値よりも低く曲面補正なしに印刷可能な領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記印刷提案手段は、前記印刷適合領域を、印刷を行う領域としてユーザに対して提示する提示手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記印刷提案手段は、所望のデザインを前記印刷適合領域内に収まるように配置調整する調整手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記印刷提案手段は、前記印刷適合領域内に印刷するのに適したデザインをユーザに対して提案するデザイン提案手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
印刷対象の表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得工程と、
前記情報に基づいて、前記印刷対象のうち一部の領域である印刷適合領域を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定された前記印刷適合領域を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する提案する印刷提案工程と、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、
印刷対象の表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得機能と、
前記情報に基づいて、前記印刷対象のうち一部の領域である印刷適合領域を特定する特定機能と、
前記特定機能により特定された前記印刷適合領域、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する提案する印刷提案機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の印刷ヘッドにより指の爪等にネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう)の印刷を行う印刷装置(ネイルプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、爪の場合、紙に印刷するのと異なり全体が平坦ではなく、端部等に湾曲している部分等がある。
湾曲している部分等に他の部分と同様の印刷を行うと、印刷濃度が薄くなってしまったり、印刷する絵柄(デザイン)が歪んでしまう等、印刷品位が低下し、ユーザが望むような印刷結果が得られないおそれがある。
印刷品位の低下を避けるためには、湾曲の程度、曲率等に応じた曲面補正等が必要となるが、曲面補正を行うには湾曲した部分の印刷濃度を上げる等の調整を行う構成が必要となり、例えば特許文献1に記載の装置等では曲面補正による印刷を実現することは困難であるとの課題がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷品位の低下を抑制することのできる印刷制御装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の印刷制御装置は、
印刷対象の表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づいて、前記印刷対象のうち一部の領域である印刷適合領域を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記印刷適合領域を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する印刷提案手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷品位の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】印刷装置の内部を上から見た場合の印刷装置の内部要部構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態における印刷制御処理の第1のパターンを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態における印刷制御処理の第2のパターンを示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態における印刷制御処理の第3のパターンを示すフローチャートである。
【
図7】表示部に表示される印刷適合領域を提示する領域提示画面の一例を示す図である。
【
図8】表示部に表示される印刷適合領域を提示する領域提示画面の一例を示す図である。
【
図9】(a)は、合わせ込み処理前のデザインデータと印刷適合領域との関係を示す説明図であり、(b)は、デザインデータを印刷適合領域合内に収まるように縮小して合わせ込んだ状態を示す説明図であり、(c)は、デザインデータを印刷適合領域内に収まるように向きを回転させつつ縮小して合わせ込んだ状態を示す説明図であり、(d)は、(c)に示す手法で合わせ込み処理を行った場合の印刷イメージを示す印刷イメージ表示画面の一例を示す図である。
【
図10】印刷適合領域に印刷するのに適した推奨デザインを表示部に表示させる推奨デザイン提示画面の一例を示す図である。
【
図11】
図10においていずれかのデザインが選択された場合に当該デザインを印刷した場合の印刷イメージを示す印刷イメージ表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図11を参照しつつ、本発明に係る印刷制御装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
例えば以下の実施形態では、印刷装置1が手の指Uの爪Tを印刷対象としてこれに印刷する印刷装置(ネイルプリント装置)である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置は、指Uの爪Tを印刷対象とするものに限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象とする印刷装置でもよい。さらに印刷装置1は、爪Tに印刷するものに限定されず、例えばネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものや紙等の各種被印刷媒体を印刷対象とするものでもよい。
【0010】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す模式的な斜視図である。
図2は、印刷装置の内部を上から見た場合の印刷装置の内部要部構成を示す模式的な平面図である。また
図3は、実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、x方向、y方向は、
図1等に示した方向をいうものとする。本実施形態においてx方向は印刷装置1の左右方向であり、y方向は印刷装置1の前後方向である。
【0011】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部21及び表示部22が設置されている。
なお、筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部21や表示部22は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、図示例では、操作部21が1つのボタンで構成されている場合を示しているが、操作部21は筐体2の上面等に設けられた複数のボタン等で構成されていてもよい。その他、筐体2にはインジケータ等が設けられていてもよい。
【0012】
操作部21は、ユーザが各種入力を行う各種操作ボタン等である。
操作部21が操作されると操作に応じた操作信号が後述の制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部21が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
【0013】
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでいる。表示部22は、後述の制御部11から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報を表示させる。
本実施形態において表示部22は、後述するように爪Tの領域のうち印刷を行うのに適した「印刷適合領域Ars」を表示させたり、「印刷適合領域Ars」内にデザインを印刷した場合の印刷イメージを表示させたり、「印刷適合領域Ars」に印刷するのに適した推奨デザインを表示させたりする。また各種の情報やメッセージ、警告表示等の表示画面等を表示させる。
なお、本実施形態の表示部22のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合にはタッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部21としても機能する。
【0014】
印刷装置1の筐体2の前面側(
図1においてy方向の手前側)であって装置の左右方向(
図1におけるx方向)のほぼ中央部には、印刷装置1による印刷時に指Uを挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。
筐体2の内部には、指配置部3、印刷機構4、撮影部5(
図3参照)等が搭載された図示しない装置本体が収容されている。
【0015】
指配置部3は、筐体2の内部であって指挿入口23に対応する位置に配置されている。
指配置部3は指挿入口23に対応する開口部を有し、指挿入口23から挿入された指U(印刷対象である爪Tに対応する指U)を開口部内に受け入れ、印刷に適した位置に保持する。
図2に示すように、指配置部3は、例えば指Uを載せる部分である配置部本体31と指配置部3の手前側(
図1及び
図2におけるy方向の手前側)を囲むように設けられた枠状部33等を備えている。例えば配置部本体31は昇降可能な構成を有しており、配置部本体31が上方向に上がることで配置部本体31に配置された指Uが枠状部33との間で挟み込まれて位置が固定される。なお、指Uを固定する構成はこれに限定されない。
また枠状部33よりもy方向の奥側(
図1における装置後方)は上方が開放された窓部32となっており、指配置部3内に配置された指Uの爪Tの表面が、窓部32から露出するようになっている。
【0016】
印刷機構4は、
図3に示すように、印刷ヘッド41、印刷ヘッド41を移動させるためのヘッド移動機構45等を備えている。
本実施形態において印刷機構4は、印刷ヘッド41によって印刷対象である指Uの爪T等に印刷を施す。印刷機構4は後述する制御部11によって、その動作が制御される。
【0017】
本実施形態の印刷ヘッド41は、印刷対象面(爪表面)に対向する面が、インクを吐出させる複数のノズルのインク吐出口(ノズル口)を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象である爪T等の表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクを貯留するインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
【0018】
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等、ネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう)の印刷を行うためのインク(デザイン印刷用のカラーインク)を吐出可能であるデザイン用ヘッド41aと、下地を形成する塗料として白色等の下地用インクを吐出可能な下地用ヘッド41bとを含んでいる。なお、単に「印刷ヘッド41」としたときはこれら両方を含むものとする。
なお、印刷装置1に設けられる印刷ヘッド41の数は2つに限定されず、これら以外のヘッドを含んでいてもよい。また、印刷ヘッド41に備えられるインクの種類はここに示したものに限定されない。
【0019】
本実施形態の印刷ヘッド41は、例えばy方向におけるインク吐出可能な領域の寸法が一般的な爪Tの長さ(y方向の長さ)と同じか多少大きくな形成されていることが好ましい。図示例では、印刷ヘッド41のy方向における長さが、爪Tが露出する窓部32のy方向における長さとほぼ同じとなっている。
これにより、印刷ヘッド41を1回x方向に移動(走査)させながら印刷すれば、y方向の位置を変えてさらに印刷することなく、爪Tの長さ方向に対応する印刷が完了する。
印刷ヘッド41は、
図2に示すようにx方向に沿うガイドシャフト43に係止されており、ガイドシャフト43に案内されてx方向に移動可能となっている。
【0020】
ヘッド移動機構45は、
図2に示すように、印刷ヘッド41を装置の左右方向(x方向)に移動させるものである。ヘッド移動機構45は、図示しないモータを含んでいる。モータは、例えばステッピングモータである。
また、本実施形態の印刷機構4には印刷ヘッド41の位置を把握するための位置検出部46が設けられている。
位置検出部46は例えば図示しないリニアスケール及びリニアスケールを読み取るスケールセンサ等を含んでいる。具体的には印刷ヘッド41の移動する範囲内に、遮光部と透光部とが交互に形成されたリニアスケールを設け、印刷ヘッド41等にスケールセンサを取り付ける。遮光部により光が遮られたことをスケールセンサが検出すると、制御部11に対して検知信号が出力され、制御部11ではこの検出信号に基づいて印刷ヘッド41の位置を特定できるようになっている。なお、位置検出部46の具体的な構成はここに例示したものに限定されない。
【0021】
筐体2の上面(天板)の内側であって、指配置部3に配置された指Uの爪Tの上方に対応する位置には、指配置部3から露出する爪T(爪Tを含む指U)を撮影して画像(爪画像)を取得することのできる撮影部5が固定されている。
撮影部5は、例えば200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラ等であるカメラ51と、撮影対象を照明する白色LED等で構成された光源52とを備えている(
図3参照)。
なお撮影部5は、指配置部3に載置された指Uの爪T等を撮影可能な位置に配置されていればよく、その具体的な配置は特に限定されない。
本実施形態では、カメラ51によって撮影された爪画像に基づいて爪領域(爪輪郭の内側の領域)や、爪領域中、印刷に適した領域である「印刷適合領域Ars」(
図7、
図8等参照)の検出等が行われる。なお、「印刷適合領域Ars」については後述する。
【0022】
また
図3に示すように、この他、印刷装置1は、通信部25、制御装置10等を備えている。
【0023】
通信部25は、例えば印刷装置1と連携して動作する外部機器がある場合に当該外部機器との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。印刷装置1と通信する外部機器としては、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末が想定される。なお印刷装置と通信する外部機器は特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
印刷装置1と外部機器との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と外部機器との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信する相手側の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0024】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備え、印刷装置1を制御するコンピュータである。本実施形態において、制御装置10は印刷制御装置として機能する。
【0025】
記憶部12には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部12のROM等には、プログラム記憶領域121が設けられており、プログラム記憶領域121には、例えば各種の印刷制御処理を行うための印刷制御プログラム等の各種プログラムが格納されている。制御部11がこれらのプログラムをRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部が統括制御される。すなわち、制御部11の各機能は、制御部11のCPUと記憶部12のプログラム記憶領域121等に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0026】
制御部11は、印刷機構4の印刷ヘッド41やヘッド移動機構45、位置検出部46等の動作を制御する。位置検出部46による検出結果は制御部11に取得される。
また制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52の動作を制御して、爪画像(爪Tを含む指Uの画像)等を撮影させ、撮影によって得られた画像データを取得する。
また制御部11は、表示部22の表示動作を制御し、表示部22に各種の表示画面やメッセージ画面等を表示させる。
さらに制御部11は、通信部25を制御して各種外部機器とデータの送受信を可能とする。
【0027】
また、特に本実施形態の制御部11は、取得手段として、印刷対象である爪Tの表面に関する情報を取得する。
ここで「爪Tの表面に関する情報」とは、印刷対象である爪Tの表面の湾曲度合い(曲率)に関する情報を含んでいる。なお、「爪Tの表面に関する情報」はこれに限定されず、その他の各種の情報を含んでいてもよい。
また制御部11は、爪画像から爪輪郭を抽出し、爪輪郭の内側領域を爪領域とする。制御部11が爪画像から爪輪郭を抽出する手法は特に限定されない。例えば制御部11は、爪画像に各種画像解析を行うことで爪Tとそれ以外の部分(指Uの皮膚等)との輝度差等を検出し、爪輪郭を抽出する。
【0028】
また制御部11は、情報(すなわち「爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報」)に基づいて印刷対象である爪Tにおける「印刷適合領域Ars」(
図7、
図8等参照)を特定する特定手段としても機能する。
ここで「印刷適合領域Ars」は、爪Tのうち一部の領域であり、爪領域のうち、湾曲度合いが所定の値よりも低く、曲面補正なしに印刷可能な領域である。なお「所定の値」は適宜設定される事項である。
【0029】
爪Tは特に爪幅方向(x方向)において湾曲形状となっており、例えば爪幅方向の中央部分が最も高く、両端部に行くにしたがい高さが低くなっていく曲面を有している。
湾曲度合いが強く、爪幅方向と両端部とで高さの差が大きい場合、爪領域全体に均一にインクを吐出させて印刷を行うと、両端部の傾斜のきつい部分等では印刷された画像が歪んだり、インクの濃度が薄くなってしまい、きれいな仕上がりとならない。このため、例えばy方向にずらしながら複数回印刷を行う場合には、インクの濃度が薄くなる両端部については複数回インクを塗り重ねるように印刷データを補正する等の曲面補正が行われている。
【0030】
しかし本実施形態のように、x方向の移動機構しか持たない印刷機構4の場合にはy方向にずらしながら複数回印刷を行うことができず、x方向への1回の移動(走査)によって印刷を行うことが予定されるため、曲面補正が難しい。
通常曲面補正を行う場合、例えば爪幅方向の中央部分ではほとんど湾曲がなく、曲面補正の補正値が「0」となる。ここから端部に向かって湾曲度合いが強まるにしたがって曲面補正の補正値が「1」、「2」・・・と大きくなってく。本実施形態において、「印刷適合領域Ars」とされる「曲面補正なしに印刷可能な領域」とは、例えば曲面補正の補正値が「0」である領域である。
【0031】
なお、爪Tの表面形状(湾曲度合い)は人により、また同じ人であっても各指Uによって様々である。例えば平坦な部分が広く、両端部の僅かな幅の部分だけが曲面補正の必要な湾曲度合いとなっている爪Tもあれば、全体に強く湾曲しており、曲面補正の補正値が「0」である領域がほとんどないような爪Tも存在する。
さらに、爪Tの長さ方向(「y方向」)の中央部では爪幅方向の両端部で大きく湾曲しているが、爪先や爪Tの根元側では端部までほとんど湾曲していないような形状の爪Tもある。
制御部11は、爪画像等からこうした各爪T特有の湾曲度合いを読み取って、曲面補正を行わずにきれいに印刷することのできる領域を算出し、爪Tにおける「印刷適合領域Ars」として特定する。
【0032】
なお、カメラ51によって撮影された画像から爪Tの湾曲度合いを読み取る曲率測定の手法としては、例えば「単眼カメラ距離計測技術」や「ステレオカメラ」等の技術を用いることができる。この場合には事前情報なしに曲率の算出を行うことができる。なお、特に「ステレオカメラ」を用いた曲率測定を行う場合には、例えば撮影角度の異なる複数枚の画像が取得されていることが好ましい。
なお、制御部11が「印刷適合領域Ars」を特定する手法はこれに限定されない。
例えばカメラによる爪画像ではなく、3Dスキャナ等を用いて爪Tの形状を読み取った結果に基づいて「印刷適合領域Ars」を特定してもよい。この場合には、より正確に爪Tの湾曲度合いを把握することが可能である。
【0033】
また、印刷対象となっている自分の爪Tの湾曲度合いのレベル等を操作部21等からユーザに入力させ、その入力結果に基づいて「印刷適合領域Ars」を特定してもよい。ユーザが事前に爪Tの湾曲度合いを入力する場合には、専用の測定器等を用いて測定した結果を入力してもよい。この場合、入力する測定結果は具体的な数値でもよいし、例えば複数の爪モデルの中から自分の爪Tの曲面形状(湾曲度合い)に最も近いモデルを選んで入力するような手法でもよい。
さらに過去に同じ爪Tについてユーザによって入力された結果や3Dスキャナによって読み取られた結果等があり、これが記憶部12等に保存されている場合には、保存されている情報に基づいて「印刷適合領域Ars」を特定してもよい。
これらの場合のように、事前に曲率等が入力、登録されている場合には、カメラ51によって撮影された爪画像から爪領域を導出し、当該爪領域に、入力、登録されている曲率を当てはめて、「曲面補正を行わずにきれいに印刷することのできる領域」を算出する。
【0034】
さらに、曲率及び爪Tの幅や長さが事前にユーザによって入力、登録されていたり、すでに記憶部12等に登録されている場合には、これらの値(設定値)からおおよその「印刷適合領域Ars」を特定してもよい。すなわち、前述のように、印刷装置1には指Uを配置する指配置部3が設けられている。指Uを指配置部3に配置することで、その指先位置(ほぼ爪先位置と同じ)は、ほぼ一意に決定する。このため、爪Tの幅や長さが事前に入力、登録されていれば、これと曲率(湾曲度合い)の情報とを用いておおよその「印刷適合領域Ars」の算出(特定)が可能となる。このようにして「印刷適合領域Ars」の算出(特定)を行う場合には、印刷装置1に撮影部5(撮影部5のカメラ51)が設けられていない場合でも「印刷適合領域Ars」を特定することができる。この場合、カメラ51による撮影も不要となるため、施術の工数が減り、施術時間を短縮することも可能となる。
【0035】
本実施形態の制御部11は特定手段として、以上のような手法等によって「印刷適合領域Ars」を特定すると、特定した「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作をユーザに提案する印刷提案手段として機能する。
印刷提案手段は、「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域としてユーザに対して提示する提示手段を含んでいる。具体的には、印刷提案手段としての制御部11は、爪領域のうち「印刷適合領域Ars」とされた範囲がどこであるかを表示部22等に表示させて、ユーザに提示する(
図7、
図8参照)。
【0036】
また、印刷提案手段は、ユーザが爪Tに印刷したいデザインとして予め選択した所望のデザインDがある場合に、当該デザインDを「印刷適合領域Ars」内に収まるように配置調整する調整手段を含んでいる。具体的には、印刷提案手段としての制御部11は、所望のデザインDが「印刷適合領域Ars」内に収まるように適宜移動させたり、縮小したり、デザインDの向きを変更する等の調整を行う(
図9(a)~
図9(c)参照)。
なお、「印刷適合領域Ars」内に収まるようにデザインDを移動させたり、縮小したり、デザインDの向きを変更する等の調整を行った場合には、調整後のデザインDを「印刷適合領域Ars」内に印刷した場合の仕上がりイメージ等を表示部22等に表示させて、ユーザに提示し(
図9(d)参照)、確認を求めることが好ましい。これによってイメージと違う印刷が行われてしまうのを防止することができる。
【0037】
また、印刷提案手段は、「印刷適合領域Ars」内に印刷するのに適したデザインD(推奨デザイン)をユーザに対して提案するデザイン提案手段を含んでいてもよい。具体的には、例えば「印刷適合領域Ars」が爪Tの中央部のみである場合には、爪全体に印刷される全体柄ではなく、部分的に印刷されるワンポイント柄をユーザに提案する。
また例えば「印刷適合領域Ars」が爪先部分のみであるような場合には、爪先部分のみに印刷されるフレンチネイルの各種デザインをユーザに提案する。また逆に「印刷適合領域Ars」が爪Tの根元部分のみであるような場合には、爪Tの根元部分のみに印刷されるフレンチネイルの各種デザインをユーザに提案する。
【0038】
例えば「印刷適合領域Ars」が爪先部分のみの場合、
図10に示すように、表示部22等に推奨するデザインDを一覧表示させ、ユーザに選択を促す。
なお、ユーザがいずれかのデザインDを選択した場合には、選択されたデザインDを「印刷適合領域Ars」内に印刷した場合の仕上がりイメージ等を表示部22等に表示させて、ユーザに提示することが好ましい(
図11参照)。
【0039】
次に
図4から
図11等を参照しつつ、本実施形態における印刷制御方法について説明する。
本実施形態における印刷制御装置である制御部11は、爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報である爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報を取得して、当該情報に基づき、爪領域のうち「印刷適合領域Ars」を特定する。そして特定された「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する。
制御部11による印刷動作の提案の仕方として、本実施形態では、3つのパタ-ンが想定されており、いずれのパターンで提案するかはデフォルトで優先順位が設定されていてもよいし、どのようなパターンで印刷動作の提案を受けるかを、ユーザが操作部21等から設定できるようになっていてもよい。
【0040】
図4は、3つのパタ-ンのうち「第1のパターン」による場合の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、この場合には、まず制御部11は、指配置部3に配置された指Uをカメラ51によって撮影させ、窓部32から露出している爪T及びその指Uの画像(爪画像)を取得させる(ステップS1)。そして爪画像から爪Tに関する情報として爪Tの表面の湾曲度合い(曲率)を検出し(ステップS2)、検出された情報を取得手段として取得する(ステップS3)。なお爪Tの表面の湾曲度合いの情報を爪画像以外(例えば3Dスキャナからの情報やユーザによる入力情報等)から取得する場合には、ステップS1及びステップS2の工程がなくてもよい。さらに爪Tの表面の湾曲度合い(曲率)が、例えば各種端末装置(例えばスマートフォン)等の外部機器によって検出されてもよく、この場合には、制御部11は、当該外部機器から爪Tの表面の湾曲度合い(曲率)を爪Tに関する情報として取得する。
【0041】
次に制御部11は、取得された情報に基づいて爪Tにおける「印刷適合領域Ars」を特定する(ステップS4)。例えば制御部11は、曲面補正の補正値が「0」となるような範囲を特定する。
そして制御部11は、特定された「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域として表示部22に表示させることにより、提示手段としてユーザに提示する(ステップS5)。
【0042】
図7及び
図8は、表示部に表示される印刷適合領域を提示する領域提示画面の一例を示す図である。
このうち例えば
図7は、爪領域の幅方向における両端部と、長さ方向における両端部(すなわち、爪先領域及び根元領域)とを除く領域を「印刷適合領域Ars」として特定した場合の領域提示画面221の一例を示す図である。
また
図8は、爪領域のうち、爪先部分のみが「印刷適合領域Ars」として特定した場合の領域提示画面221の一例を示す図である。
【0043】
自分の爪Tのうち、どの辺りが「印刷適合領域Ars」とされるのかをユーザが分かりやすいように、領域提示画面221では
図7及び
図8に示すように「印刷適合領域Ars」をユーザの爪T等の画像(爪画像)に重畳して表示させることが好ましい。
なお、「印刷適合領域Ars」をユーザに提示する領域提示画面221の表示の仕方や表示内容等は、図示例に限定されない。
【0044】
なお、領域提示画面221において提示された「印刷適合領域Ars」が狭すぎる等の場合、ユーザが修正を求めることができてもよい。例えば曲面補正の補正値が「0」である領域だけが「印刷適合領域Ars」とされている場合に、補正値が「1」や「2」であればそれほど気にならない印刷結果が得られるような場合、補正値が「2」までの領域を「印刷適合領域Ars」とするように修正指示を行う。すなわち、「湾曲度合いが所定の値よりも低い領域」を、補正値が「0」である領域から補正値が「0」~「2」までの領域に拡張させる。この場合には、修正後の「印刷適合領域Ars」を再度領域提示画面221において提示してもよい。
【0045】
次に制御部11は、デザインDを「印刷適合領域Ars」に合わせ込んで印刷データを生成し、印刷機構4に出力して、「印刷適合領域Ars」にデザインDを印刷させる(ステップS6)。
なおこの場合、デザインDはデフォルトのデザイン等であってもよいし、領域提示画面221に提示された「印刷適合領域Ars」を見てユーザが選択したものであってもよい。
【0046】
制御部11は印刷が完了したか否かを適宜判断し(ステップS7)、完了していない場合(ステップS7;NO)には、ステップS6に戻って処理を行う。他方印刷が完了した場合(ステップS7;YES)には、印刷制御処理を終了する。
【0047】
図5は、3つのパタ-ンのうち「第2のパターン」による場合の処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、この場合には、まずユーザが爪Tに印刷したいデザインDを操作部21等から選択し、選択結果が制御部11に受け付けられる。
なお
図5におけるステップS12からステップS15は、
図4におけるステップS1からステップS4と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
制御部11は「印刷適合領域Ars」が特定されると、当該「印刷適合領域Ars」に所望のデザインD(すなわち、ステップS11において予めユーザによって選択されたデザインD)を合わせ込む(ステップS16)。具体的には、制御部11は調整手段として、所望のデザインを「印刷適合領域Ars」内に収まるように配置調整する。
例えば
図9(a)に示すように所望のデザインDが「印刷適合領域Ars」よりも大きい場合、制御部11は、例えば
図9(b)に示すように「印刷適合領域Ars」内に収まるようにデザインDを縮小する。またデザインDを傾けたり、回転させたり、移動させたりしてもよい。
例えばデザインDを回転させることで「印刷適合領域Ars」内に収まりやすくなる場合(例えば「印刷適合領域Ars」が縦長である場合にデザインDが横長である場合等)には、
図9(c)において矢印で示すようにデザインDを適宜回転させて、縦長の「印刷適合領域Ars」の形状に近付ける。このようにすることで、
図9(b)に示す場合よりも縮小の程度が少ない状態でもデザインDを「印刷適合領域Ars」内に収めることができる。
【0049】
デザインDを「印刷適合領域Ars」に合わせ込んだら、制御部11は「印刷適合領域Ars」内にデザインDを合わせ込んだ結果を表示部22に表示させる(ステップS17)。
図9(d)は、
図9(c)に示すようにデザインDを少し矢印方向に回転させて向きを調整し、「印刷適合領域Ars」内に収まる大きさまで縮小した場合の印刷イメージを示す印刷イメージ表示画面222の一例を示す図である。
印刷結果をイメージしやすいように、印刷イメージ表示画面222では「印刷適合領域Ars」内に収まるように配置調整されたデザインDを爪画像に重畳して表示させることが好ましい。なお、印刷イメージ表示画面222の表示の仕方や表示内容等は、図示例に限定されない。
【0050】
制御部11は、配置調整の結果がユーザに承認されたか否かを適宜判断する(ステップS18)。
例えば印刷イメージ表示画面222には、
図9(d)に示すように「OKボタン223」「再調整ボタン224」等が設けられることが好ましい。ユーザが配置調整後のデザインDの向きや大きさでは好みのイメージではないような場合には、「再調整ボタン224」を操作する。この場合には、制御部11は、配置調整の結果がユーザに承認されなかった(ステップS18;NO)と判断し、「印刷適合領域Ars」へのデザインDの合わせ込みを再調整する(ステップS19)。そしてステップS17に戻って処理を繰り返す。
なお、印刷イメージ表示画面222には、「OKボタン223」「再調整ボタン224」の他に、図示しない「戻るボタン」等が設けられていてもよい。そしてユーザが配置調整後のデザインDの向きや大きさでは好みのイメージではないような場合に、「戻るボタン」を操作すると、制御部11がデザインDの(再)選択の処理を行うようにしてもよい。
【0051】
他方、ユーザが「OKボタン223」を操作した場合には、制御部11は、配置調整の結果がユーザに承認された(ステップS18;YES)と判断する。そして、制御部11は、デザインDを「印刷適合領域Ars」に合わせ込んで生成した印刷データを、印刷機構4に出力して、「印刷適合領域Ars」にデザインDを印刷させる(ステップS20)。
制御部11は印刷が完了したか否かを適宜判断し(ステップS21)、完了していない場合(ステップS21;NO)には、ステップS20に戻って処理を行う。他方印刷が完了した場合(ステップS21;YES)には、印刷制御処理を終了する。
【0052】
図6は、3つのパタ-ンのうち「第3のパターン」による場合の処理を示すフローチャートである。
なお
図6におけるステップS31からステップS34は、「第1のパターン」による処理(
図4におけるステップS1からステップS4)と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
制御部11は「印刷適合領域Ars」が特定されると、デザイン提案手段として、当該「印刷適合領域Ars」内に印刷するのに適したデザインDをユーザに対して提案する。
具体的には、例えば、「印刷適合領域Ars」が
図8に示すような爪先部分だけであるような場合、爪先のみに印刷されるフレンチネイルのデザインDを表示部22に(ステップS21)一覧表示させる等により、ユーザに提案する(ステップS35)。
【0054】
例えば
図10は、「印刷適合領域Ars」に印刷するのに適した推奨デザインを表示部22に表示させる推奨デザイン提示画面225の一例を示す図である。
図10では、推奨デザインとして「A」から「D」が表示され、ユーザがいずれかのデザインDについてタッチ操作すると、当該デザインDがアクティブとなり、選択されるようになっている(
図10に示す例では「C」が選択状態)。
なお、推奨デザイン提示画面225の表示の仕方や表示内容、構成等は図示例に限定されない。例えばさらに多くのデザインDが選択肢として用意され、推奨デザイン提示画面225をスクロールすることで、他の選択肢が順次表示されるようになっていてもよい。また、推奨デザイン提示画面225中に「次のページ」「前のページ」といった画面遷移を行うためのボタンが用意され、ボタンが押されるごとに異なる選択肢が表示された推奨デザイン提示画面225に切り替わるようにしてもよい。
【0055】
ユーザがいずれかのデザインDを選択すると(例えば推奨デザイン提示画面225においていずれかのデザインDを選択する操作を行うと)、制御部11がユーザによるデザインDの選択を受け付ける(ステップS36)。
なお、ユーザがいずれかのデザインDを選択したときは、表示部22等に確認画面を表示させて選択されたデザインDの印刷を実行するか否か確認を求めてもよい。
【0056】
例えば
図11は、
図10においてデザインDとして「C」が選択された場合に当該デザインDを印刷した場合の印刷イメージを示す印刷イメージ表示画面226の一例を示す図である。
例えば印刷イメージ表示画面226には、
図11に示すように「決定ボタン227」「再選択ボタン228」等が設けられることが好ましい。この場合、選択したデザインDが爪Tの「印刷適合領域Ars」に配置された状態を見て、ユーザのイメージと異なっていた場合には、「再選択ボタン228」を操作することで、
図10の画面に戻り、デザインDを選び直すことができる。
【0057】
一方「決定ボタン227」が操作されると制御部11は印刷動作に移行する。
すなわち、制御部11は、選択されたデザインDを「印刷適合領域Ars」に合わせ込んで印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷機構4に出力して「印刷適合領域Ars」にデザインDを印刷させる(ステップS37)。
制御部11は印刷が完了したか否かを適宜判断し(ステップS38)、完了していない場合(ステップS38;NO)には、ステップS37に戻って処理を行う。他方印刷が完了した場合(ステップS38;YES)には、印刷制御処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態では制御部11が曲面補正を要さない「印刷適合領域Ars」を特定して、当該領域を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する。このため曲面補正に対応した印刷を行わない場合でも、湾曲度合いの強い端部において色が薄くなる等、品質の悪い印刷が行われるのを防ぐことができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、印刷制御装置である制御装置10が、印刷対象である爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得手段、情報に基づいて、爪Tのうち一部の領域である「印刷適合領域Ars」を特定する特定手段、特定手段により特定された「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する印刷提案手段、として機能する。
ユーザがデザインを決める際に、自分の爪Tの表面形状を意識せずに、デザインや印刷位置を適当に設定してしまうと、湾曲度合いの強い部分(傾斜がきつい端部等)に印刷された部分ではデザインが歪んでしまったり、色むらや色の薄い部分等が生じて所望の仕上がりとならない場合がある。
この点、本実施形態では、制御部11が曲面補正を施さなくても問題なく印刷を行うことのできるような「印刷適合領域Ars」を特定してこれに応じて印刷動作を行うことができる。このため、ユーザ自らがデザインDや印刷位置等に気を付ける必要がなく、上質な品位のネイルプリントを気軽に行うことができる。
また、x方向に1回移動(走査)しながら印刷する簡易な構成の印刷装置でも、色むら等の無いきれいな仕上がりのネイルプリントを実現することができる。
【0060】
また本実施形態において、爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報は、爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報である。
そして、「印刷適合領域Ars」は、湾曲度合いが所定の値よりも低く曲面補正なしに印刷可能な領域である。
爪Tは、特に爪幅方向における中央部分が最も高く、両端部に行くほど低くなる湾曲形状となっており、端部ではインクの濃度が低くなり薄くなってしまいがちである。このため複数回インクを塗り重ねる印刷手法をとる場合には、端部でのインク濃度が高くなるように曲面補正によりインク濃度の調整を行う。しかし、複数回インクを塗り重ねるような手法によらずに印刷する場合には曲面補正を行うことが難しく、端部等に色の薄い部分が生じて目立ってしまう。
この点本実施形態では爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報を取得し、当該情報に基づいて曲面補正なしにきれいに印刷することのできる「印刷適合領域Ars」を特定する。そして当該領域を、印刷を行う領域とした印刷動作を提案する。このため、印刷品位が低下するのを防ぐことができる。
【0061】
また本実施形態において、印刷提案手段である制御部11は、「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域としてユーザに対して提示する提示手段を含んでいる。
これにより、印刷前に自分の爪Tのどの範囲が印刷を行う領域とされたかをユーザが認識することができ、想定していない印刷結果となるのを防止することができる。
【0062】
また本実施形態において、印刷提案手段である制御部11は、所望のデザインを「印刷適合領域Ars」内に収まるように配置調整する調整手段を含んでいる。
このため、デザインDを選んだユーザの希望を尊重しつつ、曲面補正なしにきれいに印刷することのできる領域に適切に印刷して高品位のネイルプリントを実現することができる
【0063】
また本実施形態において、印刷提案手段である制御部11は、「印刷適合領域Ars」内に印刷するのに適したデザインDをユーザに対して提案するデザイン提案手段を含んでいる。
これにより、デザインDの配置調整等を行うことなく、ユーザが選んだデザインDを選んだ際のイメージ通りに「印刷適合領域Ars」内に印刷することができる。
【0064】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0065】
例えば、本実施形態では、制御部11が「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作をユーザに提案する提案の仕方として、「第1のパターン」(
図4参照)、「第2のパターン」(
図5参照)、「第3のパターン」(
図6参照)の3つのパターンが用意され、自動(デフォルト設定等)又はユーザによる選択により、いずれかのパターンを選んで提案することができる場合を例示したが、印刷装置1がこれら3つのパターンを備えていることは必須ではない。
印刷装置1は、少なくともいずれか1つのパターンでユーザに提案できるものでもよい。
【0066】
また本実施形態では、印刷装置1がx方向に印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構45を備えている場合を例示したが、印刷装置1がヘッド移動機構45を備えていることは必須ではない。
例えば印刷ヘッド41は印刷装置1の幅方向(x方向)の中央部等に固定されており、指Uを配置する指配置部3がガイドレール等に沿ってx方向に移動するようになっていてもよい。この場合、指配置部3を移動させるモータ等を備えてもよいし、ユーザが自分で指配置部3に配置させたまま指Uを移動させるようにしてもよい。ユーザが手動で移動させる場合には印刷装置1に一切モータを備えない構成とすることもできる。
指配置部3をユーザが手動で移動させる場合には、例えば撮影部5のカメラ51等で指配置部3に配置された指U(指Uの爪T)の動きを撮影し、撮影された画像から制御部11が印刷対象である爪Tの位置を確認し、適宜印刷ヘッド41からのインク吐出を制御するようにしてもよい。また、表示部22等に指配置部3の移動イメージ等を表示させて、所定の速度で指U(指Uを保持した指配置部3)を移動させるようにユーザに促してもよい。
【0067】
また本実施形態では、筐体2を備え、卓上等に載置して用いられる印刷装置1を想定したが、印刷制御装置である制御装置10によって制御される印刷装置は実施形態に示したような据え置き型の装置に限定されない。
例えば印刷装置は、ユーザが手に持って操作するハンディタイプの装置であってもよい。
この場合には、例えば印刷装置を配置する設置枠等を設けて、設置枠に印刷装置を設置した際に印刷ヘッドに対応する位置に爪T(爪Tを有する指U)をセットする指配置部を設ける。そして、印刷装置又は指を配置した指配置部のいずれか一方をユーザが爪幅方向に移動させることで印刷を行ってもよい。この場合の設置枠には、移動させる側の装置または部材の移動経路をガイドするガイドレール等が設けられることが好ましい。
【0068】
またこの場合、指配置部と印刷ヘッドとの位置関係を把握するカメラを設置枠等に設けて爪Tの適切な位置に印刷を行うことができるようにユーザの操作をガイドすることが好ましい。すなわち、例えば印刷装置と連携するスマートフォン等の端末装置を備え、カメラで撮影した画像を端末装置の表示部等に表示させて、ユーザに印刷装置や指配置部を設置する位置や移動させるスピード、タイミング等をガイドする。
なお、印刷装置と爪の位置との連携を確実に図るために、例えば印刷開始位置を示す目印等を指配置部等に設けておけば、カメラで撮影した際に印刷開始のタイミング等を画像から把握しやすくなる。
またこのような装置構成とした場合、カメラは設置枠等に設けられている専用のものでなくてもよく、例えばスマートフォン等の端末装置のカメラを用いるようにしてもよい。
印刷装置をこのようにハンディタイプのものとすれば、取り扱いが容易であり、使用しないときには容易に片付けてしまっておくことができ、置き場所にも困らず便利である。
【0069】
また、例えば印刷ヘッド41が、そのx方向の寸法、y方向の寸法が爪Tを露出させる窓部32のx方向の寸法、y方向の寸法と同じかこれよりも大きく形成されている場合には、印刷ヘッド41をx方向、y方向のいずれにも移動させずに爪Tに印刷することができる。印刷ヘッド41をこのような大きさに形成した場合には、x方向、y方向ともヘッド移動機構を要さない構成としてもよい。
【0070】
また本実施形態では、y方向のヘッド移動機構を備えず、x方向への1回の移動(走査)で印刷を完了させる印刷装置1を例示したが、印刷装置の構成はこれに限定されない。
例えばx方向、y方向とも印刷ヘッド41を移動させることができるようなヘッド移動機構を備え、xy方向に適宜印刷ヘッドを移動させながら複数回の移動(走査)で爪Tに印刷を行うような装置であってもよい。
この場合、印刷装置は、曲面補正を行うことができてもよい。
そして、このような印刷装置において、x方向への1回の移動(走査)で印刷を完了させる簡易印刷モード等が選択できてもよく、この場合に本実施形態で示したx方向への1回の移動(走査)で印刷を完了させる場合の「印刷適合領域Ars」の特定、「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作の提案等を行うようにしてもよい。
通常の印刷モードの他にこのような簡易印刷モード等を設けることで、施術に時間をかけられない場合等には簡易印刷モードを用いて迅速にネイルプリントを行う等、事情に応じて選択することが可能となる。
【0071】
また本実施形態では、印刷装置1が単体で印刷動作を完結できるように構成し、操作部21や表示部22、撮影部5等を印刷装置1が備えるものとしたが、印刷装置1の構成はこれに限定されない。
例えば印刷装置1が端末装置(例えばスマートフォン)等の外部機器と連携して印刷システムを構成してもよい。この場合には、印刷装置1には印刷処理を行う印刷機構等、最低限の機構を備え、その他の機能については、連携する外部機器と分担する。
具体的には、例えばネイルデザインの選択、印刷を行う爪の指の指種の選択等を外部機器の操作部で行ってもよいし、外部機器の表示部が「印刷適合領域Ars」を提示する領域提示画面221、「印刷適合領域Ars」内に印刷するのに適した推奨デザインを表示させる推奨デザイン提示画面225、爪TにデザインDを印刷した場合の印刷イメージを示す印刷イメージ表示画面222,226の表示等を行ってもよい。さらに各種の画像は外部機器のカメラを用いて取得してもよい。この場合には、印刷装置1が操作部21や表示部22、撮影部5等を備えなくてもよい。これにより、印刷装置1をより安価で簡易な構成とすることができる。
【0072】
また、本実施形態では印刷装置1の制御装置10が印刷制御装置であり、制御部11が、爪Tの表面の湾曲度合いに関する情報を取得する取得手段、当該情報に基づいて、爪Tのうち一部の領域である「印刷適合領域Ars」を特定する特定手段、特定された「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域とした印刷動作をユーザに提案する印刷提案手段として機能する場合を例示したが、取得手段、特定手段、印刷提案手段として機能するのは印刷装置1の制御部11に限定されない。
例えば撮影部5のカメラ51で撮影された画像等、印刷装置1側で取得された情報が適宜外部機器の制御部に送られて、外部機器の制御部が印刷制御装置として、取得手段、特定手段、印刷提案手段として機能してもよい。なお、この場合の印刷提案手段は、印刷適合領域を、「印刷適合領域Ars」を、印刷を行う領域としてユーザに対して提示する提示手段、所望のデザインを「印刷適合領域Ars」内に収まるように配置調整する調整手段「印刷適合領域Ars」内に印刷するのに適したデザインをユーザに対して提案するデザイン提案手段を含む。
このように外部機器の制御部が印刷制御装置として機能する場合には、外部機器の制御部が印刷制御装置として機能するためのプログラム(例えば印刷装置1にネイルプリントを行わせるためのネイルプリントアプリケーションプログラム等)や必要なデータも外部機器側の記憶部等に格納される。
【0073】
また本実施形態では、印刷装置1の印刷機構4がデザイン用ヘッド41aと下地用ヘッドbとを有している場合を例示したが、印刷機構4がデザイン用ヘッド41aと下地用ヘッドbとを備えることは必須ではない。
例えば下地用ヘッド41bを有さずデザイン用ヘッド41aのみで構成されていてもよい。また印刷装置1は、印刷ヘッド41がデザイン用ヘッド41aを有さず下地用ヘッド41bのみで構成されている下地専用の印刷装置等であってもよい。
【0074】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置
3 指配置部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
5 撮影部
51 カメラ
52 光源
10 制御装置
11 制御部
12 記憶部
21 操作部
22 表示部
Ars 印刷適合領域