(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130533
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】油圧ポンプモータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01F7/18 D
H01F7/18 Q
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040319
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプモータ100のバルブを開閉するための電磁ソレノイドアクチュエータの応答性を向上させる。
【解決手段】オイルをシリンダに供給するための第1圧力ポートと、シリンダ内のオイルをシリンダから排出するための第2圧力ポートと、第1圧力ポートを導通させてオイルをシリンダに供給する開状態と、第1圧力ポートを遮断してオイルをシリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための切替部と、開状態と閉状態とのいずれかに切替部を遷移させるためのソレノイド5と、ソレノイド5に直列に接続されたコンデンサ32と、ソレノイド5のインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷をコンデンサ32にチャージし、コンデンサ32にチャージした電荷に基づく電流をソレノイド5に供給することにより開状態と閉状態とのいずれかに切替部を遷移させる制御部309と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルをシリンダに供給するための圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダに供給する開状態と、前記圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための切替部と、
前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させるためのソレノイドと、
前記ソレノイドに直列に接続されたコンデンサと、
前記ソレノイドのインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷を前記コンデンサにチャージし、当該コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を当該ソレノイドに供給することにより前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させる制御部と、
を備える油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記コンデンサに蓄えた電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給するための配線上に第1電界効果トランジスタが設けられる、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記昇圧チョッパ回路は、所定の直流電源からの電流をPWM制御により前記コンデンサに供給するための第2電界効果トランジスタを備え、
前記制御部は、前記コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給した後、前記直流電源からの電流を前記ソレノイドに供給する、
請求項1又は2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記シリンダに収容されたピストンが当該シリンダの所定位置に到達したことに基づいて、前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させる、
請求項1又は2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項5】
前記制御部は、共通の前記コンデンサに蓄えられた電荷に基づく電流を、複数の前記シリンダのそれぞれに対応する複数の前記ソレノイドへ供給する、
請求項1又は2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項6】
オイルをシリンダに供給するための圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダに供給する開状態と、前記圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための切替部と、
を有する油圧ポンプモータを制御する回路であって、
前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させるためのソレノイドと、
前記ソレノイドに直列に接続されたコンデンサと、
前記ソレノイドのインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷を前記コンデンサにチャージし、当該コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を当該ソレノイドに供給することにより前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させる制御部と、
を備える制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを利用する油圧ポンプモータ、及び当該油圧ポンプモータを制御するための制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータ等を駆動するための液圧モータを備える装置において、この液圧モータにオイルを供給するための油路が連通している状態と、この油路が遮断されている状態とを切り替えるためのバルブを設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、このバルブを電磁ソレノイドにより開閉することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明では、電磁ソレノイドによりバルブを開閉する際の応答性が良好でなかった。このため、液圧モータに油を供給する油路が連通している状態と、この油路が遮断している状態とを適切なタイミングで切り替えることができないという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、油圧ポンプモータのバルブを開閉するための電磁ソレノイドアクチュエータの応答性を向上させることができる油圧ポンプモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の油圧ポンプモータは、オイルをシリンダに供給するための圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダに供給する開状態と、前記圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための切替部と、前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させるためのソレノイドと、前記ソレノイドに直列に接続されたコンデンサと、前記ソレノイドのインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷を前記コンデンサにチャージし、当該コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を当該ソレノイドに供給することにより前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させる制御部と、を備える。
【0007】
前記油圧ポンプモータは、前記コンデンサに蓄えた電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給するための配線上に第1電界効果トランジスタが設けられていてもよい。前記油圧ポンプモータは、前記昇圧チョッパ回路は、所定の直流電源からの電流をPWM制御により前記コンデンサに供給するための第2電界効果トランジスタを備え、前記制御部は、前記コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給した後、前記直流電源からの電流を前記ソレノイドに供給してもよい。
【0008】
前記制御部は、前記シリンダに収容されたピストンが当該シリンダの所定位置に到達したことに基づいて、前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させてもよい。前記制御部は、共通の前記コンデンサに蓄えられた電荷に基づく電流を、複数の前記シリンダのそれぞれに対応する複数の前記ソレノイドへ供給してもよい。
【0009】
本発明の第2の態様の制御回路は、オイルをシリンダに供給するための圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダに供給する開状態と、前記圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための切替部と、を有する油圧ポンプモータを制御する回路であって、前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させるためのソレノイドと、前記ソレノイドに直列に接続されたコンデンサと、前記ソレノイドのインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷を前記コンデンサにチャージし、当該コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を当該ソレノイドに供給することにより前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記切替部を遷移させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油圧ポンプモータのバルブを開閉するための電磁ソレノイドアクチュエータの応答性を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】油圧ポンプモータにおいて複数のバルブユニットが配置される様子を示す。
【
図4】油圧ポンプモータを制御するための制御回路の例を示す。
【
図5】制御部がコンデンサにチャージした電荷に基づく電流をソレノイドに供給する処理の一例を示す。
【
図6】制御部がコンデンサにチャージした電荷に基づく電流をソレノイドに供給する処理の一例を示す。
【
図7】制御部がコンデンサにチャージした電荷に基づく電流をソレノイドに供給する処理の一例を示す。
【
図8】制御部がコンデンサにチャージした電荷に基づく電流をソレノイドに供給する処理の一例を示す。
【
図10】油圧ポンプモータ100が複数の制御部を備える場合の例を示す。
【
図11】油圧ポンプモータによるバルブの開閉のタイミングの例を示す。
【
図12】油圧ポンプモータによるバルブの開閉のタイミングの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の油圧ポンプモータ100の構成を示す。油圧ポンプモータ100は、例えば、車両に搭載されている。油圧ポンプモータ100は、建設機械等に搭載されてもよい。油圧ポンプモータ100は、第1圧力ポート1、第2圧力ポート2、バルブ3及びバルブ4(切替部に相当)、ソレノイド5、シリンダ6、ピストン7及びクランクシャフト8を備える。第1圧力ポート1、第2圧力ポート2、バルブ3及びバルブ4は、
図1に示すバルブユニット10を構成する。
【0013】
第1圧力ポート1は、オイルをシリンダ6に供給するための供給口である。第1圧力ポートは、比較的高い第1圧力のオイルが循環する高圧ライン11に接続されている。第2圧力ポート2は、シリンダ6内のオイルをシリンダ6から排出するための排出口である。第2圧力ポートは、第1圧力より低い第2圧力のオイルが循環する低圧ライン12に接続されている。
【0014】
バルブ3及びバルブ4は、それぞれ第1圧力ポート1及び第2圧力ポート2を開閉させる。バルブ3は、第1圧力ポート1を導通させる開状態と、第1圧力ポート1を遮断する閉状態とを切り替える。バルブ4は、第2圧力ポート2を導通させる開状態と、第2圧力ポート2を遮断する閉状態とを切り替える。例えば、バルブ3の開状態では、オイルが高圧ライン11から第1圧力ポート1を介してシリンダ6へ供給される。一方、バルブ3の閉状態では、オイルが高圧ライン11からシリンダ6へ供給されない。
【0015】
図2(a)及び
図2(b)は、バルブ3及びバルブ4の開閉の様子を示す。
図2(a)は、バルブ3が閉状態であり、バルブ4が開状態である場合の様子を示す。
図2(a)の太矢印で示すように、バルブ3が閉状態であり、バルブ4が開状態である場合、クランクシャフト8の回転にともなって、シリンダ6内のオイルが第2圧力ポート2を介して低圧ライン12へ排出されたり、低圧ライン12のオイルが第2圧力ポート2を介してシリンダ6へ供給されたりする。
【0016】
図2(b)は、バルブ3が開状態であり、バルブ4が閉状態である場合の様子を示す。
図2(b)の太い矢印で示すように、バルブ3が開状態であり、バルブ4が閉状態である場合、クランクシャフト8の回転にともなって、シリンダ6内のオイルが第1圧力ポート1を介して高圧ライン11へ排出されたり、高圧ライン11のオイルが第1圧力ポート1を介してシリンダ6へ供給されたりする。
【0017】
ソレノイド5は、開状態と閉状態とのいずれかにバルブ3又はバルブ4を遷移させる。第2圧力ポート2は、低圧ライン12に接続されており、この低圧ライン12を循環するオイルからバルブ4が受ける圧力は比較的小さい。このため、ソレノイド5は、比較的小さな力でバルブ4を開閉することが可能であり、バルブ4を開状態又は閉状態に電磁力により直接遷移させる。
【0018】
一方、第1圧力ポート1は、高圧ライン11に接続されており、この高圧ライン11を循環するオイルからバルブ3が受ける圧力は比較的大きい。このため、ソレノイド5は、バルブ3を開くには比較的大きな力を要し、閉状態のバルブ3を開状態に電磁力により直接的に遷移させることはできない。そこで、ソレノイド5は、バルブ4を閉状態に遷移させることにより、ピストン7がシリンダ6内を圧縮する力を利用してシリンダ6の内圧を上昇させ、この内圧によって閉状態のバルブ3を開状態へ遷移させる。ソレノイド5は、閉状態のバルブ3を開状態へ遷移させた後に、バルブ3が再び閉状態に遷移しないように、電磁力によりバルブ3を開状態において維持する。
【0019】
ピストン7は、シリンダ6に収容されている。ピストン7は、クランクシャフト8の回転にあわせてシリンダ6内の容積を減少又は増加させる。例えば、クランクシャフト8は、車両の電動機又はエンジンから伝達された駆動力により回転する。
【0020】
本実施形態の油圧ポンプモータ100では、後述する昇圧チョッパ回路により直流電源31の端子間電圧より高い電圧でコンデンサに電荷をチャージし、ソレノイド5の電磁力の立ち上がり時に、このコンデンサにチャージされた電荷に基づく電流をソレノイド5に供給する。このようにして、油圧ポンプモータ100では、ソレノイド5によりバルブ3又はバルブ4を開閉する際の応答性を向上させることができる。したがって、油圧ポンプモータ100では、その回転速度を上昇させ、又は、その容積効率を向上させることができる。
【0021】
[複数のバルブユニットの配置]
図3は、油圧ポンプモータ100において複数のバルブユニット10a~10dが配置される様子を示す。複数のバルブユニット10a~10dは、いずれも
図1に示すバルブユニット10と同様である。
【0022】
油圧ポンプモータ100は、例えば、高圧ライン11を循環するオイルを複数のバルブユニット10a~10dが低圧ライン12側へそれぞれ排出することにより、クランクシャフト8の回転力を発生させるオイルモータとして動作する。油圧ポンプモータ100は、車両のエンジンの回転に伴うクランクシャフト8の回転力により、複数のバルブユニット10a~10dが、低圧ライン12を循環するオイルを高圧ライン11側へくみ出すオイルポンプとしても動作する。
【0023】
[油圧ポンプモータ100の制御回路30]
図4には、油圧ポンプモータ100を制御するための制御回路30の例を示す。油圧ポンプモータ100は、制御回路30、所定の直流電源31及びコンデンサ32を備える。制御回路30は、FET(Field effect transistor、電界効果トランジスタ)301、ダイオード302、FET303(第1電界効果トランジスタに相当)、ダイオード304、FET305(第2電界効果トランジスタに相当)、ダイオード306、ダイオード307、記憶部308及び制御部309を備える。
【0024】
直流電源31は、例えば、バッテリである。直流電源31は、直流電流をソレノイド5へ供給する。コンデンサ32は、ソレノイド5に直列に接続されている。なお、
図4においては、ソレノイド5のコイルが示されており、コイル以外のアクチュエータは示されていない。
【0025】
FET301は、直流電源31からの直流電流をソレノイド5に供給するか否かを切り替える。FET303は、コンデンサ32に蓄えた電荷に基づく電流をソレノイド5に供給するための配線上に設けられる。FET303は、コンデンサ32に蓄えられた電荷に基づく電流をソレノイド5に供給するか否かを切り替える。
【0026】
FET305及びソレノイド5は、所定の直流電源31からの電圧を昇圧するための昇圧チョッパ回路を構成する。FET305は、直流電源31から供給される電流をPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)制御によりコンデンサ32に供給するためのスイッチである。
【0027】
記憶部308は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部308は、制御部309を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0028】
制御部309は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部309は、記憶部308に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実行する。制御部309は、ソレノイド5のインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により電荷をコンデンサ32にチャージするようにFET305を制御する。制御部309は、コンデンサ32にチャージした電荷に基づく電流をソレノイド5に供給するようにFET303を制御することにより、開状態と閉状態とのいずれかにバルブ3又はバルブ4を遷移させる。
【0029】
図5から
図8は、制御回路30の動作の一例を示す。制御部309は、FET301、FET303及びFET305のON状態とOFF状態とを切り替えることにより、ソレノイド5に流れる電流を制御する。制御部309は、直流電源31からソレノイド5に電流を流すことによりコンデンサ32をチャージする場合、
図5及び
図6に示すように、FET301をオン状態に切替え、FET303をOFF状態に切り替える。制御部309は、FET305のON状態とOFF状態とをPWM制御により切り替える。
図5中の太い破線で示すように、FET305のPWM制御のON状態では、直流電源31から供給された電流は、順にFET301、ダイオード302、ソレノイド5、FET305を経由してグランドに流れる。
【0030】
図6中の太い破線で示すように、FET305のPWM制御のOFF状態では、直流電源31から供給された電流は、順にFET301、ダイオード302、ソレノイド5、ダイオード306を経由してコンデンサ32にチャージされる。このとき、ソレノイド5に流れる電流量が変化することに起因する逆起電力が発生するため、直流電源31の端子間電圧よりも高い電圧がコンデンサ32に印加される。このようにして、制御部309は、FET305のON状態とOFF状態とをPWM制御により切り替えることにより、直流電源31の端子間電圧よりも高い電圧をコンデンサ32に印加して電荷をチャージさせることができる。
【0031】
図7に示すように、制御部309は、ソレノイド5により電磁力を発生させる場合に、FET301及びFET305をON状態に切替え、FET303をOFF状態に切り替える。このとき、
図7中の太線で示すように、コンデンサ32にチャージされた電荷に基づく電流は、順にFET303、ダイオード304、ソレノイド5、FET305を経由してグランドに流れる。上述のとおり、コンデンサ32に電荷をチャージする際には、直流電源31の端子間電圧よりも高い電圧がコンデンサ32に印加されている。このコンデンサ32にチャージされた電荷に基づく電流がソレノイド5に供給されることにより、直流電源31の端子間電圧よりも高い電圧がソレノイド5に一時的に印加されるので、ソレノイド5の電磁力の立ち上がり時の応答性を向上させることができる。
【0032】
制御部309は、コンデンサ32にチャージした電荷に基づく電流をソレノイド5に供給した後、直流電源31からの電流をソレノイド5に供給する。
図8は、制御部309がコンデンサ32にチャージした電荷に基づく電流をソレノイド5に供給した後、直流電源31からの電流がソレノイド5に供給されている状態を示す。
【0033】
図8の太線は、直流電源31からソレノイド5に電流を供給する経路を示す。直流電源31からソレノイド5に電流を供給する経路は、
図5中の太い破線で示す経路と同じである。このようにして、制御部309は、ソレノイド5の立ち上がり時に高いコンデンサ32にチャージした電荷に基づく比較的高い電圧をソレノイド5に印加した後、直流電源31から供給される電流によりソレノイド5が電磁力を発生させている状態(例えば、バルブ3の開状態、又は、バルブ4の閉状態)を維持することができる。
【0034】
図9は、ソレノイド5の動作終了時の様子を示す。
図9に示すように、制御部309は、ソレノイド5による電磁力の発生を停止させる場合には、FET301、FET303及びFET305をいずれもOFF状態に切り替える。このとき、ソレノイド5の逆起電力に起因して、
図9中の太線で示す電流がコンデンサ32に供給される。この電流は、順にダイオード307、ソレノイド5、ダイオード306を経由して、コンデンサ32に供給される。
【0035】
[共通のコンデンサ32からの電流の供給]
制御部309は、共通のコンデンサ32に蓄えられた電荷に基づく電流を、複数のシリンダ6のそれぞれに対応する複数のソレノイド5へ供給する。
図10は、油圧ポンプモータ100が複数の制御部309を備える場合の例を示す。油圧ポンプモータ100は、バルブユニット10a~10c、直流電源31、コンデンサ32、第1制御部309a、第2制御部309b及び第3制御部309cを備える。
【0036】
油圧ポンプモータ100の制御部及びバルブユニットの数は、3つに限定されず、油圧ポンプモータ100は、4つ以上の制御部及びバルブユニットをそれぞれ備えてもよい。第1制御部309a、第2制御部309b及び第3制御部309cは、いずれも
図4中の制御部309と同様である。第1制御部309a、第2制御部309b及び第3制御部309cは、順にバルブユニット10a~10cの動作を制御する。
【0037】
図5及び
図6に示す例と同様にして、第1制御部309aは、対応するバルブユニット10aからコンデンサ32に電荷をチャージさせる。第1制御部309aは、バルブユニット10aがコンデンサ32へチャージした電荷に基づく電流を対応するバルブユニット10aのソレノイド5へ供給する。
【0038】
同様にして、第2制御部309bは、対応するバルブユニット10bから共通のコンデンサ32に電荷をチャージさせる。第2制御部309bは、バルブユニット10bがコンデンサ32へチャージした電荷に基づく電流を対応するバルブユニット10bのソレノイド5へ供給する。第3制御部309cは、対応するバルブユニット10cから共通のコンデンサ32に電荷をチャージさせ、チャージした電荷に基づく電流を対応するバルブユニット10bのソレノイド5へ供給する。
【0039】
油圧ポンプモータ100は、共通のコンデンサ32を用いるので、例えば、第1制御部309aは、対応するバルブユニット10aがコンデンサ32へ十分な電荷をチャージしていない場合であっても、別のバルブユニット10b又は10cがコンデンサ32へチャージした電荷に基づく電流を対応するバルブユニット10aのソレノイド5へ供給することができる。このようにして、第1制御部309a、第2制御部309b及び第3制御部309cは、コンデンサ32に電荷が蓄えられていない期間が生じることに起因して、バルブユニット10a~バルブユニット10cのソレノイド5の応答性が低下することを抑制することができる。
【0040】
[ピストン7の位置に基づくバルブ3、4の開閉]
制御部309は、シリンダ6に収容されたピストン7がシリンダ6の所定位置に到達したことに基づいて、開状態と閉状態とのいずれかにバルブ3又は4を遷移させる。
図11及び
図12は、バルブユニット10の動作のタイミングの例を示す。
図11は、低圧ライン12を循環するオイルを高圧ライン11側へくみ出すオイルポンプとして油圧ポンプモータ100が動作する場合のバルブユニット10のタイミングを示す。
図12は、高圧ライン11を循環するオイルを低圧ライン12側へ排出することによりクランクシャフト8の回転力を発生させるオイルモータとして油圧ポンプモータ100が動作する場合のバルブユニット10の動作のタイミングを示す。
【0041】
図11中の実線の円は、クランクシャフト8の回転位置を示す。
図11中の矢印は、クランクシャフト8の回転の向きを示す。
図11中の通電開始から通電停止までの期間は、第2圧力ポート2を遮断した閉状態でバルブ4を維持するためにソレノイド5へ通電する期間を示す。例えば、制御部309は、ピストン7又はクランクシャフト8の位置を所定のセンサ(不図示)で検出することにより、ソレノイド5への通電開始及び通電停止のタイミングを特定する。
【0042】
制御部309は、ピストン7が上死点から下死点に到達する直前にバルブ4を閉状態に移行させることにより、ピストン7が下死点から上死点へ向かう際にシリンダ6内を圧縮することを利用してシリンダ6の内圧を上昇させ、この内圧によって閉状態のバルブ3を開状態へ遷移させる。このようにして、制御部309は、ピストン7が下死点から上死点に向かう期間において、第1圧力ポート1を介してシリンダ6内のオイルを高圧ライン11側へくみ出すポンピングを実施する。制御部309は、ピストン7が上死点から下死点に向かう期間においてバルブ4を開状態に遷移させ、第2圧力ポート2を介して低圧ライン12側からオイルをシリンダ6へ吸入する。
【0043】
制御部309は、
図11に示すように油圧ポンプモータ100がオイルポンプとして動作する場合、ピストン7が下死点から上死点に向かう期間中であれば、
図5及び
図6に示すPWM制御により、コンデンサ32に電荷をチャージすることが可能である。制御部309は、ピストン7が上死点から下死点に向かう期間においてもコンデンサ32に間欠的に少しずつ電荷をチャージすることが可能である。
【0044】
図12に示すように、制御部309は、油圧ポンプモータ100がオイルモータとして動作する場合、ピストン7が下死点から上死点へ向かう期間においてバルブ4を開状態へ遷移させ、第2圧力ポート2を介してシリンダ6内のオイルを低圧ライン12側へ排出する。制御部309は、ピストン7が下死点から上死点に到達する直前に、バルブ4を閉状態に移行させることにより、ピストン7がシリンダ6内を圧縮することを利用してシリンダ6の内圧を上昇させ、この内圧によって閉状態のバルブ3を開状態へ遷移させる。
【0045】
図12の通電開始から通電停止までの期間は、制御部309が第1圧力ポート1を導通したバルブ3の開状態においてソレノイド5が発生させる電磁力によりバルブ3を維持している期間を示す。制御部309は、ピストン7が下死点から上死点に到達する直前には、バルブ3を開状態に遷移させ、第1圧力ポート1を介してシリンダ6内のオイルを高圧ライン11側へくみ出すポンピングを実施する。
【0046】
制御部309は、ピストン7が上死点から下死点に移動する期間には、第1圧力ポート1を介して高圧ライン11のオイルをシリンダ6内に吸入することにより、このオイルの圧力によってピストン7を回転させるモータリングトルクを発生させる。制御部309は、ピストン7が上死点から下死点に到達する直前には、ソレノイド5への通電を停止してバルブ3を閉状態に遷移させる。バルブ3が閉状態に遷移することにより、バルブ4が開状態に遷移し、第2圧力ポートを介して低圧ライン12側からオイルがシリンダ6へ吸入される。
【0047】
制御部309は、
図12に示すように油圧ポンプモータ100がオイルモータとして動作する場合、通電開始から通電停止までの期間中に、第1圧力ポート1を導通した開状態でバルブ3を維持するための電力をソレノイド5へ供給しつつ、
図5及び
図6に示すPWM制御により、コンデンサ32に電荷をチャージすることが可能である。
【0048】
[本実施形態の油圧ポンプモータ100による効果]
制御部309は、ソレノイド5のインダクタンスを利用する昇圧チョッパ回路により比較的高い電圧でコンデンサ32に電荷をチャージし、ソレノイド5の電磁力の立ち上がり時に、チャージされた電荷に基づく電流をソレノイド5に供給する。このようにして、制御部309は、ソレノイド5によりバルブ3又はバルブ4を開閉する際の応答性を向上させることができる。したがって、制御部309は、油圧ポンプモータ100の回転速度を上昇させ、又は、油圧ポンプモータ100の容積効率を向上させることができる。
【0049】
制御部309は、直流電源31の端子間電圧を大きくすることなく、ソレノイド5によりバルブ3又はバルブ4を開閉する際の応答性を向上させることができる。このため、制御部309は、直流電源31に関する素子が大型化することを抑制することができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
1 第1圧力ポート
2 第2圧力ポート
3 バルブ
4 バルブ
5 ソレノイド
6 シリンダ
7 ピストン
8 クランクシャフト
10 バルブユニット
10a バルブユニット
10b バルブユニット
10c バルブユニット
10d バルブユニット
11 高圧ライン
12 低圧ライン
30 制御回路
31 直流電源
32 コンデンサ
100 油圧ポンプモータ
301 FET
302 ダイオード
303 FET
304 ダイオード
305 FET
306 ダイオード
307 ダイオード
308 記憶部
309 制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧力のオイルが循環する第1圧力ラインからオイルをシリンダに供給するための第1圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダに供給する開状態と、前記第1圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダに供給しない閉状態とを切り替えるための第1切替部と、
第1圧力よりも低い第2圧力のオイルが循環する第2圧力ラインへシリンダ内のオイルをシリンダから排出するための第2圧力ポートを導通させて前記オイルを前記シリンダから排出する開状態と、前記第2圧力ポートを遮断して前記オイルを前記シリンダから排出しない閉状態とを切り替えるための第2切替部と、
前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記第1切替部を遷移させるためのソレノイドと、
前記ソレノイドに直列に接続されたコンデンサと、
前記ソレノイドのインダクタンスを利用して直流電源からの電流をPWM制御により前記コンデンサに供給するための昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路により電荷を前記コンデンサにチャージし、当該コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給することにより前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記第1切替部を遷移させ、前記コンデンサにチャージした電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給した後、前記直流電源からの電流を前記ソレノイドに供給する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シリンダに収容されたピストンが下死点から上死点に到達する前に、前記第2切替部を前記閉状態に移行させて前記シリンダの内圧を上昇させることにより前記閉状態の前記第1切替部を前記開状態へ遷移させ、前記ピストンが下死点から上死点に到達する前であって前記第1切替部を前記開状態へ遷移させた後に前記ソレノイドへの通電を開始して前記第1切替部を前記開状態で維持することにより、前記第1圧力ポートを介して前記シリンダ内のオイルをくみ出し、前記ピストンが上死点から下死点に到達する前に、前記ソレノイドへの通電を停止して前記第1切替部を前記閉状態に遷移させて前記第2切替部を前記開状態に遷移させることにより、前記第2圧力ポートを介してオイルを前記シリンダへ吸入させ、前記ソレノイドへの通電開始から前記ソレノイドへの通電停止までの期間中に、前記第1圧力ポートを導通した前記開状態で前記第1切替部を維持するための電力を前記ソレノイドへ供給しつつ、PWM制御により前記コンデンサに電荷をチャージする、
油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記コンデンサに蓄えた電荷に基づく電流を前記ソレノイドに供給するための配線上に第1電界効果トランジスタが設けられる、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記シリンダに収容されたピストンが当該シリンダの所定位置に到達したことに基づいて、前記開状態と前記閉状態とのいずれかに前記第1切替部を遷移させる、
請求項1又は2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記制御部は、共通の前記コンデンサに蓄えられた電荷に基づく電流を、複数の前記シリンダのそれぞれに対応する複数の前記ソレノイドへ供給する、
請求項1又は2に記載の油圧ポンプモータ。