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  • 特開-流体封入式防振装置 図1
  • 特開-流体封入式防振装置 図2
  • 特開-流体封入式防振装置 図3
  • 特開-流体封入式防振装置 図4A
  • 特開-流体封入式防振装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130536
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16F13/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040324
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】笠井 史也
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 裕規
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB02
3J047DA01
3J047FA02
(57)【要約】
【課題】防振特性の多様化に対応し易い、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】内部に流体が封入された主液室78と副液室80が仕切部材36によって仕切られた構造を有する流体封入式防振装置10であって、仕切部材36を貫通して主液室78と副液室80とを相互に連通する流体通路90が設けられて、流体通路90の内部には、流体通路90の対向する一方の壁面92から他方の壁面94に向かって突出して基端部で傾動可能とされた傾動部材66が配されており、流体通路90の他方の壁面94に開口する凹所74が形成されて、傾動部材66の先端から突出するヒレ状突部70が凹所74内に差し入れられて、ヒレ状突部70が凹所74の内面に対して離隔しており、凹所74の対向内面には、ヒレ状突部70に向けて突出してヒレ状突部70の突出中間部分と離隔対向する当接突起76がそれぞれ設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が封入された主液室と副液室が仕切部材によって仕切られた構造を有する流体封入式防振装置であって、
前記仕切部材を貫通して前記主液室と前記副液室とを相互に連通する流体通路が設けられて、
該流体通路の内部には、該流体通路の対向する一方の壁面から他方の壁面に向かって突出して基端部で傾動可能とされた傾動部材が配されており、
該流体通路の該他方の壁面に開口する凹所が形成されて、
該傾動部材の先端から突出するヒレ状突部が該凹所内に差し入れられて、該ヒレ状突部が該凹所の内面に対して離隔しており、
該凹所の対向内面には、該ヒレ状突部に向けて突出して該ヒレ状突部の突出中間部分と離隔対向する当接突起がそれぞれ設けられている
流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記当接突起が前記凹所の開口端部に設けられている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記ヒレ状突部の先端部分が厚肉の形状安定部とされており、
前記当接突起は、前記凹所の前記対向内面において、前記傾動部材の傾動によって該ヒレ状突部の該形状安定部の基端部と当接する位置に配されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に用いられる流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置が知られている。また、流体が封入された主液室と副液室を設けることによって、流体の流動作用等を利用して防振性能の向上を図った流体封入式防振装置も知られている。
【0003】
ところで、流体封入式防振装置は、予め設定された特定の周波数域において優れた防振性能を発揮する一方、特定の周波数域を外れた周波数の振動入力に対しては、目的とする防振性能が発揮されないという問題があった。そこで、出願人は、特開2012-241842号公報(特許文献1)等において、より広い周波数域の振動入力に対して有効な防振効果を得ることができる流体封入式防振装置を提案している。特許文献1では、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路を流動する流体の流動作用による防振効果と、切替部の微小変位による液圧吸収作用に基づく防振効果とが、相互に異なる3つの周波数域において発揮されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-241842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今では、防振特性の要求が多様化しており、例えば、振幅や周波数の近い領域の振動に対して異なる防振特性が求められて、より高周波の振動やより小振幅の振動に対する防振性能の向上等が求められることもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、防振特性の多様化に対応し易い、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、内部に流体が封入された主液室と副液室が仕切部材によって仕切られた構造を有する流体封入式防振装置であって、前記仕切部材を貫通して前記主液室と前記副液室とを相互に連通する流体通路が設けられて、該流体通路の内部には、該流体通路の対向する一方の壁面から他方の壁面に向かって突出して基端部で傾動可能とされた傾動部材が配されており、該流体通路の該他方の壁面に開口する凹所が形成されて、該傾動部材の先端から突出するヒレ状突部が該凹所内に差し入れられて、該ヒレ状突部が該凹所の内面に対して離隔しており、該凹所の対向内面には、該ヒレ状突部に向けて突出して該ヒレ状突部の突出中間部分と離隔対向する当接突起がそれぞれ設けられているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、傾動部材の傾動によってヒレ状突部が凹所の対向内面に当接することで、流体通路が遮断されるようになっている。これにより、流体通路の連通と遮断の切替えによる防振特性の切替えが可能とされており、多様な振動に対する防振性能の発揮が図られている。
【0010】
また、ヒレ状突部が挿入される凹所の対向内面には、ヒレ状突部に向けて突出する当接突起が設けられており、ヒレ状突部と凹所の対向内面との距離を当接突起によってより狭く調節することができる。これにより、従来では流体通路の開閉切替が難しかった程の小振幅振動の入力時において、ヒレ状突部を当接突起に当接させて流体通路を遮断することが可能となる。それゆえ、より微小な振動に対しても、防振特性の切り替えによる有効な防振性能を得ることができる。
【0011】
流体通路内に配された傾動部材だけでなく、ヒレ状突部にも封入流体の圧力が作用することから、圧力の作用面積が大きく確保されて、小振幅振動の入力時にも、傾動部材を有効に傾動させることができる。
【0012】
ヒレ状突部が凹所の内面から離れた状態で凹所に差し入れられていることから、ヒレ状突部と凹所の内面との間に摩擦による抵抗力が作用せず、小振幅振動の入力時にヒレ状突部の変形乃至は変位が当該摩擦力によって阻害されるのが回避されて、流体通路の切替作動が高精度に実現される。即ち、ヒレ状突部の突出先端が凹所内面に当接していると、(i)流体通路が物理的に遮断されるために流体流動による防振効果の効率的な確保と流体流動特性の調節が難しくなると共に、(ii)振動入力時の圧力作用でヒレ状突部自体の変形が発生するために特に小振幅域で振幅依存による流体通路の切換作動を高精度に実現することが難しかった。
【0013】
第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記当接突起が前記凹所の開口端部に設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、先端側よりも変形態様が安定し易いヒレ状突部において先端から離れた基端側に当接突起を当接させることができて、流体通路の連通と遮断の切替作動の精度の向上が図られる。それゆえ、より微小な入力振動に対しても防振特性を精度よく切り替えて、優れた防振性能を得ることができる。
【0015】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記ヒレ状突部の先端部分が厚肉の形状安定部とされており、前記当接突起は、前記凹所の前記対向内面において、前記傾動部材の傾動によって該ヒレ状突部の該形状安定部の基端部と当接する位置に配されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、成形上、形状にバラつきが生じ易いヒレ状突部の先端部分において、形状の安定化が図られる。ヒレ状突部において傾動部材の傾動に対する変位量が大きくなる先端部分を当接突起に当接させることにより、傾動部材の傾動量がより小さい状態でヒレ状突部を当接突起に当接させることができる。
ヒレ状突部の先端部分が厚肉の形状安定部とされていることにより、厚肉の先端部分(形状安定部)と薄肉の基端部分とがつながる段差状の部分が当接突起に当接するようにすれば、ヒレ状突部と当接突起とが当接状態に安定して保持され易く、流体通路をより確実に遮断することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より小振幅の振動入力時にも流体通路を遮断することが可能となって、防振特性の多様化に対応し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図
図2図1に示すエンジンマウントを構成する仕切部材の分解斜視図
図3図2に示す仕切部材を構成するゴム部材の平面図
図4A図1に示すエンジンマウントにおける防振特性の切替えを説明する拡大図であって、流体通路の連通状態を示す図
図4B図1に示すエンジンマウントにおける防振特性の切替えを説明する拡大図であって、流体通路の遮断状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が知られている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16で連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図1中の上下方向をいう。
【0021】
第一の取付部材12は、略円板形状とされており、中央部分を上下方向に貫通するボルト孔に対して、取付用ボルト18が下方から挿通されて嵌合されている。第一の取付部材12は、金属や合成樹脂で形成された硬質の部材とされている。
【0022】
第二の取付部材14は、薄肉大径の略円筒形状とされており、金属や合成樹脂で形成された硬質の部材とされている。第二の取付部材14は、上部が大径の固着筒部20とされていると共に、下部が小径の取付筒部22とされており、全体として段付き筒状とされている。
【0023】
第一の取付部材12が第二の取付部材14に対して略同一中心軸上で上方に離れて配置されており、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として上方へ向けて小径となる略円錐台形状とされて、上面には第一の取付部材12が固着されており、下部の外周面には第二の取付部材14が固着されている。第一の取付部材12と第二の取付部材14は、本体ゴム弾性体16の成形時に加硫接着されている。
【0024】
本体ゴム弾性体16には、下面に開口する凹状部24が形成されている。凹状部24は、上部が下方へ向けて大径となる逆向きすり鉢状とされており、下部が略一定の内径寸法で上下方向にストレートに延びている。本体ゴム弾性体16は、下方へ向けて延び出すシールゴム層26を備えている。シールゴム層26は、大径の略円筒形状とされており、本体ゴム弾性体16における凹状部24の開口よりも外周側から下方へ延び出している。シールゴム層26は、途中にテーパ部28を備えており、テーパ部28よりも下方が上方よりも内周へ突出して厚肉とされている。シールゴム層26は、第二の取付部材14の取付筒部22の内周面に被着形成されており、取付筒部22の内周面を覆っている。なお、第二の取付部材14の下端は、内周へ屈曲して延び出す内フランジ状とされており、シールゴム層26の下面に固着されている。
【0025】
第二の取付部材14の下端部には、可撓性膜30が取り付けられている。可撓性膜30は、全体として薄肉の円板状とされており、上下方向の緩みを有している。可撓性膜30は、ゴムや樹脂エラストマーで形成されており、厚さ方向の可撓性を有している。可撓性膜30は、可撓性に加えて、ある程度の伸縮性を備えていることが望ましい。可撓性膜30の外周端には、固定部材32が固着されている。固定部材32は、円環状乃至は円筒状とされており、例えば可撓性膜30の外周面に加硫接着されている。そして、固定部材32が厚肉とされたシールゴム層26の下端部の内周に差し入れられた状態で、第二の取付部材14に縮径加工が施されることにより、固定部材32がシールゴム層26を介して第二の取付部材14の内周面に嵌着されており、可撓性膜30が第二の取付部材14の下側開口部を塞ぐように配されている。
【0026】
本体ゴム弾性体16と可撓性膜30の上下方向の対向面間には、非圧縮性流体が封入された流体封入領域34が形成されている。流体封入領域34に封入される非圧縮性流体は、例えば、水、エチレングリコール、アルキレングリコール、シリコーン油、それらの混合液等が好適に採用され得る。非圧縮性流体は、0.1Pa・s以下の低粘性流体であることが望ましい。
【0027】
流体封入領域34には、仕切部材36が配されている。仕切部材36は、全体として略円板形状とされている。仕切部材36は、図2に示すように、第一の仕切板38と第二の仕切板40とを備えている。
【0028】
第一の仕切板38は、合成樹脂や金属などによって形成された硬質の部材であって、全体として略円板形状とされている。第一の仕切板38は、径方向の中央部において下面に開口する嵌合凹部42を備えている。第一の仕切板38における嵌合凹部42よりも外周となる径方向中間には、下面に開口する収容凹所44が設けられている。収容凹所44の内周部分には、上下方向に貫通する第一のリリーフ穴46が周方向の複数箇所に形成されている。収容凹所44の外周部分には、上下方向に貫通する第一の流路形成穴48が、周方向の複数箇所に形成されている。
【0029】
第二の仕切板40は、合成樹脂や金属などによって形成された硬質の部材であって、全体として略有底円筒形状とされている。第二の仕切板40は、筒状とされて外周端部に周溝50が形成されている。周溝50は、第二の仕切板40の外周面に開口して周方向に延びており、本実施形態では螺旋状に延びて上下二段とされている。第二の仕切板40は、径方向の中央部において上方へ突出する嵌合凸部52を備えている。第二の仕切板40は、嵌合凸部52よりも外周となる径方向中間において、上下方向に貫通する第二のリリーフ穴54と、第二のリリーフ穴54よりも外周を上下方向に貫通する第二の流路形成穴56とが、形成されている。
【0030】
第一の仕切板38と第二の仕切板40は、上下に重ね合わされている。第二の仕切板40の嵌合凸部52が第一の仕切板38の嵌合凹部42に嵌め入れられていると共に、第一の仕切板38の内周部分が第二の仕切板40の周壁部分に差し入れられており、第一の仕切板38と第二の仕切板40が相互に位置決めされている。第一の仕切板38の上端部には外周へ突出するフランジ状突部が形成されており、第二の仕切板40の周壁部分の上端内周縁部に設けられた切欠き状の凹部に対して、当該フランジ状突部が差し入れられて上下方向で当接することにより、第一の仕切板38と第二の仕切板40とで軸方向(上下方向)で相互に位置決めされている。
【0031】
また、収容凹所44の開口が第二の仕切板40によって覆われて、第一の仕切板38と第二の仕切板40の間に収容空所58が形成されている。収容空所58は、嵌合凹部42の周壁の周囲を延びる環状の空間とされており、内周部分に第一,第二のリリーフ穴46,54が連通されていると共に、外周部分には第一,第二の流路形成穴48,56が連通されている。
【0032】
収容空所58には、弾性可動体60が配されている。弾性可動体60は、図2図3に示すように、全体として円環状とされており、ゴムや樹脂エラストマーといった弾性体によって形成されている。弾性可動体60は、第一の仕切板38と第二の仕切板40の間に挟持される挟持部62を備えている。挟持部62は、略一定の断面形状で周方向に連続して延びる環状とされており、第一,第二のリリーフ穴46,54よりも外周且つ第一,第二の流路形成穴48,56よりも内周において、第一の仕切板38と第二の仕切板40との間で上下に挟み込まれて、仕切部材36に固定されている。
【0033】
挟持部62の内周側には、リリーフ弁64が設けられている。リリーフ弁64は、挟持部62と一体形成されて、挟持部62から内周へ突出している。より詳細には、リリーフ弁64は、基端部分が挟持部62から略軸直角方向で内周へ突出していると共に、先端部分が基端部分から内周側へ突出している。リリーフ弁64の先端部分の断面形状は、上面及び下面が内周へ向けて第一の仕切板38側である上側へ傾斜する傾斜形状とされている。リリーフ弁64の先端部分は内周へ向けて上下方向で次第に薄肉とされている。リリーフ弁64は、弾性可動体60が収容空所58に配された状態において、第一,第二のリリーフ穴46,54の延長上に位置している。リリーフ弁64は、弾性可動体60の収容空所58への配設状態において、先端部分が収容空所58の内周側の壁面に押し当てられている。
【0034】
弾性可動体60は、挟持部62から外周側へ向けて突出する傾動部材としての切替弁66を備えている。切替弁66は、周方向に延びる環状とされており、上下方向において対称形状とされている。切替弁66の内周面及び外周面が円筒面とされていると共に、上下両端面が外周へ向けて上下方向の外側へ傾斜するテーパ面とされている。換言すれば、切替弁66は、上下方向の両外側へ突出する形状とされており、上下方向の両側へ突出する先端部は上下方向の外側へ向けて径方向の厚さが次第に薄くなっている。切替弁66は、上下方向の突出端面が円弧状の湾曲面とされている。切替弁66は、上側の先端部が第一の流路形成穴48に差し入れられていると共に、下側の先端部が第二の流路形成穴56に差し入れられている。
【0035】
切替弁66は、内周側が薄肉部68によって挟持部62と一体的につながっている。薄肉部68は、上下方向の厚さが切替弁66の内周端の厚さよりも薄く、好適には厚さ寸法が切替弁66の内周端に対して半分よりも小さくされている。薄肉部68は、径方向の幅寸法が、切替弁66の径方向幅寸法よりも小さくされている。挟持部62と切替弁66が薄肉部68を介してつながっていることにより、切替弁66の挟持部62に対する上下両側への首振り状の変位が、薄肉部68の変形によって許容されており、切替弁66が基端側を中心として傾動可能とされている。
【0036】
切替弁66の外周面上には、ヒレ状突部70が突出している。ヒレ状突部70は、全周にわたって連続する薄肉の膜状とされており、全周にわたって切替弁66から外周へ向けて突出している。ヒレ状突部70は、切替弁66と一体形成されており、弾性変形可能とされている。ヒレ状突部70は、切替弁66の上下方向両側の先端部を外れた中間部分から突出しており、より好適には上下方向の中央部から突出している。ヒレ状突部70の突出先端部である外周端部は、突出基端部よりも肉厚とされた形状安定部としての肉厚先端部72とされている。本実施形態の肉厚先端部72は、縦断面において略円形断面とされている。ヒレ状突部70は、肉厚先端部72が設けられることにより、肉厚先端部72よりも内周側の薄肉部分のばね定数を小さくしながら、肉厚先端部72において成形不良の防止や変形剛性の確保などが図られる。
【0037】
切替弁66は、弾性可動体60が収容空所58に配された状態において、第一,第二の流路形成穴48,56の延長上に位置している。切替弁66は、弾性可動体60の収容空所58への配設状態において、外周面が第一,第二の流路形成穴48,56の外周側の壁面に対して、全体が離隔した近接状態で対向配置されている。
【0038】
第一,第二の流路形成穴48,56の外周側には、凹所74が設けられている。凹所74は、第一,第二の流路形成穴48,56の間で内周へ向けて開口して、第一,第二の流路形成穴48,56に連通されている。凹所74は、後述する流体通路90の他方の壁面である外周側壁面94に開口しており、凹所74の外周側の壁面が流体通路90の壁面の一部を構成している。凹所74は、全周にわたって連続して設けられており、内周へ向けて開口している。本実施形態の凹所74は、第一の仕切板38の収容凹所44の外周端部を利用して構成されており、第一の仕切板38と第二の仕切板40の重ね合わせ面間に設けられている。
【0039】
凹所74の上下両側の壁内面には、当接突起76a,76bが突出している。当接突起76a,76bは、凹所74の底面(外周側の壁面)から開口側(内周側)へ離隔した位置において、上下両側の壁内面から凹所74内へ突出して設けられている。本実施形態では、当接突起76a,76bが凹所74の開口端部に配置されている。当接突起76a,76bは、全周にわたって連続する環状に設けられている。当接突起76a,76bは、突出先端が相互に離隔して対向しており、それら当接突起76a,76b間の隙間がヒレ状突部70の厚さ寸法よりも大きくされている。好適には、当接突起76a,76b間の隙間は、ヒレ状突部70の肉厚先端部72を外れた部分の厚さ寸法に対して1.5~2.5倍の範囲内に設定される。当接突起76の径方向の幅寸法は、凹所74の径方向深さ寸法の半分以下であることが望ましい。当接突起76は、表面が尖った角や凹凸のない滑らかな形状とされており、特に突出先端の内周端及び外周端が円弧状の湾曲形状とされている。
【0040】
なお、本実施形態では、凹所74の上壁部が第一の仕切板38で構成されており、凹所74の下壁部が第二の仕切板40で構成されていることから、上側の当接突起76aが第一の仕切板38に設けられており、下側の当接突起76bが第二の仕切板40に設けられている。また、本実施形態において、上側の当接突起76aと下側の当接突起76bは、突出高さ寸法が異なっており、下側の当接突起76bの方が突出高さ寸法が大きくされているが、上下の当接突起76a,76bは、相互に同じ大きさ及び形状であってもよい。本実施形態では、上下の当接突起76a,76bの突出高さ寸法が異なることによって、上下の当接突起76a,76bの間に設定される凹所74の開口部が、当接突起76a,76bよりも外周側における凹所74の上下壁内面間の中央に対して上側に偏倚している。
【0041】
弾性可動体60が収容空所58に配された状態において、ヒレ状突部70が凹所74内に差し入れられている。ヒレ状突部70は、上下両面及び先端面が凹所74の壁内面から離れた状態で、凹所74に入り込んでいる。ヒレ状突部70は、凹所74の壁内面を構成する当接突起76a,76bの突出先端面間に配置されており、当接突起76a,76bがヒレ状突部70に向けて上下方向で突出している。当接突起76a,76bは、ヒレ状突部70の突出方向の先端及び基端を外れた中間部分に位置しており、好適には肉厚先端部72の中心よりも内周側においてヒレ状突部70に向けて突出している。ヒレ状突部70は、エンジンマウント10の静置状態において、図4Aに示すように、当接突起76a,76bの先端面の何れに対しても、接触することなく離隔している。
【0042】
このような構造とされた仕切部材36は、流体封入領域34に配されている。仕切部材36は、流体封入領域34内において軸直角方向に広がっており、外周面がシールゴム層26を介して第二の取付部材14の取付筒部22に押し当てられると共に、外周端部が本体ゴム弾性体16と固定部材32の間で軸方向に挟まれることによって、位置決めされている。流体封入領域34は、仕切部材36によって上下に二分されている。即ち、流体封入領域34における仕切部材36よりも上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16によって構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される主液室としての受圧室78が形成されている。仕切部材36よりも下側には、壁部の一部が可撓性膜30によって構成されて、容積変化が許容される副液室としての平衡室80が形成される。受圧室78と平衡室80には、それぞれ非圧縮性流体が封入されている。
【0043】
仕切部材36に設けられた周溝50の外周開口は、シールゴム層26が固着された第二の取付部材14によって覆われており、周方向に延びるトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状の流路は、一方の端部が第一の連通口82を通じて受圧室78に連通されていると共に、他方の端部が第二の連通口84を通じて平衡室80に連通されており、受圧室78と平衡室80を相互に連通するオリフィス通路86が、周溝50を利用して形成されている。オリフィス通路86は、例えばエンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動に対してチューニングされている。
【0044】
第一の仕切板38で構成された収容空所58の上側壁部を貫通する第一のリリーフ穴46は、周方向の3か所で開口する上端開口において受圧室78に連通されている。第二の仕切板40で構成された収容空所58の下側壁部を貫通する第二のリリーフ穴54は、周方向の3か所で開口する下端開口において平衡室80に連通されている。これにより、仕切部材36を貫通して受圧室78と平衡室80を相互に連通するリリーフ通路88が、第一のリリーフ穴46と第二のリリーフ穴54とを含んで構成されている。
【0045】
弾性可動体60のリリーフ弁64は、リリーフ通路88の流体流動方向(流路長方向)の途中に配されており、リリーフ通路88の内周側の壁部に押し当てられている。これにより、リリーフ通路88は、リリーフ弁64によって遮断されている。
【0046】
第一の仕切板38で構成された収容空所58の上側壁部を貫通する第一の流路形成穴48は、周方向の3か所で開口する上端開口において受圧室78に連通されている。第二の仕切板40で構成された収容空所58の下側壁部を貫通する第二の流路形成穴56は、周方向の3か所で開口する下端開口において平衡室80に連通されている。これにより、仕切部材36を貫通して受圧室78と平衡室80を相互に連通する流体通路90が、第一の流路形成穴48と第二の流路形成穴56とを含んで構成されている。流体通路90は、例えばアイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動に対してチューニングされている。流体通路90において流路長方向に直交して対向する一方の壁面が内周側壁面92とされていると共に、流体通路90の他方の壁面が外周側壁面94とされている。
【0047】
弾性可動体60の切替弁66が流体通路90の内部に配されている。切替弁66は、流体通路90の内周側壁面92から外周側壁面94に向けて突出している。切替弁66は、流体通路90の外周側壁面94に対して近接状態で離隔して配されている。
【0048】
このような構造とされたエンジンマウント10は、例えば、第一の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着される。第一の取付部材12は、図示しないインナブラケット等を介してパワーユニットに取り付けられてもよい。第二の取付部材14は、図示しないアウタブラケット等を介して車両ボデーに取り付けられてもよい。
【0049】
車両への装着状態において、エンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室78と平衡室80との間に相対的な圧力変動が惹起されて、オリフィス通路86を通じた流体流動が共振状態で積極的に生じることから、流体の液柱共振作用等に基づく防振効果(振動減衰作用)が発揮される。
【0050】
低周波大振幅振動の入力時に、流体通路90は、弾性可動体60の切替弁66及びヒレ状突部70によって遮断される。即ち、図4Bに示すように、切替弁66が薄肉部68を揺動中心として首振り状に傾動変位し、切替弁66から外周へ延び出したヒレ状突部70が凹所74の当接突起76a,76bに当接することにより、流体通路90が遮断される。これにより、流体通路90を通じた流体流動によって受圧室78と平衡室80の相対的な圧力変動が低減されるのを防いで、オリフィス通路86を通じた流体流動を効率的に生じさせ、オリフィス通路86による防振効果を効率的に得ることができる。なお、低周波大振幅振動の入力時には、切替弁66の上下端部が流体通路90の外周側壁面94に当接することによって、流体通路90がより確実に遮断されるようにしてもよい。
【0051】
アイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動の入力時には、実質的に連通状態に維持される流体通路90を通じての流体の流動作用乃至は液柱共振作用に基づいて、例えば低動ばね特性による防振効果を得ることができる。即ち、入力振動が中振幅振動の場合には、切替弁66の首振り状の変位が外周側壁面94への当接に至らない範囲内で生ぜしめられることから、切替弁66の首振り状の変位を伴って流体通路90を通じた実質的な流体流動が許容されることとなる。それゆえ、流体通路90を通じて流動する流体の液柱共振作用等に基づいて、アイドリング振動に対する防振効果が発揮される。
【0052】
また、低周波の微振幅振動が入力された場合には、図4Bに示すように、ヒレ状突部70が凹所74の当接突起76a,76bに当接することで流体通路90が遮断されるようになっている。即ち、本実施形態のエンジンマウント10は、切替弁66から更に先端側に突出するヒレ状突部70が設けられている。これにより、切替弁66の首振り状の変位時に、切替弁66よりも外周に位置するヒレ状突部70が上下方向に大きく変位することから、振幅が0.2mm程度と極めて小さい微振幅振動の入力時にも、ヒレ状突部70を比較的に大きく切替作動させることが可能になる。また、凹所74の壁内面において上下両側からヒレ状突部70に向けて突出する当接突起76a,76bが設けられていることから、ヒレ状突部70と凹所74の壁内面を構成する当接突起76a,76bとが近接して配置されており、微振幅振動の入力時にもヒレ状突部70と当接突起76a,76bとが有効に当接する。これらにより、従来では流体通路90の連通状態から遮断状態への切替えが難しかった程に振幅が小さい微振幅振動の入力時にも、ヒレ状突部70を当接突起76a,76bに当接させて流体通路90を有効に遮断することができる。そして、流体通路90が遮断されることにより、オリフィス通路86を通じた流体流動が生じて、低周波の微振幅振動に対する防振効果が発揮される。
【0053】
当接突起76a,76bは、ヒレ状突部70の突出方向の途中に位置しており、径方向の中央が肉厚先端部72よりも内周側に位置している。そして、ヒレ状突部70は、肉厚先端部72の基端部が、当接突起76a,76bの外周側の角部に当接する。これにより、ヒレ状突部70の肉厚先端部72が、当接突起76a,76bの外周側の角部に引っ掛かるような態様で当接して、当接状態の安定化が図られる。特に、ヒレ状突部70は、変形態様のバラつきが大きく予測が難しい自由端である先端部を基端側に外れた部分で当接突起76a,76bに当接することから、当接突起76a,76bへの当接態様の安定化が図られて、目的とする遮断状態を安定して実現することができる。従って、例えば、0.2mm程度の微振幅振動の入力時には、ヒレ状突部70と当接突起76a,76bとを当接させて、流体通路90を遮断状態とする一方、0.1mm程度のより小振幅の振動入力時には、ヒレ状突部70と当接突起76a,76bとを離隔状態に保持して、流体通路90を連通状態とするといった、高精度な切替作動を実現することも可能になる。なお、エンジンマウント10では、流体通路90が遮断される微振幅振動よりも更に小振幅の振動入力時に、ヒレ状突部70が当接突起76a,76bから離れていることから、ヒレ状突部70の微小変形による液圧吸収作用に基づいて防振効果を得ることができる。
【0054】
当接突起76a,76bは、凹所74の開口端部に設けられている。これにより、当接突起76a,76bがヒレ状突部70に対して可能な限り基端側に配置されており、凹所74の径方向深さ寸法とヒレ状突部70の外周への突出長さ寸法を大きくすることなく、当接突起76a,76bをヒレ状突部70のより基端側に当接させることができる。
【0055】
ヒレ状突部70は、流体通路90の外周側壁面94に開口する凹所74に差し入れられていることから、仕切部材36の大径化を要することなく、ヒレ状突部70の突出長さ寸法(径方向の幅寸法)を確保することができる。それゆえ、ヒレ状突部70に対する液圧の作用面積を大きく確保することができて、微振幅振動のような作用力が小さい振動入力時にも、流体通路90の遮断状態への切替えが可能になる。
【0056】
なお、エンジンマウント10において0.2mm程度の微小振幅において防振特性が安定して切り替わることは、実験によって確認されている。従って、従来構造では防振特性の切替えが難しかった微小振幅領域において、防振特性を振幅依存で切替可能とすることが実際に可能であり、より高性能な流体封入式防振装置の提供が期待できる。
【0057】
ところで、衝撃荷重の入力等によって受圧室78の内圧が大幅に低下する場合には、リリーフ通路88を通じた流体流動によって、キャビテーション異音の発生が防止される。即ち、リリーフ弁64の上面に作用する受圧室78の内圧と、リリーフ弁64の下面に作用する平衡室80の内圧との差に基づいて、リリーフ弁64が変形し、リリーフ弁64がリリーフ通路88の外周側の壁面から離隔する。リリーフ通路88のリリーフ弁64による遮断が解除されて、リリーフ通路88が連通状態とされ、リリーフ通路88を通じて平衡室80から受圧室78へ流体が流入することにより、受圧室78の負圧が速やかに低減乃至は解消されて、急激な圧力低下に起因するキャビテーションの発生が防止される。
【0058】
また、前述の如き「オリフィス通路86によって達成される低周波大振幅振動及び微振幅振動に対する防振特性」や「流体通路90によって達成される中周波中振幅振動に対する防振特性」に加えて、高速こもり音の如き、それらよりも更に高周波数域の微振幅又は小振幅の振動に対しては、例えば切替弁66自体が可動膜の如き作動をすることで、オリフィス通路86や流体通路90などの各通路が流体の反共振作用で実質的な遮断状態になることに起因する著しい高動ばね化を回避又は軽減することも可能である。即ち、切替弁66は基端が薄肉で変形容易な薄肉部68とされていることから、切替弁66の上下に及ぼされる受圧室78と平衡室80の相対的な圧力変動に伴って切替弁66が上下方向(流体流動方向)に微小変位することを利用して、受圧室78の圧力変動ひいては高動ばね化の軽減等を図ることも可能である。一般に、問題となる高速こもり音の対象振動は、前述の如き「オリフィス通路86によって達成される低周波大振幅振動及び微振幅振動に対する防振特性」や「流体通路90によって達成される中周波中振幅振動に対する防振特性」に比して著しく高周波であり、且つ一般に振幅も大幅に小さいことから、それら各デバイスによって達成される防振特性に大きな悪影響を及ぼすことなく、切替弁66の可動膜的な作用を利用することも可能とされ得る。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、当接突起76は、凹所74の底面から離れた位置に設けられていればよく、凹所74の開口から底面側に離れた中間位置に設けられていてもよい。また、当接突起76の大きさや形状は、ヒレ状突部70の当接と離隔によって流体通路90を連通状態と遮断状態とに切替可能とされていれば、特に限定されない。また、ヒレ状突部70の当接突起76への当接によって切り替えられる防振特性は、振幅依存によるものであり、要求特性に応じて切り替えられる対象となる振動が選択可能であって、振動周波数にも依存しない。また、傾動部材(66)の対向壁面(外周側壁面94)への当接作動は必須でなく、かかる傾動部材の当接に基づく防振特性の切換作動は、本発明においてヒレ状突部70の当接突起76への当接による防振特性の切換作動と併せて採用する必要はない。なお、前記実施形態における防振特性は例示であって本発明が適用される防振装置の具体的な防振特性は限定されるものでない。例えば、自動車用エンジンマウントへの適用に際して、オリフィス通路86によってエンジンシェイク等の大振幅振動に対する高減衰特性を実現すると共に、流体通路90によって0.1mm以下の微小振幅(例えば走行こもり音)に対する低動ばね特性を実現する一方、ヒレ状突部70の当接突起76への当接に基づく特性切り換え作用によって0.2mm程度の小振幅の入力振動に対する高減衰特性をオリフィス通路86を利用して実現することなども可能である。
【0060】
ヒレ状突部は、先端部分に形状安定部を備えていなくてもよい。ヒレ状突部の縦断面形状は特に限定されず、全体が一定の厚さで軸直角方向に広がる平板状とされていてもよいし、波形状等の湾曲乃至は屈曲状とされていてもよいし、軸直角方向に対して傾斜して広がっていてもよいし、先端側へ向けて薄肉となるように厚さが変化していてもよい。
【0061】
傾動部材の形状は、前記実施形態のものに限定されず、例えば、上下方向に厚肉とされた円環ブロック形状等であってもよい。かかる傾動部材は、前記実施形態のように基端部分が薄肉状とされることで流体通路内への突出部分(基端部分を除く)が形状安定的に首振り傾動するようになっていればよく、それによって傾動部材の先端から突出して凹所内に差し入れられたヒレ状突部において、傾動部材の基端部分を略中心として効率的に且つ安定した傾動変位を実現し得るものであればよい。また、リリーフ弁64とリリーフ通路88によって構成されたリリーフ機構は、必須ではない。
【0062】
傾動部材としての切替弁66とヒレ状突部70とを備える弾性可動体は、前記実施形態に示した環状の弾性可動体60に限定されず、例えば、中央に貫通孔がない板状のゴム膜等とすることもできる。なお、板状のゴム板を採用する場合には、ゴム板の中央部分の弾性変形による液圧吸収作用に基づいた可動膜としての防振効果を利用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10 エンジンマウント(流体封入式防振装置)
12 第一の取付部材
14 第二の取付部材
16 本体ゴム弾性体
18 取付用ボルト
20 固着筒部
22 取付筒部
24 凹状部
26 シールゴム層
28 テーパ部
30 可撓性膜
32 固定部材
34 流体封入領域
36 仕切部材
38 第一の仕切板
40 第二の仕切板
42 嵌合凹部
44 収容凹所
46 第一のリリーフ穴
48 第一の流路形成穴
50 周溝
52 嵌合凸部
54 第二のリリーフ穴
56 第二の流路形成穴
58 収容空所
60 弾性可動体
62 挟持部
64 リリーフ弁
66 切替弁(傾動部材)
68 薄肉部
70 ヒレ状突部
72 肉厚先端部(形状安定部)
74 凹所
76(76a,76b) 当接突起
78 受圧室(主液室)
80 平衡室(副液室)
82 第一の連通口
84 第二の連通口
86 オリフィス通路
88 リリーフ通路
90 流体通路
92 内周側壁面(一方の壁面)
94 外周側壁面(他方の壁面)
図1
図2
図3
図4A
図4B