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特開2024-130539熱源機の制御方法および空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130539
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】熱源機の制御方法および空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20240920BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F11/47
F24F11/54
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040329
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 倫明
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 隆広
(72)【発明者】
【氏名】川村 昌彦
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA41
3L260CB36
3L260CB37
3L260CB43
3L260FA10
3L260FB32
(57)【要約】
【課題】熱源機の不要な起動を抑制し得る熱源機の制御方法および空調システムを提供する。
【解決手段】複数の熱源機を一次側に備えた空調システムにおいて、二次側の送水温度に関し、熱源機の増段を行う増段温度と、稼働中の熱源機の出力の増大を行う増出力温度を設定し、熱源機のうち一部の熱源機による運転中における一次側の制御として、以下のうち少なくともいずれかを実行する。
a)暖房運転に関し、増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも低い温度として設定すると共に、増出力温度を二次側の送水温度の設定値より低く且つ増段温度より高い値として設定する。
b)冷房運転に関し、増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも高い温度として設定すると共に、増出力温度を二次側の送水温度の設定値より高く且つ増段温度より低い値として設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を一次側に備えた空調システムにおいて、二次側の送水温度に関し、熱源機の増段を行う増段温度と、稼働中の熱源機の出力の増大を行う増出力温度を設定し、前記熱源機のうち一部の熱源機による運転中における一次側の制御として、以下のうち少なくともいずれかを実行することを特徴とする熱源機の制御方法。
a)暖房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも低い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より低く且つ増段温度より高い値として設定する。
b)冷房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも高い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より高く且つ増段温度より低い値として設定する。
【請求項2】
請求項1に記載の熱源機の制御方法において、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、二次側の送水温度が低下して増出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機を定格運転させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、二次側の送水温度が上昇して増出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機を定格運転させること
を特徴とする熱源機の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の熱源機の制御方法において、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、前記増出力温度より高い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が低下して前記増出力温度に達した後、上昇して前記減出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機の出力を低下させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、前記増出力温度より低い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が上昇して前記増出力温度に達した後、低下して前記減出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機の出力を低下させること
を特徴とする請求項1または2に記載の熱源機の制御方法。
【請求項4】
二次側における送水温度を検出する温度センサと、前記熱源機の制御を行う制御装置を備え、請求項1に記載の熱源機の制御方法を実行するよう構成されたことを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これを適用した空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次側に複数台の熱源機を備え、二次側で要求される負荷熱量に応じて前記熱源機の稼働台数を増減する方式の空調システムが知られている(例えば、下記の特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-245560号公報
【特許文献2】特開2002-98358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その種の空調システムが備えられた建物では、空調のスケジュール運転が行われることがある。例えば、夜間は特定の階のみ空調機を稼働させ、朝の決まった時刻になると全階で空調を起動するのである。このような運転を行う場合、空調システムの一次側にとっては、低負荷での運転が続いた後、空調機の一斉起動により急激に二次側における要求熱量が増加し、必要な送水量が増加することになる。
【0005】
ただし、二次側において必要な流量が急増しても、これに一次側で即時に対応できるわけではなく、一次側からの送水量が確保されるまでの間は、二次側における流量をバイパス流路を利用した循環で賄うことになる。その際、暖房運転を想定する場合、一次側から送られる水に空調機の出口側の水が混ざり、送水温度が低下する。ここで、一次側における熱源機の稼働台数を送水温度に応じて制御する方式を採用している場合、夜間の運転中は1台の熱源機による低出力の運転で負荷熱量を賄っていたところ、朝に空調機が一斉に起動し、送水温度の低下に伴って熱源機が増段する(それまでオフにされていた熱源機がオンされ、稼働台数が増える)ということが起こり得る。
【0006】
ところが、この熱源機の増段は、二次側における負荷熱量そのものではなく、送水温度に応じて行われるため、要求される負荷熱量自体は1台の熱源機の出力を上げれば賄える量であるにもかかわらず、2台目の熱源機が起動してしまうという場合があり得る。
【0007】
一般に、熱源機の運転は、起動後しばらくの間は安定しないため、2台目の熱源機が起動しても、それによって送水温度が上昇するまでには時間がかかる。また、二次側の要求熱量を1台の熱源機の運転で賄える場合には、2台目の熱源機の起動後、送水温度が十分に上昇した段階で1台に減段することになる。つまり、結果的に本来不要であった2台目の熱源機の起動を行うことになり、省エネルギーの観点からも好ましくない。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、熱源機の不要な起動を抑制し得る熱源機の制御方法および空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の熱源機を一次側に備えた空調システムにおいて、二次側の送水温度に関し、熱源機の増段を行う増段温度と、稼働中の熱源機の出力の増大を行う増出力温度を設定し、前記熱源機のうち一部の熱源機による運転中における一次側の制御として、以下のうち少なくともいずれかを実行することを特徴とする熱源機の制御方法にかかるものである。
a)暖房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも低い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より低く且つ増段温度より高い値として設定する。
b)冷房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも高い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より高く且つ増段温度より低い値として設定する。
【0010】
上述の熱源機の制御方法において、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、二次側の送水温度が低下して増出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機を定格運転させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、二次側の送水温度が上昇して増出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機を定格運転させるようにしてもよい。
【0011】
上述の熱源機の制御方法において、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、前記増出力温度より高い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が低下して前記増出力温度に達した後、上昇して前記減出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機の出力を低下させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、前記増出力温度より低い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が上昇して前記増出力温度に達した後、低下して前記減出力温度に達した場合に稼働中の前記熱源機の出力を低下させるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明は、二次側における送水温度を検出する温度センサと、前記熱源機の制御を行う制御装置を備え、上述の熱源機の制御方法を実行するよう構成されたことを特徴とする空調システムにかかるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱源機の制御方法および空調システムによれば、熱源機の不要な起動を抑制するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の適用対象としての空調システムの構成の一例を示す概要図である。
図2図1の空調システムの低負荷時における運転状態を示す概念図である。
図3図2の状態から二次側の流量が急増した際の運転状態を示す概念図である。
図4】暖房時における二次側の送水温度と一次側の運転制御の関係の一例を説明する概念図である。
図5】本実施例の空調システムにおいて、二次側の流量が急増した後の運転状態を示す概念図である。
図6】本発明の参考例としての空調システムにおいて、二次側の流量が急増した後の運転状態を示す概念図である。
図7】本発明の実施例および参考例における空調のスケジュール運転に伴う送水温度の変化を概念的に示す線図である。
図8】冷房時における二次側の送水温度と一次側の運転制御の関係の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の適用対象として空調システムの形態の一例を示している。本実施例では、一次側には熱源機1とポンプ(一次ポンプ)2を各2台(熱源機1a,1bおよび一次ポンプ2a,2b)、二次側には空調機3を4台(空調機3a~3d)とポンプ4を1台、それぞれ備えたシステムを図示している。
【0017】
一次側の熱源機1と一次ポンプ2、二次側の空調機3の間には、一次往きヘッダ5、二次往きヘッダ6、二次還りヘッダ7および一次還りヘッダ8が設置され、これらの間で熱媒としての水が循環するようになっている。
【0018】
一次還りヘッダ8と一次往きヘッダ5の間は、2本の一次流路9で接続されている。各一次流路9の途中には、一次ポンプ2(2a,2b)と、その下流側に熱源機1(1a,1b)がそれぞれ1台ずつ設けられている。
【0019】
二次往きヘッダ6と二次還りヘッダ7の間は、二次流路10で接続されている。二次流路10は、途中で4本の枝流に分岐し、分岐した各枝流の途中には、空調機3が1台ずつ設けられている。各空調機3(3a~3d)の上流側には、それぞれ開閉弁11(11a~11d)が設けられている。4本の枝流は、各空調機3の下流側において再び一本に合流している。
【0020】
一次往きヘッダ5と二次往きヘッダ6の間は連通路12で接続されており、その途中にポンプ(二次ポンプ)4が設けられている。二次還りヘッダ7と一次還りヘッダ8の間は、連通路13で接続されている。
【0021】
このような構成の空調システムにおいては、一次還りヘッダ8から一次ポンプ2と熱源機1を通って一次往きヘッダ5に至り、一次往きヘッダ5から二次往きヘッダ6へ流れ、二次往きヘッダ6から開閉弁11と空調機3のコイルを通って二次還りヘッダ7に至り、二次還りヘッダ7から一次還りヘッダ8に流れる向きに水が循環する。また、一次還りヘッダ8と一次往きヘッダ5の間はさらにバイパス流路14によって接続されており、このバイパス流路14にも必要に応じて熱媒としての水が流れるようになっている。具体的には、一次側の送水量が二次側の流量より多い場合(一次リッチの場合)には余剰の水量が一次往きヘッダ5から一次還りヘッダ8に向かって流れ、二次側の流量が一次側の送水量より多い場合(二次リッチの場合)には余剰の水量が一次還りヘッダ8から一次往きヘッダ5に向かって流れる。以上のような水の流れは、一次ポンプ2および二次ポンプ4によって駆動される。
【0022】
二次流路10における枝流への分岐点よりも上流側の位置には温度センサ15が設けられており、ここで二次側の送水温度(空調機3へ送られる熱媒の温度)が測定されるようになっている。
【0023】
熱源機1や一次ポンプ2、空調機3、二次ポンプ4および開閉弁11といった各機器の動作は、制御装置16によって制御される。制御装置16は、空調システムを構成する各機器の動作を監視し、制御する中央監視装置である。特に本実施例の場合、制御装置16には温度センサ15において計測される二次側の送水温度が測定信号として入力され、これに基づいて一次側の稼働状況(各熱源機1a,1bおよび各一次ポンプ2a,2bのオンオフおよび出力)が制御されるようになっている。
【0024】
尚、熱源機1や空調機3、ポンプ2,4等の台数や流路構成等は、ここに示した例と異なっていてもよいことは勿論である。また、実際の空調システムには、ここに図示される機器以外にも各種の機器やセンサ類が設置されるが、本発明の要旨に直接関係しない構成要素については図示を省略している。
【0025】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0026】
ここでは、暖房運転の場合を想定して説明する。夜間等においては、図2に示す如く、二次側では一部の空調機3(ここでは、図中左端にある1台の空調機3a)のみが稼働し、その上流の開閉弁11aが開弁して、低負荷での運転が行われている。一次側では一部の熱源機1および一次ポンプ2(ここでは、図中右側に位置する1台の熱源機1aと、その上流の一次ポンプ2a)のみが稼働し、熱源機1aと一次ポンプ2a、空調機3aの間で熱媒としての水が循環している。尚、本図2および図3図5図6では、各熱源機1とポンプ2,4の稼働状態、および各開閉弁11の開閉状態を黒塗りで表しており、黒塗りはオンまたは開状態、塗り潰しのない状態はオフまたは閉状態を示している。
【0027】
一次側(熱源機1aおよび一次往きヘッダ5)からは低出力の運転により少量の水が送り出され、二次側(二次還りヘッダ7)からは稼働中の1台の空調機3aにおける要求熱量を賄うだけの少量の水が一次側に戻される(図中の矢印参照。尚、本図2では、矢印の大きさで水量を、塗り潰しで温度を表しており、黒の矢印は高温、白の矢印は低温、斜線の矢印はその中間の温度を示している。後に説明する図3図5および図6でも同様である)。尚、二次側で要求される負荷熱量を賄うことができる水量が一次ポンプ2aの最小出力を下回る場合には、熱源機1aから送り出される水のうち、余剰の水量がバイパス流路14を一次往きヘッダ5から一次還りヘッダ8へ流れることになる(図示は省略)。
【0028】
この状態から、空調のスケジュール運転によって二次側の空調機3が一斉に起動すると(図3参照)、4台の空調機3a~3dの上流の開閉弁11a~11dが開弁する。二次ポンプ4は4台の空調機3a~3dに熱媒としての水を供給するよう出力を上げ、二次側には4台の空調機3a~3dの稼働に必要な水が流れる(一次往きヘッダ5から二次往きヘッダ6への矢印、および二次還りヘッダ7から一次還りヘッダ8への矢印を参照)。
【0029】
このような二次側における流量の急増に対し、一次側では即時に追従することができず、一時的に二次側の流量が一次側に対し過剰となる。この場合、一次還りヘッダ8から一次往きヘッダ5に向けて余剰の水量が流れる。その結果、一次側から二次側(一次往きヘッダ5から二次往きヘッダ6)へ送り出される水には、二次側から戻されて熱源機1を通過しない水が混じることになり、二次側における送水温度(温度センサ15によって測定される水の温度)が低下する。
【0030】
ここで、本実施例では、一次側(各熱源機1および一次ポンプ2)のオンオフや動作の制御を二次側の送水温度に基づいて行っており、具体的には、例えば1台の熱源機1aでの運転中、二次側の送水温度が設定値に対し閾値よりも低下した場合(例えば、設定値-4℃以下となった場合)に、熱源機1の稼働台数が増段される(2台目の熱源機1bおよび一次ポンプ2bがオンされる)ようになっている(以下、この閾値に相当する温度値を「増段温度」と称する)。ここまでは従来の2ポンプ式の空調システム等における一般的な制御と同様であるが、本実施例ではさらに、熱源機1を増段する前に、1台目の熱源機1aおよび一次ポンプ2aの出力を増大させ、定格出力での運転を行うようになっている。暖房運転の場合、例えば上述のように増段温度を設定温度-4℃とし、二次側の送水温度がこの増段温度以下となることを条件に熱源機1が増段されるが、その温度値に至る前に、送水温度が設定値よりは低いが増段温度よりは高い温度(例えば、設定値-3℃以下)となったことを条件として、熱源機1aと一次ポンプ2aの出力を増大させる(以下、この温度値を「増出力温度」と称する)。
【0031】
このような制御は、図4の線図のように表すことができる。図4において、下段の線は一部の熱源機1aと一次ポンプ2aにより一次側で通常の変流量制御を行っている状態、すなわち、一次ポンプ2aは変流量による運転を行い、熱源機1aは出口温度を通常の運用設定値として運転している状態を示す。上段の線は、熱源機1aおよび一次ポンプ2aの出力を増大させ、熱源機1aにおいては出口温度の設定値を二次側送水温度の設定値に固定して定格運転を行い、一次ポンプ2aも定格運転を行っている状態を表す。また、左右方向は二次側の送水温度に対応しており、左側は温度が低い状態、右側は温度が高い状態を表す。
【0032】
制御装置16(図1参照)は、熱源機1のうち一部(熱源機1a)のみを通常の変流量運転によって稼働中(図中下段)、温度センサ15から入力される二次側の送水温度が増段温度(設定値(SP)に対し閾値(-4℃)以下)となった場合に、熱源機1を増段させる(熱源機1bおよび一次ポンプ2bをオンにする)ようになっている。これに加え、二次側の送水温度が設定値未満で且つ増段温度より高い閾値(増出力温度;設定値-3℃)以下となったことを条件に、稼働中の熱源機1aおよび一次ポンプ2aの定格運転を開始する(図中上段)ようになっている。
【0033】
二次側における負荷熱量が、それまで稼働中であった一部の熱源機1(熱源機1a)の運転によって賄える量であった場合には、熱源機1aと一次ポンプ2aの定格運転により、熱源機1が増段する前に(すなわち、二次側の送水温度が増段温度まで低下する前に)二次側の送水温度は回復する。送水温度が回復し、増出力温度より高い閾値(例えば送水温度の設定値-1℃;以下、この温度を「減出力温度」と称する)に達したことを条件に、定格運転を終了し、熱源機1aと一次ポンプ2aの出力を下げ、変流量制御による運転に戻す。
【0034】
このような制御を行うと、図3に示したように二次側における流量が増加して二次側の送水温度が低下した後、図5に示す如く、熱源機1aおよび一次ポンプ2aの出力が増大し、一次還りヘッダ8から一次往きヘッダ5へのバイパス量が減り(あるいはバイパス量がゼロとなり、もしくは一次往きヘッダ5から一次還りヘッダ8へ水が流れる一次リッチの状態となり)、一部の熱源機1と一次ポンプ2(熱源機1aおよび一次ポンプ2a)のみによる運転のまま、二次側の送水温度が回復する。稼働中であった熱源機1aの運転によって二次側の熱量を賄うことができれば、熱源機1が増段される(熱源機1bがオンされる)ことは回避される。
【0035】
仮に、上述の如き増出力温度の設定がなく、送水温度が増段温度に至ることを条件として熱源機1の増段が行われるような制御のみを行うことを仮定すると、図3に示したように二次側における流量が増加して二次側の送水温度が低下した後、図6に参考例として示す如く、2台目の熱源機1bおよび一次ポンプ2bが起動することになる。ただし、熱源機は一般に、起動後、運転が安定するまで時間がかかるため、一次ポンプ2bの稼働によって一次側の流量が増加しても、しばらくは熱源機1bから十分な熱量が供給されない状態が続く。すなわち、二次側において要求される空調状態が実現できるまで時間がかかる。また、熱源機を複数台備えた空調システムにおいては、互いに異なる型式の熱源機を備えていることがあり、その場合、なるべくエネルギー効率の良い熱源機を主に使いたいというニーズがある。そういった空調システムにおいて、一部の(エネルギー効率の良い)熱源機で必要な熱量を賄えるにもかかわらず、その他の熱源機まで起動すると、全体としてエネルギー効率が悪化してしまうことになる。本実施例のように、増段温度に加えて増出力温度を設定する制御を行えば、二次側の送水温度が増段温度に達する前に運転中の熱源機1aの出力を増大することにより、熱源機1の不要な増段を抑え、増大した二次側の要求熱量を速やかに供給することができると共に、エネルギー効率を高めることができる。
【0036】
図7は、増出力温度を設定した本実施例、および増出力温度を設定しない参考例における送水温度の変化を概念的に比較する線図である。温度センサ15(図1参照)で検出される二次側の送水温度(図7における最上段)は、空調機3の一斉起動(時刻tとする)後、二次側における流量の増加に伴い低下していく。
【0037】
増出力温度を設定しない参考例(破線で示す)では、送水温度が増段温度(SP-4℃)まで低下してから(時刻tとする)、送水温度が徐々に上昇していくことになる。時刻tの後、2台目の熱源機1bが起動するからである(図7中、最下段における破線)。ただし、2台目の熱源機1bでは、起動後、徐々に温水が生成されていくため(図7中、下から2段目における破線)、これによって二次側の送水温度が回復するまで(時刻tとする)には時間がかかる(図7中、最上段における破線)。尚、1台目の熱源機1aでは、温度の高い温水を生成し続けており(図7中、上から2段目における破線)、且つ、時刻t後、一次ポンプ2aの出力も徐々に上昇するが(図7中、上から3段目における破線)、この温水は熱源機1bから送り出される温度の低い水と混合することになるため、これによって二次側の送水温度が速やかに回復することにはならない(図7中、最上段における破線)。
【0038】
一方、増出力温度を設定する実施例(実線で示す)では、時刻tの後、送水温度が増出力温度(SP-3℃)まで低下した時点(時刻tとする)で一次ポンプ2aが定格運転を開始し、出力が急増する(図7中、上から3段目における実線)。これにより、熱源機1aの出口における温水の温度は一時的に低下するが、熱源機1aにおいても定格運転を開始して出力が増大し、温度は回復する(図7中、上から2段目における実線)。しかも、熱源機1aはそれまで稼働中であったため、温度が回復するまでの時間は短い。
【0039】
二次側の送水温度が減出力温度(SP-1℃)に達すると、熱源機1aと一次ポンプ2aは定格運転を終了し、変流量制御による運転に戻る(時刻t)。以上の制御により、二次側における送水温度は、時刻tの後、時刻tまでの短時間で設定値まで回復する(図7中、最上段における実線)。
【0040】
以上は暖房運転の場合を例にした説明であるが、同様の制御は冷房運転にも適用できる。その場合、例えば図8に示すように増段温度および増出力温度、減出力温度を設定する。熱源機のうち一部のみを通常の変流量運転によって稼働中(図中下段)、二次側の送水温度が増段温度(設定値(SP)に対し閾値(+4℃)以上となった場合に、熱源機を増段させる。これに加え、二次側の送水温度が設定値を超え且つ増段温度より低い閾値(増出力温度;設定値+3℃)以上となったことを条件に、稼働中の熱源機と一次ポンプの定格運転を開始する(図中上段)。二次側における負荷熱量が、それまで稼働中であった一部の熱源機1の稼働によって賄える量であった場合には、熱源機と一次ポンプの定格運転により、熱源機が増段する前に(すなわち、二次側の送水温度が増段温度まで上昇する前に)二次側の送水温度は回復する。送水温度が下がり、減出力温度(設定値+1℃)に達したことを条件に、定格運転を終了し、熱源機と一次ポンプの出力を下げ、変流量制御による通常の運転に戻す。
【0041】
以上のように、上記本実施例では、複数の熱源機1を一次側に備えた空調システムにおいて、二次側の送水温度に関し、熱源機1の増段を行う増段温度と、稼働中の熱源機1の出力の増大を行う増出力温度を設定し、熱源機1のうち一部の熱源機1aによる運転中における一次側の制御として、以下のうち少なくともいずれかを実行するようにしている。
a)暖房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも低い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より低く且つ増段温度より高い値として設定する。
b)冷房運転に関し、前記増段温度を二次側の送水温度の設定値よりも高い温度として設定すると共に、前記増出力温度を二次側の送水温度の設定値より高く且つ増段温度より低い値として設定する。
【0042】
また、本実施例の空調システムでは、二次側における送水温度を検出する温度センサ15と、熱源機1の制御を行う制御装置16を備え、上述の熱源機の制御方法を実行するようにしている。
【0043】
このようにすれば、二次側の送水温度に応じて熱源機1の稼働台数を増減する空調システムにおいて、二次側の送水温度が増段温度に達する前に運転中の熱源機1aの出力を増大することにより、熱源機1の増段を抑えることができる。
【0044】
また、本実施例の熱源機の制御方法においては、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、二次側の送水温度が低下して増出力温度に達した場合に稼働中の熱源機1aを定格運転させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、二次側の送水温度が上昇して増出力温度に達した場合に稼働中の熱源機1aを定格運転させるようにしている。
【0045】
また、本実施例の熱源機の制御方法においては、
a)を実行する場合には、暖房運転に関し、前記増出力温度より高い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が低下して前記増出力温度に達した後、上昇して前記減出力温度に達した場合に稼働中の熱源機1aの出力を低下させ、
b)を実行する場合には、冷房運転に関し、前記増出力温度より低い値として減出力温度を設定し、二次側の送水温度が上昇して前記増出力温度に達した後、低下して前記減出力温度に達した場合に稼働中の熱源機1aの出力を低下させるようにしている。
【0046】
したがって、上記本実施例によれば、熱源機の不要な起動を抑制し得る。
【0047】
尚、本発明の熱源機の制御方法および空調システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 熱源機
1a 熱源機
15 温度センサ
16 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8