(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130540
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】繊維構造体
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4382 20120101AFI20240920BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20240920BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
D04H1/4382
D04H1/435
D04H1/4391
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040333
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷 史也
(72)【発明者】
【氏名】横山 正雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 純志
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047AB09
4L047BA09
4L047BB09
4L047CB01
4L047CB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、高嵩高性、高反発性、クッション性有し、梱包前後の圧縮回復率に優れたクッション材を提供する
【解決手段】単繊維繊度が3~16dtex、ヤング率が40cN/dtex以上である、粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるサイドバイサイド型複合繊維を50%重量%以上とする繊維構造体であって、160~220℃で熱処理した際の圧縮回復率が70%以上であることを特徴とする繊維構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が3~16dtex、ヤング率が40cN/dtex以上である、粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるサイドバイサイド型複合繊維を50%重量%以上有する繊維構造体であって、160~220℃で熱処理した際の圧縮回復率が70%以上であることを特徴とする繊維構造体。
【請求項2】
樹脂(A)がヒドロキシエトキシフェニルプロパン2~7モル%とイソフタル酸5~13モル%とを共重合したエチレンテレフタレート単位主体の共重合ポリエステルであり、樹脂(B)が実質的にエチレンテレフタレート単位のみのポリエステルである請求項1に記載の繊維構造体。
【請求項3】
サイドバイサイド型複合繊維の乾熱180℃×2分における発現捲縮数が30コ/25mm以上である請求項1または2に記載の繊維構造体。
【請求項4】
熱融着性を有する繊維を10重量%以上50重量%未満有することを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体捲縮繊維の高収縮特性を利用した繊維構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、家具、ベッド、電車、自動車等のクッション材として、ウレタンフォームやスプリング、非弾性捲縮繊維詰め綿、及び非弾性捲縮繊維を接着した固綿、更にはスパンボンド法による固綿などが使用されている。
【0003】
しかしながら、ウレタンフォームは、耐久性は良好だが、床つき感が大きく、透湿透水性に劣り、蓄熱性があるため蒸れやすい。また、マットレスでよく使用されるスプリングにおいても、高反発で硬く、寝心地や座り心地が悪いという欠点がある。ポリエステル詰め綿においては、繊維間が固定されていないため、使用時に形態が崩れたり、繊維が偏ったりして嵩高性の低下や弾力性の低下が問題になる。非弾性捲縮繊維を用いた固綿としては、例えば特許文献1には、伸縮性の良好な弾性不織布構造物として、潜在捲縮繊維が75%以上よりなる不織布にウレタン系、または、シリコーン共重合系ゴム状樹脂を15~60%付着してなる伸縮性に富んだ弾性不織布構造体が挙げられている。また、特許文献2には、優れたクッション性、耐へたり性、耐熱性、蒸れにくく座り心地のよいクッション材として、非弾性捲縮短繊維と熱可塑性エラストマーからなる立体捲縮発現複合繊維が三次元的に混合され、絡みついた接点が熱接着成分のエラストマーで接着してネットワーク構造を形成した繊維構造体が挙げられている。更に、特許文献3には、嵩高でクッション性に優れ、風合いが優れ、かつ後か工加工時の賦系性に優れる嵩高性不織布として、螺旋捲縮繊維を含む積層不織布が挙げられている。また、特許文献4には、嵩高性および嵩高保持性に加えて、反発性とクッション性を有し、且つ軽量保温性にも優れる繊維構造体が挙げられている。
【0004】
しかしながら、何れも風合いには優れるものの、反発性が劣り梱包前後の圧縮回復率が悪いなど十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-158023号公報
【特許文献2】特開平6-304348号公報
【特許文献3】特開2011-236542号公報
【特許文献4】特開2018―119240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改良し、高嵩高性、高反発性、クッション性有し、梱包前後の圧縮回復率に優れたクッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、繊維構造体を構成する繊維である単繊維繊度が3~16dtexの粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるサイドバイサイド型複合繊維において、ヤング率を40cN/dtex以上とすることで目的を達成できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、単繊維繊度が3~16dtex、ヤング率が40cN/dtex以上である、粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるサイドバイサイド型複合繊維を50重量%以上有し、160~℃で熱処理した際の圧縮回復率が70%以上であることを特徴とする繊維構造体である。
【0009】
本発明の繊維構造体の好ましい態様によれば、前記のサイドバイサイド型複合繊維は、ヒドロキシエトキシフェニルプロパン2~7モル%とイソフタル酸5~13モル%とを共重合したエチレンテレフタレート単位主体の共重合ポリエステル(A)と実質的にエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステル(B)とをサイドバイサイドに接合した複合ポリエステル繊維であり、さらにと熱融着性を有するポリエステル繊維が含まれてなることである。
【0010】
また、本発明の繊維構造体のさらに好ましい態様は、サイドバイサイド型潜在捲縮複合繊維の乾熱180℃×2分における発現捲縮数が30コ/25mm以上である。
【0011】
さらに、本発明の繊維構造体の好ましい態様は、熱融着性を有する繊維を10重量%以上50重量%未満有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高嵩高性と、高反発性とクッション性を有し、梱包前後の圧縮回復率に優れたクッション材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の繊維構造体について詳細に説明する。
【0014】
本発明の繊維構造体は、単繊維繊度が3~16dtex、ヤング率が40cN/dtex以上である、粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるサイドバイサイド型複合繊維を50%重量%以上有する繊維構造体である。
【0015】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維の単繊維繊度は3~16dtexであり、好ましくは3~13dexである。単繊維繊度が16dtexを超えると、紡糸時の融着性が悪化し異常糸が増える。また、該繊維の混率を50重量%以上とする繊維構造体とすることが好ましい。また、3dtex未満であると、目標とする嵩高性や反発性が得ることができない。
【0016】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維のヤング率は40cN/dtex以上であり、40cN/dtex以下の場合、繊維構造体とした場合に160~220℃で熱加工した際の圧縮回復率70%を得ることができない。
【0017】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維は潜在捲縮複合繊維であり、熱処理を施すことにより立体的に捲縮発現(顕在化)するものである。
【0018】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維は粘度の異なる2種類の樹脂(A)と(B)からなるが、樹脂(A)及び(B)はポリエステルであることが好ましい。
【0019】
本発明において樹脂(A)は共重合ポリエステルが好ましく、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とする共重合ポリエステルが好ましい。さらに、共重合成分として、好ましくは2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンまたはそのエステル形成誘導体(以下、エステル形成誘導体も含めてBHPPと略することがある。)とイソフタル酸(以下、IPAと略することがある。)を用いて改質されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが挙げられる。ここで言う、エチレンテレフタレート単位とは、テレフタル酸とエチレングリコールの一当量同士が脱水縮合反応したものである。
【0020】
本発明においては、共重合ポリエステル中のBHPPの共重合割合は、好ましくは2~7モル%とするものであり、中でも4~6モル%とすることが好ましい態様である。BHPPの共重合割合が2モル%未満では、収縮特性が不十分となり、不織布にした場合その伸長率と伸長回復率が小さく十分な伸縮機能が得られないという傾向がある。一方、BHPPの共重合割合が7モル%を超えると、ポリマーの融点が低下し、繊維の強度低下が著しいため、クッション材用途には適さなくなることがある。
【0021】
また、本発明においては、共重合ポリエステル中のIPAの共重合割合は、好ましくは5~13モル%とするものであり、中でも7~11モル%とすることが好ましい態様である。IPAの共重合割合が5モル%未満では、実質的に大きな捲縮が得られず、一方、IPAの共重合割合が13モル%を超えると、ポリマーの融点が低下するため、熱安定性が損なわれる傾向がある。
【0022】
本発明において樹脂(B)はホモポリエステルであることが好ましい、ホモポリエステルとは、実質的にエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステルである。実質的にエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステルとは、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、エチレンテレフタレート単位が85モル%以上であることが好ましい。そして、上述の共重合ポリエステルより熱収縮性が低くなるようにするため、結晶性を大きく阻害する成分が含まれたものや、BHPP、IPA、およびスルホン酸塩基化合物等は含有しないことが好ましい態様である。
【0023】
本発明において、樹脂(A)と(B)は粘度が異なることが必要である。樹脂(A)および(B)がポリエスエルの場合、固有粘度が異なればよい。上記の共重合ポリエステルおよび上記のホモポリエステルの固有粘度は、溶融紡糸を円滑に行う観点から、好ましくは共重合ポリエステルが0.55~0.70、ホモポリエステルが0.45~0.60程度であればよい。
【0024】
また、捲縮発現を十分なものとし、しかも紡糸安定性を損なわないようにする観点からは、共重合ポリエステルの固有粘度が高い方が好ましく、共重合ポリエステルとホモポリエステルのポリマー固有粘度の差は0.25以下、0.02以上とすることが好ましい。
【0025】
また、上記の共重合ポリエステルおよびホモポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の共重合成分を含んでいてもよい。共重合可能な成分としては、例えば、コハク酸、シクロヘキサジカルボン酸等のジカルボン酸類、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、およびポリエチレングリコールなどのジオール類を挙げることができる。共重合割合は、15モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは10モル%以下である。ただし、ポリエステルはエチレンテレフタレート単位85モル%以上より構成され、好ましくはBHPP、IPAおよびスルホン酸基化合物を含まないポリエステルとすることが好ましい態様である。
【0026】
さらに、本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維においては、上記の共重合ポリエステルおよび/またはホモポリエステルに、難燃剤、抗菌剤、芳香剤、顔料およびセラミックス等種々の特性付与剤や添加物を任意に配合することができる。その他の紡糸条件は、従来のポリエステル複合繊維の紡糸条件を採用することができる。
【0027】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維は、上記の共重合ポリエステルとホモポリエステルを用いて、質量比を好ましくは共重合ポリエステル/ホモポリエステル=20/80~50/50とし、複合紡糸装置によって丸断面口金孔から好ましくは、295~305℃の温度で溶融紡糸することにより、サイドバイサイド型の潜在捲縮性複合繊維とすることができる。
【0028】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維は潜在捲縮性を有し、乾熱180℃×2分の条件下における無荷重熱処理時の発現捲縮数が30コ/25mm以上であることが好ましい。発現捲縮数が30コ/25mm未満では、嵩高性,弾力性の低下や繊維間の交絡が弱くなるため、形崩れすることがある。発現捲縮数の上限は高すぎても触感が悪く、寝心地性が悪くなるため、好ましくは60コ/25mm程度である。
【0029】
本発明の繊維構造体は上記のサイドバイサイド型複合繊維を50重量%以上有する繊維構造体である。上記のサイドバイサイド型複合繊維を50重量%以上有することにより、嵩高性に優れた繊維構造体となる。
【0030】
本発明で用いられるサイドバイサイド型複合繊維を繊維構造体とした場合、160℃~220℃で熱処理した際に、70%以上の圧縮回復率を得ることができる。なお、本発明における圧縮回復率は実施例の欄に記載した方法で測定した値をいう。
【0031】
また、本発明の繊維構造体においては、サイドバイサイド型複合繊維間に熱融着(熱接着)繊維を存在させることにより、繊維間を接着させることで、体圧時の形態安定性をより向上させることができる。熱融着繊維は、単一成分からなる熱融着繊維を使用しても良いが、熱処理により融着しない部分も含む2種類以上の樹脂成分からなるサイドバイサイド型や芯鞘型などの複合型熱性融着繊維を使用すると、融着しない部分により繊維構造体の剛性が保たれるためより望ましい態様である。
【0032】
熱融着繊維を構成する成分としては、6ナイロンとポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリプロピレンとエチレン-酢酸ビニル系共重合体、ポリエステルとポリプロピレン、ポリエステルとポリエチレン、ポリエステルとポリブチレン、ポリエステルとポリエステルエラストマー、6ナイロンと66ナイロン、および高密度ポリエステルと低密度ポリエステル等の溶融温度の異なる樹脂の組合せを例示することができる。熱融着繊維の好ましい混率は、繊維構造体重量に対して10重量%以上50重量%未満である。
【0033】
次に、本発明の繊維構造体の製造方法について、その一態様を説明する。
【0034】
上記したサイドバイサイド型複合繊維と熱融着繊維の短繊維をオープナーで予備開繊と混綿を行い、カードで繊維をウェブ化する。所定の目付になるようカードウェブを積層し、所定の厚みになるように厚み規制をかけながら、サイドバイサイド型複合繊維の潜在捲縮発現及び熱融着繊維による熱融着に適した温度及び時間の熱処理を熱風乾燥機にて施し、不織布を得る。
【0035】
このようにして得られた不織布は、優れた嵩高性および嵩保持性に加えて、反発性とクッション性を有し、且つ軽量性で保温性に優れるため、本発明の目的とするマットレスなどのクッション材となる不織布として最適である。
【実施例0036】
次に、実施例によって本発明の繊維構造体について、詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
本発明における特性値の測定法は、次のとおりである。
【0038】
<単繊維繊度(dtex)、ヤング率(cN/dtex)>
JIS-L1015(2010年)の方法に従い、単繊維繊度及びヤング率を測定した。
【0039】
<固有粘度>
試料2gを、オルトクロロフェノールを25ml加え102℃で加熱しながら70分間攪拌溶解した。冷却後、15mlをオストワルド改良型粘度計に入れ、落下秒数から固有粘度を算出した。
【0040】
<発現捲縮数>
JIS―L1015(2010年)の方法に従い、捲縮数を測定した。
【0041】
<嵩高性、圧縮回復率>
潜在捲縮性複合ポリエステル繊維と熱接着繊維をオープナーで予備開繊と混綿を行い、カードで繊維をウェブ化する。目付650g/m2になるようカードウェブを積層し、50mmの厚み規制をかけながら、210℃(物温180℃)×4分間の熱処理を熱風乾燥機にて施す。得られた固綿を30cm×50cmの試料とし、5カ所(4角及び中央部)の厚みを測定して嵩高性を求め、同5カ所に同時に厚みが17mmとなるようにプレスをかけ、3週間圧縮後にプレスを外して、さらに36時間経過後に5カ所厚みを測り、プレス前からの厚みの変化量を測定し圧縮回復率(%)とした。厚みは5ヶ所の平均値を算出した。
【0042】
[実施例1]
エチレンテレフタレートを主成分とし、全酸成分に対し、ビスフェノール類として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンにエチレンオキシドを2当量付加したもの(以下、BPA-EOと称する。)4.4モル%とIPA7.1モル%とを共重合させた固有粘度0.581の共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と、固有粘度0.667のポリエチレンテレフタレート(B)を、複合溶融紡糸装置によって、丸断面口金孔から300℃の温度で質量での複合比率(A)/(B)=50/50で、吐出量485g/分で紡出し、1300m/分の速度で引き取り、サイドバイサイド型の未延伸糸を得た。これらの未延伸糸を集束後、延伸倍率3.52倍、延伸温度85℃で延伸し、緊張熱処理140℃で熱処理を行い、押し込み型捲縮機で機械捲縮を付与した後に51mmにカットして、単繊維繊度6.0dtexの短繊維を得た。
【0043】
上記で得られた短繊維と、熱処理により融着しない部分も含む2種類以上の樹脂成分からなる芯鞘型の複合熱融着繊維を70:30の重量割合で混綿し、カードにかけ、目付650g/m2の繊維ウェブを作製した。次いで、得られた繊維ウェブを210℃の温度のオーブンで4分間熱処理を行って潜在捲縮を発現させ、不織布を作製した。得られた短繊維ならび不織布の物性を、表1に示す。
【0044】
[実施例2]
実施例1に記載した、単繊維繊度6.0dtexの複合繊維を吐出量を480g/分、引き取り速度を1400m/分とし、これらの未延伸糸を集束後、延伸倍率3.36倍、延伸温度85℃で延伸し、緊張熱処理140℃で熱処理を行い、押し込み型捲縮機で機械捲縮を付与した後、単繊維繊度12.8dtexの短繊維を得たこと以外は、実施例1と同じ条件で短繊維ならび不織布を作製した。短繊維および不織布の物性を、表1に示す。
【0045】
[実施例3]
実施例1に記載した、単繊維繊度6.0dtexの複合繊維と、熱融着繊維に加え、ポリエチレンテレフタレート単成分からなるポリエステル繊維との混率(重量割合)を60:30:10に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で短繊維ならび不織布を作製した。短繊維および不織布の物性を、表1に示す。
【0046】
[比較例1]
実施例1に記載した、単繊維繊度6.0dtexの複合繊維を吐出量を309g/分、引き取り速度を1200m/分とし、これらの未延伸糸を集束後、延伸倍率3.43倍、延伸温度85℃で延伸し、緊張熱処理140℃で熱処理を行い、押し込み型捲縮機で機械捲縮を付与した後、単繊維繊度2.2dtexの短繊維を得たこと以外は、実施例1と同じ条件で短繊維ならび不織布を作製した。短繊維および不織布の物性を、表1に示す。
【0047】
[比較例2]
実施例1に記載した単繊維繊度6.0dtexの複合繊維と芯鞘型の複合熱融着繊維に加え、ポリエチレンテレフタレート単成分からなるポリエステル繊維との混率(重量割合)を40:30:30に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で短繊維ならび不織布を作製した。短繊維および不織布の物性を、表1に示す。
【0048】
[比較例3]
実施例1に記載した、単繊維繊度6.0dtexの複合繊維を吐出量を445g/分、引き取り速度を1100m/分とし、これらの未延伸糸を集束後、延伸倍率3.82倍、延伸温度85℃で延伸し、緊張熱処理140℃で熱処理を行い、押し込み型捲縮機で機械捲縮を付与した後、単繊維繊度6.0dtexの短繊維を得たこと以外は、実施例1と同じ条件で短繊維ならび不織布を作製した。短繊維および不織布の物性を、表1に示す。
【0049】
【0050】
実施例1~3が示すように、単繊維繊度が3.0dtex以上でヤング率の高い2種類の樹脂からなるサイドバイサイド型複合繊維を50%重量%以上含む繊維構造体は、圧縮回復率も70%あり、高反発性とクッション性も良好な結果であった。
【0051】
一方、比較例1で示されるように、単繊維繊度が2.2dtexの場合、ヤング率が34cN/dtexと下がり、圧縮回復率も42%の以下となる。また、比較例2で示されるように、サイドバイサイド型複合繊維の混率を40%とした場合は、ヤング率が43cN/dtexであっても圧縮回復率が53%となるため、圧縮回復率の劣る繊維構造体となった。また、比較例3で示されるように、紡糸条件によってはサイドバイサイド型複合繊維のヤング率が40cN/dtexには達せず、繊維構造体としても圧縮回復率の劣る繊維構造体となった。