(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130545
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】易開封性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240920BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240920BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240920BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/18 Z
B32B7/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040340
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】大谷 博志
(72)【発明者】
【氏名】三好 克典
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA03
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03C
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4F100AK04A
4F100AK06
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4F100JL12B
4F100JN02
(57)【要約】
【課題】食品包装容器等の蓋材用フィルムとして好適に使用し得る易開封性フィルムに要求される特性を実質的に全て満たすことが可能な、特に、容器等に対して低温下でも適切なシール強度を発現しつつ容易に開封可能な易開封性に加え、蓋材としてのフィルムが曇らず容器内を良好に視認でき、水滴の発生を抑えることで食品の劣化を防ぐことができる性能を維持可能な易開封性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂組成物を有する基材層(A)と、該基材層(A)とは反対側に、プラスチック製被着体とヒートシール可能な、ポリオレフィン系樹脂組成物を有するピール層(B)と、を有する少なくとも2層以上からなる複合フィルムであり、前記基材層(A)と、前記ピール層(B)にはそれぞれ異なる種類の界面活性剤を少なくとも1種類以上含有し、特定の条件を満たす、易開封性フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物を有する基材層(A)と、
該基材層(A)とは反対側に、プラスチック製被着体とヒートシール可能な、ポリオレフィン系樹脂組成物を有するピール層(B)と、を有する
少なくとも2層以上からなる複合フィルムであり、
前記基材層(A)と、前記ピール層(B)にはそれぞれ異なる種類の界面活性剤を少なくとも1種類以上含有し、
下記a)、b)を満たす、易開封性フィルム。
a)前記複合フィルムのトータルヘイズが30%以下である
b)ピール層(B)とプラスチック製被着体をヒートシール温度160℃でシールしたときに、23℃雰囲気下でピール強度が5~30N/15mmであり、4℃雰囲気下でピール強度が2~20N/15mmである
【請求項2】
前記基材層(A)がアミン系界面活性剤を0.01~3質量%含有し、前記ピール層(B)が非イオン系界面活性剤を0.3~5質量%含有する、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項3】
前記基材層(A)のポリオレフィン系樹脂組成物がポリエチレン系樹脂であり、前記ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項4】
前記基材層(A)が結晶核剤を有し、基材層(A)の結晶化度が40~60%である、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項5】
前記ピール層(B)が、融点が50~100℃のエチレン系樹脂である、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項6】
前記ピール層(B)が、エチレン・酢酸ビニル共重合体であり、融点が50~100℃で、メルトフローレートが7~20g/10分(測定温度190℃)である、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項7】
前記ピール層(B)が、粘着付与剤を1~15質量%含有する、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封性フィルムに関し、とくに、被着体に容易に所望のヒートシールを行うことができ、被着体に対し適切なピール強度を発現しつつ優れた防曇性を発現でき、しかも少ない工程で安価に製造可能な、食品包装容器等の蓋材用フィルムとして好適に使用し得る易開封性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ライフスタイルの多様化やユニバーサルデザイン化を背景に、食品包装材料にはこれまでの衛生的に食品を保持するという単純な特性に加え、様々な機能が要求されるようになってきている。これらのうち、誰でも(老人、子供、障害者等)が容易に容器の開封ができる方式への要求がある。例えば野菜や果物の青果物や惣菜など、予めカットされたものがトレー状の容器に入れられ、蓋材でシールされた形で供給されるようになってきている。これらの食品包装容器等の蓋材用フィルムとして好適に使用し得る易開封性フィルムには、優れたヒートシール性と易開封性に加えて、容器内を良好に視認でき、水滴の発生を抑えることで食品の劣化を防ぐことができる防曇性が要求されることが多い。
【0003】
優れたヒートシール性(特に低温下でのシール強度)と易開封性に言及した従来技術として、特許文献1、2が知られているが、これら特許文献1、2には防曇性に関しては詳細に言及されていない。防曇性を付与するには、一般的には防曇剤をコーティングするタイプのものが多いが、この方法では、基本的に製膜工程とコーティング工程の2工程が必要となり、さらにシール面にコロナ放電処理等を要求される場合が多いので、製造費用が高くなる。このような製造工程、製造費用に関する問題に対しては、防曇剤を練り込んで易開封性フィルムを製造する技術が特許文献3に記載されているが、特許文献3には、易開封性や低温下でのシール強度に関しては詳細に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-25047号公報
【特許文献2】特開2018-20523号公報
【特許文献3】特開2015-193712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、食品包装容器等の蓋材用フィルムとして好適に使用し得る易開封性フィルムに要求される特性を実質的に全て満たすことが可能な、特に、容器等に対して低温下でも適切なシール強度を発現しつつ容易に開封可能な易開封性に加え、蓋材としてのフィルムが曇らず容器内を良好に視認でき、水滴の発生を抑えることで食品の劣化を防ぐことができる性能を維持可能な易開封性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の易開封性フィルムは、特に、次の構成を採用する。すなわち、
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物を有する基材層(A)と、該基材層(A)とは反対側に、プラスチック製被着体とヒートシール可能な、ポリオレフィン系樹脂組成物を有するピール層(B)と、を有する少なくとも2層以上からなる複合フィルムであり、前記基材層(A)と、前記ピール層(B)にはそれぞれ異なる種類の界面活性剤を少なくとも1種類以上含有し、下記a)、b)を満たす、易開封性フィルム。
a)前記複合フィルムのトータルヘイズが30%以下である
b)ピール層(B)とプラスチック製被着体をヒートシール温度160℃でシールしたときに、23℃雰囲気下でピール強度が5~30N/15mmであり、4℃雰囲気下でピール強度が2~20N/15mmである
(2)前記基材層(A)がアミン系界面活性剤を0.01~3質量%含有し、前記ピール層(B)が非イオン系界面活性剤を0.3~5質量%含有する(1)に記載の易開封性フィルム。
【0007】
(3)前記基材層(A)のポリオレフィン系樹脂組成物がポリエチレン系樹脂であり、前記ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する、(1)または(2)に記載の易開封性フィルム。
【0008】
(4)前記基材層(A)に結晶核剤を有し、基材層(A)の結晶化度が40~60%である、(1)~(3)のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【0009】
(5)前記ピール層(B)が、融点が50~100℃のエチレン系樹脂である、(1)または(2)に記載の易開封性フィルム。
【0010】
(6)前記ピール層(B)が、エチレン・酢酸ビニル共重合体であり、融点が50~100℃で、メルトフローレートが7~20g/10分(測定温度190℃)である、(1)、(2)、(5)のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【0011】
(7)前記ピール層(B)が、粘着付与剤を1~15質量%含有する、(1)、(2)、(5)、(6)のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の易開封性フィルムは、青果物等の水分の多い食材がA-PET等のトレーに充填され、その蓋材のシーラントとして使用された場合、低温から室温におけるシール保持性と開封性に優れ、さらに内部の視認性に優れ、水滴との接触による食材の劣化を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について、実施の形態とともに、詳細に説明する。
【0014】
本発明の易開封性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂組成物を有する。該ポリオレフィン系樹脂組成物は、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンモノマーからの単独重合物やこれらの共重合物、さらにはエチレンとカルボン酸ビニル、エチレンとα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体の少なくとも1種を50質量%以上含有する樹脂組成物が好ましい。
【0015】
本発明の易開封性フィルムは、被着体とヒートシール可能なピール層(B)と、該ピール層とは反対側に位置する基材層(A)とを有する2層積層の構成が基本であるが、ピール層/中間層/基材層の3層の積層構成も好ましく例示される。
【0016】
該被着体とは、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)やポリスチレン(PS)からなるトレー等の成型品に代表されるプラスチック製のものである。
【0017】
本発明の易開封性フィルムにおいて、基材層(A)は、ポリオレフィン系樹脂組成物がポリエチレン系樹脂、エチレン・プロピレンランダム共重合体の少なくとも1種を50質量%以上含有する樹脂組成物が好ましく、ポリエチレン系樹脂がピール層との積層性および自己回収性から好ましい。
【0018】
上記ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上を含有することが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンを混合することにより、押出機にてフィルム状に成形している際に、口金幅に対してフィルム幅が狭くなるネックイン現象が小さくなり好ましい。
【0019】
上記ポリエチレン系樹脂は、チーグラ・ナッタ触媒、またはメタロセン触媒を用いた、いずれかの樹脂であってもよい。
【0020】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンにα-オレフィンとの共重合体が好ましく、主成分としての50~98質量%のエチレンと、共重合モノマーとしてのα-オレフィンとのランダム共重合体が好ましく、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。α-オレフィンとしては、炭素数が3~10のプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが使用できる。
【0021】
上記ポリエチレン系樹脂は、密度が0.87~0.945g/cm3の範囲であることが、耐ブロッキング性から好ましい。
【0022】
また、上記ポリエチレン系樹脂は、190℃でのメルトフローレート(以下、MFRと略称する)が1~15g/10分の範囲のものが、製膜安定性とピール層(B)との積層性から好ましい。
【0023】
上記基材層(A)には、非イオン系界面活性剤およびアミン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を0.01~3質量%の範囲で含有することが好ましい。このとき、基材層(A)の界面活性剤は、下記するピール層(B)の界面活性剤とは異なる種類であることが、ピール層からの界面活性剤の移行が少なくて好ましい。
【0024】
上記非イオン系界面活性剤としては、3価または4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12~18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物とすることが好ましい。3または4価の脂肪族多価アルコールとしては、グリセリンなどの3価の脂肪族アルコール、ペンタエリエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンなどの4価の脂肪族アルコールなどを挙げることができる。
【0025】
また、炭素数12~18の脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸モノカルボン酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸を挙げることができる。
【0026】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンジミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレートなどが挙げられる。
【0027】
上記ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンジオレート等が挙げられる。
【0028】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンジミリステート、ソルビタントリミリステートなどが挙げられる。
【0029】
上記非イオン系界面活性剤の融点は、30~60℃の範囲であることが好ましい。融点が30℃未満では液状となるために上記エチレン系樹脂への添加が難しく、また、フィルムのべたつきが出て耐ブロッキング性が悪化する。融点が60℃を超えると防曇性の発現性に劣ることがある。
【0030】
上記アミン系界面活性剤とは、ラウリル酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルジメチルアミンオキサイド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヤシアルキルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、ポリオキシエチレンヤシアルキルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)牛脂アルキルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)硬化牛脂アミン、N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-N-アルキル1,3-ジアミノプロパン、N,N’,N’-ポリオキシエチレン-N-アルキル1,3-ジアミノプロパン等を挙げることができる。
【0031】
特に、アミン系界面活性剤は基材層(A)内の界面活性剤の移動が遅く、基材層内に維持されて、ピール層(B)の界面活性剤が基材層へ移動しにくくなるので好ましい。
【0032】
アミン系界面活性剤の含有量が0.01質量%未満では防曇性の効果が得られず、3質量%を超えると表層へのブリード量が多くなって、基材層(A)とピール層(B)とのブロッキング剪断力が高くなり、巻き出し不良が発生することがあり、また他の耐熱性基材とのラミネート強度が低下することがある。
【0033】
上記基材層(A)に、結晶核剤を含有し、好ましくは0.01~5質量%含有し、また、結晶化度が40~60%の範囲であることが好ましい。結晶核剤の含有量が0.01未満では、基材層(A)の結晶化度を40%以上にすることが難しいことがあり、5質量%を超えて含有すると結晶化度が60%を超えることがある。
【0034】
基材層(A)の結晶化度が40%未満では、蓋材として打ち抜く際に糸引きが出て打ち抜き不良となることがあり、また、ピール層(B)からの界面活性剤の移行が多くなって防曇性が悪化することがある。結晶化度が60%を超えると製膜性が不良となることがあり、蓋材として打ち抜く際に、フィルムの裂けや割れが起こることがある。
【0035】
ここで、上記の糸引きとは、開封時にフィルムが糸のように伸びて剥離する状態を言い、またフェザリングとも言う。
【0036】
上記結晶核剤は、例えば、理研ビタミン株式会社製リケマスターCN001(登録商標)や、特許第6245679号公報に記載のポリエチレングラフトシリカ微粒子を挙げることができる。
【0037】
上記基材層(A)のピール層(B)と反対側の面には、二軸延伸ポリエステルフィルム等の耐熱性基材を積層して容器の蓋材に加工されることが多いことから、基材層(A)と耐熱性基材間のラミネート強度を高くするために、基材層(A)の融解温度のピーク温度が100~145℃の範囲であることが好ましい。
【0038】
基材層(A)にピール層(B)を積層した複合フィルムのトータルヘイズが30%以下の範囲であれば、製膜時に発生したフィルム屑を自己回収することができるので好ましく、自己回収率は50質量%以下が製膜性とトータルヘイズから好ましい。
【0039】
上記ピール層(B)を構成するポリオレフィン系樹脂は、融点が50~100℃のエチレン系の樹脂が好ましく、エチレン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと省略することがある。)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・ブタン酸ビニル共重合体等のエチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)等のエチレンとα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体や、これらに無水マレイン酸を共重合したものなどを挙げることができるが、ピール強度やピール性(開封性)の点からエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。なお、EVAと上記ポリエチレン系樹脂との併用を制限するものではない。
【0040】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)は、融点が50~100℃で、メルトフローレートが7~20g/10分(測定温度190℃)であることが、上記基材層(A)との積層性と、ピール強度やピール性(開封性)の点から好ましい。
【0041】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)は、酢酸ビニル含有量が20~40質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。酢酸ビニル含有量を20~40質量%とすることで、融点を50~100℃とすることができる。
【0042】
上記ピール層(B)は、被着体の容器から開封時に蓋材のフィルムが被着体の容器に残って剥離してしまう膜残りと呼ばれる剥離外観不良が発生することがなく、剥離外観が良好なピール性(開封性)を付与するために、粘着付与剤を1~15質量%含有することが好ましく、3~12質量%の含有量がさらに好ましい。含有量が1質量%未満ではピール性(開封性)付与の添加効果がないことがあり、15質量%より多すぎると、ロール状に巻き取った後にブロッキングが発生することがあり、フィルム自体も滑り性が悪くなったりして取り扱い性が悪くなることがある。
【0043】
上記粘着付与剤としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンおよびこれらを原料にした水添ロジン、不均化ロジン、2量化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、ロジンエステル等のロジン系樹脂や、α-ピネン、β-ピネン、リモネンなどの重合体であるポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂およびこれらの水添樹脂、石油系炭化水素樹脂(脂肪族系、芳香族系、脂環族系等)、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂(アルキルフェノール、ロジン変性フェノール樹脂等)などを挙げることができ、これらは単独あるいは2種以上を併せて用いることができる。
【0044】
上記粘着付与剤は、脂環族系炭化水素樹脂とロジンエステル系樹脂との混合物からなるものを使用することで安定したピール性を得ることができる。脂環族系炭化水素樹脂とロジンエステル系樹脂の質量割合は30:70~70:30が好ましい。
【0045】
上記ピール層(B)は、防曇性を発現させるために非イオン系界面活性剤を0.3~5質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0046】
ピール層(B)の非イオン系界面活性剤の含有量が0.3質量%未満であると防曇性が発現しないことがあり、5質量%を超えると基材層(A)のピール層(B)と反対側の面に界面活性剤が転写し、耐熱性フィルム等とのラミネート強度の低下や、ピール強度が低下することがある。好ましくは、1~5質量%であり、さらに好ましくは2~4質量%である。
【0047】
上記ピール層(B)の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤からなることが好ましく、非イオン性界面活性剤としては、3価または4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12~18の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物とすることが好ましい。3または4価の脂肪族多価アルコールとしては、グリセリンなどの3価の脂肪族アルコール、ペンタエリエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンなどの4価の脂肪族アルコールなどを挙げることができる。
【0048】
また、炭素数12~18の脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸モノカルボン酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸を挙げることができる。
【0049】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンジミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレートなどが挙げられる。
【0050】
上記ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンジオレート等が挙げられる。
【0051】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンジミリステート、ソルビタントリミリステートなどが挙げられる。
【0052】
上記非イオン系界面活性剤の融点は、30~60℃の範囲であることが好ましい。融点が30℃未満では液状となるために上記エチレン系樹脂への添加が難しく、また、フィルムのべたつきが出て耐ブロッキング性が悪化する。融点が60℃を超えると防曇性の発現性に劣ることがある。
【0053】
本発明の易開封性フィルムは、ピール層(B)の算術平均表面粗さRaが0.2μm以上2.0μm以下であることが好ましい。ピール層(B)の算術平均表面粗さを0.2μm以上とすることで、本発明の易開封性フィルムを製造後、ロール状に巻き取った際に、ピール層(B)とその反対側の面(基材層(A)の反ピール層側表面)とのブロッキングを抑制し、フィルムを巻き出す際に容易に巻き出すことができて好ましい。算術平均表面粗さRaが2.0μmを超えると、フィルム製膜またはラミネート加工時にフィルムが削れて白粉が工程ロールに付着することがあり、また、ピール強度が低下することがある。
【0054】
上記算術平均表面粗さRaを0.2μm以上2.0μm以下とする方法としては、例えば、ピール層(B)に無機粒子や有機粒子などを添加する方法や、ピール層(B)や基材層(A)のマトリクスとなる樹脂と非相溶な樹脂を用い、海島構造を形成する方法等を挙げることができるが、本発明においては、ピール層(B)に有機粒子を用いる方法が好ましい。有機粒子としては、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子、あるいは上記樹脂の合成に用いられる2種以上のモノマーの共重合樹脂粒子等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。
【0055】
上記粒子の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、目的とする上記の算術平均表面粗さが得られない場合がある。一方、平均粒子径の上限は20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下である。平均粒子径が20μmを超えると、製膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合や、粒子が脱落して工程通過性が悪化することがある。
【0056】
上記粒子の添加量は、0.1~3質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満では添加効果がみられないことがあり、3質量%を超えると膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合があり、トータルヘイズも30%を超えることがある。
【0057】
本発明においては前述のように、基材層(A)とピール層(B)の2層構成が基本であるが、基材層(A)/中間層(C)/ピール層(B)の3層構成とすることもできる。
【0058】
上記中間層(C)は、該3層フィルム製膜時に発生した屑の回収層とすることができ、上記基材層(A)とピール層(B)の樹脂組成からなることが好ましい。この時、中間層(C)が界面活性剤を含有し、界面活性剤の濃度が0.05~3質量%の範囲とすることが好ましい。中間層(C)に0.05~3質量%の界面活性剤を含有することで、ピール層(B)表面に界面活性剤が移行しやすく、防曇性を発現しやすくなるため好ましい。界面活性剤が0.05質量%未満では添加効果がないことがあり、3質量%を超えて添加しても効果が頭打ちになることがある。
【0059】
本発明の易開封性フィルムの厚さは15~100μmが好ましい。基材層(A)の厚さは10~70μmが好ましく、更に好ましくは13~60μmの範囲のものが、容器蓋材として用いたときの打ち抜き性と取り扱いがよく好適である。
【0060】
ピール層(B)の厚さは、1~30μm、好ましくは1.5~20μmの範囲が好適である。ピール層の厚さが30μmを超えると剥離する際、糸引き、フェザリング、膜残りと呼ばれる剥離外観不良が発生することがあり、ピール層(B)の厚さが1μm未満であると安定したピール強度が得られないことがある。
【0061】
ここで、膜残りは開封時にフィルムが被着体の容器に残って剥離してしまう状態のことを言う。
【0062】
前述の通り、本発明の易開封性フィルムのトータルヘイズは、30%以下であることが好ましい。トータルヘイズが30%を超えると、防曇性の確認および内容物の視認性に劣り、好ましくは20%以下である。
【0063】
本発明の易開封性フィルムは、基材層(A)上に(すなわち、基材層(A)の反ピール層側表面上に)、該易開封性フィルムとは異種の耐熱性基材からなる層が積層されている積層体として用いられる。そのため、上記基材層(A)上に(すなわち、基材層(A)の反ピール層側表面上に)コロナ放電処理を施して、濡れ張力を36mN/m以上にすることが好ましい。
【0064】
上記異種の耐熱性基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンフィルム(ON)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム、アルミ箔、合成紙等が挙げられる。
【0065】
本発明の易開封性フィルムのみで蓋材を構成すると、強度や耐熱性等の要求特性に不足が生じる場合があり、上記のような異種の素材層を積層した積層体構成とすることで、本発明の易開封性フィルムによる前述のような優れた性能を維持しつつ、蓋材としての他の要求特性を確実に満たすことができる。
【0066】
特に二軸延伸ポリエステルフィルム等の耐熱フィルムとの積層により蓋材に加工されることが多いが、この場合、本発明の易開封性フィルムの基材層と異種の素材層(例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの層)との間に、優れた密着性やラミネート強度を確保しておくことが好ましい。それによって、異種の素材層が易開封性フィルムの基材層から剥がれたりすることが防止され、蓋材としての要求特性が満たされる。
【0067】
上記異種の耐熱性基材と易開封性フィルムの積層は、積層体を構成するフィルムを接着剤で貼合わせる通常のドライラミネート法や接着性樹脂の押出ラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて直接、ポリプロピレン系樹脂組成を押出してラミネートする方法も採用できる。
【0068】
上記ドライラミネート用接着剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの少なくとも1種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液反応型の接着剤などが挙げられ、耐熱性基材どうしをラミネート場合は、2液反応型の芳香族系接着剤を用いることが好ましく、耐熱性基材とヒートシール層となるポリプロピレン系フィルムをラミネートするときは、2液反応型脂肪族系接着剤などが挙げられる。また、アルミニウム箔とポリプロピレン系フィルムをラミネートするときは、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等の接着剤が挙げられる。
【0069】
接着剤層の厚さは0.5~5μmが好ましく、0.5~3μmがより好ましい。接着層の厚さが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすくなり、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、乾燥時間に短縮と生産コストを抑えることが容易になる。
【0070】
本発明においては、ピール層(B)とプラスチック製被着体をヒートシール温度160℃でシールしたときに、23℃雰囲気下でピール強度が5~30N/15mmの範囲であることが、密封性とピール性(易開封性)を両立できて好ましい。
【0071】
また、4℃雰囲気下で2~20N/15mmの範囲にあることが好ましい。上記の範囲とすることで、低温で移送された際にもシール層が剥がれることなく、密封性を保つことができて内容物を保護することができ、またピール性(易開封性)も得られる。
【0072】
上記プラスチック製被着体とは、非晶質ポリエチレンテレフタレート(以下、A-PETと略称することがある)、ポリスチレン、ポリプロピレンが挙げられる。本発明では特に被着体として、A-PET製容器とのピール強度とピール性を評価した。
【0073】
上記A-PETはジオールとしてエチレングリコール、ジカルボン酸としてテレフタル酸からなるポリエステル樹脂であるが、結晶性が高いために成形性、透明性に乏しく、これらを改善するためにジオール成分の一部を、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタジオール等で置き換えたもの、ジカルボン酸成分の一部を、イソフタル酸、アジピン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等で置き換えたものが挙げられる。これらの中で、A-PET容器用として、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を用いたものが好ましい。
【実施例0074】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における物性、特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0075】
(1)樹脂の密度
JIS K7112-1980に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0076】
(2)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B-7509:1974、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0077】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX-100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0078】
(4)トータルヘイズ
JIS K-7136(2000)に基づき、株式会社村上色彩技術研究所製の濁度計(HM-150)を用いて、基材層(A)側から光が入射するようにフィルムのトータルヘイズを測定した。
【0079】
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K-7210-1:2014に準拠して、190℃で測定した。
【0080】
(6)融点(Tm)
株式会社島津製作所製の示差走査熱量測定装置DSC(DSC-60A)を使用し、窒素雰囲気下で5mgの試料を10℃/分の速度で200℃まで昇温して5分間保持した後に、10℃/分の冷却速度で10℃まで冷却し、再度10℃/分の速度で昇温していった際に、再度の昇温において、樹脂の融解に伴う吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とした。
【0081】
(7)製膜性
易開封性フィルムとしての積層フィルムを製膜したときに、口金リップへの熱劣化物などの付着や、フィルム巻取り時に皺や巻きずれ等を目視で観察して、熱劣化物の付着や皺、巻きずれのない状態のものを製膜性良好として○とし、熱劣化物の付着や皺、巻きずれのあるものを×として判定した。
【0082】
(8)算術平均表面粗さRa
ピール層表面の算術平均表面粗さRaは、(株)小坂研究所製の高精度微細形状測定器(SURFCORDER ET4000A)を用い、JIS B0601-1994に準拠し、幅方向に2mm、長手方向に0.2mmの範囲について、走査方向を幅方向とし、長手方向に10μm間隔で21回の測定を実施し3次元解析を行い、評価した。なお、触針先端半径2.0μmのダイヤモンド針を使用、測定力100μN、カットオフ0.8mmで測定した。算術平均表面粗さRaが0.2μm以上2.0μm以下のものを〇、その範囲を外れたものを×とした。
【0083】
(9)評価用A-PETシート
押出機にてポリエチレンテレフタレート樹脂を温度280℃で溶融し、ダイよりフィルム状に押し出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、厚さ300μmの評価用ポリエチレンテレフタレートのシートを作成し、本発明における評価用のA-PETシートとした。
【0084】
(10)複合フィルムの作成方法
易開封性フィルムの基材層(A)側に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、P60(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)をポリウレタン接着剤で塗布量2g/m2にてドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルを、ピール強度測定用の複合フィルムとした
(11)ピール強度
(10)で作成したピール強度測定用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、ピール層(B)と(9)で作成した厚さ300μmの評価用A-PETシートに重ね、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度160℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを、雰囲気温度23℃、4℃、0℃中で2分間放置後に、株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、剥離角度を保持せずに剥離した時のピール強度を測定した。その時、1試料についてn数10の測定値の平均値をとり、雰囲気温度23℃で5~30N/15mmであるもの、雰囲気温度4℃で2~20N/15mmであるものを〇とし、該範囲を外れたものを×とした。
【0085】
(12)防曇性
(10)で作成したピール強度測定用複合フィルムを40℃雰囲気下で1週間エージングさせた後、100mm×100mmにサンプルを切り出し、ピール層(B)を水50cc注入したポリプロピレン製容器(70φ×55H、東罐興業株式会社製)の底に文字を印刷したシートを入れて、ピール層(B)を重ねて、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、ヒートシール温度160℃、シール圧力0.3MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを作成した。そのサンプルを3~4℃の冷蔵庫内で約1時間放置した後、目視で容器底に入れた文字シートを観察して防曇性を評価した。
〇:フィルムが曇らず、文字が鮮明に見える。×:フィルムが曇って、文字が鮮明に見えない。
【0086】
(13)易開封性フィルムのブロッキング剪断力
易開封性フィルムの幅30mmで長さ100mmのフィルムサンプルを準備し、シール層どうしを30mm×40mmの範囲を重ね合わせて、500g/12cm2の荷重をかけ、80℃のオーブン内で24時間加熱処理した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。本測定法で剪断剥離力が20N/12cm2以下であれば耐ブロッキング性良好「〇」とし、20N/12cm2を超えるものを耐ブロッキング性不良「×」とした。
【0087】
(14)シール用複合フィルムのブロッキング剪断力
(10)で作成したシール用複合フィルムを2枚準備し、ピール層(B)と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(P60(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”))面を12cm2の範囲で重ね合わせて、その範囲に200gの荷重をかけ、50℃のオーブン内で1日保管した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。剪断剥離力が2N/12cm2以下のものを耐ブロッキング性良好で〇とし、2N/12cm2を超えるものを耐ブロッキング性不良で×と判定した。
【0088】
(15)粒子の平均粒径
粒子の平均粒子径は、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H-7100FA)を用いて30,000倍で断面写真撮影を行い、写真上に観察される個々の粒子について円相当径を測定する。1,00個の粒子について、円相当径を求め、粒子径を0~0.05μm未満、0.05~0.10μm未満、0.10~0.15μm未満・・・、0.55~0.60μm未満・・・、とグループ分けし、それぞれのグループにいくつの粒子が含まれるか粒度分布を求める。各グループの中間値をそのグループの代表径diとし(たとえば、0.10~0.15μm未満のグループではdi=0.125μm)、グループに含まれる粒子個数niとから、下記式により平均粒子径(重量平均径)を算出する。
d=(Σni・di
4)/(Σni・di
3)。
【0089】
(16)基材層の結晶化度
株式会社島津製作所製のフーリエ変換赤外分光高度計(IR Tracer-100)を用いて測定した。測定法は全反射測定法(ATR法)でフィルム基材層のポリエチレンの結晶バンド1894cm-1の吸光度Acと、非結晶バンド1303cm-2の吸光度Aaを得た。これらを用いて、以下の式から結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=(Ac/Aa)/(Ac/Aa+0.23)。
【0090】
(17)打抜き性
(10)で作成したシール用複合フィルムを50mm×50mmにサンプリングし、直径20mmの穴が開いたサンプルホルダーにセットし、株式会社オリエンテック製テンシロン(RTC-1210A)を使用し、針(直径1.0mm、先端形状0.5mm)を毎分50±5mmの速度で突き刺し、突き刺す際にフィルムの伸びを測定した。フィルムの伸びが3mm未満のものを○とし、3mm以上のものを×とした。
【0091】
(18)剥離外観
(11)でピール強度を測定する際に剥離外観を目視で評価し、糸引き、膜残りを下記の通り、判定した。
○:糸引き、膜残りが見られない。×:1.5mm以上の長い糸引き、膜残りが残る。
【0092】
本実施例と比較例で使用した原料は次の通りである。
【0093】
(1)直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)
MFR=8.0g/10分、密度=0.92g/cm3、Tm=123℃。
【0094】
(2)低密度ポリエチレン(LD-1)
MFR=7.0g/10分、密度=0.919g/cm3。
【0095】
(3)アミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)
MFR=7.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンに、アミン系界面活性剤20質量%を溶融混練したマスターバッチ。
【0096】
(4)界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)
MFR=2.4g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンにジグリセリン脂肪酸エステル系の界面活性剤10質量%を溶融混練したマスターバッチ。
【0097】
(5)界面活性剤(3)マスターバッチ(MB-3)
MFR=7.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンにモノグリセリン脂肪酸エステル系の界面活性剤10質量%を溶融混練したマスターバッチ。
【0098】
(6)ポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)
ポリエチレン用結晶核剤として、理研ビタミン製リケマスターCN-001(登録商標)を用いた。
【0099】
(7)アクリル粒子マスターバッチ(MB-5)
MFR=2.1g/10分、密度=0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンに平均粒子径9μmのアクリル粒子10質量%を溶融混練したマスターバッチ。
【0100】
(8)粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)
MFR=18g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体に粘着付与剤を10質量%溶融混練したマスターバッチ。
【0101】
(9)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA-2)
MFR=18g/10分、密度=0.949g/cm3、Tm=69℃、酢酸ビニル含有率=28質量%。
【0102】
実施例1
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)92.5質量%とアミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)5質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用い、
ピール層の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)66質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成物を用い、
これらを押出機2台に各々投入し、各々200℃の押出温度で2層共押出積層のT型口金より押出、30℃のキャスティングロールで急冷し2層積層の厚さ30μm、基材層(A)/ピール層(B)の積層比が3/1の易開封性フィルムを製膜した。得られた易開封性フィルムの上記基材層(A)上に(すなわち、基材層の反ピール層側表面上に)コロナ放電処理を施して、濡れ張力を38mN/mとしてロール状に巻き取った。製膜性はネックインが少し大きいが良好であり、トータルヘイズは12.1%で、23℃雰囲気下のピール強度は10N/15mm、4℃雰囲気下のピール強度は5N/15mmであり、防曇性も良好で、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性を全て満足していた。
【0103】
実施例2
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)90.5質量%とアミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)5質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)2質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性はネックインが少し大きいが良好であった。また、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0104】
実施例3
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70.5質量%と低密度ポリエチレン(LD-1)20質量%とアミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)5質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)2質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。積層は良好でネックインもダイ幅に対して小さくて良好あり、キャスト時のエッジ安定性も良く、安定して巻き取ることができた。得られた易開封性フィルムは、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0105】
実施例4
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20質量%と低密度ポリエチレン(LD-1)70.5質量%とアミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)5質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)2質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。実施例に記載の評価を行った結果、低密度ポリエチレンの添加量増量の影響からヘイズが高くなっているが、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0106】
実施例5
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)68質量%と低密度ポリエチレン(LD-1)20質量%とアミン系界面活性剤(1)マスターバッチ(MB-1)5質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)2質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であり、得られた易開封性フィルムは、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0107】
実施例6
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)74質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)16質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であり、実施例に記載の評価を行った結果、得られた易開封性フィルムは、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0108】
実施例7
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)55質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)35質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であり、実施例に記載の評価を行った結果、得られた易開封性フィルムは、界面活性剤濃度を高くした影響からトータルヘイズのアップがあり、EVAと粘着付与剤の含有量が少なくなったために、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度の低下がみられたが、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0109】
実施例8
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)71質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であり、実施例に記載の評価を行った結果、得られた易開封性フィルムは、実施例3に比べて粒子添加量が少ないためにブロキング剪断力のアップがみられたが、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0110】
実施例9
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)56質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)20質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。実施例3に比べて粒子添加量が多いために口金リップへの目ヤニ付着が多くなったが、製膜性は良好であった。得られた易開封性フィルムは、粒子添加量を多くした影響からトータルヘイズのアップがあったが、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0111】
実施例10
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)56質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%とエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA-2)10質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であった。実施例に記載の評価を行った結果、EVAの追添により算術平均粗さRaが小さくなり、ブロッキング剪断力が高くなったが、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0112】
実施例11
ピール層の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)56質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%と非イオン系界面活性剤(3)マスターバッチ(MB-3)10質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であった。得られた易開封性フィルムは、2種類の界面活性剤を用いて濃度を高くした影響からトータルヘイズのアップがあり、EVAと粘着付与剤の含有量が少なくなったために、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度の低下がみられたが、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0113】
実施例12
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)65.5質量%と低密度ポリエチレン(LD-1)20質量%と非イオン系界面活性剤(3)マスターバッチ(MB-3)12質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であった。得られた易開封性フィルムは、実施例3に比べて基材層(A)の界面活性剤マスターバッチ添加量が多いためにトータルヘイズのアップがあったが、トータルヘイズ、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度、防曇性など、本発明の易開封性フィルムとしての要求特性全てを満足していた。
【0114】
比較例1
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)98質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)2質量%を混合した樹脂組成を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は良好であった。得られた易開封性フィルムは、基材層(A)の結晶化度が低いために打ち抜き性に劣り、基材層(A)にアミン系界面活性剤を含有しないために、ピール層(B)から基材層(A)への非イオン系界面活性剤の移行が多くなり、防曇性に劣ったものであった。
【0115】
比較例2
基材層(A)の樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)18質量%とアミン系界面活性剤マスターバッチ(MB-1)20質量%と非イオン系界面活性剤(3)マスターバッチ(MB-3)2質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)60質量%を混合した樹脂組成を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。本フィルムは基材層の結晶化度が高すぎるために製膜安定性に劣り、アミン系界面活性剤の量が多いために、基材層(A)とピール層(B)とのブロキング剪断力が高くなって、フィルムの巻き出し性にフィルム破れが起こることがあった。得られた易開封性フィルムは、実施例に記載の評価を行った結果、基材層の結晶化度が高すぎるために打ち抜き性に劣り、基材層(A)のアミン系界面活性剤の濃度が高いために、ピール層(B)の表面に転写して23℃雰囲気下および4℃雰囲気下でのピール強度が要求範囲よりも低くなった。
【0116】
比較例3
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)30質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-1)60質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性はピール層(B)の界面活性剤量が多過ぎるために、フィルム表面にブリードした界面活性剤が製膜工程の金属ロールに付着して製膜性に劣るものであった。得られた易開封性フィルムは、ピール層(B)の界面活性剤の量が多過ぎるためにピール力が低く、ブロキング剪断力も高いものであった。
【0117】
比較例4
ピール層(B)の樹脂として、非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA-2)76質量%を混合した樹脂組成を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は、ピール層(B)に粒子添加がないために、算術平均表面粗さRaが0.2μm未満となって巻取り不良となって安定製膜性に劣り、基材層(A)とピール層(B)とがブロッキングして巻き出し不良が発生した。得られた易開封性フィルムは、シール用複合フィルムのブロッキング剪断力が高く、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度が要求範囲以上に高くなり、ピール性(易開封性)に劣っていた。
【0118】
比較例5
ピール層(B)の樹脂として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)36質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)40質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。製膜性は、粒子含有量が高いために製膜工程通過時に粒子が脱落して工程ロールに付着して製膜性安定性に劣っていた。得られた易開封性フィルムは、フィルムヘイズが30%を超え、算術平均表面粗さRaも2μmを超え、23℃雰囲気下および4℃雰囲気下のピール強度が低いものであった。
【0119】
比較例6
基材層(A)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)65.5質量%と低密度ポリエチレン(LD-1)20質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)12質量%とポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(MB-4)2.5質量%を混合した樹脂組成物を用い、ピール層(B)として、粘着付与剤マスターバッチ(EVA-1)66質量%と非イオン系界面活性剤(2)マスターバッチ(MB-2)24質量%とアクリル粒子マスターバッチ(MB-5)10質量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に2層積層の易開封性フィルムを得た。実施例に記載の評価を行った結果、基材層(A)とピール層(B)の界面活性剤が同じ界面活性剤のため、40℃雰囲気下1週間エージングによりピール層(B)の界面活性剤が基材層(A)へ移行したため、防曇性に劣っていた。
【0120】
上記実施例1~12、比較例1~6の結果をまとめて表1、表2に示す。
【0121】
【0122】